2007年12月31日

ナショナル・トレジャー (National Treasure)

監督 ジョン・タートルトーブ 主演 ニコラス・ケイジ
2004年 アメリカ映画 131分 アドベンチャー 採点★★★

「ピラミッドなんてあんな巨大な物を、人間が作れるわけがない!きっと宇宙人だ!」「モアイ像みたいに巨大なのを、人間がズラリと並べられるわけがない!きっとこれも宇宙人だ!」「ナスカの地上絵みたいに空からしか判別できない絵を、どうやって人間が描いたてんだい?宇宙人が描いたに決まってるじゃないですか!」と、“〜わけがない”を土台とし人智を大いに侮ったトンデモ歴史本が数多く出回っていますが、夢溢れる物語として読む分にはとっても楽しいんですよねぇ。

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【ストーリー】
代々とある伝説の秘宝を追い求めてきたゲイツ家。その末裔で歴史学者にして冒険家のベンは、その秘宝の手掛かりがアメリカ独立宣言書の裏面に記されていることを知る。しかし、ベンの冒険の理解者で資金提供者であるイアンが独立宣言書の強奪を画策。ベンは独立宣言書と秘宝を守る為、イアンより先に独立宣言書を盗み出そうとするが…。

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ダ・ヴィンチ・コード』の公開で幕が開けるであろうと思われたトンデモ史映画ブームを先取りして製作された、ジェリー・ブラッカイマー作品特有の画面がシャンパン色に染まったアドベンチャー映画。
“テンプル騎士団”や“フリーメイソン”などいかにもな顔ぶれが物語を彩るが、知っていればもちろん楽しめるけど知らなくても充分に楽しめる親切設計の一本。ネタがでかい反面、移動が東海岸を行ったり来たりするだけと、思いのほかこじんまりとした本作。言ってる事はデカイくせに、見せられる画面はスケールが小さい。しかしながら、そのこじんまり感が「あら、こんな所に手掛かりが!」という“灯台下暗し”を上手に表現し、風呂敷をやたらめったら広げ過ぎないソツのない演出と展開も相まって、2時間超えの長尺を飽きさせずに通している。クライマックスがこれといってスケールアップをするわけでもないので尻すぼみの感も否めないが、娯楽作としては“本家”以上に充分楽しめる出来となっている。

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ここ最近は「アガガガガーッ!」と騒いでいるだけの暑苦しさか生え際にしか目が行かなくなっていたゴーストライダー』のニコラス・ケイジ。今回もその暑苦しさに覚悟を決めて挑んだのだが、クルクル回りながら二丁拳銃をぶっ放すわけでもなければ回し蹴りをキメるわけでもなく、人の扱いが若干ぞんざいな“歴史学者にして冒険家にして軍経験者”という非常に都合の良いマスター・キートンのような主人公を、作品同様落ち着いたトーンで演じている。カメラの前で顔から湯気を出しながら一人芝居を繰り広げるニコケイが好きな方々には物足りないかも知れないが、たまにはこれくらいのニコケイがいい。
そんなニコケイの他に、非常に楽そうな仕事振りが印象に残った『ブルー・イン・ザ・フェイス』『リトル★ニッキー』のハーヴェイ・カイテル、そのまんまクリストファー・ウォーケンと入れ替わっても問題なさそうな『トランスフォーマー』のジョン・ヴォイト、短時間ながらもヌメっとした印象をしっかりと残す『インサイド・マン』のクリストファー・プラマー、現場のセキュリティも兼ねられたであろうUFCの猛者オレッグ・タクタロフなど、ビッグバジェットらしい顔ぶれが揃った本作であるが、ニコケイを含めそんな彼ら以上に強い印象を残す、影の主役といえる役者がひとり。

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それはもちろんショーン・ビーン。当然です。
「オレも昔はワルだったんだ」と大見得を切って登場してくれる割に、手にした発炎筒が大炎上して大いに出鼻をくじかれるショーン。全てにおいてベンに先を越され、ようやく追いついたと思ったらハッタリに見事に騙され、ボストンまでの長い道のり、車中で宝の使い道をワクワクしながら考えていたにも関わらずあっさり逮捕です。可哀想すぎです。資金と人手を提供するだけではなく率先して自ら現場へと出向き、大切な仲間を失ってもベンらを助ける為に手を伸ばす、誰よりも苦労をしているのにちょっとばかし誰も死なない程度の悪巧みをしただけで監獄行きです。あまりに報われない人生です。そんな何事においても報われず詰めの甘いショーンを観るには、本作はまさにうってつけの一本。身悶え間違いなし。作り手側としては『007/ゴールデンアイ』や『パトリオット・ゲーム』の頃の記憶を基に「いかにも悪役って感じの顔だよね」という安易な起用だったのかも知れないが、如何せんこの頃のショーンは『ザ・ダーク』や『スタンドアップ』などでも見せた“善人モード”への移行の真っ最中。程よいちぢれ具合の髪の長さといい肉付きといい、シャープとソフトが絶妙に混ざった風貌で、すれ違う子供に微笑む様や己の間違いに気付いて素直に落ち込む様など、とても悪役には見えない。「確かに昔は悪かったが、今はお前の為だけに生きるぜ」なんて、シラフだったら絶対信用しない戯言を容易に信用させてしまいそうな説得力がある。これも悪役って役作りに対する詰めの甘さなんですかねぇ。

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上手くいかないから企んじゃダメ

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2007年04月30日

2010年 (2010)

監督 ピーター・ハイアムズ 主演 ロイ・シャイダー
1984年 アメリカ映画 113分 SF 採点★★★★

太陽系の惑星では木星と土星が大好きな私。もう、堪らなく好き。あの呆れるほどの巨大さもさることながら、異様な色彩に覆われた模様にも目を奪われるんですよね。で、ただでさえ好きな木星と土星だっていうのに、以前見たTV番組で、地球が太陽という巨大な星の引力によって軌道を狂わされることなく生命が存在するに適した距離を保ち続けていられるのは、外側にある木星と土星という巨大な惑星の引力によるものであり、また、太陽系外からやって来る隕石によって壊滅的なダメージを負う事がなかったのも、地球に隕石が到達する以前に木星と土星がブロックしていたからだと。ありがとー木星!ありがとー土星!

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【ストーリー】
米ソ間の緊張が極限まで高まり一触即発の状態に陥った2010年。9年前に木星の衛星イオで巨大なモノリスに遭遇し、原因不明のまま帰還することのなかった宇宙船ディスカバリー号の下へソ連の宇宙船レオーノフ号が旅立つことになり、9年前の計画の最高責任者であったアメリカ人科学者フロイド博士も乗船することに。イオ上空に辿り着いた彼らは、木星上で起きたある“素晴らしい出来事”を目撃することになる。

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大まかにかいつまめば、人類を猿から人間へと進化させたのは神さまなんかじゃなくて高度に進化した宇宙人で、その宇宙人から「次の段階に進化させたるから、ちょっくら木星まで来いや」と呼び出しを食らうって話だった『2001年宇宙の旅』。その物語を分かりやすくする為の描写を全て省き、「想像を超えるものは想像できない」と神の如く進化した宇宙人の姿を真っ黒い板っぺらにした結果、「難解だ!」「神秘的だ!」「哲学的だ!」「LSDキメながら観るとスゲー効く!」と大評判に。そんな“新しい宗教の聖書”の様相すらみせる『2001年宇宙の旅』の続編を作るなんて、並大抵のプレッシャーじゃなかったはず。どう転んでも失敗作にしかなりえなさそうだった本作だが、これがまた面白い。
地球上での緊迫関係を狭い宇宙船内に反映させ、緊張・対立・和解の人物間の心の動きが物語に一層の膨らみと人間味を与え、アクションやSFで切れ味のいい演出を見せていたピーター・ハイアムズの絶頂期なだけあって、作品全体のテンポも迫力も申し分なし。とても『サウンド・オブ・サンダー』を撮っちゃった監督とは思えず。
そういえば、この頃ポリスのアンディ・サマーズが“ツァラトゥストラはかく語りき”を何とも微妙なバージョンでリリースしたような記憶もあるが、まぁいつも通り曖昧ですねぇ。

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渋味がピークに達していた“似顔絵を描くならまずは横顔”のロイ・シャイダーや、女王芸で一躍脚光を浴びたヘレン・ミレン、“性転換したフットボール選手”や“多重人格者”など強烈なインパクトを放つ役柄が多いものの、わたし個人的に一番好きな出演作が『ハリーとヘンダスン一家』であるジョン・リスゴーら俳優陣も実力派揃いであるが、本作の主役はやっぱりHAL9000と木星。自らの使命と運命を悟ったHAL9000がとる行動は非常に人間的で、“恐怖”を知った高度に進化したコンピューターも新たなステップへ迎えられる結末は感動的ですらある。また、新たな太陽としてこれから生まれる生命を育む役割を担う木星の姿に息を呑む。
“木星が太陽に”と言えば真っ先に本作を思い出したいものだが、どういうわけか真っ先に思い出すのが、宇宙ステーションで白装束の新興宗教の信者がデモやって暴れたり、三浦友和が無重力セックスしたりする『さよならジュピター』だったりも。真っ先に忘れたい映画なのに。

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相変らず放り投げられっぱなしの謎も多いですが

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2007年04月09日

ナチョ・リブレ 覆面の神様 (Nacho Libre)

監督 ジャレッド・ヘス 主演 ジャック・ブラック
2006年 アメリカ映画 92分 コメディ 採点★★★★

仕事の関係で盛岡市に住んでいた頃、街の至る所でよく見かけたのがレスラーのザ・グレート・サスケ。さすが、みちのくプロレスの地。で、蕎麦屋で見かけようがビデオ屋で見かけようが常にマスク姿のサスケに、地元民はなんら違和感を感じている様子もなく、目を丸くして驚く私に「まぁ、そういう人だから」と。ある意味、非常に地域に密着しておりましたねぇ。

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【ストーリー】
修道院で育てられた孤児のナチョは、成長し修道院の料理番として働く身に。しかし、お金のない修道院では孤児たちに満足な食事を与えられない現状に悩むナチョは、子供の頃からの夢だった覆面プロレスラーになり、ファイトマネーで子供たちに美味しい食事を与えようと決意するが…。

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誰かにその面白さを伝えたくても、どうやっても上手く伝えることが出来ず、もどかしい思い著しかった傑作『ナポレオン・ダイナマイト(バス男)』のジャレッド・ヘスの新作。今回も、どうやって伝えたらいいものやら
思いつきと成り行きと偶発的なあれやこれやで傑作になったと思われがちな『ナポレオン・ダイナマイト』であったが、カンペでも読んでいるのかと思わせるくらいギリギリの間の取り方、背景と被写体同士の距離の置き方など、卓越した映像センスと計算高さが持ち味のジャレッド・ヘス。大雑把なジャンル分けをすれば、ポール・トーマス・アンダーソンと同種の監督なのではと。で、本作なのだが、非常に受け入れられ易い題材の分突飛な展開(および突飛過ぎるほどの展開のなさ)は控え目であるが、映像へのこだわりようは目を見張るものがあり、切り絵のように配置された背景を前に焦点深度を浅くして人物を写すことで、まるでパネルシアターを観ているかのような楽しさがある。その背景の前で動いているのがジャック・ブラックを筆頭に、見た目一発のインパクトを重視された方々なんですもの。楽しいこと、うけおいです。
まぁ、結局今回も何となくレビューっぽい体裁を整えてはみましたが、本作の面白さを伝えることには失敗で

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“この顔がスゴイ!”ってのを書き上げるのであれば、登場人物全員を書き連ねなければならないほどイイ顔揃いの本作。そんなツワモノ揃いの中でも、全く輝きというか照りを失わないのが、もちろんジャック・ブラック。一瞬足りとも同じ顔をしていないジャック・ブラックの顔芸に、高カロリーなクドさと表現力の豊かさが混在する唯一無二の魅力が。「オレって面白いだろ?」という押し付けがましさが感じられない、孤高のクドさというか、なんかそんな感じの。最初に登場するワンフレームで耐えられない方々には非常に苦痛の90分になってしまうのだろうが、受け入れられれば至福の90分に。
“これぞルチャ!”って映画ではないものの、ルチャと地域の密着度という押さえるべき点は押さえているし、フラリと何気なく登場するピーター・ストーメアら、隅々に行き渡るギットリとしたイイ顔の中にいる分、より一層清涼感を感じさせるアナ・デ・ラ・レゲラの魅力も含め、満足度は低くない。

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梶原一輝との競作ってことでいいんですかね?

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2007年04月03日

ナイト ミュージアム (Night At The Museum)

監督 ショーン・レヴィ 主演 ベン・スティラー
2006年 アメリカ映画 108分 コメディ 採点★★★★

立て続けに入院ネタで申し訳ないのですが、かつて入院していた時の二日目の深夜、絶食による空腹と日頃の不摂生がたたり全く眠れなかった私は、コッソリと病室を抜け出し、病院の入り口に隣接された喫煙所へと。一服し終わり病室へ戻ろうと真っ暗な外来受付ロビーを歩いていると、どこからともなく楽しげな笑い声が。それも結構な人数分の。いやいや、幽霊なんかじゃないですよ。すっごく黒いから暗闇では見えにくい人たちとか、すっごく小さいから気がつかなかったような人たちが居たに違いないですよ。そうですってば。

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【ストーリー】
仕事が長続きしたことのないバツイチ男ラリーは、愛想を尽かし気味の息子ニッキーのためにと、自然史博物館の夜警の仕事を始める。しかしその博物館では、夜になると化石から蝋人形まで全ての展示物が生き返り、勝手気ままに動き出すのであった。

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ピンクパンサー』のショーン・レヴィによる、ファンタジックコメディ。
「久々にベン・スティラーの新作を劇場で観れる!」と心躍らせ劇場に向かったものの、そこに見られたのは“ベン・スティラー作品”という色合いよりは、今回は製作に回っているクリス・コロンバスがロビン・ウィリアムスと組んだ一連のファミリー映画群の色合いの方が濃く出た一本。しかしながら、そのどちらかと言えば“苦手な部類”に入るジャンルではあるものの、流石に得意な“非日常的な出来事を通して親子の絆を深める”テーマである分非常に安定した作りをしており、その合間合間を縫うようにベン・スティラーがだれかれ&物を構わず激しいツッコミを入れてくれるので、笑い過ぎで呼吸困難に陥る『ズーランダー』や『スタスキー&ハッチ』級のコメディさえ期待しなければ、まず退屈することはない。
「動き出したら面白いだろーなー」というアイディア先行の作品とはいっても、動いたら面白いものが動いている時点で既に面白いので、満足度は高い。しかし、不満を挙げるとすれば、それは字幕。『トゥモロー・ワールド』でちょっとアレな人特有の言葉使いが特徴だったシドのキャラクター性を度外視した字幕に感じた不満同様、様々な時代のキャラクターが入り乱れているはずの本作なのに、字幕上では全員揃いも揃って現代語。“ひと手間”“ひと工夫を怠らないのがプロの仕事だと思うんですけどねぇ…。

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若干押さえ気味ながらも要所要所でビシリとキメるベン・スティラーはもちろんのこと、コメディで見ること自体久しぶりの『インソムニア』のロビン・ウィリアムス、まだ生きていたこと自体に驚いたディック・ヴァン・ダイク、ミッキー・ルーニーら、スクリーン上を埋め尽くすエフェクトに全くひけをとらない豪華な顔ぶれが魅力の本作なのだが、一番オイシイとこを持っていくのが、ノンクレジット扱いのアノ人。そう。もちろん、オーウェン・ウィルソン。“特別出演”とか“カメオ出演”という枠組みで、『ウエディング・クラッシャーズ』のウィル・フェレルのように最後にオイシイ所をかっさらう役かと思いきや、どうやら今回のオーウェンは“特別出演”の“特別”の部分を、“好きにやっていい”と思いきり勘違いしてしまったようで、基本的にずーっと出ずっぱり。ベン・スティラーに次ぐ登場時間の長さですし。それも、劇中の一番のウケ所を全て持っていってしまっているだけではなく、映画のオチまでも自分のものにしてしまう、“特別”っぷり。もちろん、褒めているんですよ。ちっちゃい割に威勢がよく、ヒョイと持ち上げられるとシュンとなるオーウェンが今回も堪らなく可愛いので、★ひとつオマケで。それが、なにか?

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コレ一個欲しい

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2007年03月24日

呪い村 436 (Population 436)

監督 マイケル・マックスウェル・マクラーレン 主演 ジェレミー・シスト
2006年 カナダ/アメリカ映画 92分 ホラー 採点★★★

かねてからある程度ヨボヨボになったら、海辺の小さな港町なり小さな島で釣りでもしながらのんびりと余生を過ごしたいなぁと考えてはいたんですが、なにせ“協調性”の意味を全く理解していない私なもんで、調和なり協調が重要となる小さなコミュニティで上手にやっていけるわけがないと、ようやく気付いた今日この頃

【ストーリー】
平和で静かな村“ロックウェル・フォールズ”を訪れた国勢調査員のケイディは、その村の人口が436人のまま100年以上も変動していない事実に気付く。一見平和そうに思えたこの村に不穏な空気を感じ取ったケイディは、何とか脱出を試みるが…。

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一人産まれれば一人死に、一人迷い込めば一人が殺される、人口数に非常に律儀な村を舞台にしたホラー。修学旅行生でパンパンになったバスでも迷い込んだらどんなことになるのか、興味も尽きませんが。
納屋一軒実際に燃やせない誰の目にも明らかな低予算で、結局この村を包む不思議な力がどんなものなのか曖昧なままで終わってしまう煮詰めの足りない脚本なのであるが、ストーリー自体は充分に面白い。それこそ『悪魔のいけにえ』や『蝋人形の館』などの“アメリカの田舎は怖いんだよ”作品の一本なのではあるが、表面上は脳天気ながらイマイチ理解出来ない不思議な力に悩まされ、後味の悪い結末を迎える様は、70年代のオカルト映画にも近い味わいを持っている。そんな味わいがある分、劇場で観ちゃえばだいぶアレな作品かもしれないが、深夜や土曜日の昼下がりにうっかりTVで観てしまう分には、本編の大部分は瞬く間に忘れてしまっても、「なんか変なのを観た」って記憶だけはいつまでも残るような作品になるのでは。

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心も身体も切なく痛い思いをする傑作『メイ』で、ジョン・トラヴォルタを髣髴させる人懐っこい笑顔が印象的だったジェレミー・シストは、本作でもますますトラヴォルタっぽく。そんなトラヴォルタっぽい主人公が、古き良きアメリカを再現しているかのような村に迷い込む作品なもんで、ついついソ連がスパイ養成用に時代遅れのアメリカ村を作り上げる『エキスパーツ』を思い出してしまうのだが、もちろん関連性は全くなし
で、そんなトラっぽい主人公以上に印象に残るのが、リンプ・ビズキットのフロントマン、フレッド・ダーストの好演。「なんで、こんなのに出たんだ?」という疑問はさておいて、主人公に騙されようが、婚約者を寝取られようが、ふらりと現れただけのよそ者である主人公を友達として慕いきってる切な過ぎる保安官助手を熱演。半ベソかきながら「友達だと思ってたのにー!」と主人公に詰め寄る姿には、リンプの面影微塵もなし。まぁ、そのお陰で本作が“田舎は怖いよ”映画としてだけではなく、“よそ者は信用しちゃダメよ”映画としての側面を持つことになるのですが。

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どこにも馴染めない私にとっては、“小さな村”ってだけでホラー

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2007年02月01日

のるかそるか (Let It Ride)

監督 ジョー・ピトカ 主演 リチャード・ドレイファス
1989年 アメリカ映画 86分 コメディ 採点★★★★

ギャンブルは人生そのものでもう沢山なので、パチンコにも競馬にも全く興味のないたおです。目が真横に付いた生き物や、利益率に基づいた確立が全てを支配する機械に大金をつぎ込む神経が全く理解出来ないのですが、それを楽しんでいる人にそんなことを言うのも無粋ってもんですので、敢えて言うまでも。でもどういうわけか、ギャンブル好きの人って、ギャンブルもやらず、深酒もせず、風俗にもキャバクラにも全く関心のない私みたいな人間を見ると、「何が楽しくて生きてるの?」みたいなことを聞いてくるんですよねぇ。いやぁ、楽しいことだらけなんですけどねぇ

【ストーリー】
ギャンブルが元で夫婦関係が悪化してしまったタクシー運転手のトロッターは、妻にギャンブルを辞める誓いをたてる。しかし、仲間が仕事中に偶然仕入れた競馬の八百長情報を聞き、「神の恵ぞ!」と競馬場へ。八百長レースだけではなく、全てのレースに勘が冴えまくり勝ち続けるトロッターだったが…。

lir3.jpg勝って勝って勝ちまくるだけの、ギャンブル好きのファンタジーのような外見を持つ本作であるが、作り手のギャンブラーに向けられる視線は非常に冷たい。そもそもが八百長をきっかけに勝ち続ける主人公が目にするのは、確実な情報が目の前にあるにも関わらず、猜疑心と欲に駆られ自滅し、その腹いせに主人公へ敵意を剥き出しにする“親友”と、「勝ち続けているのは情報を独り占めしてるからだ」と嫉妬と憎悪の視線を投げかける“仲間たち”の姿である。大金持ちが集まるジョッキークラブも似たようなもので、上っ面だけは整えている分、始末が悪い。主人公は彼らに自分の未来を見出し、勝ち続けるのとは裏腹に、欲に支配されたギャンブル熱が冷めていく。いくら勝っても、過去から積み重ねてきた借金をチャラにするのが精々という現実に気付くシーンは、サラっと描いているが、実に現実的で、実に上手い。
各レースの様子や、判定が出るまでのスリルは相当なものであるが、最後のレースは金銭を求めた賭けではなく、新たに人生をやり直す為の勝負として描かれ、その勝負に仲間たちは誰も同調せず、結局主人公に最後までついて来るのが、自分で賭けることはしない馬券売りと警備員と栄養が全て脳以外に行き渡った美女、そして妻だけというのも、ギャンブル映画にしてはギャンブラーにとことん冷たい。最後はなんとなく大円団で幕を閉じるが、まぁ、ちょっとした気遣い程度のアレですね。

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スピルバーグの分身的キャラクターとして、『ジョーズ』や『未知との遭遇』で印象深い存在感を示してきたリチャード・ドレイファス。小柄でのべつ幕なし喋りまくる彼は、子供の心のまま大人になったというよりは、子供が大人の着グルミを着ているようで、近作『ポセイドン』ではその味わいがめっきり少なくなっていたが、この当時はそのキャラクターを存分に活かしコメディでの成功が目立っていた時期。この頃のリチャード・ドレイファスを観ると、加藤茶に脳内変換されてしまうのだが、理由は不明。
そんなリチャード・ドレイファスと『未知との遭遇』で同じく夫婦役で共演し、いつまでも夢を見続けるが大人としての責任感にやや欠ける主人公の前に、社会と常識の象徴として立ちはだかり、夢見がちな観客を思う存分苛立たせたテリー・ガー。『未知との遭遇』といい、『アフター・アワーズ』といい、私のような幼稚な男にとって悪夢のような女性を演じさせれば天下一品の彼女だが、本作ではなんだかんだと言っても主人公についていく都合のいいキャラクター設定で、イライラ度も少なめ。とは言っても、充分致命傷になり得るイライラ感を生み出してくれていますが。
そのテリー・ガーからの現実逃避として存在するジェニファー・ティリー。脳を発達させるよりは身体を発達させる方が得だと判断したような女性を演じさせると、見事なまでに魅力を発揮する彼女。『チャイルド・プレイ/チャッキーの種』など最近はどうにも発達し過ぎて、当初の目的を見失ったかのような体型になってきているが、それでも全くめげずにこんなキャラクターを齢50にもなろうというのに続けているのは立派。立派過ぎ

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走っている姿を観ているだけでも充分楽しいんですがねぇ

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2007年01月13日

2番目のキス (Fever Pitch)

監督 ボビー・ファレリー/ピーター・ファレリー 主演 ドリュー・バリモア
2005年 アメリカ映画 103分 コメディ 採点★★★★

昼間は「釣りだ!野球だ!カブトムシだぁ!」と駆け回り、夜になればロックと格闘技を熱く語る。そして、それ以外の時間は大概映画を観ている私。時間が足りません。「なんで人間は寝なきゃならないんだ?」と、本能にまで文句をつけ始める私のような人間と一緒にいれる人は、逆に尊敬しちゃったりも。大変でしょうに。

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【ストーリー】
10月のボストン。キャリアウーマンのリンジーが出会った教師のベンは、優しさとユーモアに溢れた理想的な男性。順調に交際を続けるが、春が来ると事態は一変。ベンは筋金入りのレッドソックスファンであり、生活の全てがレッドソックスを中心に回っていた。始めこそベンに合わせて野球観戦をするリンジーだったが、あくまでレッドソックスが“一番”のベンとすれ違いが生じ始め…。

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25年目のキス』といい本作といい、数字と“キス”の組み合わせでタイトルが無尽蔵に湧き出てくるドリュー・バリモア。“沈黙”と“○撃”を組み合わせるセガールのようですねぇ
松坂大輔が移籍したことで俄然日本でも注目を集めた、ボストン・レッドソックスに対するファンの痛々しいまでの愛情と恋愛模様を絡めたラブコメディ。怪我人いじりにその片鱗はうかがえるものの、『メリーに首ったけ』のファレリー兄弟作にしてはだいぶ大人しめの印象ではあるが、“レッドソックスファン”自体がもう既にアレな存在なので、“アレをメインに据えた愛の物語”といういつもの構図と、アメリカ人にとっての野球の位置づけはしっかりと押さえてある。
“笑い”という面では問題がないものの、確かに都合の良過ぎる展開は否めない本作。周囲は善人ばかりで、結局は趣味を捨てずに愛する人を手にいれる展開は、モテない男のファンタジーとも言える。そんな都合のいい女性がいるのならば、七つの海を渡ってでも駆けつけたいものだ。しかし、そんなファンタジーな様相を持ちながらも、登場するキャラクター、野球、そしてそれらを育んだアメリカに対する愛情がたっぷりと注がれた本作には嫌いになる要素が全く見当たらず、乱暴なまでに趣味人で、弱小球団の本拠地を地元に持つ私としては他人事とはとても思えないので、満足度は高い。

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スクリーン上と実生活でモテない男の最後の砦として女神の如く君臨するドリュー・バリモア。“ふくよか”とまとめるにはちょっとアレだったチャーリーズ・エンジェル』の頃と比べると、驚くほどスマートになっているが、持ち前の愛くるしさは健在。キャリアウーマン役が似合っているかといえば、それはまた別問題なのだが、趣味に没頭する私のような輩でも“こんな彼女にめぐり合えるかもしれないよ”というファンタジーとしては、ドリューははまり役。
ドリューのテーマ曲ともいえるスパンダー・バレエの“トゥルー”こそは流れないものの、その代わりにヒューマン・リーグの“ファショネイション”が流れる相変らずの80年代趣味。この辺が、ファレリー兄弟作というよりはドリュー映画っぽさを前面に出している要因でも。とは言っても、「いつものドリュー映画だから安心だぁ」と油断していると、メイン州在住のホラーの帝王が突然ボールを投げつけてくるので、ご注意を。

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正直、羨ましいかぎりですよ

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2006年11月16日

ナイロビの蜂 (The Constant Gardener)

監督 フェルナンド・メイレレス 主演 レイフ・ファインズ
2005年 イギリス映画 128分 サスペンス 採点★★★★★

一部の比較的裕福な国を除いて、平均寿命が50歳代を軒並み割ってしまうアフリカ。平均寿命が30歳代の国も、決して少なくない。今これを書いている私の年齢まで生きれれば、御の字ということだ。エイズの患者数はうなぎのぼりで増え続け、坑ウィルス剤はおろか、まともな医療施設にすら窮するのが現状である。有益な資源である鉱石はことごとく欧米諸国に吸い上げられ、貧困にまみれた遠い国アフリカでは、たとえルワンダの大虐殺事件が起きようと、どこか遠い国の出来事として誰も関心を示さない。裏を返せば、恐ろしい話ではあるが、アフリカでは、何をやっても構わないと言うことになる。

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【ストーリー】
ケニアのナイロビで英国外務省一等書記官を務めるジャスティン。精力的にアフリカで救援活動を続ける妻のテッサの身を案じながらも、妻の活動に深く関与することもなく趣味のガーデニングに勤しむ日々を送っていた。しかしそんなある日、妻が救援活動中に何者かによって殺害されてしまう。通常の強盗殺人事件として処理されてしまうが、妻の遺品から不審な手紙を発見したジャスティンは、独自に調査を行い、妻が大手製薬会社による新薬の不法な人体実験と致命的な副作用を持つその新薬への隠蔽工作を追及していた事実を知る。これを足掛かりに妻を殺した真犯人を探そうとするジャスティンだが、彼にも大きな危険が近づいていた。

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『テイラー・オブ・パナマ』など映画化された作品も多いジョン・ル・カレの原作を、『シティ・オブ・ゴッド』のフェルナンド・メイレレスが手掛けた社会派サスペンス。まずはその美しい映像に、目が奪われる。眩いばかりの白を貴重とした映像で描く過ぎ去った美しき日々の思い出、その対比のようにいくつかの色が抜け落ちた不安定な手持ちカメラで写される残酷な現実、そして豊かな自然もバラック屋根の貧困街も包み隠さず映し出す鮮やかな発色の映像。これらの調和が、まず見事。『シティ・オブ・ゴッド』でブラジルの現実を真直ぐ見つめたメイレレス監督の視線は、アフリカに対しても同様だ。
『シティ・オブ・ゴッド』でも貧困と暴力にまみれた現状を描きながらも、青春映画として成立していた巧みなストーリーテリング術は、本作において更なる高みに達したと言える。大きく分けて4つに分けられる本作のライン。貧困と疫病と暴力の世界に生きることを強いられているアフリカの人々を描くライン、利益追求の為に大企業が行う非道な行為とそれの隠蔽に加担する国家を告発する社会派のライン、陰謀に巻き込まれた男のスパイ活劇すら思わせるサスペンスのライン、そして深い愛の存在に気付くロマンス。それぞれが見事に絡み合い、どれ一つ欠けてはいけない調和を果たしている。

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その中でも一番心を打つのが、やはりジャスティンとテッサの愛の物語である。歯に衣を着せず活動的で開けっぴろげな社交性を持つテッサに対し、ジャスティンは事なかれ主義である。その性格の違いからか、生前の彼らの結婚生活は見た目ほど幸せそうではない。“知るのが恐ろしい”から妻の行動に関与しなかった夫に対し、妻は夫を守りたいあまり関与をさせなかった。そのすれ違いが夫を疑心暗鬼に陥らせ、つまらぬ噂に翻弄され不安の中に生きることになる。ガーデニングに没頭する姿は、趣味と言うよりは現実逃避だ
妻の愛に確信の持てなかった彼の姿は、妻の死を持って一変する。妻の残したもの、追ったもの、見たもの全てを追体験する中で、いかに大きな愛で包まれていたかを知った彼が最後に取る行動は論議を呼ぶかも知れないが、あの瞬間にようやく彼らは本当に愛し合えたことは間違いない。

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その線の細さ故に大作では薄い印象になりがちなレイフ・ファインズだが、本作で見せる細やかな演技は絶品。線の細さがピッタリくる事なかれ主義の公務員の姿から、強い決意を胸にした眼差しの変化は見事なもの。行動的な力強さを内側から感じさせてくれた『コンスタンティン』のレイチェル・ワイズの影にすっかり隠れてしまった印象もあるが、ジャスティン役はあまりあくが強すぎても上手くいかないのではと。
大のお気に入りであるピート・ポスルスウェイトや、『ラブ・アクチュアリー』のビル・ナイ、すぐに感極まるいとこ役で人間味溢れる暖かみを作品に提供してくれたリチャード・マッケーブなど顔ぶれは非常に豪勢だが、本作の主役はやはりアフリカ。美しい自然を誇るアフリカ、貧困に苦しむアフリカ、音楽と色に溢れるアフリカ、エイズが蔓延するアフリカ。客が裕福な外国人ばかりのレストランで働く貧民街の住人。西洋的な作法で徹底されたその店で出される料理を口にすることもなければ、もちろん客として入ることも出来ない。世界の縮図が、たった一つのレストランでさえ表されている。
目の前の一人を救えても、その背後に待つ何万もの人々を全て同様に救うことの出来ないジレンマ。一人一人に手を差しのべていたら収拾が付かなくなってしまうのも事実。目の前の小事にとらわれず、大きな視野で根本的解決案を考えるのも正論。しかし、目の前の問題を解決しようとする強い意思がなければ、その後ろに控える大きな問題を解決できることはないのである。

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何が出来るか想像するだけでも充分

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posted by たお at 00:54 | Comment(16) | TrackBack(88) | 前にも観たアレ■な行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月16日

ニューヨーク東8番街の奇跡 (Batteries Not Included)

監督 マシュー・ロビンス 主演 ジェシカ・タンディ
1987年 アメリカ映画 107分 ファンタジー 採点★★★★

奇跡ってのは、個人を名指しで訪れるんじゃないんだろうなと。「あなたにだけ奇跡を起こします!」ってわけじゃなく、なにかしらが起きた時に、それを見たりその場にいたりした人それぞれが自由に解釈をするんでしょうね。人によっては「奇跡だぁ!」ってなるでしょうし、人によっては「ただ空からなんか眩しく光ったヒゲの人が降りてきただけじゃん」って。

【ストーリー】
高層ビル建設の為に立ち退きを要求され、悪質な地上げ屋に悩まされる老夫婦とその同じアパートの住人の前に、ある日ちいさなちいさなUFOがやって来る。壊れた物を何でも直すそのちいさな訪問者の出現で、住人達の心は一つになり、そしてある一つの奇跡を目の当たりにする。

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スピルバーグは大好きな監督であるのだが、『E.T.』以降自身のダークサイドに封印をしたのか、製作のみに携わった作品を含め甘ったるいケーキにたっぷりと練乳をかけたかのような作品を連発。その『シンドラーのリスト』まで10年以上も続いた暗黒期には、なまじ大好きだったが故に反動による嫌悪感も強く、その時期のスピルバーグ作品のほとんどを観ないで過ごしておりました。本作はその暗黒期ど真ん中の時期の作品で、もちろんノーマーク。ところが、先日『レディー・イン・ザ・ウォーター』を鑑賞した際に、「前にもアパートに何か変なの来る映画あったなぁ」と思い出したついでに鑑賞してみたら、なかなか面白いじゃないですか。
都合のやたらと良い御伽噺の外観を持っているのだが、その甘ったるい上っ面の反面、扱う題材は“土地開発に伴う立ち退き”“痴呆症”“老々介護”と深刻なものばかり。現実問題の深刻さを伝えつつ夢物語へと誘うのが御伽噺の定型だとすれば、本作はまさに現代の御伽噺である。厳しい現実を正面から捉えつつも、その現実に妖精を模したのであろうUFOを入り込ませ、一時だけの現実逃避をさせてくれる本作は、非常に心地が良い。老優たちの妙演、はっきりと絵と分かる背景による絵本的美術、柔らかい色合いに、愛嬌のあるUFO。それらの全てが、手作り感覚溢れる暖かみをこの作品に与えている。

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この作品の暖かみは、『コクーン』で再び脚光を浴びたジェシカ・タンディとヒューム・クローニンの息の合った妙演によるものが大きい。おしどり夫婦としても有名だった二人の掛け合いと、その間の良さは絶品である。
しかし、この作品最大の魅力はやはり素晴らしいまでに愛らしいUFO達であろう。『未知との遭遇』の小型UFOをより機械的なデザインにしたUFO達は、『未知との遭遇』のそれは形を明確にせず光の点として妖精の神秘性や無邪気さを表現したのに対し、本作のUFOは表情を持つことでよりダイレクトに、よりコミカルに感情表現を見せてくれる。“修理が大好き”というよりは“壊れた物が大嫌い”という性格以外は、“なぜ?”“何をしに?”と来訪理由がさっぱり分からない彼らだが、その“理由の分からなさ”は都合のよさを強調する為というよりは、神秘性を持たせる意味合いが強いのであろう。また、ストップモーションを用いたのであろうその多彩な動きは、気持ち悪いくらい滑らかに動くCGでは味わいにくいコミカルさと見た目以上の表情を持ち、もの凄く可愛い。今観てもさほど遜色ない特殊効果のレベルの高さにも驚く。
ややぶっきらぼうな展開や、糖分過多な印象は拭えないものの、たまらなくUFO達が可愛いので★ひとつオマケ。

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“電池別売り”って原題は、ずいぶんと味気ない気もしますが

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posted by たお at 02:49 | Comment(8) | TrackBack(3) | 前にも観たアレ■な行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月27日

25年目のキス (Never Been Kissed)

監督 ラージャ・ゴスネル 主演 ドリュー・バリモア
1999年 アメリカ映画 107分 コメディ 採点★★★★

楽しかったなぁ、高校。街のど真ん中にある私立高校で、部活もやっていなかったこともあり放課後は“楽しいことをする”ってことだけに専念してましたし。バンドのスタジオ代に小遣いのほとんどが消えている金欠状態の中、よくあれだけ一日中遊んでいれたなぁと。金がないとゴロゴロしているだけの今とは大違いです。

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【ストーリー】
“ブスのジョージー”と呼ばれ全くサエない高校時代を送っていたジョージーも、今では大手新聞社のコピーエディターとして頑張っていた。25年間恋愛経験はないが。そんなある日、オーナーの気まぐれで高校生の実態をルポするよう命じられ、17歳に化けて高校に潜入取材することに。

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高校生に成りすまし潜入取材を行い、10代の実態をリアルに書き上げ話題になったキャメロン・クロウの『初体験/リッジモント・ハイ』のドリュー版。主人公が高校時代に、超能力のない『キャリー』状態でイジメられていた設定にすることで、『初体験/リッジモント・ハイ』ではあまり明確に描かれていなかった高校の階級制度を浮き彫りに。『エレファント』でも書いたのであまり詳しくは書きませんが、アメフトの選手やチアガール等いかにもビバヒルな人種で構成される“ジョックス”、ガリ勉で将来大学へ進む為と辛い高校時代を耐え忍ぶ“ブレイン”、オタクでいじめられっ子の“ナード”、そのナード以上に負け犬のレッテルを貼られ世を呪い続ける“ゴス”。ジョックス>ブレイン>ナード>ゴスの序列は入学と同時に決定され、卒業まで覆ることがないと言われているそうな。
で、本作は高校時代に“ブレイン”としてイジメを受けていたドリューが、仕事ついでに高校再デビューを目論む物語がベースとなるのだが、フラッシュバックされる高校時代の痛々しさに時代錯誤が加わってしまい更に痛々しくなってしまったドリューの姿に、笑った方がいいのか泣いた方がいいのか分からなくなるほどのインパクトを。結局居心地のいい“ブレイン”のグループに居場所を見出してしまう姿にも、甘ったるいラブコメの要素は感じられない。しかしそこはドリューの存在感と題材選びの上手さ。単純なラブコメとして終わらせず、高校生の実態とそれに対する意見をサラリと盛り込み、ポップな色取りとドリューの変貌振りで見た目に飽きさせず、その変貌振りからシンデレラストーリーとしての側面も強化してあるので、いつの間にかラブロマンスとして終わる物語に違和感も嫌味も全く感じない。“他愛のないラブコメ”として処理するにはもったいない一本。それにしても、女性はメイクと髪形一つで、ホント変わるもんですねぇ。可愛いからって、迂闊について行かないよう気をつけます

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基本的には“ドリューありき”の作品であるのだが、脇もなかなか手堅い。
ドリューの弟役として、その天性の明るさを思う存分発揮するデヴィッド・アークエット。フェリス・ビューラーから知性を全て取っ払い、明るさだけを残したかのような彼の存在感がこの作品に与えた影響はでかい。食わせ者だらけのアークエット家(特にアレクシス)出身なだけあって、ただ明るいだけではないのでしょうが。芸風が『ハードロック・ハイジャック』の頃から全く変わってないのも魅力。
スラリと伸びたスレンダーな体型に、シャンプーのいい匂いがしそうなストレートヘアー、それにメガネというある種の人達の心を鷲掴みにする最強アイテムを取り揃えたリーリー・ソビエスキー。えぇ、私もメロメロでしたよ。ヘレン・ハントも好きですし。それが、何か?一昔前なら“メガネを取ったら美少女”ってとこが高得点だったんでしょうが、今なら「メガネを取るなー!」と大騒ぎする方々もいらっしゃるでしょうね。
一般的には『ファンタスティック・フォー』や『シン・シティ』のジェシカ・アルバが出ているってのが注目ポイントなんでしょうが、あんまり好きではないのでここではパス。『ダーク・ウォーター』等のジョン・C・ライリーも捨て難いですが、やっぱりここでの注目は、アダム・サンドラー作品に欠かせないアレン・コヴァートとお馴染みウィルソン兄弟の長兄アンドリュー・ウィルソン。まぁ、どちらもちょろっとしか出てないんですけどね。
あ、そう言えばドリューの作品に「ドリューのテーマソングか?」って思う程、ほぼ必ず流れるスパンダー・バレエの“トゥルー”が流れてませんでしたねぇ。

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あ、肝心の相手役のこと書くのスッカリ忘れてた

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posted by たお at 12:40 | Comment(8) | TrackBack(12) | 前にも観たアレ■な行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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