2008年04月06日

バイオハザード II アポカリプス (Resident Evil: Apocalypse)

監督 アレクサンダー・ウィット 主演 ミラ・ジョヴォヴィッチ
2004年 ドイツ/フランス/イギリス/カナダ映画 93分 アクション 採点★★★

寝付けない夜や待ちぼうけを食らっている時の空想ランキング一位は、前回も書いたとおり“世界中にゾンビが溢れちゃったんで、美女と二人でショッピングセンターに立て篭もる”なんですが、その一位に負けず劣らず上位に食い込んでくるのが“実はオレ○○”。何らかの理由で記憶を失っている凄腕のスパイとか特殊部隊とか。なんかもう、ここだけ読むととってもお勉強の苦手な中学生が書いているようなんですが、これでも大人です、私。まぁ、“男”って時点で“大人”じゃないのかも知れませんけど。

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【ストーリー】
アンブレラ社の地下研究施設“ハイブ”から辛くも逃げ出すことに成功したアリスであったが、地上には既にT−ウィルスが蔓延し、ラクーンシティは地獄の様相を示していた。特殊部隊隊員ジルら生き残りと脱出を図るアリスであったが、彼女らの前にアンブレラ社が放った最強のモンスター“ネメシス”が立ちはだかる。

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大人気ゲームソフト“バイオハザード”の映画化第二弾。前作『バイオハザード』の監督であるポール・W・S・アンダーソンは製作と脚本に回り、リドリー・スコットの作品や『トリプルX』『ボーン・アイデンティティー』など数多くのヒット作で第二班監督を務めたアレクサンダー・ウィットが初メガホンを握る。
アクションとしてもホラーとしても、今一歩詰めの甘かった前作。「ゾンビの群れに美女を放り込んでみましたー」ってな感じのざっくり感が如何ともし難かったのだが、本作ではその辺の問題を若干修正。ゾンビはよりゾンビらしく“主食は人間”ってのを明確にし、アクションは一層派手にと、色々ボリュームアップ。ハイブリット化したアリスは子供が絡むこともありより一層リプリー化が進み、その“エイリアン・サーガ”を隠し切れない隠し味とした上に『ニューヨーク1997』『ウォリアーズ』風の脱出劇、仕舞いにはアリスに『スキャナーズ』風の力まで持たせるごった煮ぶりは、新鮮味こそ皆無だが「好きなんだろうねぇ」と心なしか温かい目で見てしまうことも。とは言ってもアレコレ詰め込みすぎたせいか一事が万事慌しく、特にクライマックス以降の続編への目配せは、広げ過ぎた風呂敷を力ずくで仕舞いこむ締りの悪さが。ゾンビに美女に爆発と、男の子の大好物をこれだけ揃えたにも関わらず、いまいち心が沸き立たないのも不思議で。まぁ、全体に漂う雑さがそうさせてるのかも知れませんが。

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クライマックスでのネメシスとの一騎打ちが、まぁどっちも死んでいるようなものなのでなんとも『ユニバーサル・ソルジャー』みたいだなぁと思ってみたものの、ネメシスがドルフ・ラングレンなのは良しとしても、ミラがヴァンダムってのは考えるまでもなく失礼極まりないなぁと。もちろん、ミラに。で、本作のミラ・ジョヴォヴィッチ。全く打算の見受けられないアクションに対する姿勢はもちろんのこと、やり過ぎればやり過ぎるほど絵になるその存在感は、見事としか。その完璧に絵になるミラを撮るのに夢中になり過ぎて他がガタガタになってしまった感も否めないが、気持ちも分からないでもない。もっと過剰にやり過ぎてもらいたかったくらいで。「ポリゴンで出来ているんじゃないか?」と思えるほどの鋭角的な美しさを放っていた『ラブ・アクチュアリー』『エラゴン 遺志を継ぐ者』のシエンナ・ギロリー演じる、人間ならではの強さと脆さを持つジルとアリスの相性も良い。ただまぁ、あまりに女性が強すぎるのか、お父さんもウィルスで大変な目に遭っていた『ブルー・イン・ザ・フェイス』『レディ・イン・ザ・ウォーター』のジャレッド・ハリス、『デュース・ビガロウ、激安ジゴロ!?』のオデッド・フェール、いつもはUボートの中でよく見かける気がするトーマス・クレッチマンなど、アクの強い顔ぶれが非常に大人しくなっていたのは寂しい気もしましたが、強い女性を前にすると男ってのはそんなもんで。

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引き立て役

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2008年04月04日

バイオハザード (Resident Evil)

監督 ポール・W・S・アンダーソン 主演 ミラ・ジョヴォヴィッチ
2002年 イギリス/ドイツ/フランス映画 101分 アクション 採点★★★

“@世界中にゾンビが溢れる。A美女および可愛い子と一緒に巨大ショッピングセンター(近場のジャスコ)に立て篭もる。B食料はもちろん、ライフラインも万全。銃砲店まである。Cあんなことやこんなことをする。”
寝つきの悪い夜や待ちぼうけをくらってる時は、得てしてこんな空想ばかりしてる私です。もう、@どころか全部実現不可能なことばかりなんですが、男の子の夢ってことで多めに見ていただけたらと。しかしまぁ、ホント『ゾンビ』は素晴らしい映画でしたねぇ。

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【ストーリー】
巨大企業のアンブレラ・コーポレーションは、密かに“ハイブ”と呼ばれる地下施設でバイオ兵器の開発をしていたが、何者かによって開発中のウィルスが散布されてしまう。調査の為にハイブへ向かった特殊部隊は、記憶を失っていたアリスという女性を発見。彼女と共にハイブに潜入するが、そこは生ける屍の闊歩する地獄であった。

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日本の人気ゲームソフト“バイオハザード”の映画化。当初はジョージ・A・ロメロの名が監督としてアナウンスされ否応がなしにも期待が高まったが、なんだかんだと監督の座は『ソルジャー』のポール・W・S・アンダーソンのもとへ。ロメロ版を待っていたファンは、ゲームのTVCMでお茶を濁らされる羽目に。
ゲームの映画化としては、マリオのずんぐりむっくり感だけは忠実に再現されていた『マリオ・ブラザース』や、コスプレ大会の枠を一歩もはみ出していなかった『ストリート・ファイター』などと比べれば段違いの完成度を誇る本作。とは言っても、死滅は不可能で空気感染までするウィルスが撒き散らされた現場だというのに、ズカズカと軽装備で入り込む主人公らに象徴されるように、非常にざっくりとした作りが目立つ。ゲームのBGMとしては良いが、映画のサントラとしてはでしゃばり過ぎているマリリン・マンソンらのスコアにしても、結局のところ『エイリアン2』のフォロワーから一歩も抜け出せていないストーリーラインにしろ、この“ざっくり感”はポール・W・S・アンダーソンの特徴でもあるので仕方がないのだが、肝心のゾンビがただわらわらと居るだけで、ビックリはさせるが必要以上に嫌悪や恐怖を煽り立てない大人しさは、やはり物足りない。ロメロなら、お食事中のゾンビを漏れなく映すのに。アクション映画としてもホラー映画としても食い足りない半端さのある本作ではあるが、無難でざっくりした作りと、ゴアシーンを丁寧に避けたことで一般的に受けたことも事実で、この作品のヒットにより「ゾンビは金になる」とスタジオ側に再認識させ、『ドーン・オブ・ザ・デッド』『28週後…』『プラネット・テラー』など、今日のゾンビ再ブームを作り出すきっかけになった功績は大きいので、★ひとつおまけ。ゲーム映画乱造の弊害も付いてきちゃいましたが。

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本作の功績は、ゾンビブームの再来を招いただけではない。それはもちろん、ミラ・ジョヴォヴィッチの誕生。本作以前にもベッソン作品や『バッド・チューニング』『ズーランダー』で“女優”ミラ・ジョヴォヴィッチは存在していたが、“元モデルの綺麗な女優”で終わってしまっていた感も。しかし、本作においてゾンビ犬に三角飛びから蹴りを放った瞬間に“見事なアクションを決める美女”という稀有な存在となる。画の見事さも含めそのインパクトの強烈さから、シャーリーズ・セロンやケイト・ベッキンセールなど美人女優が挙ってアクションに挑戦するも、ミラは氷のように冷たい表情からふと子供のような無邪気な笑顔を覗かせるコントラストと、甘えの一切感じさせないキレのある動きで、彼女らを軽く凌駕する存在感を放つことに。全編言い訳に終始してしまった『ウルトラヴァイオレット』でさえも、ミラだけは完璧でしたし。
本作では上半身こそ薄いドレスでセクシーに決めてはいるものの、下半身は短パンにブーツとやる気満々の臨戦態勢に入っているミラ。そりゃぁ、こんなミラだけを撮りたくなる気持ちも充分分かりますが、せっかく『ワイルド・スピード』の兄貴女優ミシェル・ロドリゲスも出てるにも関わらず、一人集中的にゾンビに噛まれる“噛まれ役”で終わってしまっているのは残念でしたけど。

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露出が高いほど防御力が高まる忍者のようなお方

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2008年01月05日

ハイランダー/悪魔の戦士 (Highlander)

監督 ラッセル・マルケイ 主演 クリストファー・ランバート
1986年 アメリカ/イギリス映画 117分 アクション 採点★★★★

“MTV”やら“ベストヒットUSA”やら大のお気に入りだった“ポッパーズMTV”やら、ローカルな話でアレだが“サタデー・マガジンα”やらと、どこのチャンネルを回しても洋楽のPVが流れまくっていた時代。次々と出てくる新しい映像表現や莫大な予算を掛けた大掛かりなPVを見ると、「あぁ、こんな映画が観たいなぁ」とつくづく思ったもので。まぁ、4分だからそう思えるだけで、これが90分続くとなかなか辛いものだと知るのは、そんな先の話でもないんですが。

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【ストーリー】
首を切り落とされぬ限り死ぬことのない、太古から生き続ける一族。彼らは、最後の一人が得られるという“秘宝”を求め互いに戦うことを宿命づけられていた。そして現代のニューヨーク。不死の身分を隠し古物商として生きるナッシュのもとに、最後の生き残りヴィクターが現れ…。

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バグルスやデュラン・デュランらのミュージッククリップで見せる、ずば抜けた映像センスとケレン味たっぷりの演出で名を馳せたラッセル・マルケイが、昼なのか夜なのかそもそもここは何処なのかサッパリ分からない色彩センスで見せた巨大イノシシ大暴れ映画『レイザーバック』に続いて撮り上げたSFアクション。
凝りまくった構図とライティングに気を使いすぎたのか、やたらともたつくテンポや、投げっ放しの謎の数々(続編で「宇宙人だから」で済ませ世界中をビックリさせるが)、唐突に始まるラブシーンや外しまくるギャグなど、全編ミュージッククリップかのような本作は粗を探せばいくらでも出てくる作品ではあるが、そこを突っついて楽しむ映画ではない。むしろ、そんな問題などスッカリ忘れさせるだけのものを持っている作品だ。その“もの”とはもちろん、“チャンバラ・火花・クイーン”である。“チャンバラ・盛大に飛び散る火花・砕け散るガラス・クイーン”でも“チャンバラ・盛大に飛び散る火花・崩れ落ちるネオン・大量の水・砕け散るガラス・クイーン”でも良いが、大体そんな所である。若干説明過多の曲がムードを逆に壊してしまってはいるが、不死であるが故に人を愛することの出来ない孤独も、スコットランドの美しい景観の効果も相まって、作品に非常によく絡まっている。だが、やはり本作の目玉はクライマックスのチャンバラシーンである。火花と水とネオン管が盛大に飛び散る多角的に見せるワンパクさから一転、ミュージカルの舞台のような無機質な部屋で横の動きを重視した舞のようなアクションシーンに移行する、見事なコントラストを見せるクライマックスが圧巻。

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必要以上に奥へ引っ込んだ目が、何を考えているのか分からない謎めいた人物としての説得力を与えてはいるが、下手をすると何を考えているのか分からない変質者のようにも見えてくることがあるクリストファー・ランバート。ラクダ顔。颯爽とした感のない風貌が作品同様煮え切らなさを感じさせることもあるのだが、脇を固める『ダブルボーダー』のクランシー・ブラウンと、『007/ロシアより愛を込めて』のショーン・コネリーがそれを補って余りある存在感を見せる。
「ゆっくりと消え去るよりも燃え尽きる!」とシビレる名台詞を吐き、時代に関係なく我を通した結果パンクスになっちゃう、自分にだけは素直な生き方を見せるクランシー・ブラウンも素敵なのだが、やはり本作に映画としての締りをもたらしたのは、ショーン・コネリーであろう。ジェームズ・ボンドを降板して以降、様々な役柄に挑戦するもこれといった成果を残せなかった彼だが、本作において“茶目っ気と機知に富み、頼りにはなるがいざという時は死んじゃう初老の師匠”という当たり役を飄々と。『アンタッチャブル』が完全復活の作品と考えるのが一般的ではあるのだが、その足掛かりを作ったのは間違いなく本作。『薔薇の名前』じゃ死にませんし。

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何歳の時点から不死になるかで、永遠の過ごし方が大きく変わりそうで

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2007年12月28日

ブラッド (Rise: Blood Hunter)

監督 セバスチャン・グティエレス 主演 ルーシー・リュー
2007年 アメリカ/ニュージーランド映画 98分 ホラー 採点★★★

「さぁ、今日は泣くぞぅ!」と、ハンカチ片手に向かう“泣き場”と化したわが国の映画館であるが、海外勢は俄然ホラーが元気。それらのほとんどを劇場で観ることは出来ないのが残念ですが、DVDは順調にリリースされ続けてるんで、年越しは血飛沫と共に送れそうです。それなりに幸せです。

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【ストーリー】
敏腕記者のセイディーがかつて謎のカルト集団に関連した取材で知り合った少女が惨殺死体で発見される。セイディーも彼らに拉致され、吸血鬼であった彼らにレイプされ惨殺されてしまう。しかし、吸血鬼として蘇ったセイディーは、謎の男の指導の下ヴァンパイアハンターとなり復讐に向かう。

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寝床が棺おけだったり、蝙蝠や狼や霧に姿を変えられたりする吸血鬼も、近年になると二丁拳銃でクルクル回ったりやたらと高い所から飛び降りたり日本刀片手に見得を切ったりと、血を吸うよりも格好つけることに大忙しとなってきたが、久々に“吸血”って点に重点をやや置いた、サム・ライミの“ゴースト・ハウス・ピクチャーズ”が贈る『ビッグ・バウンス』『スネーク・フライト』の脚本を手掛けたセバスチャン・グティエレスによる一本。
パーティーを名目に若者を集め、牙がないのでナイフで首を切り裂き血を吸う本作の吸血鬼。人間に紛れ込んで社会を形成している様は『ブレイド』にも似ているが、主人公を見る限り日光は致命的なものでもなさそうだし、十字架やニンニクといった定番アイテムも登場せず、ちょっとやそっとでは死なないが超人的な力を持っているわけでもない、立ち位置が半端な吸血鬼。人間と似て非なる“種族”として描こうとしているのは読み取れるのだが、その“種族”についての説明や描写が少ないので、銃で撃たれようがトラックに轢かれようが死なない彼らが鉄の杭一本でコロリと死んじゃったり、“鏡に映らない”ってお約束事だけは律儀に守っているのも相まって、中途半端さばかりが目立つことも。
派手なアクションに一切頼らず、自分を惨殺した挙句に吸血鬼にした男に対する主人公の悲しい復讐劇と、娘を殺された刑事の復讐劇の二本を絡めたハードボイルドなタッチで描いたのは好印象なのだが、その二本が上手に絡み合っておらず、やたらとモタモタとしてしまうのは残念。

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題材の面白さが上手く活きていない本作ではあるが、『ラッキーナンバー7』のルーシー・リューを観る分には全く申し分がない。もうすぐ40歳の女性に対して言うのもアレだが、とにかくカワイイ。どんなに凄味を利かせようが小柄な身体でパタパタと走り回り、鼻に掛かった声で喋る様はなんて、とってもカワイイ。まぁ、私がキツネ目好きってのもありますが。ジャンルを問わず大活躍する数少ないアジア系女優となった彼女。本作では逆さに吊るされるわ全裸になるわと大奮闘。題材が題材なんで彼女の魅力を存分に発揮できる“笑い”は皆無で、せっかくの全裸もボディダブルっぽいのが非常に残念ではありますが、腹いっぱいルーシーを堪能できたんで採点は甘めで。
すっかりとルーシー・リューの陰に隠れちゃってはいるが、ノーメイクでも充分に岩っぽいファンタスティック・フォー [超能力ユニット]』のマイケル・チクリス、「80年代風のホラー映画を目指しているんですよ」と意思表明するだけのために登場するかのような『アリゲーター』のロバート・フォスター、本作が遺作となってしまったが、『ロボコップ3』で最後に恭しく頭を下げて全てを帳消しにした“ゴメンなさい芸”が印象的だった『バレット モンク』のマコ岩松など、周囲の顔ぶれも目が離せない。中でも注目なのが、マリリン・マンソン。まぁ注目とはいっても、別に彼じゃなくてもいい役回りなんですけどね。

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肝心な所は絶対に見せない

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2007年12月21日

ヒッチャー (The Hitcher)

監督 ロバート・ハーモン 主演 C・トーマス・ハウエル
1985年 アメリカ映画 98分 サスペンス 採点★★★★

地元を離れて私立の中学へと進学する為に、受験をする羽目となった小学校6年生の私。そんなにお利口さんではないけど、そこまではバカでもないという小さな自尊心もあり、秋の終わりまで鼻を垂らし放題遊び呆けていたんですが、年の瀬も近づき「どれどれ、去年の受験問題とやらを解いてみるか」と問題を見て愕然。一問も解けない。受験は一月の末。あと2ヶ月もない。さすがに焦った私は、私以上に焦った家族のスパルタ指導の下に猛勉強。辛うじて合格はしましたが、やっぱりあれですねぇ。今も昔も追い詰められないと何にもできない性格なんですねぇ。

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【ストーリー】
シカゴからサンディエゴへと、深夜のハイウェイを土砂降りの雨の中車を走らせるジム。疲れと眠気と孤独に苛まれていた彼は、雨の中立っていた一人のヒッチハイカーを乗せる。孤独から解放され喜ぶジムであったが、ヒッチハイカーは突如ナイフを取り出し…。

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続編のみならず数多くの亜流を生み出し、今年に入りショーン・ビーン主演でリメイクもされたアクションサスペンスの傑作。
一寸先も見えない闇の恐怖に包まれたハイウェイから一転、そこが眩いほどの日の光に照らされるも、死体すら見つけてもらえそうにない広大な荒野が広がっている、明けても暮れても怖い場所には変わりのないハイウェイを舞台に、謎の殺人鬼に追い回される主人公の憔悴と恐怖、そして成長を描く一本。オープニングから無駄なく物語が進行する本作。殺人鬼と一対一で対峙するサスペンスに、歯切れも良く迫力も満点なカーアクションと見せ場の配合バランスも秀逸なのだが、やはり些細な表情や動作、言葉尻やイントネーションの変化、そしてそれらが生み出す“間”によって、キャラクターの性格や心境のみならず、画面上には映らない情景までありありと表現する演出が見事。直接的な殺戮描写が皆無なのにも関わらず、観終った後そのシーンをハッキリと“観た”気にさせるほど。もちろんそれはローバート・ハーモン独自の演出力によるものと言うよりは、ランス・ヘンリクセンがひたすらカッコ良かった『ニア・ダーク/月夜の出来事』の脚本も手掛けたエリック・レッドの優れた脚本を、抜粋所を間違わず丁寧に丁寧に演出したが故の複合的な結果なのであろう。
で、本作。理不尽な殺人鬼に追い回される恐怖を描いた作品と思われがちだが、そうではない。その側面も重要な一面ではあるが、「なんだい?また何を言い出すんだい?」と言われそうだが、本作は“愛の物語”である。もちろん、「愛してるよ!」「私もよー!」ってな作品でもなければ、愛される側にとってははた迷惑この上ない“愛”ではあるんですが。“愛”の部分を、“想い”なり“余計なお世話”に変えることも可能ですけど。

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内なる衝動を自らの手では止めることが出来ず、日々殺人を繰り返していたジョン・ライダー。殺人の日々に疲れ果て、身も心も死人同然となっていた彼は、自らと対峙しうるだけの人間を探し、乗り込む車乗り込む車で「俺を殺すか、お前が死ぬか」の二者選択を強いるが、大体が後者で。ガッカリする、ジョン。甚だ迷惑な話ではありますが。そこへ現れたのが、夢こそ持ってはいるが自ら必死になって行動を取ったことはない青年ジム。見るからに頼りなさそうなジムであったが、意外や意外。ジョンを車から叩き出す奮闘ぶり。「コイツだったら、オレを止められるかも」と運命の人との出会いに喜ぶジョンだったが、いまいち頼りないジムに「もう少し鍛え上げなければ」と一方的に特訓宣言。これまた迷惑な話です。「男だったら一度はムショ暮らしを経験するべき」とばかりにジムに罪を擦り付け、刑務所短期留学を体験させ、拳銃のシリンダーすら開けられないジムに“拳銃を持ったらまず弾確認”と教え込むジョン。一方的に追い回しておきながらも、いざとなったらいつでもジムを救い出せるよう影ながら見守る守護天使のようなジョンだが、警官に射殺されそうになったジムを救い出すタイミングを失い、ウェイトレスにそのお株を奪われたときは、いささかバツが悪そうです。それでも着実にレベルアップするジムに、最終試験とばかりにカーチェイスを体験させ、さすがにヘリはまずいだろと教官自らヘリ退治で特訓終了。あとはジムが自分を殺してくれるのをワクワクしながら待つジョンだったが、ジムはまだ踏ん切りがつかない。惚れた女が殺されそうだってのに、踏ん切りがつかない。ジョン、心底ガッカリ。失望のあまり警察署で無言を貫くジョンだったが、ジムと思わぬ再会を果たし心躍るジョン。嬉しくて、出身地を「ディズニーランド」と答えるお茶目な所を見せるジョン。ようやくここで自分の役割を悟ったジムは、いつの間にか片手で拳銃のシリンダーを開けられるほど銃の扱いにも慣れ、まるで待ち合わせ場所へと向かうようにジョンの乗る護送車を追い、ジョンはジョンで待ち合わせの時間が来たかのように「待ってたよー!」と後ろを追うジョンの車に頭から飛び乗る。自分と対峙できるだけの男に育ったジムを、心底嬉しそうに見つめるジョン。幸せそうです。
まぁ概ね妄想が占拠してしまっているジョンの物語ではありますが、“鍛え上げる”って意味では大体合っているのではと。初対面の時以外は、ジムを殺そうとは全くしてませんし。ハッピーエンドのはずがいまいち気持ちが落ち着かないのも、ジムにとってのハッピーエンドではなく、あくまでジョンにとってのハッピーエンドを向かえる作品なんだからなのではとも。

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自転車団の一人を演じた『E.T.』から、『アウトサイダー』、ちょっとばかし戦争ごっこにのめり込み過ぎた少年を演じた『若き勇者たち』と、幼さと陰が入り混じった顔立ちを活かした役柄で印象的だったC・トーマス・ハウエル。本作ではその両面性のある表情を主人公の成長に合わせて巧みに使い分け、アイドル俳優からの脱却に成功したかのように思えたが、最近では彼の名前を見るだけでビデオストレートな香りを漂わせる俳優に。まぁ、脱却は成功とも言えますが。“ヒッチャー”道まっしぐらだったのに、リメイク版には出ていないのは如何なものかと。一方、これといって急激な変化が見れない割に仕事の絶える事がない『初体験/リッジモント・ハイ』『ジャケット』のジェニファー・ジェイソン・リーも印象的ではあったが、本作はなんと言ってもジョン・ライダーという、椿三十朗並に思いつきで言ってみた臭の強い名前を持つ殺人鬼を演じたルトガー・ハウアーに尽きる。感情を表に出さず、冷酷だが寂しげで、躊躇することなく他者の命を奪う相容ることの出来ない怪物性を持ちながら、どこかに優しさすら感じることの出来るジョン・ライダー役には、ヨーロッパ人特有の冷たい目線を持ち、『ルトガー・ハウアー/危険な愛』『ブレードランナー』と『レディホーク』『聖なる酔っぱらいの伝説』僅かな変化を加えるだけで印象を大きく変えられるだけの力を持つルトガー・ハウアーがまさにうってつけ。彼なくして本作は成り立たないと断言できるほど。
そうなると困るのは、ショーン・ビーン。リメイク版は未見だが、どうにもこうにもショーンには分が悪すぎる。負け戦と分かっていながらも、きっと前の晩にビデオで繰り返し本作を観て勉強したであろう、ショーン。不憫です。リメイク版の『ヒッチャー』にはどんな罵詈雑言を吐かれても一切構わないんですが、ショーンだけは大目に見てやってはいただけないでしょうかと、本作とは全く関係ない言葉で締めることに。

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生まれて初めて、心の底から楽しいって感じたんでしょうねぇ

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posted by たお at 15:47| Comment(4) | TrackBack(3) | 昔観たアレ■は行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月19日

ボンボン (El Perro)

監督 カルロス・ソリン 主演 フアン・ビジェガス
2004年 アルゼンチン映画 97分 ドラマ 採点★★★★

普段通ることのなかった道を、仕事帰りにたまたま歩いていた時に道端でミーミー鳴いていたのが、今実家でブクブクと太ってゴロゴロとしている猫のでんすけ。買い物帰りに、ふと「あ、そうだ!今からカブトムシを探しに行こう!」と向かった橋でビチビチと地べたを這い回っていたのが、今この記事を書いている私の耳たぶを必死に噛んでいるスズメのこぶ。ペットショップでショーケースに並んだ動物を選ぶのも出会いかもしれないけど、どうせペットを飼うのなら、こういった偶然が重なった出会いを大切にしたいなぁと。

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【ストーリー】
人は良いのだが、やることなすこと上手くいかないフアン。仕事もクビになり、居候先の娘の家でも肩身の狭い彼は、ひょんなことから犬のボンボンを飼う羽目に。無論娘の家では犬を飼えないフアンは、ボンボンを連れ当てのない旅に出るが、ちょっとした幸運が転がり込み始め…。

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右を向いても左を向いても良い事なんか一つもなく、ただただ曖昧な笑みを浮かべるしかない主人公が、ひょんなことから飼う羽目になった犬によって小さな幸せに次々と見舞われる様を描く本作。その幸運に流されるまま旅を続ける主人公が出会う人々を、時にユーモラスに、時に哀愁タップリに描く本作から受ける印象は、どこまでも続く地平線を持つ荒野に吹き荒んでいるであろう寒風を撥ね退ける暖かみ。ドッグショーでとんとん拍子に成功を収め、ちょっとした欲を出したが為に結果的にボンボンを手放す事となった主人公が、初めてその曖昧な笑みを消し去り、自らの意思で行動を起こす様には、山こそ小さいが非常に深い感動を覚えさせる。当てのない旅を続ける主人公ではあるが、その先には決して大きくはないが彼にピッタリの幸せが待っているのであろうことを思わせる締めも、非常に良い後味を残している。

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その曖昧な笑みの持つあまりの切なさに、出鼻から涙腺を刺激しまくる主人公を演じるのは、監督の映画製作会社の駐車場で勤務しているフアン・ビジェガス。本人役。まるでそこにカメラがあることを知らされていないかのようなナチュラルなドギマギぶりは、プロの役者ではなかなか出せないもの。そんな彼以外にも、ほとんどのキャラクターが演技未経験の一般人ばかりの本作。唯一のプロが、9歳の女の子だったりも。そのナチュラルさが生み出す間が、本作に絶妙なユーモアとペーソスを与える結果にも。
しかし、やはり本作の顔は、ボンボン。ドゴ犬。彼もまた、本作が映画デビュー。感情を前面に出すことのない彼の哀しげな表情がフアンの表情とリンクし、嫌な事は絶対にやらない頑固さが、フアンとの出会いを待ち続けていたかのような運命的なものを感じさせるものがある。基本的にボンボンも流されるがままでしたし。

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目指している所も一緒

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2007年11月30日

ボーン・アルティメイタム (The Bourne Ultimatum)

監督 ポール・グリーングラス 主演 マット・デイモン
2007年 アメリカ映画 115分 アクション 採点★★★★★

スケールアップされた予算と火薬量の割に物語が薄かったり、広げ過ぎた風呂敷を収集する為に矢継ぎ早にイベントばかり起きたり、毛むくじゃらのチビッコが無敵の帝国群をやっつけたり、ロボが空を飛んだりする“パート3”。“人間味を増す”と言う名目でユーモアが増えたり、万人向けを狙ってソフトな出来になることもしばしば。突然立体映画になっちゃうことすらある油断も隙もあったもんじゃない“パート3”に、大きな落胆と困惑を覚えたこと数知れず。シリーズを通してタッチを持続させながらクォリティを更に高めていくってのは、それだけ難しいんでしょうねぇ。

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【ストーリー】
“トレッドストーン”と呼ばれるCIAの極秘計画によって過去の記憶を消され、究極の暗殺者となったジェイソン・ボーン。自らの過去を明らかにするために奔走していた彼は、“トレッドストーン”をアップグレードした“ブラックブライアー”なる計画があることを新聞で目にし、そのスクープを手にした記者に接触する為にロンドンへと向かうが…。

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前作『ボーン・スプレマシー』から引き続き『ユナイテッド93』のポール・グリーングラスがメガホンを取った、“ジェイソン・ボーン”シリーズ完結編。前作での“モスクワでゴメンなさい”直後から始まり、前作のエンディングが意外な所で繋がる本作。“前作を観ていなくても大丈夫!”と闇雲に親切な映画が多い中、この“一見さんお断り!”の姿勢が潔い。
ロシアに始まり、スペイン、イギリス、ドイツ、モロッコ、フランス、そしてアメリカと、世界各地の観光名所的な煌びやかさはないが風土と生活臭の良く出た街並を背景に、消された過去を探す男の孤独な闘いと、暴走を容易に誘発しかねない強大な力を手にしようとする権力の恐怖を描いた本作。『ボーン・アイデンティティー』でも顕著だった“非ハリウッド”的リアル路線をしっかりと継承しつつも、ボーンが対峙する相手がトレッドストーンの担当部署長からCIA長官へと順調かつ格段にスケールアップ。物語のカギとなる陰謀があまりに突飛な話であればせっかくリアルに構成された世界観が台無しとなってしまうのだが、事前に政府の承認を受けることなく危険因子をCIAの独断で拘束・尋問・排除することを可能とする“ブラックブライアー”には、全く絵空事ではない現実味と恐怖があり、見事なまでに物語にマッチしている。実際、「外国人が手を下していることですから」を言い訳に似たようなことをやってますし。

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「あなたは目撃者になる!」と謳われようが、壮絶な悲劇を再現しようが、スクリーンを隔てている以上は観客にとって所詮は他人事である映画。しかしながら、不安に怯える登場人物の目線の如く常に不安定に揺れる手持ちカメラと、対象物が次々と入れ替わる膨大なカット数で観客を傍観者でいることを許さず、地獄絵図が繰り広げられるその現場へと叩き込んだ『ユナイテッド93』。そのポール・グリーングラスは、前作でハリウッド的なドラマチックな演出を排しつつも、まるでその場に居合わせてしまったかのような臨場感を表現したが、本作ではそれが更なる高みに達しており、全く新しいドラマチック表現を構築している。特に序盤のクライマックスであるロンドンのウォータールー駅での攻防シーンに顕著で、電話の会話に含まれていたたった一つのキーワードを発端にその発信者のすべての情報がCIAにより曝し出され、行動が様々な情報を駆使し監視される恐怖と、知識と技術を駆使しその監視と追跡をかいくぐりその対象者をも守ろうとするボーンの攻防を描くそのシーンの臨場感と緊張感は文字通り息をもつかせぬ面白さで、スパイ映画の表現として、一つの到達点に達している
よくあるアクション映画を求めるスタジオ側と徹底的に争い、結果的に地に足のドッシリとついた快作『ボーン・アイデンティティー』を完成させたものの、豪勢な夫婦喧嘩映画『Mr.&Mrs. スミス』を撮りに行ってしまったダグ・リーマンからバトンを受け取ったポール・グリーングラスが、前作そして本作で“ジェイソン・ボーン”シリーズをあるべき姿で完成させたと言えよう。

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重力がどっか行っちゃったかのような華麗なカンフー合戦や、無尽蔵に弾丸が出続ける派手な銃撃戦を目にすることは全くない本シリーズ。その代わりフィリピン武術カリをベースにした、相手の武器の無力化を最優先とし、雑誌やらタイルやらタオルやらを手当たり次第武器とする及び投げつけるスピーディーかつ効果重視の格闘シーンは毎度のお楽しみで、本作でももちろん満足度の高い格闘シーンを堪能。しかし、それ以上に堪能したのが、シリーズ最大の目玉の一つと言えるカーチェイス。
ボーン・アイデンティティー』ではミニクーパーがパリ市内をクルクルと走り回り、『ボーン・スプレマシー』ではモスクワを舞台に“カークラッシュ”シーンではなく文字通り交通事故を目の当たりにさせた。で、本作。途中スクーターでのおっかけっこがあり「もしや、コレが?」とヒヤヒヤしたが、クライマックスにちゃんとカーチェイスがあり安心。遂にアメリカ本土に上陸してのカーチェイスとなったが、前作同様“ゴーモービル”を使用しての撮影か、実際に役者が運転席に座っている車内から見える外の景色が目まぐるしく変化していくスピード感、卓越したスタント技術、壮絶な事故が融合され、見事なシークエンスが作り上げられている。確かにCGを使えば空撮からカメラが車内を通り抜け、バラバラになった破片が目の前を通り過ぎていくような迫力満点の映像を作り上げることは可能であるし、その映像に大いに驚きを覚えるのだが、その驚きはあくまで技術とその技術が作り上げた映像に対する驚きであり、目の前で起きたことに対する本能的な驚きとは趣を異なるものであることを、改めて実感させられるものである。

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グッドナイト&グッドラック』のデヴィッド・ストラザーン、『ザ・キープ』の頃からのお気に入りであるスコット・グレン、『ボーン・スプレマシー』から引き続き登場のジョーン・アレン、「この人のポアロが一番好き!」って人も案外多い御大アルバート・フィニー、主人公以外では唯一のレギュラー出演となったジュリア・スタイルズなど、ネームバリューよりも見た目の説得力を重視したキャスティングが光る本作。なんと言うか、みんな数字に強そう。『ドミノ』のエドガー・ラミレスなんかはとっても算数が出来なさそうな風貌ではありますが、何事においても非常に真っ直ぐな感じはヒシヒシと伝わりますし。
でも、なんと言ってもマット・デイモンに尽きる。何かと天才役が多い彼は、“殺しの天才”であるジェイソン・ボーンの何事においても正確且ついつ何時でも冷静でありながらも、一度決めたことは頑なに守り続ける頑固さを持ち、ニッキーがマリーとの逃避行を再現するかのような髪形に自らする乙女心を意に介さないフリをする一途さを兼ね備えた役柄を、ものの見事に表現している。時折見せる、何かもう色んなものを忘れちゃっている顔つきも含めて。ここまでカッコいいマット・デイモンを見せ付けられてしまうともう易々と“ジミーちゃん”と呼べないのかと一抹の寂しさを感じつつも、きっと彼の事、ボーンのイメージをあっさりと捨てて、肩の力を抜いた楽しそうな仕事をすぐにでも見せてくれるんでしょうねぇ。
タイアップだなんだと作品毎に主題歌が変わる風潮の中、一作目から頑なに使われ続けているモービーの“エクストリーム・ウェイズ”の新バージョンが若干カッコ悪かったりもしたが、久々に主人公になりきったまま劇場を後にすることが出来た作品であったので、★は文句なしの5つ。何でも入りそうな機能性重視の黒いバッグを買いに行かなきゃ。

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撃つとまたゴメンなさいをしに行かなきゃならないから、撃ちたくない

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posted by たお at 23:21| Comment(22) | TrackBack(107) | 昔観たアレ■は行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月18日

パトリオット・ゲーム (Patriot Games)

監督 フィリップ・ノイス 主演 ハリソン・フォード
1992年 アメリカ映画 117分 アクション 採点★★★

映画であれ現実であれ、何か起きた時に咄嗟に躊躇なく動けるか否かが、ヒーローとそれ以外を分けているんでしょうねぇ。実生活でそんな何かしなきゃなんないような状況に陥ることは滅多にないんですが、強いて挙げれば学生でアルバイトをしていた頃、店内を巡回していると向こうからもの凄い勢いで走ってくる男が一人。なんとなく嫌だったんで何気なく咄嗟にラリアットを一閃。もんどりうって倒れる男の下へ、後ろから数人の警官が。結果的に置き引き犯だったから良かったものですが、下手すればただの乱暴者になるところでしたねぇ。あぶない、あぶない。

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【ストーリー】
講演の為にロンドンを訪れていた元CIAアナリストのジャック・ライアンの目前で王族を狙ったテロ事件が発生。咄嗟に銃を手に取りテロリストを射殺したジャックであったが、弟を殺されたことで私怨に燃えるテロリストのショーンに命を狙われ…。

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たまたまとんでもない事態に出くわす確率の高さでいったらジョン・マクレーンなんて目じゃないジャック・ライアンの活躍を描く、『レッド・オクトーバーを追え!』に続くシリーズ第2弾。ジャック・ライアン役が前作のアレック・ボールドウィンからこっそりハリソン・フォードに変更。アレック・ボールドウィンにしろハリソン・フォードにしろベン・アフレックにしろ、どうやってもアナリストにだけは見えないキャスティングが特徴。てっきり次も自分がジャック・ライアンをやると思っていたであろうアレック・ボールドウィンのことを思うと、不憫で仕方がありません。
イギリス、アメリカ、北アフリカ、アイルランドと舞台が目まぐるしく展開する割に、物語自体は非常にまどろっかしい本作。結局は肉体勝負で落ち着いてしまう、別にアナリストが主人公じゃなくても構わない展開など不満も多い作品ではあるが、結果的に“勝ったから万歳”で終わってしまうものの、復讐が新たな復讐を生み出す途絶えることのない憎しみの連鎖の虚しさと、現代戦を象徴するまるで他人事の如くモニターで実況される“どこか遠くで起きている戦争”、そしてそれが主人公の私怨も織り交ざった分析結果が起因している恐怖と、興味深いテーマも随所に見受けられる。

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相変らず何か困ったような顔をしているだけで映画一本を乗り切るファイヤーウォール』のハリソン・フォードや、幼い頃から立派なゴス顔の『ダンジョン&ドラゴン』のゾーラ・バーチ、浮世離れした王族風味が良く出ていた“ジャッカルの弟”こと『恋するための3つのルール』のジェームズ・フォックス、元祖困り顔ヒーローでもある『カサンドラ・クロス』『ワイルド・ギース』のリチャード・ハリス、シス声ジェームズ・アール・ジョーンズ、まだ地毛だった頃の『スネーク・フライト』『フリーダムランド』のサミュエル・L・ジャクソンと、やたらと豪勢な顔ぶれが目を引く本作であるが、やはり本作の目玉はなんと言っても『ザ・ダーク』『サイレントヒル』のショーン・ビーン。本作を手に取ったのも、何よりもショーン・ビーンが見たかっただけですし
で、ショーン。登場早々弟を殺され自分一人逮捕される、見事なまでに切ないスタートを切ることに成功。本業そっちのけで復讐に燃えるショーンは、「ライアンは殺れなかったが家族は殺ったぜ!」と肝心のライアンを殺せなかったのに満足げです。可愛いです。しかもその家族すら実は殺せていなかった詰めの甘さも、相変らずです。そこもまた堪らなく愛らしいのですが、アメリカから遥々北アフリカへと向かう道中、誰もその事実を教えてあげなかったのでしょうか?不憫です、ショーン。そんな詰めが甘く始終悲しい顔で遠くを見つめているショーンを存分に堪能できた本作なんですが、そんな顔ばかりしてたので困った顔をした主人公を悲しい顔をした悪役が追い回す不思議な映画になってしまいましたとさ。

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今日はたまたまテロリストに会いました

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2007年11月04日

パンズ・ラビリンス (El Laberinto del fauno)

監督 ギレルモ・デル・トロ 主演 イバナ・バケロ
2006年 メキシコ/スペイン/アメリカ映画 119分 ファンタジー 採点★★★★

もうこの位の歳にもなると、ほとんど見なくなった悪夢。稀に見たとしても途中で「あぁ、夢を見ているんだな」と気付いてしまい、もう興醒め甚だしい。大人って、やぁねぇ。子供の頃は普段何気に見聞きしたことを上手に脳が消化できなかったのか、それこそ毎日のように悪夢を見たもので。それらの幾つかは未だに覚えてるんですが、その中の一つはこんな感じ。いとこのお姉さんと一緒に何者かから逃れるように押入れに隠れている私。すると突然押入れが開けられ、そこに立っていたのが顔中びっしりと米粒のようなものが張り付いている怪人。「ひぇぇ!」と押入れの奥へと逃げようとすると、私の前にいたいとこのお姉さんが振り向き、その顔にもびっしり米粒状の物が。二人の米粒魔人に捕まり、一斉にくすぐられる所で号泣しながら起床。これ以来、未だにちっちゃいブツブツが大の苦手に。もちろん、くすぐられるのも。これを書いている時点で、腕中トリハダ立ってますし。

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【ストーリー】
1944年のスペイン。内戦で父親を亡くしたオフェリアは臨月の母親と共に、母親の再婚相手であるビダル将軍がゲリラ鎮圧にあたっている山間部へとやって来る。ある夜、冷酷で残忍なビダルに恐怖を募らせるオフェリアの下へ現れた昆虫の姿をした妖精に不思議な迷宮へと導かれる。そこで彼女を出迎えた牧神パンは、彼女が地底の魔法の国の王女の生まれ変わりであり、魔法の国へ戻るには満月の夜までに3つの試練を乗り越えなければならないと告げる。

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過酷な現実からほんのひと時目を逸らさせる御伽噺。とはいえ、その物語の一事が万事甘い夢の世界が描かれているわけではなく、ほぼ全体的に非情で過酷な現実が色濃く反映され、最後のほんの僅かな一瞬が現実とは違う場所へと着地をする。もしこれが“ファンタジー”の本質であるのならば、本作は“ダーク・ファンタジー”などではなく、まさに正統派のファンタジー映画と言えるのではないか。
幼い子供にとって“全て”を意味する母親。その母親の選択からは逃れる術はなく、その選択によってもたらされる急激な変化を子供は子供なりに必死に消化する。本作の主人公であるオフェリアは、父親を失い、住み慣れた故郷を離れゲリラが潜む山奥へとやって来る。心の拠所である母親は日に日に衰弱していき、その母を失うかも知れぬ恐怖と義父への恐怖が頂点へと達する時、非現実への扉が大きく開かれる。残酷な現実から逃れたはずの夢の世界も死の香りが濃密に漂い、その濃度は現実と比例するように濃くなっていく。そして現実と非現実が交差し、現実が悪夢以上の恐怖としてオフェリアに立ちはだかるクライマックス。迫り来る死を面前としながらも、深い優しさとその優しさがもたらす強さを忘れることのなかったオフェリアが迎える結末はあまりに悲しく、その後に描かれる美しすぎる故に哀しさをも感じる光景に、全ては夢物語かのようにも思えてしまうが、僅かながら現実に残された非現実の痕跡に儚くはあるが希望を感じさせる様は、まさに御伽噺の真骨頂。

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本作同様フランコによる独裁政権時のスペインを舞台に、現実と非現実の恐怖を巧みに交差させ、子供らにとって最大の怪物が亡霊ではなく大人である様を描いた『デビルズ・バックボーン』を作り上げているギレルモ・デル・トロ。その『デビルズ・バックボーン』のみならず、本作には“昆虫”“粘膜”“いたいけな子供であろうと容赦なし”など、いつものデル・トロ印がそこかしこに。ある意味好きなものしか撮らないオタク気質満載のいつものデル・トロ作品であるのだが、本作で見せる豊かなイマジネーションはある種の到達点にあるのではと。そこがようやく認められたのかどうなのかはさておき、アカデミーを受賞しちゃった本作。アカデミーの意味合いは置いておいても、受賞によって認知度が上がり、過去の作品や受賞したからと言って何ら変わることはないであろう今後の作品に注目される機会が増えるのは嬉しい限り。
我慢強い割にはブドウに目がないオフェリアを演じたイバナ・バケロの可憐さも強く印象に残るが、ピーター・ジャクソンにとってのアンディ・サーキスのような存在であるダグ・ジョーンズが強烈。『ヘルボーイ』で、冷静沈着で突出した知性を持つ大まかに魚類なエイブを分厚いメイクで演じながらも、僅かな感情の変化や見えずとも感じる表情の変化、そしてなんとも言えない可愛らしさを巧みに表現したダグ・ジョーンズだけに、本作の目玉でもある牧神パンと、赤子を食することで得た不老不死との引き換えに怪物と化したのであろうペイルマンをそのしなやかな身のこなしで見事に表現。特に、パンの当初のうやうやしさはどこにいったのかとすら思える態度の豹変ぶりと胡散臭さは絶品。

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信用しろと言われても

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posted by たお at 03:59| Comment(26) | TrackBack(119) | 昔観たアレ■は行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月14日

プロポジション −血の誓約− (The Proposition)

監督 ジョン・ヒルコート 主演 ガイ・ピアース
2005年 オーストラリア/イギリス映画 104分 アクション 採点★★★★

“兄弟愛”と言われても、いまいちピンとこない私。末っ子でB型の駄々っ子気質のせいもあるんでしょうが、ある意味親よりも近い存在である兄らが非常にウザったく思うことがほとんど。まぁ、立場が逆になれば想いも大きく変わるんでしょうが、今更急に「実はお前には弟がいるんだよ」とかカミングアウトされるのも嫌なので、このまんまの関係でいいかなと。

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【ストーリー】
19世紀末のオーストラリア。犯罪者兄弟として悪名高かったバーンズ兄弟の次男チャーリーと三男マイキーを捕らえた保安官は、チャーリーに「マイキーを死刑されたくなければ、兄のアーサーを探し出して殺せ」と提案を持ちかける。期限はクリスマスまでの9日間。チャーリーは弟の命を救うべく、絶縁状態にある兄が潜む荒野へと旅立つ。

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アルバムを数枚聞きかじっただけなので然程詳しくはないのだが、未だに根強い人気を誇るミュージシャンのニック・ケイヴが脚本を書き下ろし、ケイヴのPVを多数手掛けてきたジョン・ヒルコートが監督した、異色西部劇。
イギリスの流刑地であり、先住民であるアボリジニーから土地を取り上げ、歯向かう者を虐殺してきた歴史を背景に、希望の見出せぬ生活を強いられる庶民とアウトローとして生きる者たちの姿を描く本作。弟を救う為に同じく血の繋がった兄を殺さねばならない主人公、見渡す限りの荒れ果てた荒野と瞬く間に群がってくる無数の蝿という厳しい現実から目を背けるように英国式生活を頑なに守る人々、七三分けにした白人に従順な“良いアボリジニー”に対し、なびかなかった“悪いアボリジニー”は岩山に追いやられた挙句に岩山に潜む反逆者として殺される。これらの人間の業が寓話的に語られる本作の味わいは非常に独特であるが、劇中に流れるニック・ケイヴの歌声同様の深みを随所に感じることが出来る。数奇な運命を辿る兄弟の物語や復讐譚としての面白さもさることながら、暇を出された“良いアボリジニー”が真っ先に靴を脱ぐ、“押し付けられた文化”を象徴するシーンが非常に印象深く残る。

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いい俳優ではあるのだが、常に他の俳優に食われて印象が薄くなる傾向にあるガイ・ピアース。『L.A.コンフィデンシャル』ではラッセル・クロウとケヴィン・スペイシーに押されっぱなしで、『ラビナス』ではロバート・カーライルの文字通り“人を食った”迫力に完敗。『タイムマシン』に到っては、“人を食った”ジェレミー・アイアンズにどころか、基本的には平面のオーランド・ジョーンズの方が印象深かったりする始末。で、「今回もまた…」との不安もあった本作だが、今回の彼は出だしから違う。青白く痩せ衰えた顔からのぞく、まるで地獄から帰ってきたかのような眼光の鋭さと馬に跨るその凛とした佇まいは、まるで『ペイルライダー』のイーストウッドのようである。いよいよもって強烈なオーラを発するガイ・ピアースを拝見できると思った矢先、そこに登場するのが『スケルトン・キー』『Vフォー・ヴェンデッタ』のジョン・ハートに、『ナイロビの蜂』『トゥモロー・ワールド』のダニー・ヒューストン、『リベリオン 反逆者』のエミリー・ワトソン、『ディパーテッド』のレイ・ウィンストン、そしてトドメが『300 〈スリーハンドレッド〉』のスパルタ野郎デヴィッド・ウェンハムという、この中で目立てという方が可哀相なほどな顔ぶれ。特に、ジョン・ヒューストンを父に、アンジェリカ・ヒューストンを姉に持つダニー・ヒューストンのギラギラとした眩いばかりのオーラは強烈で、彼が出てきた途端に彼が作った影にガイ・ピアースがすっぽりと収まってしまうことに。まぁ、その謙虚さがガイ・ピアースのいい所なのかもしれませんけどねぇ。

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こんな兄じゃ距離もおきたくなるものです

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posted by たお at 00:57| Comment(4) | TrackBack(2) | 昔観たアレ■は行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする