2012年11月11日

ランナウェイ (Money Talks)

監督 ブレット・ラトナー 主演 クリス・タッカー
1997年 アメリカ映画 97分 コメディ 採点★★

過去に一度観たっきりで記憶もアヤフヤになってる映画は、とりあえず「面白かった!」ってことにしている私。そんな適当な記憶の仕方をしてるんで、たまに観直してみると「あれぇ?」ってことも多々。残念な記憶能力の持ち主なんでしょうがないんですが、それについて面と向かって「バカなの?」とか言われると腹が立つので、出来れば「おっちょこちょいね♪」くらいで済ませて頂ければと。

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【ストーリー】
ちんけな詐欺師のフランクリンは逮捕されるが、護送中に凶悪密輸犯の脱走劇に巻き込まれ、警察と密輸グループの双方から追われる羽目に。身の潔白を証明するため落ち目のTVレポーターのラッセルに助けを求める彼だったが…。

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ペントハウス』のブレット・ラトナー初長編作となる、要約すれば「金持ちになりてぇ!」ってな感じのアクションコメディ。
黒人犯罪者と上流社会への仲間入り目前の白人という社会的コントラストの効いたバディアクションのようだが、その辺は特に物語上重要な扱いではなく、ただひたすら喋りまくる黒人と怒ってばかりの白人って程度のバディ物な本作。というか、とにかくクリス・タッカーが前へ前へと。
ブレット・ラトナーらしいそつのない演出と軽快なテンポで展開を進めるが、盗んだダイヤを高級車に忍び込ませてオークションで落札しようとする密輸団の回りくどさや、「ここは黒人のエリアだから、お前は黒人とプエルトリカンのハーフってことにしとくな」と言った矢先に、「あ、コイツはTVレポーターだよ!」とバラして窮地に陥る全てにおいてチグハグな脚本など、その器用さをもってしても如何ともしがたい残念な仕上がり。そんな残念な所を補うかのように、クリス・タッカーが前へ前へと。正直、鬱陶しい。ビデオが発売された当初に観た時は面白かった印象があったのだが、観直してみたら「あれぇ?」ってなった一本で。70年代から変わらぬラロ・シフリン節を思う存分聴けたのが救いですけど。

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フランクリンに扮する『ラッシュアワー3』のクリス・タッカー。カメラが向けられている間は、例の甲高い声でのべつ幕無し喋り倒しているのだが、そのガツガツとした姿勢と「これでビッグになったる!」って野心は嫌いなタイプではないので「頑張ってね♪」って気分には。充分鬱陶しいしイライラもするんですけど、嫌いではない。だからと言って好きでもないんですけど。
で、そのクリス・タッカーの隣で怒ってばかりいたTVレポーターのラッセルには、『ビッグバウンス』『メジャーリーグ』のチャーリー・シーンが。隣に騒がしいのがいるってのと落ち目の時期ってのが重なって、随分と元気のないご様子。
その他、堅気にだけはやっぱり見えない『グッドフェローズ』のポール・ソルヴィノや、マヌケな警官約が良くハマる『大逆転』のポール・グリーソン、『オーメン』のデヴィッド・ワーナー、『ウィズダム/夢のかけら』のヴェロニカ・カートライトらが出演。個人的な注目は、“パトカー・アダム30”での警察官姿が思春期だった私の悶々ポイントを存分に刺激したヘザー・ロックリア。まぁ、「そうだよなぁ、あれから10年は経つもんなぁ…」ってなお姿でしたが。

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今では騒ぎを起こしてマイクを向けられる側に

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2012年10月17日

ロスト・ハイウェイ (Lost Highway)

監督 デヴィッド・リンチ 主演 ビル・プルマン
1997年 フランス/アメリカ映画 134分 サスペンス 採点★★★★

睡眠中に見た夢を誰かに話す時や思い出す時って、その記憶を論理的に組み立て直しているから一本のストーリーとして成立しているけど、目覚めた直後の夢の記憶って、時系列も人称も辻褄も全てバラバラな断片の詰合せみたいな感じですよねぇ。もし“夢録画機”なんてものが発明されても、再生してそこに映し出されるのはとってもアバンギャルドな映像集だったりするんでしょうねぇ。

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【ストーリー】
インターフォンからの謎の声「ディック・ロラントは死んだ」/自宅を映しだしたビデオテープ/妻への疑い/白塗りの男/ビデオテープに映し出される妻を惨殺する自分/フレッドはピートに/レネエはアリスに…

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錯乱と混乱の世界に観る者全てを叩き落とす、『ツイン・ピークス』のデヴィッド・リンチ渾身のミステリー。
論理的に物語を整理するならば“妻を殺した男の物語”。もうちょっと付け加えるのであれば、“起きた通りに物事を記憶したくない男の破壊され混乱した記憶の再生”。ただ、そんな取って付けたような解説なんかでは丸裸にされない、濃密で力強く、グロテスクでありながら淫靡でユーモラスなリンチ・ワールドに快感すら感じる翻弄を味わえる本作。「つまり、これってこういうことだよな」と立ち止まって考える余裕すら与えず、次なる展開へと押し出す力強さ。そして、知らず知らずのうちに次なる世界を求めてしまう麻薬のような魅力。『インランド・エンパイア』は個人的にちょい持て余してしまったが、本作のリンチ濃度はその不純具合も含めて丁度良い。リンチ濃度は純度が高過ぎると劇薬ですし。
まるで他人の悪夢に迷い込んでしまったかのような本作。リンチによる絵画が動き出したかの如く。それらを形成するプロダクションデザインとサウンドデザインも完璧で、旧版DVDでは黒が潰れてしまって台無しだったその辺も今回のブルーレイでは大幅に改善され、心ゆくまでリンチ・デザインを堪能できるのも嬉しい。そして何よりも、デヴィッド・ボウイで始まりナイン・インチ・ネルズ、ルー・リード、マリリン・マンソン、ラムシュタインと来てボウイで締める楽曲の使い方が嬉しいのも言わずもがな。「だってボウイが流れるんだもん♪」ってのも言わずもがな。

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常連俳優から意外な大物まで錚々たる顔ぶれが、各々の個性を前面に押し出すことなくリンチ作品のモチーフとして溶け込んでいるのも魅力の本作。まぁ、ある意味リンチ作品の主役はリンチ自身だったりもしますし。
二人一役の片っぽである『THE JUON/呪怨』のビル・プルマンと、もう片っぽの『The FEAST/ザ・フィースト』のバルサザール・ゲティ、オッパイよりもお尻のインパクトが強烈だった『リトル★ニッキー』のパトリシア・アークエットを軸に、この作品の後別件で話題の中心となる冷血』のロバート・ブレイクに、安全運転ギャグが痛快だった『オーバー・ザ・トップ』のロバート・ロジア、『プレデター2』のゲイリー・ビューシイと濃口の面々が絡む贅沢なキャスティング。
その他にもお馴染ジャック・ナンスや、『パーフェクト・ストレンジャー』のジョヴァンニ・リビシ、『クライモリ デッド・エンド』のヘンリー・ロリンズにマリリン・マンソン、劇映画は本作が遺作となったリチャード・プライアーなど、ちょいと顔を出す面々までもが贅沢。
そんな中、一人ちょっと気になるお方が。“Dru Berrymore(ドゥリュー・ベリーモア?)”ってポルノ女優の方なんですけど、やっぱアレですかね?新田利恵みたいなもんなんですかね?

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題材に添ったキャスティング

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2012年05月12日

ラブ・アゲイン (Crazy, Stupid, Love.)

監督 グレン・フィカーラ/ジョン・レクア 主演 スティーヴ・カレル
2011年 アメリカ映画 118分 ラブロマンス 採点★★★★

「見た目じゃないよ!中身だよ!」とは言いますが、コミュニケーションを取る入口として“見た目”ってのは非常に重要ですよねぇ。最近ちょっと思う事があって自分の見た目を少しばかし変えてみたんですが、別に整形とかそんなレベルじゃなくて、髪型を変えたり眉を整えたりって程度ですが、そしたら途端にこれまで大して会話もしなかった人から親しげにされたり、周囲の対応が変わったりと様々な変化があったもので。まぁそれは、周囲が「変わったねぇ!」って思う以上に、ちょっとした自信が自分の中に根付いたってのも大きいんでしょうけど。

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【ストーリー】
愛する家族と幸せな人生を送っていたと思っていた中年男のキャルは、突然妻から離婚を切り出されてしまう。すっかり落ち込み一人寂しくバーで管を巻いてたキャルだったが、ひょんなことからプレイボーイのジェイコブと知り合い、彼の手ほどきでみるみるモテモテ中年へと変貌していくのだったが…。

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思いもよらなかった離婚を突き付けられた中年男を中心に、その家族の様々な恋模様を描く群像ラブコメディ。メガホンを握ったのは、『フィリップ、きみを愛してる!』のグレン・フィカーラとジョン・レクアのコンビ。
巧い!”、集約するとこの一言に辿り着く本作。情けない話だが、もうこれ以上書きようが浮かばない。全てのキャラクターが年齢や状況に添った悩みを抱え、過剰に背伸びすることなくそれと戦い、ほんのちょっとの映画的マジックを施されて解決されていく絶妙なサジ加減と言ったら。この手の群像劇だと躍起になって輪にすることに終始したり、「どうだい?ちゃんと輪になっただろう?」とシタリ顔されたりするのだが、スタートから関係性がしっかり関連付けられてる本作にはそんなイヤラシサは微塵も感じず、宙ぶらりんのキャラクターはそのまま宙ぶらりんのバランス感覚も絶妙。“見た目が大切か?”“本当の愛はあるのか?”など様々なテーマも絡み合っている本作だが、それらを単純に取捨選択するのではなく、多面的に見つめ必要と思われるものを少しずつ取り入れているのも好印象。“魂の愛>見た目”という単純構造ではなく、“最低限の身だしなみは必要”みたいな。
しこたま驚くが納得もいくサプライズ後の、なんか吉本新喜劇みたいな大団円を迎えそうな雰囲気から更に奥へとフワーっと進んで着地するその締め括りの上手さにしろ、豊富な笑いとシビアさのブレンド具合にしろ、ただただ「巧い!」と唸らされた本作。明確なディレクションを見せた監督コンビ同様に、これだけ見事な脚本を手掛けた『塔の上のラプンツェル』のダン・フォーゲルマンの名前も頭の片隅に入れておこうと強く思った一本で。

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服選びの基準がファッション性重視から価格と機能性重視となり、やがて「とりあえず隠れる場所が隠れてればいいや」になっちゃう、自分も含めどこにでもいる中年男のキャルに扮したのは、本作の製作も務めた『デート&ナイト』『奇人たちの晩餐会 USA』のスティーヴ・カレル。真面目で優しく、良い父親には間違いないのだが、刺激を求める相手には最も向いていないキャル役にドハマりのキャスティング。元々素材が良いだけに、ちょっと身だしなみを整えるだけで見違えるような男前になっていく様も、そこに嫌味の無いさり気なさが生まれる様もピッタリ。
一方の妻エミリー役には、『シェルター』『NEXT -ネクスト-』のジュリアン・ムーアが。歳を取る一方で何も生まれてこない中年期の不安ってのをもう少し掘り下げて欲しかったキャラではあったが、決して夫のことを嫌いになったわけではないのだが、自分の中から湧き出る衝動に抗えないって様を、いつもの細やかな表現で好演。
その他、一言一言が非常に勉強になるプレイボーイに扮した『ステイ』のライアン・ゴズリングや、本作最大のサプライズを担当した、最近何気に引っ張りだこである『キューティ・バニー』のエマ・ストーン、可愛さそのままに良い歳の取り方をしている『僕の大切な人と、そのクソガキ』のマリサ・トメイに、飄々とした軽さに磨きが掛かってきた『スーパー!』のケヴィン・ベーコンと、錚々たる顔ぶれが揃った本作。それぞれが持ち味をそのキャラに反映させるだけではなく、内側まで垣間見せる好演を見せてくれている。その中でも、13歳なりに悩んで恋して抗う長男に扮したジョナ・ボボと、年上のお姉さんというよりは母親的な懐の深さを感じさせた『グリーン・ホーネット』のアナリー・ティプトンが絶品。中年の恋模様だけではなく、彼ら10代の可愛らしくほろ苦い恋模様をしっかりと描けたのが本作成功の最大の要因だったのではと。

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何度でも振り返りたくなる恋の思い出って案外ない

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2012年05月09日

RONIN (Ronin)

監督 ジョン・フランケンハイマー 主演 ロバート・デ・ニーロ
1998年 イギリス/アメリカ映画 122分 アクション 採点★★★★

映像技術の進化によって、アクション表現の幅だけじゃなく、わざわざロケに行かなくてもそこに居るかのように見える製作上のメリットも多く生まれましたよねぇ。ただまぁ、そういった映像から得られる驚きって、“非常にリアルなアニメ”の絵そのものの迫力から得てる驚きであって、“事件を目撃した”という本能的な驚きとは趣が違うんですよねぇ。まぁ、私が歳を取ったからそう感じるのかも知れませんけど。

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【ストーリー】
とあるケースを盗み出す為、パリに集められた5人の男たち。ケースのあるニースへ向かった彼らは強奪に成功するのだが、裏切り者によってケースを奪われてしまう。これを取り戻すべく、元CIAのサムとフランス人調達屋のヴィンセントが僅かな手掛かりを基にケースを追うのだが…。

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家族やカップルで楽しめる総合エンタテイメント化とデジタル化が進むアクション映画界に対し、齢70を目前に控えた『ブラック・サンデー』のジョン・フランケンハイマーが「男のアクションとはコレじゃーい!」と叩きつけてきた、20世紀アクションの総決算のような骨極太犯罪アクション。
ケースを追っかけるだけの一本調子の物語に、「マクガフィンだから」と胡坐をかきまくった仕掛け、あれだけ劇中煽っておきながら主人公だけは浪人じゃなかった人物設定に、妙にフワっと終わってしまう結末など、粗を探す気になればワンサカ出てくる本作。多方面への配慮とバランスを重視する映画であればこれらの粗は問題であるが、本作はそんな映画ではない。非情な裏社会に生きる男たちの姿を描いた、ちょいと大袈裟かもしれないが“漢の映画”である本作は、これくらいの荒々しさで丁度良い。やたらと無関係な人ばかり死ぬのも、まぁ荒々しさの表れってことで。
素性を明かさぬアウトロー同士の間で生まれる友情や裏切りといった、男気溢れるなんとも劇画チックで胸熱くなる本作だが、アクション描写もこれまた男気満載。特にカーチェイスの凄まじさは、もう私の中で伝説の域。CGを一切使用せず、数多くのシーンで役者に運転させ、ダイアナ妃が亡くなったことでも有名なトンネル内や渋滞の道路をロケーションに選んだこのこだわりは、流石プロのレースドライバーを夢見たフランケンハイマーらしい心意気。プロの卓越した技術と並外れた度胸によって映像に収められたこれらのシーンからは、昨今の作品では感じる事の少なくなった“ギリギリで死を回避した”現場の目撃者としての興奮を存分に味わうことが出来る。「カーチェイスだけの映画」と揶揄される事もあるが、そのカーチェイスに並々ならぬ価値があるんだから、もうそれは褒め言葉では。

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主人公のサムに扮したのは、『ミート・ザ・ペアレンツ3』『マチェーテ』のロバート・デ・ニーロ。アンサンブル重視のあっさりし過ぎた演技か、名優モードのやり過ぎ演技かのどっちかに偏りがちなデ・ニーロだが、本作ではセミプロの中に本物のプロが秘かに入り込んだ格の違いや凄味ってのを、抑え過ぎず出しゃばり過ぎずの絶妙なバランスで好演。ちょっとした仕草や言い回しの中に、描かれてはいない主人公の過去を透かし見せる素晴らしい仕事っぷり。
一方、「パリにある物なら何でも揃える」調達屋に扮したのは、『バレッツ』『アーマード 武装地帯』のジャン・レノ。細かい気遣いと人懐っこい笑顔を見せるキャラクターなんで、「こんな気の良い人が何で裏稼業なんかに?」って疑問が頭をよぎること多々ではありましたが、格の違うデ・ニーロに献身的に尽くすヒロイン的ポジションの役柄なので、まぁこんな感じで良いのかと。本作に限らずとも案外ヒロイン役がハマるジャン・レノなんで、これまた好キャスティングが光った一例かと。
その他、小雪ばりの般若顔がちょっと怖かったナターシャ・マケルホーンや、見た目のイメージまんまの冷酷な役柄を充てられた『ドラゴン・タトゥーの女』のステラン・スカルスガルド、ほとんどのシーンで実際に運転させられてたスキップ・サダスらに、自分を追ってるエージェントに裏切り者、仕舞いには口だけ番長まで雇ってしまう人を見る目の全くないボスに扮した『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』のジョナサン・プライス、『007/ムーンレイカー』のマイケル・ロンズデールに、後ほど述べる『007/ゴールデンアイ』のアノ人といった“007悪役三人衆”も登場し作品をピシっと締めてくれる。

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で、ショーン・ビーン。凄まじ過ぎるカーチェイスが私の中で伝説であるのと同様、本作のショーンも私の中では語り草
その道のプロ集団に、どういうわけかまんまと忍び込んだ素人に扮したショーン。「どんな銃使ってんの?」と皆に絡んでますが、高校デビューを図ってるいじめられっ子がクラスのヤンキーによく知りもしない車の話題を持ちかけてるかのような痛々しさです。それも、よりによってプロ中のプロであるデ・ニーロに絡んじゃうんですから、初っ端からもう居た堪れません。黙ってればいいものの、黙ってれば舐められると思ったのかよく喋ります。典型的な口だけ番長です。
そのくせ、いざ仕事が始まると途端に黙りこくるショーン。目が泳ぎ始めてます。出来る事なら「腹痛い…」とか言って家に帰りたいところなんでしょうけど、もちろんそうもいかないので渋々仲間たちと取引現場へと向かうショーン。取引相手を前に急に威勢が良くなるショーンですけど、腹が据わったって言うよりは、恐怖と緊張が限界を超えてしまったってのが手に取るように分かります。分かりやす過ぎです。その後の銃撃戦を乗り越えたショーンは「奴らの血をぶちまけてやったゼ!」とか妙なテンションではしゃいでますが、そうでもしてないと泣いちゃうんでしょうねぇ。多分人を撃ったのは初めてだったんじゃないでしょうか?緊張からは解き放たれましたが、後悔やら更なる恐怖に襲われ瞬く間に車に酔ってましたし。そんなショーンを見つめるデ・ニーロとジャン・レノの視線の冷たいこと冷たいこと。ずっと怪しんでたんでしょうけど、ここで口だけ番長であることが確定的にバレます。
そんなこんなで本筋に入る前に追い出されてしまうショーン。黙って立ち去ればまだカッコが付くのに、報酬が欲しいので皆が仕事に出掛けるのを一人待ってます。切なすぎです。よくある展開だとその後裏切り者として再登場しそうなものですが、こんな怖い目にもう金輪際遭いたくないショーンは見事に姿を消します。でも、多分地元のパブで披露する“なんちゃって武勇伝”に、このエピソードが美化されて加わったことでしょうねぇ。
記憶の中に3人ぐらいはいるであろう口だけ番長を、見事なまでに表現したショーン。何かしらの賞を獲ってもおかしくない本作のショーンに対して★をもう一つくらいオマケしたいところですが、あんまり甘やかせるとまたちゃんとした映画に出なくなっちゃいそうなので、ここは厳しくオマケはなしで。

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喋れば喋るほどボロが出るし、黙っててもボロが出る

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2012年05月03日

レジェンド・オブ・フィスト/怒りの鉄拳 (精武風雲・陳真)

監督 アンドリュー・ラウ 主演 ドニー・イェン
2010年 香港/中国映画 105分 アクション 採点★★★

個人的な印象に過ぎないんでしょうけど、最近の香港/中国映画って“面白い映画を作る”って姿勢よりも、感情や思惑ばかりが先走っちゃってる感じがするんですよねぇ。日本軍や欧米列強が悪役なのはずーっと昔からお馴染のパターンなんですけど、なんか大衆のストレス発散以外の意味合いが見え隠れすると言うか。まぁ、そんな余計なことを考えさせない勢いとか魅力が欠けてきてるってのが大きいんでしょうけど。

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【ストーリー】
1925年の上海。第一次世界大戦のヨーロッパ戦線から戻って来たチェン・ジェンは、列強に蹂躙される祖国を憂い抗日地下組織へと身を置く。ナイトクラブ“カサブランカ”のオーナーで実力者のリウに近づき仲間に引き入れようと画策しながら、“黒覆面”として抗日行動に勤しむチェン・ジェン。そんな中、クラブの歌手キキと出会い心惹かれる彼だったが、キキには大きな秘密があり…。

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『ドラゴン怒りの鉄拳』でブルース・リーが演じたチェン・ジェンを、ドニー・イェンが思い入れたっぷりに演じたTVシリーズ“精武門”。その“精武門”のその後を、思い入れてんこ盛りのドニー・イェンを再び主演に迎え贈るカンフー・アクション。メガホンを握るのは、『消えた天使』のアンドリュー・ラウ。
日中戦争を間近に控えた上海を舞台に、虹口道場で銃を構える日本兵に向かって怪鳥音発して飛んでったけど実は生きてたって体のチェン・ジェンが、暴虐の限りを尽くす日本兵を再びとっちめる様を描いた本作。日本が悪役ってのはある種いつもの事ですし、まぁアレコレあるんでしょうから仕方がないにしても、“日本兵は卑劣で残忍”ってのを描くことに感情を先走り過ぎちゃって話がメタメタってのはどうかと。スパイ戦やら社会状況やらも描かれているが、これらもさっぱり整理されておらず、物語がさっぱり頭に入って来ない混沌仕様なのも困りもの。
ただまぁ、今回はブルース・リーへの思い入れを思春期を炸裂させて演じるドニーさんがいるんで、その辺のメタメタ具合を存分に補ってくれる出来に。もう、観賞中は常にドニーさん待ち。最近はどうも型にはまってしまったようなドニーさんばかり観てたせいもあってか、ナルシスと思春期を暴走させるドニーさんを久々に観れたってだけでも満足度は高め。そんなドニーさんの活躍に、★ふたつほどオマケしてもよろしいかと。

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オープニングから桁外れのスピードでドニー・アクションを披露してくれる、『導火線 FLASH POINT』のドニー・イェン。ブルース・リーの成り切りっぷりでは定評のあるドニーさんですが、今回は「なんでオレじゃなくてジェイ・チョウなんだ!?」って思いもあるのか、『グリーン・ホーネット』風の仮面姿も披露。こういう好きなものに成り切って幸せそうなドニーさんを観てるのが幸せで。
また、『クローサー』以来観てなかったんですが、10年経ってもほとんど変わりのないその様に驚いたスー・チーや、香港映画界随一の破天荒役者なだけに最近の大人しさがちょいと気になる『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』のアンソニー・ウォン、『かちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲート』の“緑ドニー”ことショーン・ユーらも出演し、暖かい眼差しでドニーさんの陶酔っぷりを見つめていたかと。まぁ憶測ですけど。
その他、“日本のドラゴン”と言えばまぁこの人の倉田保昭や、木幡竜、EXILEのAKIRAが出てるってのが日本的には話題になりそうな所ですけど、髪も切らずに棒立ち&棒読みでやり過ごそうとするAKIRA使う位なら、ムササビの方のAKIRAを使った方が良かったんじゃないのかなぁと。かなり動ける方ですし。そっちのAKIRAを発注したら、違うAKIRAが届いちゃったパターンなんですかねぇ。

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ある意味ネバーランドの住人みたいなもんですし

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2011年12月13日

リアル・スティール (Real Steel)

監督 ショーン・レヴィ 主演 ヒュー・ジャックマン
2011年 アメリカ/インド映画 127分 ドラマ 採点★★★★

捨てられてる子猫や子犬って、なんであんなにも愛くるしく見えるんでしょうねぇ。同じのがペットショップのケージに入ってても、多分あそこまでの愛らしさは感じないのではと。きっと“捨てられてる”っていじらしさが、可愛さ50%増しにしてるんでしょうねぇ。ウチのむぎさんも捨て猫でしたが、確かに可愛らしかったですし。今じゃ呼んでも返事をしないつっけんどんな猫に育っちゃいましたけど。あの愛らしさは、きっと罠だったんだな。

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【ストーリー】
ボクシングに全てを捧げてきたが戦いの場を高性能ロボットに奪われ、今では払い下げロボットを連れドサ周り生活を送るチャーリー。そんな彼のもとに別れた恋人の急死の知らせが入り、赤ん坊の時以来会っていない11歳の息子マックスと望まぬ再会を果たす。目先の金目当てに、息子と一夏を過ごす羽目となったチャーリー。そんなある日、マックスはゴミ置き場に捨てられていたロボット“ATOM”を見つける。特殊な能力を備えたATOMで、彼らはロボット格闘戦に挑むのだが…。

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リチャード・マシスンの短編“四角い墓場”を原案とした、『ナイト ミュージアム』のショーン・レヴィによるSFエンタテインメント。製作総指揮には、スティーヴン・スピルバーグの名も。
ロボット版『オーバー・ザ・トップ』と鷹を括ってると、主人公のクズっぷりにドン引きしてしまうこと間違いなしの本作。借金に借金を重ね、息子の養育権を売り飛ばし、その金で買ったロボットも無策な戦いで瞬く間にスクラップにする、ダメ男中のダメ男。ボクサーとしての戦いの場も失ったそんなダメ男を中心に、母に死なれ父に求められない男の子と、ゴミ捨て場の泥に埋もれていたロボットというどん底三人組が揃った時点で、“捨てられし者の物語”が大好きは私みたいなオジサンは胸が熱くなることこの上なし。しかも、“ロボットと少年の物語”に“日陰者にスポットが当たる物語”までも描いているんだから、もう設定を読んだだけで涙を絞り取られてしまう。事実、どん底三人組が初めてメジャーのリングに立った瞬間は、もう自分が何か達成したかのように胸が熱くなったもので。
確かに本作には新味の欠片もない。予告編を観れば、何が起こるのか最後の最後まで手に取るように頭に浮かぶし、実際その通りに物事は進む。『ロッキー』を例に挙げるまでもなく、“見捨てられ忘れ去られた者の再起の物語”は手を変え品を変え数多く作られてきたし、本作はその一つ。しかし、それが王道。こっちは驚きを求めているのではない。年末になるとなんとなく忠臣蔵が観たくなるように、それもその忠臣蔵に新解釈など求めていないと同様に、年に一度は観たくなる王道中の王道な作品が本作。四の五の言わず、予定調和の美学に身を委ねるのが宜しいのかと。

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胸が熱くなるシチュエーションを揃えておきながらも、過剰なまでにウェットに走る涙強盗映画にはなっていないのも好ポイントの本作。程良いウェットさ。そう感じられるのも、“父と子の絆の再生”って物語とは別の重要要素、“ロボット格闘”ってのをしっかりと描き切っているから。
「ロボットだから何でもアリ」ではなく、あくまで人間の代替品としての存在であるので、その戦い方は非常に無骨。ハイスピードで目まぐるしく展開し過ぎて色々見落すタイプではなく、鉄の塊がガツンゴツンとぶつかり合う、最先端科学同士が繰り広げる原始的な戦い。手足はもげ頭は吹き飛び、血飛沫の代わりにオイルが飛び散る、およそタッチストーン製とは思えぬ血生臭い戦いが描かれている。この辺は、製作を務めるスピルバーグの意向が反映されたのだろうか。このロボット格闘の凄惨さを描き切れたからこそ、ドラマ部分がより際立ったのではないかと。『ロッキー』の試合シーンがぬるかったら、あそこまで面白い作品に成り得なかったのと同様に。
ただ、この試合描写に関して些細な不満が。格闘技の試合における入場シーンは、生きてリングから降りれる保証がないだけに、選手にとっては非常に重要な見せ場の一つ。本作でもATOMが初めてメジャーのリングに立つ際、マックスと共に素晴らしい入場シーンを決めている。しかしながら、ATOMの入場シーンはそれのみ。クライマックスのゼウスとの戦いでは、既にリングインしているATOMがゼウスの入場シーンを見つめているだけ。「既に一回描いてるからいい」ってのが作り手の考えかも知れないんですが、メインイベントの入場シーンはまた別物。それこそ、生きて戻れる保証が全く無い戦いに挑むのだから、絶対に必要だったのでは。ATOMが素晴らしい入場を決めた後に、それをゼウスの入場が圧倒的な迫力で凌駕するからこそ、ゼウスの怖さと大きさがより強調されるのに。ゼウスと同様ギリシャ神話の神の名を冠したアポロ・クリードの入場は、常にロッキーのそれを上回ってたじゃないですか。ホントに些細なことなんでしょうけど、格闘技イベントを描く以上はそこを分かって欲しかったなぁと。

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KOするかされるかのファイトスタイルがそのまま生き様に反映された不器用なチャーリーに扮したのは、『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』『プレステージ』のヒュー・ジャックマン。同じクズでも性根の腐ったクズではなく、一発逆転を狙うしか生き残る術の浮かばない不器用さによって落ちぶれてしまったチャーリーのクズ具合が、器用に立ち回る役柄の似合わない、どこか前時代的な土の香りを残すヒュー・ジャックマンの雰囲気にハマる好キャスティング。
一方、捨てられた者同士が共鳴し合うかのようにATOMと運命的な出会いを果たすマックスに扮したのは、『マイティ・ソー』で少年時代のソーに扮したダコタ・ゴヨ。自我が目覚め一番取扱いの面倒臭い年頃の男子を好演。面倒臭い反面、好きなものに対して寝食忘れ夢中になる男子らしい可愛らしさも印象的で。
その他、『アジャストメント』のアンソニー・マッキーや、やり過ぎのテキサスブロンコぶりが印象に残った『ロビン・フッド』のケヴィン・デュランドなどもキャスティングされているが、やはり最も目を奪われるのは男子魂を鷲掴みにする格闘ロボットの皆さま方。
なかでもATOMのいじらしさは絶品。捨てられた旧式ロボットってだけでも涙腺をいたく刺激するってのに、たとえ新品でも勝つことを想定していない殴られ役のスパーリングロボットでしかないってのが、これまた愛おしくて堪らない。悲しげな笑みを浮かべたボロ布で作った人形のようなATOMが、強大な敵を前に倒されても倒されても立ち上がる様は、これが使い古されたネタであろうと胸が熱くなることこの上なし。“超悪男子”ノイジー・ボーイや“牛殺し”アンブッシュなども男子魂を鷲掴みにするが、生まれた頃からそばにあった、なんとなく捨てられない人形のようなATOMには敵わないなぁ。

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ロッキーではなくミッキーが主役

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2011年12月09日

レネゲイズ (Renegades)

監督 ジャック・ショルダー 主演 キーファー・サザーランド
1989年 アメリカ映画 106分 アクション 採点★★

一時大流行した“バディムービー”って、それぞれタイプの違うコンビの丁々発止やコンビネーションの妙がなんとも楽しいジャンルなんですが、ブームの末期にもなるとさすがにネタも切れてしまったのか、組合せの意外性だけで作られるようになってましたよねぇ。相棒が犬とか宇宙人とか、はたまた二人ともゾンビとか。まぁ、こういうブーム末期のトンチンカンさは結構好きなんですけどね。

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【ストーリー】
汚職警官摘発のため強盗団に潜入し捜査をしていた警官バスターは、強盗団のボスに銃撃され重傷を負ってしまう。一方、その強盗団に部族の聖なる槍を奪われ兄も殺されたラコタ・インディアンのハンクは、重傷のバスターを救い、彼と共に強盗団を追うのだが…。

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ヒドゥン』のジャック・ショルダーによるバディアクション。内容的にはいがみ合っていた二人がいつの間にか仲良くなる、いつものアレで。
ヒドゥン』を撮った監督とは思えぬほどキレの悪いアクションと、非常に要領の悪い展開がまどろっかしい本作。20年以上前の作品であることを差し引いても、このテンポの悪さは致命的。バディムービーとしての面白さも“相棒がインディアン”って奇抜さに頼りっ放しのせいか、二人の関係性が変化する転機などが非常に不明瞭なので、「このコンビで挑む他の事件が観たい!」って思わせるまでの魅力が生まれていない。
ただまぁ、重傷の人間をあっという間に治せるのも、走行中の電車から対向列車に飛び移れるのも、犬がやたらと懐くのも全て“インディアンだから”で済まそうとするこのトンチンカンさは、全方面に気を遣う昨今の作品ではなかなか味わえない珍妙さで、案外嫌いじゃない。

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立場的には『レッドブル』におけるジェームズ・ベルーシであるバスターに扮するのは、『フラッシュバック』『フラットライナーズ』のキーファー・サザーランド。口髭に粗野な振る舞いで一所懸命背伸びをしているが、残念ながら本人の願いとは裏腹に幼さと可愛らしさが見え隠れ。本人も既存のイメージから脱却するため、必死だったんでしょうねぇ。
一方のハンクに扮しているのは、キーファーとは『ヤングガン』で共演済みである、『戦火の勇気』のルー・ダイアモンド・フィリップス。扱いがほとんど『マッハ!』におけるトニー・ジャーだったハンク役ではあるが、大都会と神秘の世界の双方に接点を持つ役柄を好演。ただ、どんな役柄でもしっかり演じ切れる実力と存在感が、逆に“神秘性担当”や人種バランスを整えるための都合の良い使われ方をされてしまう要因にもなっている感じもして、なんとも歯がゆい。そんな二人の再会を喜ぶラストの掛け合いが、バスター「また俺を見つけられたら、また会おう」、ハンク「俺は前も見つけただろ」、バスター「そうだったな…」と、敢えてそんな目線で観なくても妖しく見えちゃうのは面白かったなぁと。ルーの真っ直ぐ過ぎる眼差しに対し、キーファーはにかんで返してましたし
その他、『ロストボーイ』でキーファーと共演済みのジェイミー・ガーツや、生憎私は観てないので分からないんですが、多分“プリズン・ブレイク”を観ていた人にはお馴染なのであろう『ヒットマン』のロバート・ネッパーらも出演。個人的には、“ミレニアム”のボブ・ブレッチャーこと『ザ・スナイパー』のビル・スミトロヴィッチを見れたのが一番嬉しかったなぁと。

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型を破ろうと必死な男と、型にはまってしまった男の物語でも

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posted by たお at 23:59 | Comment(2) | TrackBack(1) | 前にも観たアレ■ら行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月07日

ローズマリー (The Prowler)

監督 ジョセフ・ジトー 主演 ヴィッキー・ドーソン
1981年 アメリカ映画 89分 ホラー 採点★★★

実家がこの田舎町では割と知られた商店だったせいか、誰に会っても「あ、○○さんとこの息子さん!」と声を掛けられていた私。そんな昔の話、深夜に飲物でも買いに行こうと外を歩いてると、一台のパトカーが私の傍にスススーっと停車。若い警官が「チミチミ、こんな時間に何やってんだい?」と聞こうとするや否や、助手席にいた年配の警官が「○○さんとこの息子かい?じゃ、いいよいいよ」と何も聞かずに行ってしまう。「私が犯罪者だったらどうするんだろ?」と、当時ちょっと思ったもので。

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【ストーリー】
終戦に浮かれる1945年のアメリカ。とある女学院でカップルが殺される凄惨な事件が発生。犯人が捕まらないまま35年が経過していた。時を経て、その事件以来禁止されていた卒業パーティが開催されることになったのだが、またもや殺人事件が発生し…。

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ジョセフ・ジトーとトム・サヴィーニの『13日の金曜日・完結編』コンビが贈る、フラれ男が大活躍するスラッシャー・ホラー。一年に一回は思い出す『ハロウィン』や『血のバレンタイン』のように祝祭日と関係してないせいか、劇場で観たっきり思い出す事のなかった作品だったんですが、観直してみたら意外と隅々覚えていて驚いた。
過去に起きた凄惨な事件が、些細なきっかけ(得てして乱痴気騒ぎ)で再び起き、創意工夫が凝らされた殺害方法で犠牲者数を積み重ねていった挙句、殺人鬼がヒロインに返り討ちに遭う、非常によくあるパターンの本作。ミステリーの体を成していない犯人探しや、犯行再開の動機がさっぱり分からない殺人鬼、この手の作品のヒロインはまず脱がないってことを考えれば、下手にセクシーな女優をヒロインに据えられるとストレスが溜まってしょうがないとは言え、やたらと頭のでかいヒーローにゴツイ輪郭の中央に顔のパーツが集まったヒロインという、非常に残念なカップルが中心に据えられているなど、問題も結構山積み。ラストのキャリーオチも別にいらない。
しかしながら、そんな問題は別にどうでもいい。そもそも、そんな所がきちんとしている映画が観たかったら、この作品はまず手に取らないですし。重要なのは、殺戮シーンがイカしているかどうかのみ。その一点に集中するならば、もう本作は断然合格。

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短刀が頭にズブー!白目がグリー!と、序盤から強烈なゴア描写で飛ばす本作。それ以外にも、裸体にピッチフォークが突き刺さり、プールに沈められた犠牲者の喉の傷口から気泡がゴボリと吹き出し(装置のトラブルのせいらしいですが)、トドメに殺人鬼の頭をショットガンで吹き飛ばす、サービスショットのてんこ盛り。しかも、そのどれもこれもがショック具合もクォリティも圧巻の、トム・サヴィーニ自身「これが最高の仕事!」と言うだけある見事な仕事っぷり。ジョセフ・ジトーと共に舞台裏をキャッキャと盛り上がりながら話す音声解説で、しきりに「コレ、CGIじゃないんだぜ!」と語るトム・サヴィーニが、なんか可愛かったですねぇ。
主要キャスト以上に、殺人鬼がどんだけクールかがこの手の作品にとっては重要なポイント。原題通り“不審者”とクールさの欠片もない呼ばれ方をする本作の殺人鬼なんですが、軍服に迷彩の布で顔を覆ったその佇まいはなかなかカッコ良い。農民でもないのに主なる武器が農具のピッチフォークだったり、35年も失恋を引きずってる未練がましさはアレとして、見た感じはとっても男らしい。
そう言えば、原題の“The Prowler”をグーグルで翻訳してみたんですが、出てきた結果がかつてのビデオタイトルでもある“ローズマリーキラー”。グーグルさん、気を効かせ過ぎです…

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確かに全身が不審

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posted by たお at 20:27 | Comment(0) | TrackBack(0) | 前にも観たアレ■ら行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月28日

レッド・ヒル (Red Hill)

監督 パトリック・ヒューズ 主演 ライアン・クワンテン
2010年 オーストラリア映画 95分 アクション 採点★★★

感情の起伏が激しいわけでもなければ、人前で怒る事もまずないにも関わらず、「怒ったら怖そうだよね」とよく言われてしまう私。そう言われるだけならまだしも、「あの人キレたら怖いから、逆らわない方が良いよ」と、まるで過去に相当怒ったことがあるかのような言われよう。失礼な。

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【ストーリー】
身重の妻の身体を案じ、都会から辺境の地レッド・ヒルへと移り住んだ若き警官シェーン。その赴任初日、妻殺しの罪で投獄されていたかつての住人ジミー・コンウェイが脱獄したとのニュースが流れ、警察署内は騒然となる。ほどなく町へと現れたジミーは、次々と警官や住人らを血祭りに上げていくのだが、彼が町に戻ってきたのにはある理由があった。その理由を知ったシェーンは…。

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長編映画初メガホンとなるパトリック・ヒューズ製作・監督・脚本による、西部劇風味たっぷりのアボリジニ・リベンジ・アクション。イタリア製の西部劇をマカロニ(スパゲティ)ウエスタンと呼ぶならば、オーストラリア製のウエスタンは何て呼べばいいんでしょうねぇ?カンガルー・ウエスタン?
殺人鬼の真の目的がちょっとしたツイストになってる作品ではありますが、予告編でネタが割れてしまってますし、わざわざ隠すようなネタでもないのでハッキリと書けば、妻を無残に殺された揚句に無実の罪を着せられ男の復讐を描いた本作。直球ど真ん中の話である。その直球ならではのストイックさとスピード感、殺人鬼に秘められたあまりにも悲痛な過去ががストレートに伝わるなかなかの一本に仕上がっている。ストーリーからずっとハブにされていた主人公が思わぬ大活躍を見せるクライマックスも、なかなか胸のすく出来。エッセンス程度だった“アボリジニ”ってのをもう少し前面に押し出せてれば独特の味わいがもっと出たとは思うのだが、そもそもの狙いがそんなメッセージ性よりも直球の復讐劇にあるんだろうから、それは贅沢な願いといった所なのかなぁと。最初っから最後まで武器がブーメランだったりしたら、面白いけどカッコ良くはありませんしねぇ。
きっと殺人鬼と何かしらのリンクをさせたかったであろう黒豹が、ただそこらを右往左往するだけの意味不明の存在になっていたりなど、勢いに任せてしまった粗さも目立ちはするが、『プロポジション -血の誓約-』のトム・E・ルイスが扮したアボリジニ・キラーのカッコ良さや、『マッドマックス』のグースことスティーヴ・ビズレーを久しぶりに見れた嬉しさがその辺をカバーした一本で。

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同情はしても、息子にジミーって名前だけは付けないんだろうなぁ

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posted by たお at 02:15 | Comment(2) | TrackBack(1) | 前にも観たアレ■ら行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月26日

ロスト・アイズ (Los ojos de Julia)

監督 ギリェム・モラレス 主演 ベレン・ルエダ
2010年 スペイン映画 112分 サスペンス 採点★★★

先日、何気に高校の卒業アルバムを眺めてたら、3年間同じクラスだったのにもかかわらず何の思い出もエピソードもない、それこそ居たことすら覚えていないクラスメイトを発見。まぁ、一緒に遊んでいた連中が全く別だとか、私の記憶能力があんまりにもお粗末だから覚えていないんだと思いますが、もしこっちは覚えてないのに、向こうは私に関する思い出をたんまりと持ってたりしたら、それはちょっと怖いなぁと思いましたよってことで。

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【ストーリー】
徐々に視力を失う先天的な病を患う双子の姉妹、フリアとサラ。ある日、完全に視力を失い角膜手術を受けたばかりのサラが自殺。その死に不審を感じたフリアは独自に調査を始めると、サラには恋人がいたことが分かる。しかし、その恋人の顔を記憶している者は誰もいなかった。フリアはさらに調査を進めるが、視力を失っていくにつれ、何者かの気配を身辺に感じるようになり…。

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パンズ・ラビリンス』のギレルモ・デル・トロ製作で贈るサイコ・スリラー。新鋭のギリェム・モラレスがメガホンを握り、『永遠のこどもたち』のベレン・ルエダがフリア/サラの二役に扮する。
ぼんやりとネタバレしますからね
姉を死に追いやった存在が霊的なものなのか、視力を失う恐怖が生み出した妄想なのか、はたまたビックリするくらい影の薄い男なのかを、二転三転しながら解き明かしていく本作。捻りに捻った挙句、予想外の角度で直球が投げ込まれるようなオチですし、真面目に考えれば腹立たしさすら感じるネタではあるんですが、それはそれでビックリしたんで良しと。“道を歩いていると人によくぶつかる”奴って、実際よくいますし。
夫婦愛を軸に、誰にも気づかれない男の苦悩、視力を失う恐怖、影の薄い者同士の熾烈な争いなどごった煮的に放り込んでおきながらも、一本の作品として成立させた本作。ホラー的な展開からスリラーへと移行する、二段構えの構成も飽きさせない作り。若干の冗長さは否めないが、無駄にカメラワークがエロ目線だったりするんで、熟女好きならその辺も気にならないのではと。個人的には「もうちょっと若い子も…」とは思いましたが。

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気付かれないってのも、ある意味羨ましい能力

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posted by たお at 11:19 | Comment(4) | TrackBack(13) | 前にも観たアレ■ら行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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