2007年02月08日

デトネーター (The Detonator)

監督 レオン・ポーチ 主演 ウェズリー・スナイプス
2006年 アメリカ映画 95分 アクション 採点★★

なにかと言い訳がましい人っていますねぇ。寝てたくせに、「違うよ!ちょっと目をつぶって考え事してただけだよ!」とか、ホテルから違う女性と出てきたのを見られて、「違うよ!急にお腹が痛くなったから!」とか、レンタル屋でアダルトビデオを持ってレジに行ったらタイプの娘だったから、「あれぇ?『ラブ・アクチュアリー』を取ったはずなのにぃ」と言ってみたりと。開き直っちゃえばいいのに。

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【ストーリー】
国土安全保障局のグリフは、わけあってアメリカを離れ独自にヨーロッパの武器密輸組織を調査していたが、CIA時代の同僚にとある美女の護衛を頼まれる。一見簡単な仕事に思えたが、その美女を奪還を目論む一団が現れ…。

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代表作がセガールの『ICHIGEKI 一撃』という、持ってる資格が英検4級のみ並の箔しかついていないレオン・ポーチによる、“スナイプスの大運動会”第2弾。
“護衛していた美女には裏があって、CIAには内通者”と、もうどの映画で観たのか全く思い出せないほど何十回も観た気がするストーリーをバックに、ウェズリーが大暴れするだけの映画なのだが、迷彩服のコスプレがお気に召さなかったのか、得意のカンフーどころか演技までも封印し、全くやる気の感じられなかった『ザ・マークスマン』と比べれば、キチンとカンフーもキメているし、うっかり事故の瞬間を収めてしまったのではと思えるほど派手なスタントもあるので、とりあえず退屈することはない。興奮もしませんが。
ルーマニアの名産“ヴラド公”にもチラリと触れてはいるが、作品自体は暗闇に向かって闇雲に撃った弾丸が主要人物以外を選りすぐって当たったり、序盤に説明されるタイトルの由来となった生物兵器が、誰もがもうすっかり忘れているクライマックスに突然出てきたりと、ご都合主義&行き当たりばったりな展開をするアバウトかつ大味な一本。だが、みのもんたの顔を出来れば見たくないヒマな平日の午後に観るには、丁度いい作品である。ローン滞納騒動などで国内に居づらくなっていたウェズリーが、映画撮影を建前にルーマニアにトンズラしていた時期にまとめ撮りされたような作品なので、受け手もそれくらいの心構えで。

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ザ・マークスマン』では全くやる気の感じられなかったウェズリーだったが、本作ではカンフーをきっちりとキメ、得意のオカマキャラまで披露し、『ザ・マークスマン』5本分に相当しそうなほど喋り捲っているのだが、ニカっと笑った前歯に青ノリ状の物体が。やっぱり、やる気がねぇ。とは言え、男子校臭がプンプンだった『ザ・マークスマン』に比べれば、マッチ棒のようなスタイルの美女シルヴィア・コロカが居るだけマシなのか、機嫌だけはすこぶる良さそうなので、憂さ晴らしにはなったようで良かったですね。
ちょうどヒマだったのか、「わざわざルーマニアに行くんだったら、ついでに」って感じでウィリアム・ホープが引き続き登場。『沈黙の追撃』、『ザ・マークスマン』、本作と、Vシネに毛が生えたような作品でしか見かけなくなった俳優ですが、まぁ、こういう人も必要っちゃぁ必要ですねぇ。

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目に心がこもっていませんし

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2007年01月12日

007/ムーンレイカー (Moonraker)

監督 ルイス・ギルバート 主演 ロジャー・ムーア
1979年 イギリス映画 126分 アクション 採点★★★

物置の奥から出てきた昔の写真など眺めていると、そこには初恋の相手の写真やら、最初の彼女の写真やら。見れば見るほど当時の自分の正気を疑ってしまう様な方々なのであるのだが、だからといって嫌いになれるわけでもない。なんというか、すり込みのようなものなのでしょうか?

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【ストーリー】
イギリスへ輸送中のスペースシャトル“ムーンレイカー”が、何者かによって奪われる事件が発生。調査に乗り出したジェームズ・ボンドだが、事件の背後に人類を抹殺し新たなユートピアを作り上げる野望を持つ大富豪ドラックスの存在が…。

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3代目ジェームズ・ボンドのロジャー・ムーア4本目の作品で、シリーズ第11弾。前作『007/私を愛したスパイ』に引き続き、ルイス・ギルバートが監督を務める。『スター・ウォーズ』以降吹き荒れていたSFブームに乗り遅れまいと、駆け込み乗車気味に宇宙を舞台にボンドが活躍をする本作を製作するが、出来上がったものはなんとも奇妙な作品に。
ボンドファンには散々な評判の本作。宇宙空間をふわぁふわぁ漂いながらレーザー光線をピーピー撃ってる様を、遠巻きに眺めているだけのクライマックスの迫力のなさや、当時でさえ微妙にズレていた時代感覚から生じるそら寒さが槍玉に挙げられているが、本作の問題点はそこではない。モテモテで完全無欠のヒーローが有り得ないことを平然と成し遂げてしまう本シリーズは、確かにマンガである。しかし、そのマンガ的な部分を作り手も登場人物も建前上認めないからこそ、映画の中の現実として観客は楽しむことが出来る。ところが本作では、その建前を「マンガですから」とぶっちゃけてしまう。“ユートピア建設”を野望に持つ大富豪と、前作『007/私を愛したスパイ』と大して変わらぬ悪役に新味がない分を補う為か、ロジャー・ムーアに代わってから徐々に増え始めていたユーモアを大幅にアップ。しかし、そのネタにされているのがボンド映画らしさを保っているエッセンスの部分。ボンドが異常なまでに女好きで、どこに行っても美女が過剰に登場し、殺し屋は揃いも揃ってマヌケであり、その死に様もギャグになってしまう有様。“ボンド映画における脱構築”と言えば聞こえはいいかも知れないが、どれもこれも締りが悪く、非常に居心地も悪い。

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科学者だろうがスパイだろうが「女は女」としか見てない様に描かれている本作のボンドは、大活躍をしていてもそうは見えない緊迫感のない演出も相まってか、思いのほか印象が薄い。その分、前作での人気に応え再登場したジョーズが大活躍をしてくれるのだが、飛行機からだろうが宇宙空間だろうが、どこから落ちても死なないマンガ的キャラクターに変貌し、人気が出ると同時に悪玉から善玉に転向するレスラーの如く、殺し屋の分際で誰一人殺さないただの銀歯に成り下がり、メガネにおさげの痛々しいコスプレ女とフランケンシュタインごっこに興じる始末。結局、本作でボンドと対峙する殺し屋といえば、剣道の面をつけ竹刀を構え、「胴ーーーーーっ!」と叫びながら面を打つ、微妙に卑怯な日本人ただ一人に。そもそも竹刀でどうするつもりだったのか?
未知との遭遇』や『2001年宇宙の旅』から音楽を拝借するベタなSFギャグや、馬に乗ったらすかさず『荒野の七人』のテーマが流れるオジサンの固定概念のような音楽遊びにも辟易するが、3度目の登板となるシャーリー・バッシーによるテーマ曲はなかなかなものであるし(エンディングの“ディスコ・ムーンレイカー”はなかったことに)、ボンドガールのロイス・チャイルズも非常に好きなタイプの顔立ちである。世界旅行の贅沢な気分だけはたっぷりと味わえる、多彩なロケ地も魅力。そして、なによりも本作が私が最初に劇場で観たボンド映画が本作なので、どう文句をつけても嫌いには到底なれず、採点はやはり甘めに。

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スタントだけは、相変らずスゴイ

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2007年01月09日

ザ・ダーク (The Dark)

監督 ジョン・フォーセット 主演 マリア・ベロ
2005年 ドイツ/イギリス映画 93分 ホラー 採点★★★

ホームレスの殺人鬼を追い詰めてみたら、目からビームを出しやがった『ザ・ダーク』までもがリメイクされたのかと驚いてもみたが、案の定違う映画で。よかった、よかった。

【ストーリー】
娘のサラと共に、別れた夫ジェームズの住むイギリス・ウェールズ地方へとやって来たアデル。再会の喜びも束の間、サラが波にさらわれ行方不明となってしまう。その夜、悲しみに暮れるアデルの下にエブリルと名乗る少女が現れる。しかし、彼女は50年前に死んでいるはずなのだが…。

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舞台が舞台なだけに、『ウィッカーマン』や“猿の手”をどことなく髣髴させるが、製作にダメな方のポール・アンダーソンが名前を連ねちゃってるせいか、ダメな『サイレントヒル』どまりの作品に。
カルト教集団による過去の忌まわしき事件と、生贄によって亡き者が帰ってくるという設定は面白く、イギリスならではの海岸線の景色も美しい。しかしながら、“親子の絆”“邪教”“死者の復活”など、あれこれと突っ込んだ様々なテーマが全く整理されておらず、肝心の復活したはいいが中身は別物の少女が、結局は邪悪なのか違うのか最後の最後まで不安定なのもいただけない。危うく『3人のゴースト』になってしまいそうなところをギリギリで回避しなければならないほど、ストーリーラインに計画性が見えない
傑作だった狼少女映画『ジンジャー・スナップス』のジョン・フォーセットだけに、怖さと悲しさが同居する作品を期待してしまったのだが、突然大きな音を出して驚かせる以外に恐怖演出はなく、マリア・ベロ扮する主人公のあまりに突飛な行動の数々に、悲しい物語のはずも同情が出来ない始末。ところどころ非常にいい雰囲気を出しているだけに、残念な結果に。

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ペイバック』『ヒストリー・オブ・バイオレンス』『アサルト13 要塞警察』と、“昔美人の成れの果て”を演じさせたら右に出る者はいない境地まで達してきたマリア・ベロなのだが、本作ではその“成れの果て”度合いが急増。「これに90分付き合わなきゃならないのか…」と初っ端から滅入っていると、大いなる救いの手が現れた。もちろんそれは、ショーン・ビーン
長めの髪にヨレたセーターを着込み、ブラック・ジャックでも住んでいそうな崖っぷちの家から出てきて、振り向きざまに微笑むショーン・ビーンの登場シーンの格好良さは、『リベリオン』のガン=カタに匹敵する格好良さ。もう、悶絶。そこを繰り返し観るためだけでも、お金を払う価値がある。ショーン・ビーンのフィルモグラフィの中でも、トップクラスにカッコいいショーン・ビーンなのではないだろうか?また、「スカーレット・ヨハンソンに似てるね」が最大かつ唯一の賛辞であろうソフィー・スタッキー扮する愛娘がアッチの世界に行ってしまって、母親が半狂乱になって探す『サイレントヒル』な物語なだけあって、今回もショーン、全く役に立たず。それもまた、悶絶。
ショーン・ビーンのカッコよさと、優しい眼差しと、ベソ顔と、役立たずっぷりをお腹一杯堪能できたので、★2つオマケで。

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きゃー!もう、ショーンってば!

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2006年12月25日

007/リビング・デイライツ (The Living Daylights)

監督 ジョン・グレン 主演 ティモシー・ダルトン
1987年 イギリス映画 132分 アクション 採点★★★★

クリスマスですねぇ。そんな日にまでこんなサブタレに来て頂いた皆様にだけ、メリー・クリスマス。こんな所に来るよりも遥かに楽しいことをしているであろう方々には、サタンの気が効いた計らいでちょっとした気分を害する出来事が起きますように。さて、クリスマスといえば正月映画。正月映画といえば、もちろん007です。というわけで、今日も007でございますよ。

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【ストーリー】
ソ連の高官コスコフの亡命を手助けするため、護衛の任に就いたジェームズ・ボンド。コスコフを狙う狙撃者から無事彼を守り亡命を成功させ、彼を厳重警備の下に置かれたMの邸宅に保護をする。コスコフの口からソ連が計画する西側のスパイ暗殺計画が漏らされた。その首謀者がボンドもよく知るプーシキン将軍であることに疑念を抱くボンドであったが、コスコフが何者かに強奪され、コスコフを狙った狙撃者もコスコフが囲っていた音楽家であることが判明すると、事態は混迷を極めていく。

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4代目ジェームズ・ボンドであるティモシー・ダルトン初登板の作品で、シリーズ第15弾。ジョン・グレンが『007/ユア・アイズ・オンリー』から4本連続での監督となる。
さすがに目的が世界征服という悪役を登場させるには、たとえボンド映画であろうとリアリティに欠けはじめた頃であったため、今回の悪役は私欲に走ったソ連高官と武器商人と、いささか地味。常人とは明らかに違う身体的特徴があるわけでもなく、別にボンドじゃなくても倒せそうな感すらある。確かにこれまでのボンド映画のように強大な敵と陰謀にボンドが立ち向かうような作品であれば、この悪役は小者にも程があるのだが、本作は別にそこに面白さを盛り込んだわけではない。スパイ活動をする上で付きまとう、偽装・裏工作・裏切り・嘘など、対人間であるからこそ生まれるスリリングな展開がてんこ盛りなのだ。特に、ウィーンの遊園地で展開されるボンドの同僚が暗殺されるシークエンスは、感情を露にするボンドへの驚きも相まって、「これぞスパイ映画!」と唸らせる出来だ。

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もちろんこのままで終わってしまえば“良く出来たスパイ活劇”で終わってしまうのだが、そこはボンド。飛行する貨物機から垂れ下がり激しく上下する貨物網に、命綱も付けずにひたすらしがみ付いて格闘をする凄まじい空中スタントや、ボタン一つで何でも出来るお馴染みのボンドカー、アストン・マーティンなどボンド映画に欠かせないギミックも満載。ややアクション面に偏りがちだったジョン・グレンの一連ボンド作品の中で、一番バランスの取れた作品となっている。とは言え、お楽しみの“素晴らしき世界旅行”的景観を望むには、主たる舞台がウィーンとアフガニスタンである本作には、やはり地味な印象も。ボンドがアフガニスタンにいること自体、あまり似合いませんし。また、この頃公開された『ランボー3/怒りのアフガン』からも分かるとおり、この時期のソ連を悪役に描く上でアフガニスタンは重要な位置を占めることは理解できるのだが、“ソ連の敵は西側の味方”といった単純構造で描かれていること自体に違和感も。まぁ、アフガニスタンを舞台に描かれるクライマックスのアクションが素晴らしいので、その辺の違和感もウヤムヤにされてはいるのですが。
ボンド映画の音楽と言えば、やはりジョン・バリーは外せない。本作でもボンド映画のツボを押さえた見事な楽曲の数々を披露しており、中でもボンドとカーラの遊園地デート等で流れる旋律の美しさは絶品。その旋律を基に作り上げられたプリテンダーズの歌うエンディング曲も、クリッシー・ハインドのフラット気味なボーカルの味と相まって、一度聴いたら耳から離れない素晴らしい曲となっている。また、本作の主題歌をノルウェーの三人組a−haが担当。世間的には“テイク・オン・ミー”のイメージが強い彼らであるため、「何で、あんな可愛い歌ばかり歌ってる連中が?」との疑問も多かったが、セカンドアルバムである“Scoundrel Days”でも分かるとおり、彼らの作るメロディラインは意外と大人っぽい。その大人っぽさにジョン・バリーが加わることで、より甘美な楽曲に仕上がっている。なぜかカラオケでよく見かけるこの曲。そりゃぁ歌い切れれば気持ちいいことこの上ない曲ではあるが、低音とファルセットが交互に行き交うこの曲を素人が歌い切るのは当然困難。聴かされる方も堪ったもんじゃない。それでも、ついつい歌ってしまうんですよねぇ、私。

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007/私を愛したスパイ』の頃から表面化してきたロジャー・ムーアと製作サイドとの衝突と降板騒動も、ロジャー・ムーアの根強い人気もあって続投が続けられていたが、さすがに老いが目立ってきたのか今回は比較的すんなりと降板が決定。次期ボンド候補として、サム・ニールやショーン・ビーン(後に数字を一個減らされて“006”として『007/ゴールデンアイ』に登場。減らされちゃうあたりが、ショーン・ビーンらしくて堪らない)の名前が挙がるが、『女王陛下の007』で候補に挙がるものの「まだボンドを演じるには若すぎる」として自ら辞退した『ロケッティア』のティモシー・ダルトンに白羽の矢が当たる。しかし当時ブルック・シールズ主演のトンデモ映画『ブレンダ・スター』に出演中であった為、かねてからの次期ボンド大本命ピアース・ブロスナンにオファー、決定という流れになる。ところが、出演中だったTV番組との契約が切れず、泣く泣くピアース・ブロスナンは降板、『ブレンダ・スター』の撮影終了を待って再度ティモシー・ダルトンが新ボンドとして決定する。ティモシー・ボンドが短命で終わり、拍手喝采でピアース・ボンドが迎え入れられる流れは、なんとも本命と押さえをヤリクリする男女関係のようで生々しい気もしますが。そんな紆余曲折がありながらも、原作を熟読して役作りに励んだティモシー・ダルトンのボンドは、その無駄のない身のこなしの割に喜怒哀楽がはっきりとした人間味溢れるボンドとして、見事なまでの存在感を発揮する。感情表現にやや舞台演劇めいた大袈裟さもあるものの、それがまた笑顔と優しさの裏に隠れた胡散臭さを醸し出していて、本作のボンドにピッタリ。
エラの張った顔立ちに華奢な身体つきで“つきまとい型ボンドガール”を演じるマリアム・ダボは、好きな人には堪えられないタイプなのであろうが、個人的には苦手なタイプ。本作では悪役だが、後の『007/ゴールデンアイ』から馴れ馴れしい呼び方でボンドに味方するCIAエージェントとして再登板するジョー・ドン・ベイカーや、ドワーフのギムリも登場。MやQといった常連組や、『007/カジノ・ロワイヤル』ではジェフリー・ライトが演じていたCIAエージェントのフェリックス・レイター、『007/私を愛したスパイ』以降ボンドの宿敵として登場しながらも、本作ではただの好々爺になっていて驚いたゴーゴル将軍など準レギュラーも勢揃いするのは嬉しいのだが、ロジャー・ムーアとの大人なやり取りが楽しみだっただけに、マネーペニーの若返りには寂しさと不満が。まぁ、当時既に還暦だったロイス・マクスウェルとティモシー・ダルトンじゃぁ、親子にしか見えないので仕方がないんでしょうが。

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ボンド史上最もカッコ悪い偽名“ジャージー・ボンドフ”

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2006年12月23日

007/私を愛したスパイ (The Spy Who Loved Me)

監督 ルイス・ギルバート 主演 ロジャー・ムーア
1977年 イギリス映画 125分 アクション 採点★★★★

誰かと付き合うってことになる場合、だいたいは自分の方から好きになるってのがほとんどの私。「好きです!付き合ってください!」と土下座されたことなど、一度もございません。まぁ、土下座したこともございませんが。そんなわけで、女性から一方的にモテモテのジェームズ・ボンドは私の憧れと目標でございまして、劇場には足げに通い、TV放映も欠かさず観てモテる勉強をしてたんですが、未だに勉強が足りないようで。まぁ、相手を必ずカチンとさせる一言を添えることだけは忘れない男に育ちましたが。

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【ストーリー】
英国とソ連の原子力潜水艦が行方不明になる事件が発生。その背後に海運王ストロンバーグが絡んでいることを知った英ソ両首脳は、ジェームズ・ボンドと、恋人を何者かに殺害されたソ連の女スパイ、トリプルXを派遣。協力し行動する中でお互いに惹かれ合う二人だが、トリプルXの恋人を殺害したのがボンドであることが判明し…。

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3代目ジェームズ・ボンドのロジャー・ムーア3本目の作品で、シリーズ第10弾。マイ・ベスト・ボンド作品である『007は二度死ぬ』のルイス・ギルバートが、久々の登板を果たす。
アルプスでの激しいスキーチェイスの末、断崖絶壁からジャンプ。落下するボンドがパラシュートを開くと、柄がユニオンジャックというオープニングからして素晴らしいの一言。落下からパラシュートが開くまでの、早からず遅からずの絶妙な間と、そこに被さるカーリー・サイモンのテーマ曲の見事なアンサンブルは、何度観ても身震いがする。ザバザバと海底から浮上するカニ型巨大要塞に居を構える手に水かきのついた大富豪の“地上を核ミサイルで破壊して海底に楽園を作る”という、壮大だが意味が全く不明な野望もこのスケールの大きい作品にピッタリ。「そんだけのもの作る金があるんだったら、潜水艦ぐらい盗まないで作れよ!」というツッコミも寄せ付けないパワフルさだ。
水陸両用のロータス・エスプリなどギミック満載のアイテムや、アルプス(ロケ地はカナダだが)、エジプト、イタリアと豪華旅行気分の味わえる舞台、後のスパイ風映画やパロディにも登場する、チューブやドーム型を多用した秘密基地の形状など、どれを取っても「007を観た!!」と強く感じさせる正月映画ならではの豪華絢爛さと醍醐味に溢れた一本。地味でストイックなボンド映画に評価が偏る傾向にあるが、その地味さはこういったケレン味たっぷりの作品があってからこそ映えるもの。
スパイ同士の愛憎劇が繰り広げられそうな物語の割に、恋人を殺したのがボンドだと判明しても多少ふくれっ面をしただけで、後は「もう〜、ジェームズってばぁ〜」で終わってしまうのは確かに安易過ぎるが、「もう〜、ジェームズってばぁ〜」とボンドガールのみならず、観客が呆れながらも許してしまうのは何もこの作品だけとは限らないので、評価を下げる要素とはならず。

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歴代ボンド史上、最も女に節操がなく口数が多いボンドとして記憶に残るロジャー・ムーア。3度目のボンドということで場慣れもしたのか、本作で独自のボンド像を確立。如何なる時でもユーモアと女性を追っかけることを忘れないボンドとなっている。まぁ、口説いた女性と一緒にいながら、目の前にいる『シンドバッド黄金の航海』のキャロライン・マンローにデレデレとなるボンドに女性の方々は「キーッ!」となるのかも知れませんが、仕方がないんです。ボンドに限らず、男は皆キャロライン・マンローを見るとデレデレとなるんです。デレデレとさせてやって下さい。
『ドクター・モリスの島/フィッシュマン』『おかしなおかしな石器人』と、その見事なプロポーション以外は全く記憶に残っていないバーバラ・バックがボンドの相手役として奮闘しているが、やはりその見事なプロポーション以外は全く記憶に残らず。まぁ、首から上があまり好みではないのでいたし方がないのだが。そんな、ボンドガールにばかりデレデレとしているこっちの心を見透かしたかのように登場するのが、リチャード・キール扮するシリーズ屈指のインパクトを誇る殺し屋ジョーズ。その名に恥じないギザギザの銀歯で人食い鮫にも噛み付くツワモノだ。人食い鮫に食らいつくのは、コイツと『サンゲリア』の海ゾンビくらいなもので。しかしこのジョーズ、殺し屋にしては目立ちすぎる巨体に、武器が“歯”というプリミティブさが非常にマンガ的ではあるが、ボスが半魚人みたいなもんなので違和感もない。ボンドが倒せなかった殺し屋として人気も高いジョーズだが、そりゃあまぁ、ボンドもあんなにデカイ図体を持つ相手なのに銃で歯を狙い続けてたんじゃぁ、倒せないのではと。この人気の高さによって、次回作『007/ムーンレイカー』にも殺し屋としては異例の連続登板をすることに。
本名がブースロイド少佐であることが判明するQや、どこででもボンドを待っているマネーペニー、本作よりレギュラーとなる寒々しくてただっ広い石造りのオフィスに、机一つでポツーンと座っている敵役のゴーゴル将軍等、お馴染みの顔ぶれが揃っているのも、やはりファンとしては嬉しい限り。

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全部むし歯になっちゃったんでしょうか?

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2006年12月21日

ダブルボーダー (Extreme Prejudice)

監督 ウォルター・ヒル 主演 ニック・ノルティ
1987年 アメリカ映画 105分 アクション 採点★★★

ベトナム戦争の泥沼化が進む60年代後半。カリフォルニアの片隅でルーカスやスピルバーグら若き映画作家の卵たちが口々に「戦争怖いねぇ。行きたくないねぇ」語り合う中、「戦争行きてぇ!ベトコン撃ちまくりてぇ!」と騒ぐ男が一人。彼の名は、ジョン・ミリアス。後に、ソ連兵がパラシュートで降ってきてアメリカを占領するという、随分と要領の悪い占領方法だが中学生魂には火を付けた『若き勇者たち』を撮るゴリゴリのタカ派監督だ。そんな彼だから入隊検査を喜び勇んで受けるが、持病の喘息で入隊叶わず。落ち込んだミリアスは、伝え聞いたベトナムの現状とジョゼフ・コンラッドの『闇の奥』を基に、ハッパをキメこんでサーフィンをする海兵隊兵士と、白人の兵士がジャングルの奥地で原住民を部下にベトコンをバリバリと殺しまくる“カッコイイ”戦争アクションの脚本を完成。ルーカスらと「今度一緒に撮ろうね♪」と夢を膨らませていたが、いつの間にかその監督の座は彼ら若手映画作家たちの親分格だったコッポラの手に渡り、コッポラ持ち前の運のなさと目論みの甘さが祟り、次々と現場にアクシデントが起こるその混沌そのものを映像化したかのような作品が出来上がる。そう。『地獄の黙示録』がそれだ。

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【ストーリー】
かつては親友同士だったジャックとキャッシュも、長い年月を経てジャックは法の番人テキサスレンジャーに、キャッシュはメキシコの麻薬王となっていた。キャッシュの逮捕に躍起となるジャックの前に、公式には死亡となっている軍人の一団が現れ、彼らの目的もキャッシュであることを知ったジャックは、彼らと行動を共にするが、彼らの真の目的は別の所にあった…。

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『地獄の黙示録』に大きな失望を感じたミリアスだったが、ミリアスの脚本は巡り巡ってウォルター・ヒルの手に。ミリアスはきっと喜んだに違いない。「男気溢れるアクションが得意のウォルター・ヒルなら、きっと“カッコイイ黙示録”を作るに違いない」と。確かにウォルター・ヒルは『ザ・ドライバー』『ウォリアーズ』と、ゴリゴリの硬派で切れ味の鋭いアクション映画を撮っていたが、『48時間』を最後に『マイナー・ブラザース/史上最大の賭け』『クロスロード』と非アクション映画を連発。批評的にも興行的にも苦戦を強いられていた。「やっぱり俺にはアクションしかない」と腹を括ったのか、ミリアスの脚本を大幅に書き換え、自身が敬愛するサム・ペキンパーに近づこうとしたのか舞台をベトナムからメキシコとテキサスに変更。燃えるゲリラ戦も、ヒルが取り扱いやすい一対一の対決を軸にすることに。もうこの時点で全く“黙示録”ではないのだが、これはこれでヒルらしさが存分に発揮しやすい舞台だ。主演には『48時間』に続きニック・ノルティが、ライバル役にはヒルのジャングル映画の傑作『サザン・コンフォート/ブラボー小隊 恐怖の脱出』のパワーズ・ブース、『スキャナーズ』のブレインクラッシャー、マイケル・アイアンサイドと、キャスティングも完璧の布陣。音楽は、ライ・クーダーだ。この布陣で、ペキンパーに一番近い男と称されたウォルター・ヒルが『ワイルド・バンチ』に挑むのだから、期待が高まらないわけがない。が…期待してた時が一番楽しかった
冒頭のアクションシーンこそ素晴らしいが、あとはペキンパーに近づこうとすればするほど遠のいていく、ただ人が死ぬだけの混沌としたアクションシーンが続く。燃える要素である特殊部隊の連中を脇に追いやり、男同士が女を取り合う話を軸にしてしまっている為、風呂敷こそ大きいが中身が小さいスケール感も寂しい。そのくせ特殊部隊の連中が半端に物語に首を突っ込んでくるので、より一層混沌としてしまいウザったい。結局は、目的こそ明確だが何を考えているのか全く分からない、脂ぎった顔にラードを塗りたくったかのようにギラギラギトギトした登場人物が右往左往するだけの作品に。今では、ウォルター・ヒル没落の記念碑的作品として記憶に残ることと。

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とは言え、作品自体はアレだが、この顔ぶれを見る分には満足度は高い。まぁ、満腹度とも言えますが。近作の『ホテル・ルワンダ』でもそのタフネスぶりは健在であったが、この頃のニック・ノルティは細胞の全てにタフと書いてあるかのような、タフな男の権化。結局は何を考えているのか全く分からないキャラクターではあったが、ノルティ史上屈指のカッコ良さを誇るキャラクターだ。そんなタフ神様相手では、たとえ『フレイルティー/妄執』の生粋のテキサスブロンコ、パワーズ・ブースであっても不安があったのか、バグズの天敵マイケル・アイアンサイドに首を切り落とされない限り倒れないクランシー・ブラウン、セガールにだけは滅法弱いデビルズ・リジェクト〜マーダー・ライド・ショー2〜』のウィリアム・フォーサイスらが顔を揃える胃もたれ確定の高カロリーキャスティング。健康的にアッサリとしたキャスティング慣れした目には、非常に刺激的である。
もちろんジョン・ミリアスが、この作品に満足するわけがない。「もう誰もボクの“黙示録”を分かってくれない!」とばかりに、遂に自らメガホンを握り『戦場』を製作。少なくとも本作のニック・ノルティだけは気に入ってたのか、引き続き彼を起用。まぁ、蓋を開けてみれば妙にこじんまりとした原住民との交流物語になってたんですが。「これが本当にやりたかったことなの?」と大きな疑問を残したまま、“黙示録”を封印したミリアスでしたとさ。

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洒落たカーツにごっついウィラード

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2006年12月19日

007/ゴールデンアイ (Goldeneye)

監督 マーティン・キャンベル 主演 ピアース・ブロスナン
1995年 イギリス/アメリカ映画 130分 アクション 採点★★★★

女性と動物には優しいですが、それ以外には鬼のように厳しい態度をとるたおです。こんばんは。「また007かよ?」との声も聞かれそうですが、元々大好きなシリーズですのでご容赦を。でもまぁ、シリーズだけでもあと18本もあるので、いつも通り途中で飽きてやめちゃうこと請け合いですが。

【ストーリー】
ロシアで極秘裏に開発されていた電磁波攻撃衛星“ゴールデンアイ”が、謎の組織“ヤヌス”によってコントロールを奪われてしまう。世界中がそのターゲットになり得るこの危機に、ジェームズ・ボンドが立ち向かう。

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5代目ジェームズ・ボンドのピアース・ブロスナン初登場の、シリーズ第17弾。『007/ユア・アイズ・オンリー』から長くシリーズを監督していたジョン・グレンに代わり、最新作『007/カジノ・ロワイヤル』のマーティン・キャンベルが監督するなど、キャストのみならずスタッフも一新。これまでの作品を一手に仕切ってきたアルバート・R・ブロッコリに代わり、娘のバーバラ・ブロッコリがプロデューサーにクレジットされるのも本作から。
ティモシー・ダルトンによるボンドがお気に入りだったこともあり、既に名前も顔も知られていたピアース・ブロスナンへの交代には「えぇ?あの色男なだけの奴かぁ?」と不安も不満も大きかったのだが、いざスクリーンに登場すると初ボンドとは思えぬ板に付きっぷり。まるで既に10本ほどこなしたかのような、全くの違和感のなさに驚いたもの。程よく優男で、程よく野性味があり、喜怒哀楽を程よく表現するピアース・ブロスナンは、まさに理想のボンド役者と言える。
しかしながら、新ボンドに全く不満がないとはいえ、作品自体に不満がないわけではない。寒々しいロシアと鬱蒼と木が生い茂るキューバのジャングルがメインの舞台となるため、シリーズお馴染みの観光名所巡りの楽しさはなく、秘密裏に開発されていた攻撃衛星や、ジャングルの湖からザバザバーと出てくる巨大アンテナなど007らしいケレン味溢れるアイテムが多く登場するが、それらの扱いが非常に雑。ただ出てくるだけ。ボンドカーにいたっては、なんの機能も使わないどころか、違う人が乗って帰っちゃう愛のなさ。オープニングの巨大ダムでのバンジージャンプや、やたらと長々と続く戦車での追いかけっこなど、ド派手なアクションのつるべ打ちであるが、それらのアクションも全て大味。派手なだけで工夫がないのは、マーティン・キャンベルの特徴でもあるのですが、同時期に発売されていたニンテンドー64のゲーム版の方が面白いのは、いかがなものかと。人間業の限界に挑む華麗なスタントの見せ場も減り、特殊効果による合成処理が増え始めたのも本作から。「なんか、シャーリー・バッシーっぽいよね?」と安易な考えで起用されたかのようなティナ・ターナーによる主題歌は印象に残らぬ薄味さで、確かにシリーズにおいて前へ前へとでしゃばり過ぎる傾向にある音楽ではあるが、エリック・セラによる音楽はあまりに控え目で寂しい。エンディング曲にいたっては、唖然とするカッコ悪さですし。まぁ、『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』の時に日本でのみ無理矢理挿入され観客が逃げるように劇場を後にしたルナシーの曲よりは全然マシでしたが。

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しかし、それら数多くの不満を相殺しているのが、ピアース・ブロスナンをはじめとするキャスティングの魅力だ。
長らく男性のファンタジーであった007シリーズに、「あなた(ボンド)は女性蔑視の時代を象徴する太古の恐竜の生き残りよ」とセリフでもあるように“強い女性”というテーマをようやく取り入れた本作。そのテーマを象徴するように、M役にやたらとギラギラしたジュディ・デンチが初登場する。しかし本作で最大の強さを表すのが、ファムケ・ヤンセン演ずるオナトップだ。“On A Top”の名前通り、上に乗るのが大好きな彼女のいささか締め付けのきつ過ぎる下半身技は見事の一言。口元に可愛らしさの残るファムケ・ヤンセンのはじけっぷりが、本作最大の収穫と言える。まぁ、彼女以外のボンドガールが、ギャーギャーうるさいだけのイザベラ・スコルプコに、“嬉しくない女優ランキング”のトップの座に君臨するミニー・ドライヴァーなので、ファムケ・ヤンセンだけが印象に残るのも仕方がないのですが。
で、お待ちかねのショーン・ビーン。元“00”の肩書きを持つ謎の組織のリーダーという美味し過ぎる役柄なのだが、ものの見事に印象が薄い。火傷メイクまでして頑張ってるのに。まぁ、巨大な秘密基地を持ち、極秘人工衛星まで手中に収めたのに、やってることが銀行強盗という小者っぷりがまた、ショーンらしくて愛らしいのですが。単品スター映画であるはずの007にしては、物腰のしなやかなアラン・カミングなど顔ぶれが豪勢で、不安の残る初ボンドであるピアース・ブロスナンをバックアップする為のキャスティングかと思いきや、不安が残ってたのはショーン・ビーンの方だったようで。
頭が大きいのか肩幅が狭いのか、遠目で見るとバブルヘッド人形のようにも見えるブロスナンなのだが、本作を含め『ダイヤモンド・イン・パラダイス』『テイラー・オブ・パナマ』『トーマス・クラウン・アフェアー』と、やたらと南国の小島の砂浜で寝っ転がっている作品が多いようで。大好きなんでしょうね、南国の小島の砂浜が。究極の南国の小島映画『ロビンソン・クルーソー』にまで出ちゃうくらいですからねぇ。

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もうちょっと前へ出ればいいのに

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posted by たお at 00:47| Comment(4) | TrackBack(7) | 昔観たアレ■た行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月16日

007/ユア・アイズ・オンリー (For Your Eyes Only)

監督 ジョン・グレン 主演 ロジャー・ムーア
1981年 イギリス/アメリカ映画 128分 アクション 採点★★★★

“初心に帰る”ってのは、どんな場面でも聞かれる言葉ですね。でも、「もう二度とこんなことしないから、もう一度オレとやり直そう!」とか言う奴に限って、三日もしない内にまた初心に帰らなきゃなんないようなことをしでかすんで、あんまりあてになんない言葉ですよねぇ。まぁ、「オレは初心になんか帰らない。このまま突っ走るぞぅ!」と開き直られるよりはマシですが。

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【ストーリー】
全世界をターゲットにしうるミサイル誘導装置“ATAC”を積んだ英国スパイ船が沈没。引き上げに当たっていた海洋考古学者が何者かに殺害され、その暗殺者と背後で操る人物を探る為、ジェームズ・ボンドはギリシャへと向かう。

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シリーズ屈指の迫力と面白さを持った『007/カジノ・ロワイヤル』であったが、「007を観た!!」という満足度にはいささか欠ける出来でもあったので、欲求不満を補う為に旧作をピックアップ。
3代目ジェームズ・ボンドのロジャー・ムーア5本目の作品で、シリーズ第12弾。宇宙空間でピピーピピーとレーザー戦を繰り広げた前作『007/ムーンレイカー』でさすがに行き過ぎたと感じたのか、大幅な軌道修正を施された本作。『女王陛下の007』で殺された妻の墓参りから始まる本作は、開始早々ボンドの宿敵ブロフェルド風の男をあっさりと倒し、『007/私を愛したスパイ』で大活躍した万能車ロータス・エスプリを木っ端微塵にする、『007/カジノ・ロワイヤル』でも見られたアンチボンド的な描写が満載。マティニも飲まない。悪役も東西冷戦を利用して小銭を稼ぐ密輸業者と、随分とこじんまりした設定。その反面、Qこそ出てくるが秘密兵器に頼らないボンドの肉体アクションに魅力が詰まった作品に仕上がっている。
元々スキースタントに定評のあったシリーズではあるが、ボブスレーのコースをスキーとバイクがチェイスするシーンは見事の一言。まぁ、華麗さでは『007/私を愛したスパイ』のオープニングスタントに軍配が上がるが、迫力の面に関しては本作が上。さすがシリーズのアクション監督等を長く務め、本作以降『007/消されたライセンス』まで連続して監督を務めるジョン・グレンだけあって、絶壁からのダイブシーンなど目を見張るアクションシーンが連続する。多少展開がまどろっこしく、いかにもラウンジミュージック風のシーナ・イーストンが主題歌は悪くないものの、シリーズ中最悪とも言えるビル・コンティの音楽に辟易もする。しかしながら、随所に織り込まれたキレのいいアクションの連続と、シリーズの名物でもある世界名所巡りが堪能できるので、退屈させない作品となっている。

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ユーモアを忘れないボンドとして定着していたロジャー・ムーアだが、原点回帰を狙った本作では、持ち味の減らず口をだいぶ自粛。いつものロジャー・ムーアを期待していると幾分物足りなさを感じてしまうのだが、その物足りなさを補ってくれるのが、ボンドの協力者として登場するコロンボ役のトポル。海の男特有の豪快さと明るさを持ったこの役は、時折ボンド以上の魅力さえ発揮することも。まぁ、そばにいたらうるさくて仕方がないタイプの男ではあるんですが。
旧作だけで20本もあるシリーズだけにどれを再鑑賞するか迷ったが、どうせなら一番好みのボンドガールが出ている作品をと言うことで手に取った本作。やはり、何度観てもキャロル・ブーケの美しさは絶品。表情が異常に乏しいのでキャラクターとしての魅力に著しく欠けてはいるが、「これが“クールビューティ”ってやつだな」と思い込みさえすれば、そんな不満など些細なもので。また特筆すべきボンドガールとしては、伯爵夫人役として登場する故カサンドラ・ハリスが挙げられる。彼女が演じるキャラクター自身はさして特別なものではないのだが、撮影当時彼女に会いに撮影現場までやってきたのが、夫のピアース・ブロスナン。彼をひと目見たプロデューサーがいたく気に入ったようで、以降事ある毎にボンド役をオファーすることに。その他ボンドガールに、コッソリと男が混じってたり、プロアイススケーターとして人気のあったリン=ホリー・ジョンソンが出ていたりするが、特に印象はなし。まぁリン=ホリー・ジョンソンに関しては、高校時代に彼女の映画『アイス・キャッスル』を無理矢理学校の講堂で観させられた記憶が蘇りましたけど。映画の内容はさっぱり蘇りませんが、一箇所に集められた1000人近い男子学生が、男子特有の熱気を放ちながら女子スケートの映画を観るという、異様な雰囲気だけは蘇りましたよ。
最後に時のイギリス首相サッチャーのそっくりさんが登場しますが、そこだけコントの一場面のような出来なのはご愛嬌ってことで。

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サッチャー以上にヒドイ扱いなのが、ダンナの方で

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posted by たお at 02:52| Comment(2) | TrackBack(3) | 昔観たアレ■た行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月14日

007/カジノ・ロワイヤル (Casino Royale)

監督 マーティン・キャンベル 主演 ダニエル・クレイグ
2006年 アメリカ/イギリス映画 144分 アクション 採点★★★★

容姿やら年齢やら言葉のアクセントやら何かと条件が厳しいらしい、ジェームズ・ボンド役。まぁ、確かにある程度厳しい条件でもつけていないと、真っ先にウィル・スミスあたりがやりたがりそうなので、仕方がないのでしょうねぇ。その割に、一時はジュリア・ロバーツの名まで候補に挙がってたこともあるんですよね。うっかり“ジェームズ・ボンドは男”と書き忘れていたんでしょうか?

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【ストーリー】
二つの殺しを実行し“00”の称号を得たジェームズ・ボンドは、世界中のテロリストを資金面で援助し、そのテロ行為によって株式操作をし莫大な利益を得ている謎の男ル・シッフルを追う。やがてル・シフルがカジノ・ロワイヤルで大勝負に出ることを知ったボンドは、財務省から送られた美女ヴェスパーと共にカード勝負を挑む。

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決まるや否や、私も含め世界中のボンドファンから不安の声が一斉に上がったダニ・ボン。で、鑑賞後の結論からハッキリと言わせてもらうが、ダニエル・クレイグにジェームズ・ボンドは似合わない全くもって似合わない。だが、それでいいのだ。それが本作の目指した地平なのだから。
原点回帰どころか、既存のボンドイメージを全てぶち壊す所から始まる本作。マニペニーもQ(及びR)も出てこず、アストン・マーチンは賭けで手に入れ、マティーニに至っては「シェイクでもステアでもどっちでもいい!」と爆弾発言。“青空!”“海!”とくればボンドガールがセクシーな水着で登場する絶好のポイントだというのに、海から出てくるのは筋肉隆々のボンドだ。それも二度も!巷で話題の拷問シーンも、拷問内容自体はさしてショッキングではないのだが、あのボンドが真っ裸にひん剥かれ急所攻めを食らう醜態を晒してしまっているのがショッキングなのだ。そこまでして既存のボンドイメージを壊さなければならない理由は唯一つ。“ジェームズ・ボンドがジェームズ・ボンドではない”からだ。体力自慢の自信過剰で散漫で、大きなミスも犯してしまう血肉ある存在として描かれるボンドが、苦い経験を繰り返しながら“007”へと成長していく様を描いていく。リアル志向は超人的主人公を人間として描くだけではない。東西の冷戦が終結したことによりスパイ戦に現実味が失われ、情報社会となったことによりスペクターのような悪の首領が住み辛くなった現代。そんな世の中で007と対峙する悪役として選ばれたのは、テロリストだ。厳密に言えば、テロリストからの投資を元手に株式操作とギャンブルで利益を得、テロリストに還元する存在だ。確かに説得力のある悪役ではあるのだが、“火山の火口が開いたら秘密基地!”のようなケレン味が全く感じられないのは寂しい。

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しかしそんな寂しさを吹き飛ばしてくれるのが、序盤からトップギアで飛ばすアクションだ。007シリーズの魅力と言えば、要所要所で繰り広げられる鍛錬されたスタントマンによる限界に挑むスタントシーンと、その技の素晴らしさだ。『007/私を愛したスパイ』のスキースタントなんて、今観ても身を乗り出してしまう迫力だ。しかし、昨今のやたらと俳優のアップを撮りたがる風潮に乗ってしまったのか、前作『007/ダイ・アナザー・デイ』では、スタントマンの華麗なる技の数々はなりを潜め、CGを多用した薄っぺらいアクションシーン主体となってしまった。ボンドの拷問シーンにマドンナのテーマ曲が被さるオープニングがシリーズ屈指の出来だっただけに、非常に残念な結果となる。「007なんてもう古い」とコケにした『トリプルX』が、肉体スタントを主体とした“007らしさ”に溢れた作品となり、その続編である『トリプルX ネクスト・レベル』を『007/ダイ・アナザー・デイ』のリー・タマホリが監督することとなるとは、なんとも皮肉な話だ。
原点回帰と前作の反省の意味も込めてか、トイレで振り向き様に撃つ姿が恒例のスコープ越しのタイトルバックに被さる素晴らしいオープニングに続くアクションシークエンスが見事。高さも足場の狭さもお構いなしに飛び回るヤマカシな爆弾魔を追うボンドの、障害物は壁でも真直ぐぶち破る猪突猛進でヘビー級のボンドのキャラクターがよく表れているシーンだ。劇中次々と展開されるアクションシーンもただ派手なだけではなく、全てをスマートにこなしてしまう既存のボンドと一線を画した力任せで不器用な見習いボンドらしさ溢れたものとなっており、その安心感と安定感のなさがスリリングで手に汗を握るシーンを作り出している。
しかし、本作で最も手に汗を握るシーンとなっているのはそれら動的なアクションシーンではなく、タイトルにあるとおりテーブルについたまま見た目には全く動きのないポーカーのシーンだ。早い段階から長々と大ボスとボンドが向かい合う意外性とハッタリとかけ引きが渦巻く緊張感が相まって、まるで見えない弾丸が飛び交っているかのようだ。火薬量を競うアクション映画が氾濫する中、この展開は古き良きスパイ映画を髣髴させるだけでなく、一からボンドを作り直そうとする作り手の強い意志が見える。しかしながら、あまりにこのシークエンスが素晴らしすぎる為、ストーリー上は重要とはいえ後に長々と続くアクションシーンに蛇足の感が強い。まるで、フルコースの素晴らしいオードブルとメインディッシュを堪能した後、「もう腹いっぱいで食えない」と言ってるのにとめどなくデザートが出てくるような感じなのだ。まぁ、要素を詰め込み過ぎる傾向にあるポール・ハギスと、全編がクライマックスだらけでウンザリさせられた『バーティカル・リミット』のマーティン・キャンベルらしいっちゃぁらしいんですが。

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お馴染みのキャラクターと言えば、『007/ゴールデンアイ』以降M役に定着した『リディック』のジュディ・デンチと、『レディ・イン・ザ・ウォーター』『ブロークン・フラワーズ』のジェフリー・ライト演じるCIAのフェリックス・レイターのみが登場する本作。フェリックスとは初顔合わせの設定なので然程見せ場はないが、ただただ頭を抱えてるだけだったバーナード・リーの初代Mとは違い、オスカー女優としての格の違いか、出ずっぱりの傾向にあるジョディ・デンチのM。出ずっぱりとは言っても何ら役に立つわけでもなく、致命的に人を見る目がない為にボンドを窮地に陥らせることも多いのですが。
スパイや怪物が生き辛い世の中になってしまったせいか、悪役のスケールがどんどん小さくなっているのも本シリーズの特徴。いつの間にどうやって造ったのか不明な秘密基地に、どこで募集をかけていたのか不明だが大量に集まった戦闘員を擁し、世界征服かイヤガラセという壮大な夢を掲げる大物が出てこなくなって久しい。異形の者を怪物として描くのも難しい世の中になったのだろうが、頭に弾丸の埋まった『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』のレナードはメソメソしているだけだし、本作のル・シッフルも血の涙をピューっとボンドに飛ばすわけでもなく、借金取りに怯え、金策に駆け回る始末。世知辛い世の中ですねぇ。
ボンドと言えばロジャー・ムーアの世代である為か、程よいユーモアと洒落た物腰をボンドに期待してしまう私。そんなこともあって、野性味とソフトな物腰を兼ね備えたピアース・ブロスナンは最高のボンド役者だと思っていただけに、今回の降板は残念で仕方がない。「本作をピアースがやってたら…」と、ついつい想像を膨らましてしまう。だが、やはり本作のボンドはダニエル・クレイグの犯罪者顔がなければ成り立たない。人を殺す為に鍛え上げられた肉体と、一切躊躇することなく人を殺せる冷酷な目に、「ジェームズ・ボンドは殺し屋なんだ」と分かりきっていながら忘れていた事実を思い出すことに。たとえ顔の作りが大雑把に言えばトミー・リー・ジョーンズと同じジャンルにいるダニエル・クレイグであっても、ライフル片手にようやくキメ台詞を披露するラストの姿に、007の階段を上り始めた殺し屋の姿を見出し、ダニエル・クレイグ以外にこのボンドは演じられないと確信する。細身の身体に目を見張る美しさを持つがこれといったインパクトのないエヴァ・グリーンをはじめ、毒は盛るが毒気のないボンドガールらの印象の薄さや、後半以降の展開の蛇足感や、大好きだったバンド“サウンドガーデン”の元ヴォーカリスト、クリス・コーネルの歌うテーマ曲に然程魅力が感じられないなどの不満点も多い作品ではあるが、見事なオープニングと、ラストショットの素晴らしさが、それらの不満を相殺してあまりある満足度を生み出している。エンドロールでは特にタイトルは言明されなかったが、次回作への期待が否応がなしに膨らむダニ・ボン。まぁ、ダニ・ボン同様誰にも歓迎されないまま新ボンドとなり、素晴らしい音楽とストーリーに恵まれながらも、“ボンド結婚→花嫁殺害→ボンド拳を振り上げ号泣して幕”とシリーズ最大の問題作となった『女王陛下の007』に主演しながらも、スーツの着こなしの良さ以外は記憶に残らず、振り上げた拳を下ろす暇もなく降板となったジョージ・レーゼンビーのようにならなければいいのですが。

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ウルスラ・アンドレスをいつまでも引きずるファンへのイヤガラセとも言う

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posted by たお at 03:38| Comment(40) | TrackBack(131) | 昔観たアレ■た行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月12日

トゥモロー・ワールド (Children Of Men)

監督 アルフォンソ・キュアロン 主演 クライヴ・オーウェン
2006年 アメリカ/イギリス映画 109分 SF 採点★★★

赤ん坊ってのは、ホント不思議な生き物で。その顔を真っ赤にして泣き叫ぶ泣き声に一体どんな効力を秘めているのか分からないが、一旦その泣き声が響き渡れば誰もが振り向き、年寄りは集まり、犬猫もオロオロとし始める。泣き声を聞いちゃうと、その言葉にならないメッセージによって「なんとかしなきゃ!なんとかしなきゃ!」とオロオロしてしまうんですが、最近そのオロオロをイライラと履き違えてしまっている方々も多いようで。赤ん坊のメッセージを受け取れない大人の増加、少子化、セックスに関心のない青少年の増加。あまり人類にとって良い兆候ではありませんねぇ。

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【ストーリー】
2027年。原因が分からぬまま18年もの間子供が生まれなくなってしまった世界。暴力と絶望が渦巻く中、国境を封鎖し不法移民を徹底的に取り締まることで治安を維持しているイギリスのエネルギー省で働くセオは、ある日別れた妻ジュリアンが率いる反政府組織“FISH”に拉致される。彼女の要求は、一人の移民の少女を謎の組織“ヒューマン・プロジェクト”に引き渡す為に必要な通行証の入手。始めは拒むセオだったが…。

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子供が生まれなくなることで、静かに、そして確実に滅亡へと進んでいく絶望に暮れた世界を舞台に描く一本。別に“子供の産まれない未来”の映画と言っても、美人のくのいちが飛んだり跳ねたりするアレではない。
子供が生まれなくなってしまった原因については一切描かれていないが、原因を描かないことで対抗策も何もない抗うことの出来ない運命として、非常に良い効果を上げている。『ゾンビ』もそうなのだが、原因が重要なのではなく、そうなってしまった世界の絶望が重要なのである。また、未来が見えてしまった絶望から暴力に溢れ、社会全体が停滞してしまったが故に見た目が現在となんら変わらない設定も良い。キング・クリムゾンの“クリムゾン・キングの宮殿”が高らかと流れるバターシー発電所跡を使ったシーンでは、ピンク・フロイドの“アニマルズ”のジャケットを豚気球を飛ばしてまで完全再現する芸の細かさを見せたりする。クライマックスの、幾層にも分かれる建物の内外で激しい銃撃戦が繰り広げられる中、赤ん坊を探すシーンをワンカットで見せる技術力の高さにも驚くし、ほんの僅かな希望にすがるしかない結末も、「これぞデストピア映画!」と満足のゆく出来である。しかしながら、人物描写があまりに弱い。生活描写もほとんどないため、何を考え、何を感じ、何故その行動を取るのかが上手く伝わってこない。仄かに伝わる演出をしているのだが、文章でならまだしも、映像になるとやはり弱い。ましてや映像があまりに力強いので、心象描写が負けてしまっている。国家・組織の相関図も整理されきっていない感も否めない。短い時間にこれだけの展開を詰め込んだ手際のよさは大したものなのだが、バッサリと読み飛ばしをしてしまったような印象もあり、どうせならあと30分ほど生活描写を加えても問題なかったのではとも。まぁそれでも、その曖昧な部分を鑑賞後にあれこれ考える楽しみはありますが。

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ボーン・アイデンティティー』以降、『シン・シティ』などで目覚しい活躍を見せるクライヴ・オーウェン。本作では動物にだけは大人気の主人公を好演しているのだが、その濃い顔立ちとは裏腹にやる気を全く感じさせないオーラと始終苦虫を噛み潰したような表情は、イギリスならではのアイロニーに溢れた本作の世界観にピッタリ。その出番の短さが本作最大の不満点だったりもする『フォーガットン』のジュリアン・ムーアの、憂いた眼差しの美しさは絶品。ジョン・レノン、デイヴ・ギルモアというか、『世界を売った男』の頃のデヴィッド・ボウイのような髪型で登場するマイケル・ケインは、どうも最近このような浮世離れした役柄が多い気もするが、妻を前に意を決するほんの僅かなシーンで、思わず胸が熱くなるだけの奥深い表情を見せてくれるのは、さすが。
不満も少なくはないが大方満足のこの作品だが、字幕については一言二言。『セッション9』のピーター・ミュラン演じる警官のシドは、「シドはこうする」「シドはこれ嬉しい」と、必ず語頭に自分の名前をつけるちょっとアレな人なのだが、字幕ではそのニュアンスを一切無視。キャラクターの持つ人格を見事に壊している。文字数制限を言い訳にするほど長いセリフを喋っているわけでもないのに。そして、肝心のバターシー発電所跡でのシーンでは、場面と見事にリンクしているキング・クリムゾンの“クリムゾン・キングの宮殿”の歌詞を全く訳さず。被るセリフもほとんどないのに。なんだろ?ただのBGMだと思ったの?

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どんな背景でも“絵”になる女優ですねぇ

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posted by たお at 00:03| Comment(26) | TrackBack(78) | 昔観たアレ■た行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする