2011年06月24日

戦火の勇気 (Courage Under Fire)

監督 エドワード・ズウィック 主演 デンゼル・ワシントン
1996年 アメリカ映画 117分 ドラマ 採点★★★

自分としては大分大人の対応をしているつもりなんですが、それでも言いたい事をハッキリと言い過ぎちゃう傾向にあるようで、好き嫌いが激しいのと同様に好かれ嫌われも激しい私。ここまでハッキリと分かれちゃうと、気に入ってくれている人間とそうじゃない人間が私について話し合っても、とても同じ人間について話してるとは思えぬほど違いが出ちゃうのかなぁと。まぁ、自分の事を一番分かってない私が言うことでもないんですが。

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【ストーリー】
湾岸戦争で仲間の戦車を誤射してしまい、部下を死なせてしまったサーリング。その罪悪感に苛まれ、家庭も上手くいかなくなり酒に溺れる彼に、作戦中に戦死した初の女性名誉勲章候補者であるウォーデン大尉についての調査命令が下る。関係者の証言を集めるサーリングであったが、彼らの証言が微妙に食い違っていることに気付き…。

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戦場という特殊な状況下で起きた出来事の真相を、それぞれに食い違う証言の中から暴いていく様を描いた、『ラスト サムライ』のエドワード・ズウィックによる戦争ドラマ。
戦闘の混乱の中、生き残るために取った行動により仲間を死なせてしまった主人公が、その罪悪感に押し潰されそうになりながらも一つの事件の真相を追究することで、その罪と正面から向き合うようになる様を羅生門スタイルで描いた本作。見地の違いから生まれる食い違いではなく、大きな嘘を隠しているが為に生まれる証言のずれを暴いていくミステリーとしても面白い仕上がりとなっている。女性大尉が政治的な思惑から英雄に祭り上げられると言う構図も、裏と思惑があり過ぎた湾岸戦争を背景に描いているだけに興味深く、証言によって二転三転しながら真の姿が明らかになっていくと同時に、主人公が戦地で取った行動も浮き彫りになっていく構成が非常に上手い。大人の対応で終結する締めに感じるほろ苦さも、ほど良い余韻を残している。生き残るためのエゴが生み出した陰惨な事件を描いている割に、主人公のみが心の平穏を手にしちゃった感じもしなくもないが、構成の上手さがその辺をウヤムヤにしてくれている。

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主人公のサーリングに扮したのは、『アンストッパブル』『ザ・ウォーカー』のデンゼル・ワシントン。物語の展開に気を取られてしまう分、正直印象の薄い主人公ではあるのだが、その薄さを持ち前の上手さでカバーした感あり。
一方、証言によって二転三転する難しい役柄であったウォーデン大尉に扮したのは、『インナースペース』のメグ・ライアン。今では面影の無くなってしまった愛らしい口元にハネ気味の髪の毛と、いつものメグ・ライアンを残しつつも、田舎育ちの粗野さとタフさを併せ持った役柄を熱演。ラブコメの女王として君臨していた絶頂期である反面、そろそろその路線に飽きてき始めていた時期でもあったので、当時この役柄に大いに驚いたもので。
その他にも、痩せ過ぎちゃってヒラリー・スワンクと見分けがつかなくなっちゃってたグリーン・ゾーン』『インフォーマント!』のマット・デイモンや、『ボーン・アルティメイタム』のスコット・グレン、『もしも昨日が選べたら』のショーン・アスティンなどの良い顔ぶれが出揃った本作であるが、やはり最も目を引いたのは『ヤングガン』『ビッグ・ヒット』のルー・ダイアモンド・フィリップス。作品中最も戦地の似合うタフさを漂わせながらも、そのタフさが弱さと狡さを隠すためにより強調されているようでもある複雑な役柄を、見事なまでに熱演。これでまたメインストリームに戻って来るのかなぁと、当時大いに期待してたんですけどねぇ…

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目が泳いじゃった時点でもう負け

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2011年05月25日

スクリーマーズ (Screamers)

監督 クリスチャン・デュゲイ 主演 ピーター・ウェラー
1995年 カナダ/アメリカ/日本映画 108分 SF 採点★★★

小学生になる私の娘は、他人や物との距離をイマイチ上手く掴めてないせいか、突如腕を振り上げたり予想外のUターンをキメたりして、結構なダメージを周囲に。それを注意しようにも、話をしている最中にプイっと背を向けその場から離れようとし、後ろに居た弟に激突。弟くん号泣。もう、ちょっとした兵器ですねぇ。それも、制御不能な

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【ストーリー】
2068年、惑星シリウス。貴重な鉱石から発せられる放射能が原因で、採掘を強行する企業NEBと労働者と科学者で組織される連合軍との間で勃発した戦争が長期化する中、連合軍司令官ヘンドリクソンのもとに企業側から停戦の申し出が送られてくる。地中を自在に駆け回る自軍の殺戮マシーン“スクリーマー”をかいくぐりながらNEB基地に辿り着いたヘンドリクソンらだったが、スクリーマーは自らを改良し凄まじい進化を遂げており…。

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トータル・リコール』などでも知られるフィリップ・K・ディックの短編“変種第二号”を映像化したSF。
敵を殲滅する為に投入した機械が自ら改良を続け、どんどん人間に近づいて行った結果、投入した方も見分けがつかなくなってしまうという、非常にディックらしい物語が面白い本作。事実、数あるディック映画の中でも、最もディックっぽい雰囲気を楽しめる作品でも。
“人間を殺す”という目的に特化し、油断を誘う負傷兵や子供の姿へと進化するスクリーマー。最も無害に思えるいたいけな子供の姿をしたスクリーマーが、甲高い叫び声を挙げながら大挙する姿は非常に恐ろしい。本来嘘をつかない筈の機械が、騙すことで効率良く人間を狩れることを学び、嘘を中心に進化をした結果感情まで生まれ、外見のみならず内面までも人間と同様となるという本作の物語自体の魅力は、クリスチャン・デュゲイのマッタリ演出をもってしても失せる事はない。画面に映っていない間の出来事も含め、時系列で整理しようとするとワケ分かんなくなる脚本ではあるんですが、この辺のストーリーテリングの面白さは、『スペースバンパイア』のダン・オバノンの功績なんだろうなぁと。贅沢を言えば、あまりにも人間とスクリーマーの見分けがつかないから、自分もどっちなのか疑心暗鬼になっちゃうというディックっぽさを、もうひと押ししても良かったかなぁとも。

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主人公に扮するのは、『ロボコップ』のピーター・ウェラー。肉付きが良くなったせいか、若干てっぺんが寂しくなってきたせいか、ヘルメットを取った時のロボコップみたいになっちゃってましたが、正統派ではないヒネたヒーロー役は相変わらずハマる。最近めっきり姿を見ませんが、TVを中心にちょこちょこ監督も手掛けているようで。案外近い将来、映画監督としてその名を見る機会が増えたりするんでしょうねぇ。それはそれで楽しみ。
そう言えば、本作もそうなんですけど、一時期日本の企業(特に放送局)がこぞって外国映画製作に乗り出した時期がありましたねぇ。まぁ、映画製作自体が博打みたいなもんなんで仕方がないんですけど、それでもあんまりな作品にばかり関わってたような感じも。今も昔も、映画に対する金の使い方が上手とは言えないのが残念ですねぇ。

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進歩が早過ぎて、お年寄りはついていけない

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タグ:★★★ SF
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2011年05月23日

ジャーロ (Giallo)

監督 ダリオ・アルジェント 主演 エイドリアン・ブロディ
2009年 アメリカ/イギリス/スペイン/イタリア映画 92分 サスペンス 採点★★

サブタレをしばらく休んでいて久々に再開した頃は、すっかりと書き方を忘れてしまい、昔のレビューを読み返しながら「こんな感じに書くんだっけかなぁ?」と模倣と確認をしながら書いていたんですよねぇ。おかげでさっぱり調子が戻らず、書いていても全然楽しくなかったんですが、最近はもう考えるのもやめて思ったまま書くようにしております。ちょっと楽しくなってきた。

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【ストーリー】
イタリアのトリノで、外国人の美女ばかりを狙った連続誘拐殺人事件が発生。モデルのセリーヌも殺人犯の毒牙にかかり、行方不明となってしまう。セリーヌの姉リンダは、猟奇殺人事件専門のエンツォ警部と共に犯人捜しを始めるのだが…。

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簡単に“ジャーロ(ジャッロ)”の説明から。イタリア語で“黄色”を意味する言葉だが、かつてイタリアの出版社が推理小説を黄色い表紙のペーパーバックで発売していたことから由来する、ある種のジャンル名として使用されている言葉。概ねミステリー映画で使われるが、タイプ的には“誰が犯人か?”って推理物よりは、“どうやって殺したか?”を中心に残虐な殺害手口をこれでもかってほど見せるタイプの作品に使用。『歓びの毒牙』とか『サスペリアPART2』など、ダリオ・アルジェントが本来得意としているジャンルでも。
そんな自分の原点でもあるジャンル名をタイトルに冠した、『トラウマ/鮮血の叫び』のダリオ・アルジェントによる本作なのだが、なんともビックリするくらい元気がない。この間の『サスペリア・テルザ 最後の魔女』も、まるでホラーの作り方を忘れてしまった人間が思い出しながら手探りで作っている、なんと言うか老人のリハビリみたいな感じが気になったのだが、今回は更に生気すら感じられぬ枯れた作りに。ショットにやり過ぎるまでの工夫や、物語を破綻させるまでのエネルギーはなく、殺人鬼と同一化する変態性も垣間見られない。性欲がすっかりと減退しちゃったのか、ヌメっとした性的なエネルギーが感じられない。拘束した美女を前に興奮した視線ではなく、「けしからん!けしからん!」と御立腹の老人のような視線すら。アルジェントは一生変態だと思っていただけに、この枯れっぷりに大いに驚いた。

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主役のエンツォ警部に扮するのは、『プレデターズ』『ジャケット』のエイドリアン・ブロディ。因みに、クレジットで殺人鬼役になっている“Byron Diedra”は、エイドリアン・ブロディのアナグラム。まぁ、いくらメイクをしててもあの特徴ある顔立ちは隠せてないんですけど。それにしても、いつものアルジェントだったら、同じ役者に刑事役と殺人鬼役をやらせるだけの意味を、それこそ力ずくのこじつけであっても表現してくれてたのになぁと。
その他に、老けこんだエリシャ・カスバートみたいになってた『フランティック』のエマニュエル・セニエや、『沈黙の脱獄』のロバート・ミアノ、『サスペリア・テルザ 最後の魔女』にも出てたような気がするサト・オーイなどが出演しているが、特に印象に残らず。強いて言えば、『ライフ・アクアティック』にも出演しているタイヨウ・ヤマウチが若干印象的。彼自身じゃなく、彼が働いているって設定の魚屋に立てかけられた“オレのための魚”って看板が。売ってはくれないんでしょうか?

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変なシーンが多かったことすら印象に残らず

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2011年04月17日

スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団 (Scott Pilgrim vs. the World)

監督 エドガー・ライト 主演 マイケル・セラ
2010年 アメリカ/イギリス/カナダ映画 112分 コメディ 採点★★★★

男ってのは、好きな人が出来るとその人の過去までものにしたがるんで、過去の事が気になってしょうがないんですよねぇ。元カレの人数とか、どんなことをしてたとか。元カレの人数が少な過ぎればそれはそれでイヤだし、多過ぎれば尚更イヤ。面倒ですねぇ。気にしてないフリをしながらも、頭の中では元カレと対決。で、妄想上で敗北。妄想だと言うのに落ち込む。ホント、男って面倒臭い生き物ですねぇ

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【ストーリー】
バンドでの成功を夢見るスコットは、ある日ラモーナという風変わりな女性に出会い一目惚れ。付き合っていた年下の彼女との関係をウヤムヤにして、ラモーナとの交際にこぎつける。しかし、突然ラモーナの元カレがスコットに対決を挑んでくる。なんと、ラモーナと交際するには、彼女が交際していた7人の邪悪な元カレを倒さなければならず…。

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ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』のエドガー・ライトがカルト的人気を誇るという同名コミックを映像化した、青春バトルコメディ。
『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』と、サイモン・ペッグと共に題材に対する愛情に満ち溢れた傑作を送りだしてきたエドガー・ライトが、サイモン・ペッグ抜きでどんな作品を撮るのか期待半分不安半分だった本作。まぁ結果から言えば、そんな不安を軽く吹き飛ばす痛快作に仕上がっている。
元々生理的快感を生み出すテンポ作りや場面転換に長けた監督だけに、うざったいだけになりがちな格闘ゲームやコミックをモチーフにしたユニークな映像表現も、浮つくことなく完全に消化しつつ、日本っぽい香りもしっかりと残す見事な手腕を発揮。ふんだんに使われている楽曲の数々も非常に好みで、最近では珍しくサントラが欲しくなるほどの出来。楽曲もそうだが、ベースを構えるエリック・セラのアートワークがとってもベックっぽいなぁと思ったら、がっつりベックが噛んでた。道理で。

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成功までほど遠くない位置にいるバンドのメンバーで、元カノはスーパースターな上に、今カノは女子高生と、なんともオタクが部屋で一人妄想しているかのような状況設定の本作。そんな夢のような状況設定の割に、デートは専らゲーセンかCDショップで、彼女が出来たらとりあえずバンドの練習に連れて来てしまう様に、結局のところ間繋ぎでしかなかった彼女に対して主人公が感じ始める違和感や、その感情を感じ取る彼女の様子など、恋愛描写は結構生々しい。ある意味、ギーク側に更に掘り進めた『(500)日のサマー』の様でも。
描写はかなり吹き飛んではいても、恋愛に関する男の姿勢はかなり正直に描かれたこの作品。“邪悪な元カレとの対決”と突飛な設定も、彼女の元カレは良い人よりは邪悪であって欲しいという男の子の素直で目論みの甘い感情だし、対決そのものも一人一人自分の中で消化していく通過儀礼のようにも。消化しきれずに心が折れてしまい、見当違いに彼女を責めてしまった結果ギクシャクするってのは、ホントよくあることですし。健気で子供らしい素直さが魅力の年下の彼女に対する主人公の行動や迎える結末は確かに身勝手ではあるが、恋人が変わる時って、案外こんなもんだしなぁと妙に納得。この生々しさがあってこその作品だと思いますし、こんなことを経験してレベルアップをするんだろうから。ただまぁ、いくら男の子がレベルアップを繰り返そうとも、女性のレベル1に到底追いつかないってのが現状なんですけど。間違いなく一年も経てば、年下の彼女の方が精神的に追い抜いてることでしょうし。

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何よりも髪型には触れられたくないスコットに扮するのは、『スーパーバッド 童貞ウォーズ』『紀元1年が、こんなんだったら!?』のマイケル・セラ。双方に良い顔をしている内に、結局皆を傷つけてしまう決断力のなさや、経験ではなく知識が先に出る頭でっかちっぷりは、もういつものマイケル・セラ。ピッタリとハマる好キャスティング。遠目で見るとベックっぽい、その文系っぷりも含めて。優しいだけじゃダメなのは充分分かってるんだけど、だからと言って特に自分に自信がないので、結局優しいだけになってしまうってキャラクターが、ホントに似合うなぁと。
また、背後に七人の邪悪な元カレを背負っているラモーナ役に、『ダイ・ハード4.0』『デス・プルーフ in グラインドハウス』のメアリー・エリザベス・ウィンステッド。太ったのか役柄なのか、髪の色もあってなんかケイト・ウィンスレットっぽい。これまでは正直あまりピンとこなかった女優だったが、陰のある風変わりな女性役という珍しさもあって、今回は結構良い。
その他にも、いつの間にか色気のある男前になってたマコーレーの弟キーラン・カルキンや、ギークから見たジョックスの恐怖を具象化したかのような『フェイク シティ ある男のルール』のクリス・エヴァンス、作品選びにブレが全くない『銀河ヒッチハイク・ガイド』のジェイソン・シュワルツマン、相変わらずスーパーな『スーパーマン リターンズ』のブランドン・ラウスに、その犬っぽさからもし『ティーン・ウルフ』をリメイクするなら主演をやって欲しい『ジェニファーズ・ボディ』のジョニー・シモンズなど、好キャスティングが光る本作。こっそり『ミスト』のトーマス・ジェーンや、『マインドハンター』のクリフトン・コリンズ・Jrが潜んでたり、『アドベンチャーランドへようこそ』のビル・ヘイダーの声だけが鳴り響いてたりもしますし。でも、なんだかんだと一番印象を残すのは、彼氏を振り向かせるために彼氏が心を奪われている女性と同じ髪型にするという、涙ぐましいが逆効果の努力をするナイヴスに扮したエレン・ウォン。もし街で見かけたら、「頑張れ♪」って言おうっと。
こんな最後の方でアレですが、一足先に本作を観る機会を与えてくださった“Die-Early”のUSA−P様、どーもありがとーございましたー!

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レベルアップしても、大して変わんない

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2011年03月25日

シューテム・アップ (Shoot 'Em Up)

監督 マイケル・デイヴィス 主演 クライヴ・オーウェン
2007年 アメリカ映画 86分 アクション 採点★★★★

別に良い映画の条件って、良いストーリーと優れた演出に素晴らしい演技が揃ってなきゃダメだってわけじゃないんですよねぇ。見せたいものがハッキリしていてそこをシッカリと描けてれば、多少それ以外がメタメタでも十分良い映画じゃないのかなと。逆に言えば、たとえアカデミー級の演出と演技で彩られていても、白く塗りたくっただけのゾンビがソーセージみたいなモツを齧ってるだけじゃ、良いゾンビ映画とは言えませんし。

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【ストーリー】
ひょんなことからハーツ率いるギャング団に追われる妊婦を助ける羽目になったスミス。応戦中に妊婦は出産、赤ん坊を残して死んでしまう。已む無く赤ん坊を連れなじみの娼婦ドナのもとを訪れるスミスだが、ハーツらは執拗に追跡を続け…。

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カッコ良い銃撃戦を見せたいが為だけに撮り上げられたガンアクション。ストーリーなんてその理由付けと、銃撃戦と銃撃戦の間繋ぎの為に後付けで書かれたようなもんなので、「中身がない!」っていうのは無粋ってもので
シチュエーションと小道具を利用した、工夫の凝らされた粋なガンアクションがこれでもかってほど描かれる本作。“必殺!駅弁撃ち!”とでも名付けたくなる、まるで小池一夫の劇画にでも出そうな奇抜なスタイルもあるが、全体的に狙い過ぎた悪ノリ感は少なく、真っ正直にカッコ良いガンアクションを追及していった結果、多少の悪ノリが盛り込まれたって感じが好印象。アクションの足枷にならない、キャラクター描写中心のほど良く薄い物語もテンポ重視って意味で丁度良いし、若干ベタな選曲も、カッコ良さ重視って意味で潔くて好き。「銃撃戦がカッコイイ!」って以外は書く事がない作品ではあるが、「銃撃戦がカッコイイ!」が本作最大の賛辞であるので、それでいい。

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渋々事件に身を投じる主人公に扮するのは、『トゥモロー・ワールド』『シン・シティ』のクライヴ・オーウェン。“渋々”ってのが見事なまでに似合う役者だし、“実は凄腕”ってのもハマるタイプなのでまさに適役。同じジャガイモ系統のジェラルド・バトラーに最近押され気味な感じもあるが、熱意が感じられない割に仕事は完璧にこなすって役柄が似合う俳優なので、頑張って欲しいなぁと。
一方、母乳娼婦に扮するのが、『魔法使いの弟子』『ブラザーズ・グリム』のモニカ・ベルッチ。なんかもう、“イタリアの宝石”って呼び名も思い出のような感じになってきちゃいましたが、その加齢の残酷さが場末の娼婦の如何わしさとケバケバしさにマッチして、本人にとっては不本意かも知れませんがドハマりな役柄で。また、ギャングのボスに扮した『レディ・イン・ザ・ウォーター』のポール・ジアマッティも、凄味の感じられない風貌と言動のギャップが面白い。

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何年かすると、スミスのことを「チャン!」と呼ぶ

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2011年03月23日

THE JOYUREI 女優霊 (Don't Look Up)

監督 フルーツ・チャン 主演 レシャード・ストリック
2009年 アメリカ/日本/南アフリカ映画 86分 ホラー 採点★

震災復帰後一発目の映画レビューがこれってのもアレですが、まぁ柄にもない映画を観て柄にもない言葉で着飾ったレビューを書くのもなんか違うと思うので、こんなんでいいかなと。そういうのはもっと立派なサイト様に任せて、サブタレは相変わらずのサブタレで。

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【ストーリー】
撮影中止となったいわくつきの作品を題材としたホラー映画を撮るために、トランシルバニアの古びたスタジオにやってきた撮影クルー。撮影を開始するも、怪現象が続発し…。

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後に発展し『リング』に繋がるって意味でも、映画としてのJホラーを語る上で欠かす事の出来ない『女優霊』を、「まぁ、アジア人だから大丈夫なんじゃない?」と安易な発想だったのか、おおよそホラーに強いとは思えないフルーツ・チャンにメガホンを握らせリメイクをしたホラー。“あなたの知らない世界”など、心霊再現ドラマの土壌があるかどうかが重要なのに。
何にでも因果関係をはっきりさせたい悪い癖は仕方がないにしても、日常に怪異が滲み寄って来るからこそ生まれる恐怖ってのを大きく踏み外し、何が起きてもおかしくない状況下に舞台を敷いてしまったため、逆に何が起きても怖くないってのがアレで。百歩譲ってオリジナルの面影が微塵もないってのを良しとしても、そもそも映画として破綻しちゃってるんで、この作品を90分近く観てなければならない行為自体が恐怖。何者かの視線を意識させたかったのだろうが、素人が真似した実相寺アングルのようなカメラワークは逆に視点を不明確にしちゃってるし、演出も脚色部分が全て無駄な脚本もおよそプロの仕事とは思えない出来ってのも辛い。
『E.T.』以降、地道な仕事振りが印象的な『えじき』のヘンリー・トーマスや、『ホステル』のイーライ・ロス、“チャップリンの孫娘”ってのが最大のセールスポイントであるカルメン・チャップリンと、まぁ変わった顔ぶれが出てるってのが数少ないオススメポイントみたいなものなので、その辺に物凄く興味がある方には良いかなぁと。

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観てるこっちの方がそんな顔をしてしまう

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タグ: ホラー
posted by たお at 22:36 | Comment(0) | TrackBack(3) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月27日

ジェニファーズ・ボディ (Jennifer's Body)

監督 カリン・クサマ 主演 ミーガン・フォックス
2009年 アメリカ映画 108分 ホラー 採点★★

子供の喧嘩って往々にして煮詰まってくると「絶交だっ!」で幕を閉じますが、そんな喧嘩如きで絶交する事なんて滅多にないんですよねぇ。「ゴメンなぁ」もなく、いつの間にか仲直りしてる。でも、喧嘩なんかじゃなく、なんとなく物理的にも精神的にも距離が離れていくと、知らない内に“絶交”になることもしばしば。そういうのは、なかなか元には戻らないもので。

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【ストーリー】
チアリーダーで派手好きなジェニファーと、地味で真面目なニーディは幼馴染の親友同士。ある日二人はインディーズバンドのライブを観に行くが、会場が火事となり多くの犠牲者を出す。命からがら逃げ出した二人の前にバンドのメンバーが現れ、ジェニファーは彼らの車に乗り込んでしまう。その夜を境に、静かだった田舎町で残虐な殺人事件が多発し始め…。

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『JUNO/ジュノ』で一躍脚光を浴びたディアブロ・コディの脚本を、『イーオン・フラックス』のカリン・クサマが映像化した青春ホラー。脚本家の名前と悪魔を絡めて見ても、特に面白く膨らみそうもないので、その辺はスルー。
他人の男を盗るような女は悪魔だ!」と、親友同士が絶交するまでを描いたような感じの一本。扱いやすく自分より劣る人間を“親友”としてそばに置く女同士の友情の一面や、一度決められた格付けがずーっと付いて回る学園生活の過酷さを、悪魔を絡めて変化球的に描いた本作。その狙いは面白いし、監督もその意図をくみ取り学園生活と友情の物語をメインに描いているのだが、その結果、ジェニファーが悪魔になる発端や結末が取って付けたような印象になってしまい、ホラーとしても青春映画としても中途半端な作品に。イメージをそのまま捉えたかのような特異なショットも多いのだが、それらが特に噛み合うこともなく、全体的に散漫。女同士の本音が見え隠れするセリフや状況が面白いだけに、これを言ったら元も子もないのだが、“悪魔”が邪魔

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ビッチなジェニファーに扮するのは、これまたビッチな話題に事欠かない『トランスフォーマー』のミーガン・フォックス。似合う似合わない以前に、本人にしか見えないってのが見所の一つかと。
また、その親友役には赤いドレス姿が金魚にしか見えないアマンダ・セイフライドや、元凶の割に扱いが軽い『コップ・アウト 刑事(デカ)した奴ら』のアダム・ブロディ、『エルム街の悪夢』のカイル・ガルナーなど、TVでは良いかもしれないが、映画となると背景に溶け込んでしまいそうな線の細い若手がワラワラと出演。
そんなイマイチ座りの悪い本作だが、最後の最後にビシーっと締めてくれる役者が登場する。もちろんそれは、『ニア・ダーク/月夜の出来事』のランス・ヘンリクセン。役名もないカメオ出演だし、そもそもそのカメオに何の意味があるのかすら分からない登場ではあるのだが、作品が作品だけにとっても嬉しいサプライズでしたし、心の中で「きっと役名はフランク・ブラックに違いない!」と妄想もできましたので、めでたしめでたしと。

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化粧ののりが悪い時に付け込んで

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タグ:★★ ホラー
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2011年02月23日

スペースバンパイア (Lifeforce)

監督 トビー・フーパー 主演 スティーヴ・レイルズバック
1985年 イギリス映画 116分 SF 採点★★★

惑星や星雲の写真は何時間でもポヘーと見惚れれるほど宇宙が好きなはずなのに、なんとか流星群とか彗星とかの一大イベントはことごとく見逃している私。1986年に接近したハレー彗星も楽しみにしていたはずが、なんとなく見逃してしまい、気が付くと遥か彼方へ。次の接近は2061年。生きてるかなぁ…

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【ストーリー】
ハレー彗星の探索を行っていた英米合同の宇宙探査チームは、彗星付近で巨大な宇宙船を発見する。内部探査の末3体の人間に似た生命体を収納するが、彼らは人間の精力を吸い取る吸精鬼だった。やがてイギリスに降り立った吸精鬼は次々と犠牲者を増やし、ロンドンは地獄絵図と化してしまう。

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殺人かオカルトの話ばかり書いている印象もあるコリン・ウィルソンの原作を、『ポルターガイスト』のトビー・フーパーが映像化したSFホラー。
古典的な吸血鬼伝承にエイリアンと接近中だったハレー彗星を絡め、最終的にドンチャン騒ぎで締め括る本作。中盤の吸精鬼探しが描かれるミステリー仕立ての流れを、クライマックスのドンチャン騒ぎでぶち壊したと見る向きもあるが、地味な展開で行き詰ったフラストレーションをレイヴパーティの如き大乱痴気騒ぎで発散した、非常にフーパーらしい作品なのではと。是非ともブルーレイで観てみたいフーパー独特のギラギラした色合いと、アドレナリンが噴出するヘンリー・マンシーニの音楽の相性は抜群で、その演出とロンドンの景観をバックに、ただのゾンビと化した犠牲者たちが右往左往するクライマックスのカオスぶりは、もう一緒に踊らなきゃ損だ

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主演は、本作以降『エド・ゲイン』に『デビルズ・リジェクト〜マーダー・ライド・ショー2〜』と、怪優の道を真っ逆さまというかまっしぐらというかまぁ爆進中のスティーヴ・レイルズバック。また、劇中常に全裸で行き来する非常に頼もしい吸精鬼に、マチルダ・メイがキャスティング。その肉感的にも程があるマチルダ・メイの身体つきに、いやらしい思いを通り越して「外人にはどうやっても敵わないなぁ」と敗北感すら感じてしまうほど。
ただ、本作で最もインパクトあるシーンを作り出していたのは、我らがジャン=リュックこと『スター・トレック/叛乱』のパトリック・スチュワート。人間が瞬く間にミイラになったり、そのミイラが動き出したり、全裸の美女が右往左往していたりと強烈な描写が多い本作だが、やはり最も強烈だったのは女声で迫った揚句にキスをするパトリック・スチュワートだったのではと。仕舞いには顔中から血を噴き出しちゃいますし。
そんなトラウマレベルのパトリック・スチュワートも観れた事ですし、チラリとボウイのポスターが出てるんで例のボウイ・アドバンテージの適用も含めて、★ひとつオマケで。

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次にハレー彗星が来るころには、こんなんなっちゃてるのかなぁ、私

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タグ:★★★ SF
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2011年02月10日

死の標的 (Marked for Death)

監督 ドワイト・H・リトル 主演 スティーヴン・セガール
1990年 アメリカ映画 94分 アクション 採点★★

とりあえずヴードゥー放り込んでおけば簡単にオカルト風味が出るもんだから、安易にヴードゥーを絡めた作品って少なくはないですよねぇ。作品との相性は別にしても、確かに不気味さだけは出てますし。きっと、ホーム・アローンに絡めても充分不気味なんでしょうねぇ。ヴードゥー・ホーム・アローン。玄関先に呪いの紋章と鶏の首が置かれてるのを見つけたマコーレーが絶叫するの。窓からドレッド頭が次々侵入してくるの。

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【ストーリー】
ジャマイカを拠点として暗躍する麻薬組織の頭領スクリュー・フェイスは、よりによってセガール一家を襲撃、姪に重傷を負わせてしまう。ただでさえ怖いのに、家族に手を出され怒りの沸点を軽く突破したセガールは大暴れ。スクリュー・フェイスをやっつけましたとさ。

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セガールと言えばワーナーのイメージも強いが、珍しく20世紀フォックスから出されたセガールアクション。監督はいまひとつ残念な作品ばかりを作っている印象も強い、『TEKKEN 鉄拳』のドワイト・H・リトル。
“セガール対ヴードゥー”。大体この一言で済ませられる上に、ヴードゥーが相手であろうがセガールの傍若無人ぶりは一片も変わりないことが証明された本作。バキバキー、ボキボキーとセガール拳の餌食になる相手が、全員ドレッド頭になっただけ。ストーリーは、武器を捨てた男が怒りに震え立ち上がる姿にカタルシスを感じる王道物語に、セガールとヴードゥーを足した感じ。まぁ、あまり上手く噛み合っているとは言えず、ヴードゥーかセガールかのどっちかが邪魔。見せ場も驚くほど盛り上がらず、展開も単調。ただ、最近のセガールを見慣れてしまっているせいもあってか、ビックリするほどひょろ長いセガールが繰り出すセガール拳の切れ味は抜群で、ナイフを持った敵に襲われればそのナイフを瞬く間に奪いブスリ、人質を取る敵にはヘラヘラと自分の間合いまで近づき鼻っ柱をビシーッ!いい加減皆さん、セガールを見掛けたら全力で逃げるのが得策だということに気づいて頂きたい。
なんか可愛いセーターばかり着ている印象があるボスが実は双子ってのが本作最大の捻りのようだが、無論そんなのがセガールに通用するわけもなく、殺す相手が一人増えてちょっと面倒臭そうなセガールがやっぱり最強でおしまい。セガール最強

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主演3作目ということもありそろそろワガママを言い始めたのか、なんか変な服ばかり着ている本作のセガール。まぁ、自前としか思えない奇抜な服装をしてるのは、いつもの事っちゃぁいつもの事なんですが。製作者も兼ねているせいか、めんどくさそうなやられるシーンは全てスタントマンに任せるは、何の脈絡もなくモテモテになるはと好き放題ですが、そんな好き放題もセガール映画の重要な要素なので文句もなく。
その他、『斬撃 -ZANGEKI-』でもセガールと共演済みである『ゼイリブ』のキース・デヴィッドや、『ラスト・ボーイスカウト』のダニエル・ハリス、『トランスフォーマー』のケヴィン・ダンなども出演しているが、やはり特筆すべきは『マチェーテ』のダニー・トレホ。出て来るや否やセガールにボコボコにされる、この当時のトレホさんお馴染のチョイ役でしかないんですが、本作から20年後にタイマンでセガールを殺した唯一の男にまで成り上がるとは、この当時セガールもトレホさんも思いもしなかったでしょうに。なんでもコツコツと続けてみるもんですねぇ。

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今日の教訓:セガールと出会ってしまったら、事故だと思って諦める

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posted by たお at 02:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月06日

ゾンビランド (Zombieland)

監督 ルーベン・フライシャー 主演 ウディ・ハレルソン
2009年 アメリカ映画 87分 コメディ 採点★★★★

ゾンビ映画を観ていると、生前の習慣がゾンビ後の行動に反映されてるみたいな描写がよくありますが、ということは実際に世界中がゾンビで溢れたら、市役所は椅子に座ってボーっとしてるゾンビで溢れかえってるんでしょうねぇ。いくら呼んでも振り返りもしないの。で、昼頃にテレビをつけると、サングラスのゾンビが出てるんでしょうねぇ。

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【ストーリー】
謎の疫病によりゾンビで溢れかえった世界。そんな中、ひきこもり青年だったコロンバスは故郷に向かっていた。道中出会ったゾンビ退治の達人タラハシーと度を共にし、更に詐欺師姉妹も合流。彼らは西にあるというゾンビのいない土地を目指すのだが…。

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新鋭ルーベン・フライシャーによるホラーコメディ。
ゾンビコメディとは言っても、ゾンビを笑い飛ばすわけでも、襲われる側をマヌケに描いて笑いを生み出すわけでもない本作。ゾンビはゾンビで恐怖の存在としてしっかりと描かれているし、徹頭徹尾ゴア描写は強烈。そのゾンビ世界に、希薄になりつつある人間関係をテーマに、人との絆を強めていく様と、童貞青年の成長物語、ゾンビ世界での生き残り術をコメディタッチで描いたドラマを放り込み、見事に融合させた一本。アプローチの仕方としては、傑作『ショーン・オブ・ザ・デッド』にも近い。現代社会への警鐘と、ゾンビ世界では好き放題出来るデストピア幻想という、モダンゾンビ映画において欠かす事の出来ない要素を取りこぼしていないのも立派。ゾンビだらけにしては悲壮感やら緊迫感に欠けてる気もするが、その代わりに漂うのんびりとした空気にどことなくロメロっぽさを感じるので、それはそれで好き。
短時間にまとめ上げてるせいか、もうひとネタくらい欲しいなぁと思うのも事実。エディ・ヴァン・ヘイレン以外にどんな奴がゾンビになって暴走しているのか、そんなビバリーヒルズゾンビネタももうちょっと知りたかったですし。まぁそれも、「もうちょっと知りたい!」と思わせた本作の勝利と言えますが。

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ゾンビバスターに扮するのは、『ディフェンドー 闇の仕事人』のウディ・ハレルソン。テキサス男。実際に世界がゾンビだらけになったら、きっとウディはこんな人になる。絶対そう!
また、ひきこもりの童貞青年には、まさにそんな感じである『アドベンチャーランドへようこそ』のジェシー・アイゼンバーグ、詐欺姉妹には、これまたそんな感じの『ROCKER 40歳のロック☆デビュー』のエマ・ストーンと、『リトル・ミス・サンシャイン』のアビゲイル・ブレスリンらがキャスティング。
観た直後にこのレビューを書いているにも関わらず、メインキャストについて「うん!まさにそんな感じだったよ!」としか書けていないのも、本人役で登場する『3人のゴースト』『チャーリーズ・エンジェル』のビル・マーレイの印象があまりに強烈過ぎて、メインキャストの印象がほとんど記憶の隅に押しやられてしまっているから。トム・クルーズすら住めないビバリーヒルズの特Aランクの豪邸に住んでいるって設定からして、笑わせる気満々のビル・マーレイ。いつも通りこれといって特別なことは何一つしていないビル・マーレイなのだが、笑わせる気満々の舞台が彼の背後に堂々と映り込んでいるので、笑わずにはいられない。それだけに収まらず、自身の作品のネタを数々披露してくれるってんだから、もう堪らない。ビル・マーレイのシーンだけ異質っちゃぁ異質だが、そこだけでも観る価値はあると。

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こんな状況下、男二人揃えば「最後にヤッたのいつ?」って話題になるのも当然

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posted by たお at 02:51 | Comment(6) | TrackBack(42) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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