監督 ピーター・バーグ 主演 テイラー・キッチュ
2012年 アメリカ映画 131分 アクション 採点★★
とりあえずロシアを悪役にしておけば事足りた冷戦時代とわけも変わり、最近のハリウッド映画は悪役探しに難儀しているようですねぇ。
カラクリがミエミエだってこともあってか、胸を張って中東を悪役に出来ないようですし。そうなると宇宙人ってのは便利な存在ですよねぇ。いがみ合ってた者同士が手を結び理由にもなりますし、多少無碍な扱いをした所で
クレームが来る心配もありませんしねぇ。便利便利。

【ストーリー】
ハワイ沖にアメリカや日本など各国の海軍が集まり、大規模な合同演習が行われる。そこへ突如宇宙から巨大な物体が襲来。アメリカ海軍と海上自衛隊の3隻が偵察に向かうが、物体が発した強力なバリアに閉じ込められ彼らは孤立してしまう。そしてそのバリア内で、地球の命運を掛けた壮絶な戦いが繰り広げられるのであったが…。

紙と筆記用具を用いて行う海戦パズルゲームを基にしたとは言うものの、ちょっとそれっぽいシーンこそあるが、
どこをどうやればこういう映画になるのか若干不明なSFアクション。メガホンを握ったのは、『
ランダウン ロッキング・ザ・アマゾン』のピーター・バーグ。
“
各国の海軍が集まる合同演習海域に宇宙船が襲来!”。なんともまぁ燃え上がる設定。戦闘力も科学力も遥かに上回るであろう未知なる敵に対し、戦略と知力と根性を振り絞って対抗する地球連合軍の姿が描かれてるに違いない!「自衛隊が思いのほか活躍する」って噂も耳に入ってたので、囮役を買って出た自衛艦が敵の集中砲火を浴びながらも敵に背を向け全速力で進み、そこへ島の陰なんかに隠れていた砲台をこちらに向けた他国の戦艦が、囮に気を取られていた宇宙船のどてっ腹に集中砲撃。見事敵を撃破!最後は戦艦ミズーリの艦上で、戦死した仲間たちに向け
険しい顔で敬礼をするセガールのアップで締め括る!もう、これは今年最高の作品に違いないと期待に胸をパンパンに膨らませ劇場へと向かったんですけど、そんな期待は何一つ叶えてくれない普通のアクション映画が目の前に。まぁ、
私の期待した方向が間違ってただけなんですけど。

ハイスピードバトルに走りがちな宇宙人との戦いを海戦形式で描いたってのは新鮮である上に、「トランスフォーマーの製作チームが作りました!」ってのも納得のド迫力SFXも見事。努力することを嫌い何一つ成し遂げてこなかった青年が、熾烈な戦いを通して成長するって物語も、定番ながら作品の質に合っているので感情移入もしやすい。普通のSFアクションを期待するのであれば、特に不満の出る事もない上々の出来。
ただ、
この設定でこの内容ってのはどうかと。各国の軍隊が集まっているという状況設定はほぼ蔑ろにされ、登場人物に日常生活でははぐれ者だが戦場では頼りになる的な軍人臭がせず、派手なエフェクトで迫力は生み出されているが、これといって戦力的な描写がされていないので“
撃った→外れた→撃たれた→当たった”と戦闘描写が非常に単調。とどのつまり、
“戦争映画”になっていない。「いやいや、これはSFアクションだから」って声もあるんでしょうけど、「じゃぁ、この設定じゃなくてもいいじゃん」と。もしこの設定を“世界寿司職人コンクール会場に宇宙人”ってのに変えたら、やっぱり
江戸っ子な寿司職人がマグロとかワサビとかを駆使して宇宙人を撃退するって内容を期待するじゃないですか。
そして何よりも、艦に対するこだわりや愛ってのが然程感じられないのが辛い。“海”に対してもそんな感じ。クライマックスに影の主人公とも言える退役した戦艦ミズーリと老兵達が戦いに向かうシーンを、マイケル・ベイ風アドレナリン自動上昇演出で描いているが、如何せん
それまでの積み重ねが皆無なので取って付けた感も強い。もうこの辺に関しては、優れたSF映画のみならず、優れた海戦映画でもあったスター・トレックシリーズを見習って欲しかったなぁと思った次第で。あっちは艦に対する愛情もハンパないですし。

主人公のアレックスに扮したのは、『
ウルヴァリン:X-MEN ZERO』『
コベナント 幻魔降臨』のテイラー・キッチュ。下品にしたブランドン・リーみたいな風貌も役柄も好みじゃなかったってのが本作にイマイチ気持ちが入らなかった要因ではあるんですけど、YouTubeでも話題になったマヌケな空き巣を再現した序盤のシーンだけはハマってたなぁと。
そんな主演に対する不満を補ってくれたのが、「こっちの方を主役にして欲しかった!」とまでは強烈な存在感を示せなかったものの、基本出ずっぱりで意外と活躍してた『
マイティ・ソー』の浅野忠信と、『
ロシアン・ルーレット』のアレキサンダー・スカルスガルド。特にアレキサンダー・スカルスガルドが放っていた、
凍てつくような色気は絶品だったなぁと。流石、ステラン・スカルスガルドの息子。
その他、お色気担当のエキストラかと思ったらメインキャストの一人だった、『
ウソツキは結婚のはじまり』のブルックリン・デッカーや、本作で本格的な女優デビューを果たしたリアーナらも出演。若干浮ついたキャスティングを締めるためか、『
アンノウン』のリーアム・ニーソンがデデーンと出演してますけど、劇中は
文字通り蚊帳の外だったんで扱いは丹波哲郎的なアレだったかと。
それにしても、『
世界侵略:ロサンゼルス決戦』とか『
スカイライン-征服-』とか、最近詰めの甘い宇宙人ばっかり侵略しにやって来てますけど、本作の宇宙人も例に洩れず詰めが甘かったですねぇ。偵察隊とはいえ敵意のない者は攻撃しないって姿勢は
紳士的なれど侵略者としては問題ありますし、人工衛星にぶつかったぐらいで大破する宇宙船ってのもどうかと。まぁ、やる気が実力に見合ってない人ってどこにでもいるんで、そういう意味では親近感の湧く宇宙人だったのかと。

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