2012年01月04日

ザ・バッド (The Maiden Heist)

監督 ピート・ヒューイット 主演 クリストファー・ウォーケン
2009年 アメリカ映画 90分 コメディ 採点★★★

うっかり死んでしまわない限りは、近いうちに必ず訪れるであろう老後。その老後を如何に楽しく過ごすかってのが懸案事項になってるようなんですが、まぁなんとか楽しく過ごす自信だけはあったりもする私。“暇を如何に楽しく潰すか?”が、もう趣味の一つのようなもんですし。

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【ストーリー】
愛する絵画がデンマークへと移送されてしまう事を知りショックを受ける、ベテラン警備員のロジャー。そんな彼同様、愛する絵画を失うことにショックを受けたチャーリーやジョージと知り合ったロジャーは、その絵画を盗み出す決意をする。彼らは用意した贋作とすり替えるため、美術品が保管されている倉庫へと忍び込むのだが…。

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それっぽいタイトルとジャケットでアクション映画に成りすまし店に置かれているが、中身は老人がワタワタ右往左往する老人クライム・コメディなのでご注意を。主演であるモーガン・フリーマンとウィリアム・H・メイシーも製作者として名を連ねた、どこかフランス製コメディを思わせる、洗練されてるのにバタ臭い仕上がりの一本。
「大好きな絵画が遠くへ行っちゃう!」→「じゃぁ、盗もう!」って安易さに驚かされるが、そんな安易な発想しか浮かばない素人集団ならではの行き当たりばったりな笑いに包まれた本作。盗みだす為に贋作製作を思い付くも、“金がない→奥さんのヘソクリに手を出す→瞬く間にバレる→怒られる→嘘をつく→にっちもさっちも行かなくなる”と、この一事が万事行き当たりばったり様に「男子ってのは老人になっても男子なんだなぁ」と、可笑しいやら哀しいやら。色々ウヤムヤにしてフワっと軟着陸してしまう結末など難点も少なくないし、傑作と呼ぶには程遠い作品でもあるのだが、この他人事とは思えぬ思い付きのみで動く様が嫌いにはなれない一本で。

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作品選びの根拠が“現場が楽しそう”って感じになってきた、『燃えよ!ピンポン』『もしも昨日が選べたら』のクリストファー・ウォーケンが出ずっぱりってのが嬉しい本作。かつての人を人とは思わぬ冷血ぶりなんぞ微塵も感じさせない、見事なまでのコメディバージョンでの仕事っぷり。そのクリストファー・ウォーケンを中心に、『RED/レッド』のモーガン・フリーマンと、この二人に挟まれるとまだまだ若手扱いになってしまう『カラー・オブ・ハート』のウィリアム・H・メイシーといった芸達者三人組が揃った本作。なんかもう出来云々をさて置いて、この三人が中心になったコメディを観れたってだけで嬉しい
また、この三人に負けず劣らずの芸達者ぶりを披露した『ミスト』のマーシャ・ゲイ・ハーデンや、監督のピーター・ヒューイットとは『ガーフィールド』からの付き合いでもある『ロード・トリップ』のブレッキン・メイヤーなども共演。
それにしても、先にも書きましたがすっかりアクション映画として店頭に並べられてる本作。まぁ珍しいことではないんですが、そうしてしまった根拠が分からず。冒頭5分の妄想シーンだけ観て販売方針を決めちゃったのか、「コメディじゃ売れねぇからアクションってことにしちゃおう」って詐欺路線決定にしちゃったのか。まぁ概ね後者なんでしょうけど、それはそれで“格付け的にはアクション>コメディ、内容的にはアクション<コメディ”って決めつけられてるようで、なんとも癪に触るなぁと。

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プロが集まり素人仕事

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2012年01月03日

ベティ・サイズモア (Nurse Betty)

監督 ニール・ラビュート 主演 レニー・ゼルウィガー
2000年 ドイツ/アメリカ映画 112分 コメディ 採点★★★★

一応サブタレは映画ブログのつもりなんで役者についても触れることが多いんですが、書いてることってのはキャラクターや役者のパブリックイメージを基に、あーだこーだ憶測と思い込みと勘違いなものばかり。親しいわけでもないんで、その役者がどんな人なのか知る由もなし。でも、役柄や表向きのイメージを信じ切っちゃってる人ってのも、決して少なくないんですよねぇ。

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【ストーリー】
昼メロ“愛のすべて”に夢中のベティは、そのドラマの主人公デヴィッドと結ばれる事を日々夢見るウェイトレス。そんなある日、ベティは自宅で殺し屋に夫のデルが殺される現場を目撃してしまう。ショックのあまり現実と妄想の区別がつかなくなったベティは、デヴィッドが待っているであろうロサンゼルスに一人旅立ってしまう。一方の殺し屋コンビも、ベティを追ってロサンゼルスへと向かうのだが…。

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ニコケイ版『ウィッカーマン』を作っちゃったニール・ラビュートによる、イチゴ大福だと思って食べてみたら、イチゴの代わりに生肉が入ってたみたいな感じのコメディ。
夢見がちな女性が夢見たまま大都会へ行き珍騒動を起こすって物語自体も、主人公のベティのキャラクターもフンワリしているので、全体的にフワフワした雰囲気が漂っているのだが、それはあくまで表面だけで、薄皮一枚隔てた内部はかなりドロドロした本作。エゴの塊のような業界人や、冷血な殺し屋コンビとは対照的にベティは善人なのだが、但し書きとして“精神は完全に崩壊しているが”と付いてしまう設定も強烈。脳内がすっかりパラダイスと化したベティが、なんだかんだと願いを叶え続けていく狂人無双状態に対し、素直に笑っていいのかどうか迷ってしまう際どい作りも見事。
ソフトな笑いと血生臭い暴力描写が混在しているのも特徴である本作。表向きのイメージとは裏腹に幼い頃から幸せとは無縁のベティを筆頭に、壮絶な運命が待ち受ける殺し屋コンビ、プライドが破壊される人気俳優など、冷静に考えると誰一人幸せになっていないこの物語を、しっかり最後まで笑わせたまま締め括る脚本も上手い。ある種『シリアル・ママ』と同様に、いつまでも記憶に残る意欲/異色作になっているのではと。

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主人公のベティに扮しているのは、『ケース39』のレニー・ゼルウィガー。決して絶世の美女ってわけではないのだが、だからこそこんな気立ての良い役柄が良く似合う。完全にゲシュタルト崩壊を起こしちゃってるキャラではあるんですが、単なるアホちゃん風情で留めたのも彼女持ち前の柔らかさ故ではと。
一方の殺し屋コンビに扮したのが、『RED/レッド』『ゴーン・ベイビー・ゴーン』のモーガン・フリーマンと、『アダルトボーイズ青春白書』『ロンゲスト・ヤード』のクリス・ロック。毅然とした老殺し屋に扮したモーガン・フリーマンはいつも通りの安定感だったのだが、それ以上に強烈な印象を放ったのがクリス・ロック。いつもの笑いにコーティングされた“怖さ”から笑いを取り除いた、純粋な怖さを感じさせる怪演。オチを持ってこないクリス・ロックの怖いこと怖いこと
その他、『世界侵略:ロサンゼルス決戦』のアーロン・エッカートや、今回も見事なまでの胡散臭さだった『オー!マイ・ゴースト』のグレッグ・キニア、その瞳の動きから不安に駆られた神経質な役柄を多く演じる『コンスタンティン』のプルイット・テイラー・ヴィンスらも共演しているが、個人的に嬉しかったのは『オフロでGO!!!!! タイムマシンはジェット式』のクリスピン・グローヴァーの出演。ある意味劇中で唯一幸せになる役柄を演じてるのがクリスピンってのが、なんとも強烈でもあるなぁと。

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妄想中くらいは全部叶えたい

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2011年12月29日

ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える (The Hangover Part II)

監督 トッド・フィリップス 主演 ブラッドリー・クーパー
2011年 アメリカ映画 102分 コメディ 採点★★★

アルコールとの相性が著しく良いのか悪いのか、飲めども飲めどもほとんど変わらない私。限界量を超えれば、普段の私のままマーライオン。そんなんだから、酔っぱらって豹変しアレコレしでかしちゃう方々を見ると、ちょっと羨ましいんですよねぇ。酒のせいにしてみたいもんですねぇ

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【ストーリー】
ステュの結婚式に出席するため、遥々タイへとやって来た悪友のフィルとダグ、そして問題児のアラン。前回の教訓を活かしビール一本のみで語り合う彼らであったが、翌朝目覚めるとまたもや酷い二日酔いで、昨夜の記憶がない。何処にいるのかも分からない。アランは坊主に、ステュは顔面刺青、一緒にいたはずの花嫁の弟は行方不明で、その弟の指だけが部屋にあり…。

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前作『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』のキャストが再び集結し、タイのバンコクを舞台に大騒動を巻き起こす二日酔いコメディ。監督はもちろん『デュー・デート 〜出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断〜』のトッド・フィリップス。
前作同様、失った記憶を僅かな手掛かりを基に探り出すと予想外の出来事が判明する、暗闇を走るジェットコースターみたいな本作。バンコクを舞台にしている事もあってか、事件の“とんでもない”具合も下品さも格段と向上。観客参加型の趣もより強まった印象も。
ただまぁ、基本的に前作と同様の展開である為か、予想外の方向から剛速球が飛んでくるような驚きの薄い、二番煎じの印象は拭えず。ケン・チョンの出番が格段とボリュームアップされてるのは嬉しいのだが、笑いそのものは概ね想定内。その辺が、予想を裏切る展開に翻弄される面白さってよりは、とんでもない出来事そのものを登場人物と一緒に騒ぎ倒す、ジョイライド的な印象になった要因かと。最近の作品を観る限り、トッド・フィリップスの中では“参加型コメディ”ってのが流行っているのかなぁと思えたりも。
ところで、私の観たブルーレイ版のみの仕様なのかどうなのか分かりませんが、なんともモザイクが鬱陶しい。股間ならまだしも、オカマのオッパイにすらモザイク。前作をウッカリ観てしまった淑女の方々が「下品ざますわぁ!」と騒いだのかも知れませんが、それはお上品な方々が観る作品を間違っただけであって、その層へ対してわざわざ配慮するような問題でもないと思うんですけどねぇ。まぁ、憶測ですけどね。

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前作同様、“当事者”ってよりは“参加者”だった『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』のブラッドリー・クーパーを筆頭に、歯は失わないが何か男として大切な物を失ってしまったステュ役のエド・ヘルムズ、同じような役柄ばかり観ているので苦手なタイプの一人となりつつあるザック・ガリフィナーキスと、前作のキャストが揃った本作。今回も別な意味で消えていた『ナショナル・トレジャー』のジャスティン・バーサや、歌声に破壊力が増したマイク・タイソンも、もちろん登場。
その他アン・リーの息子であるメイソン・リーや、『シューテム・アップ』のポール・ジアマッティ、リーアム・ニーソンの代役での登場だったらしい『きみに読む物語』のニック・カサヴェテスらもなかなか印象に残る好演を見せてるが、やっぱり『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』のケン・チョンには敵わない。何か先っぽをむき出しで登場する序盤から、全てを粉砕する破壊力で突き進むケン・チョンは、いつも通り面白いを軽く通り越して怖い。特典として収められていた“チャウと行くバンコク・ツアー”での鬱陶しさたるや、もう名人芸の域!

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次は違う原因ってのも見せてもらいたい

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posted by たお at 10:37 | Comment(4) | TrackBack(30) | 前にも観たアレ■は行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月28日

ハンナ (Hanna)

監督 ジョー・ライト 主演 シアーシャ・ローナン
2011年 アメリカ/イギリス/ドイツ映画 111分 アクション 採点★★★

5年生になる娘が、MP3プレーヤーが欲しいと言い始めた。大いに偏った曲ばかり流れる我が家で育っただけに、きっとニック・カーショウやスネークマンショーでも聴きたいんだろうと思いきや、どうやら聴きたいのはAKBやらKARAやら我が家では名前すら出ない方々のようで。子供ってのは、自分の世界をしっかり持って成長するんですねぇ。お父さんは嬉しいんで、そのMP3プレーヤーにみっちみちとブラック・サバスを入れてやろうと思います

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【ストーリー】
元CIA工作員の父によって、幼い頃から戦闘テクニックを叩き込まれながらフィンランドの山奥でひっそりと暮らしていた少女ハンナ。16歳になったある日、彼女は父のもとを離れ知らない世界へ旅立つ事を決心する。そんなハンナに父は、外の世界では元同僚であるCIA捜査官マリッサに命を狙われること、そしてマリッサを殺さねば自らの命がないことを忠告するのだが…。

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人間兵器として育てられた少女の過酷な戦いを描いた、『プライドと偏見』のジョー・ライトによる一風変わったアクション・サスペンス。
“一風変わった”としたのも、物語の起点も終点もフワっとした、アクション映画としての現実味にもキレ味にも著しく欠けた一本だから。本作を“アクション映画”としてのみ観るならば、「柄にもなくアクションなんて撮るから…」で済ませられちゃう作品でも。ただ、“森で育った少女が悪い魔女を倒す為に外の世界に旅立ち、様々な経験を経て森に戻る”という、グリム童話風アクションとしてはなかなか興味深い。人殺しが得意なラプンツェルみたいな。あるいは、童話風『炎の少女チャーリー』。
極寒の氷原から無機質な穴倉へと場面が写り、その穴倉を抜けると灼熱の砂漠が待っている幻想的な映像と展開も、童話としての面白さを加味している。まぁ、こっちはこっちでやっぱりフワっとしていて童話としての現実味も少なく、いずれにしろどっちつかずの印象は拭えないんですけど。映像特典として入っていた“森に帰る”別エンディングの方が、より童話としての締まりが生まれたのかなぁとも。ケミカル・ブラザーズによるサントラの、自己主張の強さも気になる所で。
ただまぁ、役者の魅力はとことん引き出されているし、なんと言っても変わり者の親であることを浮かれ気味に歌った、デヴィッド・ボウイの名親バカソング“クークス”も流れるので、評価は若干甘めに。

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主人公のハンナに扮するのは、ジョー・ライトとは『つぐない』でも組んでいる『ラブリーボーン』のシアーシャ・ローナン。「あのファンタジー顔で人間兵器?」と不安もあったが、しっかりと身体を作り込んできた上に、物語自体がファンタジーだったので全く問題なし。浮世離れさえしているその透明感が見事にハマり、作り手すら彼女を撮るのに夢中って感じすら。生まれるのがもう数年早ければ、きっと『ロード・オブ・ザ・リング』に出てたんだろうなぁ、ってな浮世離れ感が素晴らしい。『ラブリーボーン』以降どう成長するのか心配だったのだが、大人一歩手前の脆い足場にギリギリ立っている雰囲気が保たれていたので、一安心。
一方、そんなハンナを追うCIA捜査官と言うか悪い魔女役には、これまた浮世離れ名役をやらせれば天下一品である『ロビン・フッド』のケイト・ブランシェット。グリム童話の魔女がスーツを着て現代にやって来たら、まさにこんな感じ。シアーシャ・ローナンと共にファンタジー顔なので、こっちの方が本当の親子に見えることも。
その他、“森の人”って朴訥さが似合っていた『スター・トレック』のエリック・バナや、魔女の手下の小鬼って感じだった『ワルキューレ』のトム・ホランダー、俗世間の代表として登場するには若干世間からズレてた『シックス・センス』のオリヴィア・ウィリアムズ、そして『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』のジェイソン・フレミングが久々の素顔での登場ってのがなんとも嬉しい、好キャスティングが魅力でもある一本で。

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シアーシャ・ローナンをただひたすら愛でる作品になっちゃった感じも

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2011年12月24日

ピラニア (Piranha)

監督 アレクサンドル・アジャ 主演 エリザベス・シュー
2010年 アメリカ映画 88分 ホラー 採点★★★

いやぁもう、問答無用にクリスマスですねぇ。この時期以外は全く相手にされない“デヴィッド・ボウイ&ビング・クロスビー/リトル・ドラマー・ボーイ”も、ジワジワ閲覧数を伸ばしておりますし。サブタレもそんなイベント事に敏感でありたいので、今日のレビューは『ピラニア』で。水着と血飛沫でメリークリスマス!

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【ストーリー】
“濡れ濡れTシャツコンテスト”が開催され、水着姿の若者で大賑わいのヴィクトリア湖。そこに前日の地震で口を開けた地底湖から、凶暴な古代ピラニアが大挙。血飛沫と肉片と水着が飛び交う、阿鼻叫喚の地獄絵図が展開される。

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山ほど製作された『ジョーズ』の亜流の中ではダントツの面白さを誇った、ロジャー・コーマン製作のもと『グレムリン』のジョー・ダンテが作り上げた『ピラニア』を、『ハイテンション』『ヒルズ・ハブ・アイズ』のアレクサンドル・アジャがリメイクしたお下劣ホラー。製作陣にはもちろんチャコ・ヴァン・リューウェン(筑波久子)の名も
オープニングにリチャード・ドレイファスが『ジョーズ』の扮装で現れた時点で、「あぁ、コレはそういう映画なんだなぁ」と心の準備をさせてくれる本作。あとはその心の準備と期待を全く裏切らない、お下劣ショーのオンパレード。緩いエロとグロでホドホドのフラストレーションを溜めさせる前半から、一気呵成に血肉ショーへとなだれ込むクライマックスの構成も、亜流映画のスタイルとして非常に正しい。狙い澄ました下品ってのは正直好みではないのだが(隠しきれずに出てしまう下品は大好き!)、ここまで徹底されればぐうの音も出ず。多少垂れていようが、と言うか「重力に負けてしまってるのが、これまたイイんだろうがよ!」と思ってしまう私にとって、バレーボールをくっ付けたようなサイボーグオッパイばかり出てきてしまうのはイマイチ嬉しくないんですが、これまた数は出てくるので小さなガッツポーズ上げること度々。これでもう少し“観光収入を重視する町長”とか“屁理屈だけの環境保護団体”とか、全く心のこもっていない取って付けただけの説教が入ってれば、お下劣具合も格段とアップしたのになぁとも。汁粉の味付けにちょいと入れる塩みたいな感じで。
そう言えば、劇場公開時は3Dだった本作。映画の内容以上の惨状を晒したであろう吹替えはさて置いて、と言う事は胸の詰め物がプカプカ浮く様や、食いちぎられたチ○ポが目の前で回る様が飛び出してたんでしょうねぇ。ピラニアが飛びついてくる描写以上に、オッパイが飛び出してたんでしょうねぇ。いいなぁ、飛び出すオッパイ。なんか、3D映画に「奥行きがぁ、立体感がぁ」と仰られる方々も多いですが、立体なんて所詮ギミック。オッパイやチ○ポが飛び出してナンボ!

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その名を聞くと未だに『ベビーシッター・アドベンチャー』が浮かんでしまう私にとって、すっかり熟女と化したその様が本編以上に衝撃的だった『インビジブル』のエリザベス・シューを筆頭に、エリック・バナの輪郭にジョージ・クルーニーの顔のパーツがくっ付いたかのような、『俺たちステップ・ブラザース -義兄弟-』のアダム・スコット、世代を一つ間に挟んだらお祖父さんの面影が消え失せてしまったスティーヴン・R・マックイーンや、内容にリンクした素晴らしい弾けっぷりを見せた『ミッション・トゥ・マーズ』のジェリー・オコンネルなど、なかなかお下品なキャスティングが施された本作。
その他にも、先に挙げた『RED/レッド』のリチャード・ドレイファスや、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の老けメイクのせいか25年以上歳を取ってないかのように見えちゃうスター・トレック3/ミスター・スポックを探せ!』のクリストファー・ロイド、別な意味で本作を一度は吹替えで観て頂きたい『デス・レース2』のヴィング・レイムスに、お久しぶりな感じもする『ソウ3』のディナ・メイヤー、逆にこの手の作品では良く見る『ホステル2』のイーライ・ロスなど、サイドも隅々お下品。当初はこれにジョー・ダンテとジェームズ・キャメロンもカメオ出演させたかったようですが、キャメロンに無下に断られたようでオジャンに。ダンテは出る気マンマンだったのに
ところで、“あっちのマットはサメに強いが、こっちのマットはピラニアに弱い”リチャード・ドレイファスが出てきたり、チ○ポがクルクル回ったりと隅々遊び心に溢れていた本作ですけど、ジェリー・オコンネルが乗ってたヨットの“バラクーダ号”って、やっぱりアレですかね?『ジョーズ』の亜流仲間の『バラクーダ』からですかね?

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次は飛ぶの?

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2011年12月14日

ブロス/やつらはときどき帰ってくる (Sometimes They Come Back)

監督 トム・マクローリン 主演 ティム・マシスン
1991年 アメリカ映画 97分 ホラー 採点★★★

別の街の中学に進学し、それ以降各地を転々とする生活を送ってたんで、地元に繋がりってのが全く無い私。地元でばったり知り合いに会っても、互いにうろ覚えなので手探りの会話をほどほどに交わす程度。でも、ずーっと地元にいる人を見ると、子供時代の関係がそのまま現在の関係に影響してる人も案外多い。いつまでも誰かの後輩でいるってのは、私はすげぇイヤだなぁと。

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【ストーリー】
幼い頃に兄を不良に殺された過去を持つジムは、その忌まわしい記憶のある土地に教師として戻ってくる。しかし、死んだはずの不良たちが一人また一人と彼のクラスへ編入してきて…。

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スティーヴン・キングの短編集“深夜勤務”に収められた同名短編を原作としたTVムービー。監督に『13日の金曜日PART6/ジェイソンは生きていた!』のトム・マクローリン、主演に『アニマル・ハウス』のティム・マシスン。
要約すれば『スタンド・バイ・ミー』のキーファー・サザーランドが、はるばる地獄からリチャード・ドレイファスを苛めに帰ってくるって物語の本作。なんでそんな手間を掛けるのかは分かりませんが、多分それはいじめっ子の意地が悪いからではないかと。筋金入りのいじめっ子。
そんな筋金入りのいじめっ子にネチネチと精神的にも社会的信用的にも主人公が追い詰められていく展開なのだが、如何せん短編を基にしたTV映画だけに、追い詰め方もそこからの反撃にも掘り下げが足らず、いまいちカタルシスを感じるまでは至っていないのは残念。お馴染のノスタルジックな描写も、観客の少年時代を思い起こさせるまでには至らず。
ただまぁ、『シャイニング』同様癇癪持ちで地味な名前の教師が、『IT/イット』同様に忌まわしい地にで悪夢を再現する、いつものキング風味をサクっと楽しむには申し分のない一本なのではと。ジョックスに支配される田舎町の学園生活もちょいと垣間見れますし。

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子供の頃、こっ酷く苛められでもしたんですかねぇ

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2011年12月10日

復讐捜査線 (Edge of Darkness)

監督 マーティン・キャンベル 主演 メル・ギブソン
2010年 イギリス/アメリカ映画 117分 サスペンス 採点★★★

人の命の価値や重みってのは一定しないもんですよねぇ。一個人が殺してしまった命の重さと、企業や国家など規模の大きい相手が殺した重さでは全然異なって扱われますし。やっぱりあれなんですかね?あんまり高い所から見下ろしてばかりいると、人が“ゴミのように”見えちゃうんですかね?ヤレヤレ…。

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【ストーリー】
一人娘エマとの久々の再会を果たした、ボストン警察の刑事トーマス・クレイブン。しかし喜びもつかの間、彼らは玄関先で何者かに襲撃され、銃弾を浴びたエマは命を落としてしまう。警察はトーマスを狙った事件として捜査を始めるが、命を狙われるような覚えのない彼は独自に捜査を開始する。エマの身辺を洗い直すトーマスであったが、巨大な敵が彼の前に立ちはだかり…。

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邦題だけを見るとなんかチャック・ノリスが出てきそうな感じだが、高評価を得た英国TVシリーズ“刑事ロニー・クレイブン”を、同シリーズの演出も手掛けた『007/カジノ・ロワイヤル』のマーティン・キャンベル自らメガホンを握り映画化したサスペンス・アクション。
政府とズブズブの巨大企業による放射能汚染”というとても他人事とは思えないテーマをベースに、娘を殺された男が法の枠を超え真相を追究する姿を描いた本作。ちょっと調べればすぐにボロが出そうな陰謀や殺し方の雑さなど、全6話だったオリジナルの物語を一本にしたためか結構ポロポロ取りこぼしてしまっているアレコレを然程気にさせない、骨太でスピーディな展開が魅力。主人公の目的が社会的制裁ではなく個人的な報復にあるってのもこのスピーディさを生み出した要因で、娘の返り血を大切に残したり、幼少期の思い出が次々とフラッシュバックするなど、その主人公の原動力となる“娘への愛情”を描くシーンもなかなかグッとくる。
ただまぁ、主人公が“若くして出世した元凄腕兵士”ってのを背景に持ってるせいか、頭の回転が速く誰よりも強いっていう、物語の中心に居る存在としては絶大な安定感と安心感を生みだす理想的な存在になっているんですが、その安心感が逆にサスペンスを盛り下げてしまっている印象も。いちいち溜飲が下がる大活躍をしてくれる分、ハラハラはしない。なんというか、本当にチャック・ノリスとかセガールが出てきそうな感じ。

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そんな安心感を感じてしまったのも、『ペイバック』のメル・ギブソンが持つアクションスターとしてのイメージ故かと。映画スターとしての老い以上に私生活でのゴタゴタが影響したのか、『サイン』以来8年振りの映画主演となった彼だが、そんなブランクも老いも感じさせない“主演”としての圧倒的な強さと存在感を見せてくれたのは嬉しい限り。加齢も腰の軽さがあった以前のイメージに、どっしりとした安定感を与える良い方向に機能。目つきのイカレ具合も、復讐に燃える父親役にマッチ。普段からあの目つきだったら困りものですが、この作品に関しては問題なし。人としてはアレですが、映画スターとしては嫌いな存在じゃないので、この路線での完全復帰を期待したいところで。
そんなメル・ギブソンを中心に、『デビル』のボヤナ・ノヴァコヴィッチや、役柄がほとんど『ナイロビの蜂』と一緒だったダニー・ヒューストン、『バイオハザード IV アフターライフ』のショーン・ロバーツに、『デイライト』のジェイ・O・サンダースらなど、腰のどっしりと座ったキャスティングが魅力の本作。中でも、人生の幕は正しい行いをもって下ろしたい思いからか、騒動の問題点を的確に判断し、ある意味一番正しい方法で問題を処理した『ロシアン・ルーレット』のレイ・ウィンストンが印象的。当初はロバート・デ・ニーロがキャスティングされていたそうですけど、英国人らしいさり気ない皮肉を効かせるレイ・ウィンストンで正解だったかと。

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理由は何であれ、彼女の父親に押し掛けられるのは非常に嫌なもので

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2011年12月02日

ヘル・レイザー (Hellraiser)

監督 クライヴ・バーカー 主演 アンドリュー・ロビンソン
1987年 イギリス映画 94分 ホラー 採点★★★

暴力と性的興奮が密接に関係しているのと同様に、ホラー映画にもそういった意味合いが込められてたりしますよねぇ。スラッシャー映画の殺人鬼のナイフが男性器をメタファーにしているって、よく言われたりもしますし。でも、これってあくまで男性が加害者である場合に多く適用されるパターンなんですけど、これが女性やゲイだった場合はどう変化するんでしょうねぇ。

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【ストーリー】
究極の快楽を得れるという謎のパズルボックスを手に入れたフランクだったが、魔界から現れた魔道士によって肉体を八つ裂きにされてしまう。しかし、ひょんなことから復活したフランクは、弟の妻でありかつての愛人ジュリアを誘惑し、肉体の復活のため殺人を繰り返させるのだが…。

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早くから自身の作品の映像化に意欲的だった『ミッドナイト・ミート・トレイン』『キャンディマン』のクライヴ・バーカーが、自身の原作“ヘルバウンド・ハート”を自らメガホンを握り映像化した、端的に言えばSMホラー。
究極の快楽を得るために究極の苦痛を味わう男と、その男に精神的にも肉体的にも支配され服従する女の官能的でもある物語を、凄まじい肉体破損描写と共に描いた本作。よくホラーで見られる“刺す・斬る・潰す”ではなく、皮膚表面を徹底的に“引裂く”行為に執着するのは、ゲイならではの繊細さと過敏さの表れなのであろうか。
快楽と苦痛、支配と服従、現実社会と異世界の密着といったモチーフを持つテーマを、初監督でここまで描き切ったことには感服するものの、正直まだ映像作品として昇華しきれていない印象も。フェチとしての感覚を共有できればいいのであろうが、そうでもない人間としてはもう少しストレートに官能さを出して欲しかったような。

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トップにキャスティングされているのは、『ダーティハリー』『コブラ』のアンドリュー・ロビンソン。彼が良い父親役を演じているのが本作最大のハラハラポイントでもあるんですが、終盤にきっちりと変質者へと変貌を遂げるので一安心。流石さそり
また、見事なまでのM系悪女役を演じ切ったクレア・ヒギンズや、ヘル・レイザーシリーズ以外では観た記憶のないアシュレイ・ローレンスなども印象的ではあるが、本作で最もインパクトを放っているのは、やはり身体の特定の部位を徹底的に痛みつけている扮装で登場する魔道士の面々。特に、その釘の一本一本をジワジワゆっくりと頭部全面に打ちつけていったんだろうなぁと伺えるピンヘッドに扮したダグ・ブラッドレイの、舞台劇然とした堂々としたセリフ回しは貫録も迫力も充分。ホラー界のカリスマキャラとなるのも納得。
因みに、今回はブルーレイで観賞した本作。DVD版は観たことがないので比較できないんですが、映像・音響共に不自然さを感じさせない綺麗さで。映像は綺麗なのにフィルムのノイズはそのままって仕様は謎でしたが。正直「別にDVDでも…」と思えたりもする一本ではありましたが、ピンヘッドのピンの刺さり具合が一本一本確認出来るのは、さすがブルーレイってところかと。まぁ、ボックスの割に相変わらず特典がしょぼいし、そもそもブルーレイは単品で出ていないって不満はありますが。

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殺したいほどアイ・ラブ・ユー

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2011年11月30日

ザ・ファイター (The Fighter)

監督 デヴィッド・O・ラッセル 主演 マーク・ウォールバーグ
2010年 アメリカ映画 116分 ドラマ 採点★★★★

よその家族って、とっても奇異な感じに映る事ってありますよねぇ。たまに遊びに行ったりすると、習慣の違いなり考えの違いなりに「うわぁ」ってなることも。まぁ、自分の家族もちょっと離れた地点から眺めて見れば、なかなか変わってたりもするんですけどね。

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【ストーリー】
低所得者が多く集まる街、ローウェル。かつては“ローウェルの英雄”と呼ばれた元ボクサーで薬物中毒の兄ディッキーをトレーナーに、マッチメイクに無頓着な母をマネージャーに持つミッキーは、そんな家族に振り回される形で連敗続き。一度はボクサーの道を諦めかけていたが、恋人の説得もあり家族のもとを離れ奮起。遂に世界戦に挑むチャンスを手にするのだが…。

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アルツロ・ガッティとの伝説的な“殴り合い”で一躍有名となった実在のボクサー、ミッキー・ウォードの半生を、『スリー・キングス』のデヴィッド・O・ラッセルが映像化した実録ドラマ。
実在の人物を描いている映画を楽しむには、その人物の事を知っているってのが大前提なのだが、本作の観賞後にyoutubeで試合を見て「スゲェ殴り合い!」って思った以外は生憎「ミッキー・ウォードって誰?」状態の私。じゃぁ、さっぱり楽しめなかったかと言えば、そうでもない。TVでよくやってる“貧乏大家族”を見ているような面白さが。まぁ、その手の番組は基本的に見ないし、見てもそこから“日本人が失ったなんやら”とか“家族愛”なんかはくみ取らず、ただただ「うわぁ…」ってなるだけの私なんで、それなりの楽しみ方ではあるんですが。
息子たちを殴り合いの場に放り投げて生計を立てる母親に、過去に一瞬だけスポットが当たったジャンキーの兄。そして、その一瞬の過去の栄光に全員ですがり続ける一家。周囲から白い目で見られる劣等感がより強固に家族を団結させ、家族愛は存在するが一般的なそれとは大分異なるどん底の家族愛で結びつく一家。そんな家族のもとを離れ、最終的に家族愛に気付くような物語であればありきたりの感動を味わえるのかも知れないが、本作はそんな美しい展開はしない。自分の家族の奇異さを気付きながらも、主人公はなんとか妥協点を見つけようとする。ラストの主人公の苦笑いには、「これがうちの家族だから…」という、諦めにも似た感情が見えるような気も。他人の人生を誰にでも分かるように描くのではなく、“他人の人生はその人にしか分からない”ときっぱりと言い切ったような作りが立派。

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貧乏子沢山の一家に生まれ、アイリッシュの血を引き、若い頃は暴れん坊で、兄に導かれ同じ業界に入る。これだけ共通点があれば、『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』『ラブリーボーン』のマーク・ウォールバーグが本作の映像化を熱望するのも納得。役柄がほぼイコールなだけあって、末っ子風情満載の熱演を見せるマーキー・マークだったんですが、ハマり過ぎのせいか“いつものマーク”って感じも大きく印象は案外薄い。
まぁそれもそのはずで、兄のディッキーに扮した『プレステージ』『サラマンダー』のクリスチャン・ベイルが強烈過ぎ。元々持ってる演技力に加え、役柄によって大きく外見をも変えることで定評のあるチャンベイルですが、今回は大幅な減量に髪を抜き、歯までいじる力の入れようで、あたかも本当にそういう人を連れて来てしまったかのような熱演。ディッキー本人も作品のラストに顔を出してるが、見た目はもちろん仕草や話し方まで瓜二つだったのには驚いた。
その他、家族愛のベクトルの向き具合が随分と違う母親役に扮した『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』のメリッサ・レオや、あの環境で自分の意見を述べるという本作中最大の勇気を見せる父親役のジャック・マクギーに、あの一家に喧嘩を売る勝気さが魅力的でもあった『ナイト ミュージアム2』のエイミー・アダムスらも印象的でしたが、やはり本物としか思えない底辺っぷりが凄まじかったミッキーの姉たちのインパクトが強烈でしたねぇ。

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生まれ育った場所からはそうそう抜け出せない

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posted by たお at 12:18 | Comment(8) | TrackBack(41) | 前にも観たアレ■は行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月25日

ヒア アフター (Hereafter)

監督 クリント・イーストウッド 主演 マット・デイモン
2010年 アメリカ映画 129分 ドラマ 採点★★★

“死後の世界”ってのには、常々「あったらいいよなぁ」と思っている私。頭ごなしに否定する気はなし。ただまぁ、「宗教や文化の垣根を越えて、多くの人が似たような体験をしてるんだから」を理由に肯定する気もさらさらなし。痛みや色同様、基本的に同じ脳の組織を持ってる以上は、ある特定の状況で似たような経験をするのは当然の気もしますし、ケネス・アーノルドの目撃した未確認飛行物体が“円盤”と誤報された結果、やたらと丸いUFOばかり目撃されちゃったように、情報の刷り込みってのもあるでしょうしねぇ。なにはともあれ、死んでみないと分からないですよねぇ。で、“死んだら驚いた!”でいいのかと。

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【ストーリー】
バリで津波に巻き込まれ死の淵を彷徨ったジャーナリストのマリー、双子の兄を事故で失ったマーカス、そして死者と話せる能力の為に人生を台無しにしてしまったと、その能力から距離を置いているジョージらは、運命に導かれるかのようにロンドンへとやって来て…。

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クリント・イーストウッド監督、スティーヴン・スピルバーグ製作総指揮の『硫黄島からの手紙』コンビで贈る、実際の事件や災害を織り交ぜながら“死”で繋がる三人の姿を描いたスピリチュアル・ドラマ。
当初はいよいよもって現実味を増してきた“死”を前に、イーストウッドが“死後の世界”ってのを模索し始めた作品なのかと思っていたのだが、蓋を開けてみればどうも違う。確かに題材として“死後の世界”を扱っているし、それに対し肯定的ではあるのだが、だからと言って「死後の世界はあるんですよー!素晴らしいですよー!」ってメッセージは発していない。心の安定として死後の世界にソフトタッチしながらも、描いているのは生きている人間が重荷から解き放たれて新たな一歩を歩み出す姿である。
主要キャラクターは全て“死”に取りつかれている。臨死体験中に見たビジョンに取りつかれた結果、仕事の信用も恋人も失うジャーナリスト、双子の兄を失い、薬物中毒の母親から引き離され里親のもとで孤独に苛まれる少年、特殊な能力のせいで真っ当な人生を送れない中年男。彼らの人生には、死が大きな影を落としているし、影響も与えている。しかしながら、“死”が彼らを苛む最大の要因かと言えば、そうではない。死は誰にでも遅かれ早かれ訪れる、ありきたりの悲しい出来事でしかない。確かに“死”は彼らの大きな悩みの一つではあるのだが、彼らの人生を狂わせているのはあくまで生きている人間。それも、本来なら愛を与える側にいるはずの人間が。

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恋人であるジャーナリストが落ち目になるや否や、さっさと若い女性キャスターに公私共に乗り換えるTVプロデューサー、薬物中毒でまともな育児を一切しない母親、能力者である弟を金づるにする兄、婚活がてらに参加した料理教室で一方的にやる気満々で近づいてきたくせに、ちょっと嫌な目に会った途端トンズラする女、その女の幼少期にイタズラをしていたと思われる父親など、主人公らを取り囲む人々はどれもクズである。中でもダントツなのは、双子の兄を失ったマーカスを引き取る里親夫婦だ。心に大きな傷を負っていたり、難しい環境の中にいることを強いられていた子供たちを受け入れる側の人間でありながら、彼らはその子供の心を受け入れようとしない。自分たちのやり方に遭わなければ、その子供に“ダメな子供”の烙印を押し諦めてしまう。まるで自分が作り出した作品かのように過去の里子の話題を出し、お手本にするようわざわざ会わせもする。この里親に対し感じてしまうのは、呆れ返りでも怒りでもなく、ただただ気持ちが悪いだけ。生理的不快感。
底辺層のクズっぷりをリアルに描く手腕に長けているのも監督イーストウッドの特徴なのだが、本作で描かれるクズは一部を除いて底辺層の人間ではない。それどころか、一般的には地位や評判のある善人だ。そんな善人たちが自らの欲やエゴで愛すべき人たちを苦しめていく様は、観ていて素直に気持ち悪い。だが、その気持ち悪さこそ、イーストウッドが描きたかった部分なのではと思えてくる。戦争や犯罪も多くの人を苦しめるが、最も多くの人が苦しめられている相手は、その人にとって最も身近な人間だと言っているような気が。劇中改心するのが、最も底辺にいる双子の母親のみという皮肉も、そこに通じているのでは。
もちろんこれは私個人の深読み解釈だし、まぁ正解ではないだろうとも。明確な正解を用意しないのも、イーストウッド作品の特徴でもありますし。ただ、本作はあんまりにもボンヤリとしている。物語はフワフワと進み、突然強引にまとめ上げ、またフワっと終わる。作り手自身が着地点を求めて彷徨ってしまっているような印象すら。でも、終了目前に中学男子並みの妄想シーンを挟みこんじゃったりする、久しぶりに“変なイーストウッド映画”を観れたのは、長老の名人芸を楽しむみたいな雰囲気が巷に感じられていただけに嬉しい。

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特殊な能力に悩まされるジョージに扮したのは、『コンテイジョン』『アジャストメント』のマット・デイモン。役柄によって随分と太ったりちょっと太ったりと、なんか役作りが“太る”ってばかりの印象もあるジミーちゃんだが、今回の役作りは中年太り。実際もう中年なのだから、年齢的には白髪交じりのデブでもおかしくはないんですが、かえって幼く見えてしまう不思議なジミーちゃん。きっと良いことがあるとしばらくニヤニヤしていてしまう、そこらの中坊のような役柄だったんでそう見えてしまったのかと。
また、臨死体験をするマリー役には、『ハイテンション』『80デイズ』のセシル・ドゥ・フランス。記憶の片隅に“お人形のような可愛い顔立ちをした女優&すきっ歯”とインプットしていたので、オープニングから出ずっぱりだったのに全く気付かず。途中のビルボードの写真でようやく気付く。月日の問答無用さを痛感
その他、『フェイク シティ ある男のルール』『ボクらのママに近づくな!』のジェイ・モーアや、満々のやる気が痛々しかった婚活女に『レディ・イン・ザ・ウォーター』『ヴィレッジ』のブライス・ダラス・ハワードがキャスティング。誰もが好演を見せてはいるんですが、案外一番印象に残ったのは、どんなシーンであってもペースを崩さないイーストウッドの音楽だったりも。耳にするだけで、画面には映っていないイーストウッドの姿が見えるような感じが。もう、出ずっぱり。一種の霊体験?

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自分の見たいもの/聞きたいこと以外は認めようとしない

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posted by たお at 13:24 | Comment(14) | TrackBack(86) | 前にも観たアレ■は行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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