2011年10月26日

スカイライン-征服- (Skyline)

監督 コリン・ストラウス/グレッグ・ストラウス 主演 エリック・バルフォー
2010年 アメリカ映画 94分 SF 採点★★

宇宙人が侵略しに来るって映画は沢山ありますけど、本当にそういう事が起きてしまったら、相手には地球を侵略するだけの物量と人員を遥々送って遣せるだけの科学力とやる気があるってことだろうから、これはもう諦めるしかないですねぇ。意気込みが違い過ぎる。

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【ストーリー】
突如ロサンゼルス上空に現れた巨大UFO軍団。そこから放たれる青い光に人々は吸い込まれ、生存者たちはなす術なく逃げ惑っていた。友人宅を訪れていたジャロッドとエレインは、なんとかその混乱から逃げ出そうとするのであったが…。

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“UFOが来たら大変!”ってこと以上でも以下でもない、というかそれしか描いていないSFパニックアクション。数多くの作品でVFXを手掛けてきたストラウス兄弟の、「ボクら、こんなことが出来るんだよー!」ってプチ自慢作品みたいなもんなんで、そうなるのも仕方なしかと。
ヴィジュアルも物語も全てデジャヴで出来ているかのような本作。「あの映画のあそこをオレ的にこんな感じで」を繋ぎ合わせた様な作品ではあるのだが、流石VFXマンだけあってその絵のクォリティは高い。なかなかの迫力。ただまぁ、同じような絵面の中同じような場所を行ったり来たりするだけの展開なんで、瞬く間に飽きてしまうんですが。見せ場も豊富と言うか見せ場しかないのだが、その見せ方がこれまた凄まじく単調なので、受ける印象はマイケル・ベイのバーゲン品的な安さ。散々似たようなシーンを見せておいて、最後の最後にようやくちょっとした捻りを見せるが、そのままボツリと終わってしまうので捻った意味もなし。トランスフォームしてしまった主人公を中心に後半を描いてれば毛色の変わった作品として楽しめただけに、なんとももったいない。まぁ、台所事情の問題なんでしょうが。
プライムウェーブとかアルバトロスから出る作品にしては超大作って感じの本作。なんと言うか、ファミレスのジョイフルで一番高いメニューを食べるみたいな。だったら、ロイヤルホストで同じ金額の物を食べた方がマシだなぁって思っちゃうところも、なんとなく似ている気が。

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この一枚で済む話

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タグ:★★ SF
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2011年10月07日

サラマンダー (Reign of Fire)

監督 ロブ・ボウマン 主演 クリスチャン・ベイル
2002年 イギリス/アイルランド/アメリカ映画 101分 アクション 採点★★★★

寝る前や暇な時の妄想タイムが大好きだとはもう何度となく書いたんですが、その妄想のベースになっているのが『ゾンビ』と『若き勇者たち』。“ゾンビから逃れ巨大ショッピングセンターで好き放題!”か“山中でリー・トンプソンを連れてゲリラ戦!”を、何十年と繰り返すヘビーローテーション。あれ?自分の妄想って、逃げてるか隠れてるかしかしていないってことに、今気が付いた。

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【ストーリー】
ロンドンの地下から現れた巨大ドラゴン。脅威的な早さで繁殖したドラゴンは、口から吐く炎で文明を瞬く間に焼き尽くし、人類は滅亡の危機に立たされてしまう。20年後。ドラゴンの第一発見者であったクィンと生存者たちは荒野の古い砦に身を潜め、飢えと恐怖の日々を強いられていた。そこへヴァンザン率いるアメリカの義勇軍が現れ、共にドラゴンと対決するのであったが…。

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“X−ファイル”など数多くのTVシリーズで監督を務めたロブ・ボーマンによる、人間と巨大竜の戦いを描いたアクションアドベンチャー。
ジャケットを見る限り、無数のドラゴンと戦闘ヘリが炎に包まれたロンドンを舞台に激戦を繰り広げているが、戦闘機を鷲掴みにして大暴れしていた『キングコング』のポスター同様、そんな血沸き肉踊るシーンなんて皆目見当たらない本作。世界が壊滅する場面はナレーションとイメージ映像で済ませ、ヘリは一機で、ドラゴンも後半複数出るものの、基本一匹ずつしか出ない。でも、そんな「無い袖は振れねぇんだ!」って潔さがとっても好み。
そもそも、ドラゴンとの血で血を洗う激闘ではなく、その災禍から逃れ如何に生き延びるかかをメインに描いている本作。髭面の男が薄暗い部屋でウジウジしている姿ばかりが映っているが、それで正しい。主人公の目的がドラゴン討伐ではなく、生存し続けることなのだから。また、ドラゴンの生態や生存者たちの生活描写がしっかりと練られているのも嬉しい。ケース毎に順序立てて行動する様には、描かれてはいない過去の経験が透かし見えるようにも。年配者ではなく、若者を中心に指導権が引き継がれていく描写も興味深い。
確かに、馬鹿が戦車でやってくるよりも性質が悪い、アメリカ人(しかも南部人)が戦車で乗り込んで来てからは話がバタバタとしてしまうのだが、正反対の存在が現れる事でよりそれぞれのキャラクター性が際立つ結果となっているし、外部の人間の行動に対するリアクションもしっかりと描けてはいたのが救いかと。
悪評も多い作品ではあるが、個人的には好きな一本。まぁ、怪獣めいたものが出てれば無条件で好きになってしまうってのも大きいんですけど。

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主人公のクインに扮しているのは、『プレステージ』『バットマン ビギンズ』のクリスチャン・ベイル。リーダーとしての責任感故に融通の効かないクインを、さり気なく鍛え上げられた肉体とヒゲ面で好演。ヒゲくらいじゃタフさが出てこないハンサムぶりと、個性の強い共演者が隣に立つと瞬く間に空気になってしまう線の細さは残念であるが、少なくても前半はかなり健闘して作品を牽引している。
一方、出て来るや否やそんなチャンベールを空気に変えさせ、一気に作品を引っ張るヴァンザンに扮したのは、『サハラ 死の砂漠を脱出せよ』『フレイルティー/妄執』のマシュー・マコノヒー。こっちのヒゲは凶暴。それに加えてスキンヘッドにしちゃってるので、自分ん家の玄関先に立ってて欲しくない男ランキングの上位に優々と君臨する迫力。その見た目のインパクト割に何を考えているのかよく分からないキャラではありましたが、こういう人は実際そばにいても何を考えてるのか分からないので、これでいいんじゃないのかなと。
また、クインの親友役にはまだブレイクには手が届かない所にいた、『完全なる報復』『GAMER』のジェラルド・バトラーが。出て来た途端に「あぁ、この人死んじゃうんだろうなぁ…」と思わせるキャラではあったが、その垢抜けてない様が生存者のコミュニティに青年団が運営してるっぽい雰囲気を醸し出させた良いキャスティングだったと。その他、『ファースト・コンタクト/STAR TREK』のボーグ・クイーン、アリス・クリーグの姿も。
考えてみれば、「これ、サラマンダーじゃなくてワイバーンじゃね?」って気もする本作。でもまぁ、直訳して“火の統治”ってするのも味気ありませんし、“ワイバーン”ってのも何故かファラ・フォーセットのウェットスーツ姿が脳裏に一瞬浮かんでしまうので、“マンダー”の響きがおどろおどろしい、非常に東宝東和らしいこの邦題で良いんじゃないのかなぁと。

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頑張って前へ出ようとはしてますが

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2011年08月31日

最後の誘惑 (The Last Temptation of Christ)

監督 マーティン・スコセッシ 主演 ウィレム・デフォー
1988年 アメリカ/カナダ映画 163分 ドラマ 採点★★★★

端的に捉えちゃえば、“死”と“地獄”を脅し文句に、社会を形成する上で必要な規律ってのを教え込んでるのが宗教なのかなぁと。権力者が大衆を都合のいいように誘導するツールって側面もありますが、その辺は大手宗教が確立されて以降の話なんで、ここでの話とはちょっと別。十戒なんかが分かり易い例なのかと思うんですが、そうなると人間ってのは相当脅さないと殺すは盗むは嘘つくはと、かなり荒くれな生き物だってことになりますねぇ。まぁ、思い当たる節も多々ありますし、2000年以上経とうがその辺は易々と変わらないもので。

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【ストーリー】
神の声に悩まされ続けていたナザレ地方のイエスは、神の意志を民衆に伝える意思を固め立ち上がる。ローマからの独立を目指す運動家でもあるユダを筆頭に多くの弟子がイエスの下に集まり、彼の影響力は徐々に広がりを見せていた。それを快く思わないローマとユダヤ教の司祭らによって捕えられたイエスは、ゴルゴダの丘で十字架に磔にされてしまう。死を前に心が揺らぎ始めたイエスの前に、天使を名乗る少女が現れ…。

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イエス・キリストの人間としての側面に着目したニコス・カザンザキスの原作『キリスト最後のこころみ』を、『グッドフェローズ』のマーティン・スコセッシが製作中止に追い込まれながらも6年の歳月を掛け完成させた人間ドラマ。カトリックを中心に上映反対運動が起こったのも話題に。
聖書にも記されてあるエピソードを中心に、その合間合間でイエスが人間として思い悩み苦しむ様を大胆に描いた本作。重い使命に尻込みし泣き言を言い、開き直ったかのように半ギレになるその姿は、どんな状況においても物静かで穏やかに対処するイメージがある半面、どこか絵空事のような感じすらあったイエス像に、一気に血肉が付いたような印象も。
“人間の子”として描かれてはいるが、流石は神の子。メジャーどころの奇跡の数々もしっかりとダイナミックに描いている。しかしながら、それらを神々しく描くのではなく、少しばかり距離を置いて、ぽっとでの宗教家が見せる奇跡のような仄かに胡散臭さを感じるよう描いているので、人間を描くテーマからは外れていないのも上手い。それだからこそ、人間として人生を全うするという誘惑に、切実さが生まれたのではと。また、聖母マリアの扱いがビックリするほど地味なのだが、その辺も「人の子の母親なんだから、普通のオバサンでしょ?」的な、テーマから全くブレない姿勢も潔い。
現地の音楽を大胆に取り入れたピーター・ガブリエルによる楽曲も見事な出来栄え。彼の歌声は僅かにしか流れないが、その深く力強い歌声は相変わらず素晴らしい。

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“人間キリスト”の姿以上に本作が力を入れて描いていたのは、イエスとユダの関係。概ね裏切り者で、その罰が当って酷い死に方をする悪役として認識されているユダ。しかしながら、聖書を何度読んでもその単純な悪人像に違和感を感じてしまうのも事実。裏切られるのを知っておきながら傍に置いていたって疑問以上に、死を以て使命を成就するというシナリオがある以上、裏切り者を作る必要があったんじゃないのかなぁって感じの。
本作におけるユダ像は、個人的にはそんな違和感も最も解消してくれる解釈を加えられている。イエスを自らの活動の象徴に祭り上げたい思惑を持ちながらも、やがてはイエス最大の理解者となり、イエス自身も最も信頼を置く、弟子というよりは親友としてのユダ。腕っ節だけではなく心も強く、ザックリと言えばテロリストなのだが、信念に生きる男でもあるユダ。性格もなにもかにもが正反対だが、揺るぎない強い信頼と友情で結ばれているイエスとユダ。その信頼があるからこそイエスはユダに裏切りを命じ、ユダも涙ながらにその命を受け入れたのでは。例えとしてはズレてしまうが、最も信頼できる人間に介錯人をお願いするかのように。

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本作でイエス・キリストに扮したのは、『デイブレイカー』『アニマル・ファクトリー』のウィレム・デフォー。既存のキリスト像からは最も遠い位置にいる役者の一人のような気もするが、その似合わなさが従来のイメージとは違うキリストを演じる上で好都合だったのではと。なんかこう、引退したロックスターが昔の栄光を忘れられないみたいに、人間としての人生を送りながらも上の空になっているイエスに見え隠れする俗っぽい感じとか。
一方のユダに扮したのは、『コップランド』『フロム・ダスク・ティル・ドーン』のハーヴェイ・カイテル。これまたユダに付きものである姑息さの欠片も感じさせないキャスティングだが、荒くれ者で難しいことを考えるのは滅法苦手だが、友の為ならその身を平気で投げだせる熱い男を好演。
また、“チーム・ジーザス”の面々には『ブルー・イン・ザ・フェイス』のヴィクター・アルゴや、ジョン・ルーリー、ミュージシャンの方のマイケル・ビーンなどの一風変わった顔ぶれが。その他、『荒野のストレンジャー』のヴァーナ・ブルーム、『11:14』のバーバラ・ハーシー、『宇宙人の解剖』のハリー・ディーン・スタントン、スター・ウォーズシリーズ最高傑作である『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』を手掛けたアーヴィン・カーシュナーなど、非俳優系を含めたこれまた異色の顔ぶれ。そんな中でも格段の存在感を示していたのが、もうサブタレではお馴染『プレステージ』のデヴィッド・ボウイ。強圧的な人物ながらも、上からも下からも突き上げられ困り果てるピラト総督という重要な役柄ながらも、まるで撮影現場に迷い込んだイギリス人がカメラの前でフワフワしているだけのような、なんとも独特の存在感を発揮。この短いシーンだけは、もうまるで別の映画。いえいえ、貶してるんじゃないですよ。絶賛してるんですよ。ボウイはこうじゃなきゃと。

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安定感と高揚感の板挟み

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2011年08月13日

ソーシャル・ネットワーク (The Social Network)

監督 デヴィッド・フィンチャー 主演 ジェシー・アイゼンバーグ
2010年 アメリカ映画 120分 ドラマ 採点★★★★

いつまでも根に持って虎視眈々と復讐の機会を伺うタイプではないんですが、“機会があれば仕返ししたいリスト”ってのを常に心の奥にしまっている私。なんと言うか、一種の活力として。ただまぁ、“仕返し”っていっても、“超金持ちになったら札束でビンタする”とか、“美人を引き連れてそいつの前を練り歩く”とか、至って幼稚なものしか思い浮かんでいないんですけどね。

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【ストーリー】
2003年の秋。ハーバードの学生であるマークは、恋人にフラれむしゃくしゃしていたこともあり、学内のデータベースにハッキングし、女学生の顔写真を使った投票サイトを立ち上げる。その腕を認めたエリートソサエティに属するウィンクルヴォス兄弟は、マークに“ハーバードの学生と交流できる”を売りにしたSNSの立ち上げを依頼するが、マークは親友のエドゥアルドの協力の下、別のSNS“ザ・フェイスブック”を立ち上げる。そのサイトは瞬く間に登録者数を増やしていき、巨大サイトへと変貌していくのだが…。

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自分は利用していないのでイマイチ分からないのだが、エジプトやチュニジアで発生した一大デモとの関連も取りざたされた巨大ソーシャル・ネットワーク・サービス“フェイスブック”の誕生秘話を、『ゾディアック』のデヴィッド・フィンチャーが映像化した実録ドラマ。製作総指揮には、ジョン・ドゥケヴィン・スペイシーの名が。
観る前は、“コミュニケーション能力に欠如した男が作り上げた巨大コミュニケーションツール”とかなんとかシタリ顔で書こうかと思ってたんですが、いざ観てみたらそんなものは外枠の一部でしかなかった本作。フェイスブック誕生の経緯と、それにまつわる幾多のトラブルに物語は焦点を置いているが、主人公の言い分や言い訳を描いているわけではないので、実録ものにありがちな“知ってるつもり?! マーク・ザッカーバーグ編”にはなっていない。それどころか、主人公が何を考えているのか分からせようとはしていない。しかしながら、コミュニケーション能力に欠如した分かりづらい人物を下手に雄弁に語らせるのではなく、「分かりづらい人間は分かりづらいんだ!」とばかりにそのまま観客の前に放り投げたこの選択は正しい。別に本作は、主人公と観客がリンクする必要が全く無い作品ですし。中心に地に足が付いていないフワフワした人物を配することにより、主人公を取り巻くそれぞれの人物の思惑や立場、出来事の持つ意味合いがより一層浮き彫りになったのではと。
若干遊び過ぎの感もあったティルト撮影はさて置き、人物をやや突き放し、『ファイトクラブ』程ではないが建造物や物を舐める様に映しだすフィンチャーらしさも健在。

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ざっくりと掻い摘めば、本作は特別モテるわけでもなくスポーツも苦手なオタクのユダヤ人グループが、由緒正しい家の出であるエリート白人グループにオタクならではのやり方で逆襲する、リアル『アニマル・ハウス』である。まぁ、ユーモアの欠片もありませんが。器の小ささが露呈する切っ掛けの描写にしろ、エリートに対して憧れと劣等感がごった煮になって敵対心になっている様にしろ、まさにそれ。「セレブの仲間入りした気分はどうよ?」と歌われるビートルズの“ベイビー・ユーアー・ア・リッチ・マン”が流れるエンディングで、もっと多くの登場人物の“その後”が語られていれば更に完璧。それこそ、数多くのコメディや青春映画で描かれて来たこの構図が、創作が加えられているにしても現実に起きたことに驚きを。フィクションであれば、鼻持ちならないイジワルエリート軍団vsユーモラスなユダヤ人軍団という善悪の分かり易い構図が生まれるのであろうが、本作で描かれるエリートが何不自由なく育てられたが故の素直さと誇りの高さを持つ、なんとも可愛らしい連中として描かれているのも印象的。本来搾取する側が、搾取されちゃってる。また、そのエリートグループに属そうと頑張るエドゥアルドに対する、マークの嫉妬と蔑視の入り混じった感情も興味深い。
選ばれし極少数の人間のみが富を享受する、現行のシステムに対する挑戦のような側面もある本作。既存の方法論で突き進もうとするエドゥアルドを切り捨て、大手企業が爆発炎上する『ファイトクラブ』同様、音楽業界にとってはテロ行為でしかない“ナップスター”を生み出したショーン・パーカーにマークが共鳴していく様にも、そんな思いが感じられる。
確かに手に汗して掴み取った成功ではないが故に、どこか空虚な革命っぽい臭いも漂ってはいる。ただ、若き成功者の顛末だけではなく、先に挙げたエリート白人への逆襲や既存のシステムへの挑戦という側面も描かれている以上、感想を“虚しさ”で締め括るには言葉足らずのような気も。成功する様自体は、正直羨ましかったですし。まぁ、だからと言って当てはまる締めの言葉が浮かぶほど文才がないので、無理やり締め括るとすれば“彼女に人として嫌われたら、いくら札束積み上げてももう無理”って感じですかねぇ。なんか、途端に話のスケールが小さくなった気もしますが。

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疾患的に人と上手く関われないマーク・ザッカーバーグに扮しているのは、『ゾンビランド』『アドベンチャーランドへようこそ』のジェシー・アイゼンバーグ。何も考えていないのか、先の先が見え過ぎちゃって達観しているのかよく分からない、知り合いだったら間違いなくイラつく主人公を、その持ち前のオタクっぽさと覇気の無さで好演。
また、その生真面目さゆえに見事なまでに置いてけぼりを食らうだけではなく、非常に面倒臭い彼女まで作ってしまうエドゥアルドに扮したアンドリュー・ガーフィールドや、実際はここまでクールじゃないショーン・パーカーに扮したジャスティン・ティンバーレイク、なんとも可愛らしい双子に扮したアーミー・ハマーなども非常に印象的で。
正直なところ、題材にしろキャスティングにしろ、それこそ“デヴィッド・フィンチャーの新作!”ってのにも然程食指が動かなかった本作なんですが、それでも「観たい!」と思った最大の原動力はトレント・レズナーが音楽をやってるから。ナイン・インチ・ネイルズのアルバム『ウィズ・ティース』に収録された“オンリー”のPVを、フィンチャーが撮った縁もあっての起用かとは思うんですが、トレントが本格的なサントラを手掛けるのは初めてなだけに、どんな仕上がりになっているのか非常に楽しみにしてたもので。まぁ、音自体は事前にオフィシャルサイトから落とせていたので、映像とどう絡みあってるのかってところが。で、いざ本作を観てみれば、ノイズの中をたどたどしく言葉少なげだが美しいピアノの旋律が奏でられる、非常にいつものトレントで安心。映像とバッチリハマってたかと言えば、正直浮き上がってた感じもするんですが、こんなトレントの曲を聴きたかったんだから文句もなし。なにやらこれでアカデミーを取ってしまったようですが、これを切っ掛けにどこぞの教授みたいにならなければいいなぁと思ったりも。まぁ、“移民の歌”のカバーがけたたましく流れるフィンチャー&レズナーの次回作、『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』のリメイク版予告編を観る限り、そんな心配も無用な気もしますが。
因みに、本作のサントラで「トレント素敵!」って思われた方がおられたら、コチラのオフィシャルサイトでトレントと嫁レズナー、本作のサントラでも共同作業しているアッティカ・ロスとのプロジェクト“HOW TO DESTROY ANGELS”のアルバムがまんま無料ダウンロード出来るので、聴いてみるのも一興かと。

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面倒な事は全て避けたい

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2011年07月29日

幸せの始まりは (How Do You Know)

監督 ジェームズ・L・ブルックス 主演 リース・ウィザースプーン
2010年 アメリカ映画 121分 ラブロマンス 採点★★

女性を選ぶってよりは、選ばれる側に立つ事の方が圧倒的に多い私。たまには選んでみたいもので。そんな選択肢に入ってしまう時って、女性も女性なりに悩んでいるんでしょうけど、待たされてる方も堪ったもんじゃないんですよねぇ。もう、あのヤキモキがイヤ。まぁ、迷ってる時点で自分には決定打がないってことなので、そんな時はさっさと諦めるのが良いとも思うんですが。

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【ストーリー】
ソフトボールに人生を捧げてきた31歳のリサは、チームをクビになり引退せざるを得ない状況に陥る。新たな人生に不安を感じるリサは、とりあえず友達以上恋人未満の関係だったメジャーリーガー、マティとの関係を深めていこうとするが、何事にも能天気でプレイボーイのマティとの関係にも不安を感じることに。そんな時、貿易会社を共同経営する父親の身代わりで収監される危機に陥っていた青年実業家、ジョージと出会ったリサ。ジョージの繊細さと優しさに惹かれていくリサであったが…。

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生き甲斐を失くし人生の岐路に立った女性が、二人の男性の間で揺らぎ悩む姿を描いたラブコメディ。脚本・監督は、『スパングリッシュ 太陽の国から来たママのこと』のジェームズ・L・ブルックス。
役者そのものが持つ魅力と手堅い演出で色んなものを含んでいるような感じを漂わせているが、要は“先行きが不安だからとりあえず男だけは捕まえておこう”ってなだけの本作。リサの年齢を考えれば切実な問題の一つではあるのであろうが、セックスの相性だけは良いメジャーリーガーと、どん底にいる青年実業家の間を不用意に行ったり来たりしているだけの展開に、「頭の中は男の事だけなの?」って疑問が浮かんでしまうことに。ソフトボールなんて、後半全く関係なくなってますし。
直情的な割に優柔不断な主人公に、「どうせ同じことをずーっと繰り返していくんだろうなぁ」と全く同調出来なかったが故に、その他のキャラクターが抱える問題までもが障害として取って付けただけにしか見えなくなってしまう本作。監督としては、外しようがないキャストを使って、流行りの“大人への一歩を踏み出す中年”ってコメディを作ろうとしたのかも知れませんが、その目論見はまんまと外れてしまう結果に。キャストは各々のイメージを存分に打ち出せているし、舞台もしっかり整っているっていうのにここまで外すってんだから、逆に一見の価値があるのかも。

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主人公のリサに扮しているのは、『恋人はゴースト』『キューティ・ブロンド』のリース・ウィザースプーン。嫌味さの無いポジティブの権化のような眩いオーラは変わらないのだが、男の間を行ったり来たりしているだけのキャラだったせいもあり、珍しく苛立ちを感じさせる今回。“媚びる”ってのが似合わない女優なのだが、別に直接的な媚びの描写はないにしろキャラそのものが媚び系なので、その違和感が苛立ちを感じさせたのかも。
一方、そんな主人公にただひたすら翻弄されるだけの男性陣には、『奇人たちの晩餐会 USA』『40男のバージンロード』のポール・ラッドと、『ナイト ミュージアム2』『トラブル・マリッジ カレと私とデュプリーの場合』のオーウェン・ウィルソン。ある意味ポール・ラッドありきの作品なので、男友達よりも女友達の方が圧倒的に多そうな、期待を裏切らないいつものポール・ラッドを楽しめる。「バンビみたいな目をしやがって!」と詰られても、「バンビ大好き!DVDも持ってる!」と切り返す感じの。
そして、お楽しみのオーウェン。久しぶりに「オーウェン可愛い!」を連呼できるとワクワクしながら観賞したのだが、今回のオーウェンは可愛いを軽く通り越して、ただのアホちゃん。概ねいつも通りのオーウェンではあるのだが、頑固さというか軸が全く無いのでアホちゃんにしか見えず。残念。
その他、あまりキャラが定まっているように見えなかった『ディパーテッド』のジャック・ニコルソンや、劇中一番面白かった『俺たちステップ・ブラザース -義兄弟-』のキャスリン・ハーン、『ギャラクシー・クエスト』のトニー・シャルーブらも出演。ウィルソン兄弟作品の隠れキャラである、『ローラーガールズ・ダイアリー』のアンドリュー・ウィルソンも当然潜んでいたんで、そこがちょっぴり嬉しかったかなぁと。

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下手な媚びは相手を怒らせるだけ

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2011年07月27日

スター・トレック (Star Trek)

監督 J・J・エイブラムス 主演 クリス・パイン
2009年 アメリカ/ドイツ映画 126分 SF 採点★★★★

ファンというのは、なんとも面倒臭い生き物で。私も「デヴィッド・ボウイが大好き!」と公言するそんなファンの一人なんですが、ボウイが売れに売れて10人中10人が「大好き!」って存在になられると、それはなんかイヤ。かと言って、さっぱり売れずに10人中1人が好きって存在になられるのも、なんとも寂しい。売れるアルバムを作って欲しいけど、スマスマとかに出てニコニコ飯を食うような存在にはなって欲しくなかったりも。ほら、面倒臭い。

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【ストーリー】
突如現れたロミュランの船によって撃沈させられたUSSケルヴィン。その代理艦長であり、自らを犠牲に数多くのクルーを救ったジョージ・カークを父に持つジェームズ・T・カークは、無軌道な生活に別れを告げ艦隊に志願する。ずば抜けた才能を発揮するカークだったが、とあるテストの不正を問われ、危機に陥ったヴァルカン星を救う緊急指令により初航海となるエンタープライズ号のクルーから外されてしまう。しかし、友人マッコイの機転で船に乗り込む事が出来たカークは、この緊急指令がロミュランの罠であることに気付くのだが…。

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コンテンツとしてまだまだ魅力あるものの、そのファンも世界観も若干煮詰まってしまった感もあったスター・トレックシリーズを豪快にリセットし、新たなスタートを切らせたSFアドベンチャー。監督は、どちらかと言えばスター・トレックよりもスター・ウォーズの方が好きだという『M:i:III』のJ・J・エイブラムス。
エンタープライズ号のクルー誕生譚な物語ではあるが、ロミュランにより過去が干渉されてしまったが故に変わってしまった未来が舞台なので、オリジナルとは別の世界として描かれる本作。いきなりカークの父親が死んだりと、「別の世界なんだから、整合性なんて無視して好き放題やるよ!」ってな感じの“ハッタリ屋”J・J・エイブラムスらしいオープニングを迎えるが、基本的にはオリジナルのスター・トレックの遺産の上に成り立っているので、気分を害さない程度の変更点に驚きながら楽しむ事が出来る一本に仕上がっている。なんと言うか、ファンにしっかり目配せをしておきながらも、初心者向けに丁寧に作ってある感じで。“誰もが知ってる”と“誰もが観た事がある”ってのは、決してイコールじゃないですしねぇ。
対立するカークとスポックが絆を深めていく過程を軸に、お馴染のキャラクターたちの性格や役割をコンパクトにまとめ上げ、強大な敵と壮絶な戦いを繰り広げるエンタープライズ号の初陣を大迫力の映像で描いた本作。「相変わらずカークはスケベだなぁ」とか、「あら、こんな所にスコッティが!」とか、スポックとウフーラという衝撃的かつ鼻持ちならないカップルの誕生とか、大いに楽しませてもらった一本に。本作で初めてスター・トレックに触れた人にどう映ったのかは見当つかないんですが、スター・トレックの面白さを知る導入部としては、上々の船出なのではと。強いて言えば、エンタープライズ号の映し方にフェティッシュなまでのこだわりが感じられないって不満がありましたが、それはまぁ年寄りの戯言ってことで。その雄姿を観れただけでも有難かったですし。
詳細は不明ながらも、来年公開を予定に続編の製作がアナウンスされた本作。これまでの作品との整合性に縛られる必要がなくなっただけに、何が起きても、それこそ誰が死んでもおかしくないんで、楽しみに待っていようかと。まぁ、本音を言えば、『ネメシス/S.T.X』で衝撃的な結末を迎えたまま宙ぶらりんとなった“新スター・トレック”の新作を心待ちにしてるんですが、それは叶わぬ夢なんでしょうねぇ。

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エディ・マーフィに、「カークって、緑色のであろうが構わずヤルよな!」とネタにされたこともあるジェームズ・T・カークに扮するのは、『アンストッパブル』のクリス・パイン。女性関係でのアグレッシブさを忠実に継承した、決して上品ではない佇まいが非常にカークっぽくて見事なキャスティングだったなぁと。
一方、スポックに扮したのはTVを中心に活躍するザカリー・クイント。レナード・ニモイが出演していただけに、観賞した翌日には思い出せなくなってしまう印象の薄い顔立ちは、スポック役としてどうかと思うが、融通の効かない奴に感じる苛立ちだけは存分にお見舞いされたので、シリーズを重ねる中で個性を育んで頂けたらと。
またクルー役には、ぼやきキャラの割には実直な印象もあったマッコイ役に、『RED/レッド』のカール・アーバン、ウフーラ役には『ターミナル』でトレッキー役だった『ルーザーズ』のゾーイ・サルダナ、“可愛さ”ってのは継承していたチェコフ役に『ターミネーター4』のアントン・イェルチン、スールー役に『アメリカン・ドリームズ』のジョン・チョー、そして美味しい見せ場を貰ってたスコッティ役に『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』のサイモン・ペッグらが出演。
その他、『ミュンヘン』のエリック・バナや、『パーフェクト・ゲッタウェイ』のクリス・ヘムズワース、成長した気配が然程感じられない『エスター』のジミー・ベネット、一人大人の色気を振りまく『奇人たちの晩餐会 USA』のブルース・グリーンウッドに、「ウィノナっぽい人だなぁ」と思ってたら本当にそうだったウィノナ・ライダーらも出演。結構意外な顔ぶれが出てた印象があるので、次回作もその方向で驚かせて頂きたいもので。個人的には、クリスチャン・スレイターあたりをオススメで。
ところで、子供の頃のカークが車を暴走させながら声を掛ける“ジョニー”って少年がいましたが、あれって誰なんでしょ?お兄ちゃんにしては名前が違うような気がするし。どなたかお詳しい方が居られれば。

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いつでもリセット可能なキャスティングって言われれば、まぁそんな感じも

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2011年07月22日

スター・トレック3/ミスター・スポックを探せ! (Star Trek III: The Search for Spock)

監督 レナード・ニモイ 主演 ウィリアム・シャトナー
1984年 アメリカ映画 105分 SF 採点★★★

人気キャラクターを演じるって、そのキャラクターの人気が役者本人の人気にも直結する反面、イメージが固定されちゃうって弊害もあるんでしょうねぇ。ましてや、そのキャラクターが特異な存在であればある程、その傾向は強いんでしょうし。人気がある以上やめるにやめられないし、やめれたとしてもそれが役者生命に良い影響を与えるかなんて分かりませんしねぇ。そんな複雑な心境を言葉では理解してても、もしレナード・ニモイに出会えたら、きっと真っ先に耳を見てしまうんだろうなぁって私。

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【ストーリー】
カーンとの激闘を終え、満身創痍の状態でドックへの帰路に就いたエンタープライズ号とそのクルーたち。無事に帰れた安堵以上に親友スポックを失った悲しみに暮れるカークの前に、スポックの父サレクが現れ、何者かに委ねられたスポックの魂と惑星ジェネシスに置き去りにされた遺体があれば、スポックは復活すると告げる。帰還後に奇行を続けるマッコイにスポックの魂が入っている事を知ったカークらは、連邦の制止を振り切り急激な成長の結果崩壊し始めたジェネシスに向かうのだが、彼らの前にクリンゴンが立ちはだかり…。

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前作『スター・トレック2/カーンの逆襲』直後から始まる、劇場版スター・トレック第3弾。スポック役でお馴染のレナード・ニモイが、劇映画初メガホンを握る。本作以降、クルーがメガホンを握るってのが一種の慣例になりましたねぇ。
前作と連作のような形を取りながらも、“多数の要求は個を上回る”に対し“一人を救う為に多くを犠牲にする”と、真逆のテーマで描かれる本作。お払い箱が決定した老朽艦エンタープライズ号同様に年老いたクルーたちが、友の為に全てを捨て無理を押し通し奮闘する姿は、老兵の最後の戦いのような哀愁も帯びており、感動的でもある。ただ、支払う代償の描写があまりにアッサリし過ぎているのが気になる所。
クリンゴンが障壁としての添え物的存在なのでそこのアッサリ具合は仕方がないにしても、カークの息子の死やエンタープライズ号の最期までもがアッサリしてしまっているのは如何なものかと。ファンにとっては「うわぁぁぁ!エンタープライズがぁぁぁ!」となるが、然程馴染の無い観客にとっては一隻の船が使い捨てにされただけの印象しか残らない気が。贅沢な願いなのかも知れませんが、後継艦であるエクセルシオをもっと嫌味ったらしく描いていれば、エンタープライズの健気さや愛くるしさが増したのになぁと。まぁ、登場するクルーが絞られていたので、スールーやスコットの見せ場が増えていたのは嬉しかったですが。

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クリンゴンに肉弾戦を挑んだ上に打ち負かし、救いの手を差し伸べてはみるものの歯向かわれたのでアッサリ崖下に蹴落とすという、ワンパク盛りのカークに扮するウィリアム・シャトナーを始め、オリジナルクルーがもちろん勢揃いする本作。前作に続いて、カークの息子役としてメリット・バトリックも出演。ただまぁ、前作で強烈な印象を残したサーヴィックが、ギャラの関係で降板したカースティ・アレイからロビン・カーティスに変わったんですけど、あの髪型と眉毛のせいもあってか、志穂美悦子を通り越して大阪のオバチャンみたいになっちゃってたのは残念でしたが。
また、大好きな船の一つであるバード・オブ・プレイの船長であるクルーグに扮したのは、『殺人ゲームへの招待』『わんぱくデニス』のクリストファー・ロイド。彼自身が持つコメディセンスと、レナード・ニモイが本来得意とするコメディ演出が合致したのか、どことなく三ばか大将的な感じすらあるユーモラスなクリンゴンを好演。
そう言えば、エクセルシオのクルーとして、『ロボコップ』のミゲル・ファーラーもちらりと出ておりましたねぇ。そこだけはエクセルシオに嫌味っぽさを感じちゃったりも。

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後先一切考えないのがカークの強み

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タグ:★★★ SF
posted by たお at 12:57 | Comment(0) | TrackBack(1) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月18日

スター・トレック2/カーンの逆襲 (Star Trek: The Wrath of Khan)

監督 ニコラス・メイヤー 主演 ウィリアム・シャトナー
1982年 アメリカ映画 113分 SF 採点★★★★

好きだったシリーズの新作がオリジナルキャストで作られると、またお馴染の顔ぶれが観られる嬉しさの半面、時間の経過と共に否応が無く表れる“老い”ってのが非常に気になってしまうもんですよねぇ。前作からの時間の経過が映画内でも適用され、経年ってのを上手く利用した作品ってのも少なくはないですが、役者は老けこんでいるのに映画内の時間は止まってたりすると、場合によっては観ていて非常に痛々しいというか哀しい気分になることもありますよねぇ。『チャーリーズ・エンジェル/フルスロットル』みたいに。

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【ストーリー】
スポック艦長のもと練習艦として使用されているエンタープライズ号に、提督として地上勤務となっていたカークが査察にやって来る。カークと共に訓練航海に出たエンタープライズ号であったが、突如連邦艦のU.S.S.リライアントに攻撃を受けてしまう。リライアントを乗っ取っていたのは、かつてカークによって追放された遺伝子工学によって生み出された優生人間カーンであった。カーンは不毛の星に生命を生み出す一方で、強大な破壊力を持つ“ジェネシス”を手に、カークへの復讐を果たそうとするのだが…。

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オリジナルTVシリーズに於いて根強い人気を誇るカーンを登場させた、劇場版スター・トレック第2弾。監督は、『タイム・アフター・タイム』のニコラス・メイヤー。因みに、仕切り直しでスタートした『スター・トレック』で描かれていた、“コバヤシ丸”のエピソードが登場するのは本作。
優れた科学が生み出した物を、平和利用するのも戦争の道具とするのも全ては使う者次第であるという、非常にスター・トレックらしい思想のもと、シリーズで初めて年月の経過というものを大胆に取り入れた本作。それによって、クルー同士の繋がりがより強固なものとして描かれるようになり、宇宙探索に対する情熱も一層浮き彫りとなる結果に。それに伴い、加齢による変化が一種の哀愁を帯びさせ、壮絶な背景を持つ復讐劇と、海洋戦を宇宙に置き換えたかのような激しい戦艦同士のバトルとの良いコントラストを生み出している。
スポックの死という、衝撃的な結末を迎える本作。しかしながら、その死が全ての終焉を意味しているのではなく、劇中の“ジェネシス計画”同様新たな創造・スタートとしての死として描かれている。老いたクルーとスポックの死という大きな賭けに出た本作だが、これが大きく功を奏し、結果的に現在までシリーズが作られ続ける要因となった功績は非常に大きい。
不毛な星が緑豊かな惑星へと変貌していくCGには、当時劇場で大いに驚かされたものですが、そのCGを担当しているは、当時ILMで現ピクサーとディズニー・アニメーション・スタジオの社長を兼任しているエド・キャットムル。昔からすげぇの作ってたんですねぇ。

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軍の物語ながらリベラルの趣が強めに出ているシリーズに於いて、一人肉弾戦を繰り広げたり、相手が人間・宇宙人であろうと問わず女癖が若干悪かったりと、人間味溢れるカーク艦長を演じていたウィリアム・シャトナーを筆頭に、オリジナルキャストが勢揃いした本作。元祖肉体派俳優リカルド・モンタルバンも、久々のカーンを圧倒的な迫力で熱演。
また、新キャラクターであるサーヴィックに扮したのは、『ベイビー・トーク』のカースティ・アレイ。融通の利かなそうなキツめの美貌がヴァルカン人としてドハマリ。是非ともレギュラーとして登場して欲しかったんですが、ギャラを吹っかけ過ぎちゃったようで、残念ながらシリーズには今回限りの登場と。
そんな役者陣も素晴らしいのだが、やはり本作で最も目を奪われてしまうのは、戦闘的な雰囲気を全く感じさせない丸みを帯びた美しいフォルムを持ちながらも、いざ戦闘に入れば強大な力を発揮するエンタープライズ号であろう。その美しさを様々な角度から舐めるように撮ったドックからの出航シーンなんて、何度観てもゾクゾクしちゃいますし。次回作『スター・トレック3/ミスター・スポックを探せ!』にも登場する、禍々しいデザインが素敵なバード・オブ・プレイも大好きな船なんですが、ふいに目の前に現れた時、一番胸がときめくのはやっぱりエンタープライズ号ですねぇ。

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別れではなく新たな船出

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posted by たお at 02:24 | Comment(2) | TrackBack(0) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月09日

スプライス (Splice)

監督 ヴィンチェンゾ・ナタリ 主演 エイドリアン・ブロディ
2009年 カナダ/フランス/アメリカ映画 104分 SF 採点★★★

遺伝子操作なりショッカーに頑張ってもらうなりして人間に他の生物の特性を組み込むとしたら、何が一番便利でしょうねぇ?羽が生えちゃったりするのはロマン的に素晴らしいですが、見た目的にも物理的にも変化が大き過ぎるのでボツ。となると、やっぱりオススメは光合成なのかと。陽に当たってれば概ね満腹ですし。でもそうなったら、世界の争い事も変わるんでしょうねぇ。日向の取り合いに。

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【ストーリー】
巨大製薬会社の管理下で、複数の生物の遺伝子を組み合わせる実験を行っていたクライヴとエルサの科学者夫婦。ある日彼らは、その複数の生物の中に人間の遺伝子を組み込めば、全ての病気治療のカギとなると考え、秘かに実験を実施。誕生した生命体に“ドレン”と名付け、極秘に育てるのだが、ドレンは凄まじい勢いで成長していき…。

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『CUBE/キューブ』のヴィンチェンゾ・ナタリ脚本・監督による、禁断の遺伝子操作がもたらした恐怖を描いたSFホラー。製作者の多さが若干気になる所だが、その中には『パンズ・ラビリンス』のギレルモ・デル・トロの名も。
『スピーシーズ 種の起源』の焼き直しに収まるのかと思いきや、思わぬ子育てに対する男女の意識の違いなど、段階的に変化していく物語が興味深い一本に。
奇怪な風貌のドレンに対しても、大きな愛をもって接するエルサの“母の愛は強し”で幕を開けると同時に、チ○ポに手足が生えたようなドレンに対し、本能的な恐怖と嫌悪感を感じるクライヴの『イレイザーヘッド』的物語も絡む好スタートを見せる本作。それがドレンの成長に伴い、高圧的な母親により不幸な子供時代を送っていたエルサが、ドレンに対しても同様の子育てを行ってしまう負のスパイラルの物語へと変貌し、「エルサとドレンのどっちがモンスターなんだろ?」と疑問を感じ始めた頃に、クライヴとドレンが男女の関係になる衝撃的な展開を迎える構成が非常に上手い。“科学者のモラルと大いなる成果に対する誘惑の天秤”というテーマがどっかに行っちゃった気もしないでもないが、のっぴきならない大変面倒なことになってしまった状況に、落とし所をどうするのか興味津津。ただ、グイグイと関心を引っ張るのはここまでで、あとはただのモンスターホラーになってしまい、もう台無しなんですけど。まぁその辺は、アメリカ国内での上映の窓口程度の関わりだったのかとは思いますが、ダーク・キャッスルが噛んじゃってる以上、こういう安易な締めに行き着いちゃうのも仕方なしなのかも知れませんが。
そう言えば、作り上げた化合生命体に“ジンジャー”と“フレッド”みたいに往年の名コンビ名を付けるのがお好きなようなこの科学者夫婦。過去に作り上げた生命体に“シド”と“ナンシー”のペア名がありましたが、やっぱりアレですか?雄が雌を殺しちゃったんですか?

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クライヴに扮しているのは、『プレデターズ』『ジャーロ』とワンパク過ぎる作品選びが目立つエイドリアン・ブロディ。“何でもやります!”がモットーなんでしょうねぇ。本作でもその“何でもやる優男”ぶりは発揮され、目と目の間が人より随分と離れた風貌はもとより、そもそもが人間じゃないドレン相手に簡単に欲情するクライヴを好演。雌と見れば足が逆関節であろうが全然お構いなしという、まさにエイドリアン・ブロディにうってつけな役柄なのではと。確かに裸で「クゥーンクゥーン」すり寄られれば多少迷いが生まれてしまうのは男の性とは言え、そこに迷いも我慢も全くないってのが、ある意味男の鑑なのかと。スゲェな、エイドリアン
一方、エルサに扮しているのは、『ドーン・オブ・ザ・デッド』のサラ・ポーリー。随分と久しぶりに見たせいか、時の流れが如実に表れた全体的なたるみ具合に驚きを。まぁ、その辺も含めて我の強い女性科学者という役柄にハマっておりましたが。理想が叶わないとなると、愛嬌あるキャラクターから一転し、冷淡な女性になる怖さを見事に表現してたなぁと。
その他に、ヴィンチェンゾ・ナタリ作品の常連であるデヴィッド・ヒューレットや、『キルショット』のブランドン・マクギボンらが出演しているが、やっぱり人より視野が随分と広そうなドレンに扮したデルフィーヌ・シャネアックが強烈。まぁ、チ○ポに足が生えたかのような幼少期が一番強烈でしたが。なんか、雄版フェイスハガーみたいで。

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二人とも我慢が著しく苦手なようで

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タグ:SF ★★★
posted by たお at 15:04 | Comment(6) | TrackBack(16) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月03日

すてきな片想い (Sixteen Candles)

監督 ジョン・ヒューズ 主演 モリー・リングウォルド
1984年 アメリカ映画 93分 コメディ 採点★★★★

子供の頃こそ、滅多に食えないケーキは食べれるは、なんか知らんけどプレゼントは貰えるはでとっても待ち遠しかった誕生日ですが、今じゃもう気付かないまま過ぎ去って欲しい日に。年齢も若干広めの四捨五入で「0歳!」ってことにしてますし。そんな楽しみなんかじゃない誕生日ですが、ケーキは食べますよ。ケーキだけは楽しみ。だから、それだけは忘れないで欲しいなぁと。でも、ロウソクはいりませんよ。多過ぎて火事になりますし

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【ストーリー】
16歳の誕生日を迎えたサム。でも、家族は翌日に控えた姉の結婚式の準備に追われ、誕生日の事なんてすっかり忘れている様子。最悪の気分のまま学校へ向かえば、片想いの相手には相手にされず、変わり者に付きまとわられるはで更に落ち込むサム。家に帰っても、祖父母に部屋を取られ、謎の中国人留学生までいる始末。家にも居場所がないサムは、気晴らしに学校で行われているダンスパーティに出掛けるのだが…。

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16歳という節目を迎えた若者の姿を描く、『恋しくて』『おじさんに気をつけろ!』のジョン・ヒューズ初メガホンとなるラブコメディ。
車の免許も取れるから年少者と一緒にスクールバスに乗らなくても済むようになるし、行動範囲も格段と広がる。その上パーティの機会も増える。そんな重要な節目を家族に忘れられてしまった主人公の一日を、ジョン・ヒューズらしい登場人物のど真ん中に立った目線で描く本作。家族に対し「あー!もうっ!」と苛立ちを感じる年頃の描き方が、本当に上手い。イライラがピークを迎えても何かドラマチックな展開があるわけでもなく、たださめざめと泣く事しか出来ない、大人の入口に立ったとはいえまだまだ子供である16歳の姿を、見事なまでに描いているなぁと。主人公の片想いが成就するまでというストーリーラインこそあるが、基本的には若者の日常を散文的に描いた本作。初監督という事もありまとまりの悪い印象も否めないが、その散らかり具合に騒々しく些細な事で一喜一憂したあの時代ってのが見事にハマってもいる。
「辛い事も多いが、それも含めてやっぱり好きだ!」という学園生活に向けた視線や、中流階級の出で特に目立たない主人公や煙たがられる変わり者、スポーツバカや金持ちにプロムクイーンらで構成される学園社会の描き方など、ジョン・ヒューズのスタイルが既に確立されている本作。特に、いくら煙たがられようが全くめげない凄まじい行動力を持つギークの姿は、この後のジョン・ヒューズ作品の中核を担うだけではなく、現在にまで脈々と続く青春コメディの原点でもあるのではと。まぁ、そんな小難しい理屈を述べるまでもなく、カジャグーグーで幕を開け、スパンダー・バレーにオインゴ・ボインゴ、トンプソン・ツインズにビリー・アイドルにワム!と来て、デヴィッド・ボウイまで流れる本作を嫌いになれるわけがないので、言わずもがなの高評価。

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主人公のサムに扮しているのは、『ブレックファスト・クラブ』『プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角』のモリー・リングウォルド。決して美人ではないのだが、一旦意識し始めると心から離れなくなってしまう魅力を持つ彼女だけに、本作のような普通の悩みを持つ少女役が非常に似合う。そう言えば、ソフィー・マルソーやリー・トンプソンが日本の映画誌の表紙を飾っていた当時アメリカに短期留学に行ったんですが、ファッション誌からエンタメ誌から軒並み彼女を表紙にしていたのに驚いたもので。同世代の子たちはみんな彼女を模したファッションをしてましたし。彼女の熱烈なファンの事を、“リングレッツ”って言ってましたねぇ。
また、本作のもう一人の主人公であるギークに扮したのは、モリー・リングウォルド同様ジョン・ヒューズの一連の作品で一躍人気者となった、『ときめきサイエンス』『ランナウェイ/18才の標的』のアンソニー・マイケル・ホール。今ではすっかり厳つい男前になってしまったが、いまだに彼の名前を聞くと浮かぶイメージは、チビでガリガリの冴えない子のくせに全くめげない本作のイメージ。“歯の矯正”と聞いても、本作のイメージが浮かびますし。その見た目のイメージとは裏腹に、素行の悪さが度々取りざたされていた彼。そんな話題を耳にする度に、「ギークのくせに」と思ったもので。
その他、もうプリップリでひたすら可愛い『オフロでGO!!!!! タイムマシンはジェット式』のジョン・キューザックや、『アニマル・ハウス』のジョン・ベルーシの如く物語には一切絡まず、ただひたすら笑いを生むことに集中する『ポイント・ブランク』のジョーン・キューザックにも注目。と言うか、全くこの二人から目が離せない。ところで、なんでしょ?この頃のジョンとジョーンの“もれなく付いてくる”感は?

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ハンデは口数でカバーすれば良いってことを学んだ

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posted by たお at 02:22 | Comment(0) | TrackBack(0) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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