2012年04月30日

ドリル・マーダーズ 美少女猟奇殺人事件 (Mørke sjeler)

監督 マチュー・プトゥル/セザール・デュカス 主演 モッテン・ルードー
2010年 ノルウェー/フランス映画 95分 ホラー 採点★★★

ゴールデン・ウィークですねぇ。きっと世間の皆さんは、遅々として進まない高速道路の車内で尿意と戦ってたり、ようやく着いたパーキングのトイレに出来た長蛇の列に絶望したりしてるんでしょうねぇ。羨ましい限りで。うちの家族も女房の実家に遊びに行きましたが、生憎普通に仕事の私はお留守番。まぁ、そんな時は気兼ねなく大音量でホラー映画を観て過ごすのも一興かと。

mosj4.jpg

【ストーリー】
電動ドリルで頭部に穴をあける連続殺人事件が発生。驚くことにその被害者全てが蘇るのだが、彼らは口から黒い液体を垂れ流す生きる屍のような存在に豹変していた。警察の捜査が一向に進まない中、被害者の父親で音楽家のラーヴンは執念深く犯人捜しを続け、ようやく怪しい人物を見つけるのだが…。

mosj2.jpg

世界中のホラー映画祭で話題を呼んだという、様々なホラー要素を詰め込んだノルウェイ産闇鍋ホラー。
スラッシャーホラー風に始まったかと思いきや、ゾンビ映画風に変化して、父娘の物悲しい家族愛を描いたと思ったら、デヴィッド・リンチの映画にでも出てきそうな変な老人が現れて、気が付いたら人類滅亡風の結末を迎える、なんとも展開の忙しい本作。なんか、ジョン・カーペンターの『パラダイム』みたい。作品自体はマッタリしてるってのも一緒で。
そんなアレコレ詰め込んだ作品ではあるが、奇をてらったと言うよりは好きなものに対する素直な姿勢が如実に出たって感じが好印象。先に挙げたカーペンターやクトゥルフ神話っぽい雰囲気、同じゾンビでもロメロと言うよりはフルチ的な世界観に、Jホラー風演出を取り込むなど非常に貪欲な姿勢も良い。古より地底に潜む邪悪な何かを解き放ってしまったってのは分かるのだが、ちょいと雰囲気重視に走り過ぎたせいか“何が?何で?”って疑問も大いに出てくるし、胸周辺を中心に目を奪われる女性が多く出てくる割に色気もゴアっ気も少ないって失望感もなきにしろあらずなんですけど、“禁断の扉を開けてしまった故に終わりが始まった”的雰囲気が好きだったんで、評価は然程低くなく。まぁ、人を選ぶ作品だとは思うんですけど。

mosj3.jpg
美女ばかりとは限らず

↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓
人気ブログをblogramで分析   

        

        

posted by たお at 12:33 | Comment(0) | TrackBack(2) | 前にも観たアレ■た行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月24日

ツインズ・エフェクト (千機變)

監督 ダンテ・ラム 主演 シャーリーン・チョイ
2003年 香港映画 107分 アクション 採点★★

“アイドル映画”って、演技がまともに出来ないアイドルであっても、その本人が持つ輝きを更に際立たせる舞台を作り手がしっかりと用意してこそ成立する物だと思うんですよねぇ。普通の映画にアイドルをただ放り込んでも、演技の酷さが単に目立つだけですし。まぁ、“親しみやすさ”と“安っぽさ”を履き違えてる昨今のアイドルにその輝きがあるかどうかってのもそうですけど、「アイドルだから、まぁこんなもんで」と作り手も受け手もハードルを下げてしまってるのも問題だとは思うんですが。

twef1.jpg

【ストーリー】
ヴァンパイアハンターのリーヴに新しい助手のジプシーがメロメロになってたり、リーヴの妹ヘレンとジプシーが喧嘩してたり、ヘレンの新しい彼氏カザフが吸血鬼一族の王子様だったりしてテンヤワンヤな最中、昼も歩けるようになるっていう秘伝の書を狙う悪い吸血鬼が現れて大変だって感じの物語。

twef4.jpg

当時人気絶頂にいた香港のアイドルユニット“Twins”を主演に迎え、アクション監督を『かちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲート』のドニー・イェンが務め、クレジットはされてないがジャッキー・チェンもスタントにひと噛みする鉄壁の布陣で作り上げられた、ヴァンパイア・アイドル・アクション。
ドニー・イェンが『ブレイド2』気分抜けきれぬまま参加したからかどうかは定かじゃありませんが、要は“Twins版ブレイド”な本作。“イケメン吸血鬼ハンターと新人助手のロマンス”ってのと“私の彼は吸血鬼の王子様!”っていう、なんか少女マンガみたいなネタをメインの軸に、アイドル映画の範疇を優に越えてしまっているアクションと笑いを詰め込み、若い娘の騒々しさをたんまりと放り込んで煮詰めた闇鍋的な一品に仕上がっている。なんともけたたましい闇鍋で。
その味わいの珍妙さもさることながら、ゲスト出演であるはずのジャッキーと『エンター・ザ・フェニックス』のカレン・モクのシークエンスが異様に長かったりする、大人の事情が見え隠れするアンバランスさは気になる所であるし、あれこれ放り込んだネタも詰め込んだだけって甘さも。ただまぁ、映画の良し悪しだけでは測れないエネルギーというか勢いがあるってのも事実で、老体には若干堪えますがこの騒々しさは否定できないなぁと。

twef2.jpg

遠目で見てる分には可愛いが近寄られたら鬱陶しいことこの上ない主人公二人に扮したのは、『ドラゴン・プロジェクト』のジリアン・チョンと、『妄想 diary』のシャーリーン・チョイ。色んなものが弾け切った若さ溢れるこの騒々しさには恐怖すら覚えちゃいますが、今となっては例の一件のせいで観ていて切ない気分に陥る瞬間も。
その他、なんか長い髪を風になびかせてる印象ばかりある『風雲 ストームライダーズ』のイーキン・チェンや、『コンテイジョン』のジョシー・ホー、まぁ被害者でもあるんですけど、やっぱり見る度に腹立たしさが募ってしまう呪怨 パンデミック』のエディソン・チャンらがキャストの中心に。
もうこれだけでも充分豪華なんですが、それで済ませないのも本作の魅力。先に挙げたジャッキーとカレン・モクが絶妙なコンビネーションで、前後の流れからは浮いてはいるが大人の笑いってのを見せつけてくれているし、なんと言っても『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』のアンソニー・ウォンが、弾け過ぎてバラバラになりそうな本作をしっかりと締める良い仕事を見せてくれてるのが嬉しい限りで。

twef3.jpg
はっちゃける時は捨て身で

↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓
人気ブログをblogramで分析   

        

        

posted by たお at 13:45 | Comment(0) | TrackBack(1) | 前にも観たアレ■た行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月26日

ドッグ・ソルジャー (Dog Soldiers)

監督 ニール・マーシャル 主演 ショーン・パートウィー
2002年 イギリス/ルクセンブルグ/アメリカ映画 105分 ホラー 採点★★★★

某大手映画サイトを覗くと、そこに投稿されているユーザーの作品に対するコメントの中に随分とアレなものがチラホラと。楽しむべきポイントや観るべき個所を無視して、ひたすら貶すポイントのみを探して観賞してるかのようなコメントの数々に、「この人達って、映画観てて楽しいのかなぁ?」と思ったりも。まぁ、貶す事で自尊心を保つタイプの人たちなんでしょうけど、なんと言うか苛められっ子がより弱いものを苛めてるような感じでイヤだなぁと。既に認められている作品や名人の域に達した映画人など、権威に対しては盾突かず無条件に尻尾を振るだけってとこも似たような感じがしますし。

doso1.jpg

【ストーリー】
演習のために山奥へとやって来た、ウェルズ軍曹率いるイギリス軍小隊。先に現地入りしている精鋭部隊の目を掻い潜って目的地を目指す訓練であったが、その最中に救助信号を目撃した彼らは即座に現場へ向かったのだが、そこには襲撃され無残な姿となった精鋭部隊の野営地と、何者かによって深い傷を負わされたライアン大尉のみが残されていた。そして彼らもまた、正体不明の恐ろしい敵に襲われることになり…。

doso4.jpg

狼男一家に襲われるイギリス軍兵士の恐怖の一夜を描いたモンスターホラー。監督・脚本・編集を手掛けたのは、本作が長編デビューとなる『ディセント』『センチュリオン』のニール・マーシャル。
自分の好きなものだけで出来ていた『ドゥームズデイ』のニール・マーシャルだが、その“好きなものに対してとっても素直”ってのが早くも如実に出ていた本作。イギリス特産の狼男伝承を『エイリアン2』や『ズール戦争』『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』のシチュエーションに放り込み、ブルース・キャンベルって役名のキャラを出す事で『死霊のはらわた』からの影響を包み隠さず表明し、こぼれ出た自分の内臓を見て「ソーセージだぁ!」って喚いたり、はみ出た内臓を犬と引っ張り合いしたりする独特のユーモアとアクションも程良くブレンドされた、「ボクはこんなのが好きです!」って自己紹介としては理想的な作品に仕上がっている。
好きなものだけごった煮映画だと、得てして肝心のメインの題材が霞んでしまうことが多いのだが、ホラー映画としての恐怖感、そして何よりも狼男には欠かせない悲哀ってのをしっかりと打ち出せているのが見事な一本。『処刑島』のショーン・パートウィーや『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』のケヴィン・マクキッド、『タイタンの戦い』のリーアム・カニンガムに『ドゥームズデイ』のダーレン・モーフィットらが演じるキャラクターも、ちゃんと性格分けがされているのも上手いなぁと。また、要所要所で派手に血飛沫を上げる、『ヘル・レイザー』『イベント・ホライゾン』のボブ・キーンによる特殊メイクも効果的。確かに低予算の粗を隠す為か画面は暗いし、やや展開も唐突な印象もあるのだが、そんな些細な問題点を補って余りある面白味に溢れた本作。まぁ、私が多少暗い位で誰がどこに居るのか見失う極端な鳥目じゃないし、見えない部分は脳内補完してしまう甘い性格ってのもあるんでしょうけど、そこに不満を集中させるにはもったいない作品だよなぁと。

doso2.jpg
ハッキリクッキリばかりが映画じゃない

↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓
blogram投票ボタン   

        

        

posted by たお at 13:40 | Comment(2) | TrackBack(1) | 前にも観たアレ■た行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月19日

10日間で彼女の心をうばう方法 (Management)

監督 スティーヴン・ベルバー 主演 スティーヴ・ザーン
2008年 アメリカ映画 94分 ラブロマンス 採点★★

誰かを好きになる時ってのは、大体において自分の片想いからスタートする私。「好きです!」なんてことを向こうから言われる夢のような出来事なんざ、数えるほどもなし。言われる時に限って、既に彼女が居たりしますし。そんな片想いの最中って、相手の動向を慎重に見ながら「これ言ったら嫌われるかなぁ?」「あれやったら嫌われるかなぁ?」と、ついついマイナス方向に考えがちなんですが、世の中には相手の言動を全て自分の都合の良い方に解釈する人ってのも少なくないらしいですねぇ。羨ましいというか、ハタ迷惑というか。

mana3.jpg

【ストーリー】
両親が経営するアリゾナ州のモーテルで夜間マネージャーとして、なんの遣り甲斐も感じないまま働くマイク。そんなある日、出張で訪れた美人画商スーに一目惚れ。彼女の気まぐれもあり一度だけ割り切った関係を結ぶマイクだったが、割り切りの通じないマイクは彼女を追って遥々メリーランド州の彼女のもとへと向かい…。

mana4.jpg

10日間の物語でもなければ、今更“10日間で○○”ってキーワードを平気で付けちゃう邦題担当者の語彙の乏しさにまず呆れ返る、ジェニファー・アニストンが製作総指揮も務めたラブコメディ。
顧客に一目惚れした男が、彼女を追い掛けてる内に人間的変化と成長を迎える物語って言えば聞こえは良いが、要はストーカーの話。もちろん“ストーキング”ってのをモチーフにしながらも、そこに笑いや人間ドラマを盛り込んで丸く収めようとはしているんだが、その辺が“意味ありげ”ってだけに留まってしまってるので、主人公のストーカー思考ばかりが際立つ残念な結果に。“残念”と言うより、宿泊客の部屋に押し入り、大陸またいで追い回し、勝手に彼女の“本当の姿”ってのを決めつける主人公の行為は、もうただただ怖い
これで彼女の方が単に迷惑するだけだったらコメディとして成立するのだが、困った人に手を差し伸べてしまう性質とはいえ、嫌われ者に徹せない生ぬるい対応でストーカーに気をもたせるだけの、もうなんとも観ていてイライラする役柄なのも困りもので。そこを否定したら元も子もないんですが、押しかけてきた見ず知らずの男と寝てしまう出だしからして無理があるなぁと思いますし。もちろんそんな目に遭ったら、「ヒャッホーィ!」と小躍りしてしまいますけど

mana1.jpg

マイクに扮したのは、この作品を手に取った理由のほとんどを占める『グレッグのダメ日記』のスティーヴ・ザーン。行動力がちょっと人とは違うベクトルで発揮される自立できないダメ中年男を上手く演じてたんですが、同じダメ男でも無節操で屈託のない可愛げのあるザーンを観たかったなぁと。
一方、気まぐれでエッチしてくれるのは有難いんですが、彼女にするにはちょっと勘弁願いたいスーに扮したのは、『ウソツキは結婚のはじまり』のジェニファー・アニストン。深く考えてそうで結局何にも考えてないスー役には、嫌味も過剰な色気もない親しみやすさが売りのジェニファー・アニストンは向いてないのかなぁと。ツンとしたキャリアウーマンをイメージしたのかも知れないんですが、茶色の髪色はただ老けて見えただけの残念な感じでしたし。
ちょいと不満の多い作品ではあったんですけど、素と役柄の区別がだんだん付かなくなってきた『ゾンビランド』のウディ・ハレルソンや、接客業姿が見事なまでに似合わないアーマード 武装地帯』のフレッド・ウォード、『沈黙の啓示 TRUE JUSTICE PART2』のツィ・マーなど、好みの役者を見れたのは嬉しかったかなぁと。使用されてた楽曲も良い感じでしたし。

mana2.jpg
“早い段階からハッキリした態度を示しておこう”って啓蒙映画?

↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓
blogram投票ボタン   

        

        

posted by たお at 10:58 | Comment(2) | TrackBack(1) | 前にも観たアレ■た行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月15日

トライアングル (Triangle)

監督 クリストファー・スミス 主演 メリッサ・ジョージ
2009年 イギリス/オーストラリア映画 99分 ホラー 採点★★★

思いも付かない理由と想像を遥かに超えた方法で児童虐待を繰り返す、動物としても壊れ切ってる輩は別にして、子育てってもうちょっとサボってもいいと思うんですよねぇ。「親なんだから」って概念に囚われ過ぎて心身ともに疲弊してしまう位なら、ちょっと逃げ出して我を取り戻した方が子供にとっても親にとっても良いのではと。「イライラしちゃいけない」じゃなくて、「イライラして当たり前。自分だけじゃない」位のスタンスで。まぁ、子育てをサボり過ぎの私が言うのも説得力皆無なんですけどね。

tria2.jpg

【ストーリー】
自閉症の息子を持つシングルマザーのジェスは、友人らと共に気分転換にヨットセーリングに出向く。しかし天候が急変、ヨットは転覆してしまう。そこへ突如大型客船が現れ、彼らは命からがらその船へと乗り込むのだが、船内に潜んでいた謎の殺人鬼により彼らは一人一人殺されていく。一人生き残ったジェスは辛うじて殺人鬼を倒し安堵するが、外に目を向けた彼女が見たものは、客船に乗り込もうとする自分たちの姿で…。

tria1.jpg

0:34 レイジ 34 フン』のクリストファー・スミスによる、自分が自分を殺さなければならない悪夢のような無限ループにハマってしまった女性の姿を描く、無間地獄不条理ホラー。主演は『30デイズ・ナイト』のメリッサ・ジョージ。
襲いかかって来る自分を自分で倒し、生き残った自分が新たにやって来る自分に殺される。不条理にも程がある展開の中、主人公は我が子のもとに帰りたい一心で自分と友人らを殺し続けるのだが、その肝心の息子に対し何か取り返しのつかない事をしでかしてしまった嫌な空気が序盤から濃密に漂っているので、救いもゴールも全く見えない息苦しさが圧巻。何かパターンから外れたことを行って転機を求めるも、それですら無数に繰り返されてきたことであると判明する、まさに抜け出す事の出来ない無間地獄のようでも。スタート地点と思われていたのが無数に繰り返されていた途中でしかなく、帰着点がまた振り出しに戻るメビウスの輪のような物語なので「どんな映画なの?」と聞かれると答えに窮してしまうのだが、現実世界からほんの少しずれ込んだ世界に落ちてしまう“トワイライト・ゾーン”と、母子の悲痛な過去を描いた『アザーズ』に、『シャイニング』の閉塞感を加えたような感じってことでボンヤリと理解してもらえればと。
若干作り手の頭の中でワンパクに膨らみ過ぎちゃって画がそこに全く追い付いていない感も多々あるし、他人の地獄に巻き込まれてしまってる他の登場人物のトバッチリ感もハンパないのだが、「最初にトランクに入れられてたのって、多分○○なんだろうなぁ」とか「あの運転手が○○なんだな」とか観賞後に色々想像して楽しむ事も出来る、しばらくは印象に残る一本に仕上がってた作品なので、満足度は低くない。
因みに、ちょいとネタバレにはなってしまうんですけど物語の発端に関する私の予想はこんな感じ。ヨットセーリングに出掛ける直前にぐずった○○に対してキレてしまった主人公が、日々の虐待の延長で○○を殺害。その死体をトランクに入れて車で走行中に事故に遭い死亡。とんでもない後悔を抱え死んでも死にきれない主人公がやり直しを試みるも、結局は何も解決できない絶望の無限ループに。うわぁ…、なんとも救いようのない物語に。

tria3.jpg
Another One Bites the Dust

↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓
blogram投票ボタン   

        

        

posted by たお at 11:30 | Comment(2) | TrackBack(7) | 前にも観たアレ■た行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月24日

ドラゴン・タトゥーの女 (The Girl with the Dragon Tattoo)

監督 デヴィッド・フィンチャー 主演 ダニエル・クレイグ
2011年 アメリカ/スウェーデン/イギリス/ドイツ映画 158分 サスペンス 採点★★★

非常に当たり前の事なんですが、どんな国だって暗部ってのはあるんですよねぇ。もう、福祉大国だろうが安全・清潔を売りにした国だろうが、悪人はいるし被害者もいる。掘り起こしてもらいたくない過去だって、たんまりとあるはず。“微笑みの国”タイだって、別にみんな四六時中微笑んでる訳じゃないですし。まぁ、微笑んでたら微笑んでたで、すっげぇイヤですけど。

gwdt1.jpg

【ストーリー】
名誉棄損裁判で敗訴し窮地に陥った社会派雑誌“ミレニアム”のジャーナリスト、ミカエル。そんな中、彼は巨大財閥の元会長ヘンリック・ヴァンゲルからある調査を依頼される。それは、40年前に忽然と姿を消したヘンリックの姪ハリエットの事件の再調査であった。ヘンリックの弁護士から紹介された、社会性は全くないが卓越した情報収集能力を持つ少女リスベットと共に迷宮入りした事件を調べ始めた二人だったが、やがてこの財閥一族に隠された忌まわしき過去が明るみになり始め…。

gwdt3.jpg

ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』として映画化されたスティーグ・ラーソンのベストセラー小説を、『ソーシャル・ネットワーク』のデヴィッド・フィンチャーが再映画化したサスペンス。
メタリックでインモラルで暴力的なタイトルバックに轟音で被さる、トレント・レズナーとカレン・O、アッティカ・ロスによるレッド・ツェッペリンの『移民の歌』のカバー。「フィンチャー、レズナー、クレイグのトリオで007の新作を作って欲しい!」と強烈に思わせる、この完璧すぎるオープニングで幕を開けた本作だが、残りの2時間半はもうひたすら忍耐力との勝負に。清潔で社会福祉も整備され、過去にはナチスから逃れてきたユダヤ人を多く匿った“善良”のイメージがあるスウェーデンではあるが、その一方で親ナチ派も非常に多かった事実や、男どもによって辱められ、打ちのめされ、殺されていく女性たちの姿は非常に強烈ではあるのだが、その社会の暗部を暴露するある意味硬派な実話ナックルズみたいなネタだけで引っ張るには、このランニングタイムはやはり長すぎる印象も。
映画としての面構えはスウェーデン版とは比べ物にならないほど向上した本作。状況や人物の紹介も非常にスムーズで、多少込み入る序盤にも乗り遅れる事のない作りも上手い。ただ、「毎年花を贈って来るのは、姪を殺した犯人に違いない!」と、どこかで姪が元気にしてると考えるのが自然な気もするが、一族の誰かに殺されたに違いないという思い込みと、メモに残された名前と数字の羅列が同じ名前の人の電話番号と一致していたって偶然、海外にいる親族とは顔を合わせないって前提は、やっぱりミステリーとしては弱いと思わざるを得ず、それが映画作品として完成度が高まった分粗さとして目立ってしまい、そこを補う為に暴力的でセンセーショナルな描写を散らしてみたって印象を受ける結果に。

gwdt2.jpg

ミステリーとしては幾分アレな印象もあった本作だが、リスベットという非常にユニークなキャラクターに関しては非常に面白い。膨大な情報を瞬時に記憶し的確に処理する卓越した能力を持ちながらも、社会性は皆無で暴力的、善悪の基準も非常にざっくばらんなリスベット。タトゥーにピアス、モヒカンに黒ずくめのファッションは他者を寄せ付けない。しかし、その威嚇的なファッションは彼女の武器ではなく防具。社会不適合者である彼女は害悪として爪弾きにされ、弱みに付け込む変態によって痛みつけられる。彼女の立ち居振る舞いと外見は、全て外敵と内なる脆さから守るためのようでも。
そんな全てを拒むかのようなリスベットだが、裏も表も全て知り尽くした上での判断か、唯一ミカエルには彼女なりの方法で心を許している。傷付いたミカエルをその身体で慰め、他人には語りたくない忌まわしき過去を語り、彼の宿敵を葬り去る、言動とは裏腹の健気な姿を。それだけに留まらず、ミカエルが幸せだった時に着ていたレザージャケットと同じ物を、足を棒にしてまで捜し出したのであろう姿には、明確に“愛”が描かれている。
好みは分かれる所であろうが、他者との距離感を上手く掴む事の出来ないリスベットが、“どれだけ愛すれば充分なのか?”を分からないままミカエルを愛する物語としての側面を強めたのは、非常に功を奏していたのではと。そここそが、『ソーシャル・ネットワーク』でリスベット同様に社会に適合できない男の姿を撮り上げたフィンチャーの描きたかった部分なのかも知れないし、繊細過ぎる故に音楽で自己破壊を進めていったトレント・レズナーにとってもうってつけの題材。本作のエンディングに、『レジェンド/光と闇の伝説』のアメリカ公開版でのみ流れていた、今じゃもう誰も覚えていないようなブライアン・フェリーの“Is Your Love Strong Enough? ”のカバー(トレントの嫁さんとアッティカ・ロスも参加するハウ・トゥ・デストロイ・エンジェルス名義)を収録したのも、そこをテーマとして強めたかったからなのかと。

gwdt5.jpg

ミカエルに扮したのは、『007/慰めの報酬』『ジャケット』のダニエル・クレイグ。ジェームズ・ボンドってよりは『007/ロシアより愛をこめて』のレッドみたいな風貌の彼だからこそ、身を切るような寒さ伝わる北欧の地が似合う。ハリウッド顔では、さすがにここまでハマらなかっただろうなぁと。もちろんその顔立ちは土地に似合うだけではなく、正義感以上の意志の強さをも感じさせ、毒づきぼやきながらも仕事を全うする“強い男”ってのを好演。まぁ、若干強過ぎちゃってどんな状況にも安心感が生まれちゃってるし、若い娘に翻弄されアワアワしてるってよりは、上手い具合に乗りこなすモテ男っぷりが全面に出ちゃってもいましたが。
一方、ヘルメットを脱いでもモヒカンが立派に保たれていたリスベットに扮したのは、『エルム街の悪夢』のルーニー・マーラー。きっとなにかとノオミ・ラパスと比べられてしまうのだろうが、実父を憎悪しながらも、心の拠り所となる大人の男性を求めている弱さと脆さをより感じさせてくれる彼女の方が案外好きかも。尻尾を出した犯人を追う前に、ミカエルに対し「殺してもいい?」と確認する姿もちょっと可愛かったですし。必要な情報をミカエルが得たかどうかを確認したかったんでしょうけど、自分の行動でミカエルに嫌われる事を避けたいがための言葉にも思えて、なんとも健気だなぁと。
その他、再映画化の話を聞いた時は舞台が舞台だけにマックス・フォン・シドーが演じるものと思っていたヘンリック役に、『インサイド・マン』のクリストファー・プラマー、夫ある身ながらミカエルと肉体関係を続けるエリカ役に、『アンブレイカブル』のロビン・ライト、地元からは『マイティ・ソー』のステラン・スカルスガルドらも出演。また、ロシア顔の代表格ランボー/怒りの脱出』のスティーヴン・バーコフを久々に見れたのも嬉しい。そんな顔ぶれの中、若き日のヘンリックを演じた役者に見覚えがあると思ったら、『オーシャンズ13』のジュリアン・サンズだったんでちょいと驚き。最後に劇場で彼の姿を見たのは何だったのか記憶を遡ってみたら、『ワーロック』だった。あらあら、御無沙汰しておりました。

gwdt4.jpg
抱きしめられたがってるハリネズミのような感じも

↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓
blogram投票ボタン   

        

        

posted by たお at 13:30 | Comment(18) | TrackBack(70) | 前にも観たアレ■た行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月16日

沈黙の背信 TRUE JUSTICE PART3 (True Justice : Street Wars)

監督 ウェイン・ローズ 主演 スティーヴン・セガール
2011年 カナダ/アメリカTV 90分 アクション 採点★★

セガール初のTVシリーズってんで、懲りることなく年貢を納め続ける私の中では話題沸騰中の“TRUE JUSTICE”。相当トンチンカンなシリーズになってるのかと思いきや、犯罪多発地域を厳しく取り締まりながらも同時に身を呈して守り続ける、セガールの警察観ってのがよく表れた物語になってて驚いたりも。案外、まじめ。まぁ如何せん不器用&口下手なんで、その辺が全く伝わってこないってのはご愛嬌ですけど。

tjsw2.jpg

【ストーリー】
アメリカ、シアトル。合成麻薬の過剰摂取による死亡事件が続発。製造元を摘発すべく捜査を開始した、ケイン率いるSIU。そんな中、麻薬取締局(DEA)から極秘に情報を手に入れたゲイツが何者かに襲撃され、提供者であった捜査官も殺されてしまう。DEA内部に犯罪組織のスパイがいると睨んだケインだったが、ハリウッドからやってきた撮影クルーの警護に忙殺され…。

tjsw1.jpg

“TRUE JUSTICE”シリーズ第3弾。今回も45分の前後篇をくっつけて一本にしてるんで、展開は相変わらず唐突かつぶっきらぼうで。まぁ、いい加減慣れてきましたが。
今後何らかの因縁が生まれそうな麻薬組織が登場したり、ハリウッド人種への皮肉なんかも描かれた本作。まぁアレコレ盛り込んだところで、印象は事件が違うだけのいつものセガールなんですけど。そろそろ若手メンバーのキャラ掘り下げを始める時期と踏んだのか、今回は唯一の黒人メンバーであるメイソンのプライベートが描かれてますけど、メイソン役のウィリアム・“ビッグ・スリープス”・スチュワートの顔があんまりにも個性的過ぎて、頭の中に物語が入って来ず。奥さん役の女優も黒い森泉みたいで、そのツーショットの強烈さから、やっぱり感じの物語は頭に入らず。前回はゲストでジョージ・タケイが登場して大いに驚かされましたが、今回のゲストは『沈黙の聖戦』『沈黙の鉄拳』とお馴染のバイロン・マンなので、特に驚かず。「あぁ、また来たのね」って感じ。

tjsw3.jpg

で、セガール。前回は何の脈略もなくギターを弾き始めたりと、そろそろ好き放題する兆しが見えてきてたんですが、今回もその傾向は強し。電話を待ってる間なにげにギターを弾き狂ってたり、エンディングに突然見知らぬ女性を連れて来て「コイツ、オレにメロメロなんだよ〜」とモテモテアピールをしたりと、結構好き放題。っていうか、好きな事しかしていない。日本刀とギターをオフィスに飾ってご満悦のセガールは、なんか可愛い。
そこそこセガール拳を披露してくれるのも本シリーズのお楽しみなんですけど、今回も重要な証言をしそうな容疑者をベキベキボキボキと次々抹殺。事件の難解化を進める傍若無人な大活躍。さすがにそれじゃまずいと思ったのか、最後の容疑者にはトドメを刺さず「オマエ弱過ぎるから、ウッカリ殺しそうになっちゃったよぅ」とお茶目な一言を添える気遣いも。
6話を終えた段階にもかかわらずセガール演じる主人公がどんな人間なのかサッパリわからない本シリーズですけど、犯人がパルクール使いだろうが全速力で逃げる若者であろうが、悠々と先回りをしてしまうジェイソンさんみたいな人物だってことだけは分かってきましたよ。

tjsw4.jpg
シアトルかクリスタルレイクかの違いだけ

↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓
blogram投票ボタン   

        

        

posted by たお at 10:39 | Comment(0) | TrackBack(3) | 前にも観たアレ■た行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月02日

沈黙の啓示 TRUE JUSTICE PART2 (True Justice : Dark Vengeance)

監督 キオニ・ワックスマン 主演 スティーヴン・セガール
2011年 カナダ/アメリカTV 90分 アクション 採点★★

さてさて、本年度の初セガール。年貢みたいなもんとは言え、なんでこう残念なものと分かりきってながら観続けちゃうんでしょうねぇ。きっと、セガールが相変わらず元気で楽しそうにやってる姿を確認したいんでしょうねぇ。「今日も元気そうだ。よかったよかった」みたいに。もう、縁起物ですね。

tjdv1.jpg

【ストーリー】
中国呪術の形式で金髪のストリッパーばかりが殺される連続殺人事件が発生。ケイン率いる特別捜査班は囮捜査により犯人を現行犯で射殺するのだが、ほどなく同様の手口で殺された女性警官の遺体が発見され…。

tjdv3.jpg

スペインでは放映されてたっぽいが、それ以外はよく実態の分からないセガール初の(たぶん)連続TVシリーズ“TRUE JUSTICE”第2弾。メガホンを握ったのは、前作『沈黙の宿命』同様『沈黙の逆襲』以降セガールのお抱えとなったキオニ・ワックスマン。
“中国呪術”に“ブルースギター”“金髪ストリッパー”と、セガールの好きなものだけで出来ている本作。大してサスペンスが盛り上がらない内にさっさと犯人が判明し、手の込んだ犯行の割に動機がよく分からない内にボツリと終わる、いつもの残念セガール映画ではあるんですが、いつも以上にセガールが楽しそうなので「良かったね、セガール!」と。ブルース・バーのシーンではおもむろにギターを弾きまくり、舞台の多くが巨乳のウロウロするストリップバーで、面倒臭いシーンを全て若手に任せ、自分は悪党退治のシーンにだけ出てきて「よよよいのよい!」と名人芸を披露すればいいんだから、そりゃぁ楽しいに決まってる。なんとも羨ましい老後生活を送っておりますよねぇ、セガールは。やっぱり、こういう楽しそうなセガールを観るのが好きなんですねぇ、私ってば。
“セガールが楽しそう”って以外に語る事もない作品なんですが、“スールー”こと『スター・トレック2/カーンの逆襲』のジョージ・タケイが思いのほか多い出番で登場してたのは特記すべきかと。相変わらず深くて美しい素晴らしい声でしたよ。

tjdv4.jpg
楽しくないわけがない

↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓
blogram投票ボタン   

        

        

posted by たお at 11:31 | Comment(0) | TrackBack(2) | 前にも観たアレ■た行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月05日

チョコレート・ソルジャー (Raging Phoenix)

監督 ラーチェン・リムタラクーン 主演 “ジージャー”ヤーニン・ウィサミタナ
2009年 タイ映画 112分 アクション 採点★★

酒を飲むと、途端に気が大きくなる人っていますよねぇ。あれも一種の酔拳なんでしょうねぇ。ってことは、酒を飲むと強くなる私の性欲も、きっと酔拳なんですね。そうですね。

raph3.png

【ストーリー】
彼氏に裏切られバンドもクビになったデューはやけ酒をあおっていたところを謎の誘拐組織ジャガー団に襲われるが、そこへ颯爽と現れたサニムによって救われる。それぞれ大切な女性をジャガー団によって奪われた彼らの仲間入りをしたデューは、泥酔拳をマスターし、自ら囮となってジャガー団のアジトへと向かうのだが…。

raph1.jpg

誘拐組織に戦いを挑む若者たちの姿を、ちょっとした恋模様を絡めて描いた青春アクション。監督は、『チョコレート・ファイター』で編集を務めていたラーチェン・リムタラクーン。
アクションのみならず、ポップな映像処理でちょいと切ない恋模様や仲間としての結束といった青春映画の要素を描いたかと思いきや、突然謎の誘拐団が現れたりと、なんでもありのゴッタ煮っぷりに一昔前のアイドル映画を彷彿させる本作。出演者全員が相当身体が動くので、アイドル全員がJAC出身みたいな感じの。ただまぁ、ゴッタ煮過ぎて山あり谷ありが延々と続く、「この映画、終わらねぇんじゃないか?」と思わせるダラダラ感は否めず。クライマックスの盛り上げ方が単調ってのも、そう思わせる要因かと。まぁ、突然『パフューム ある人殺しの物語』みたいな展開になってビックリはしますが。
メインの格闘スタイルである“泥酔拳”が、ダンスを取り入れたカポエイラのような動きで見た目には非常に派手。ただ、仲間全員が基本的に同じスタイルで、バリエーションにも凄味にも欠けてしまってるのは痛い。観ていて思いのほかすぐ飽きる。この辺のバリエーションと凄味の少なさは、製作を務めているパンナー・リットグライが直接アクション監督を手掛けていないからなのかなぁと。「素材も題材も悪くないのになぁ」って感じの一本で。

raph2.png

“ジージャー”ヤーニン・ウィサミタナがどんな進化を遂げているのか楽しみだったのに、アクションの撮り方に問題があるとはいえ、ある意味逆に退化しちゃってたってのが最大のガッカリだった本作。それでもアレな子役だった『チョコレート・ファイター』と異なり、感情も表情も豊かな“普通の女の子”って役柄を観れたのは新鮮。身体は動くが演技は出来ないタイプなのかって不安も正直あったが、惚れた男が愛する女性を救う為に頑張るというなんとも切ない役柄を難なく好演。その役柄と気の強そうな顔立ちが非常にマッチしていたようにも。何て言うか、『恋しくて』のメアリー・スチュアート・マスターソン的と言うか。
その他に、『マッハ! ニュー・ジェネレーション』のカズ・パトリック・タンや、リットグライ組の若手スタントマン、印象には残るが名前の読めない方々がわらわらと登場。そんな佃煮状態の若手を、ヤーニン・ウィサミタナと絡めてなんとかしたかったってのが趣旨の一本だったのかなぁと。

raph4.jpg
まぁ、楽しい映画だったことには違いないんですが

↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓
blogram投票ボタン   人気ブログランキングへ

        

        

posted by たお at 11:20 | Comment(0) | TrackBack(5) | 前にも観たアレ■た行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月04日

チョコレート・ファイター (Chocolate)

監督 プラッチャヤー・ピンゲーオ 主演 ジージャー・ヤーニン
2008年 タイ映画 110分 アクション 採点★★★★

カンフー映画を観ていると、往々にしてブルース・リーなど格闘の神さま方が降臨してしまう私。部屋で一人見えない敵と激闘を繰り広げ、蛍光灯のヒモを切ったり枕のペレットをまき散らしたりして女房に怒られます。二年生になる息子にもよく降臨するようで、そんな時は二人で戦います。双方降臨中なので手加減など知らず、だいたい息子が泣き出して終了です。で、また女房に怒られます。神めっ!

choco1.jpg

【ストーリー】
日本人ヤクザとタイマフィアの愛人との禁じられた愛の末に生まれたゼン。自閉症の彼女は、類稀なる集中力と身体能力で、大好きなカンフー映画の技を瞬く間に身につける特技を持っていた。そんなある日、母親が白血病で倒れてしまう。多額の医療費を工面するため、母親が隠し持っていた帳簿を基に借金の回収を試みるゼンであったが、その行動がタイマフィアのボスの耳に入ってしまい…。

choco2.jpg

マッハ!』でトニー・ジャーを送り出した『パーフェクト・スナイパー』のプラッチャヤー・ピンゲーオが、4年の歳月を掛けて育て上げた“ジージャー”ヤーニン・ウィサミタナンを主演に据え作り上げた、情け無用の壮絶アクション映画。アクション監督を務めたのは、『マッハ! ニュー・ジェネレーション』のパンナー・リットグライ。
ジージャーが繰り出す桁外れなアクションに目を奪われてしまうのも当然だが、そのアクションを支える物語がドッシリと重たい本作。主人公が自閉症の上に母親が重病で、立ちはだかる敵がオカマギャング集団に主人公同様アレな子だという、甘いのはタイトルだけの過酷な状況。笑顔も少ない、まさに劇画。この重たい土台が支えているからこそ、アクションシーンに更なる凄味と爆発力が生まれているのではと。“可愛い女の子がアクションをする”という出発点を終着点にしない、甘えと妥協のない姿勢が素晴らしい。
製氷工場や精肉工場など、普通に歩いていても怪我しそうな舞台に選んでのアクションシーンのレベルの高さには、ただただ驚かされるばかり。「避けなかったら怪我するよー」「ちゃんと落ちないと怪我するよー」「最終目標は死なないことだよー」ってなぎりぎりのアクションを、“よく分かってる”距離感で収めている映像も見事。エンドクレジットで流れる、もう単なる決定的瞬間集と化したNGシーンからもひしひしと伝わる、「スッゲェもの作ったる!」って気概がアッパレな一本で。

choco5.jpg

見た目からは想像できない本格的なアクションを披露し世界中を驚かせた主人公に扮したのは、本作がデビュー作となる“ジージャー”ヤーニン・ウィサミタナン。“可愛い女の子がアクションする”映画なら山ほどあるが、“可愛い女の子が凄まじいアクションをする”稀有な映画に本作がなったのも、やっぱり彼女の身体能力の高さと日々の鍛錬故では。可憐な少女がアクションをすればギャップが自ずと生まれるが、そのギャップを最大限まで広げる本格仕様ってのが見事。ムエタイを始め、ブルース・リーが降臨して怪鳥音と共に披露する截拳道など、様々なファイトスタイルが様になるのも魅力。この辺がまた、“見た技をすぐマスターする”っていう若干吹っ飛んだ設定に説得力を持たせた要因かと。今回は役柄上泣き叫んでるか無表情で睨みつけているかのみの上に、セリフも単語か「ゥエッ!ゥヤッ!」ばっかりだった彼女だが、他にどんな事が出来るのかその可能性が非常に楽しみなヒロインの一人だなぁと。
そんなジージャーの他にも、日本から参加した阿部寛や、本作以外のフィルモグラフィが見当たらないのが信じられないくらいの姐御風情だったアマラー・シリポン、急に小室ファミリーみたいな胡散臭い髪型になってて驚いた沈黙の聖戦』のポンパット・ワチラバンジョンなど、可憐な少女の物語をぐっと大人の世界に引き戻したキャスティングも良かった一本で。

choco3.jpg
出来ない事を出来るようになるまで頑張る姿勢が大切なんだなぁと

↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓
blogram投票ボタン   人気ブログランキングへ

        

        

posted by たお at 14:56 | Comment(6) | TrackBack(5) | 前にも観たアレ■た行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。