2015年08月28日

ハード・ウェイ (The Hard Way)

監督 ジョン・バダム 主演 マイケル・J・フォックス
1991年 アメリカ映画 111分 アクション 採点★★★

映画のメイキングやPR映像なんかで「役作りの為に密着しました!頑張ったよ!観てね!」と、実際に役柄と同じ職業を体験する話をよく聞きますよねぇ。「さすがプロだなぁ」と素直に感心したりするんですけど、考えてみれば普段の仕事でただでさえ忙しいのに、一所懸命教えたところでその仕事を生業にするわけでもなければ、次の映画を撮る頃にはただの思い出のひとつになってしまうだけの役者を預からなければならない現場の苦労も相当なもんなんだろうなぁと。職場体験の中学生を一日二日預かるのとは比べ物にならないほど気を遣うんでしょうし。

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【ストーリー】
アイドル俳優からの脱皮を図っていたニック・ラングは、刑事役の役作りのために偶然TVで見かけたNY市警の刑事ジョン・モスに密着することを決める。連続殺人犯“パーティ・クラッシャー”を追っていたジョンはその為に担当を外され嫌々ながらもニックの子守を務めるが、プライバシーにもずけずけと入ってくるニックに対し我慢の限界を超え…。

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ちょっと忘れられがちな気もするが、娯楽映画の消耗品化が著しく進んだ80〜90年代の象徴的な監督の一人、『張り込み』のジョン・バダムによるアクションコメディ。製作と第2班監督に『デイライト』のロブ・コーエンが。
80〜90年代に山ほど作られたバディ・アクション。性格や人種の違うコンビって組合せのみならず、犬や宇宙人といった人間ですらない相棒まで登場する、中身に然して変わりはないがバリエーションだけは豊富なジャンルと言えるかと。その相棒を、とりあえずは人間である“ハリウッド・スター”ってのに置き換えた本作。それ以上でも以下でもなし。衝突から和解に至る関係性の変移もちょっとした波風も全て定型内に収まる、バディ・アクションのお約束事のみで作られている作品で。
そんな毒にも薬にもならない本作ではありますが、つまらないかと言えばもちろんそんなことはない。お約束事を一つ一つ丁寧に撮り上げつつ、唯一の個性ともいえる“相棒がハリウッド・スター”ってのが生み出す笑いや内幕劇的な面白味を最大限に活かす、娯楽映画を知り尽くしたジョン・バダムらしい職人技が楽しめる作品に仕上がっている。何度観ても鑑賞後すぐ頭から消え去るが、その反面何度観ても面白い。何かを得たり考えさせられる映画ももちろん素晴らしいが、こういう「あー面白かった!さ、寝よ!」ってなる清涼飲料水のような映画も素晴らしいなぁとつくづく思い出させられた一本。内容はもう思い出せませんが。

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イメージチェンジに苦しむニック・ラングに扮したのは、『さまよう魂たち』のマイケル・J・フォックス。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で一躍スターになるも、見た目の可愛らしさから似たような役柄ばかりが続き、アイドル脱却を図ってシリアスな役柄にも挑戦するが一定の評価こそ得れたが一般には受け入れられずに苦しんでいた、まさにドンピシャの時期だっただけにドハマリ過ぎるほどハマっていたキャスティング。他人の私生活に土足で上がりこみ、一挙一動を逐一真似、恋愛関係にまで踏み込んでくるこの役柄はある意味『ルームメイト』とかと変わらない、演じる人が違えば恐怖と殺意しか感じられない役柄なんですけど、その辺を持ち前の愛嬌で回避する様も旨いキャスティングだったなぁと。病の兆候が出始めていた時期だからか、役柄と同じ状況に置かれている破れかぶれさからか、時折目つきが非常に怖い瞬間がありましたけど。
一方の被害者役とも言えるジョン・モスに扮したのは、『ヴァンパイア/最期の聖戦』のジェームズ・ウッズ。マイケル・Jと見た目からして真逆って分かりやすさもさることながら、体温の感じられない冷酷さと人情、情けなさとタフさ、だらしなさと几帳面さという相反する役柄全てを演じ分けられるジェームズ・ウッズらしさってのが反映された、こちらも素晴らしいキャスティング。さっきまで嫌みったらしい声でヘラヘラしてたのに、瞬時に殺し屋の目になって悪党を追い詰める、そんな彼の持ち味を堪能できたのも嬉しい。
その他、『沈黙のSHINGEKI/進撃』のスティーヴ・ラングや、この当時引っ張りだこだった『運命の逆転』のアナベラ・シオラ、『リベンジ・マッチ』のLL・クール・Jに、既に子供らしい愛くるしさってのが感じられなくなってたアフターライフ』のクリスティナ・リッチといった、なかなかの顔ぶれが揃ってるのも嬉しかった一本で。

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似たようなのは山ほどあれど、同じのは一本もなし

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2015年08月27日

ビデオゲーム THE MOVIE (Video Games: The Movie)

監督 ジェレミー・スニード ナレーション ショーン・アスティン
2014年 アメリカ映画 101分 ドキュメンタリー 採点★★

70年代周辺で生まれた私らの世代ってのは、ある意味ゲームの進化と共に育ってきた世代って言えますよねぇ。スペースインベーダー旋風から街のゲームセンターがどのように変化してきたかを間近に見続けてきたのと同時に、家庭用ゲーム機の劇的な変化ってのも見続けてきましたし。映画や音楽の変化にももちろん驚かされて育ってはきましたが、その劇的さ具合と身近さに関してはやっぱりゲームというのが私ら世代にとっての進歩の象徴なのかなぁと。

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ビデオゲームの誕生からから将来の展望までを、関係者の証言で綴ったドキュメンタリー。ナレーターには『もしも昨日が選べたら』のショーン・アスティンが。
1962年の“スペースウォー”から現在までのビデオゲームそのものや周辺の変化を、数多くのゲーム映像と共に駆け足で描いた本作。「これやった!」と懐かしんだり、今では見慣れてしまったが時系列に並ぶと明確になるグラフィックの進化に驚かされながら楽しめた一本。
ただ、ドキュメンタリー映画として考えると、視点の公平性に著しく欠けている感が否めず。特に暴力的なゲームに対する社会の反応に関する部分が顕著で、グランド・セフト・オートやモータル・コンバットといった槍玉にあがる代表的なタイトルこそ取り上げられているが、「ゲームは悪くない!」という意見ばかりが取り上げられるバランスの悪さには、それらのゲームが大好きで“ゲームだけが悪い”って意見に関しても懐疑的な私でさえ違和感を覚える。そういうスタンスならば胸を張ってバンバン暴力的なシーンを入れればいいのに、そこには一切触れないなんともズルい作り。パラセイリングやゴルフといった、ゲーム本編とはあまり関係ないシーンばかりがグランド・セフト・オートから使用されているってのも卑怯だなぁと。
まぁ、結局のところは「もっとゲームをやろう!もっとゲームを買おう!」っていう業界のプロパガンダ映画でしかなかった本作。特定の作品に付いてくるメイキング映像や宣材であれば不満もないんですけど、建前かも知れませんが一応ゲーム史を取り扱うドキュメンタリー映画として作られている作品なので、ちょいと厳しめの評価を。

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見るものじゃなくて遊ぶもの

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2015年08月25日

ヘラクレス (Hercules)

監督 ブレット・ラトナー 主演 ドウェイン・ジョンソン
2014年 アメリカ映画 101分 アドベンチャー 採点★★★

誰も知らないってのをいいことに、結構みなさん自分の過去についてついつい美化して語りがちですよねぇ。「オレも昔はそれなりにワルだったんだぞぅ」とか「オレも昔はそれなりに遊んでたんだぞぅ」とか、巷のお父さん方の話を真に受けると、皆さん揃いも揃って昔はそれなりにワルくて遊んでたってことになりますし。まぁ、私もそんな与太話を子供らによく話しているんですけど、「やったなぁ、東京ドーム2デイズ」とか「ドラフト一位を蹴っちゃったんだよねぇ」とか与太にも程がある話ばっかしてるんで、たまに本当の武勇伝を話しても誰も信じず。というか、“お父さんの話は全部テキトー”って認識なので、基本的に誰も何も聞いちゃいないし。

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【ストーリー】
数々の偉業が伝説化して語られていた勇者ヘラクレス。そんな彼と仲間たちに、莫大な報奨金と引き換えに反乱軍から国を守ってほしいとの依頼がトラキア国より舞い込む。ヘラクレスらは寄せ集めの兵士たちを鍛え上げ見事反乱軍に勝利するのであったが、トラキアの国王コテュスには別の企みがあり…。

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ペントハウス』のブレット・ラトナーによる、ギリシャ神話の英雄ヘラクレスの人間としての側面を描いたアクションアドベンチャー。
ヘラクレスの活躍を描いた作品は数あれど、偉業が誇張され伝説化した“虚像ヘラクレス”ってのを描いているのがちょいと新鮮な本作。ヘラクレスが戦ってきた神話上の怪物らの正体が明かされていく様も、なかなか興味深い。ただまぁ、別にその虚像を巧みに利用したチーム・ヘラクレスのしたたかさを強調するわけでもなければストーリー上重要な意味を成しているわけでもなく、結局は常人離れした筋力を誇るヘラクレスがその筋肉に物を言わせて全てを解決する、至って普通の筋肉映画に。また、物語を滞りなく展開させる術には長けてるが、絵的に個性や工夫が感じられないブレット・ラトナーらしさが、この“普通”って以外に言いようのない仕上がりに拍車を。だったらもう、ヒドラやらケルベロスやら神話上の怪物を筋肉でぶちのめす、普通の筋肉ファンタジーにしてくれればもうちょっと楽しめたのに。
とは言っても、約束通りの展開の中を筋肉が大暴れする、何か全体的に茶色っぽい筋肉映画ってのも久しぶりであったので、なにも考えたくない時にサクっと楽しむ分には文句ない一本だったかなと。

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ヘラクレスに扮するのは、『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』のドウェイン・ジョンソン。もう、ヘラクレス役を探している時にまず真っ先に名前が挙がりそうなロック殿下がヘラクレスを演じてるんだから、文句があるわけもなし。っていうか、なんで今までやってなかったのかが不思議なくらい当たり前な似合いっぷり。半裸で茶色っぽい筋肉をムキムキさせて大暴れする殿下の姿を久しぶりに見れるってのが、本作最大の喜びポイントかと。
ドドーンと構えるロック殿下の存在感に隠れてしまいがちではありましたけど、脇を固める役者陣もなかなかの顔ぶれが揃っていた本作。『スノーホワイト』のイアン・マクシェーンや史劇でよく見る気がする『ROCK YOU! [ロック・ユー!]』のルーファス・シーウェル、アクションのキレが見事だった『ヘンゼル&グレーテル』のイングリッド・ボルゾ・ベルダルに、こういう狂犬キャラは個人的にツボな『30アサルト 英国特殊部隊』のアクセル・ヘニーらチーム・ヘラクレスの面々を筆頭に、『インモータルズ -神々の戦い-』ではゼウスだったジョン・ハート、『DATSUGOKU -脱獄-』のジョセフ・ファインズ、『トゥモロー・ワールド』のピーター・ミュランといった、結構贅沢なキャスティング。
因みにお目当てだった『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』のレベッカ・ファーガソンは、美人ってよりはなんか可愛かったなぁと。

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だいたいずっとこんな感じ

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2015年08月10日

ヘンゼル&グレーテル (Hansel & Gretel: Witch Hunters)

監督 トミー・ウィルコラ 主演 ジェレミー・レナー
2013年 ドイツ/アメリカ映画 98分 ファンタジー 採点★★★

一本の作品として完結したものとして捉えてるせいなのか、単純に想像力に欠けているせいなのかはちょっと定かじゃありませんけど、“物語のその後”ってのには然程関心のない私。“いつの間にかマチェーテ構えて先回りしているジェイソンさんの見えない所での全力疾走”とか、“『宇宙戦争』でひとり先に家に帰った時の長男のヌケヌケとした顔”といった、劇中で描かれなかった部分については思いを大いに馳せたりもしますが。

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【ストーリー】
親に森の奥に捨てられ、そこに潜んでいたお菓子の家の魔女を退治したことで一躍有名になった、幼い兄妹のヘンゼルとグレーテル。その後彼らは成長し、いまでは最強の魔女ハンター兄妹としてその名を轟かせていた。そんなある日、子供の行方不明事件が多発する村から事件の解決を依頼された彼らは、背後に潜む黒魔女ミュリエルを追うが、彼女の狙いは別のところにあり…。

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“ヘンゼルとグレーテルが魔女狩り専門の賞金稼ぎに成長した”って設定でワンパクに描く、『処刑山 -デッド・スノウ-』のトミー・ウィルコラ監督/脚本によるアクション・ファンタジー。製作に『俺たちニュースキャスター 史上最低!?の視聴率バトルinニューヨーク』のウィル・フェレル&アダム・マッケイらフェレル映画組が多く集結してるって時点で、もう大いにワンパク
変化球って、どんなボールが投げられるのか分からないからこそ効果があるんですよねぇ。「今からカーブ投げまーす!」って宣言されてから来るボールなんて、ちょいと曲がる遅い球でしかないですし。ふとそんなことを思ったのも、変化球を謳いながらもコースも球威も予想の範囲内に収まっていた棒球映画スノーホワイト』を、本作を観ながらちょいと思い出したから。本作もまた所謂変化球映画ですし。ところがどっこい、変化の幅も作品解説や予告編から容易に想像できる範囲内に収まっているにもかかわらず、球威も球速も直球と変わらない豪変化球映画になってて大いに驚いた。この違いたるや。
エロとグロとバイオレンスに笑いといった、ハリウッド初進出作とは到底思えぬほどウィルコラの好きなものだけで出来ていた本作。この手の作品にありがちな、作り手だけが楽しい一本に仕上がっているのかと思いきや、思いのほか描き込まれていた人物描写や兄妹の関係図、魔女より恐ろしい人間とその集団心理、魔女として裁かれる女性の悲哀などもさらりと盛り込まれる、手堅さの土台の上で思う存分暴れるワンパクさが魅力。
バラエティ豊かだがちょいと取り止めがなく、「ヒャホーィ!」と楽しむパーティ映画の枠を出ていないのは惜しいが、そのパーティ映画としては十分過ぎるほど楽しめる仕上がりなので特に文句もなし。

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お菓子の食べ過ぎで糖尿病を患ってるヘンゼルに扮したのは、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』のジェレミー・レナー。もともと“戦う男”ってのが抜群に似合う役者なので、特に驚きはないがバッチリと様になる好キャスティング。普段はまんま小学生男子の如きやんちゃさ&バカさ加減なんだが、妹の危機には俄然“お兄ちゃんモード”へと変貌する、ジェレミー・レナーの良さってのを存分に活かした役柄も魅力。
一方のグレーテルには、『ビザンチウム』のジェマ・アータートン。兄に対し普段は「バカ男子」としか思ってなくても、その根底には100%の信頼感が存在している故に、力の兄に対し頭脳で徹底的にバックアップする妹役を好演。この“二人っきりで今まで頑張ってきました”感が非常に良く出ているのが、本作成功の要因かと。
にしてもこの映画、女優陣がなんともエロい。知性的だが退廃的でもある顔立ちと胸元を強調したピッチピチの黒コスチュームに身を包む、なんかその手のプロっぽささえ伺えるジェマ・アータートンもさることながら、美人というよりは“村の良い娘”って風貌とのギャップが大きい肉感的な身体を、惜し気もなく披露するピヒラ・ヴィータラ、そして極めつけが大黒魔女として登場する『96時間/レクイエム』のファムケ・ヤンセンときたもんだ。“抗えない誘惑”ってのを具象化したかのようなファムケ姐さんに対峙するのがジェマという、この作り手の“分かってる”感が嬉しい。こういう性の目覚めを呼び起こすような作品って大事だよなぁ。
その他、『バッド・マイロ!』のピーター・ストーメアや、兄妹の母親に扮した、スタントウーマン中心の活躍がもったいないほどの美貌とスタイルを持ったモニーク・ガンダートン、『オブリビオン』のゾーイ・ベルに、ごっついおっさんにしか見えなかったトロールのエドワードなんかも印象的な一本で。

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後悔するのは分かってるけど抗えない誘惑

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2015年08月05日

フッテージ (Sinister)

監督 スコット・デリクソン 主演 イーサン・ホーク
2012年 アメリカ/カナダ/イギリス映画 110分 ホラー 採点★★★

なんだかんだ言って『リング』は怖い映画ですよねぇ。あのビデオが怖い。何が怖いって、観たら呪われるとかそんなこと以前に、誰かがカメラを持って撮影しないと存在しないはずの映像なのに、誰もカメラを持ってないってのが怖い。そんな恐ろしいものを、「ほれ観ろ!」とばかりに身近に置いてかれるのが怖い。観てもらいたがってるくせに、観たら呪うってもうワケわかんない

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【ストーリー】
10年前にヒット作を出すも、それ以降は鳴かず飛ばずで経済的にも困窮状態に陥ったノンフィクション作家のエリソン。彼は再度一発当てようと、家族には詳細を伏せ一家惨殺事件の現場となった一軒家へ妻子と共に引越し、その事件についての執筆を始める。やがて屋根裏部屋で8mmフィルムを発見したエリソンは、書斎でその映像を確認すると、そこにはその家だけではなく様々な一家惨殺の瞬間が映し出されていて…。

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間もなく続編も公開される、『地球が静止する日』のスコット・デリクソンが監督と脚本を務めた、掻い摘めばミイラ取りがミイラになるみたいなホラー・サスペンス。主演に『プリデスティネーション』のイーサン・ホーク、ノンクレジットで『ラン・オールナイト』ヴィンセント・ドノフリオも出演。
Jホラーの影響も垣間見れる、ジワジワ系のホラーとしてなかなかの雰囲気を持った本作。スナッフフィルムとしての陰惨さと変態さをしっかりと表現できている8mmフィルムの完成度も高く、一見バラバラに思える事件が大きな輪を描き始める展開も巧い。終盤間際までは「お?今日のデリクソンは調子がいいなぁ」と感心させられる完成度。
しかしながら、因果関係をモヤモヤさせた締めがどうにも弱い。これが40分前後の作品であれば、そのモヤモヤさが恐怖を増大させるのだが、2時間近い作品を引っ張るにはちょいと弱い。しかも、ある行動パターンが惨劇を生むようなのだが、そうなると肝心の8mmの存在が意味を成さなくなってくる。別に観ても観なくても結果が同じ。また、他の一家がそれを観ていたって描写が全くないので主人公だけが観ていたってなると、何の為に見せてるのかが判らず。もし全員が観ていたとするならば、主人公はその手の作家だから調査して因果関係を発見できたものの、普通のお父さんが観たって「ウェッ!」ってなって終わっちゃうんじゃないかと。まぁ、引越しさせるための嫌がらせの一環なのかもしれませんが。
そんなこんなで、雰囲気だけは非常に良いんですけど、題材に対する煮詰めが相変わらず甘い惜しい一本だったなぁと。一時のスポットライトが忘れられないって感じをイーサン・ホークが見事に表現していただけに、尚更にもったいない。

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上映中はお静かに

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2015年08月03日

プリデスティネーション (Predestination)

監督 マイケル・スピエリッグ/ピーター・スピエリッグ 主演 イーサン・ホーク
2014年 オーストラリア映画 97分 SF 採点★★★★

様々な局面で様々な選択をしてきた結果が今の自分と状況を作り上げているんですけど、振り返ってみると“やっちまった選択”ってのも少なくなし。というか、そんなんばっか。もし過去に戻れるんだったら、過去の自分にもうちょっとマシな選択を進言してやりたい気もしますが、後悔を積み重ねた“今の自分”と難を逃れ続けた“理想の自分”とでは、圧倒的に後者の方がアホっぽいので、たぶん余計な進言はしないんだろうなぁと。そもそも誰かの意見を素直に聞くような人間でもありませんし。

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【ストーリー】
女性として生まれ孤児院で育ったジェーンは、成長し最愛の男性と出会い彼との子を宿すが、突然の別れと彼女自身の得意な体質ゆえ、出産後男性として生きることを余儀なくされてしまう。更に生まれたばかりの子供を何者かに誘拐され、ジェーンは絶望のどん底を生きていた。そんなジェーンの壮絶な身の上話を聞いていたバーテンダーは、彼女に復讐のチャンスを与えることを約束し、二人で7年前へとタイムスリップをするのだが…。

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ロバート・A・ハインラインの短編“輪廻の蛇”を、『アンデッド』のスピエリッグ兄弟が脚色/監督を務めて映像化したSFサスペンス。
奇抜な状況設定と凝った構図のアクションが魅力の反面、そこに頼りっきりの印象もあるスピエリッグ兄弟なんですけど、今回は原作そのものが超絶に奇抜なだけあってジックリと物語を描くことに集中した感のある一本。冷静に考えれば「じゃぁ、最初の○○はどうやって産まれたの?」とか、爆弾魔の○○はどの時点からやって来たのか/居続けたのかとか、あれやこれや所謂パラドックス的な問題が目に付いてしまうんですけど、そこが逆に細かなルールに縛られ過ぎないSF全盛期の面白さってのを生み出している。
一発ネタでもあるので物語に触れれば全部ネタバレになっちゃうので控えさせてもらいますけど、“選択と宿命”ってのをベースにしながらも、その背後に全てを見通している神/悪魔の如き上司の存在があるので、どう足掻こうが逃れられないというか仕組まれているかのような不条理感が漂っているのも好みだった一本で。

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主演は『デイブレイカー』に続いてスピエリッグ兄弟作品への参加となったイーサン・ホーク。いっつもイーサン・ホークについて「卑屈な眼差しが堪らん!」と絶賛させてもらってるんですけど、今回もそう絶賛せざるを得ない卑屈さ。充分過ぎるほどハンサムなのに、奥底に恨み辛みがパンパンに詰まった、そして常人なら見ることのないものをウンザリするほど見つめてきたかのような眼差しが、まさにこの物語にピッタリの完璧キャスティング。
ただ、このイーサン・ホーク以上に本作の顔となっているのが、オーストラリアの新進女優セーラ・スヌーク。複雑過ぎるにも程がある役柄をこなした地力もさることながら、ちょいとガービッジのシャーリー・マンソンを髣髴させる、劣等感とプライドと怒りと妬みと困惑が入り混じり、局面毎に違う顔を出してくるその表情の素晴らしさたるや。ちょいと今後に期待したくなる女優の一人で。
その他、全部を見透かしているような気持ちの悪さが絶妙だった『オール・ユー・ニード・イズ・キル』のノア・テイラーなんかも印象的だった一本で。

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自分だったら「まぁ色々あるけど頑張ってね」くらいしか言えないなぁ

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2015年07月11日

バッド・マイロ! (Bad Milo!)

監督 ジェイコブ・ヴォーン 主演 ケン・マリーノ
2013年 アメリカ映画 85分 コメディ 採点★★★

もう何年も症状が出ていないので自分でも忘れちゃうことしばしばなんですが、何気に潰瘍性大腸炎っつう面倒くさい病気を抱えている私。ストレスが原因らしいんですけど、「毎日とりあえず何かが楽しい!」って生きてきたので医者にそう言われた時は「ストレスぅ?俺がぁ?」って感じだったんですが、案外ストレスをストレスと感じず過ごしてきちゃったんで、知らず知らずのうちに溜め込んじゃってたんでしょうねぇ。たまには「辛いなぁ」とか言った方が良いのかも。

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【ストーリー】
ストレスを抱え込むタイプの真面目男ダンカンは、常々お腹を壊しがち。そんなある夜、遂にストレスが限界を超えてしまい、強烈な腹痛に襲われトイレで気絶。目を覚ますと、ストレスの原因のひとつだった会社の同僚が何者かに襲われ惨殺されたことを知る。そんな惨殺事件が続く中、ダンカンはストレスを減らすためにセラピストによる催眠療法を受ける。すると、ダンカンの肛門から怪物が飛び出してきて…。

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新鋭ジェイコブ・ヴォーン脚本/監督による、『ドリームキャッチャー』みたいにお尻から怪物が出てくるだけでも嫌なのに、出たらちゃんと戻ってきやがる、産みの苦しみとお尻に何かしらをねじ込まれる屈辱をお見舞いされる男を描いたホラーコメディ。『ぼくたちの奉仕活動』のケン・マリーノ、『運命のボタン』のジリアン・ジェイコブス、『キック・オーバー』のピーター・ストーメアらが出演し、『ハッピーニート おちこぼれ兄弟の小さな奇跡』のデュプラス兄弟が製作総指揮を。
世の旦那一同って、自分の身体の中で成長する子供の存在を感じながら生活するわけでもなく、私なんかにゃ想像もつかない産みの苦しみを経験するわけでも、その苦しみから解放された瞬間に我が子に対面するわけでもなく、気持ち良いことをした後は日に日に大きくなる女房のお腹をボーっと眺めつつ、ある日病院に行ったら女房の隣でグースカピーと寝てる赤ん坊を見て初めて「あ、オレ子供いる」ってなるんですよねぇ。そりゃぁ、子供に対する思い入れやら何やらが母親に敵わないわけだ。

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そんな、親になること自体は簡単だが、母親と同等の親になるためには相当な努力が必要となる男親の根っこの部分をベースに、肛門周辺に集中した笑いで彩った本作。お上品からは程遠いバカな作品に思えるが、捉えるべき的を大きく外したりはしないので、どっちかといえばバカの衣を着たちゃんとした映画って印象。80年代ホラーテイスト溢れる造詣が魅力のマイロの存在が、主人公の抑圧された負の感情の象徴であると同時に、子供の言動に自分の似て欲しくない部分を見出しちゃうみたいな子育ての気苦労のようなものも意味してたりする、そんな所にもその印象を強めたのかと。
「男にも子供産ませてみたら?」みたいな思い付きや、心の準備が整わないうちに父親になるちょっとしたパニックからネタが膨らみ切れておらず、展開が進むにつれネタ切れによる息切れが目立ってきちゃうのは残念でしたが、ちっちゃくて「イーッ!イーッ!」鳴きながら走り回るマイロの愛嬌に幾分救われたかと。まぁ、いくら見た目に愛嬌があっても、出て来る所が出てくる所なので、きっとウンコ臭いんでしょうけど。

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部屋を片付けてるそばからこう

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2015年07月09日

ブルー・リベンジ (Blue Ruin)

監督 ジェレミー・ソルニエ 主演 メイコン・ブレア
2013年 アメリカ/フランス映画 90分 サスペンス 採点★★★

若い頃ならまだしも、こんだけ大人になっちゃうと殴り合いの喧嘩をすることなんてなくなりますよねぇ。私の見た感じと雰囲気がなんか怖いってのもあって、誰もそこまでは絡んできませんし、もしそんなことになっても身体が絶対に追いついてこないでしょうから、自分もそこまで絡むつもりもなし。そう言えば、夢の中で誰かを殴ろうとすると、まるで水の中かのように身体が重くなって思うように動かないのは何でなんでしょうねぇ?

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【ストーリー】
両親を殺害した犯人が司法取引により釈放されることを知った、ホームレスのドワイト。彼はオンボロの青いセダンを走らせ犯人のもとへ向かい、復讐として犯人を殺害する。しかし、犯人一家の報復が始まり…。

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各映画祭で話題を呼んだとかいう、撮影畑出身のジェレミー・ソルニエが脚本/撮影/監督を務めた犯罪スリラー。
ホームレス姿の主人公が無言のまま復讐を果たす冒頭30分以上に、髭を剃って身だしなみを整えたら虫も殺せないような見るからに“小市民”が出てきたことに衝撃を覚えた本作。「失うものは何もない!」とばかりに行動を起こすも考えてみれば失いたくないものが色々あったり、怪我を勇ましく自分で治そうとするが、痛すぎるからやっぱり病院へ行ったりと、スタイリッシュやストイックとは遠いアワアワした感じが主人公の“普通さ”が、より一層その小市民っぷりを。
感情に任せた自暴自棄が生んだ復讐の連鎖を力で封じるのではなく、最後の最後までなんとかやり過ごせないかと思索する主人公。また、田舎町のいじめっ子一家のような犯罪者一族と、それに虐げられるいじめられっ子一家の対立構造のような趣。そんな構図や描写の明確さが、普通の人間であっても生み出しかねない暴力の連鎖とその醜さってのを本作がしっかりと描ききった要因なのかなぁと。若干都合の良いキャラではあったものの、銃マニアの級友のイイ男っぷりや、もう十分過ぎるほど巻き込んではいるが、その級友をこれ以上深みに巻き込まぬよう彼の車のバッテリーをこっそりと抜き取っておく主人公の姿など、後々まで印象が残る良いシーンが多かった作品でも。

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正しい助言をすることばかりが正解とも限らず

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2015年02月20日

フォックスキャッチャー (Foxcatcher)

監督 ベネット・ミラー 主演 スティーヴ・カレル
2014年 アメリカ映画 129分 ドラマ 採点★★★★

「ないものはしょうがない!」って考える方なので、“ないものねだり”って性質ではないと自負している私。でも、女房なんかに言わせると「あるものねだりがすごい」とのこと。そこそこ色んなことが出来るし、そこそこ色んなことに詳しく、その他色々そこそこなものを備えてるんだから贅沢にも程があるって言うんですが、私自身はその“そこそこ”ってのが耐え難い。全部が中途半端でどれも胸を張って自慢できるものがないんですよねぇ。他はなーんにもいらないから、ひとつだけずば抜けてるものが欲しいと常々思ってるんですけど、やっぱりそれは贅沢ってものなんでしょうかね。

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【ストーリー】
ロスオリンピックで金メダルを獲得するも、マイナー競技ゆえに苦しい生活を強いられたままのマーク・シュルツ。同じく金メダリストで人望も厚く家庭にも恵まれた兄デイヴから紹介される講演会などで食いつないでいるマークのもとに、アメリカ有数の大富豪ジョン・デュポンから彼が設立したレスリングチームへの参加を好条件でオファーされる。恵まれた環境とジョンとの良好な環境の中でトレーニングに励むマークであったが、デイヴのチーム参加を境に大きな歪が生まれ始め…。

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“オリンピックの金メダリストを大富豪が殺害する”という実際にあった衝撃的な事件をベースにした、『カポーティ』『マネーボール』のベネット・ミラーによる人間ドラマ。
類稀なる才能と名声を持ちながらもそれが実生活に反映されない不満と、偉大な兄の影に常に隠れてしまう劣等感に苛まれるマーク。有り余る富とそれが生み出す名声を持つも、逃れられない母親の影響力と全てお膳立てされた人生を送るが故に何事にも達成感を感じることがないジョン。その心に大きな穴が開いた二人が共鳴し合うように出会い“実感”を求めるも、手に入るのはデヴィッド・ボウイが歌い上げる“フェイム”同様、空虚な名声のみ。
そこに家族、名誉、人望、手にしたもの全てに実感と喜びを感じているデイヴが参入することにより生み出される歪と悲劇。その様を丹念に丹念に撮り上げた人間ドラマとしてのみならず、一握りの人間が富のほとんどを握るアメリカの現状に対してもしっかりと重きを置いて描ききった、ベネット・ミラーらしさが良く出た秀作。
確かに本作では“なぜ”は明確に語られてはいない。劇中被害者に落ち度があるような描写は皆無。実際の事件や裁判の経緯の中でも、明確な動機というのは明らかになっている様子はない。強迫観念症的な統合失調症や心神喪失が裁判の論点となる中、陪審は“有罪であるが精神疾患を患っている”という評決を下しているのも、劇中で“なぜ”が明確になっていない要因だと思われるが、そこに至る様はつぶさに描かれているので、観客に“思い当たる節”ってのを十分に与えている。その辺も含め、久しぶりに観た者同士存分に語り合いたいと思える作品であり、満足度の高かった作品であったなぁと。

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ジョン・デュポンに扮したのは、『ラブ・アゲイン』『デート&ナイト』のスティーヴ・カレル。昨年亡くなったロビン・ウィリアムズやジム・キャリーなんかもそうなのだが、心の闇をけたたましさで隠すかのようなコメディアンが黙りこくると怖い。そこに彼の持ち味である細やかな動作による豊かな表現力と、本人に似せた特異なメイクの効果もあり怖さ倍増。
美味しい物を食べてもその味が分からないかのような感情と感覚の大切な部分がゴッソリと抜け落ち、また他者との距離感もおかしいので近づいてくると抱きしめてくるのか殺されるのかも分からない、そんなデュポンのキャラクターと性質を見事なまでに表現。彼の役者としての幅の広さと深さをまざまざと見せつけた本作ではありますが、これによって“名優スティーヴ・カレル”としての仕事が増え過ぎられるとそれはそれで寂しいなぁと複雑な心境も。

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一方のマーク・シュルツに扮するのが、『21ジャンプストリート』『ディス・イズ・ジ・エンド 俺たちハリウッドスターの最凶最期の日』のチャニング・テイタム。元々のジョックス顔に、役作りのトレーニングで会得したレスラーっぽい身のこなしや歩き方でキャラクターをその手中に。不満はあるがそれが具体的に何なのか考えてもよく分からず、分からないモヤモヤは身体をぶつけ合う内にウヤムヤになる、言葉は悪いがそんなスポーツ馬鹿を熱演。
幼少期に得られなかった父性や心に穴を持つ者同士の強い繋がりをデュポンに求めるも、傍から見れば貴族とたまたまその目に留まった奴隷上がりのグラディエーターにしか見えないってのも、その役作りゆえかと。
また、今ある幸せに満足しながらも、別に不満がないわけではなく、その不満を困った笑顔で受け流す“大人の対応”ことでやり過ごす主要人物中唯一の常識人であるデイヴ・シュルツに扮した、『アベンジャーズ』『シャッター アイランド』のマーク・ラファロの好演も忘れ難し。
あの眼鏡に優しげかつ哀しげな笑顔、そしてレスリングのユニフォーム姿が相まって仲本工事が頭の中に居ついてしまうことこの上なかったが、好演には変わりなし。
その他、『オリエント急行殺人事件』のヴァネッサ・レッドグレーヴや、『レイヤー・ケーキ』のシエナ・ミラー、恥ずかしながら鑑賞中はあれが彼だとは気付かなかった『すてきな片想い』のアンソニー・マイケル・ホールなど、良い役者の良い仕事っぷりが印象に強く残った一本で。

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「何が不満なんだ?」は自分への言葉とも

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posted by たお at 13:39 | Comment(4) | TrackBack(26) | 前にも観たアレ■は行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年02月08日

ビザンチウム (Byzantium)

監督 ニール・ジョーダン 主演 シアーシャ・ローナン
2012年 イギリス/アメリカ/アイルランド映画 118分 ドラマ 採点★★★

私には兄妹程度にしか歳の離れていない姪っ子がおりまして。で、この辺の田舎では特に珍しくもない話なんですが、若いうちにそこらのボンクラと結婚し娘を出産、早々に離婚してそっから10年以上シングルマザーに。しかも早いうちに両親を病気で亡くし、父方一族はばたばたと不幸が重なりほぼ消滅。母方(私の実家)とも、母親(私の姉)の結婚に関する遺恨が呆れ返るほどまだ残っているようで疎遠状態。唯一絡む血族が私ら夫婦のみという過酷な状況のせいか、母娘の繋がりがまぁ濃いったら。「一卵性の双子か?」ってほど濃い。この調子じゃ、子供が嫁に行ったら姪は死んじゃうんじゃないかとちょい心配。まぁ私自身も、自分の娘が嫁に行く時よりも泣いちゃうんじゃないかと心配なんですけど。だって、可愛いんですもの姪の子が。

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【ストーリー】
寂れた海辺の町へとやって来た、可憐な少女エレノアと妖美な女クララ。彼女らは200年の時を生きるバンパイアの母娘であった。奔放に生きるクララは町で出会った冴えない男が所有する古ホテル“ビザンチウム”に転がり込み、そこを瞬く間に娼館へと変えてしまう。一方のエレノアは、白血病で余命幾許もない青年と出会い恋に落ちる。そんな二人を、謎の男たちが追ってきて…。

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モイラ・バフィーニによる戯曲を、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』のニール・ジョーダンが映像化した、母娘の愛憎と壮絶な過去を描き出すホラードラマ。
永遠の命と引き換えに時の流れを失ったバンパイアの薄れることのない記憶の如く、過去と現在を幻想的に織り交ぜて描いた本作。過去の過ちから娘を守りたいが故にその過去と宿命から目を逸らし続ける母と、その母の愛に包まれながらも重荷に感じ始める娘。そんな二人の200年越しの親離れ/子離れを丹念に描き出した本作には、ここしばらく元気のなかったニール・ジョーダンの“らしさ”ってのが垣間見えて嬉しかった一本。
確かに、タブーにソフトタッチしながらエロスを醸し出すような湿気は感じられないし、良家の男子しか受け入れないバンパイアの“同盟”なんて、向こうから「掘って下さい!」と言ってるような題材にもほぼ無関心。しかしながら、生存本能のまま動く母と、死に行く者に対する最期の慈悲として吸血を行う娘の対比と、その母娘の心の動きを繊細に描き出す語り口、伝統を踏まえながらも新しい吸血鬼像など見るべきポイントが多いのも事実。社会的マイノリティの姿ってのもちゃんと描けてましたし。ちょっとまた映画から遠ざかってるニール・ジョーダンではありますが、次回作に期待が高まる一本でも。

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やはりなんと言っても、『天使の処刑人 バイオレット&デイジー』『ラブリーボーン』のシアーシャ・ローナンが素晴らしい。端から私がメロメロだってのも大きいんですが、“永遠の16歳”且つ“繊細な吸血鬼”ってのを持ち前の幻想的な佇まいとおぼろげさで見事にモノにしていたなぁと。おぼろげなのに圧倒的な存在感。また、赤いフードというか赤頭巾姿もピッタリで、是非とも『狼の血族を』彼女主演でセルフリメイクして欲しいと思ったほど。これまでの作品もそうだったんですが、本作でも多用される彼女の囁き声によるナレーションの心地よいのなんのって。こんなのが玄関先に立っててあの声で囁かれたら、吸血鬼だって知っててもドア開けちゃう。で、咬まれる。遠のく意識の中で、「ま、いっか」って思う。きっとそう。
一方の母親役には、『アリス・クリードの失踪』『タイタンの戦い』のジェマ・アータートンが。『007/慰めの報酬』で観た時は「なんか下品なボンドガールだなぁ…」と思ったものですが、その品の無さが「女手ひとつで育ててます!なにか?」ってな強さと必死さを感じさせる好演。
その他、吸血鬼ものの少女マンガに出てきそうな感じだった『ロシアン・ルーレット』のサム・ライリーや、『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』のケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、「あれ?この人も招かれないと家に入れない人なの?」と思わせるもそれだけだったワルキューレ』のトム・ホランダーらが共演。
ところで、このトム・ホランダー。本作のほか、『ハンナ』『ザ・マペッツ2/ワールド・ツアー』とシアーシャとの共演が続いてますが、なに?バーターなの?

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頼んだプレイが思ってたのとちょっと違う

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posted by たお at 10:09 | Comment(4) | TrackBack(15) | 前にも観たアレ■は行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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