2016年05月03日

SEXテープ (Sex Tape)

監督 ジェイク・カスダン 主演 キャメロン・ディアス
2014年 アメリカ映画 94分 コメディ 採点★★

セックスレス対策なのかは知りませんけど、“ヤル日”ってのを決めてる方々も少なくないとか。なんか、それはヤダなぁ。スケジュールに組まれちゃうと、途端に楽しくなくなってくる感じがしちゃって萎えますし。自発的にするお手伝いはそこそこ楽しいけど、言われてからするお手伝いは苦痛なだけみたいな。

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【ストーリー】
仕事と子育てに充実した日々を送る一方で、いつの間にかセックスレスに陥っていたアニーとジェイの夫婦は、打開策として二人のセックスを撮影してみることに。しかし、その動画がジェイのiPadと同期された知人らのiPadでも閲覧可能となってしまい・・・。

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娯楽映画のなんたるかを知り尽くしたローレンス・カスダンを父に持ち、ジャド・アパトーのもとで『ウォーク・ハード ロックへの階段』という傑作を作り上げたジェイク・カスダンが監督を務め、『寝取られ男のラブ♂バカンス』の黄金コンビであるニコラス・ストーラーと主演も務めるジェイソン・シーゲルが脚本に携わっているんだから、評判の悪さは耳に入っていましたがエロコメ好きの私なんで十分楽しめると思ってたのに………これがビックリするほど楽しめない
恋人同士が夫と妻の関係になり、やがてパパとママの関係になる。題材としては中年期の変化や危機を描くお馴染みのものに、“H動画流出”って変化球を加えた本作。普通に考えればそこそこ面白くなりそうなもんなんですけど、ただただ「セックスしよー!セックスしよー!」と喚いてるだけの夫婦の姿を延々見せつけられ、ようやく本題に入ったと思えば流出と言っても非常に限定的なものなので、適当に見つくろった理由で事態を収拾できそうなものを支離滅裂な言動と展開で無理やり大事にし、いい加減こっちもその物語に付き合うのが苦痛になって来た頃になって唐突に“良い話”でまとめようとする、ただただ苦笑いしか浮かばない90分。敢えて笑いをスカさせる狙いがあるのなら救いがあるんですけど、どうもそうじゃないってのも救いようなし。

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ナイト&デイ』のキャメロン・ディアスとの共演に気合が入り過ぎちゃったのか、ジェイソン・シーゲルにいつもの自然体ならではの面白さがなく、どこか全力で台詞を“読んでる”感じがしたってたのも痛恨だった本作。良い人さは伝わってくるんですけど、絶妙なだらしなさやそこから来る苛立たしさ、でもやっぱり許せちゃうっていう本来の持ち味が活かされてなかったなぁと。
ただまぁ、もちろんバストトップは見せないもののキャメロンはスッポンポンで奮闘してくれてましたし、若づくりのお爺ちゃんみたいになってて驚いた、自身もセックステープ絡みで散々な目に遭った経験を持つ『ウソから始まる恋と仕事の成功術』のロブ・ロウや、ノンクレジットでの出演となる『ザ・マペッツ』のジャック・ブラック、『オフロでGO!!!!! タイムマシンはジェット式』のロブ・コードリーに、『伝説のロックスター再生計画!』のエリー・ケンパーといった、ちょっと得した気分になれる顔触れが揃ってたんでこれでも採点は甘めに。

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この映画自体が消し去りたい代物なのでは

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2016年05月01日

グッドナイト・マミー (Ich seh ich seh)

監督 ヴェロニカ・フランツ/ゼヴリン・フィアラ 主演 エリアス&ルーカス・シュヴァルツ
2014年 オーストリア映画 99分 ホラー 採点★★★

うちの子供らが歳も性格もバラッバラなもんでちょっと分からないんですけど、やっぱり双子って顔も性格もそっくりなもんなんですかねぇ。想像すると単純に「わぁカワイイ!」ってなるんですけど、中学生にもなって「足が速くなるらしい!」と、一日中外で友達とケンケンパをし続けるうちの長男みたいなアホが2人いると思うと、ちょっと荷が重いなぁ。で、声変わりして無精ひげなんか生やしたむさ苦しい野郎なんかに成長しちゃったら、なんかもう手一杯。双子うんぬん以前に、アホは一家に一人で十分

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【ストーリー】
人里離れた豪邸で母親の帰りを待つ9歳になる双子の兄弟。しかし、帰って来た母親は整形手術を受け顔全体を包帯で覆われた姿であった。その日以来別人のように冷たくなった母親に対し、兄弟らは何者かが母親のフリをしているのではと疑念を感じ始める。そして彼らは母親の正体を暴こうと行動に出るのだったが・・・。

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予告編がスゲェ怖いってので話題となった、オーストリア産のサイコスリラー。“パラダイス3部作”の脚本を手掛けたヴェロニカ・フランツがゼヴリン・フィアラと共に脚本/監督を。そのまま役名にもなった双子の兄弟エリアス&ルーカス・シュヴァルツと、パッと見美人なんだけどよく見るとジョン・マルコヴィッチにも見えてくるズザンネ・ヴーストらが出演。
端から隠すつもりがないのか結構大きめのネタが開始早々割れるので、ここでもネタバレ方向で。
予告編を観る限りは母親が“悪”で子供らが犠牲者って感じでしたが、その予告編自体が一種のミスリードでもあった本作。ザックリと言えば、現代版『悪を呼ぶ少年』みたいな感じ。
母親が本物じゃないと信じてしまう子供と、子供に信じてもらえない母親という、一つの恐怖を両面から描いた本作。自分の心と体の半分を失ったのと同様の悲劇と罪悪感に押しつぶされるエリアスが、そこから逃れる手段として生み出したかのような“ルーカス”。その悲劇から早く立ち直りたい、また私の憶測ではあるんですが、その状況から逃げ出し(若い女のもとにでも)去って行った夫への決別の意味も含め整形を施した母親。決して多弁ではないが、惨劇に至るまでの精神状態も含めた状況描写の積み重ねも効果を上げている。
ただ、物語で怖がらせようってのよりも、子供ならではの悪意なき残虐性の矛先が母親に向かう倫理的不快感を追求したって感じが強い印象も。好きか嫌いかはさて置いて、子を持つ親としては物凄い不快感を感じたって意味ではその目的を達した作品なんでしょうから、オマケ気味のこの評価で。

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親の心子知らず

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2016年04月30日

Re:LIFE〜リライフ〜 (The Rewrite)

監督 マーク・ローレンス 主演 ヒュー・グラント
2014年 アメリカ映画 107分 コメディ 採点★★★★

ちょこちょこ転職を経験している私ですけど、振り返ってみるとアルバイトを除けば二つの職種しか経験したことがないんですよねぇ。その二つも、ざっくりと括れば似たような仕事ですし。これだけ経験が偏っちゃってると、さすがに何か新たな職種に挑戦しようって気もなかなか起きず。まぁ、挑戦された側にしてもこんなオッサンに一から教えるのは大変でしょうしねぇ。

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【ストーリー】
かつてアカデミー賞も獲得した脚本家のキースだったが、その後15年間は鳴かず飛ばずでハリウッドからもお呼びがかからなくなっていた。そんな折、エージェントから田舎の大学でシナリオの書き方を教える講師の仕事を紹介される。渋々その仕事を受けたキースだったが、全くやる気は起きず・・・。

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『トゥー・ウィークス・ノーティス』から4度目の組合せとなる、マーク・ローレンスが脚本と監督を手掛け、ヒュー・グラントが主演して贈るコメディドラマ。
最終着地点が恋の成就と人生の再起動とテーマが全く違うのだが、ざっくりと表面的な印象だけで見れば『ラブソングができるまで』の脚本家版な本作。主人公が過去の栄光を引きずってるってのも、業界の内幕ネタで楽しませてくれるってのもほぼ一緒。前途洋々の若者の姿にかつての自分を見出し、過去の自分を追いかけず今の自分で人生を歩む決意をする物語も、大きな起伏も特にないまま予定調和的にさらりと嫌みなく収束する、深く考えずにサクっと楽しむ分には丁度いい一本でも。
そんな「まぁ、こんなもんだよな」的作品に★4つってのは大盤振る舞いな気もするが、評価を上乗せしたくなるほど『コードネーム U.N.C.L.E.』のヒュー・グラントが素晴らしい。何処に居ても常に居心地が悪そうで、相手と目をしっかりと合わせない自信の無さと自虐的な眼差しをしながらも基本的には軽薄な女好き。現状を毒づきながらもそれなりに満喫し、イギリスなまりで余計なひと言を言ってしまいばつの悪い思いをする。還暦が目の前に迫っているとは思えない、もうこっちの期待通りのヒュー。そんなヒューを観たいが為だけに本作を手に取ったのだし、その期待を十分過ぎるほど叶えてくれているので、わたし的にはこの評価は妥当。

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もちろんヒューだけが良かったのなら過大評価になるが、今回は相方も素晴らしい。さすがのヒュー・グラントもそれなりに年齢を感じさせるようになったので、相方が若い娘だと非現実的だしバランスも悪い。かと言って、年齢的にバランスを取っても相性が悪いと前回の『噂のモーガン夫妻』みたいな悲惨な結果に。
そういった意味では、今回手を組んだ『リンカーン弁護士』のマリサ・トメイは完璧な相方。さばさばして男性に依存し過ぎないがドライ過ぎず程よくウェットなのでロマンスを物語に生み出せるが、そこに中年同士の恋愛に漂いがちな目も当てられない痛々しさがない。明るく前向きで包容力もある、母親としても恋人としても文句のつけようがない本作のマリサ・トメイは、性格や口角の向きまで色々と正反対のヒュー・グラントと見事なコンビネーションを披露。まぁ、私がもともと好きだってのも大きいんですけど、相も変わらずチャーミングの塊のような彼女に完全にメロメロ。この組合せであと5本は観たい。
そんなヒューとマリサ・トメイに目を奪われがちな作品ではありましたが、マリサ・トメイのケースとは別の意味でヒューとは正反対過ぎて面白味を生んでいたアリソン・ジャネイや、そんな彼女とは『JUNO/ジュノ』でも共演済みである『ターミネーター:新起動/ジェニシス』のJ・K・シモンズら大人勢はもちろんのこと、地雷感がハンパなかったベラ・ヒースコートや「『ダーティ・ダンシング』の良さに気付いて良かったね!」なアニー・Q、アホな子ならではの可愛げに溢れてたエミリー・モーデンら、顔で選んだお飾りでしかなさそうでいて、それぞれが対極に居て物語に刺激を与えていた学生らも魅力的だった一本で。

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こんな生徒がいるなら仕事も楽しくなるはずだよなぁ

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2016年04月28日

死の恋人ニーナ (Nina Forever)

監督 クリス・ブレイン/ベン・ブレイン 主演 アビゲイル・ハーディンガム
2015年 イギリス映画 98分 ホラー 採点★★★

時に恋愛なんかでそうなんですけど、“忘れたい思い出”ってのは“忘れたくない思い出”と密接に絡み合ってるので、頑張って忘れようにも思い出させるきっかけがアチコチにあり過ぎてそうもいかないんですよねぇ。何をしてても思い出す。新しい恋でも始めて無理やり思い出を上書きするのもいいですけど、思い出す度に大声を上げたくなる衝動と時間を掛けて付き合って、徐々に薄れていくのを待つのが一番確実だったりも。

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【ストーリー】
大学で救急救命士の勉強をするホリーは、バイト先のスーパーで恋人のニーナを事故で失ったロブと出会う。その悲しみから立ち直れない暗くナイーヴなロブに惹かれたホリーは彼を元気づけるために近付き、やがて二人はベッドを共にする。しかしそんな時、突如ベッドの中から血塗れのニーナが現れ・・・。

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劇長編デビューとなるクリス&ベン・ブレイン兄弟が手掛けた、ホラー・ラブストーリーのコメディ和え。
Hの最中に死んだ元カノが血塗れで現れるから困っちゃうカップルの姿を、若干ウザっためのアート志向が前に出た温度の低い映像で収めた本作。「メキメキッ!ゴキゴキッ!」と『呪怨』の伽椰子ばりに登場するニーナのインパクトに少々邪魔されているが、意外と恋愛の本質的な部分を捉えていたりして驚かされた一本でも。
普通に見えるけど実はちょっと変わった娘というよりも、“普通”と言われることを嫌い敢えて変わった娘になろうとして背伸びしているようにも見える19歳のホリー、“死”と言う衝撃的な結末を迎えたこともあり元カノのことが忘れられず、ことあるごとに自殺衝動に駆られるナイーヴをこじらせたロブ、そして言ってることがいちいち正論のニーナと、三者三様微妙に異なるキャラクターを男兄弟が書いたとは思えぬ繊細さで描いた本作。背伸びして大人びようとするホリーと、そんなものは全て経験済みなだけに「はいはい、頑張ってるね」と達観して見ている一回り近く年上のニーナの関係性なんかも見事に収めていたなぁと。事態が面倒くさくなってくると途端に存在が空気になってくるロブの姿なんかもまさに。

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存在感があり過ぎる幽霊が出てくるのでホラーというスタイルを取っているが、過去を無理して受け入れようとしたり力ずくで打ち消そうとしたりと奮闘する恋人同士の姿を描いている、変化球のラブストーリーと言った方が良いのかと。いささか言葉足らずですんなり入ってはこないが、過去を引きずり過ぎている彼氏そのものではなく、“彼女が死んで落ち込んでいる男”という状況に惹かれ、知らず知らずのうちに自分がその過去に取りつかれてしまっていることが判明するストーリー展開も、随所に描かれた「あぁ、わかるなぁソレ!」的な笑いと共になかなか楽しめた作品でも。
どうも評判があまり芳しくないようなんですが、似たような題材を扱った『ライフ・アフター・ベス』よりも、恋愛や男女関係の捉え方や、ただでさえ“元カノ”(とそれに囚われてる男)ってのは面倒くさいのに、死んでるからさらに厄介なニーナの言動のずば抜けた面白さもあって、全然こっちの方が好き。

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生きていても太刀打ち出来そうになく

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2016年04月25日

クリード チャンプを継ぐ男 (Creed)

監督 ライアン・クーグラー 主演 マイケル・B・ジョーダン
2015年 アメリカ映画 133分 ドラマ 採点★★★

ランボー』をこよなく愛する私ですけど、じゃぁランボー関連で『ティーズル保安官の大冒険』とか『トラウトマン/最後の戦場』とか作られたら観たいかと言うと、ちょっと微妙。「ランボーも出るよ!」と言われれば少しそそられますが、こっちはランボーをメインで観たいんでやっぱり微妙。まぁ、それでもそのキャラクターに主人公としての存在感や魅力、説得力さえあれば問題ないんでしょうけどねぇ。

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【ストーリー】
かつてロッキーと死闘を繰り広げた、ライバルにして無二の親友であるアポロ・クリードの隠し子アドニス。施設を転々とする荒れた少年時代を過ごした彼だったが、アポロの妻メアリー・アンに養子として迎え入れられ、恵まれた環境の中立派な青年へと成長していた。しかし、ボクシングへの夢を諦められないアドニスは義母の反対を押し切り単身フィラデルフィアへと向かい、ロッキーにトレーナーを依頼するのだったが・・・。

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言わずと知れたロッキーの永遠のライバル、アポロ・クリードの息子を主人公に据えた“ロッキー”シリーズのスピンオフ。メガホンを握ったのは、自ら手掛けたこの脚本をスタローンに持ち込み直談判したという、本作が長編2作目になるライアン・クーグラー。
これまでのシリーズのほとんどでメガホンを握り、全ての作品の脚本も手掛けたスタローン。ロッキー像もその世界観も全てスタローン一人で築き上げたと言っても過言ではないのだが、本作は初めてスタローン以外の人間による脚本を映像化した一本。スタローンも共演しているとは言っても正直不安も大きかったのだが、そんな不安が杞憂に過ぎなかったほどロッキーの世界観を忠実に継承していたことにまず驚いた。人物像や作品の構造のみならず、街とその住人たちがチャンプを育て上げる、忘れられがちだが重要な要素までをも漏れずに継承。
また、主人公を置き換えただけのお手軽作品ではなく、主人公が偉大なるチャンプの愛人の子(しかも本妻に育てられる)というパンチの効いた生い立ち設定を持ち、その会ったこともない父親に対する愛憎交えた葛藤や、その名のために過剰に加護されたり比べられてしまう苦悩、認められたいという強い思いなど独自の物語も生み出している。そこに愛する家族を失い、自らも重病を患ってしまうロッキーが絡むことで、多層的で重厚なドラマも生まれていた。もちろん試合のシーンは白熱するし、お馴染みのシーンや曲が流れれば鳥肌が立つほど興奮もする。ファンなら喜ばないわけがない作りをしていた一本で。

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しかしながら、“ロッキー的な何か”はある程度楽しむことが出来たんですけど、それがこの映画そのものの面白さだったかと考えてしまうと、その辺は微妙な感じも。興奮もしたし感動もしたが、それは全てロッキーの遺産を利用したものに対してであって、アドニスが生み出したものに対してではなかったのかなと。ロッキーの存在が大前提のスピンオフとは言え、サイドにいるには存在感も役割も大き過ぎてロッキーがメインの物語が観たくなってしまうだけですし、それを求めるには微妙に役割が小さい。なんと言うか、ハンバーグが食べたいのに出てきたのがおからハンバーグだったみたいな。
また、アドニスが置かれた状況に対する葛藤や苦悩は確かに描かれてはいたが、それでも(本人は不本意ながらも)偉大な父親の名前と血を受け継ぎ、伝説的なチャンプをセコンドに付けそれらのおかげでプロ2戦目でしかないのに世界戦に挑戦できる主人公は、やはり恵まれ過ぎている印象は拭えず。これで対戦相手がバブリーな嫌な奴であったり戦闘サイボーグのような奴であれば多少バランスも取れたんでしょうが、ボクシングの世界でしか認めてもらえない荒くれという純ボクサーだっただけに、「やっぱりオレにはボクシングしかない!」って意気込みは立派ですが、豪邸で立派な義母に育てられ何不自由なく生活し、それなりに立派な会社内でも仕事を認められる主人公ではやはりバランスが悪い。意地悪な見方ではありますが、そんな主人公が自分の気持ちだけでフィラデルフィアに赴き、生活とトレーニングスタイルをロッキーに似せる様は、ワーキングクラス・ヒーローの衣を着たセレブに見えてしまう印象も。
素直に「ロッキーが戻って来た!わーい!」と喜んでいれば良かったんでしょうが、なまじロッキーに色々と寄せてしまってる分、この辺が気になってしまいイマイチ気持ちが入ってこなかった一本で。ま、私がへそ曲がりだからってのも大きいんでしょうけど。

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アドニスに扮したのは、『クロニクル』『ファンタスティック・フォー』のマイケル・B・ジョーダン。二日ほど前に本作を観たんですが、今となっては正直どんな人だったのやら。また、ロッキーとエイドリアンのドラマを模したんでしょうけど、ゴミ溜めの恋というか過酷な環境下におけるオアシスという物語上重要な位置づけにまでは至っていなかった恋模様の相手となる、『ストレンジャー・コール』のテッサ・トンプソンも印象がボンヤリ。
まぁそれもこれも、『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』『リベンジ・マッチ』のシルヴェスター・スタローンが素晴らし過ぎたからなんですけど。自身が作りだし長年演じてきたキャラクターだから素晴らしいのは当然とはいえ、家族を失い孤独に苛まれ、重病を患う老いたロッキーというより深まったキャラクターを、素朴で気の良い町の兄ちゃんって雰囲気を残しつつ哀愁を漂わせる見事な熱演を披露。肉体派アクションスターの宿命か演者として低く見られがちなスタローンだが、これまでもそうだったようにハマる役柄にはとことんハマる。アカデミーにもノミネートされ話題にもなりましたが、如何せん他のノミネートされた作品を観ていないので受賞を逃したことに関しては判断できず。ただ、もし逃した理由が「スタローンだし」とか「いつものロッキーだし新鮮味がぁ・・・」といった理由ならば、それこそそんな賞を相手にする必要なしかと。
その他、スタローンとは『ランボー 最後の戦場』でも共演済みであるグレアム・マクタヴィッシュや、重要度が高まったせいか、過去2度クリード夫人を演じたシルヴィア・ミールズからバトンタッチしたフィリシア・ラシャドらが共演。
それにしても、『ロッキー3』ではミッキー、『ロッキー4/炎の友情』ではアポロ、『ロッキー・ザ・ファイナル』では妻エイドリアンと、作品を重ねる度に誰かが死んでる感もあるシリーズですが、本作では遂にポーリーが死んじゃってた。不景気に打ちのめされたフィラデルフィアを象徴する人物とは言え、こっちが引いてしまうほどのダメ人間だったポーリー。でも、いざ出てこないと寂しいこと寂しいこと。ポーリーの存在がこんなにも大きかったことを痛感させられたことが、案外本作最大の収穫だったかも。

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死ぬにも死ねない

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2016年04月22日

ヴィジット (The Visit)

監督 M・ナイト・シャマラン 主演 オリヴィア・デヨング
2015年 アメリカ映画 94分 ホラー 採点★★★

随分と久しぶりに使うフレーズでございますが、シャマラニストのたおです。何気なく使ってたこの言葉がシャマラン映画を語る際に他所でもよく使われるようになっちゃいましたし、いつの間にか別の有名人が生み出した言葉のように言われ始めちゃったみたいだから、もう使うのやーめよっと。なんか恥ずかしい感じがしてきちゃいましたし、そもそも最近のシャマランをさっぱり追っかけてないエセシャマラニストなので。

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【ストーリー】
若い頃に実家を飛び出してから両親とは音信不通となっているシングルマザーに育てられた、ベッカとタイラーの仲良し姉弟。母が実家とのわだかまりを残しているので祖父母に会ったことの無い姉弟のもとに、祖父母から休暇を利用して遊びに来ないかとの誘いが。ドキュメンタリー作りに夢中のベッカはこの機会に家族の物語を作ろうと、タイラーと共にカメラ片手に一週間の予定でペンシルバニアへと向かうのだが・・・。

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『エアベンダー』『アフター・アース』と全く観る気にならない作品が続いていたので、私自身は『ハプニング』以来となるシャマランが脚本と監督を手掛けたホラーサスペンス。長編2作目となるオリヴィア・デヨングと、『アレクサンダーの、ヒドクて、ヒサンで、サイテー、サイアクな日』のエド・オクセンボウルドが主演を。あら、二人ともオーストラリア人。
家族の再生と赦し、過去から目を背けず克服する。また、農場の一軒家を舞台に分かりやすく散りばめられた伏線がクライマックスに活きてくる、とどのつまり『サイン』のセルフリメイクな趣が強かった本作。全裸の徘徊婆さんが夜中にドアをガリガリする、「なんか嫌なものを見てしまった!」って恐怖がこみ上げると同時に笑いもこみ上げてくるみたいな、なかなかそうとは受け止めきれないが実は全力で笑かしに掛かっている“シャマランギャグ”も豊富でしたし。怖さと優しさが混在したベッドサイドストーリーのような物語展開や、精神障害や痴呆といった現実問題にホンノリと超常現象的な香りを漂わせるのも非常にシャマランらしくて楽しめた一本。
しかしながら、老夫婦の秘密が明らかになるクライマックスからのダラダラ感は少々頂けず。今更な感じが拭えないPOVの手法にもこれといって工夫や絶対的な必然性を感じず。ただまぁ、かつてシャマラン作品のDVDにもれなく付いていたなんとも扱いに困る少年時代の自主製作映画からも伝わってくる、技術や才能なんかを問わない溢れんばかりの映画愛みたいなものもそのPOVの手法から伝わってくるし、謎やそのヒントの散りばめ方、その状況に姉弟を置くための仕掛けも結構細かく丁寧だったので採点は甘めに。

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注文の多い老夫婦

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2016年04月21日

グリーン・インフェルノ (The Green Inferno)

監督 イーライ・ロス 主演 ロレンツァ・イッツォ
2013年 アメリカ/チリ/カナダ映画 100分 ホラー 採点★★★

なにやら本作の予告編が劇場で流された際、観客が「不快だ!」とクレームを付けたせいで予告が差し替えになったとか。これがクレヨンしんちゃんとか妖怪ウォッチとかやってる際の予告編なら理屈はまだ分かるんですけど、どうやらそうでもなさげ。なんだい?もうこの国ではホラーは予告編ですら許されない存在になっちゃったのかい?自分が不快に思うものは全て“悪”なのかいと。かつて『食人族』が『E.T.』と興行成績を競い合った所と同じ国とは思えないほど、世の中は変わっちゃったんでしょうかねぇ。

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【ストーリー】
未開のジャングルに暮らす先住民ヤハ族を企業の開発工事から守る抗議活動に参加するため、活動家グループと共に南米ペルーへと赴いた女子大生のジャスティン。その活動は成功に終わり大きな成果と共に帰路に付く彼らだったが、乗り込んだセスナ機が墜落してしまい彼らはアマゾンのジャングルに放り出されてしまう。辛うじて一命を取り留めた彼らだったが、突如現れたヤハ族に捕えられてしまう。集落に連れてこられた彼らを待っていたのは、おぞましい食人の儀式で・・・。

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ホステル2』以来久しく劇場長編の監督業から離れていたイーライ・ロスが、食人映画に対する愛を爆発させながら作り上げた“俺の食人族”的ホラー。主演は“俺の嫁”ロレンツァ・イッツォ。
金のために嫌々仕方なくホラーを撮った人の映画って、そのやる気の無さや現状への怒りが反映されるのか、不条理で不快で、自分もそうだからか観客を楽しませようなんて気配りがない作品になりがちですよねぇ。一方、ホラーを愛してやまない人が撮る映画はその逆で、ホラー映画ファンが楽しんでくれるような作品を作る。本作は明らかに後者で、私個人が好きなのは生憎前者
人肉晩餐会はもちろんのこと、眼球くり抜きに四肢切断などありとあらゆる人体破壊に下痢とゲロという、お下劣なグロ描写満載の本作。ちょっとしたゴア描写でも一切手を抜かない、さすがホラー愛好家の作品っていったところで。ただ、そのそれだけのことをやっておきながらも、やっぱりどこか能天気な感じが漂ってしまっているのも事実。臓物を素手で触るかのようなヌメっとした不快感がないというか。自分自身が楽しんでいるのと同様にホラーファンを心底楽しませようとする姿勢は素晴らしいと思うんですけど、食人映画に求めてるのはそれじゃないんだよなぁって感じも。

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しかしながら、文明社会から先住民の文化を守ろうと言ってる一方で割礼は野蛮だからやめさせようと騒ぎ立てる、文明人のエゴと思いあがりといった、作品の本質と言うかテーマを見失っていないのは流石イーライ・ロス。そんな“自分が信じてる大義や価値観こそ全て”という宗教的な胡散臭さ満載の信条と、“自分たちが助けなければ”って思いあがりを胸に呼ばれてもいない他人の土地にズケズケと上がり込み、マスターベーションでしかない活動に満足する輩が助けてると思っていた部族にばんばか食われていく様は、ある種痛快ですら。
また、ゴアのみに走るのではなく、アクションにサスペンスに笑いにアドベンチャーとありとあらゆる娯楽要素を盛り込み、しかもそれら全てが思いのほかしっかりとしているイーライ・ロスの“巧さ”ってのも堪能できた一本。
続編狙いの結末は蛇足な感じが否めなかったんですが、妙に和気あいあいとした部族の婦人会による人肉調理シーンや、男子の馬鹿さ具合は万国共通なんだってことを痛感させられた、白人娘にほだされた部族の男子が委員長的部族の女子に叱られる名シーンがとっても楽しかったので採点は若干甘めに。

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身体を張ったボランティア

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2016年04月20日

ラッシュ/プライドと友情 (Rush)

監督 ロン・ハワード 主演 クリス・ヘムズワース
2013年 イギリス/ドイツ/アメリカ映画 123分 ドラマ 採点★★★

特にスポーツをやっていたわけじゃないので、所謂ライバルって存在には縁のなかった私。仕事や趣味の場など人間関係においても、好き嫌いが激しく嫌いな人間には一切関わらない性質なので「アイツにゃ負けたくねぇ!」って相手も居らず。そういう人を避けずにきていたら、もうちょっとマシな人間になってたんでしょうかねぇ。

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【ストーリー】
酒と女をこよなく愛し、荒々しい走りでサーキットを駆け抜ける天才肌のジェームズ・ハントと、緻密に計算された冷静沈着な頭脳派レーサーのニキ・ラウダ。正反対の二人の天才レーサーは、F1年間チャンピオンの座を巡り熾烈な争いを繰り広げていた。1976年、二連覇を狙うラウダはポイント優勢のままハントを引き離し、第10戦のドイツGPに挑むのだが・・・。

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2人の伝説的天才レーサーの姿を描いた、『天使と悪魔』のロン・ハワードによる実録レースドラマ。
私の世代なんかだと、テレビや映画でよくやっていた事故や災害を収めた残酷ドキュメントの最後の方に出てくる人として、レースに然程関心の無い人でも一度は名前や顔を目にしたことのある“不死鳥”ニキ・ラウダと、その好敵手ジェームズ・ハントの姿を描いた本作。ロックスターばりの派手な生き方を好むハントと、走りのプロに徹するラウダという水と油のような関係の二人が互いにぶつかり合い、刺激し合い、死と隣り合わせの世界にいるからこそ分かり合いながら切磋琢磨する、“これぞライバル!”な一本。
実際の事故のシーンを完全コピーしたかのようなクラッシュシーンや、レーサーという特殊な人種とその世界、当時のカルチャーなど細部に渡ってこだわりが窺える本作。まぁ、ロン・ハワードらしい手堅さやクセのなさは私的に少々食い足りない印象を残したりもしたが、過度な演出や偏りを避け二人の主人公の姿を対比させながら描く上では、その手堅さが良かったんだろうなぁとも。

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アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』のクリス・ヘムズワースと、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』のダニエル・ブリュールがそれぞれハントとラウダに扮した本作。煌びやかなスターと地味な職人的な対比が見事に表現されていたのと同時に、工業高校生的な雰囲気があるヘムズワースと知性派のブリュールの顔合わせだけに、スポーツバカのジョックスとインテリ気取りのブレインが反発しながら絆を深めていく往年の学園ドラマのような面白さも生まれていた好キャスティング。それぞれの似せ具合も見事でしたし。
その他、リチャード・バートンの最後の妻とエリザベス・テイラーの間に挟まれイマイチ記憶にないスージー・ミラーに扮した『カウボーイ&エイリアン』のオリヴィア・ワイルドや、これまた驚くほど雰囲気が似ていたラウダの妻に扮した『ヒトラー 〜最期の12日間〜』のアレクサンドラ・マリア・ララなども印象に残る一本で。

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エゴではなく実力を競い合うからこそ良い結果を

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2016年04月19日

プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命 (The Place Beyond the Pines)

監督 デレク・シアンフランス 主演 ライアン・ゴズリング
2012年 アメリカ映画 140分 ドラマ 採点★★★

そんな所が特に目に付いてしまうだけなんでしょうけど、子供ってのはホント似て欲しくない所ばかり似てきますよねぇ。似て欲しい所はさっぱり似ない。自分を振り返ってみても、親父の嫌な所を自分の中に見出したりすることも少なくないですし。でも、よくよく考えてみれば、“似て欲しい”と思う事って往々にして様々な経験を通した中で得たことだったりするので、別の人生を歩んでいる子供たちにそれを望むのは親の勝手なんですよねぇ。

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【ストーリー】
バイクの曲芸をしながら各地を巡る気ままな生活を送るルークは、ある日かつての恋人ロミーナと再会。彼女が自分の子供を産んでいたことを知る。気ままな生活から足を洗い母子を養う決心をしたルークだったが、それに見合う収入を手にすることが出来ず銀行強盗に手を染めてしまう。しかし、新米警官のエイヴリーに追い詰められルークは命を落とす。それから15年後、ルークの息子ジェイソンとエイヴリーの息子AJはそんな過去を知らないまま出会い・・・。

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『ブルーバレンタイン』のデレク・シアンフランス二世代に渡る数奇な運命を描いたクライムドラマ。
子供の存在を知り、その子を養うために銀行強盗に手を染めてしまうその日暮らしの風来坊を描いた第一章、その強盗を射殺したことで英雄扱いを受けるも、自分の子供と同い年の子の父親を奪ってしまったことに苦悩し、また生真面目さ故に警察組織に居場所を失う新米警官を描く第二章、そしてその子供たちが出会い過去の因縁を知ってしまう第三章と、3つのエピソードで綴られた本作。子供のために犯罪に手を染め命を落とす父親、事件をきっかけに子供との距離を置いてしまう父親、そして血の繋がっていない子供に対しても全力の愛情を注ぐ父親。その3人のタイプの異なる父親の姿を通し、子供を作り上げる血と環境ってものを映し出していた一本。男の悲哀を静と動が巧みに織り交ぜられた力強い映像と物語で描き切った、非常に見応えある一本で。成功した父の姿に自分の道を見出したAJの表情や、亡き父の影を追うかの如く旅立つジェイソンの姿に清々しさも感じられる締めくくりも美しい。
ただ、不器用なヤクザな男が愛ゆえに身を滅ぼす、同じくライアン・ゴズリングの『ドライヴ』と似た匂いを放ち、かつての日活映画や東映映画を彷彿させる男の色気を感じさせる第一章が素晴らし過ぎて、メインとなるその後のエピソードに個人的には気持ちが入りづらかったなぁと。また、物語の性質上母親が不在になるのは仕方がないにしても、血の繋がらない子供を献身的に支える義父の姿をもっと深めに描いてくれてれば、より“父と子”“血と環境”ってのが深く描かれた気も。義父コフィが不憫に思えるほど良い人なんで、最後のエピソードはずっとコフィを応援してましたし

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風来坊のルークに扮する、『ラブ・アゲイン』『スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜』のライアン・ゴズリング。寡黙で不器用な生き方しかできないその日暮らしの風来坊という、今のハリウッドではライアン・ゴズリング以外には似合わない役柄を、持ち前の色気と隠し味の可愛げで飄々と好演。女性を惹き付ける要素を全て持ってるが、生活を共にするには一番向いていない一夜限りの二枚目って役柄と、ネオン輝く夜の街が本当に良く似合う。“エヴァ・メンデスとの間に子供が云々”は興味がないのでここではスルー。
一方のエイヴリーに扮したのは、『アメリカン・スナイパー』のブラッドリー・クーパー。こちらも優男風の二枚目だが、明るく優しそうな一方で狡さも感じられる顔立ちが、政治の道へと進むエイヴリーにマッチする好キャスティング。
その他、老けメイクがやり過ぎな気がしてならなかった『ロスト・リバー』のエヴァ・メンデスや、“悪徳警官”といえば真っ先に浮かぶ『NARC ナーク』のレイ・リオッタ、同性愛的な香りも感じられた『ダークナイト ライジング』のベン・メンデルソーン、いつもの“悪いデカプリオ”風味にちょいとベニチオ・デル・トロも混じってた感もあった『ライフ・アフター・ベス』のデイン・デハーンらも強い存在感を。
ただ、その中でもいちばん目を引いたのがコフィに扮した『プレデターズ』のマハーシャラ・アリ。というか、コフィに。生まれたばかりの赤子を抱える女性と交際し、その母親も自分の家に招き入れ養うコフィ。恋人の元カレで子供の父親が勝手に家に入り込んだ挙句工具で殴られ重傷を負っても、その男が犯した犯罪のせいで警官が家中を物色しても恋人を責め立てるわけでもなく、血も繋がってなければ肌の色も違う子供を息子として愛情を注ぎ、実の子供が生まれても分け隔てなく接し、息子がグレて問題を起こしても支え続けるのに息子は亡き父を追うようにどっか行っちゃうし、嫁は元カレの写真持ってるしでもう不憫にも程がある。死んだらきっと聖コフィと呼ばれるな。

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でも当の本人が幸せと感じてればいいのかな

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posted by たお at 13:32 | Comment(6) | TrackBack(23) | 前にも観たアレ■は行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月18日

裏切りのサーカス (Tinker Tailor Soldier Spy)

監督 トーマス・アルフレッドソン 主演 ゲイリー・オールドマン
2011年 フランス/イギリス/ドイツ映画 127分 サスペンス 採点★★★★

「誰にも言わないで欲しいんだけどね・・・」と前置きされる話をよく女の人から聞かされるんですけど、“誰にも言わないで欲しい”なら誰にも言わなきゃいいのにと思う私。そういう人の口からよく発せられる言葉と言えば、「ねぇねぇ、聞いた?」ってのも。もう「何を?」と答えるしかないし、結局聞かざるを得なくなっちゃう。こういう人を見てると、男女間では“秘密”の意味合いが違うんだなぁとつくづく思わされますよねぇ。

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【ストーリー】
熾烈な情報戦が繰り広げられていた東西冷戦真っただ中のイギリス。英国諜報部“サーカス”のリーダー、コントロールは組織に潜り込んでいるソ連の二重スパイ“もぐら”を突きとめようとするも失敗、コントロールは右腕である老スパイのスマイリーと共に組織を去る。そんなある日、政府高官から極秘裏に“もぐら”を探し出すよう命じられるスマイリー。忠実な部下ギラムらと調査を開始するのだが・・・。

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1979年に製作されたTVドラマ版も高い評価を受けたジョン・ル・カレのスパイ小説“ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ”を、『ぼくのエリ 200歳の少女』のトーマス・アルフレッドソンがメガホンを握って映画化したスパイサスペンス。ル・カレ自身も製作に加わり、パーティのシーンに顔も出している。
英国諜報部に潜り込んでいるソ連の二重スパイを突きとめるまでを、どっしりとした重厚なタッチで描き出した本作。ざっくりと一言で言えば“地味”な作品だし、原作なりドラマ版に一度でも目を通してなければ物語から置いてけぼりを食らってしまう、所謂親切な作品でもない。私自身どちらも未見なので、登場人物らの知力にあっさり置いてけぼりを食らうことしばしば。もちろん面白ガジェットなんか出てこないし、マティーニ片手に美女をはべらかしたりなんかもしない。それでもこの身悶えしてしまう面白さったら

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本物であれ偽物であれその全てに意味がある情報入り乱れる情報戦と、その見えない戦場の最前線に立っているスパイたちの緊迫感溢れる日常を描いた本作。映像を追ってれば大体分かる“目で観る映画”ってよりは、状況や心境を読み取る必要がある“読む映画”なのでボーっとしてるとたちまち迷子になるが、ちょっとした集中力さえ保てれば、数手先を読み合うチェスの如き静かで熾烈な頭脳戦に対し、間違いなく知的興奮が巻き起こる一本で。
冷たく非情な世界を描きながらも、間違いなく“情”が人を動かしている様をまざまざと描いているのも面白かった本作。男女間には裏切りや混乱が中心に描かれている一方で、偽りや裏切りが行き交う日常を過ごしているからこそなのか、“愛”は男性間を中心に描かれいたのも興味深い。このさり気ないも男同士が深い愛で繋がってる様を描き切ったことで、愛と信用は別物の世界とは言え騙され利用された男の怒りと悲しみに溢れた眼差しと、騙した男の会えた喜びと驚きに諦め、愛する者に幕を下ろしてもらえる安堵感が混じった表情が交差する素晴らしい結末が生まれていたのでは。原作にもあったようですけど、この性別にとらわれない深い愛を濃密に描き出せたのは、トーマス・アルフレッドソンの手腕があったからなのかなぁとも。

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ソ連側もその能力の高さを恐れる老スパイのスマイリーに扮したのは、『ロボコップ』『ザ・ウォーカー』のゲイリー・オールドマン。知的で冷静だが、その冷静さには迷うことない冷酷さが秘められているスマイリーを好演。表情ひとつ変えずに“もぐら”をじわじわと確実に追い詰めていく様に、スパイとしての能力の高さと恐ろしさを見事に表現していたなぁと。
また、そんなゲイリー・オールドマンと並ぶと“初代と二代目”って感じが見た目一発で伝わる『ヘラクレス』のジョン・ハートや、『キングスマン』のコリン・ファースにマーク・ストロング、ゲイリー・オールドマンとは『チャイルド44 森に消えた子供たち』でも顔を合わせているトム・ハーディ、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』のトビー・ジョーンズに、『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』のベネディクト・カンバーバッチといった、もし自分が役者で最初の読み合わせでこの顔触れに会ったら、「やった!ようやく俺も認められた!」と心の中で間違いなくガッツポーズしてしまうほどの実力者が勢揃い。その誰もがこの老獪なスパイが跋扈する世界を見事なまでに色づけていたからこそ、ここ数年のスパイ映画大ブームを彩った作品の数々に本作から多くの顔触れがキャスティングされたんだろうなぁと。

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posted by たお at 15:18 | Comment(2) | TrackBack(35) | 前にも観たアレ■あ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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