2012年10月20日

デトロイト・ロック・シティ (Detroit Rock City)

監督 アダム・リフキン 主演 エドワード・ファーロング
1999年 アメリカ映画 99分 コメディ 採点★★★★

音楽好きとしてそれなりに長年生きているので結構な数のライヴを観てきたんですが、それらをいざ思い出そうとしても、セットリストはおろかステージの様子までも全く思い出せない私。まるで開演と同時に気を失ってしまったかの如く。まぁ、私の記憶能力があんまりにも残念だってことに原因があるんでしょうけど、そのくせそこに至るまでの状況とか、何処で何を食べたとか、一緒に行った相手とどんな会話をしてどんな表情だったかなど、それに付随することは些細な事まで覚えてたりするんですよねぇ。やっぱアレですね。開演と同時に気を失い、閉演と同時に意識を取り戻したんですね。

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【ストーリー】
キッスの熱烈なファンである高校生男子4人組、ホーク、レックス、ジャム、トリップ。デトロイトで行われるキッスのコンサートを心待ちにしていた彼らだったが、敬虔なクリスチャンであるジャムの母親によりチケットを燃やされてしまう。ラジオのクイズで奇跡的に当選したチケットも無効となってしまった彼らは、何としてもチケットを手に入れようと開演までの僅かな時間を悪戦苦闘するのだが…。

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キッス旋風に沸いていた1978年を舞台に、何が何でもキッスのライヴが観たい男子の姿を描いた青春コメディ。『ザ・チェイス』のアダム・リフキンがメガホンを握り、キッスのベーシストである『WANTED/ウォンテッド』のジーン・シモンズが製作陣に加わっている。
誰かと何かに“夢中”になっていた、その熱がそのまんま転写されたかのような本作。向こう見ずで浅はかだが何かに必死になる姿は、自分たちの記憶にある“ある一日”を思い出させてくれる。登場人物それぞれが背景を持ち、それぞれが一夜の騒動を通して成長していく。そんな彼らもまた自分たちの中にある“誰か”を彷彿させ、彼らと共に狂乱のイベントに放り込まれたかのような一体感も味わえる。ただ一人ホークのみが背景の描かれていないキャラクターなのだが、きっとそれは自分をそこに当てはめる為の配慮なのではと。今だ誰かと共に夢中になれる物を持つ者にとってはコースターライドであり、ノスタルジーを感じてしまう私のような者にとってはタイムマシンにもなる愛すべき作品。キッスを中心に、シン・リジー、AC/DC、ラモーンズ、ブラック・サバスときてデヴィッド・ボウイも入ってる、劇中引っ切り無しに流れる楽曲の数々も、彼らが持参したテープを聞きながらドライブしてるかのような一体感を味わえる、なかなか好みの選曲で。

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ホークに扮したのは、『アニマル・ファクトリー』のエドワード・ファーロング。やんちゃでニヒルで早く大人になりたいけど、まだまだ内も外もついて行ってない成長過渡期の主人公を好演。だいぶプックリして来た頃ではあるが、幼さの中に大人の色気も兼ね備える彼らしい魅力が丁度良く出ていたのではと。「あ!ジョン・コナーだ!」の声に負けず様々な作品に挑戦し、軌道に乗り始めたかのように見えた時期だっただけに、その後の不調が残念でも。最近はどんどんロバート・パトリックに近づいてる感もあるので、その個性を活かして再ブレイクして欲しいなぁと願うばかりで。
また、若い頃のニック・スウォードソンみたいだった『ファンボーイズ』のサム・ハンティントンや、『キャビン・フィーバー』のジェームズ・デベロ、『2001人の狂宴』のジュゼッペ・アンドリュースらの、「一緒につるみたい!」と思わせる男子っぷりも魅力。その他、『ブレイド3』のナターシャ・リオン、『インシディアス』のリン・シェイ、伝説的なポルノスターであるロン・ジャーミーもキャスティング。
そして、いよいよクライマックスに登場する御本尊キッス。タイトルにもなっている“デトロイト・ロック・シティ”の盛り上がること盛り上がること。別にキッスファンじゃなくても楽しめる本作ではあるが、「ダダダダダダダッダッダーン!」で火柱がババーンと上がる、ロックの初期衝動に非常に素直なキッスの音楽じゃなければ成立しない作品でも。これがピンク・フロイドやアインシュテュルツェンデ・ノイバウテンじゃ、なかなかこうはならなかったでしょうし。

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十数年後思い出すのはここに至るまでの道のり

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2012年10月03日

タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら (Tucker and Dale vs Evil)

監督 イーライ・クレイグ 主演 タイラー・ラビーン
2010年 カナダ/アメリカ映画 89分 コメディ 採点★★★★

人は見た目じゃないよ、中身だよ!」とは言いますけど、コミュニケーションを取る上で一番最初の接点となる見てくれってのは、やっぱりとっても大事ですよねぇ。夜道を女性が独りで歩いている時、向こう側から現れるのが“高級スーツに身を包んだハンサムだけど実は猟奇殺人鬼”ってのと、“ハゲ散らかして小汚い上に全裸だけど聖人なみに善良な人”だったら、前者の方が圧倒的に安心感と信頼感が湧くでしょうし。つまり“服は着ろ”ってことですね。また話の軸がズレましたね。

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【ストーリー】
山間の田舎町にキャンプへとやって来たアリソンら都会の大学生グループは、そこで不気味な二人組の男と出会い不穏な空気を感じ取る。しかし、その二人組のタッカーとデイルは気の良い親友同士で、岩場から足を滑らし気を失ったアリソンを発見し、看病のため自分たちの別荘へと連れていく。ところが、殺人鬼に仲間をさらわれたと勘違いした大学生らが次々と彼らに襲いかかって来て…。

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名女優サリー・フィールドの息子であり、役者としては『スペース・カウボーイ』で若き日のトミー・リー・ジョーンズに扮していたイーライ・クレイグが、自らの脚本を初めて長編映画のメガホンを握り映像化した痛快ホラーコメディ。主演コンビには『恋するポルノ・グラフィティ』『天使といた夏』のタイラー・ラビーンと、『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』『ドッジボール』のアラン・テュディックが。
古くは『脱出』や『悪魔のいけにえ』、最近でも『クライモリ』や『ヒルズ・ハブ・アイズ』など脈々と作り続けられている“都会もんが田舎で散々な目に遭うホラー”をベースに、ちょいと視点を変えて描いた本作。豊富な笑いと血飛沫で直感的に楽しませつつ、コミュニケーションの難しさや先入観の怖さなど思いのほか深めなテーマを浮き彫りにする物語が秀逸。『スターシップ・トゥルーパーズ』を、侵略者だと思ったら侵略されてる側だったバグ目線で描いたかのようなシニカルさもホンノリ効いてて面白い。
場当たり的な笑いや、ホラーマニア映画にありがちな自嘲的なギャグには走らず、恐れられている対象が善良な人って以外はヒルビリー・ホラーの構図をしっかりと守っている真面目さも好感度高し。そういったホラー映画で描かれてきた世界の舞台裏を覗き見してるかのような楽しさが多く含まれているってのも嬉しい限り。どう考えても最悪な結末に向かって進んでいるように思わせながらも、そこを絶妙に回避し最もシックリと来る落とし所に着地する構成も見事で、素直に「面白い!」と膝を打った一本で。

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都会者が田舎に行くとホラーになるが、田舎者が都会に行くとコメディに

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2012年09月25日

ドライヴ (Drive)

監督 ニコラス・ウィンディング・レフン 主演 ライアン・ゴズリング
2011年 アメリカ映画 100分 アクション 採点★★★★

人見知りモード発動中か嫌いな人が一緒じゃない限りは、基本的におしゃべりな私。数はとことん少ないですが、気の合う人と語り合ってる時間が好き。ただまぁ、見掛けによらずよう喋るせいか、人柄的にも発する言葉にも“重み”ってのが皆無に思われたりも。その点、“寡黙”な人っていいですよねぇ。大したこと考えてなくても思慮深く思われますし、同じ「…腹減った」って言うだけでも腹減り具合に差がついちゃいますし。

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【ストーリー】
自動車修理工場で働く傍ら映画のスタントドライバーとしても活躍するその裏では、犯罪者の逃走を手助けする闇稼業に手を染めている“ドライバー”。彼はある日、同じアパートに住む子連れで夫が服役中の人妻アイリーンと出会い交流を深め、これまでにない心の充実感を味わう。そんな中、アイリーンの夫スタンダードが出所。スタンダードが借金返済のために強盗を強要されていることを知った彼は、アイリーンらの為に手助けをするのだったが…。

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ヴァルハラ・ライジング』のニコラス・ウィンディング・レフンによる、寡黙なヤクザ男が愛する女性のために裏組織と単身戦う様をスタイリッシュに描いた犯罪アクション。
物語は至ってシンプル。“堅気の女に惚れたヤクザな男が、その為に散々な目に遭う”。以上。しかし、簡潔に語れるからこそ、裏社会に住む男の哀しさやその愛の重さがヒシヒシと伝わるってもの。主人公同様に作品も寡黙だが、言葉と言葉の間や憂いを帯びた眼差し、置かれた状況など行間にビッシリと感情が書き込まれている。感情を全てセリフで説明してくれるから分かり易い反面、語ってる以上の想いは見えて来ない昨今の作品に慣れた観客にはスタイル頼りの“なんちゃってノワール”にしか過ぎないかも知れないが、本作ほど雄弁に心情を語った作品は最近では非常に珍しいなぁと。青をベースとした美しい夜の空間と過激な暴力描写のコントラストも見事で、そのスタイリッシュの欠片もない凄惨な暴力描写に、主人公と人妻の間にある越える事の出来ない壁が見えるような気も。
ニューシネマやフィルムノワール風ってのが狙いであろうし、その狙いは見事に達成しているのだが、何故か個人的には往年のヤクザ映画を観てるような印象が。なんと言うか、若き日の高倉健と倍賞千恵子が出てきそうな感じの。まぁそれはさて置き、“正しい/正しくない”では計れない悲しいまでに美しい男の生き様ってのを観させてもらった、非常に嬉しい一本で。

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主人公に扮したのは、『ラブ・アゲイン』のライアン・ゴズリング。画とシチュエーションの力もあるのだが、基本フラットな表情のまま想いや意志の強さと重さを表現する見事な仕事っぷり。とてもヤクザに見えない優男な風貌や特殊な技能もあってか、同じ優男がクールなヤクザ男に扮した『ザ・ドライバー』を思い出したりも。どっちもライアンですし
また、アイリーンに扮したのは『17歳の肖像』のキャリー・マリガン。その名を聞いてぱっと思い出す人も少ないとは思うんですが、カレン・ヤングを可愛らしくしたような感じ。実年齢より幾分年上に見えたんですが、早くに大人になり過ぎた結果のやつれ具合として役柄にマッチ。
その他、『トータル・リコール』のブライアン・クランストンや、『エンジェル ウォーズ』のオスカー・アイザック、敵に回した時点で明るい未来は諦めた方が良い怖さ溢れていた『アウトランダー』のロン・パールマンに、相手によっては殺し方に“慈愛”のようなものすら感じさせた『トワイライトゾーン/超次元の体験』のアルバート・ブルックスらが好演。下手に出しゃばって作品のムードを壊したりしないが、だからと言って引っ込んでいるばかりでもないキャスティングも好印象の一本で。

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自分以外に守るべきものを持った時の強さ

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2012年08月31日

テイク・シェルター (Take Shelter)

監督 ジェフ・ニコルズ 主演 マイケル・シャノン
2011年 アメリカ映画 120分 サスペンス 採点★★★★

UFOなり幽霊なり常識の範疇を超えた物の目撃談ってのは話としては面白いけど、いざ“それを信じるか?”ってことになると躊躇しちゃいますよねぇ。その目撃者が自分だったとしても同様。一回二回なら目の錯覚か気のせいと思うだろうし、頻発するならまずは自分の精神状態を疑う気が。で、「自分の正気を疑うくらい冷静なんだから、きっと正常!」と思い込みたい反面、「本当に自分が壊れてるなら、“壊れてる”って思うわけないよなぁ」とか考えたりしてパニックに陥るんだろうなぁ。

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【ストーリー】
耳の不自由な娘を抱えながらも、優しい妻と共に平穏で幸せな日々を送っていたカーティス。しかし、ある日を境に彼は大災害に襲われる悪夢と幻覚、幻聴に苛まされ始める。収まる事のない悪夢に彼は大災害の予兆を感じ、家の庭に避難用のシェルターを作り始める。その異常な行動により仕事を失い、周囲だけではなく妻をも戸惑わせる彼だったが…。

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長編2作目となる新鋭ジェフ・ニコルズ監督/脚本による、ヴィジョンに苛まれ壊れゆく男とその家族の姿を描いた心理スリラー。主演に『ロシアン・ルーレット』のマイケル・シャノン、共演には『ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜』のジェシカ・チャステインがキャスティング。
もし自分がノアだったら箱舟を作るか?
いやぁ、作らないなぁ。きっと“「大洪水が来るから船を作りなさい」って言われた夢を見た”で済ませようとするはず。ただ、その夢が幾晩と続き、白昼夢としてまで現れ始めたら話は別。自分の精神状態を疑うと同時に、その夢に何かしらの意味があるに違いないと思い始めるのではと。でも、“自分は異常だ”と易々と決めれるものではない。出来ればそうは思いたくもない。そうなると、そのヴィジョンに対して何かしなければという思いが湧いてくるはず。ヴィジョンが正しければ自分は正常である証にもなるのだから。正常であると証明したいがための強迫観念のようなもの。周囲の目が冷たくなればなるほど、その“行動”に固執し始めるんだろうなぁと。

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本作はそんな“壊れゆく男”とその家族の姿を、見事なまで詳細に描き切った一本。
宗教概念があって初めて成立する話ではあるものの単に“預言者”をリアルに描くのではなく、経済的なプレッシャーや平凡な人生に対する不満、肉親に精神疾患患者がいる潜在的な恐怖感などを織り交ぜ、ある種特別な人物の物語ではなく誰しもが当てはまり易い人物の物語として観客に不安と恐怖を味あわせ、同時に観客を巧みに惑わす脚本と演出、そしてその主人公の心の動きを詳細に表現したマイケル・シャノンが素晴らしい。
特に主人公も観客も望まない展開を迎えるクライマックスの描写は見事の一言。シェルターの扉の向こう側に正気と狂気を隔てる答えを持たせ、その前で繰り広げられるドラマは圧巻。“家族の絆”の物語であることがここで明確になる構成の上手さに唸らされた。この後もう一捻りあるが、「ほらね!」を意味するのではなく、そのテーマを更に強固にし着地する見事な締め括り。
どうレビューを書いたらいいのかさっぱりまとまらず、着地点を決めないままフラフラと書いてしまった本レビューですけど、ほんのちょっとでも「面白そう!」と思って頂けたら幸いだなぁと

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“平穏”と“不穏”は常に隣り合わせ

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2012年08月22日

タイタンの逆襲 (Wrath of the Titans)

監督 ジョナサン・リーベスマン 主演 サム・ワーシントン
2012年 アメリカ/スペイン映画 99分 ファンタジー 採点★★★

ギリシャ神話をモチーフにしたゲームをやってたら、小学生になる娘と息子が「ポセイドンだぁ!ゼウスだぁ!」とやたら食いついてくる。「お?いつの間にギリシャ神話に興味を持ったんだ?いよいよお父さん秘蔵の『アルゴ探検隊の大冒険』を解禁する時が来たか?」と嬉しく思ったんですけど、なにやらイナズマイレブンの影響だとか。まぁきっかけはなんであれ、『アルゴ探検隊の大冒険』は解禁決定。

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【ストーリー】
タイタンの王クロノスの復活を目論むハデスとアレスによって捕らえられてしまったゼウス。クロノス復活による世界終焉の時が刻々と近づく中、剣を置き漁師として一人息子と穏やかに暮らしていたペルセウスは、人類の為、そして父ゼウスを救い出す為ふたたび剣を手にし旅に出るのであったが…。

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レイ・ハリーハウゼンによる同名映画を最新SFXでリメイクした『タイタンの戦い』の続編。今回メガホンを握ったのは、『世界侵略:ロサンゼルス決戦』のジョナサン・リーベスマン。
複数絡んだ神々の親子喧嘩と兄弟喧嘩に人間が巻き込まれ、それをまた親子と兄弟が収束に務めるっていうギリシャ神話恒例“家庭内の問題”をド迫力の映像で描き出した本作。難攻不落の迷宮をなんとなく攻略しちゃったり、善悪のグレーゾーンに立つキャラがコロリと善側に転がったり、唐突にアンドロメダがチューしたりと中身のペラッペラ具合に驚かされるが、前作よりアクション色を強めた見せ場の数々が辛うじてその薄っぺらさを補う形に。
特に巨大火山の噴火を擬人化したかのようなクロノスの迫力は凄まじく、そんな自然災害と対峙しなければならない人間の絶望感を上手く表現できていたのかと。正直見所はそこしかないし、思いのほかクリーチャーも少ない失望感も否めないのだが、なんかデッカイものが暴れてるのを観てるだけでも多少満足しちゃうのでいいかと。オリジナル版のマスコットキャラ“ブーボー”が今回も非常に雑な扱いで登場するのも嬉しかったですし。

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ペルセウスに扮したのは、前作同様『ターミネーター4』のサム・ワーシントン。髪を伸ばしちゃったせいか精悍さや荒々しさはだいぶ後退してましたが、息子も出来てヤンチャを控えた元工業高校生って感じは出てたかと。なんかリーゼントをやめて髪をサラサラにしましたよって感じ。
また、『バトルシップ』のリーアム・ニーソンや、『ナイロビの蜂』のレイフ・ファインズ、『復讐捜査線』のダニー・ヒューストンら神さま方も前作から引き続き登場。
その他、「浮気相手の子供ばっか構ってー!」とグレるアレス役に『ボーン・アルティメイタム』のエドガー・ラミレス、美人だけど“アンドロメダ”の冠を被るにはちょいと無理があった『サロゲート』のロザムンド・パイクらが、シレーっと前作からキャストチェンジ。
クロノスの迫力に押されまくってた上に人物描写が薄っぺらいのでこれといって印象が残るキャスティングではないんですけど、描きようによってはもっと面白いキャラになったであろうアゲノールに扮した『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』のトビー・ケベルや、ヘパイストスに扮した『トータル・リコール』のビル・ナイを観れたのはちょい嬉しかったかと。

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家庭内の問題には他人を巻き込まない事

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2012年08月14日

トロール・ハンター (Trolljegeren)

監督 アンドレ・ウーヴレダル 主演 オットー・イェスパーセン
2010年 ノルウェー映画 103分 アドベンチャー 採点★★★

世間的には充分過ぎるほど大人の年齢に達してるんですが、いまだに高い山々を見ればその合間から大入道が顔を出す様を想像したり、夜の川べりを歩いてると濡れ女が出てくる気がして足早になったりする私。“自然の力強さと大きさに命を感じる”ってわけじゃもちろんなく、単に水木しげるの妖怪図鑑がいまだに愛読書となってる幼稚さからなんでしょうけど。

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【ストーリー】
熊の密猟問題を題材にドキュメンタリー映画を撮っていた3人の大学生は、謎の男ハンスと出会う。「奴が密猟者に違いない!」とハンスの追跡をする彼らは、偶然にも伝説の巨人トロールの姿を目撃する。ハンスが政府の命によりトロール退治する“トロール・ハンター”であることを知った彼らは、ハンスと共に命がけの撮影に繰り出すのであったが…。

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風光明媚の塊ノルウェーの特産品“トロール”を題材としたモキュメンタリー。なにやらハリウッドリメイクも企画されてるとか。
“差出人不明のフィルムに収められていた驚愕の真実”。このハッタリに乗れるか否かが本作を楽しめるかどうかのカギなのだが、“行き詰ったら『食人族”がモットーの私は身も心も乗ったので存分に楽しめた一本。もう、この手のハッタリ大好き。
現実って体の世界に、突如入り込んでくる非現実のトロール。これで出てくるトロールのデザインが現実的なものであればリアルなモンスター映画で終わってしまうのだが、ぬるんと顔を出すのが民話の挿絵から抜け出てきたような奴。この違和感の絶妙さたるや。一本わき道に逸れただけで神話の世界に迷い込んでしまったかのような味わいが素晴らしい。“三匹のヤギがいる橋の下にトロール”などといった聞き覚えのあるシチュエーションが使われていたり、「成長すると頭が増えるけど、敵を威嚇したり雌にモテたりする為の飾り」「食うことと繁殖する事しか考えてない下等動物」などロマンとロマンの台無しを絶妙にブレンドさせたりし、この現実と神話の狭間って感じを強調しているのも見事。
政府が国民の目を欺いて秘密裏にトロールを退治しているが、そのハンターに夜勤手当など充分に払ってないのでハンターは不満たらたらなど世知辛いブラックユーモアも豊富な本作は、映像に驚きながら楽しむってのよりは、その設定によって作り上げられた世界観を楽しむタイプの一本なのかと。
それにしても、サンタがナマハゲと変わらなかった『レア・エクスポーツ 〜囚われのサンタクロース〜』や、先が読めないにも程があった『ドリル・マーダーズ 美少女猟奇殺人事件』など、最近の北欧映画のエネルギーってのは侮れないものがありますねぇ。

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日本で作るなら“ダイダラボッチ猟師”?

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2012年08月11日

トータル・リコール (Total Recall)

監督 レン・ワイズマン 主演 コリン・ファレル
2012年 アメリカ/カナダ映画 118分 SF 採点★★★

事実と異なることを“事実として記憶”するってのは、社会情勢を見るまでもなくよくあることですよねぇ。私も子供の頃のとある出来事を“記憶”してるんですが、それを“体験として記憶”しているのか、親に言い聞かされた“物語として記憶”しているのか、今となっては定かじゃなく。

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【ストーリー】
世界大戦で使用された化学兵器の影響で、居住可能区域が富裕層の暮らすブリテン連邦と労働者が暮らすコロニーの二極化してしまった近未来。美しい妻と共にコロニーで暮らす工場労働者クエイドは、退屈な日々から逃れ一時の刺激を求める為に人工的に記憶を植え付ける“リコール社”を訪れる。ところが、記憶を植え付けようとしたその時、突如連邦の警官隊の襲撃を受けてしまい、咄嗟に自分でも知らない戦闘能力を発揮し警官隊を撃退するクエイド。事態が全く把握できないまま帰宅するクエイドだったが、優しかった妻までもが彼に襲いかかり…。

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フィリップ・K・ディックの短編小説“追憶売ります”の再映画化と言うよりも、ダン・オバノンらの脚本をベースにしてるんで、アーノルド・シュワルツェネッガーの『トータル・リコール』を再映画化したって言った方がニュアンス的に近いSFアクション。中からシュワが出てきそうな“「二週間よ」おばさん”や、オッパイが3つある女の人も出てきますし。そんなシュワ色残る本作を、『ウルトラヴァイオレット』のカート・ウィマーらが脚本を手掛け、『ダイ・ハード4.0』のレン・ワイズマンがメガホンを握り映像化。
予告編から想定できる出来事以外は何も起きない、全てにおいて想定内の本作。労働者の暮らすコロニーをなんか“強力わかもと”の看板が出てきそうな『ブレードランナー』風に描き、富裕層の暮らす連邦を滅菌された『マイノリティ・リポート』風に描く、如何にも“ディック映画”っぽいビジュアルに、“近未来版ジェイソン・ボーン”の一言で事足りるストーリー。もう全てがテンプレート。30年前の中学男子なら盛り上がれるが、今となってはちょっとアレなありきたりっぷり。

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しかしながら、“記憶の植え付け”を描く本作のテーマ上、(リメイクってのを差っ引いて)このデジャヴすら覚える“ありきたり”なアプローチは正しい。如何にも人口記憶用の“商品”って感じが。ただまぁ、“映画内での現実”を不安定にさせる仕掛けが少な過ぎるのは残念。記憶を植え付ける為の薬品が注入されるかされないかの微妙なタイミングで物語が始まったり、ラストに妙な間があったり、ジェームズ・ボンドの立ち位置が現実味のない“私を愛したスパイ”を主人公が愛読してたりとホンノリ匂わせてはいるが、「もしかして、これ全部が幻想なのかも」と観客を不安にさせるまでは機能していないので、“よくあるSFアクション”で流されてしまう仕上がりが残念。多少現実味のある展開にしたかったのであろうが、“火星”ってのを取り除いてしまったので“ワンダー”までもがなくなってしまったってのも残念過ぎますし。
やっぱりこの題材は、一番最初の構想通りデヴィッド・クローネンバーグが適任だよなぁと強く思ってしまった次第で。

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鼻から発信機は出てこないが掌から携帯電話は出てくる主人公に扮したのは、『フライトナイト/恐怖の夜』『マイアミ・バイス』のコリン・ファレル。その濃さから“実は凄腕エージェント”って役柄は似合うが、“日々の生活に退屈する単純労働者”って役柄は全く似合わない微妙なキャスティング。まぁ、ほとんどの時間を“凄腕”として過ごしてるんで問題はありませんでしたが。
一方、その主人公の美人妻に扮したのは、監督の美人妻でもある『ホワイトアウト』『アンダーワールド:エボリューション』のケイト・ベッキンセイル。元々“平凡”ってのが全く似合わない女優なので、如何にも作られた世界で作られた役柄に扮する本作はドハマリ。主演俳優を凌駕するほどアクションをカッコ良く撮られていたり、悪女っぷりをこれでもかってほど丹念にネットリ撮られてましたが、まぁいつもの嫁自慢なんでしょうねぇ。
また、レジスタンス役として『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』『バレンタインデー』のジェシカ・ビールが。作品的に何の印象も残さないキャスティングではありましたけど、「貧乳の美人とちょいブスの巨乳だったらどっちが良いかなぁ?」と思い馳せる分には良い配役だったのかなぁと。まぁ、私が観賞中にそんなことを考えてただけなんですけど。
その他、初老の長官のくせに凄腕エージェントとタイマンで良い勝負をしちゃう、とってもカート・ウィマー作品らしい役柄を演じた『コンテイジョン』のブライアン・クランストンや、腹に何も隠していなかったレジスタンスのリーダー役に『パイレーツ・ロック』のビル・ナイ、『スター・トレック』のジョン・チョーに『デビル』のボキーム・ウッドバインらがキャスティング。良い顔ぶれが揃ってはいるんですけど、目玉が飛び出して「アガガガガー!」ってなったりイカしたミュータントが出てくるわけじゃないので、ビジュアルの派手さに負けてしまう地味さは否めず。

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嫁自慢には余念なく

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タグ:★★★ SF
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2012年08月09日

伝説のロックスター再生計画! (Get Him to the Greek)

監督 ニコラス・ストーラー 主演 ジョナ・ヒル
2010年 アメリカ映画 109分 コメディ 採点★★★★

TVに出ている芸能人の皆さんって、最近“良い子ちゃん”ばかりですよねぇ。スポンサーや広告代理店が力を持ち過ぎてるってのとか、作り手がサラリーマン気質のまんまだとか色々要因もあるんでしょうけど、受け手である私たちが、芸能人に一般人感覚とか共感ってのを強く求め過ぎてるってのも大きいんでしょうねぇ。私ら一般人とはまるっきり違う様に羨望し、時に素っ頓狂な言動を笑い飛ばしたり呆れたりするってのが、芸能人に対する楽しみ方だと思うんですけど。騙す側も騙される側も、もうちょい成長しないとならないですねぇ。

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【ストーリー】
伝説的なロックスター、アルダス・スノー復活ライブの企画が認められ、イギリスにいるアルダスを72時間以内にロサンゼルスに呼び寄せる大役をものにした、レコード会社に勤めるアーロン。イギリスに到着するも、肝心のアルダスは最新シングルは酷評を受けた上に恋人にまで去られ、酒とドラッグに溺れる自暴自棄な生活を送っていた。そんなアルダスに振り回されながら、なんとかアメリカに向かったアーロンだったが、アルダスの破天荒さは輪を増すばかりで…。

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寝取られ男のラブ♂バカンス』に登場し、忘れ去ることの出来ない程の強烈な印象を残したアルダス・スノーを中心に据えたスピンオフコメディ。前作同様ニコラス・ストーラーがメガホンを握り、製作を『素敵な人生の終り方』のジャド・アパトーが務めた一本。
スピンオフと言いつつもオリジナルとの繋がりはアルダス以外はほとんどない、ほぼ独立した一本に仕上がってた本作。内容的には“非日常な出来事に翻弄されている内に、日常で忘れかけていた大切なものを思い出す”っていつものアレなのだが、その非日常の突き抜け具合が飛び抜けているので、定番に埋もれる事のない強烈な個性と笑いを生みだしている。
また、意味がありそうで全く無い言動を繰り返すアルダスのキャラが、“ロックスター”として完成されているのも大きい。大人になって冷静に見てみた時のロックスターの姿というか、端的なパブリックイメージというか。P!nkやメタリカのラーズ・ウルリッヒらのカメを出演も功を奏しているが、やはりそんな彼らと肩を並べても何ら違和感のないほどに完成されたアルダスの存在があったからこそ、工業製品めいた商品ばかりを出し死に体となってしまった音楽産業も皮肉る、“ロック映画”としても楽しめる一本になったんだろうなぁと。意味深なようで良く考えれば全く意味の無い素晴らしい歌詞で歌われるアルダスの楽曲も、ついついサントラが欲しくなってしまうほどの出来でしたし。

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「デニス・クエイドに似てる!」と言われて、本人を含め誰もが「ランディの方じゃないのか?」と思ってしまうアーロンに扮したのは、『マネーボール』『僕の大切な人と、そのクソガキ』のジョナ・ヒル。同じ役者なもんだからてっきりハワイのウェイターがレコード会社に勤めたもんだと思ってたら、まるで別のキャラクターだったんで驚いたりも。ここ数作は笑いを控えめに役者として活躍していた彼ですけど、本作ではコメディアンとしての本領を存分に発揮。攻撃的な芸風ではなく、とことん追い詰められてからキレるキレ芸の見事さに、コメディアンとしての器用さと芸幅の広さを再確認。
一方のアルダス・スノーに扮したのが、前作同様『ロック・オブ・エイジズ』のラッセル・ブランド。もう絶品。前回は“良い意味での気持ち悪さ”と表現させてもらったのだが、今回もそうとしか言えないグニュグニュとした気持ち悪さ。それでいてセクシーに見えてくるロックマジックも。多くの若者を「ロックやってればこんなオレでもモテんじゃね?」と勘違いさせた、あのロックマジック。そのロックスターとしてのあまりに見事な完成度に、「このシリーズをずーっと続けて欲しい!」とか「ってか、芸名をアルダスにすればいいじゃね?」とか思えてきてしまうほど。
その他、『噂のモーガン夫妻』のエリザベス・モスや、『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』のローズ・バーン、『完全なる報復』のコルム・ミーニイ、“パフ・ダディ”ことショーン・コムズ、『ピザボーイ 史上最凶のご注文』のアジズ・アンサリらもキャスティング。また、前作との接点として『ファンボーイズ』のクリステン・ベルも出演し、その共演者って設定で懐かしのリッキー・シュローダーが出てきて驚かされたりも。

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あぁはなりたくないはずなのに「なりたい!」と思わせてしまうロックマジック

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posted by たお at 12:43 | Comment(0) | TrackBack(2) | 前にも観たアレ■た行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月03日

ダークナイト ライジング (The Dark Knight Rises)

監督 クリストファー・ノーラン 主演 クリスチャン・ベイル
2012年 アメリカ/イギリス映画 164分 アクション 採点★★★

自己紹介の際に出身地も添えると、その土地に因んだ話題で盛り上がることがありますよねぇ。私のケースだと一昔前なら「あぁ、独眼竜の!」とか、最近なら「地震大丈夫だった?」とか、稀に「仙八先生って元気なの?」とか。出身地になにか有名な物があると、便利だなぁと。ってことは、「ゴッサムから来ました!」って言ったら、「あぁ、あのコウモリ男の!」ってなるんでしょうねぇ。

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【ストーリー】
悪へと身を堕としてしまったトゥー・フェイスこと検事ハービー・デントの罪を被り、追われる者としてバットマンが姿を消してから8年、ゴッサム・シティは平和を取り戻していた。しかし、突如現れた仮面のテロリスト“ベイン”の登場し、街は次々と破壊されていく。この事態にブルース・ウェインは再びマスクを被りバットマンとして街へ繰り出すのだが…。

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基本ゴッサム・シティの事しか考えていない地域密着型ヒーロー“バットマン”の活躍を描く、ダークナイト三部作最終章。メガホンを握るのは、前二作同様『インセプション』のクリストファー・ノーラン。
007でも是非やってもらいた程凄まじい空中アクションで幕を開け、休む間もなく2時間半超えの長尺を見せ場の連続で描く本作。その場面場面のクォリティ、迫力共に超一級で、アクション大作としては文句ない一本なのではと。なんと言うか、具沢山過ぎてなかなか麺とスープに辿り着かないラーメンの食べ応えのような。
ただ、同じ盛り沢山過ぎながらも“バットマンの存在意義”“善のための必要悪”といったテーマを貫いた『ダークナイト』を経た最終章と考えると、あまりに散文的過ぎ。増え過ぎた重要キャラクターを持て余したのか、ブルース・ウェイン/バットマンと他者との関係性が希薄。その希薄さが前作にあった“株式会社バットマン”的な面白さを薄めさせるだけではなく、本作で描かれる“ヒーロー不要の社会”“ヒーローを求める社会”ってのまで薄めさせてしまった感が。元々住民目線にやや疎いシリーズではあったが、本作ではそこが一番重要だったんじゃないのかなぁと。
また、バットマン最大の武器である“財力”や最高の理解者を失う展開に甚く興味をそそられたのだが、別段なにか変わるわけでもなく、なんとなく普段通りにやれてしまう展開もちょっと。
まぁ、こればかりは作り手の意向が私の好みじゃなかっただけなので仕方がないんですけど、やっぱりゴッサム・シティに魅力を感じられないってのが痛い。実在してそうな街並みにコスプレした男が立ってるインパクトや違和感は確かにあるのだが、トチ狂った犯罪者を次々生み出しそうなエネルギーは感じられないんですよねぇ。『ダークナイト』の銀行強盗シーンは現実とファンタジーの接点を見事に捉えていたんですけど、今回のように常軌を逸した事態になると、そのリアルさが邪魔というか。元々東海岸の大都市をイメージしてるのでアプローチとしては正しいんですけど、70年代ならまだしも、現在の滅菌された大都市にはソドムの香りがしない。犯罪ばかり起きる如何わしい街で住むには最低な場所なのに、その場所から離れられない暗い魅力のような感じの。まぁ、ホントこればかりは好みの問題なんですけどね。

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人に向かって銃を撃つことは頑なに拒むが、人の乗った乗物には平気でミサイルをぶっ放すバットマンことブルース・ウェインに扮したのは、前二作に続いて『ザ・ファイター』のクリスチャン・ベイルが。これまでは強烈な個性を発する共演者に挟まれ、主演なのに存在が空気になりがちだったチャンベールでしたけど、今回は中心にドドーンと据えられていたのでチャンベール三昧を堪能。笑顔を多用すると若干軽薄に見えてしまう彼だけに、バットマン役というよりブルース・ウェイン役が非常にハマっていたなぁと。
また、“それっぽいことを言う役”に収まってた感もあった『狼たちの処刑台』のマイケル・ケインに、『ザ・バッド』のモーガン・フリーマン、『アンボーン』のゲイリー・オールドマンらレギュラー陣に加え、例のキャットウーマンなんかより断然魅力的だった『バレンタインデー』のアン・ハサウェイに、『コンテイジョン』のマリオン・コティヤール、敵が現れるとちょっと懐かしい「ねづっちです!」のポーズになるベインに扮した、マスクの上にガタイが良くなり過ぎちゃってるので誰だか分からなくなった『レイヤー・ケーキ』のトム・ハーディ、逆に何十年経とうが一目で分かるバーディ』のマシュー・モディーンら新顔勢に、チラリと顔を出す『ブリッツ』のエイダン・ギレンに、なんかもう隠れキャラみたいになってきたサンシャイン2057』のキリアン・マーフィもキャスティング。ただまぁ、相変わらず豪勢だった顔ぶれを楽しめる反面、キャラの個性に乏しい感も。特にキャットウーマンは別にいなくても最低限物語が成立するキャラだけに、せめて退廃的な色気というかエロさを出して欲しかったなぁと。せっかくのアン・ハサウェイなんですし。“ヒロインが残念”ってのはシリーズの共通点なんですけど。
ただ、将来に希望を残す役回りであった『50/50 フィフティ・フィフティ』のジョセフ・ゴードン=レヴィットは見事。健気で真っ直ぐだが、真っ直ぐ過ぎる故に脆さが背中合わせなロビンを、持ち前の繊細さと若干肉付きの良くなった姿から醸し出されるタフさで熱演。彼の存在が不満のあれこれを若干補ってくれたなぁと。

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今後の金策はどうするつもりなんでしょうねぇ

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posted by たお at 13:41 | Comment(10) | TrackBack(72) | 前にも観たアレ■た行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月17日

DATSUGOKU -脱獄- (The Escapist)

監督 ルパート・ワイアット 主演 ブライアン・コックス
2008年 イギリス/アイルランド映画 102分 サスペンス 採点★★★

飲食店なんかで時折、店員さんに対し物凄い上からの物言いをしているお客さんを見掛けることがありますよねぇ。得てしてオジサン。たぶん会社とかでそれなりの地位に就いてる人なんでしょうねぇ。その地位とか箔ってのは、その人が所属する狭い輪の中でしか通用しないのに。

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【ストーリー】
ロンドン近郊の刑務所。無期懲役で服役中のフランクのもとに、疎遠となっていた娘が麻薬の過剰摂取で重体に陥った知らせが届く。愛する娘に一目でも会いたい一心で脱獄を決意したフランクは、受刑者仲間を集め脱獄計画を練り始めるのだが…。

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外に出れないってこと以外は比較的自由度の高めな刑務所を舞台とした、邦題だけ見るとなんかセガールが出てきそうな脱獄サスペンスドラマ。メガホンを握ったのは、本作で注目を浴びたことが『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』の抜擢に繋がったとかいうルパート・ワイアット。
“成功するか否か”をサスペンスの軸として引っ張るわけでも、スプーンでコツコツ壁を掘ったり雑誌でダミーヘッドを作ったりする過程を細かく見せるわけでもなく、本来のクライマックスである脱獄シーンと、そこに至るまでの過程をほぼ同時進行で描く逆引き形式の構成が目新しい本作。重量感のあるキャストで“真の自由とは?”というテーマを描く、なんとも重苦しくなりそうな所を一定のリズムを維持することで回避し、“脱獄済み”を描いておきながらラストで思い切り引っくり返す荒技にも無理やり感を感じさせない、初長編とは思えない手際の良さが見事。
しかしながら、脱獄グループの中の過半数に脱獄する必然性が見当たらなかったり、極々中心のキャラクター以外はその人物像がさっぱり描けてなかったりと粗が目立つのも事実。その粗を奇抜な構成とキャスティングの妙でウヤムヤにする、小手先一発勝負的な印象が否めないのは残念だったなぁと。

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主人公のフランクに扮したのは、『RED/レッド』『ウォーター・ホース』のブライアン・コックス。動揺する姿が似あわない腰の据わったイメージがある分、切羽詰まって脱獄を決意する慌てっぷりにある種の悲痛さが生まれたのかなぁと。
その他、「なんかジョセフ・ファインズに似た若造だなぁ」と思ったら本人だった『スターリングラード』のジョセフ・ファインズや、“フランクのためだけに”ってのをもっと深く描いて欲しかった『ドッグ・ソルジャー』のリーアム・カニンガム、『エリート・スクワッド ブラジル特殊部隊BOPE』のセウ・ジョルジ、逃げる必然性の塊だった『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』のドミニク・クーパーに、“ザ・卑劣漢”がドハマリだった『ジャケット』のスティーヴン・マッキントッシュら、重厚な顔ぶれが揃っているのが魅力。中でも、『ドリームキャッチャー』で頭の中に倉庫があったダミアン・ルイスの、宇宙人に乗っ取られっ放しかのような卑しく冷酷な悪玉っぷりは圧巻だったなぁと。

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外に自由はあるが、自由は外にしかないってわけじゃない

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posted by たお at 08:06 | Comment(6) | TrackBack(4) | 前にも観たアレ■た行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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