2015年 アメリカ映画 119分 コメディ 採点★★★★
巷での評判がすこぶる良いので大きな声では言えませんけど、一連のダニエル・クレイグ版ジェームズ・ボンドをさっぱり楽しめなかった私。良く出来たスパイアクションのはずなのに、観る度に別のスパイ映画を欲してきてしまうんですよねぇ。記憶の中に眠る、かつての楽しかったスパイ映画を。案外そういう人も少なくないのか、本家ボンドが気合を入れた作品を作り出した恩恵なのか、最近楽しいスパイ映画ってのが増えてきて嬉しい限りではありますけど。
【ストーリー】
CIAの凄腕スパイであるファインを、息の合ったコンビネーションで遠く離れたオフィスからサポートする内勤の分析官スーザン。しかし、小型核爆弾の行方を追ってる最中、ファインはその行方を知る女性レイナに射殺されてしまう。レイナが他のエージェントの素性も知り尽くしていることからスパイを送れないCIAは、本人の希望もあり素性の割れてないスーザンを送り込む。なんとかレイナに近づこうとするスパイ初心者のスーザンだが…。
おデブな内勤分析官がスパイとなって小型核爆弾の行方を追う様を描いたアクション・コメディ。リメイク版の『ゴーストバスターズ』が控えている、“フリークス学園”組のポール・フェイグが製作・監督・脚本を。
もう最初に言っちゃうけど、なんでこんなに面白いのが未公開なんだい?本国では今一番ノってるメリッサ・マッカーシーの日本での知名度に不安があるとしても、脇を固めているのがジェイソン・ステイサムにジュード・ロウといったメジャー級だし、本国のみならずアジア諸国でもスマッシュヒットを記録してるのに、日本では未公開。公開時期の2015年5月の状況を見てみても、決して洋画が大豊作とはいい難い状況なのにだ。なんだい?日本人はそんなに笑っちゃいけないのかい?
そんな愚痴から始めたくなるほど楽しめた本作。オープニング曲を含めベタベタのスパイ映画を再現しているが決して悪ふざけで済ませず、筋の通ったちゃんとしたスパイ映画としての土台が作り上げられており、その上でいちいち面白い笑いがふんだんに放り込まれている、アクション・コメディのお手本のような一本。しかも不慣れなスパイ業にドタバタする様を描くだけではなく、自分に自信が持てないため表舞台に立とうとしなかった女性が勇気を奮って一歩踏み出す様や、それを支える友情、男根主義的社会や性差別、容姿による差別に対し笑いと度胸を武器に立ち向かう様など、テーマも浮つかずにどっしりと芯を通しているのも立派。それもお高くとまらず、ちゃんと下品に。
ちょっと大袈裟かもしれないんですけど、アメリカ産バディアクション映画に対する愛たっぷりに描き出したイギリス映画『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!』に対する、アメリカからの返答なんじゃないのかと思えてくるほど楽しめた一本で。
主人公のスーザンに扮したのは、クリステン・ウィグと共にコメディ界の中心に立ってる印象のある『ヴィンセントが教えてくれたこと』のメリッサ・マッカーシー。まだ追い掛けきれていないので(『タミー/Tammy』が観てぇのにDVDすら出てないし)本来の芸風は把握していないんですけど、その特徴的過ぎる体型を武器にした笑いにばかり目が行きがちだが、状況や扮装によってコロコロと変わるキャラを巧みに乗りこなす器用さに驚かされたりも。
一方、暴れん坊スパイに扮したのは『ワイルド・スピード SKY MISSION』のジェイソン・ステイサム。アクション俳優のイメージが強いせいか、なにやら彼のコメディ演技に驚いた人が多かったそうなんですけど、基本的にはいつものジェイソン・ステイサム。いつものジェイソン・ステイサムを面白くなる状況下に置いてるだけと言うか、『ミーン・マシーン』や『アドレナリン』を例に出すまでもなく、ジェイソン・ステイサムはいつも面白いんですよ。
また、従来型ハンサムスパイを喜々として演じていた『グランド・ブダペスト・ホテル』のジュード・ロウや、悪女感よりもガリガリで老け込んでる方が抜きん出ちゃってた『インターンシップ』のローズ・バーンも好演。
その他、メリッサ・マッカーシーとの凸凹コンビネーションがハマってたミランダ・ハート、女性版J・K・シモンズみたいな役柄がホントに似合う『Re:LIFE〜リライフ〜』のアリソン・ジャネイ、ジェシカ・チャフィンなどメリッサ・マッカーシーとの共演が多い顔触れや、恥ずかしながらその存在を初めて知ったんですけど、まるでジョン・バリーが作曲したかのようなアイビー・レバンによるテーマ曲も非常に印象的だった一本で。
スパイにだけは見えないって点では合格
↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓