2015年12月12日

パージ (The Purge)

監督 ジェームズ・デモナコ 主演 イーサン・ホーク
2013年 アメリカ/フランス映画 85分 サスペンス 採点★★

大雑把なイメージでしかないんですけど、欧米のというか一人の神様の影響下にある人々の倫理観って、“悪いことをしたら罰がある”ってのがベースにあるような感じが。もちろん日本人の倫理観にもそれが大きいんですけど、それ以上に“世間様の目”とか“恥”というのが根底にあるような気も。海外の暴動なんかを見ていて首をかしげちゃうのも、その辺の違いなのかなぁと。

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【ストーリー】
一年のうち一晩だけ殺人を含む全ての犯罪が合法となる“パージ法”により、犯罪発生率も失業率も劇的に改善され平和が訪れた近未来のアメリカ。そんな中、セキュリティシステム会社のエリート販売員ジェームズは、堅牢なシステムに守られた自宅で家族とパージの夜を穏やかに過ごそうとしていた。しかし、長男が助けを求める見知らぬ男を自宅に招きいれてしまう。やがて、その男を標的としていた若者集団が現れ…。

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『交渉人』や『アサルト13 要塞警察』など、なんか立て篭もる話ばっか書いてる気もするジェームズ・デモナコが監督/脚本を務めたサスペンスホラー。製作者にはマイケル・ベイの名も。
無さそうでよくある“殺人もOKな日”という設定を用いた本作。それでも、その一晩を過ごせば次の朝からはまた普通の日という特殊な状況が社会に与える影響や、その世界観なんかをしっかりと膨らませてれば面白い作品になるんでしょうけど、本作はその設定に頼りっきりの骨組しかない感じの一本に。最後の最後にようやく触れられてはいますが、ご近所付き合いの変化とか、犠牲者の遺族の存在、特権階級が君臨する疑似封建社会の様子などには基本的に触れず、風変わりな設定を持つ良くあるシチュエーションスリラーになってしまったのは惜しい。
また、パージを行う側にある種のそう快感とか疾走感があればそれなりに皮肉が効いてくると思うのだがそれはなく、かと言ってされる側や否定する側もイライラさせるだけの存在なので観ている方としては視点の置きようがなく困ってしまう一面も。色ボケして大事やらかす娘の彼氏など、登場人物が少ないのにやらかす結果が後半に意味を成していないキャラがいたりする、やはり膨らませの足りない物語が気になった一本で。

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状況を考えると間違えたことは何一つしてないにもかかわらず、なんとなく気まずい空気を常時漂わせてしまう主人公に扮してたのは、『プリデスティネーション』『フッテージ』のイーサン・ホーク。笑顔に付きまとう厭らしさが、一見親しげでも心は通わしてない主人公には合ってたかと。
また、最後は決めてくれるがそれまではどっちつかずでイライラさせられた妻役に、『ジャッジ・ドレッド』『300 <スリーハンドレッド>』のレナ・ヘディが。美人ながらも根っこの強さが漂うだけに、イーサン・ホークとの組合せはちょいと合わなかった感じが。
特に印象に残る役者は少なかったものの、『セッション』のクリス・マルケイにちょいとカッコいい瞬間があったのは嬉しかった一本でも。

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日常の鬱憤をオンラインゲームで晴らすかの如く

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2015年11月14日

ピッチ・パーフェクト (Pitch Perfect)

監督 ジェイソン・ムーア 主演 アナ・ケンドリック
2012年 アメリカ映画 112分 コメディ 採点★★★

「観たい!」と思った映画しか観ないってのは鑑賞姿勢としては間違ってないんですけど、ジャンルに偏りが出るのは仕方がないとしても、役者に偏りが出てしまうのは後々のことを考えると少々問題が。20年後には、お爺ちゃんが大活躍する映画しか観るものが無くなりそうですし。なもんで、たまには先行投資って意味合いも兼ねて「どれどれ、最近の若者はどんなの観るんだい?」と、普段は敬遠しちゃうような作品を手に取るのも大事なのかと。まぁ、カジャグーグーのCDを聴きながらこれを書いてる私が言うのも説得力無いんですけど。

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【ストーリー】
音楽プロデューサーになることを夢見ながらも、大学教授の父親の勧めでバーデン大学に嫌々ながら入学したベッカ。他人にも学園生活にも興味がないベッカだったが、強引な勧誘で女子アカペラ部“ベラーズ”に入部。個性的なメンバーと共にアカペラ全国大会を目指し練習に励む彼女だったが…。

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ミッキー・ラプキンによる実録本を基に、本作が劇映画デビューとなるジェイソン・ムーアが映画化した学園ミュージカルコメディ。製作者に『ピッチ・パーフェクト2』で長編監督デビューを果たした『スリーデイズ』のエリザベス・バンクスが。
「いらねぇ!」って言ってるのに元気と共感を強引におすそ分けするような人種も作品も苦手な上に、やってる本人は気持よさそうなアカペラも嫌い。アレンジは別にして好きな曲は一曲だけあったが、他は好みから少々ずれた選曲ばかり。こんな“私の苦手なもの”ばかり集まったかのような作品ではありますが、これがなかなか悪くない。
『スタンド・バイ・ミー』ばりのゲロ噴射で幕を開け、ターニングポイントでもう一回噴射、人種ネタや性ネタなど煌びやかな上っ面とは裏腹に攻撃的な笑いが豊富なコメディとして存分に楽しめた本作。ばらばらだったのが一つにまとまるって意味では分かるが、その後の別離には触れない『ブレックファスト・クラブ』の引き合いの仕方や、伝統や習わしに縛られ過ぎちゃいけないってのも分かるけど、勝つためにガラリと変わってしまう様に「ベラーズってなんなの?」って根本の部分に疑問も頭をよぎったりするが、恋や友情をメインにした下手に捻らないしっかりとした土台があるので、笑いと歌の勢いで全然乗り切れる仕上がり。

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ただ、やはり本作の魅力のほぼほぼ全てを担っていたのは、『エンド・オブ・ウォッチ』『50/50 フィフティ・フィフティ』のアナ・ケンドリックにあったのかと。細くて小さな身体にちょい大きめの頭が乗っかってる、なんかバブルヘッド人形のような可愛らしさと、基本ひとつの笑顔で乗り切ってはいるのだが、その笑顔に苦みと醒めを織り交ぜ、他者との距離感を巧みに表現。これが「愛よ!友情よ!夢よ!」とグイグイ来るタイプがメインだったりすると、私のようなオイちゃんは知らん子の学園祭に迷い込んだかのような心境に陥るんですけど、程よく醒めた彼女がメインだったおかげで最後まで楽しめた結果に。
そんなアナ・ケンドリックにしか目が行かなかったからか、最近の定型からはみ出なかったからか他の若手の印象は薄いんですけど、『フライトナイト/恐怖の夜』のクリストファー・ミンツ=プラッセが観れたのは嬉しかったなぁと。
それにしても、本国公開から3年も経ってようやく日本でも公開された本作。本国で莫大な利益を挙げた作品とは言え権利が案外高かったのかもしれませんし、当時はまだアナ・ケンドリックが日本ではほぼ無名だったこともあるんでしょうけど、題材としては決して日本で受けなさそうな代物ではなし。まして、誰しも無名からスタートしてヒットして初めてスターとなるってのに、そのきっかけを作りだそうとしない日本の映画業界の仕事っぷりには、相変わらず過ぎてもう言う言葉なし。ソフトが出たかと思えば独占レンタルですし。スター・ウォーズの度に値上げするという、映画愛好者の神経を逆なですることには才を発揮するくせに。

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売るのが仕事なのにおこぼれ貰うことばかり

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2015年11月06日

ヘッドハンター (Hodejegerne)

監督 モルテン・ティルドゥム 主演 アクセル・ヘニー
2011年 ノルウェー/スウェーデン/デンマーク/ドイツ映画 100分 サスペンス 採点★★★

なにやら若者の恋愛離れってのが深刻だとか。興味がないとか気の合う仲間と一緒にいた方が良いとか、はたまた面倒くさいとやらのもっともらしい理由を挙げてるようですけど、要はフラれて傷つきたくないだけなんでしょうねぇ。最近の“フリ方”にも問題あるよなぁってのはいずれ触れるとして、こういう方々に対し「高望みし過ぎ!」って声もチラホラと。ただ、フラれ続けて数十年の私からすると「高望みしなさ過ぎ!」って印象があるんですよねぇ。「望めば大統領にでもなれる!」みたいな夢と希望の大安売りはどうかと思いますが、恋愛にしろ仕事にしろ生活環境にしろ、多少背伸びすることで得れることが多いと思うんですよねぇ。もともとダメ元なんですし。

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【ストーリー】
有能なヘッドハンターであるロジャーは、その低い身長を除けば美しい妻を持ち豪邸で暮らす誰もが羨む生活を送ってるように見えた。しかし、妻の気持ちを繋ぎ止めその生活を維持する為、彼は顧客の情報を巧みに利用して高級絵画を盗み出す絵画泥棒としての裏の顔を持っていた。そんなある日、新顧客である精密機器メーカーの元重役クラスの持つ絵画を盗み出したロジャーであったが、それをきっかけに命を狙われるようになり…。

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ジョー・ネスボによるベストセラーミステリー“ヘッドハンターズ”を、『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』のモルテン・ティルドゥムが映画化したクライム・サスペンス。クリスチャン・スレイター扮するヘッドハンターが顧客を執拗に追いかける同名映画と立場を逆にしただけのような気がしないでもないが、一応別作品で。
先の読めない展開に一種の心地よい翻弄を味わえる本作。冷静に考えれば、“A社に入社し企業秘密を盗み出したい→じゃぁヘッドハントされよう!→興味を持ってもらうためにそいつの妻に近付こう”までは分かるとしても、“妻に手を出したのバレて仕事紹介してくんね→殺そう!”の流れがいささか乱暴過ぎるし、愛人絡みの話など詳細に描いてないことを良いことに力づくでまとめ上げてる感も拭えないんですが、細かい伏線をあれよあれよと回収しつつ、一番説得力のある着地点に難なく着陸する手際の良さは見事。小説ならではの面白さを残しつつ、映画的なダイナミックさとスピード感を損なわなかった良い例のひとつなのかと。顔面陥没、犬串刺し、全身ウ○コ塗れと、要所要所にビックリするシーンを挟み込んでるのも良いスパイスに。
また、身長も含め色々と身の丈に合ってない生活を手にしてしまった男の悲哀劇としても面白い。妻を失いたくない一心で罪と嘘を重ねていく主人公の姿は、痛々しくもありつつその気持ちが理解できなくもなかったなぁと。

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主人公のロジャーに扮したのは、『30アサルト 英国特殊部隊』『ヘラクレス』のアクセル・ヘニー(168cm)。ぱっと見スティーヴ・ブシェミに見えちゃう瞬間こそ多々でございましたが、それが高級車に高級装飾品、豪邸に美人妻を手にしてるんだから“無理してる”感並々ならず、非常に丁度いいキャスティングに。
一方のクラスに扮したのは、『MAMA』『オブリビオン』のニコライ・コスター=ワルドー。“北欧ハンサム図鑑”なるものがあれば表紙を飾りそうな彼だが、そこから漂う微妙な胡散臭さが役柄にマッチ。欲しいものは全て向こうからやって来る上に、自分の大切なものも全て持ってかれそうな男の敵役を好演。
そんなニコライ・コスター=ワルドーと並ぶと全く生活感を感じさせない、それこそ雑誌の表紙みたいだったシヌーヴ・マコディ・ルンドの、ブリジット・ニールセンから若干威圧感を抜いたような美貌を印象的。「誰もが自分に好意を持っていて、自分もそれは承知してる」ってのがぴったりハマる、典型的な美人だったなぁと。冷たさと温かさが混在した美人だったので、一時話が出たっきり止まってるハリウッド・リメイクが進むのならば、是非ともシャーリーズ・セロンにやっていただけたらと。

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背伸びの為に無理するのと無茶するのは別

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2015年11月02日

ビッグゲーム 大統領と少年ハンター (Big Game)

監督 ヤルマリ・ヘランダー 主演 サミュエル・L・ジャクソン
2014年 フィンランド/イギリス/ドイツ映画 90分 アクション 採点★★★★

素晴らしい脚本に演出、演者の熱演に支えられた所謂“良い映画”や、娯楽のツボをしっかりと押さえた“面白い映画”、私自身のツボを刺激する“好きな映画”ってのは、レビューを書く際は案外楽なんですよねぇ。褒め所が豊富なもんで。その逆も然り。ただ、レビューを書く際に非常に悩まされるのが“嫌いになれない映画”ってやつ。特に素晴らしい個所があるわけでもなければ好きな役者が出てるわけでもなく、巷で評判が悪いのも十分理解できる代物なのに、どうやっても嫌いになれない類のやつ。そんあ高評価を付けながらもその評価の理由が浮かばない作品ってのに、数年に一度くらいは出会うんですよねぇ。

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【ストーリー】
テロリストのミサイル攻撃を受けフィンランド上空で撃墜させられた、アメリカ大統領ウィリアム・アラン・ムーアが乗るエアフォースワン。緊急脱出ポッドにより辛うじて命は助かった大統領であったが、フィンランドの山奥の森にただ一人取り残されてしまう。そこに現れたのは、一人前のハンターになるために森へ来ていた13歳のちびっ子狩人オスカリ。彼の助けで森を脱出しようとする大統領であったが、大統領狩りにテロリストも森へやって来て…。

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全裸の老人が雪原で子供を襲う異色サンタ映画『レア・エクスポーツ 〜囚われのサンタクロース〜』のヤルマリ・ヘランダーによる、極悪テロリスト相手に子供とヘタレ大統領が奮闘する様を描いたちびっ子アクションアドベンチャー。たんまりといる製作者の中には、『ジャッジ・ドレッド』のアレックス・ガーランドの名も。
フィンランド映画史上最大の予算を費やし製作されたという本作なのだが、外国人の目から見たアメリカの誇張された姿とは言えやたらと「最強!」を口にする大袈裟すぎる尊大さや、そこに至るまでは緻密な計画だったんでしょうけど、いざ実行したらやたらと大雑把な暗殺計画、大味過ぎるアクション描写に噛み合ってるとは言い難い笑いの要素。肝心なことが解決しない本作に、作り手の「ふざけてやってます!」って姿勢が全面に出ているのであれば多少納得も出来るんでしょうけど、生憎ふざけているのか真面目なのかイマイチ分かりづらいってのも困りもの。なんかもう、とても2014年の作品とは思えぬ仕上がり
この貶し所の豊富な本作なんですけど、困ったことになんとも嫌いになれない。『レア・エクスポーツ 〜囚われのサンタクロース〜』での花子顔をベースに、良い具合の“出来ない子”顔に育ったオンニ・トンミラの味わい深い顔立ちや、久々の三枚目役を演じていた『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』のサミュエル・L・ジャクソンらも、この“嫌いになれない”大きな要素の一つではあるんですが、全然それだけではない魅力に溢れていたのも事実。魅力というか魔力

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なんかこうダイ・ハード的と言うか、80年代後半から90年代前半、感覚的に言うなら88年から92年の間の雰囲気に溢れていた本作。もしかしたら、この“2014年の作品とは思えぬ”ってのが最大のポイントなのかと。ヘランダーが76年生まれだってことを踏まえると、最も影響を受けやすい年頃に観た映画の原体験、その大好きだった映画群への思い入れの全てをこの作品にぶち込んだのではないかと。ヘランダー自身が大統領役に熱望していたのがメル・ギブソンだったってのも、そう思わずにはいられない要因のひとつ。
これもまた憶測ではあるんですが、その時期に母国を離れハリウッドで大活躍したフィンランド映画界が誇る巨匠、レニー・ハーリン大先輩に対する溢れんばかりのリスペクトってのもこの作品の魅力なのではと。宵越しの金を持たぬ江戸っ子の如く湯水のように予算を使い、多少の粗をエモーショナルさすら感じるアクションでねじ伏せるハーリンスタイルが本作に漲っている気がしてならない。そう思うと、本気なのか冗談なのか分からないアクション描写の数々も、そのアクション前にいちいちキメ台詞があるのも、異常なまでに派手な爆発も、やたらと高いところから飛び降りるのも、爆発をバックに脱出ポッドで主人公らが逃げ出すのも全て納得がいく。憶測重ねで申し訳ないんですけど、尊敬する大先輩が作った『ダイ・ハード2』の後に続く作品が残念な仕上がりだったことに対する積年の思いと言うか、“俺のダイ・ハード3”が本作のベースにあるのではないのかと。プラス“俺のクリフハンガー”。
そんなヘランダーによるハーリン愛と俺イズムと俺の夢が詰まった作品を嫌いになれるわけがないので、客観的な出来云々を差し置いてでも高評価を。
あ、因みに共演には『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』のレイ・スティーヴンソンや、『アルゴ』のヴィクター・ガーバー、『沈黙のSHINGEKI/進撃』のテッド・レヴィン、『ホットファズ 俺たちスーパーポリスメン!』のジム・ブロードベントに、オンニのパパのヨルマ・トンミラが『レア・エクスポーツ 〜囚われのサンタクロース〜』同様今回もパパ役で。

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次はハーリンが頑張る番

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2015年10月17日

ハートブルー (Point Break)

監督 キャスリン・ビグロー 主演 キアヌ・リーヴス
1991年 アメリカ/日本映画 122分 アクション 採点★★★

本来のヒーローよりも悪役の方が輝いてる作品って多いですよねぇ。まぁ考えてみれば、「あれやっちゃダメ、これもやっちゃダメ」と制約の多いヒーローよりも、ルールが適用されずに好き放題できる悪役の方が作ってる方としても楽しそうですしねぇ。実生活でも善人ぶってばかりいる人ってのはイマイチ信用できなかったり、ちょっとしたミスがステイタスをガタ落ちにさせたりするのに対し、勝手気ままな人ってなんか妙にモテたりもしますからねぇ。どうまとめたらいいかちょっと分からなくなってきましたが、まぁ自分に正直に生きるのがよろしと。

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【ストーリー】
歴代大統領の覆面を被り、誰も傷つけず僅かな時間で犯行を終了させる銀行強盗が、ロサンゼルスのベニスビーチで続発。犯人は非常に統制のとれた集団で尚且つサーファーであると目星をつけたFBIは、新人捜査官のジョニーをビーチに潜入させる。やがて、とあるグループのリーダーのボーディと知り合い絆を深めていくジョニーだったが…。

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悪の魅力を描き切った『ニア・ダーク/月夜の出来事』や『ブルースチール』でのキレの良いアクション演出で注目された女流監督キャスリン・ビグローが、ただでさ男社会の傾向が強いハリウッドにおいて、ことさらその傾向が強いアクション映画界に乗り込んで作り上げた犯罪アクションドラマ。製作開始当初はまだギリギリ旦那だったジェームズ・キャメロンが製作総指揮を。近日、本作をリメイクした『Point Break』が全米公開予定。
これまでも潜入捜査官がエキセントリックな捜査対象者に心酔していったり深い絆が生まれたりする作品は多かったが、その中でも未だに根強い人気を誇る本作。如何せんサーフィンなるものにそこまでの情熱を持ち合せていないし、大自然を相手にした禅問答のようなやりとりにもピンと来るものが私自身にはないのでそこまでのめり込むことはないのですが、音楽をやってる人間が集まる世界にはそこだけの言語や空気があるように、ある特定のグループが持つ空気感やそこでしか生まれえない絆ってのは非常に良く描けている一本ではと。大自然を相手に死の恐怖を一歩踏み越えた者同士の繋がりってのは、私のようなインドア派の人間にでもよく伝わってくる描かれ方。派手なアクションを期待するといささか肩透かしを食らうが、その世界観やダークヒーローであるボーディの魅力など、脚本の足りない部分をキャスリン・ビグローがしっかり補ってた印象が。
ただまぁ、主人公の身分がバレてからの苦悩や葛藤もそこそこに、単なる犯罪者と化したボーディを相手によくあるアクション映画と化してしまった終盤はいただけず。この、せっかく積み上げてきたものがゴール目前で崩れてしまう感じがもったいないなぁと。

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新人捜査官のジョニー・ユタに扮したのは、当時注目の若手真っ最中だった『フェイク シティ ある男のルール』のキアヌ・リーヴス。どういうわけか“演技派”と称され、この後に史劇などで大いにやらかしてしまうキアヌだが、本作では結構な時間をキアヌが最もハマるビルとテッドのテッド系統のキャラとしてビーチで過ごしているので、然程粗も目立たず。まぁ、捜査官のパートになると途端に作品がフワフワしちゃうのはアレでしたが。
ただ、そんなキアヌのフワフワ感をシッカリと抑えてくれてたのが、『若き勇者たち』のパトリック・スウェイジ。どちらかと言えば海よりは山が似合う気もするので、潮焼けしたチリチリ頭を見慣れるまで少々時間が掛かってしまったが、もともと若者たちの精神的支柱となる役柄が似合う彼だけに強盗団のカリスマ的リーダーを好演。『ロードハウス/孤独の街』ばりの格闘アクションを披露してくれるのも嬉しい。
また、『ビッグ・ウェンズデー』からの流れなのか、ビーチの住人感が見事に出ていた『リーサル・ウェポン』のゲイリー・ビューシイや、『追撃者』のジョン・C・マッギンレー、『タンク・ガール』のロリ・ペティ、『ドリームキャッチャー』のトム・サイズモアらも印象的だった一本。
そう言えば、キアヌに絡むチンピラサーファーの一人として、この頃何気に映画出演が多かったレッド・ホット・チリ・ペッパーズのアンソニー・キーディスも出ておりましたねぇ。

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きっかけはなんであれ、夢中になれるものが見つかるってのは幸せなこと

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2015年10月05日

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) (Birdman: Or (The Unexpected Virtue of Ignorance))

監督 アレハンドロ・G・イニャリトゥ 主演 マイケル・キートン
2014年 アメリカ映画 119分 ドラマ 採点★★★

平均寿命から考えると、人生の折り返しってのをとっくに過ぎてしまったミドルエイジ真っ盛りな私。ただまぁ、下の子がまだ小さいってのもあってか、さっぱりミドルエイジマンの自覚なし。子供に必要とされなくなって初めて実感するもんなんでしょうかねぇ。

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【ストーリー】
かつてヒーロー映画“バードマン”で一躍大スターとなるが、そのイメージを払拭できないまま落ちぶれてしまったハリウッド俳優リーガン。彼は起死回生を図るため自ら演出・脚色・主演の舞台をブロードウェイで開催するが、共演する実力派俳優マイクの横暴に振り回され、本番を目前に精神的にも経済的にも追い詰められていき…。

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『バベル』のアレハンドロ・G・イニャリトゥによる、ワンカットを積み重ねた全編ワンショットかのような撮影手法と、ドラムを大々的にフューチャーしたサウンドトラックも話題になった中年ドラマ。
「自分はもっと出来る筈だ!」ってのと「俺はダメな人間だぁ…」ってのが交互に襲い来る中年期の危機を、その波同様悲喜こもごも描いた本作。そのテーマはもちろんのこと、目の前で舞台劇が展開されているかのような疾走感と緊迫感、演劇界をえぐったネタの数々など批評家受けが良いのは納得できたが、正直なところ私自身は上手く捉える事が出来なかった一本でも。
本作同様に中年期の危機というリアルに超常現象を織り込んだ『アンブレイカブル』や『Mr.インクレディブル』ほど身につまされなかったのは、置かれた状況や立場の違いってのを踏まえて良しとしても、ちょこちょこ描かれる“超能力”ってのをどう捉えていいのか私には分からなかったってのが大きかったのかと。忘れられないスター時代のエゴとして捉えると、自分の目には超能力だが第三者から見るとそうじゃないって描写(舞台監督にはただ暴れてるようにしか見えない等)に納得がいくんですが、そうするとラストシーンがしっくりこない。逆に、スターという虚構の象徴とすると、実力ではなく話題性のみでスターとなる皮肉は効いてくるが、そうなるとエマ・ストーンのハッピーエンド丸出しの笑顔がしっくりこない。まぁ、何を書いても的外れになりそうな作品でもあるんですけど。アメコミと爆発ばかりのハリウッドと、狭い世界でお高くとまった演劇界に対する毒吐き映画としては楽しめましたけど。

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主人公のリーガンに扮したのは、『ロボコップ』のマイケル・キートン。バットマンでスターの仲間入りをし、それ以降そのスターダムの地位に返り咲かなかったマイケル・キートンが主人公を演じるんだから、パブリックイメージ的にはそりゃあリアルだよなぁと。ただ、それ以前とそれ以降の作品選びを見るとある種の一貫性があるので、バットマンを演じたこと自体が事件なのであって“落ちぶれた大スター”ってイメージは個人的にはない分、そこまでのリアルさを感じるまででもなく。
その反面、下手に実力があるがゆえに自身の演技論を振りかざし周囲を混乱に陥れる、『グランド・ブダペスト・ホテル』のエドワード・ノートンはリアルだったなぁと。『インクレディブル・ハルク』でも連日自分のシーンを描き直してたらしいですし。
その他、『デュー・デート 〜出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断〜』のザック・ガリフィナーキスや、ついつい目を奪われてしまう『オブリビオン』のアンドレア・ライズブロー、相変わらずモテない男子の女神感があった『ラブ・アゲイン』のエマ・ストーンに、純粋さと上昇志向のガツガツ感が上手く混ざってた『ステイ』のナオミ・ワッツらも共演。

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演技が下手でも飛べりゃスターに

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2015年09月13日

ザ・ヴェンジェンス (Vengeance of an Assassin)

監督 パンナー・リットグライ 主演 ダン・チューポン
2014年 タイ映画 90分 アクション 採点★★

昨年7月に急逝した『マッハ! ニュー・ジェネレーション』のパンナー・リットグライが、監督/脚本を務め最期に遺したムエタイアクション。主演には、だんだんホリプロの南田マネに見えてきてしまうロケットマン!』のダン・チューポンが。
ムエタイとガンアクションの融合という新しい地点を目指した気配は感じますし、遺作はあんまり貶さないって空気もあるので大人として可能な限り褒める方向で頑張ってみようかと。

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【ストーリー】
潜入捜査官だった両親を幼い頃に殺され、伯父のもとで育てられていたジーとタンの兄弟。やがてジーは両親の復讐を果たすため家を飛び出し犯罪組織の暗殺者となり、一方のタンも伯父を手伝いながら鍛錬を重ねていた。そんなある日、仇の犯罪組織が彼らのもとに殺し屋を送り込み…。

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真面目に褒めようとすると、「スターを夢見る若手スタントマンが身体を張って頑張ってたのが良かったです!」としか書きようのない本作。もはや我慢比べと化した苛烈なスタントが繰り広げられる格闘サッカーで幕を開け驚かされるも、それが物語にサッパリ繋がっていないどころか意味すら持っていないことにさらに驚かされる。もう、出だしからにしてこう
で、父の元同僚の下で暗殺者として鍛錬を積む主人公ですが、特に訓練シーンがあるわけでもないまま唐突に挿入される回想シーンで父の元同僚死亡。独り立ちした主人公の仕事っぷりを、ポジティブに捉えれば『ハード・ボイルド/新・男たちの挽歌』風のワンカット撮影で描いてますけど、カメラは主人公の足元しか映しません。最後に主人公の姿をさらして「あの主人公がこうなったんだよ!」と驚かせたかったようですけど、逆に違う人が出てきた方が驚きます。というか、これで驚くと思ったこと自体に、ワンカット撮影よりも驚かされました。
その後、結局最後まで何で絡んでるのか分からなかったヒロインが登場し、あれやこれやで大怪我を負う主人公。身体のど真ん中を太い鉄パイプが貫通してます。「あら、これで主人公が死んで弟にバトンタッチかしら?」と思いきや、突然登場する謎の中国人老師が「急所は避けてるから大丈夫!」と薬を塗りたくって治しちゃいます。これが四千年の歴史の実力ってやつでしょうか?

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で、急に男女三人の微妙な三角関係的展開をしてみたり、初代プレステのようなCGをバックにアクションしてみたり、主人公らが敵ボスの返り討ちに遭う絶体絶命のピンチをなんとなく放置されて生き延びてみたりと、あまり普通の映画では見られない展開を乗り越えようやくクライマックス。やたら燃える手榴弾の爆発と両手にアサルトライフルという、なんか四半世紀前の香港映画のようです。明らかにチョウ・ユンファをイメージしたんでしょうけど、ショットガンに持ち替えた途端に大門団長になります。でもサングラスが外れると南田マネに
そんでもって最終決戦。ヒロインを人質に取った敵ボスに手が出せず車に撥ねられ続ける南田。頑張ってるアピールが凄いですね。そんな頑張ってる南田をしり目に、弟がボスを仕留めます。銃を持ってるならもっと早めに仕留めればいいのにって思い以上に、これまで頑張ってきた主人公の苦労を台無しにする展開に愕然としました。
そんな、撮ってみたいアクションシーンだけを並べ、理屈は通っていないが辛うじて筋が通る物語を添えただけの本作。肝心のアクションシーン自体にもこれといって見どころのない残念な仕上がりではありましたが、身体を張る若手の姿勢と、タイアクション界を牽引してきた実績に敬意を表し★ひとつオマケめで。

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積み重ねてきたものを目の前で崩され

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2015年09月06日

ババドック 〜暗闇の魔物〜 (The Babadook)

監督 ジェニファー・ケント 主演 エシー・デイヴィス
2014年 オーストラリア/カナダ映画 93分 ホラー 採点★★★★

児童虐待が直接的な原因となってる場合のみならず、育児放棄や子供に対する無関心さが遠因となっている痛ましい事件ってのが後を絶たないですよねぇ。そんな事件が起こると、決まって「親が悪い!」「子供に対する愛情が足りない!」「子供を最優先にすべき!」といった声があがりますが、それらがこれからの事件を抑止する効果につながるかってことに関しては大きな疑問を。確かに私も親になる前はそう考えてた人間だったんですけど、それなりの問題を抱えた子の親となった今では、そんな声や考え方が逆に親を追い詰めて悪い方向へと進めてしまうんじゃないかなぁと思うように。もちろん子供と向き合うのも大切ですけど、自分と向き合うのも大切。耐えられない時は、逃げてもサボってもいいと思うんですよねぇ。

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【ストーリー】
出産を迎え病院へと車を走らせている道中での悲惨な事故により、最愛の夫を失ってしまったアメリア。それ以降、彼女はシングルマザーとして一人息子のサミュエルと二人で暮らしていた。しかし、小学校や親類にも煙たがられるほど言動に問題の多いサミュエルに手を焼いていたアメリアは周囲から孤立し、精神的にも追い詰められていく。そんなある夜、見覚えのない“ババドック”という絵本を見つけたサミュエルにせがまれ読み聞かせをすると、その夜を境に本の内容通りの奇怪な出来事が起こり始め…。

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女優として『ベイブ/都会へ行く』などにも出演していたジェニファー・ケントが、自身の短編“Monster”を長編化して劇映画デビューを果たした、各国の映画祭で話題をさらったホラー作品。
問題を抱えた息子の育児に日々疲弊していくアメリア。「母一人子一人だからこそちゃんとしなければ」「特殊な子だからこそ私が受け止めなければ」という生真面目さが彼女を精神的に追い詰め、発散できないストレスを肥大させていく。助けの声を上げることも、誰かに甘えることも、外に逃げ出すこともその生真面目さゆえに出来ず、そのストレスが言葉の中にトゲを生み出して更に周囲から孤立していくアメリア。
サミュエルの誕生と共に夫を失ったアメリアにとって、息子の誕生日は同時に夫の命日。本来なら子供の成長を喜ぶ日になるはずなのだが、アメリアにとっては悲しい記憶が蘇る日にすぎない。「この子さえいなければ…」、そんな思いが心の隙間に入り込む。息子の奇行が原因で小学校から追い出され、妹とも疎遠に。仕事で疲れ果て家に戻ると、待っているのは何かにつけ感情を爆発させる息子との二人きりの時間。息子の過剰なまでの母親に対する愛情表現と爆発する感情に、心身ともに追い込まれていくアメリア。この子さえいなければ…。

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そんな肉体的にも精神的にも追い詰められた母親の心に入り込んだ“”を、“a bad book”のアナグラムであるババドックという魔物の姿を借りて描いた本作。ほんの小さな“魔”でしかなかった心の闇がどんどん肥大してコントロール出来なくなる様を、女性でしか描きえないディテール細かな描写で描き切っていたのが見事。本来なら愛情を強く感じるはずの後ろから抱きついてくる幼い息子に対し、ふと嫌悪感を感じてとっさにその手を振り払ってしまう様や、怒りと後悔が交互に襲い来る様など、子を持つ親であればハッとしてしまう描写も多く、その生々しさと身近さに魔物として登場するババドック以上の怖さを。自分が生み出してしまった心の闇を消し去ったり全否定したりせず、正面から向き合うことで心のバランスを保とうとする締めくくりも上手い。
もちろん単なるモンスター映画としても完成度は低くなく、ババドックの造形や絵本の不気味さ、アメリアの心の中を象徴するかのように闇が多くがらんどうな家の描写など、本能的な恐怖を感じる見どころも多かった一本で。

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posted by たお at 15:45 | Comment(2) | TrackBack(3) | 前にも観たアレ■は行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月04日

ビッグムービー (Bowfinger)

監督 フランク・オズ 主演 スティーヴ・マーティン
1999年 アメリカ映画 97分 コメディ 採点★★★★

物心ついた頃には既に重度の映画好きだった私ですが、これまで一度たりとも「映画を作りたい!出たい!」と思ったことはなし。学生の時に一度だけ映研の知り合いが作った自主製作映画用に音楽を作ったことがありますけど、それは映画作りに携わるってのよりも映像に合わせた音楽を作る試みって意味合いが私にあったので、映画作りに参加したって感覚でもなし。そもそも、物語を作ったり映像で語ったりする才能ってのを、全く持ち合わせてないと思ってるんですよねぇ。もう、映画は観るものと決めちゃってる。でもまぁ、そんな才能のあるなしで尻込みなんかせず、“好きだから作る!”って姿勢も大切なんだろうなぁ。

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【ストーリー】
弱小映画会社の映画監督ボーフィンガーは、会社の経理担当の手掛けたSF映画の脚本が大ヒット映画になることを確信。大スターのキット・ラムジーに主演を依頼するも全く相手にされないボーフィンガーだったが、「アクションスターが走ってるシーンがあればいい!」とばかりにキットを隠し撮りすることで製作を敢行。キットと瓜二つのど素人ジフや、田舎から出てきたばかりの女優デイジーらと撮影を続けるボーフィンガーだったが…。

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ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して』のスティーヴ・マーティンが自ら脚本を手掛けた、ハリウッドの外側に住む“ハリウッド・アウトサイダー”の悲喜こもごもを描いたコメディ。メガホンを握ったのはマペット文化の生みの親の一人であり、スティーヴ・マーティンとの仕事も多い『ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ』のフランク・オズ。
脚本の出だしと結末しか読まないハリウッドの所謂“プレイヤー”や、エゴの肥大したスター、そのスターに寄生するサイエントロジーなどの怪しげな団体といったハリウッドの姿を、そのど真ん中で狂ったふりをしながら冷静に見つめてきたスティーヴ・マーティンならではの冷たい毒気を含んだ視線で描きつつも、ビジネスだけではない映画作りの夢や希望ってのをたっぷりと映し出した映画愛に溢れた本作。主人公の嘘を発端とした嘘にまみれた物語なのだが、それを“映画そのものが人を幸せにする嘘”ってのに繋げている構成も上手い。これで登場人物が“才能はあるが機会のない人間”で、作り上げた作品が稀にみる傑作だったりするとアンチ・ハリウッドってのが前に出過ぎた嫌味な作品になるんでしょうが、才能がなくてもやる気だけはある人々が作り上げたビックリするほどダメな映画って地点に着地するので、夢を叶える物語としてホッコリとさせてくれるのも嬉しい。
笑いも豊富で顔ぶれも豪華ながらも日本未公開で、最近ではビデオ屋でも見かけなくなってきた作品ではあるんですけど、映画を取り扱った映画の中でもなかなか忘れ難い名作の一本なんじゃないのかなぁと。

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本作で最も強烈な印象を放ってるのは、やっぱり正反対のキャラクターを一人二役で演じ分けた『ペントハウス』のエディ・マーフィかと。当時のパブリックイメージを自虐的に演じたかのようなキットのパートもさることながら、往年の名キャラクター“バックウィート”を彷彿させる素直でいい子だが思いっきりオツムの足りていないジフのパートが強烈。出てるシーンの全てが抱腹絶倒。“白人の隣で面白いことをやってる黒人”って所まで下がってること自体にはちょっと考えさせられる部分もありましたが、かつての勢いが全くなくなり、どちらかと言えばネガティブなイメージしかなかった当時のエディが、これを機に完全復活するんじゃないのかと思わせただけの面白さに溢れている。まぁ、そう思わせられたまま今日に至っちゃってるんですけど。
その他、人形のような愛くるしさとは裏腹に劇中一番のしたたか者を演じた『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』のヘザー・グレアムや、『アジャストメント』のテレンス・スタンプ、落ち目のどん底にいたアベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』のロバート・ダウニー・Jrらといった豪華な顔触れも楽しめる一本で。

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posted by たお at 13:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | 前にも観たアレ■は行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月31日

ベイマックス (Big Hero 6)

監督 ドン・ホール/クリス・ウィリアムズ 主演 スコット・アツィット(声)
2014年 アメリカ映画 102分 アニメ 採点★★★

ブログタイトルの脇に「“泣ける”イコール“いい映画”なの?」なんてのを掲げちゃってるせいか、泣ける映画を全否定してると思われがちなサブタレ。いやいや、全くそんなことは思ってないんですよ。“泣ける”いい映画ってのは沢山ありますし、同様に“笑える”いい映画や“手に汗握る”いい映画、“ヘドが出るほどグロい”いい映画ってのも沢山あるんですよねぇ。その逆ももちろん然り。ただ、どうも世の中では泣くことのみに映画の価値を見出しているような感じがしちゃって、そこに大きな違和感を感じてるわけで。泣かせたり笑わせたり、はたまたとことん怖がらせるみたいな、観客の感情をコントロールする技術に関して優越はないと思うんですけどねぇ。

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【ストーリー】
最愛の兄タダシを謎の爆発事故で失った14歳の少年ヒロ。深い悲しみに暮れ心を閉ざしたそんなヒロの前に、タダシが遺した心優しきケアロボット“ベイマックス”が現れる。ベイマックスのケアにより徐々に元気を取り戻したヒロは、やがて爆発事故の背後に謎の怪人の存在があることを知る。真相を解明するため、タダシの研究仲間たちと共に謎の怪人を追うヒロだったが…。

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マーベルの同名コミックをディズニーが映画化した、ヒーローアクション・コメディ。原作とはありとあらゆる部分で違うので、コミックとは別のオリジナルと考えた方がいいのかと。
愛くるしいにも程があるベイマックスを中心に、家族愛に友情、復讐の不毛さや他人を思う気持ちといった普遍的なテーマを、笑いとアクションを豊富に取り込みつつ、ディズニーらしいエグ味を奇麗に取り除いたスッキリ風味でフンワリとまとめ上げた一本。映画に然程興味のなかった子供が映画好きになる切っ掛けのひとつになりそうな作品でも。アスファルトひとつにしても実写と見紛うほど描き込まれた、非常に高いグラフィックレベルにも大いに驚かされた。
そもそも嫌いになれるわけがない“少年とロボット”って題材の本作は、大人楽しめる作品としては充分過ぎるほどに完成された作品なんですが、大人楽しめる作品として捉えると少々首を傾げる箇所も。駆け足でサックリと楽しむウェルメイドな作品故か、サンフランソウキョウという和洋折衷の近未来架空都市はヒーローと怪人が現れることが正常なのか異常なのか、周囲のリアクション描写の少なさもあってその世界観がイマイチ分らない。また、爆発事件の発端もヒロの発明品を見てから思いついた様にしか見えないので、黒幕のその後の行動とのチグハグさも目立ってしまっている。

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このさらっと駆け足で描かれてしまうのは人物も然りで、ベイマックスとヒロに関しては然程問題はないのだが、タイトルに“6”が入っている割に他の4人がその他大勢。行動原理が「友達が死んだから」「その弟が可哀想だから」の上辺だけをなぞっているだけの印象。連続するであろう物語の序盤一部分で完結させる映画につきものの難点だったなぁと。
しかしながら、こういった不満の数々はあくまで“大人が楽しむ”映画として捉えた場合のこと。大いに楽しんでいる子供を視界の端に捉えながら大人も一緒に楽しむ映画としては、深く描かない駆け足具合が後の会話の盛り上がりを生み出す可能性もあるので、非常に良く出来た一本に仕上がってると言えるのかと。
原作とは凄まじいまでに違う、丸くて柔らかくて素直で若干アホなベイマックスの可愛らしさがほぼほぼ全ての作品でもあるので、ちょい他のキャラクターや声に関しての印象が薄くなった本作。ただ、クレジットを見ると『ロック・オブ・エイジズ』のT・J・ミラーや、増殖を続けるウェイアンズ一家の一人デイモン・ウェイアンズ・Jr、『エンジェル ウォーズ』のジェイミー・チャン、『ラン・オールナイト』のジェネシス・ロドリゲス、そして『ソルジャーズ・アイランド』のジェームズ・クロムウェルといった結構な顔ぶれが。
そんな中でも個人的に気になる人が、『タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら』のアラン・テュディック。ヒールの一人だった彼ですけど、どっちかと言えば火吹き着ぐるみ役の方がキャラにピッタリだったよなぁと。
あ、忘れるところでしたが、マーベル作品なんでもちろんスタン・リーがもれなく付いてきてましたよ。

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posted by たお at 11:19 | Comment(7) | TrackBack(54) | 前にも観たアレ■は行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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