2016年08月02日

パパVS新しいパパ (Daddy's Home)

監督 ショーン・アンダース 主演 ウィル・フェレル
2015年 アメリカ映画 96分 コメディ 採点★★

アラアラ、随分とご無沙汰になってしまいましたが相変わらずカラ元気のたおですよ。最近さっぱり映画を観ていないってのと、書こうと思いつつも題材が若干きな臭いので躊躇してるうちにスッカリと放置状態になっちゃったサブタレですけど、まだ飽きたわけではないので気長にお付き合い頂ければと。で、久々に映画を観てレビューを書くなら「やっぱフェレルだろ!」ってんで選んでみたんですけどねぇ…。

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【ストーリー】
不慮の事故で子供を作れない身体になってしまったブラッドだったが、子持ちの美女サラと結婚し念願の“パパ”に。子供たちとの距離も徐々に縮まり幸せな家庭を築き始めていた矢先、サラの前夫で子供たちの実父ダスティが突如戻ってくる。“パパ”の座を巡り争う二人であったが…。

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ウィル・フェレルとマーク・ウォールバーグの『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』コンビが贈る、“パパ”の座を巡って養父と実父が争うドタバタコメディ。メガホンを握ったのは、『なんちゃって家族』の脚本も手掛けたショーン・アンダース。
暴力を嫌う真面目で優しい家庭人のお手本のような主人公の前に、それとは真逆のワイルドで魅力的だが家庭人としての責任感は全くない前夫が現れ騒動になる様を描いた本作。基本的にテリトリーが侵食されるタイプの作品はそれがコメディであっても苦手なんですけど、「フェレルだから大丈夫!」と思って挑んだ私が甘かった。テリトリーが侵されていくイライラと恐怖感を笑いがカバーしてくれてれば救いもあるんですが、ボクシングのチャンピオンに全裸で詩の朗読で挑むようなベクトルの違い過ぎる対決で輝きを放つフェレルの持ち味を活かさず、フェレルとウォールバーグを同じフィールドに立たせてしまったために笑いは常時低空飛行。自分の立ち位置をハッキリさせないために事態を悪化させるだけの妻には苛立つだけだし、予定調和的に“真面目が一番”に着地するオチに作り手側が全然そう思っていそうにないから、“子供を作るのは簡単だが、親になるのは大変”ってテーマが浮き出てこないってのも痛かった一本で。

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真面目で優しくスムースジャズを愛する主人公に扮してるだけに爆発力には欠けていたものの、要所要所に爆発し、シッカリとお楽しみでもある世界有数のだらしない肉体を披露してくれたウィル・フェレル。一方、チンピラ臭抜け切らない人たらしに扮したマーク・ウォールバーグ。双方がその持ち味を出していただけに、作り手がそれを活かせてなかったのがなんとも残念だった本作。対決してるはずなのに互いにさっぱり交じり合わないくらいの暴走を見たかったなぁと。
その他、前の旦那に一言「出ていけ!」と言えば済むだけの妻役に、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』のリンダ・カーデリーニ、『アントマン』のボビー・カナヴェイル、『幸せへのキセキ』のトーマス・ヘイデン・チャーチらが共演。
顔触れの割にちょいと残念な印象が残っちゃった本作ですけど、『12 ラウンド』のジョン・シナを見れたのは嬉しかったなぁと。

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結局“便利な旦那が一番いい”ってことなんでしょうねぇ

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2016年06月15日

バタリアン (The Return of the Living Dead)

監督 ダン・オバノン 主演 クルー・ギャラガー
1985年 アメリカ映画 91分 ホラー 採点★★★★

“走るゾンビ”と“走らないゾンビ”だったら、断然走らない方のが好きな私。あのウスノロ具合に「もしかしたら、やり過ごせるんじゃね?」と甘い期待をさせておきながら、気が付くと囲まれてしまってる絶望感やジワジワと追い詰められ屠られる恐怖、そしてなによりも“死体が動いている”って不気味さが好き。確かに走ってる方が追われる身としては怖いんですけど、全速力で追われればそれがゾンビじゃなくても怖いので、やっぱりウスノロの方が好きですねぇ。

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【ストーリー】
ケンタッキー州ルイビルの医療倉庫で働くこととなったフレディは、先輩のフランクから『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』は実話で、その時の死体が軍の移送ミスで倉庫の地下に保管されていることを聞かされる。早速地下へと向かう二人だったが、厳重なはずの容器からガスが噴出。倉庫内の死体が蘇ってしまう。なんとかそのゾンビをバラバラにし焼却する彼らだったが、その煙が原因で近くの墓地からゾンビが続出。一帯はパニックに陥ってしまう。その一方、ガスを吸い込んでしまったフレディとフランクは…。

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『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド/ゾンビの誕生』の脚本を手掛けたジョン・ルッソの原案を、80〜90年代のSF・ホラーを語るうえで外すことの出来ない『ゾンゲリア』のダン・オバノンが初めてメガホンを握って映画化した、『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド/ゾンビの誕生』の後日談を描いた続編的というか姉妹編的というか、ちょっと遠い親戚みたいなホラー・コメディ。
人体破壊や流血が過剰になればなるほど“笑い”に転化するって認識がまだ一般的でなかった頃に、“笑って楽しむホラー”というジャンルがあるんだってのを世間に知らしめたことでも記憶に残る本作。ドリフ的というかレスリー・ニールセン的な(実際、社長役として最初にオファーされたとか)ドタバタとした笑いをメインにしながらも、ホラークリシェをおちょくって終わりにするのではなく、怖がらせる部分はしっかり怖がらせ、ゴア描写もきっちりと押さえる、まさにホラー・コメディと言える本作。「あれは実話なんだよ」というイカした導入部もそうだが、生きながら徐々にゾンビと化す男の悲哀や恐怖、ドンっと終わるブラックなオチと作品としての個性がしっかりと作りこまれているからこそ、30年以上を経ても尚楽しめる一本になったのかと。走って喋るゾンビってのも衝撃的でしたし。

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ヒドゥン』のクルー・ギャラガーや『ポルターガイスト』のジェームズ・カレン、『13日の金曜日PART6/ジェイソンは生きていた!』のトム・マシューズに、ツルンとした裸体が当時は「ヒャッホーイ!」だったリネア・クイグリーなど出演陣も印象的ですけど、やっぱり本作はタールマンやオバンバ、ハーゲンタフなど東宝東和的ネーミングセンス(タールマンは違うけど)が光るゾンビの面々が素敵。その他大勢のモブゾンビのメイクが正直残念過ぎる仕上がりではあるが、その余力を全て注ぎ込んだかのようなメインゾンビの仕上がりはホント見事。中でもデロデロのタールマンは今見ても中に人が入ってるとは信じがたい完成度の高さだなぁと。
そういえば、当時これの地方での同時上映ってシュワルツェネッガーの『コマンドー』だったんですよねぇ。数ある組み合わせの中でも、伝説的に大当たりの組み合わせですよねぇ。同時上映の思い出や「ビバ同時上映!」ってのは、コレとかコレとかこれまでも幾度か書いてきましたが、味気も魅力も乏しくなってきた感のある映画興行の打開策の一つとして“同時上映の復活”ってのは良いと思うんですけどねぇ。

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興味のなかった作品の面白さに触れれるってのも同時上映のメリットかと

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2016年06月01日

バンク・ジョブ (The Bank Job)

監督 ロジャー・ドナルドソン 主演 ジェイソン・ステイサム
2008年 イギリス/アメリカ/オーストラリア映画 111分 サスペンス 採点★★★★

国家が国民に対し情報を隠すってのが概ね“悪いこと”とされてたりしますけど、知らせるべき情報と知らせるべきじゃない情報ってのがあるはずなんで、なんでもかんでも開示することが“良いこと”とは限らないと思うんですよねぇ。そういうのをゴッチャにして、隠していること自体が気に入らず騒ぎ立ててる感じもしますし。また、「より開かれた○○を!」って同ジャンルの方々が言ってたりもしますが、ビローンとなんでもかんでも開くのは品がないと言うか、味気がない気もするんですよねぇ。知られてない/開かれてないからこその品格とか魅力とかってのもありますし。

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【ストーリー】
1971年のロンドン。経営難の中古自動車店を営むテリーは、昔なじみの美女マルティーヌから強盗計画を持ち掛けられる。現状打破のためにその計画に乗り、仲間を集めて強盗準備に取り掛かるテリーであったが、その強盗計画の真の目的は、貸金庫内に保管されている王族の決して知られてはならない秘密で…。

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スパイ・レジェンド』のロジャー・ドナルドソンによる、実際に起きた強盗事件を基にした実録クライムサスペンス。
その手口の大胆さと、強盗進行中の無線のやり取りを一般市民が傍受していた“強盗生中継”が話題となり一躍メディアを賑やかすも、数日後にぱたりと報道が止んだことからD通告(国防機密報道禁止令)が発令されたのではないかと言われる“ウォーキートーキー強盗”に、当時ジョン・レノンらとも親交のあった黒人運動家マイケルXが絡む殺人事件と、スキャンダラスな話題も多かったマーガレット王女の秘密を一つにまとめた、実話ナックルズ的な一本。真相はさて置き、「アラアラ、それは大変だ!」ってな面白さを存分に味わえた。
強盗準備から実行、そしてその後の逃亡劇という強盗物の基本をベースに、国家機密に絡む諜報サスペンスに裏社会までが物語に絡んでくる盛り沢山な内容だが、手堅さが売りのロジャー・ドナルドソンらしくきっちりと破たんすることなく最後までテンションを保ち続けたのは見事。特権階級の面々がアワアワしてる隙に、闇社会の人間がグイグイ主人公らに迫っていく様や、もうちょっと主人公が強気に出れる気もしたがクライマックスの銃撃戦のないメキシカン・スタンドオフのような展開も面白かった、忘れられがちだが見逃せない一本で。

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主人公のテリーに扮したのは、『ワイルド・スピード SKY MISSION』『ワイルドカード』のジェイソン・ステイサム。もともと腕っぷしも頭もキレる小悪党が似合うってのもありますが、服装さえ変えればどんな時代設定にも入り込める便利さもあって、70年代を舞台にした小悪党役に何ら違和感もなくすんなりとハマる好キャスティング。暴れないステイサムなので最近のステイサム映画に慣れてるファンには少々物足りないかも知れませんが、最後にはきっちり暴れてくれますし、こういうロンドンの気の良いチンピラ役ってのがそもそものハマリ役なので不満は全く感じず。濃いめのフェロモンを濃いめの無精ひげで表現してたので、妙にモテモテってのも違和感ありませんでしたし。
その他、主人公の妻に扮したキーリー・ホーズや、その妻にとっては気が気じゃない存在のマルティーヌに扮したサフロン・バロウズ、本作ではスパイってことになってたゲイル役のハティ・モラハンら女優陣はもちろんのこと、スティーヴン・キャンベル・ムーアや『ビザンチウム』のダニエル・メイズなど強盗メンバーらの面々も70年代にすんなりとはまり込む良いキャスティングで。
また、今では名探偵ポアロ役が真っ先に浮かぶ『エグゼクティブ・デシジョン』のデヴィッド・スーシェや、銀行員役という小さな役柄で小芝居を見せるミック・ジャガーなんかも印象に残る一本で。やっぱりミック・ジャガーのカメオ出演って、昔マーガレット王女と噂になったことがあるからなんでしょうかねぇ?

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どうせ持つならバレても開き直れる程度の秘密を

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2016年05月23日

ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金 (Pain & Gain)

監督 マイケル・ベイ 主演 マーク・ウォールバーグ
2013年 アメリカ映画 129分 ドラマ 採点★★★

ちょっと語弊のある言い方かも知れませんが、“馬鹿”が大嫌いな私。別に学がない人とか物を知らない人のことじゃなく、知ろうとしない人や想像力に欠如した人が嫌い。自分の言動が相手にどんな思いをさせてしまうのかや、何が起きるのかを想像できない人って悪意がない分だけ本当に性質が悪いと思うんですよねぇ。また、知ろうとしない挙句に開き直っちゃう人ってのは、もう論外。

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【ストーリー】
フロリダのジムでトレーナーとして働く“筋肉命”のダニエルは、さえない自分の人生に終止符を打ち一発逆転のアメリカンドリームを手にするため、ジムの顧客である裕福なビジネスマン、ヴィクターの誘拐を計画する。同僚で同じく筋肉命のエイドリアンと、前科者のポールを仲間に引き入れ計画を実行するが…。

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1995年にフロリダで実際に起きた事件を追ったルポを基に、ナルニアとマーベルの脚本ばっか書いてる印象もある『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』のクリストファー・マルクス&スティーヴン・マクフィーリーが脚本を手掛け、『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』のマイケル・ベイがメガホンを握って彼にしては低予算の2600万ドルで作り上げた実録クライム筋肉コメディ。
もうバカと筋肉しか出てこない。筋肉バカがステロイドのせいで脳まで筋肉になったかのようなバカなことをして、それが当然バカな結果を生み出すこの物語が結構事実に忠実だってのに大いに驚かされちゃうが、これをあのマイケル・ベイが意外にも面白く仕上げたってのにも驚かされた。実際に起きた結構凄惨な事件を、ナレーションを多用して過去を振り返る形で描く所謂『グッドフェローズ』タイプの作品を、ドラマなんぞそっちのけでド派手なアクションばかりを描き、その肝心のアクションも派手すぎて何が起きてるのかさっぱり分からなくしちゃうあのマイケル・ベイが撮るってんで、正直不安しかなかった本作。キャストが良いのに監督作としては初めて日本未公開ってのも、その不安を上乗せしてましたし。ところがどっこい、実際観てみるとこれがなかなか面白い。
もちろんマイケル・ベイが普通の監督が作るような作品を撮ったのではなく、日焼けしたテカテカ輝くムキムキの筋肉にフロリダの青過ぎる空の下、分かりやす過ぎるくらい記号的な美女に頭空っぽの登場人物たちが、テンション高すぎるやり過ぎ描写げ描かれる、まさにベイにしか撮れない本作。その、ネタにされ笑われがちな自らの演出を逆手に取ったのか、笑いの演出としてしっかりと活かされているベイ風味ってのも楽しい。事件が陰惨な方向へと転がっていく後半、ダークコメディとして勢いを増していくわけでも、シリアスへ急展開してコントラストを効かせるわけでもなく、序盤とさして変わらぬテンションのまま進んでしまうのでダレてしまう難点こそありましたが、ゴテゴテと飾り付けられたアメリカンドリームの虚像とそれに振り回される空っぽの人々の姿を、そんな作品ばかり撮ってたベイが皮肉へと転化させていたってのが興味深くも楽しめた一本で。

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主犯格のダニエルに扮したのは、『テッド2』『ローン・サバイバー』のマーク・ウォールバーグ。頭は少々弱いが人当たりの良いあんちゃんって役柄を得意としているだけあって、“愛すべきバカ”と“憎むべきバカ”の狭間に立つこの役柄を、相当パンプアップした肉体で熱演。知恵も想像力もないくせに行動力だけあるこの役柄は、下手すればただ苛立つだけのものになりそうだが、彼の持つキャラがそこをだいぶ救ってくれてたなぁと。
また、ポジション的にはヒロインに近い共犯のポールに扮したのが、『カリフォルニア・ダウン』『ワイルド・スピード SKY MISSION』のドウェイン・ジョンソン。持ち前のコメディセンスと豊かな表現力で、可愛げが炸裂する前半と凄みの増す後半という様変わりする役柄を好演。バカ過ぎて救いのない物語に、一種の和みってのを与えてたのが彼なのかなぁ。
シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』『ナイト・ビフォア 俺たちのメリーハングオーバー』のアンソニー・マッキーも相当身体を作り上げての出演でしたけど、上記の二人が少々勢いに任せて突っ走ってる感もあるので、足りないエモーションの部分とか笑いといった隙間をコツコツと埋める2番打者的役割をしっかり務める好キャスティング。
このムキムキしたメインキャストにばかり目を奪われそうだが、劇中唯一まともな人間に扮した『ラン・オールナイト』のエド・ハリスや、『22ジャンプストリート』のピーター・ストーメア、『ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える』のケン・チョンといったベイ作品ゆかりの顔触れや、『ギャラクシー・クエスト』のトニー・シャループ、『SEXテープ』のロブ・ゴードリー、『ピッチ・パーフェクト2』のレベル・ウィルソン、『キック・アス』のマイケル・リスポリに、囚人の中に紛れてるレスラーのカート・アングルといった、濃いめの顔触れが揃ってたのも魅力の一本で。

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“想像力がない”ってのが一番の罪

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2016年05月20日

武器人間 (Frankenstein's Army)

監督 リチャード・ラーフォースト 主演 ロバート・グウィリム
2013年 オランダ/アメリカ/チェコ映画 84分 ホラー 採点★★

『トイ・ストーリー』のシドに限った話じゃなく、男子ってのはオモチャをバラバラにしてアレコレ合体させるのが好きですよねぇ。怪獣にしろ怪人にしろ、一種類の生物がベースのものよりも複数の生物、もしくは機械と合体してるやつの方が心惹かれるし、そもそも“合体”って言葉自体にトキメキを感じたりも

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【ストーリー】
第二次世界大戦末期の東部戦線。スターリンの命によりドイツの占領下を進んでいたソ連軍の偵察部隊は、無数の虐殺された死体が放棄された教会に辿り着く。その地下に潜入した一行であったが、そこで待っていたのは死体と機械の合体に心血を注ぐフランケンシュタイン博士の末裔が作り出した怪物たちで…。

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ジャッキー・チェンの『フー・アム・アイ?』や『機械じかけの小児病棟』、ブライアン・ユズナやスチュアート・ゴードンらの作品でコンセプトアートなどを手掛けてきた、リチャード・ラーフォースト初長編となる合体怪人ホラー。『バレット モンク』のカレル・ローデンが合体好き博士を怪演。
観客がその場に迷い込んでしまったかのような臨場感や没入感を手っ取り早く演出でき、且つ粗を適度に隠してリアルに見せてくれるので腕に自信のない作り手が手を出してしまいやすいPOVの手法を用いた本作。結論から言えば、本作のPOVは邪魔以外の何物でもなし。カメラを持ち続ける理由付けは辛うじてされているが、怪人が間近で襲い掛かってるのに正面で映し続けてる様には、いくら自慢の怪人を見せたいからとはいえさすがに「まず逃げろや」と思っちゃいますし、そのくせこっちがちゃんと怪人を見たい時は見せてくれない。そんでもって、多少加工はしているがツルッツルの高画質なので、当時のフィルムを見ているかのような独特の如何わしさもなし。なんかもう、POVにする必要性が皆無
また、腸が飛び出たり脳みそを剥き出しにしたり、四肢切断に知らん内に子供が真っ二つになってたりとゴア描写が盛大なのは嬉しいんですけど、舞台の照明が妙に明るいってのもあってかどこか能天気で、“ナチスの人体実験”“死体改造”とかのキーワードの割に陰惨さや生理的嫌悪感がないってのも好みが分かれるところかと。

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ただまぁ、本作の見どころというか作り手が目指しているのはそんなちゃんとした地点じゃなく、「オレの怪人スゲェだろ!」ってとこであろうし、実際「スゲェな!」と思ったので特に不満もなし。
機械と合体しナチスの制服を着た怪人らはパッと見スチームパンク的だが、そこまで洗練された退廃さは微塵もなく、どちらかと言えばノコギリクワガタやヘラクレスオオカブトに心ときめかすのと同様の小学男子魂が炸裂しているのが魅力。ガンダムよりもガンタンクやガンキャノンに惹かれると言うか、「やっぱデストロンの怪人が一番カッケーよな!」みたいな。もしくは「ゲッターは2と3に限る!」的な男子魂。頭にめり込んだヘルメットを無理やり外したら脳みそがペローンと飛び出る様なんかも、非常に小学男子的感覚でしたし。
口に巨大ドリルが埋め込まれてたり手にやたらと刃物が付いてたりする武器として辛うじて納得いくものから、頭部が飛行機のプロペラという「なんだ?オマエは飛ぶのか?」という用途不明なものまで、男子悶絶の怪人が多数登場する本作。映画としては随分とアレな作品ではありましたが、盛んにこちらの男子魂を刺激してくる素敵な一本でもありましたねぇ。

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ガチャガチャや食玩にあったら散財しそう

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タグ:★★ ホラー
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2016年05月11日

ブリッジ・オブ・スパイ (Bridge of Spies)

監督 スティーヴン・スピルバーグ 主演 トム・ハンクス
2015年 アメリカ/ドイツ/インド映画 142分 ドラマ 採点★★★★

私の世代的なものもあるのかも知れませんし、いつ見ても似たり寄ったりの服装にモジャモジャ髭と変わらない風貌のせいかも知れないんですけど、私の中のスピルバーグのイメージって“天才若手映画作家”なんですよねぇ。もうすぐ70歳なのに。時代と共に作風が大きく変化してたりすればそんなイメージも変化していったんでしょうけど、扱う題材こそ変化していってもどの作品も明確に“スピルバーグ印”ってのが刻印されている上に、時代に迎合し過ぎないので、どの作品を観ても著しい経年劣化ってのを感じないんですよねぇ。相変わらず本題とは関係ない書き出しなんですけど、改めてスピルバーグのプロフィールを見てみたら年齢的にはすっかりお爺ちゃんなんだってことに気付かされちゃったので、つい。

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【ストーリー】
米ソ冷戦下の1957年。逮捕されたソ連のスパイ、ルドルフ・アベルを弁護することとなったジェームズ・ドノヴァン。敵国のスパイを弁護することで国民の非難を一身に浴びるドノヴァンであったが、その職責を全うしアベルの死刑を回避する。5年後、アメリカの偵察機がソ連上空で撃墜され、パイロットはスパイとしてソ連に拘束されてしまう。政府はパイロット救出のためアベルとの交換を計画。その交渉役としてドノヴァンが選ばれ、彼は東ベルリンへと向かうのだが…。

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後にケネディ大統領からの依頼で、ピッグス湾事件の失敗により捕虜となった1万人を超える米国人捕虜の帰還交渉を務めることとなる弁護士ジェームズ・ドノヴァンが注目されるきっかけとなる事件を描いた、実録サスペンスドラマ。マット・シャルマンと、キャラクター描写などの加筆が主な仕事だったと思われる『トゥルー・グリット』のコーエン兄弟による脚本を、父親がほんのちょっとばかしこの一件に絡んだという『ミュンヘン』のスティーヴン・スピルバーグがメガホンを握って映画化。『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』なんかでちょっと忙しかったってのと体調不良により、盟友ジョン・ウィリアムズに代わって『007 スペクター』のトーマス・ニューマンがスコアを担当。
赤狩り、朝鮮戦争、ローゼンバーグ事件と、共産主義に対する警戒と不信、恐怖がピークに達していた冷戦下の時代を舞台に、法と国のあり方の原理原則を守り続けようとする男の奮闘と、敵国スパイとの間に生まれる絆を描いた本作。2時間半近くの長尺ながらも無駄なシーンが一切なく、だからと言ってアベルの裁判、アメリカ人パイロット拘束、東ベルリンでの交換交渉と3本の物語で構成されているが慌ただしいわけでも盛り沢山過ぎるわけでもない、映画として必要な描写を的確かつスムーズに描き出す、非常にスピルバーグらしい手際の良さで最後まで引っ張った一本。ベルリンの街を自転車で走る青年をカメラがワンショットで追うシーンで、ある一線を越えたドンピシャのタイミングで“東ベルリン”のテロップが出る、さり気ないながらも巧さが光るシーンや、自称アベルの家族との面会シーンの真顔でのギャグなど、本作にもスピルバーグ印がそこかしこに刻印されていたのも嬉しい。また、今まさに壁が作り上げられているベルリンの街の混乱や悲壮感など、その瞬間の空気を見事に捉えていたのも流石。

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主人公が単なる善意で行動を起こしているのではないってのも、非常に興味深かった本作。もしこれが“良い人”の物語であったら、敵スパイとの間に生まれるのは上辺だけの友情で、なんか良い話を聞いたなぁって気にはなれるかも知れないが、後に残るのはそんなボンヤリとした印象のみに。
しかし本作は、しっかりとジェームズ・ドノヴァンの人となりを描いている。法の原理に沿うことならば一般常識では正しいことも撥ね退けるある種の“狡さ”を見せる一方で、法の原理原則を守るためには全国民の非難を一身に浴びても挫けることがない“信念の人”としても描かれている。“法の原理原則に忠実”というどっしりとして動くことのない軸の両面性をきちんと描いていたからこそ、言動の“なぜ?”がはっきりと理由付けられ、法に忠実な主人公と国家に忠実なスパイとの間に絆が生まれるのも至極当然の結果として伝えることが出来たのかと。
国家のあるべき姿や原理原則といったちょいと荷が重い問題じゃなくても、日々何かにつけ「仕方がないよね」とか「ま、いっか」とルールや理想をないがしろにしがちであるし、またその一方で“ブレない”って言葉を安易に使い過ぎてる気もする昨今。本作では“異常事態にある時こそ原理原則を守らなければならない”という信念を貫く過酷さを描きつつ、それが出来るのは決して特別な人間とは限らないってのを明確に描いていた一本で。
また、「共産圏に生まれなくて良かったねぇ」といった相手の欠点を捉えて優越感に浸るようなアメリカ賛美映画なんかでもなく、双方が目指すべき理想を持ちながらもそれを見失ってしまっている様や、その建前に国民が翻弄される様を描いた作品であるのも素晴らしかった本作。車窓から見える光景が、一方では壁を乗り越え射殺される人々の姿で、一方では壁を乗り越え遊ぶ子供たちの姿というコントラストの効いたシーンがあるが、これも「あぁ、やっぱアメリカだよな!」ではなく、あるべき姿を見失った場合の行く末を危惧するものなんだろうなぁと。

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主人公のジェームズ・ドノヴァンに扮したのは、久々のスピルバーグ作品主演となった『キャプテン・フィリップス』のトム・ハンクス。“ユーモアを忘れない真面目な良い人”というお馴染みのイメージを守りつつも、その内面に結構怒りっぽくてヒステリックな一面というかつて得意にしていたキャラクター性をホンノリ残す、まさにトム・ハンクスここにありってな感じの熱演。歳を重ねた分トーンを抑えているだけで、なんかのきっかけで『マネー・ピット』の時のトム・ハンクスが飛び出してきそうな感じが素敵。この“らしさ”が非常に良く出てたのは、人物描写を中心に手掛けたコーエン兄弟の手腕なのかと。
一方のルドルフ・アベルに扮したのが、『ブリッツ』のマーク・ライアンス。“ソ連のスパイ”というと剃刀のように冷たく切れ味鋭い殺戮マシンか、シュワルツェネッガーのような岩の塊を思い浮かべてしまうが、何処にでも居そうなとぼけたオッサン風情のスパイをこれまた好演。理想を貫くためにアクティヴなトム・ハンクスとは逆に、国家のおかしな点を冷静に見つめながらも理想のために耐え続けるアベルの姿を、淡々としながらもユーモアを滲みださせながら見事に表現。このコントラストの効き具合と、双方抑えながらも滲み出てくるユーモアが、本作に大きな面白味ってのをもたらしてくれていたなぁと。
その他、『ペントハウス』のアラン・アルダや、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のエイミー・ライアン、『アンノウン』のセバスチャン・コッホに、『セッション』のオースティン・ストウェルといった顔触れが出演。長尺のメジャー作品だと集客と観客の集中力を途切れさせない為に小さな役柄に大物を起用したりするが、そんな小手先に頼らず作品バランスと役柄に沿った実力者を揃えてるってのも嬉しかった作品で。

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ベクトルは違うが目指している本来の目的は一緒

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2016年05月05日

ピッチ・パーフェクト2 (Pitch Perfect 2)

監督 エリザベス・バンクス 主演 アナ・ケンドリック
2015年 アメリカ映画 115分 コメディ 採点★★★

40代以上の主演級で活躍する男優ってのはぞろぞろ居ますけど、それが女優となるとホント数えるくらいしか居ませんよねぇ。一方で、それが20代前後となるとまるっきり逆になる印象も。もともと映画は観客の夢やら願望、憧れや下駄を履かせ気味の自己投影なんかをする場でもあるんで、安易ながらもそういう傾向になってしまうのは理解は出来るんですけど、実力者を活かしきれないのはやっぱりもったいないので、昨年ちょっと話題になったハリウッドの男女格差の是正なんかも含め、もっと中年女性が活躍できる映画作りってのをやって欲しいなぁと。もちろん、“面白い映画”ってのが大前提で。

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【ストーリー】
全米大会3連覇中の女子アカペラグループ“バーデン・ベラーズ”。そんな絶頂期にいた彼女らだったが、大統領の誕生日イベントで大失態を犯してしまい、チームの活動を禁止する処分が下される。名誉挽回の唯一のチャンスであるアカペラ世界大会の優勝を目指す彼女らであったが、世界のレベルの高さに自信と自分たちらしさを失い…。

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スマッシュヒットを記録した『ピッチ・パーフェクト』の続編。メガホンを握るのは、本作が長編初監督となる『崖っぷちの男』のエリザベス・バンクス。主演はもちろん『ライフ・アフター・ベス』のアナ・ケンドリック。今回も表情の種類少なめながらも、ボブルヘッド人形のような可愛らしさで乗り切りを。
自分の夢の実現や将来と仲間たちの絆だったら迷うことなく前者を取る私ですし、相変わらずアカペラそのものに興味が湧かないので物語自体にはイマイチ気持ちが入り込まなかったんですけど、随所に放り込まれた笑いと煌びやかなステージの勢いに押し切られ、なんだかんだと楽しめた一本。強力なライバルの出現に自分たち本来の姿を見失いそこから立ち直る様や、主要メンバーのドラマなど見どころ豊富な分、少々物語が散らかってしまっていたり、人種ネタがステレオタイプのものになってしまい笑いきれない印象もあったが、最終的には上手くまとめ上げたなぁって感じも。
好きな女優の一人でもあるエリザベス・バンクスが“どんな映画を撮るのか?”って興味が、本作を手に取った最大の理由なんですけど、初長編とは思えぬ手堅さに驚かされた一本でも。製作も兼ねて作品を知り尽くしてるってのもあってか、個性を発揮するってのよりも前作からの流れを壊さないよう職人に徹したって印象。笑いの間やネタ選びが独特で、画作りもしっかりとしてるので監督としてもちょっと期待できるなぁと思えたのが一番の収穫で。

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丁度いいのが見つかって良かったね

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2016年04月22日

ヴィジット (The Visit)

監督 M・ナイト・シャマラン 主演 オリヴィア・デヨング
2015年 アメリカ映画 94分 ホラー 採点★★★

随分と久しぶりに使うフレーズでございますが、シャマラニストのたおです。何気なく使ってたこの言葉がシャマラン映画を語る際に他所でもよく使われるようになっちゃいましたし、いつの間にか別の有名人が生み出した言葉のように言われ始めちゃったみたいだから、もう使うのやーめよっと。なんか恥ずかしい感じがしてきちゃいましたし、そもそも最近のシャマランをさっぱり追っかけてないエセシャマラニストなので。

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【ストーリー】
若い頃に実家を飛び出してから両親とは音信不通となっているシングルマザーに育てられた、ベッカとタイラーの仲良し姉弟。母が実家とのわだかまりを残しているので祖父母に会ったことの無い姉弟のもとに、祖父母から休暇を利用して遊びに来ないかとの誘いが。ドキュメンタリー作りに夢中のベッカはこの機会に家族の物語を作ろうと、タイラーと共にカメラ片手に一週間の予定でペンシルバニアへと向かうのだが・・・。

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『エアベンダー』『アフター・アース』と全く観る気にならない作品が続いていたので、私自身は『ハプニング』以来となるシャマランが脚本と監督を手掛けたホラーサスペンス。長編2作目となるオリヴィア・デヨングと、『アレクサンダーの、ヒドクて、ヒサンで、サイテー、サイアクな日』のエド・オクセンボウルドが主演を。あら、二人ともオーストラリア人。
家族の再生と赦し、過去から目を背けず克服する。また、農場の一軒家を舞台に分かりやすく散りばめられた伏線がクライマックスに活きてくる、とどのつまり『サイン』のセルフリメイクな趣が強かった本作。全裸の徘徊婆さんが夜中にドアをガリガリする、「なんか嫌なものを見てしまった!」って恐怖がこみ上げると同時に笑いもこみ上げてくるみたいな、なかなかそうとは受け止めきれないが実は全力で笑かしに掛かっている“シャマランギャグ”も豊富でしたし。怖さと優しさが混在したベッドサイドストーリーのような物語展開や、精神障害や痴呆といった現実問題にホンノリと超常現象的な香りを漂わせるのも非常にシャマランらしくて楽しめた一本。
しかしながら、老夫婦の秘密が明らかになるクライマックスからのダラダラ感は少々頂けず。今更な感じが拭えないPOVの手法にもこれといって工夫や絶対的な必然性を感じず。ただまぁ、かつてシャマラン作品のDVDにもれなく付いていたなんとも扱いに困る少年時代の自主製作映画からも伝わってくる、技術や才能なんかを問わない溢れんばかりの映画愛みたいなものもそのPOVの手法から伝わってくるし、謎やそのヒントの散りばめ方、その状況に姉弟を置くための仕掛けも結構細かく丁寧だったので採点は甘めに。

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注文の多い老夫婦

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2016年04月19日

プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命 (The Place Beyond the Pines)

監督 デレク・シアンフランス 主演 ライアン・ゴズリング
2012年 アメリカ映画 140分 ドラマ 採点★★★

そんな所が特に目に付いてしまうだけなんでしょうけど、子供ってのはホント似て欲しくない所ばかり似てきますよねぇ。似て欲しい所はさっぱり似ない。自分を振り返ってみても、親父の嫌な所を自分の中に見出したりすることも少なくないですし。でも、よくよく考えてみれば、“似て欲しい”と思う事って往々にして様々な経験を通した中で得たことだったりするので、別の人生を歩んでいる子供たちにそれを望むのは親の勝手なんですよねぇ。

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【ストーリー】
バイクの曲芸をしながら各地を巡る気ままな生活を送るルークは、ある日かつての恋人ロミーナと再会。彼女が自分の子供を産んでいたことを知る。気ままな生活から足を洗い母子を養う決心をしたルークだったが、それに見合う収入を手にすることが出来ず銀行強盗に手を染めてしまう。しかし、新米警官のエイヴリーに追い詰められルークは命を落とす。それから15年後、ルークの息子ジェイソンとエイヴリーの息子AJはそんな過去を知らないまま出会い・・・。

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『ブルーバレンタイン』のデレク・シアンフランス二世代に渡る数奇な運命を描いたクライムドラマ。
子供の存在を知り、その子を養うために銀行強盗に手を染めてしまうその日暮らしの風来坊を描いた第一章、その強盗を射殺したことで英雄扱いを受けるも、自分の子供と同い年の子の父親を奪ってしまったことに苦悩し、また生真面目さ故に警察組織に居場所を失う新米警官を描く第二章、そしてその子供たちが出会い過去の因縁を知ってしまう第三章と、3つのエピソードで綴られた本作。子供のために犯罪に手を染め命を落とす父親、事件をきっかけに子供との距離を置いてしまう父親、そして血の繋がっていない子供に対しても全力の愛情を注ぐ父親。その3人のタイプの異なる父親の姿を通し、子供を作り上げる血と環境ってものを映し出していた一本。男の悲哀を静と動が巧みに織り交ぜられた力強い映像と物語で描き切った、非常に見応えある一本で。成功した父の姿に自分の道を見出したAJの表情や、亡き父の影を追うかの如く旅立つジェイソンの姿に清々しさも感じられる締めくくりも美しい。
ただ、不器用なヤクザな男が愛ゆえに身を滅ぼす、同じくライアン・ゴズリングの『ドライヴ』と似た匂いを放ち、かつての日活映画や東映映画を彷彿させる男の色気を感じさせる第一章が素晴らし過ぎて、メインとなるその後のエピソードに個人的には気持ちが入りづらかったなぁと。また、物語の性質上母親が不在になるのは仕方がないにしても、血の繋がらない子供を献身的に支える義父の姿をもっと深めに描いてくれてれば、より“父と子”“血と環境”ってのが深く描かれた気も。義父コフィが不憫に思えるほど良い人なんで、最後のエピソードはずっとコフィを応援してましたし

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風来坊のルークに扮する、『ラブ・アゲイン』『スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜』のライアン・ゴズリング。寡黙で不器用な生き方しかできないその日暮らしの風来坊という、今のハリウッドではライアン・ゴズリング以外には似合わない役柄を、持ち前の色気と隠し味の可愛げで飄々と好演。女性を惹き付ける要素を全て持ってるが、生活を共にするには一番向いていない一夜限りの二枚目って役柄と、ネオン輝く夜の街が本当に良く似合う。“エヴァ・メンデスとの間に子供が云々”は興味がないのでここではスルー。
一方のエイヴリーに扮したのは、『アメリカン・スナイパー』のブラッドリー・クーパー。こちらも優男風の二枚目だが、明るく優しそうな一方で狡さも感じられる顔立ちが、政治の道へと進むエイヴリーにマッチする好キャスティング。
その他、老けメイクがやり過ぎな気がしてならなかった『ロスト・リバー』のエヴァ・メンデスや、“悪徳警官”といえば真っ先に浮かぶ『NARC ナーク』のレイ・リオッタ、同性愛的な香りも感じられた『ダークナイト ライジング』のベン・メンデルソーン、いつもの“悪いデカプリオ”風味にちょいとベニチオ・デル・トロも混じってた感もあった『ライフ・アフター・ベス』のデイン・デハーンらも強い存在感を。
ただ、その中でもいちばん目を引いたのがコフィに扮した『プレデターズ』のマハーシャラ・アリ。というか、コフィに。生まれたばかりの赤子を抱える女性と交際し、その母親も自分の家に招き入れ養うコフィ。恋人の元カレで子供の父親が勝手に家に入り込んだ挙句工具で殴られ重傷を負っても、その男が犯した犯罪のせいで警官が家中を物色しても恋人を責め立てるわけでもなく、血も繋がってなければ肌の色も違う子供を息子として愛情を注ぎ、実の子供が生まれても分け隔てなく接し、息子がグレて問題を起こしても支え続けるのに息子は亡き父を追うようにどっか行っちゃうし、嫁は元カレの写真持ってるしでもう不憫にも程がある。死んだらきっと聖コフィと呼ばれるな。

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でも当の本人が幸せと感じてればいいのかな

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2016年04月14日

ヴィンセントが教えてくれたこと (St. Vincent)

監督 セオドア・メルフィ 主演 ビル・マーレイ
2014年 アメリカ映画 102分 コメディ 採点★★★★

“同じ価値観”やら“共感”、“絆”なんて言葉が人との関係性を表すケースで頻繁に使われるようになって随分経ちますよねぇ。うちの子供らの口から万が一出てきたら「まずは冷静になろ。な?」と言いたくなる“ソウルメイト”とか。その一方で、価値観が違う人は徹底して敬遠する傾向も。確かに好みや価値観が似ている人と一緒にいるのは楽だし楽しいんですけど、そればっかりになっちゃうと「そうそう!わかる!」みたいな自分の再確認の繰り返し以外に何も新しい視点や考え方は得れないとも思うんですよねぇ。

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【ストーリー】
両親の離婚でニューヨークのブルックリンに母親と共に越してきた小学生のオリバーは、ひょんなことから隣に住む偏屈で近所の嫌われ者である初老の男ヴィンセントに面倒を見てもらうことに。誰彼構わず毒舌をまきちらし、小学生をバーや競馬場に連れまわすろくでなしなヴィンセントだったが、二人は妙にウマが合っていく。やがてオリバーは、嫌われ者のヴィンセントの意外な素顔を垣間見て・・・。

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本作が長編デビューとなるセオドア・メルフィが監督と脚本を手掛けた、ハートウォーミングなコメディドラマ。製作総指揮に『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』のドン・チードルの名も。
偏屈老人といじめられっ子の交流を、細かな笑いのジャブをふんだんに含めながら描いた本作。この手の作品だと、子供の成長や変化および大人側の改心なんかを中心に描きがちだが、本作の登場人物たちは最後まで基本的に何も変わらない。オリバーは確かに孤独であったが、それは新しい環境に移ったための限定的なもので、初めっから結構口が達者で状況を達観して見ている少年。友達が出来るきっかけにヴィンセントが少し絡んでいるが、ヴィンセント抜きでも遅かれ早かれ友達が出来そうな性格。
一方のヴィンセントも素行の悪さから煙たがられてはいるが、バーテンダーやコールガールのダカ、妻が入所している介護施設の看護婦(監督の妻であるキンバリー・クインが好演)など、彼の本当の姿を知る人からは愛されている。オリバーの母も、シングルマザーになりたてだから必死になっているだけ。
そんな彼らが交わる中で見えてくる本来の姿を、着込み過ぎた服を一枚だけ脱ぐかのようなささやかさで描いた本作。そのささやかさが、タイトルにも絡む“聖人の定義”やあからさまで押しつけがましい善意ではなく“本当の意味での良き行い”というものと絶妙にブレンドした、ちょっと上手く表現できないが“微笑ましい”一本に仕上がってたなぁと。互いがシェルターを提供し合ってる作品の状況にマッチした、ボブ・ディランの“嵐からの隠れ場所”が流れるエンディングも絶品。

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ヴィンセントに扮したのは、なんかSNL出身者で一番の出世頭になった印象もある『グランド・ブダペスト・ホテル』のビル・マーレイ。常に仏頂面で不機嫌で、怒りを撒き散らしている一方で奥底には優しさと寂しさが潜んでいる。もうあて書きなんじゃないのかと思えるほど、ビル・マーレイとヴィンセントがイコールになる絶妙なキャスティング。物語の良さはビル・マーレイじゃなくても然程変わらなかったのかも知れないが、本作に漂う程よい毒気と気だるげなユーモアは彼じゃなければ生み出せなかったものだろうなぁと。
また、ビル・マーレイと新旧ゴーストバスターの顔合わせとなる、最近引っ張りだこな『かぞくはじめました』のメリッサ・マッカーシーも忘れ難し。今回は随分と控えめな印象ではあったが、リアクションや会話の間の開け方に「さすが!」と思わせる瞬間も多々。ところで、『タミー/Tammy』はソフト化待ちで諦めるとしても、ジェイソン・ステイサムやジュード・ロウも共演しているSpy』は公開しないのかい?
その他、薹の立ち具合が丁度良かった『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のナオミ・ワッツや、考えてみたら製作に回ったドン・チードルとはウォーマシンコンビな『サボタージュ』のテレンス・ハワード、『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』のクリス・オダウドらも印象的だった本作ですが、やはり本作のオリバー役で映画デビューした、ジェフ・ニコルズの新作『Midnight Special』にも出演しているジェイデン・リーバハーの、厳しい状況に反発するわけでも打ちのめされるわけでもなく、それを素直に飲み込む達観さと幼さならではの可愛げ、こしゃまっくれさとの入り混じりっぷりが非常に良かったなぁと。

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プラスとマイナスだから引き合う

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posted by たお at 13:24 | Comment(8) | TrackBack(24) | 前にも観たアレ■は行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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