2000年 アメリカ映画 119分 アクション 採点★★★★
ナントカ山に登る映画のようにハッキリと描かなくても、男同士の友情には傍から見てしまうとゲイの香りがしてしまうもの。やはり異性の友人と一緒にいるのと違い、ふいに来る性衝動に襲われなくて済むってのは、非常に気楽。もちろん性衝動だけの問題ではなく、こんなワガママで自分勝手な私でさえ、異性と一緒だと何かと気を遣っているようで、いるだけで疲れてしまうことも。まぁ、気遣いをしていること自体、気付かれないことがほとんどですが。

【ストーリー】
小悪党のパーカーとロングボーは、ふとした切欠で大富豪の子供を宿した代理母ロビンの存在を知る。一山当てようと早速ロビンを誘拐する二人であったが、その大富豪が闇社会と繋がっており、二人は殺し屋に追われることに…。

ハッキリと描いていなくても、登場人物がゲイであることを、もしくはそう見えるようにも取れるようにホンノリと匂わせる作品は少なくない。『アラビアのロレンス』然り、『俺たちに明日はない』然り、そして『明日に向かって撃て』然り。その『明日に向かって撃て』のブッチとサンダンスの本名である、パーカーとロングボーを主人公らが名乗る本作。必死に「ゲイじゃない!」と否定しておりましたねぇ。
『ユージュアル・サスペクツ』の脚本家の初監督作として大いに話題になったが、「話が薄っぺら」「主人公が何を考えてるのか分からない」と散々でもあった一本。確かに脚本家が作った割には、物語の背景はスッカスカだし、展開も非常に場当たり的。主人公らに至っては、何を考えているのか、結局何が言いたかったのか最後までサッパリ分からない。しかし、それはあくまで“脚本家が撮った割りには”である。じゃぁ、マッカリーは本職である脚本家を捨て何をしたかったのかと言えば、“カッコイイ銃撃戦を描く”こと。それだけ。一介のチンピラにしては『ヒート』のデ・ニーロ一家並の重装備で、『ザ・ミッション 非情の掟』のアンソニー・ウォン一座並の見事な動きを見せるのも、それで納得。納得しないと、損ですし。実際、誘拐シーンにおける訓練された男達がお互いの背中をカバーしながら見せる美しいまでの身のこなし、ドアを開けたら戦場となっている展開の見事さ、つい「なるほど!」と膝を打ってしまうカーチェイスなど、オープニング30分間の流れるような繋がりには身震いをしてしまう。キャラクターの掘り下げが特にあるわけでもない中盤はダレるものの、ペキンパー作品を髣髴させるメキシコの売春宿で展開されるクライマックスも、その痛点を刺激する負傷描写も含め見事なもの。
序盤で散々いじってた“ゲイ遊び”が中盤以降スッカリ忘れ去られていたりと、非常に不器用で雑な作品であることは否めないが、作り手が何を差し置いてもどうしても見せたいものがハッキリとしている作品は嫌いになれず、そこだけは完成度もすこぶる高いので、評価も高めで。

登場人物の扱いはぞんざいなものの、キャスティングは非常に豪華な本作。
最近では『クラッシュ』『父親たちの星条旗』と、大人の俳優として歩み始めたライアン・フィリップであるが、期待の若手として注目されるも、いつの間にやら“リース・ウィザースプーンの旦那”としてしか認識されなくなっていた頃だけに、イメージ打破に躍起になってる様子が伺えてカワイイ。ベニチオ・デル・トロが機械的で何を考えているのか伝わりづらい役柄だけに、ライアン・フィリップの必死さがより一層伝わってきたりも。
テイ・ディグスのキャラが『リベリオン 反逆者』の時とほとんど変わっていないのはご愛嬌として、実は大好きな女優の一人であるジュリエット・ルイスが、凄まじい雄叫びとガニ股以外印象に残らないのは残念。それでも、最近では『デビルズ・リジェクト〜マーダー・ライド・ショー2〜』で70年代風味を醸し出すスパイスとして活用されていたジェフリー・ルイスとの父娘共演は、やはり嬉しいもの。そんなジェフリー・ルイス同様、70年代風味を醸し出すスパイスとしてしか機能していない大御所ジェームズ・カーンの扱いは非常に雑ではあるが、「この世界、年寄りを見たら“生き残った者”と思え」はシビレるセリフ。年取ったら、マネしよ。

てことは、左がポール・ニューマンで、右がロバート・レッドフォード
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