2011年01月28日

レバノン (Lebanon)

監督 サミュエル・マオズ 主演 ヨアヴ・ドナット
2009年 イスラエル/フランス/レバノン/ドイツ映画 90分 戦争 採点★★★

戦争がなんで恐ろしいのかってのを端的に言えば、人が死ぬから。殺さなきゃならないから。今ここでサブタレ書いてる私でさえ、戦争になれば軍服を着させられ銃を持たされ戦地へポイ。外見どころか中身も何にも変わってない、いつもの私なのに、敵に向かって銃を構えて撃たなきゃならない。全然知らない人なのに。じゃないと、こっちが殺される。全然知らない人から。理由も理屈も通用しない状況下で、いつもの自分が人を殺さなきゃならない。それが怖い。

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【ストーリー】
レバノン領内へと侵攻する、イスラエル軍の一台の戦車。中には4人の兵士。初の実戦の為、引き金を引けない砲撃手や、状況を把握できない指揮官など、戦闘に不慣れな彼らをしり目に状況は悪化の一途をたどり続ける。極限状態の中、肉体的にも精神的にも限界に近付いていく彼らは…。

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背景が分かりづらいので、物凄くかい摘んで整理してみようかと。自分用にも。
元々中東では珍しくキリスト教徒が中心の国家だったレバノンを、第一次世界大戦後実質的な宗主国となったフランスが「ここまでがレバノンでござい!」とでかめに国境線を作成。結果、キリスト教、イスラム教共に複数の宗派が混在する国家に。50年代以降、周辺諸国の情勢不安や内乱などもあり、いつ爆発してもおかしくない状態となる。
で、1975年。ベイルートのキリスト教会で集会を行っていたキリスト教マロン派のファランヘ党に向け、イスラム教徒への軍事支援を行うPLO支持者らが発砲。これをきっかけに、内乱が本格化。警察はこの事態に対しさっぱり役に立たず、国軍も機能を喪失。当初は静観の構えを見せていたシリアだったが、PLOらが推し進める革命がイスラエルを刺激し、イスラエルによるシリア・レバノン攻撃を誘発しかねないと恐れ、レバノン政府の要請もあって侵攻。一時的に内戦は沈静化する。しかし、和平に失敗。シリア・マロン派・PLOは対立を激化させ、マロン派が“反シリア・パレスチナ”を旗印に結成したレバノン軍団とシリア軍との衝突を散発する。
そんな中、劣勢を強いられていたレバノン軍団はイスラエルの支援と介入を画策。シリアとイスラエルが結んでいた“レッドライン協定”をシリア側が破るよう誘導し、協定違反を名目にイスラエルが軍事介入。レバノン軍団の支援という形で、シリア対イスラエルの戦いが繰り広げられることに。
えらくザックリとした状況整理ですので、詳しくは各々で

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で、そんなイスラエル軍が介入を始めた1982年を舞台に、監督自身の体験を基に描かれた本作。“戦車の中から見つめる戦争”という着眼点が新鮮。その限定された視点が、状況を把握できない混乱を観客が共有できる結果に。密閉された緊迫状態下というと『Uボート』を思い出してしまうが、あそこまでドラマチックな展開をするわけではない。国家の為でも信念の為でもなく、ただ戦場に駆り出されてしまった一般人が殺すか殺されるかの状況下において、恐怖し困惑し混乱する様をストレートに描き出している。声高らかに戦争の無常さを訴えているというよりも、引き金を引けないが故に同胞が死に、引いたら引いたで民間人を殺してしまう、そんな戦争のさっぱりスマートじゃない無様さをさらけ出しているようなナチュラルさが、逆に功を奏している。死が劇的なものではなく、そこらにゴロゴロと転がっている状況描写も上手い。
ただ、命を預けるのは遠慮したいグズグズな4人組を中心に、グダグダな指令系統と作戦という無様さを描くことでリアルさや観客と同様の視点を保ちたい意図は分かるのだが、その為にはもう少し過度な演出をしても良かったのかなぁと思う一面も。鉄に囲まれた密室であることが活かされていたとは然程思えず、温度や湿度、臭いなどの描写も控えめなため、緊迫感や圧迫感も控えめな感じを。この、微妙な肩透かし感も狙いであったのなら、まぁ成功したと言えるんですが。

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ここのひまわり畑も、死体がゴロゴロ埋まってるんですかねぇ

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タグ:★★★ 戦争
posted by たお at 02:25 | Comment(0) | TrackBack(7) | 前にも観たアレ■ら行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月27日

ローラーガールズ・ダイアリー (Whip It)

監督 ドリュー・バリモア 主演 エレン・ペイジ
2009年 アメリカ映画 112分 ドラマ 採点★★★★

まだ学生の頃だから相当昔の話ですが、ひょんなことから英会話講師などをしている外国人らで結成されたバンドに加入してしまった私。「ベースいねぇんだけど、やるか?」「いいよ!」と至って簡単な経緯で加入したものの、年齢どころか習慣から何もかも違う彼らとの活動は物凄く刺激的で、瞬く間にのめり込んで学生生活はメタメタに。夜が活動の中心時間となり、酒とたばこを覚えたのも丁度この頃。当然親は快く思っておらず、何かにつけボッコボコにされたんですが、そんなもんじゃやめられないほど楽しかったんですよねぇ。一番楽しかった時期なのかも。

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【ストーリー】
美人コンテストで優勝することが娘の幸せに繋がると信じる母親のもとで退屈な日々を送る、17歳の女子高生ブリス。そんなある日、彼女はローラーゲームの試合を観戦。女性らしさそっちのけで暴れまわる選手らの姿に魅了されたブリスは、家族に内緒で年齢を偽り入団テストを受け、見事合格。みるみる才能を開花させ一躍人気選手となっていくのだが…。

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ラブソングができるまで』『チャーリーズ・エンジェル』のドリュー・バリモアが初めて監督に挑んだ青春ドラマ。
親の言いなりである現状に不満を感じつつも、かと言ってそれに代わる熱中できるものが特にない普通の少女がローラーゲームに出会い、初めて自分自身というものを見出すまでを爽やかに描きだした本作。監督は初めてだが、製作者として題材選びの上手さが光っていたドリュー・バリモアだけに、今回も彼女らしいピッタリの題材を上手に仕上げている。
映画におけるスポーツ描写の難しさを痛感させられる競技を描く上で迫力やスピード感を出す工夫が足りなかったりと、演出面での拙さが感じられるのは確かなのだが、本作は別に迫力に興奮して歓声を上げるようなタイプの作品ではないので、そこは大した問題ではない。本作にとって大切な、10代にとっての親の存在、大人の存在、言葉に言い表せない胸の中のモヤモヤなど、10代の主人公らしい心情や状況をしっかりと描き切れたのは立派。特に、初めての反抗や夜遊びで感じられるドキドキや後ろめたさなどを表現したのは、初監督にして立派な手腕を発揮したと言えるのでは。シンプルで定番な青春物語ながらも、下手に欲張ってゴテゴテと着飾らず定番ならではの面白さをきちんと抽出した手腕も、遊び心ある音楽と映像で締められるエンドクレジットも非常に心地が良い一本。
少女時代を振り返るノスタルジックな目線に終始するのではなく、親世代の素直な感情が表現されているのも評価に値する。如何せん私が男なので、主題でもある母親との関係や母親の思いってのが“理解できる”って範疇だけに収まってしまうのが残念なのだが、一緒にフットボール観戦をする相棒たる“息子”がいない、娘二人に妻という女だらけの中で肩身が狭いが故に、娘に対する本当の思いをなかなか口に出せない父親の姿までも、シッカリと描かれていたのには驚いた。多分息子らのであろう名前と背番号を誇らしげに家の前に掲げる隣人と、満足に言葉を交わす事も出来なかった主人公の父親が、娘の名前と背番号を自宅の前に掲げ、胸を張って隣人と言葉を交わす父親の、なんとも可愛らしいこと、微笑ましいこと。もちろんこれは、娘がスポーツ選手になったから嬉しいのではない。初めて娘と理解し合え、喜びを共有し合えたから嬉しいのである。この後しばらく娘に煙たがられる日々が続こうが、この嬉しさだけで当分の間はご飯が美味しいはず。

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主人公であるブリスに扮するのは、『インセプション』『X-MEN:ファイナル ディシジョン』のエレン・ペイジ。飛び抜けて可愛いわけでもゴージャスなわけでもなく、普通なら持ってて当然の不満や不安を感じさせる風貌だからこそ、本作や『JUNO/ジュノ』のような等身大の少女を演じさせると抜群の存在感を発する彼女。“メガネを外したら美女”みたいなお伽噺キャラではなく、不意にみせる笑顔に「あれ?結構可愛い子じゃん」と思わせる普通の女の子タイプ。今一番注目を浴びている若手女優の一人でもあるので、今後足枷にもなってくるであろうその極端な幼さをどう乗り越えていくのかが楽しみで。
また、母親としての強さと悩みをこれでもかと見せつけた『ミスト』『臨死』のマーシャ・ゲイ・ハーデンや、逆に女だらけの中での父親の肩身の狭さを見事に表現した、劇映画で観るのが久しぶりなのでちょっと嬉しかった『ブルーサンダー』のダニエル・スターン、若者にとって親しみやすい大人であるチームメイトを好演した『アドベンチャーランドへようこそ』のクリステン・ウィグに、『デス・プルーフ in グラインドハウス』のゾーイ・ベルと、魅力的なキャストが集結。それだけに留まらず、監督業が中心なため大きな見せ場はないが、ブレることのないワンパクなキャラを楽しそうに演じるドリュー・バリモアと、ほぼ20年近くキャラがブレていないスタスキー&ハッチ』のジュリエット・ルイス、ドリューとは『2番目のキス』で共演済みのジミー・ファロンに、“チャーリーズ・エンジェル”シリーズの隠れキャラとしても有名なウィルソン兄弟の長兄アンドリュー・ウィルソンと、もう魅惑的過ぎるキャスティング。スターの監督作にありがちな、“超豪華キャストのカメオ出演”ってのに走ってないのも好印象で。

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家庭の臭いがしない大人が魅力的に見える年頃

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posted by たお at 03:06 | Comment(4) | TrackBack(30) | 前にも観たアレ■ら行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月20日

ザ・ロード (The Road)

監督 ジョン・ヒルコート 主演 ヴィゴ・モーテンセン
2009年 アメリカ映画 112分 ドラマ 採点★★★★

親が子供を殺すニュースほど、聞いていて陰鬱な気分になるものはないですねぇ。“子供は親の所有物である”を前提にしたかのような罰の軽さも、その気分を一層増させるものです。確かに親は子供を養い、守り、導く義務があるんですけど、それが子供の先行きを好きにしていいって理由にはならない。いつも思うんですが、その義務が子供を殺したくなるほど嫌ならさっさと捨てて、育ててくれる人に頼めと。殺されるより全然幸せだと。“血筋”のみが親子を成しているんじゃないんだと。

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【ストーリー】
文明も自然も崩壊した死にゆく大地を、一組の父子がひたすら南を目指し歩き続ける。満足な食料も水もない中、父親は寒さと飢えと人肉を求め彷徨う暴徒らから息子を守りながら、ひたすらに歩き続ける。

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『ノーカントリー』のコーマック・マッカーシーの原作を、『プロポジション -血の誓約-』のジョン・ヒルコートが映像化したドラマ。
世界を焼き払う炎が唯一の暖色である寒々しい色に統一された極限状態の中、父と子が目にした風景や出来事をそのまま映像化し、積み重ねていく中で父子の絆や親の役目、人間性の本質を浮かび上がらせていく本作。“父子の絆や親の役目、人間性の本質”と私は書いたが、それはあくまでこの映画から私が受け取った分かり易い一部分でしかない。「言いたい事はこれです!どうぞ!」と差し出される親切な作品ではなく、それぞれのシーンの余韻や空いた隙間を受け手自身が解釈し汲み取る必要がある作品に仕上がっている分、苦手な人は大いに苦手なタイプの映画であろうが、一つ一つの場面を自分に置き換えながら観賞することで、人それぞれ“何か一つ”強く胸に突き刺さる作品にもなっている。
ミスト』の父親同様に、愛する我が子が他の者の手にかかるくらいならば、自らの手で楽にすることを堅く誓う父親。その子供を愛する姿は胸を締めつけられるほどである一方、独善的でもある。“守るか死か”の二択。正しくもないが、間違ってもいない。一人歩きの出来ない子供に対する愛情として、賛同は出来ないが理解は出来る。しかし父親は、自らの死を意識することによって子供に対する接し方も変わって来る。子供も、父親の矛盾に気づくことで成長している。その成長した息子に、父親は自分亡き後の生きる術を教えようとする。子供が一人でこの荒れ果てた土地を歩いて行けるように。助けの求め方も一緒に。異常な状況下での物語であるが、これは現実社会となんら変わらない普遍的な物である。彼らに名前がないのも、ある特定の人物の特定の物語なのではなく、親子の普遍的な物語として描かれているからなのでは。親は自らの死を意識して初めて親としての役割を理解し、子は親の死をもって初めて大人となる。

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人間性についても幾通りも解釈が出来る本作。“人を食べない=善 人を食べる=悪”。これは本作の父親が自分に課した善悪の基準でしかない。その父親も人を殺すが、それは“息子を守るため”という大義名分の上での善であると自分に言い聞かせている。では、もし襲い来る人喰いが家で待つ息子の為に襲いかかって来たのであれば、それは善になるのか?答えなんか出るわけはない。自分にとっての善が、相手にとっての善とは限らないのだから。共食いをしてまでも生き延びることや種を存続させることは生物として間違ってもいないし、“動物”ではなく“人間”として共食いを拒むのも間違っていない。
宗教的な寓話として解釈することもできる。聖書の言葉が用いられたり、教会が登場したり、唯一名乗る登場人物の名前(その名を聞いた父親の反応から伺う限り、本当の名前ではなさそうだが)が“イーライ”と聖書を彷彿させるものであることからそうなのだが、その反面、特定の神の名は出てこない。祈る対象も“みんな”であり、アーメンも言わない。ある特定の宗教的解釈を拒んでいるかのようでもある

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なんともここまで“○○であり、○○でもある”と煮え切らない事ばかり書き連ねてしまったが、これだけはハッキリと断言できる。役者がどれもこれも素晴らしい
特に素晴らしいのは、やはり『ヒストリー・オブ・バイオレンス』『ゴッド・アーミー/悪の天使』のヴィゴ・モーテンセン。人間的弱さの上に父親という鎧を着たかのような、強さと弱さと矛盾と嘘と愛情がごっちゃになった象徴的父親像を見事に表現。全面的に正義のオーラを出す役者では演ずる事が出来ない役柄だけに、ヴィゴはまさに打ってつけであったのでは。『イースタン・プロミス』同様、アッパレなほどの脱ぎっぷりの良さを披露しますし。
また、本作における善行と優しさの象徴である息子役のコディ・スミット=マクフィーも、非常に印象的。こんな息子を遺せるなんて、ある意味父親冥利に尽きるとも。一方、回想シーンのみに登場し、幸福と混沌の時期をその顔色一つで表現した『イーオン・フラックス』『スタンドアップ』のシャーリーズ・セロンも良い。確かに回想シーンが多過ぎるような気もしたが、単調になりがちの本作のスパイスとしては効果的であった。
その他にも、信憑性はさて置き唯一名前のあるキャラクターとして登場する『ペナルティ・パパ』のロバート・デュヴァルは、短い登場時間ながらも親子のキャラクターを引き出す重要な役柄を演じ、作品中最も印象的なエピソードとして作り上げることに貢献。それにしても、男子の憧れナンバー1に違いないキルゴア中佐も、もう80歳になるんだぁ。そりゃあ私もこんな歳になっちゃうわけですねぇ。それはさて置き、最後にこの監督とは『プロポジション -血の誓約-』でも組んだ、ガイ・ピアース。自ら強烈な存在感を発するタイプじゃないだけに、主演であっても周りに喰われがちな彼だが、本作では一人ポツンと登場するのでそんな心配もなし。メイクを加え更に善悪アヤフヤな胡散臭さを漂わせただけに、息子最後の選択として非常に迷わせる役柄を好演。最後に救いがあるからまだいいのだが、あれがガイ・ピアースのみであったら、非常に不安な余韻のまま幕を閉じてしまっていたのでは。
プロポジション -血の誓約-』では脚本を書いたニック・ケイヴによる、作品の余韻をそのまま音にしたかのようなサントラも結構好みの出来。小説が原作ではあるものの、一つの曲を映像化したかのような印象も受ける本作だけに、サントラにそんな印象を強く受けたのかも。
こんな文末であれだが、似たような状況と景色からなにかと『ザ・ウォーカー』と比べられがちな本作。ただ、似てるのは景色だけで、語り口も語っている事もジャンルそのものもなにもかにも違う作品同士を比べても、なんにも出てこない気もしますが。

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これが父と娘の物語だったら、こうはならない

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2010年11月16日

ロボコップ (RoboCop)

監督 ポール・ヴァーホーヴェン 主演 ピーター・ウェラー
1987年 アメリカ映画 104分 アクション 採点★★★★★

映画の製作費がとんでもない額にまで膨れ上がった80年代って、才能ある監督が少なくなったからか、スタジオの言う事を素直に聞く有能な監督が少なくなったからか、ちょいと話題になったヨーロッパの監督をハリウッドに引っ張り込んで、「なんでそれを?」とミスマッチな映画を作らせる風潮が流行った時期がありましたねぇ。『貴族の巣』のアンドレイ・ミハルコフ=コンチャロフスキーに『デッドフォール』を撮らせてみたり、『ルトガー・ハウアー/危険な愛』のポール・ヴァーホーヴェンに本作を撮らせてみたりと。日本で言えば、市川崑に『グーニーズ』を任せるみたいな感じ?まぁ、本国の人もビックリしたことでしょうに。

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【ストーリー】
犯罪発生件数が増加の一途をたどる、近未来のデトロイト。巨大企業オムニ社によって運営されるこの街の警察署に、一人の警官マーフィが配属される。だが、配属早々彼は凶悪犯罪者クラレンスらに惨殺されてしまう。しかし彼の遺体はオムニ社に回収され、極秘裏に計画されていたサイボーグ警官製造プログラムによりロボコップとして復活。街の治安を守るため立ち上がるのだが…。

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ちょっぴり血糊増量中のディレクターズカット版で観賞。
プロットだけを見る限りでは、ロボット警官がドキューンバキューンと活躍する、およそ大人の鑑賞に堪えるとは到底思えない作品。お子様向けの夏休み映画。当時誰もがそう思ってたに違いない本作だが、ふたを開けてみてビックリ。毒々しいまでの社会風刺と、さっきまでピンピンしてた人間が一瞬にして肉塊と化す、ホラー映画顔負けの血みどろ描写で彩られた、お子様お断りのSFアクション映画に。
購買意欲を増させるために過激化が進むCMと、どんなに沈痛な面持ちで悲惨なニュースを伝えていても、次に明るい話題が来ればさっさと笑顔に戻るニュースキャスター、視聴率の為ならなんでもやるTV番組。痛烈なメディア批判から幕を開ける本作。もう初っ端から毒々しい。富が一部の巨大企業に集中する、中世の貴族と貧民の関係となんら変わらない現代のアメリカの姿も、ヴァーホーヴェンは外からやってきた人間らしい冷め切った視線で映し出している。社会を動かしているのが、巨大な野心と野望を持つ人間ならまだしも、ちょっとしたエゴと出世欲に駆られたサラリーマンに過ぎないってのも、生々しいまでにリアル。
生々しいのは、『遊星からの物体X』のロブ・ボッティンによる過激なゴア描写も然り。どんな人間でも、中を開ければ血とモツの詰まった肉袋だと言わんばかりの強烈な死が、随所随所に描かれている。死のダンスを踊りながらボロ雑巾のような肉塊となるオムニ社員、苦痛の叫びを延々上げ続ける主人公、ドロドロに溶けながら「ヒョーヒョー」叫び、右往左往した揚句木っ端微塵となるチンピラ。どれもこれも強烈。“人間、死んだら終わりなんだ”という、当たり前なんだが何となく目を背けてる事実を突き付けられているようにも。「大丈夫!俺みたいに直してくれるよ!」と、瀕死の相棒にロボコップが言う全く励ましになってないと言うか、そのロボコップ自体が瓦礫に埋もれてヒーヒー言ってるのに何を言うかって希望のなさにも、それが感じられたりも。

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もちろん毒々しさだけでは、こんなにも面白い映画にはならない。『スターシップ・トゥルーパーズ』同様、ロッカールームは男女一緒で裸だらけで「ヤッホーイ!」とはなるが、無論それだけでも面白い映画にはならない。しかしながら本作は、決して喉ごしスッキリ爽やかって映画ではないが、アクション映画として痛快。アクションシーンの歯切れの良さや、ビシリと締めるしびれるラストも功を奏しているからだが、やはりなんと言ってもロボコップがカッコ良いからの一言。
壮絶な死を遂げた揚句、記憶を消され、勝手にロボットに改造された元マーフィのロボコップ。記憶がないまま活動している分には良かったのだが、なまじ色々と思い出しちゃったんで大いに悩むロボコップ。さっきまでチヤホヤされてたのに、親会社の幹部に盾突いた途端、仲間に一斉射撃を食らうロボコップ。そんなフランケンシュタインのような哀愁を漂わせるロボコップ。初めて観た時は、そのデザインに正直一瞬戸惑いを覚えたものだが、いざ活躍し始めると、堪らなくカッコ良い。バックに流れるテーマ曲とセットじゃないとイマイチ締まらないが、カッコ良いものはカッコ良い。いかにもロボット然とした動きのトロさも、良いじゃないですか。頭から最初に動き、身体が後からついてくる“ロボコップ動き”を、当時は誰もが真似したものです。少なくても、私のクラスでは。真横に銃を伸ばし、そこから上を見ずに銃だけ身体の前をクロスして上に向ける仕草なんて、真似の上手い奴はちょっとした人気者になれましたし。「その時、口を少し歪ませるのがコツだよ」と、友達の成澤くんも言ってましたし。

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で、そのロボコップに扮するのは『バカルー・バンザイの8次元ギャラクシー』『スクリーマーズ』のピーター・ウェラー。すぐにでも歌いだしそうなロック屋っぽい面構えと、役名のマーフィってのも相まって、いつもピーター・マーフィを思い出しちゃいますが、今となってはそのどちらも思い出す人は少なくなっちゃったのかなぁと。そのピーター・ウェラーだが、役者としてはあまり嬉しくない上に難易度も高い、顔のほとんどが見えないロボコップ役を、単調になり易いロボットの動きにアクセントを加えたり、口の形をオーバーに変えるなどし、その感情までをも見事に表現。あまりに見事なので、顔が出ちゃう後半はなんとも肩透かしな感じもありましたが。
また、当時はまだデ・パルマ作品でのちょい足りないヒロイン役が印象深かったナンシー・アレンや、ビルから落下すると腕が伸びるトータル・リコール』『キャノンズ』のロニー・コックス、凄味のある顔と裏腹に声が甲高いカートウッド・スミス、何年経っても見る度に“ツイン・ピークス”の口が悪いアルバートを思い出しちゃうミゲル・ファーラー、同様に何年経ってもキラーボブにしか見えないヒューマン・キャッチャー/JEEPERS CREEPERS 2』『消えた天使』のレイ・ワイズらと、凄まじい顔ぶれが出演している本作だが、なんと言っても一番の注目株は、やはり『スターシップ・トゥルーパーズ2』のフィル・ティペットによるED‐209
ロボット警官計画としては、コストパフォーマンスも機能性も倫理面の問題も、それこそ見た目の迫力も、何処をどう考えてもロボコップよりも優れているとしか思えないのに、うっかりオムニ社の社員を一人殺しちゃったんで不採用となってしまった、とっても不憫なED‐209。階段を前に躊躇する様が可愛い、ED‐209。転んだら起き上がれず、駄々をこねる子供のように暴れる様が可愛い、ED‐209。そのあまりの可愛さに、ED萌え続出。本当に続出したかどうかは分かりませんが、私の周りで2人はいるので、もう続出だと。
そんなこんなで、何度観ても面白い作品であるのには変わりないので、問答無用にこの評価。

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MGMと共に、新作の話も消えちゃうんですかねぇ

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2010年11月14日

レポゼッション・メン (Repo Men)

監督 ミゲル・サポチニク 主演 ジュード・ロウ
2010年 アメリカ映画 119分 SF 採点★★

「レポマンの人生は緊張だ!」の名セリフにシビレた『レポマン』とは、全く関係ないんですねぇ。車のトランクに、宇宙人の死体が入ってるわけでもないんですねぇ。残念

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【ストーリー】
人工臓器が格段と進歩した近未来。高額な人工臓器の支払いが滞ってしまった顧客から、問答無用で人工臓器を回収する“レポマン”のレミー。相棒ジェイクと共に、片っ端にローン滞納者から回収しまくるレミーだったが、事故により彼自身も人工心臓を取り付けることに。そして支払いが滞り、彼自身が追われることに…。

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新鋭ミゲル・サポクニック監督による、ミイラ取りがミイラになるようなSFサスペンス。アンレイテッド版とやらで観賞。
『ブレードランナー』や『未来世紀ブラジル』を彷彿させる、表向きの煌びやかさとは裏腹に、荒廃したスラムが裾野に広がる大都市を舞台に描かれる本作。行き過ぎた資本主義への警鐘や、敷かれたレールやシステムへの依存に警告を与えているような物語なのだが、どうにも描き方が雑。巨大企業である“ユニオン”がどのくらいの影響と反響を与えているのか、主人公と家族の関係、経済破綻した国家の日常など、世界観を膨らませる描写にも乏しい。痛烈なブラックコメディの一面も併せ持っているのだが、その辺も上手く描き切れていないせいか、ほとんどギャグになっているクライマックスのアクションシーンの立ち位置もアヤフヤな感じに。その風刺がもっと効いていれば、“システム内での殺人はOKだけど、それ以外は犯罪”に対するバカバカしさも際立ったんでしょうが、どうにも無造作に人が死んでいく印象も。事前にあからさまな前フリがされているオチの捻りも、主人公が追われる身となる内幕も、物語としてはチョイと弱い。
まぁ、不満のほとんどが好みの問題が大きいんでしょうけど、内容があまりに世知辛過ぎて気分が乗らなかったってのも大きい。

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髪型は潔いが、その行動は往生際の悪い主人公に扮するのは、『シャーロック・ホームズ』のジュード・ロウ。相変わらず眉から下は男前。主人公が家庭人としてはどんな人なのかさっぱり分からない難点もありましたが、命の危機に直結する支払期限までを漫然と過ごしていたり、ギャンブルで一発逆転を狙ってみたりする様に、夢も希望もないリアルさを感じたりも。
ブラックブック』でクラシカルな美しさだけではなく、複雑な内面も見事に表現したカリス・ファン・ハウテンが、何を考えているのか良く分からない奥さん役だったり、『ファントム』のリーヴ・シュレイバーが“中間管理職A”に収まっちゃってたり、アンクレジットのカメオとはいえ『ボーダー』『ハプニング』のジョン・レグイザモが“スラムの住人A”に収まってたりと、人物の扱いも雑な印象があった本作。ただ、ほとんど活躍がサイボーグのそれに近かった『プレデターズ』のアリシー・ブラガと、愛情表現がほとんどストーカーの域に達してた気もした『バンテージ・ポイント』のフォレスト・ウィッテカーは、キャラとして印象に残る。

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ずっと一緒に居たい。ハートも独り占めしたい。

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タグ:★★ SF
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2010年11月04日

ラスト・ボーイスカウト (The Last Boy Scout)

監督 トニー・スコット 主演 ブルース・ウィリス
1991年 アメリカ映画 105分 アクション 採点★★★

子供の頃、小学校の校庭で楽しそうに野球に興じる姿と、子供心にはカッコ良く見えたユニフォーム姿に見事に騙され、カブスカウトに入ってしまった私。そこからズルズルとボーイスカウトまで続けてたんですが、楽しそうに野球をやってたのはたまたまその日くらいで、あとは延々とロープ結びやら手旗信号やらと、いつそんなスキルが役に立つのか分からない上に、役に立ったら立ったで、そもそもそんなスキルが役に立つ状況にいたくないってものばかり。まぁ、楽しかったは楽しかったですが、今の自分にそれが何を残したかと言われれば、さぁ。

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【ストーリー】
かつては大統領の命も救ったこともあるシークレット・サービスだったが、今ではしがない私立探偵に身を落としたジョー。そんな彼のもとに、あるストリッパー、コリーの身辺警護の依頼が入る。しかし、彼女は何者かによって殺されてしまう。ジョーとコリーの彼氏で元花形フットボール選手だったジミーは事件の真相を調べ始めるが、その背後に政界も絡む巨大な陰謀が隠されており…。

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観ている最中は確かに面白いのだが、劇場を後にした途端、頭の中からきれいに消え去っていくような作品を連発していた頃のトニー・スコット監督による、ハードボイルド・アクション。
共に華々しいキャリアを持ちながら、今ではその全てを失ってしまった男たちの戦いを、ハードボイルドタッチで描く本作。一つの殺人事件から巨大な利権が絡む陰謀が明らかになる探偵ものの面白さと、バディ映画の面白さを兼ね備えた物語を、歯切れの良い展開と派手なアクションできっちりとまとめ上げた、『デジャヴ』のトニー・スコットらしい作品に仕上がっている。短い時間ながらも、主人公の崩壊寸前の家庭状況や、人物関係図なども分かりやすく描かれており、小手先の技術と勢いだけに任せたって印象はない。まぁその辺は、シェーン・ブラックの脚本に因るものが大きいのかも。
惜しむべくは、ユーモアの欠如。どうにもトニー・スコットの苦手分野なのか、本来もう少し面白くなりそうな会話の妙や状況が、イマイチ活かされていない感じも。その辺が弾けてれば、同じシェーン・ブラックの『キスキス,バンバン -L.A.的殺人事件』のような、一癖も二癖もある面白い作品になったような気もするし、主人公と妻とがクライマックスに交わすいかした会話も、更にしびれるものになったのかなぁと。

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『ダイ・ハード』でブレイクしたはいいが、それ以降迷走を続けていたブルース・ウィリスが、再びアクションに挑戦した本作。ただ、むやみやたらと強い単純なアクションヒーローではなく、“とても強そうには見えないが、やる時は結構やる男”ってキャラを演じるってのが、非常にブルース・ウィリスらしい。実際、ブルース・ウィリス主演で“ダイ・ハード”シリーズ以外のアクション映画らしいアクション映画って、数えるほどくらいしかないですし。アクションスターが勢揃いした『エクスペンダブルズ』でも、他のアクションスターとは微妙に違う立ち位置にいたのも、その辺に起因するのかも。
共演に、“最終絶叫シリーズ”で日本でもお馴染のウェイアンズ兄弟の、わらわら居る内の一人デイモン・ウェイアンズに、『ハーレーダビッドソン&マルボロマン』のチェルシー・フィールド、『デイライト』のダニエル・ハリスらと、如何せん20年も前の作品ということもあってか最近あまり見かけない顔ぶれが揃っているのだが、その中に、この20年でみるみる出世した『X-MEN:ファイナル ディシジョン』のハル・ベリーの姿が。お世辞にも上手いとは言えぬセリフ回しとぎこちない演技に驚いたが、その後『パーフェクト・ストレンジャー』でブルース・ウィリスと肩を並べるまでになったことを考えると、なんとも感慨深い。同様に、本作にちょろっと顔を出し、一瞬大ブレイクを果たした後に、今では立派な大阪人となったビリー隊長のことも、考えるとハル・ベリーとは別の意味で感慨深いなぁと。

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こっから成功を手にしたのも凄いが、この時点での地位を維持し続けているのも凄い

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2010年09月24日

レギオン (Legion)

監督 スコット・スチュワート 主演 ポール・ベタニー
2010年 アメリカ映画 100分 ホラー 採点★★

可愛い羽根パタパタさせて気楽そうに見える天使も、結構大変なんですねぇ。戦わせられたり、伝言届けに行かされたりと、気まぐれな神さまの使いっぱしりに奔走する毎日のようで。「天使のような人だ」ってのは、つまり便利な奴ってことなんですね。

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【ストーリー】
荒野に建つ一軒のダイナーにやって来た老婆が突如悪鬼に変貌し、店内の客を襲い始める。老婆を撃退したものの、外界からの情報を全て断たれた彼らは混乱するばかり。そこへ、大量の武器を抱えた男がやって来る。彼は、大天使ミカエル。人類を滅亡させようとする神が送り出した天使軍団と戦うために、神の命に背きやって来たのだが…。

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スーパーマン リターンズ』や『ナイト ミュージアム』など、多数の映画に視覚効果マンとして携わってきたスコット・スチュワートの長編デビュー作となるホラーアクション。
『ターミネーター』+『ドーン・オブ・ザ・デッド』+『ドグマ』−ジェイ&サイレントボブみたいな一本。人類を滅ぼそうとするのが悪魔ではなく神と天使であり、その神に反旗を翻した大天使が人類を守るために戦うっていう設定が燃える本作。それだけではなく、退路を断たれた一軒家での篭城劇や、人類を導く運命を背負った子供の誕生(しかもクリスマスに)、大天使同士の決闘と、これでもかって程面白くなりそうな要素がてんこ盛り。もう、文字を見てるだけでも燃え上がる本作なのだが、実際観てみるとビックリするくらい燃え上がらない。『ゴッド・アーミー/悪の天使』のように、その作品の色となる風味があれば面白くもなるのだが、本作にはその風味がない。無味無臭。なんと言うか、脚本をそのまんま映像にして、足りない部分やト書きの部分を台詞で済ませたかのような感じ。それか、永井豪の風味をごっそり削ぎ取った、絵だけは上手いデビルマンを読んでるような感じ。

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大天使ミカエルに扮するのは、『ファイヤーウォール』『キス★キス★バン★バン』のポール・ベタニー。受け手の取り方次第で、善にも悪にもなり得るその風貌は、確かに本作のミカエルにうってつけ。まぁ、個人的に“天使”で“マイケル”とくれば、くわえ煙草に無駄毛だらけの太ったアイツが真っ先に浮かぶんですが、このマイケルもいい。
その他、『ジャーヘッド』のルーカス・ブラックや、『トランスフォーマー』『フォー・ブラザーズ/狼たちの誓い』のタイリース・ギブソン、ハリソン・フォードの失速後、見事にそのポジションを勝ち取った感のある『バンテージ・ポイント』『アメリカン・ドリームズ』のデニス・クエイドと、なかなかの顔ぶれが揃っているのだが、“その他”の範疇に収まってしまっているのが惜しい。
まぁ勝手な思い込みながらも、『コンスタンティン』のティルダ・スウィントンのような中性的な優男のイメージがあった大天使ガブリエルを、なんともごっつい『バタフライ・エフェクト』のケヴィン・デュランドが扮していたのは、ちょっとばかし新鮮でしたが。ちょっとだけ。

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天使のような微笑み

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タグ:★★ ホラー
posted by たお at 01:55 | Comment(6) | TrackBack(12) | 前にも観たアレ■ら行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月12日

ラブリーボーン (The Lovely Bones)

監督 ピーター・ジャクソン 主演 マーク・ウォールバーグ
2009年 アメリカ/イギリス/ニュージーランド映画 135分 ドラマ 採点★★★★

こんな所で自分の政治的思想を書くのもアレな気もしますが、個人的には死刑制度に反対していない私。もちろん、“犯罪抑止力としてのうんぬんかんぬん”なんて信じていません。死刑があっても凶悪犯罪は減る気配がないし、逆に死刑があるから凶悪犯罪がなくならないって理論も成り立たない。もう、あくまで私の感情論としての意見。それ以外のなに物でもない。犯罪者に憤り、「100%同じ目に遭わせてやりたい。それが出来ないのなら死刑」と。遺された者、去った者にとって本当に必要な事、望んでいる事なんて考えもせず、感情が先走っているってのは知っているのですが。

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【ストーリー】
14歳の若さで無残に殺されてしまった少女スージー。彼女の魂は、あの世とこの世の狭間に留まり、事件によってバラバラになっていく家族の姿を見つめ続けていたのだが…。

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“ロード・オブ・ザ・リング”シリーズ、『キング・コング』のピーター・ジャクソンによる、ファンタジードラマ。
“愛する人の為に本当にすべきこととは?”というテーマを、幻想的な映像とそれを引き立てるブライアン・イーノの音楽で描いた本作。
スノードームを見つめる少女、ボトルシップ作りを愛する父親、そしてミニチュアハウス作りに没頭する殺人者。それぞれが、その愛する物を小さな“完璧な世界”に閉じ込めている。平和で安全だが、互いを縛り付け合い飛び立つことのできない世界に。
本作は勧善懲悪の物語ではない。無論、復讐の物語でもない。当然のようにそれを期待する観客を大いにスカすクライマックスからも顕著なように、本作は殺された少女が、噛み砕いて言えば成仏するまで、遺された家族が前へ進む一歩を踏み出すまでを描いた作品。苦悩ばかりが2時間も描かれる本作に、劇的に悪が罰せられる描写でもあれば無論観客の溜飲は下がるだろうが、それではテーマが大きくブレてしまう。非常にリスキーながらも、そのテーマを強調すべく、原作とは異なり遺棄のシーンをわざわざクライマックスに持ってくることにも顕著なように、観客の期待をスカし続け気付かせようとするその姿勢を貫いたのは、立派。どんな結末を迎えようと、残された家族が胸にモヤモヤを抱え続けるのには変わらないし、それでも前へ進んでいこうとする想いを伝えるためには、この方法は正しい。
スージーの悔いや憎しみは家族を縛り付けてしまうし、その逆も然り。もう戻る事が出来ないスージーが本当に望んでいる事は、遺体が見つかる事でも、犯人が逮捕され罰せられることでもなく、愛する家族に笑顔が戻る事、そして忘れられないくらい素晴らしいキスを経験することなのだから。鬼畜以外のない者でもない殺人者の末路に食い足りなさを感じる方も多いだろうが、本作の世界に則って考えれば、死んでからが更に大変だろうと。個人的にこの顛末すらいらない気もするが、流石にテストでは不評だったらしく、急遽付け足したとか。

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愛娘の死から立ち直れず犯人捜しに没頭する父親に扮した、『ザ・シューター/極大射程』『ハプニング』のマーク・ウォールバーグ、愛娘の死を頭では理解しているが、それを身体が拒み続ける母親に扮した、『コンスタンティン』『ナイロビの蜂』のレイチェル・ワイズ、そのキャリアに大ダメージを与えかねない鬼畜役を熱演した『ラッキーナンバー7』のスタンリー・トゥッチらも見事なのだが、やはり作品の顔を決定づけさせたシアーシャ・ローナンが圧倒的に素晴らしい。
大人になり始める一歩を踏み出すその一瞬を切り取ったかのような不安定で危うげな雰囲気も然り、70年代ファッションがバッチリと決まるスタイルといい、違う世界を見透かしてそうな青い目といい、幻想的な映像が見事にハマるファンタジー顔といい、まるで本作の為だけに出てきたような感じ。まぁ如何せん成長期なだけに、次に見る時にはビックリするくらい変貌してそうですが。
惜しむべくは美味しいキャラクターながらも、一歩下がったまま出てこなかった印象があった『告発のとき』『ザ・クライアント/依頼人』のスーザン・サランドン。そのサイケな生き様をもうちょっと堪能したかった気もするが、まぁバランス的にしょうがないのかなと。

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自分にとっての幸せ

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2010年08月10日

恋愛ルーキーズ (School for Scoundrels)

監督 トッド・フィリップス 主演 ジョン・ヘダー
2006年 アメリカ映画 101分 コメディ 採点★★★

本屋に行くと、ずらずらと並んでますねぇ自己啓発本。手に取ったことすらないのでよく分かりませんが、立派な事がいっぱい書いてあるんでしょうねぇ。経営セミナーとかも似たようなものらしく、なんか立派な事を言ってるそうです。行って来たらしい上司とかが、前日まで言った事がないような立派な事を熱く語り始めたりしますから。大体、一ヶ月くらいは。まぁ、私みたいな人間こそがそんな本読んだり、セミナー行ったりした方がいいんでしょうが、如何せん立派な事ばかり言う人間が信用できないんで、興味がわかない。そもそも、モットーが“困った時は自分を信じる”なんで。

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【ストーリー】
気が弱く、何をやっても上手くいかないロジャー。そんな彼を見かねた知り合いの紹介で、とある自己啓発セミナーに参加することとなったロジャー。鬼講師の教えで順調に男らしさを増してゆくロジャーだったが…。

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日本では長らく日の目を見てなかったが、『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』の話題もあってかようやくDVDが発売された、『スタスキー&ハッチ』『ロード・トリップ』のトッド・フィリップスによるコメディ。1960年に製作された同名映画のリメイクのようだが、元を知らないのでその辺はまぁ。
作りはコメディなのだが、もはやカルト集団にしか見えない自己啓発セミナーの講師と信奉者たちに主人公が陥れられていく様は、すっかりホラー。大いに笑って観てるが、自分の身に降りかかる事を考えると、これはかなり怖い。弱者が強者を打ち負かす爽快感も、そこに至るまでの間に充分取り返しがつかないほど打ち負かされちゃってるんで、然程なく。なんか、両者痛み分け。
とはいえ、キャラクターの持ち味を存分に活かした笑いを生みだすのが上手い監督だけあって、無茶なフリを必要とすることなく、その場の流れから精度の高い笑いをポンと入れてくるのは、流石。

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元々『がんばれ!ベアーズ ニュー・シーズン』のビリー・ボブ・ソーントンが苦手な上に、出来れば関わりたくないキャラクターを演じているので、本能的に「この映画怖い!」と感じちゃったのだが、そういった意味では、本作のビリー・ボブは完璧。完全なる嫌な奴。会ったその瞬間に、頭の中の嫌な思い出でギューギューとなった“イヤ箱”の奥底にしまいたくなるような奴。
一方、『がんばれ!ベンチウォーマーズ』『恋人はゴースト』のジョン・ヘダーは良い。何もかにもが相変わらずなのだが、その相変わらずの部分が最高なんだから、良い。にしても、出る作品出る作品日本未公開が続くジョン・ヘダー。もはや、日本未公開になった映画のことを「ヘダる」と呼んでもいいほど、日本未公開の代名詞みたいになってきましたねぇ。日本に住んでた事があるにもかかわらず、この冷遇。日本にいた頃、なんかしでかしたんですか?
そんな2人の他に、『ポセイドン』のジャシンダ・バレット、『燃えよ!ピンポン』『ファンボーイズ』のダン・フォグラー、『タラデガ・ナイト オーバルの狼』のマイケル・クラーク・ダンカン、『ローグ アサシン』のルイス・ガスマンといった独特な顔ぶれが、基本的にオーソドックスなコメディである本作に“ただ事じゃない”雰囲気を与えているのだが、そこにとどめをさすのが『ナイト ミュージアム2』のベン・スティラー。拘束時間が2日だったそうだが、その2日間で思う存分やり尽くしたかのような存在感を示し、やや弛み掛けた終盤を一気に締める。その辺も含め、★オマケ気味。

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他の男にも興味を持たれた時点で、もう負けてる気が

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2010年07月23日

ROCKER 40歳のロック☆デビュー (The Rocker)

監督 ピーター・カッタネオ 主演 レイン・ウィルソン
2008年 アメリカ映画 103分 コメディ 採点★★★★

もうかれこれ20年近くも前になっちゃうんだけど、バンド活動に勤しみまくっていた私。そこそこの会場で、そこそこのライブをやっていただけにもかかわらず、「コレで食っていけんじゃね?」と甘い夢を見ていたもので。無論甘い夢のままで終わって、徐々にバンド活動からも離れ現在に至るんですが、未だに「バンドやりてぇなぁ」と思う事も多々。ただまぁ、この歳になっちゃうと、若い連中に混ざれば「ロックを頭で考えるんじゃねぇ!」って怒鳴ってしまいそうだし、同世代で集まれば「何でやる曲まで歳に合わせなきゃなんねぇんだ?」と絡んでしまいそう。あぁ、どっかに都合のいいバンドメンバーいないかなぁ?

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【ストーリー】
20年前、メジャーデビュー直前にバンドをクビになってしまった、ドラマーのフィッシュ。かつての仲間たちが世界的スターとなっていく一方、フィッシュは職も家も失いどん底に。そんな折、急遽ドラマーが必要となった甥のバンドに加入したフィッシュの映像が動画サイトで話題となり、それをきっかけに念願だったデビューを飾るのだが…。

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ビートルズからデビュー直前に追い出されたドラマー、ピート・ベストの物語をざっくりとベースにした、『フル・モンティ』のピーター・カッタネオ監督、『ナイト ミュージアム2』のショーン・レヴィ製作によるコメディ。
ふと『ガレージ・デイズ』も思い出してしまうが、大人になりきれないと言うか、なることを拒否している主人公や、登場している顔ぶれに、ほんのりとアパトーギャングの作品の香りもする本作。かと言って、ジャド・アパトー絡みの作品のように観終わった後に「あぁ、俺もそろそろしっかりしなきゃなぁ」と思うようになるかと言えば、そんなことは全くないあっさりとした作り。
多少の浮き沈みはあるものの、基本的に主人公らが順風満帆のまま終わる本作。ダメ男の再起物語としてもロック映画としても、定番内にキッチリと収まってしまう、非常におとなしい出来。ただ、その物語の土台が安定しているからこそ、世代によるロック感の相違を中心とした笑いの数々に高い瞬発力が生まれ、結果、小気味良く笑っているうちに作品が終る軽快なスピード感が生まれることに。
確かに当たり障りのない作品ではあるが、バンドの中心メンバーとしても出演しているテディ・ガイガーによる楽曲も思いのほか良いし、一時甘い夢を見ていた私のような人間にとって、ファンタジーのまま終わる本作は、まるで一服の清涼剤のような感触だったので、甘めの評価。

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全身からダメ中年臭を漂わせるフィッシュ演じるのは、『サハラ 死の砂漠を脱出せよ』『Gガール 破壊的な彼女』のレイン・ウィルソン。あっさりとコッテリを混ぜ込んだ笑いで、存分に打ちのめしてくれるのだが、一旦中川家礼二に見え始めると、顔ばかりか声まで中川家礼二に聞こえてしまうことも。TV放映の際は、是非吹替えをお願いしたい。
そのほか、『スーパーバッド 童貞ウォーズ』からそのまんま出てきたかのようなエマ・ストーンや、今回は随分とおとなしい『40歳の童貞男』のジェーン・リンチらが、本作にほんのりとアパトー風味を加える一方、ピート・ベスト本人もこっそりと登場。
かなりのつわものママを演じていた、『ビッグ・ヒット』『俺たちニュースキャスター』のクリスティナ・アップルゲイト。見た目こそなんか“量産型ジェニファー・アニストン”みたいになってましたが、そんな風貌とは裏腹に、「昔パンクバンドやってたのー」っていう劇中での台詞同様、実際にパンクス上がりなんですねぇ。これまた劇中同様ギターヒーローが大好きらしく、やり過ぎて腱鞘炎になったとか。筋金入りですねぇ。

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この構成だと、高確率で男女関係で揉めるよ

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posted by たお at 02:51 | Comment(6) | TrackBack(2) | 前にも観たアレ■ら行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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