監督 ベン・アフレック 主演 ベン・アフレック
2010年 アメリカ映画 150分 ドラマ 採点★★★★
私が生まれた田舎町は、県内で一番大きな街である仙台まで電車一本で行けるってこともあってか、駅前にはサラリーマン族や商店などちょっと裕福な人が集まり、線路を挟んだ反対側には、長屋のようなボロボロの公営住宅に住む貧困層が住む、小さいながらも真っ二つに分かれていた町。同じ小学校に通いながらも双方ほとんど交流はなく、私の両親も口には出さないものの、「
向こう側の子とは遊んじゃダメだよ」って雰囲気を常に感じさせてたもので。何かの用でその長屋街を通る時は、知らず知らずのうちに誰にも目が合わないように俯きながら急ぎ足で通り過ぎる癖が付いていたものです。それでも時折彼らの生活の様子が目に入り、開け放たれた窓の奥の物やゴミで散乱した部屋の中、その隙間を縫うように真昼間から寝転がる両親をしり目に、ボーっとテレビを見続けている同級生の姿を見た時は、子供ながらに哀しい気分になったものです。子供ってのは、
親を選べないのと同様に住む町も選べないんですよねぇ。

【ストーリー】
ボストンのチャールズタウン。強盗多発地帯であるこの街で生まれ育ったダグは、かつては持っていた夢に破れ、今では獄中にいる父親同様に強盗を生業とするプロの犯罪者になっていた。そんなダグら強盗チームはとある銀行を襲い強盗を成功させるが、已む無く女性支店長を一時的に人質としてしまう。程なく彼女を解放するも、彼女が同じ街の住人であったことから自分たちの正体がばれてしまう不安に駆られたダグは、探りを入れる為に彼女に接触するも、図らずも恋に落ちてしまう。彼女と新しい人生を歩む為に足を洗おうとするダグであったが、街の顔役はそれを許さず…。

『
ゴーン・ベイビー・ゴーン』で映像作家として素晴らしい才能を発揮したベン・アフレックが、今度は主演も兼任し犯罪地区に暮らす住人の生き様を見事に描き出した犯罪アクションドラマ。
マイケル・マンであればその美学なり散り様に注力しそうな題材だが、港町に住む人間がごく普通に漁について熟知しているのと同様に、犯罪が身近を通り越して生活の一部になっている様を、“街”にこだわりを持つベン・アフレックらしいタッチで描き出す本作。
歴史感じる美しい街並みとは裏腹に、
特産品が“強盗”という特異な状況下にありながらも、街の生活を詳細に描くことで、強盗が特異ではなくごくごく日常の一部でしかないと描き出す。しかしながら、それが日常と感じているのはあくまでその街の犯罪者だけであり、すぐそばに住む一般人にとっては異常な状況には変わりない。目と鼻の先で暮らしながらも、基本的に交わることはなく、
交わる時は概ね被害者と加害者の関係に。その加害者側であるダグと被害者側であるクレアの間に恋愛感情が生まれ、共に大きな変化を迎えていく様は犯罪ドラマに限らず定番な流れではあるが、街の顔役の存在こそあれど、あくまでダグが囚われているのは組織ではなく、生まれ育った“街”であるというテーマが非常に興味深い。
そのドラマや状況を丁寧に描きながらも、要所要所にリアルで見応えのあるアクションシーンを挟み込み、幼少期に別れた母親に対して持っていた美しい幻想が脆くも崩れ去る現実の残酷さや醜さまでをも盛り込みながら、決して崩れる事の無いバランス感覚で描き出したベン・アフレックの手腕は見事。オレンジ(タンジェリン)一個で、ダグとクレアの間に細いながらも一本の線を結んで締める幕引きも非常に上手い。また、利便性からも合成が主流になりつつある映画製作においても、現地野外ロケにこだわるスタイルも、そしてそこから得れる結果も非常に好みの仕上がり。ボストンに対して、レッドソックスと紅葉と
絞殺魔くらいしかイメージがなかったんですが、これからはそこにベン・アフレックを加えなきゃなぁと。

監督・主演を見事に兼任した今回のベン・アフレック。何を言おうが所詮犯罪者でしかない主人公を、持ち前の
下級生を苛めて喜んでそうな実直さと卑しさが混じった顔立ちで好演。「あー見えて頭が良い」ってのは常に言われてた事ですが、二本の監督作を観る限り、勉強が出来る秀才肌ってのより、何事に対しても要領の良い天才肌の持ち主なんだろうなぁと。
そんなベン・アフレックを筆頭に、『
28週後...』のジェレミー・レナーや、『
ゴーン・ベイビー・ゴーン』でも気の良いギャングを好演していたスレイン、出てくる度に「あ!コビャヤシだぁ!」と得した気分になって嬉しくなるんで大好きな役者であったが、残念ながら今年の初めに亡くなられてしまった『
インセプション』のピート・ポスルスウェイトなど、“犯罪者らしく見える”という基本に則った
前科がありそうな良い顔立ちの役者が集まっているのも好印象。
その他にも、『
地球が静止する日』のジョン・ハムや、『
プレステージ』のレベッカ・ホール、『
かいじゅうたちのいるところ』のクリス・クーパーらが共演。中でも、司法取引で子供を手元に置けたとしても、あの様子じゃ
遅かれ早かれ子供は施設行きなんだろうなぁと思いを馳せてしまった、『
クリープス』のジェイソン・ライヴリーを兄に持つブレイク・ライヴリーのトラッシュっぷりが印象的。『
ゴーン・ベイビー・ゴーン』にしろ本作にしろ、ベン・アフレックってトラッシュの描き方が上手いなぁ。
今回は、劇場公開版に20分以上のシーンを追加したエクステンデッド・バージョンで観賞。状況や関係図を描く前半に多くのシーンが加えられてたんですが、150分という長尺さを感じさせないテンポの良さで。そう言えば、ブルーレイだと未公開シーンになると、画面の上に“ここが未公開でござい!”ってなマークが出るんですねぇ。観比べるってことを考えると、
あれは良いなぁ。

祖母の実家がウォーターメロンだったらバッグがパンパンに
↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓