2012年02月29日

猿の惑星:創世記(ジェネシス) (Rise of the Planet of the Apes)

監督 ルパート・ワイアット 主演 ジェームズ・フランコ
2011年 アメリカ映画 106分 SF 採点★★★

相変わらず次々と作られておりますねぇ、“ビギニング”物。確かに物の始まりってのを考えるのは楽しいもんで、私もボーっと鉛筆眺めながら「コレ、木だったんだよなぁ…」と当たり前&どうでもいい事を考えながら暇をつぶしてたりもしますし。ただ、不思議と映画の前日譚ものには然程興味が湧かないんですよねぇ。決まったゴールに向かって辻褄を合せることに終始してたりする作りもそうなんですが、やっぱり「良くは出来てるけど、別にこれが本当の始まりではないんだよなぁ」って思ってしまうのが要因なのかもと。

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【ストーリー】
アルツハイマー治療のカギを握る新薬を投与されたチンパンジーが、驚異的な知能レベルの向上を見せるのだが、突如暴れ始めたため已む無く警備員により射殺されてしまう。しかし、そのチンパンジーが身籠っていた事を知った科学者のウィルはその赤ん坊を引き取り、シーザーと名付け秘かに自宅で飼育することに。新薬の影響を母体から受けていたシーザーもまた驚異的な知能レベルを見せるのだが、ある日隣人トラブルが原因でウィルと引き離されることになり…。

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言わずと知れた『猿の惑星』の前日譚を、新鋭ルパート・ワイアットにメガホンを任せ描いたSFパニック。唯一の人間役だったマーク・ウォールバーグ自体が猿顔だったんで、画面中猿しか出ていない印象もあった『PLANET OF THE APES 猿の惑星』がまぁアレだったんで、とりあえずなかったことにしての仕切り直しってとこでしょうか?
高度な知能を得た一匹のチンパンジーが自我に目覚め、不当な扱いを強いられていた猿界のリーダーとして人間に反旗を翻すまでを描いた本作。管理されているはずの猿がいつの間にか身籠ってたり、在庫管理や出入り検査が杜撰過ぎて最重要であるはずの新薬サンプルが自由に持ち出されている粗も気になる所ではあるが、宇宙船の遭難やキャラの名前もじり、名セリフの再現などオリジナルに対する目配せも細かく、猿の台頭と共にウィルスによって人類が減っていくって設定も前日譚として説得力もあるので良作の部類かと。また、当時のブラックパワーの台頭とリンクされた“マイノリティの反乱”ってテーマも、リベラルの牙城サンフランシスコを舞台に今日的かどうかはさて置きしっかりと活かされており、“森の賢人オランウータン”やリーダーの為に身体を張るゴリラなど、分かり易く描き分けされた猿軍団の描写も展開に安定感を与える良いまとまり具合。
ただ、結果は別にして直接的には猿が人間を殺さないってのは、逆転と反乱を描くにはインパクトが弱い気もするし、動物実験など人間が動物に対して行う愚行がこれでもかってほどに描かれてるわけじゃないので、賢くなった猿が原因そっちのけで捨てられた腹いせに反旗を翻してる程度にしか見えない動機の弱さも。猿目線で進む物語とは言え、対峙する人間に“負けるわけがない”(猿からすれば“勝てそうにない”)ってだけの安心感がないってのもちょっと。また、辻褄も合い綺麗にまとまってる反面、第一作目としての輝きには乏しい印象も個人的に。なんと言うか、よく出来たスピンオフって感じ。それにしても、一番知りたかった数の逆転と人間の退化ってとこなんですが、その辺は「シリーズ化されたら教えるよん♪」ってことなんですかねぇ。どうせなら、極度に進歩した猿の惑星からマッドサイエンティストのオランウータンと、ちょいと足りないゴリラが追放されるまでの話になれば面白いなぁと。母星が“惑星E”とか呼ばれんの。

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チャールトン・ヘストンが散々な目に遭う原因を作った科学者役には、『デート&ナイト』のジェームズ・フランコが。研究の動機が動機なだけに、相手を失望させることにもなる“優しさ”ってのが前に出た役柄を好演。それにしても、このシリーズの主役は“猿顔”ってのが大前提なんでしょうかねぇ。
また、『スラムドッグ$ミリオネア』のフリーダ・ピントや、自らを蝕む病に困惑し混乱する様を見事に演じた『ハリーとヘンダスン一家』のジョン・リスゴー、『RED/レッド』のブライアン・コックスに、如何せんメガネの魔法使いのやつは一本も観てないのでそれほど驚きもなかったトム・フェルトンなども出演。
人間勢になかなか強い顔立ちの役者が揃っていた本作ではありますが、やはり本作の主人公は猿。そのリーダーであるシーザーに扮したのが、『アレックス・ライダー』のアンディ・サーキス。いささか人間よりの顔立ちとその毛並みが好みから外れてはいたんですが、さすがモーションキャプチャー芸人サーキス。知能の高さが姿勢に反映されたシーザーを、猿7:人3くらいのバランスで好演。ただまぁ、アンディ・サーキスの見事な仕事振りに驚く一方で、本作の製作がアナウンスされた時点でアップを始めてたであろう、ハリウッド随一のゴリラ芸人リック・ベイカー師匠の名前が見当たらなかったのは、やっぱりちょいと寂しかったですねぇ。

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次回はコーネリアスとジーラをこの御二方に

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タグ:★★★ SF
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2012年02月25日

30アサルト 英国特殊部隊 (Age of Heroes)

監督 エイドリアン・ヴィットリア 主演 ショーン・ビーン
2011年 イギリス映画 90分 戦争 採点★★

低予算の映画でも、それなりに名の知れたスターをゲストに呼べばいっぱしの映画のように装う事が出来たりしますよねぇ。一時期のデ・ニローロみたいに、本職が“ゲスト俳優”な人もいますし。もしかして、最近のショーンはその路線を狙ってるのかも知れませんねぇ。楽に稼げそうですし。ただまぁショーンの場合は、主役扱いのゲストになっちゃったりするんで、あんまり楽はさせてもらえてなさそうなんですけど。

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【ストーリー】
第二次世界大戦下のイギリス軍。ドイツ軍の最新鋭レーダー装置の奪取を命じられたジョーンズ少佐は、精鋭らを招集しコマンド・ユニットを結成。ノルウェーにあるドイツ軍基地を目指すのであったが…。

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“ジェームズ・ボンドの生みの親であるイアン・フレミングも関与!”と謳い文句にありますけど、出てるには出てますが別にマティーニ片手に美女を口説いてるわけではないので、過度の期待は禁物の戦争スパイアクション。
軍事機密を奪取せんと結成された英国精鋭部隊とドイツ軍の戦いを描いた本作。如何せん予算にも描き手の才覚にも乏しいので見てくれは寂しいが、それなりの戦闘シーンに現地の美人スパイ、それに軍服姿がビシリと決まってるショーン・ビーンと観たい物が最低限揃っているので、多少贔屓目ではあるが楽しむ事は出来た一本。
ただまぁ、クライマックスから結末にかけての一世一代の尻すぼみ感はなんともかんとも。シリーズ途中で打ち切りの決まったドラマのように、唐突かつフワっと終わる。それもこれも、本来の主人公である脱走兵と通信機器の専門家との間に生まれる友情と、“命を賭けて守るが、敵の手に渡るのなら殺さなければならない”ってジレンマをメインに、兵士たち個々の姿を描かなければならなかった所を、スペシャルゲストのショーンの出番が増えに増えちゃって、肝心な部分が薄っぺらになっちゃったからなんでしょうねぇ。“ショーン・ビーン”を取るか“見た目は地味だけど面白い映画”を取るかの二者択一の上、ショーンを取った作り手の気持ちも分からなくもないんですが、そもそも“ショーンが出ている面白い映画”って選択肢がないってのはどうかと。

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そんな戦争アクションとしては随分とアレな作品ではありましたが、ショーンを愛でる分には然程文句もない本作。「優秀な軍人だけど、破天荒な一面もあるのよ!」とハードルを上げられた前フリで登場するショーンでしたが、軍服のハマり具合も、幾分付き過ぎの感じもした顔の肉付きも“頼れる男”としての風格十分。劇中ショーンの活躍で危機を脱したシーンもなければ、「オレに銃を向けたら命はないと思え!」と言いながらも、その直前のシーンで若造に銃を突き付けられスゴスゴ言う事を聞いちゃってるんで泣き言にしか聞こえなかったりもしますけど、風格だけは十分。自分の命を預けるには若干の不安が残りますけど、「あの部隊の隊長カッコイイよねぇ!」と遠くから眺めてる分には文句なし。ただまぁ、“散り様芸人”として(たぶんきっと)名の知られるショーンの死に際をウヤムヤにしてしまった作り手の分かってない具合には、なんとも腹立たしさを感じてしまいましたが。
また、本来の主人公である脱走兵役に、ショーンとは『必殺処刑人』で共演済みのダニー・ダイアが。なんとも煮え切らない役柄を、持ち前の山崎邦正顔で抜群にイライラさせてくれる好演。その他、イアン・フレミング役に『ブラッド』のジェームズ・ダーシー、女スパイ役に『タイタンの戦い』のイザベラ・ミコらも出演。まぁ、この顔ぶれじゃぁショーンの出番が増えまくるのも仕方がないのかと納得も。

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ショーンとその他大勢

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2012年02月06日

スーパー! (SUPER)

監督 ジェームズ・ガン 主演 レイン・ウィルソン
2010年 アメリカ映画 96分 コメディ 採点★★★★

ヒーローとヴィランって真逆の存在のように思えて、法に照らし合わせるとどっちも犯罪者なんですよねぇ。ヒーローは世間的に“良い人”となんとなく認知されてるだけの存在なんで、うっかり訴えられると結構まずい立場に。そう考えると、胸を張って悪事に勤しむヴィランなんかよりも、遥かに矛盾した存在ですよねぇ。だからウジウジ悩むヒーローが多いんでしょうけど。

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【ストーリー】
ダイナーのキッチンで働く冴えない中年男、フランク。何一つ良い事のない人生において、美しい妻のサラの存在だけが彼の心の拠り所となっていた。しかしそんなある日、妻のサラはフランクを捨てドラッグディーラーのジョックのもとへと去ってしまう。悲しみに暮れる彼だったが、神の啓示を受け自家製ヒーロー“クリムゾンボルト”となり、妻を救い出す為に街の悪党退治に繰り出す決意を固めるのだが…。

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ドーン・オブ・ザ・デッド』『スリザー』のジェームズ・ガン監督/脚本による、自家製スーパーヒーローとなった中年男の姿を描いたコメディ。一応“コメディ”とはなってますが、別に誰かが面白いことをするわけではなく、可笑しくも悲しい生き様を見てついつい笑ってしまうってタイプ。
冴えない主人公がヒーロー・コスチュームに身を包む映画と言えば『キック・アス』や『ディフェンドー 闇の仕事人』を思い起こさせるが、受けた印象はそっちよりも『アメリカン・サイコ』や『ヒストリー・オブ・バイオレンス』に案外近かった本作。何の取り柄もない自分の代弁者として主人公に自己投影し単純に喝采を送ると言うよりは、垣間見える狂気に恐怖を感じながらも、“列に横入りする奴をぶん殴りたい”“人の車に傷つける奴をとっちめたい”など、日々の怒りから来る暴力衝動を果たす主人公に快感を感じるタイプって感じ。
ただ、本作の暴力描写には痛快さの欠片もない。レンチで殴られた顔は無残に引裂け、後頭部を床に叩きつけ続けられる悪党の目は徐々に焦点を失い死者の顔となり、断末魔の悲鳴を上げる男に何度も何度もナイフが振り下ろされる。ホラー畑の監督が悪ノリしたゴア描写と言うよりは、ヒーローであろうがヴィランであろうが振るう暴力には何の変わりのない、暴力それ自体とその結果をまざまざと見せつけているようだ。そこには善も悪もなく、暴力は暴力に過ぎない。暴力を嫌いながらも突き上げられる衝動を抑えきれず、「悪党相手になら…」と暴力を振るう理由を後付けしてしまいがちな観客の溜飲を下げさせるように見せかけて、暴力そのもののエグさを見せつけ「うわぁ…」っとさせる、なんとも憎い演出。

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本作の主人公は、世間的に大多数を占めるであろう“冴えない男たち”の代表としては、奥さんが美人ってのをさて置いても非常に共感しずらい。“共感できない”ってのではなく、認めたくない自分の暗部をも曝け出す、“認めたくない共通点を持つ”人物。
奥さんが逃げたのはドラッグディーラーのせいで、ヒーローになったのは神の啓示、暴力を振るうのはそいつが悪党だからと、全てにおいて自分を顧みず原因を他所に見出す主人公。都合の悪さや矛盾からは目を逸らし、責任を他者に転嫁してやり過ごす、まぁ非常によくいるタイプではある。ここまで自分本位な男が主人公であれば、観賞中も相当イライラしてしまいそうなものだが、本作は主人公が自分本位を暴走させればさせるほど面白くなってくる。自分本位だろうがなんだろうが、やり切ってしまう姿は清々しい。最終的に“愛する人のため”とか“日々に小さな幸せを”とか、非常にもっともらしい言葉で締めくくろうとはしているが、それとて自分の行動を正当化するための後付けの言い訳に思える。犠牲を払う事も、責任を取る事も、自分に共感してついてきた“相棒”の顛末についても触れようとせず、一人で達観することで万事解決したように思い込もうとしてるかの如く。負け犬の物語としては、負け犬であることからすら目を逸らす、ほぼ完璧な締め括り。

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まぁ、こっからは思いっきり道を外れた深読みって言うか邪推なんですが、この物語に現実味が感じられない。もちろん、“映画内の現実”って意味で。不安定な男の日常を、同様に素人めいた不安定なカメラワークで追ってるせいもあってか、どこかフワフワした印象を覚える本作。見ていたTV番組がそのまま直結する“神の啓示”にしろ、単に日々の鬱憤を晴らしているだけの行動にしろ、どこか現実から遊離してしまってる。こうなってくると、もう「最初っから最後まで主人公の妄想なんじゃないのか?」と思えてくることすら。
そうなると、“どこから妄想が始まってるのか?”ってのに興味が湧いてしまうんですが、素直に考えれば“奥さんが逃げた時から”ってことに。ただまぁ、失礼な話あのフランクがあんな美人のサラを嫁さんに出来るとは到底思えない。ってなると、サラが現実に存在するとしても、彼女が元ジャンキーでグループセッションに参加してるって設定も怪しく。あんまり考え込むとワケ分かんなくなるんで適当に整理すれば、フランクがダイナーのキッチンからサラを眺めながらしていた妄想が、そのまんま映像になったのが本作なのかと。そうだとすれば、自家用車で行動してるのに誰もナンバーを控えてなかったり、フランクの正体に気付いた刑事がたまたま死んだり、ギャング組織を一網打尽に出来たり、若い女の子が一方的に迫ってきたりする都合の良過ぎる展開も納得。きっと本来のエンディングは、妄想に夢中になり過ぎたフランクがハンバーグを焦しちゃって、同僚に怒られ我に帰るシーンなんじゃないのかと。なんか、デヴィッド・クローネンバーグあたりに撮ってもらいたい題材に思えてきましたねぇ。まぁ、ここで書いてる事自体が私の妄想なんですけど。

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主人公のフランクに扮したのは、『ROCKER 40歳のロック☆デビュー』『Gガール 破壊的な彼女』のレイン・ウィルソン。薄毛で中年太りの彼が、ドンヨリしながらも妙に鋭い目線を脂ぎった厨房からホールにいるサラに送っている姿が、あまりにハマり過ぎていて若干引いてしまう程の好キャスティング。半端な二枚目なんかが演じたら出てこない生々しさが見事。まぁその反面、重過ぎる印象もありましたが。
ただ、その重さを解消してくれたのが、『インセプション』『ローラーガールズ・ダイアリー』のエレン・ペイジ。テンションの上がるスイッチがイマイチ分かりづらい、私のようなおっちゃんにとっては非常に扱いに困る女子役を、相変わらず見事に表現。彼女が出てくると、重たい画面が途端に弾みだす。
また、年を取ってもカッコ良くモテモテなのは、きっと裏で悪い事をしているからに違いないという、フランクにとってのリア充というか俗世間のイメージを一身に背負ったジョック役には、『パーフェクト・スナイパー』『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』のケヴィン・ベーコンが。この作品を手に取ったほとんどの理由がケヴィン・ベーコン見たさだったので、飄々っぷりに磨きの掛かった彼を見れて満足。こんな大人になりたい。まぁ、年齢的には私も充分大人なんですけど。
その他、相変わらず面長過ぎる顔立ちの割に下半身がドッシリしてきた『インクレディブル・ハルク』のリヴ・タイラーや、どっちかと言えば犯罪者顔である『ペイバック』のグレッグ・ヘンリー、『スリザー』『デイズ・オブ・サンダー』のマイケル・ルーカーらも出演。そう言えば、マイケル・ルーカー。スタローンやシュワなど肉体派を前に輝く役者なんですけど、なにやら合気道の名手だとか。ってことは、いつかセガールの前に立つって日も来るんですかねぇ。ワクワクしますねぇ。

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強いて言えばどっちの方が悪いかってレベル

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2012年01月24日

ゾンビ処刑人 (The Revenant)

監督 D・ケリー・プリオー 主演 デヴィッド・アンダース
2009年 アメリカ映画 117分 ホラー 採点★★★

何も知らない映画をタイトルだけで面白いかどうか判別するのは至難の業ですが、逆に危険な香りを発してるタイトルってのはありますよねぇ。“○○処刑人”とか“沈黙の○○”とか。まぁ“沈黙の○○”に関しては、こっちもそれを承知で手に取っているんですが。年貢のつもりで。

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【ストーリー】
イラクで戦死したバートだが、どういうわけか墓場から蘇ってしまう。どんどん進行する腐敗を止めるには人間の生血が必要であることを知ったバートは、親友のジョーイと共に夜の街を徘徊、偶然出会った強盗を殺害してその血にありつく。そんな二人に妙案が浮かぶ。「悪人殺して血を吸えば、英雄にもなれるし一石二鳥じゃね?」と。しかし、物事そんなに甘くなく…。

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ブロブ/宇宙からの不明物体』『プレスリー VS ミイラ男』など数多くの作品に携わってきたベテラン特殊効果マン、D・ケリー・プリオーがメガホンを握ったホラー・アクション・コメディ。主演は“エイリアス/2重スパイの女”などTVを中心に活躍する、デヴィッド・アンダース。“ゾンビ”に“処刑人”を足した、とっても危険な香りのするタイトルだが、これが思いのほか面白い拾い物で。まぁ、ゾンビってよりはヴァンパイアなんですけど。
アンデッドと化してしまった主人公が、悪党退治で食欲を満たす様を描いた本作。無責任男とのバディムービーの面白さに、恋人との切ない恋模様、モンスターとしての哀しい定めなど、題材を欲張り過ぎてもしゃくしゃしてしまっている感は否めないし、あまりにモッタリとしたテンポはなかなか辛いのだが、コメディに走り過ぎずホラーとしての重さを残そうとしている姿勢や、しっかりモンスターを描こうとしている狙いは間違っていない。最終的にモンスターとして利用されてしまう皮肉さも、結構好みの締め括り方でも。万人に勧められる作品ではないんですけど、“○○処刑人”ってタイトルに騙され続けて免疫が出来ちゃってる方なんかは楽しめるんじゃないのかなぁと。

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これ以上悪くはなんないんだから、もう楽しむしかない

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2012年01月21日

卒業白書 (Risky Business)

監督 ポール・ブリックマン 主演 トム・クルーズ
1983年 アメリカ映画 98分 コメディ 採点★★★

実家が自営業だったので、親が四六時中家にいた私の子供時代。“親の居ぬ間に羽目外す”なんて経験は皆無。極稀に旅行に出かけ家に居ない時もあったんですが、そんな時は私にだけ内緒に家を出やがる。親がいない事に気付くのは晩飯時なので、羽目を外す時間もない。“何をしでかすか分からん子供”と、完全に見透かされてたんでしょうねぇ。まぁ、間違ってはいないんですけど。

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【ストーリー】
有名校進学の可能性が危ういことに悩む高校生のジョエル。そんなある日、両親が旅行に出かけるため、数日間一人で生活することに。この機会に思いっきり羽目を外そうと、電話でコールガールを家に呼ぶのだが、それを切っ掛けに思わぬ騒動が巻き起こり…。

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ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』のトム・クルーズの出世作である、最近は脚本家としてもめっきり名前を見掛けないポール・ブリックスマンによる青春コメディ。内容がすっかり頭から消え去っていても、トムちんがボブ・シーガーの“オールド・タイム・ロックンロール”に合わせワイシャツ&白ブリーフで踊り狂うシーンだけは頭にこびりついている一本。
「親の居ぬ間にデリヘルを呼んじゃおう!」と随分思いきったことをした高校生が、裏稼業にちょいと手を染め一皮も二皮も剥けていく様を描いた本作。題材的にも『ポーキーズ』や『グローイング・アップ』的な能天気なエロコメを期待しちゃうのだが、中身は思いのほか重い。もう演出が重苦し過ぎて、笑える所も笑えない青春コメディとしてはどうかと思う出来。少々のリアルさと、トムちんが真面目すぎて弾け切れていないってのが原因なのかと。タンジェリン・ドリームの音楽も幻想的過ぎて、夢と現実のシーンが見境付かないってのも痛いところ。
ただ、将来の不安に押し潰されそうな状況を、「どうにでもなれっ!」と開き直る破天荒さや、「お前、既に十分恵まれてるじゃん」と思わなくもないが、「ビッグになって金稼ぐ!」という下世話だが正直な前向きさが妙なやる気を起こさせてくれるのも事実。建前としてはお手本にならないが、本音としては見習いたい生き様が魅力でも。

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映画としてはアレな部分が多い本作の見所は、やっぱり本作でのブレイク以降今日までその快進撃が止まらない、『ナイト&デイ』『バニラ・スカイ』のトムちんの若さ。ハンサムにはほど遠いが、全てにおいてプリップリの若々しさ。歯を直したてだからか口の開け方がまだ不自然だが、幾分ふっくらとした具合がボンボン役にぴったり。良い家に住んでいて親のポルシェを乗り回すアイドル顔の主人公が、一人妄想しながら悶々する奥手ってのには違和感を感じるが、奥手は金で治るもんじゃないからしょうがないのかと。悶々は金で解決してましたが。
一方のコールガール役に扮したのは、これまた本作で注目された『マザーズデイ』のレベッカ・デモーネイ。年齢的にはトムちんと然程変わらないのに、百戦錬磨の貫禄すら漂う悪女っぷりが見事。冷静になってこの映画を観ると、全て彼女が掌握してるんですよねぇ。
その他、『スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい』のカーティス・アームストロングや、『ビバリーヒルズ・コップ』のブロンソン・ピンチョットらも出演しているが、30年近く経つこの作品の時点で既に胡散臭い、『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』のジョー・パントリアーノが素晴らしかったなぁと。流石、ハリウッドを代表する小悪人役者

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カウチでの奇行ならお手の物

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2012年01月18日

処刑人ソガの凄まじい人生 (La soga)

監督 ジョシュ・クルック 主演 マニー・ペレス
2009年 ドミニカ共和国映画 102分 アクション 採点★★★

映画を観てるかゲームをしてるか、はたまたズンダ餅を食べてるか猫と戯れてるしかない私のような人生でも、存分に脚色すればそれなりの人生に見えたりするんでしょうねぇ。どうせなら、ポール・ヴァーホーヴェンにでも撮ってもらいたいもので。きっと、暴力と肉欲とズンダに塗れた一大バイオレンス猫飼い巨編になるんでしょうねぇ。

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【ストーリー】
ドミニカ共和国。幼い頃麻薬売人に父親を殺されたルイシトは国家警察の将軍に拾われ、凶悪な犯罪者を見つけ次第処刑する処刑人へと育て上げられる。父の仇を探し求めながら日々処刑を繰り返していた彼だが、初恋の相手だった幼馴染との再会により殺しの世界に嫌気がさし始める。そんな折、アメリカに逃亡していた父の仇が帰国したとの知らせが入り…。

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戦火の勇気』やアメリカのTVなどで活躍するマニー・ペレスが製作と脚本も務めた、実話をベースにしたとされる犯罪アクション。自身の体験を基にしたってらしいが、どの辺までがそうなのかは彼のみが知る所かと。『クロコダイル・ダンディー2』や『地獄の7人』『サルバドル/遥かなる日々』などで一時期よく見たファン・フェルナンデスや、『弾突 DANTOTSU』のポール・カルデロンなども出演。
物語を掻い摘むと、“幼い頃から独裁者によって私設処刑人へと育て上げられた男が、本来倒すべき強大な敵が誰であるかに気付き、無謀な戦いを挑む”って非常に劇画チックなものなのだが、観てみると案外地味。かと言って退屈なわけではなく、家畜屠殺人の子として死と密着した生活を送ってきた男の苦悩や、ドミニカの犯罪や権力者の実態、アメリカの司法当局との関係など興味深い題材を多く取り揃えている。リアルに目の前で豚が解体されていくシーンのように、引っ切り無しに流れる陽気な音楽とやってる事の凄惨さのギャップも面白い。
ただ、私が中南米に対し“暴れん坊の国々”としかイメージを持っていないせいもあるんですが、「これぞドミニカ!」って感じは然程せず。麻薬と私利私欲に走る独裁者という、題材がある意味ステレオタイプな中南米なので、「ニカラグアだよ!」と言われてもきっと気付かない特徴の無さも否めず。なんと言うか、国内から見つめたドミニカと言うよりも、アメリカから見たドミニカって感じも。まぁ、あまり馴染のない国の映画を観れるっていう変わり種として。

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やらされてる事は集金人

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2012年01月08日

ステイク・ランド 戦いの旅路 (Stake Land)

監督 ジム・マイクル 主演 ニック・ダミチ
2010年 アメリカ映画 98分 ホラー 採点★★★★

“良いゾンビ映画”ってのは、当然のことながらゾンビ映画に何を求めるのかで違ってきますよねぇ。臓物ムシャムシャのスプラッター満載を求める方もいれば、昨今のアクション傾向が強い物を求める人も。私なんかは、臓物ムシャムシャも大事ですけど、やっぱりゾンビによって変わってしまった世界ってのをしっかり描いている作品が好きだったりも。

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【ストーリー】
ヴァンパイアによって崩壊してしまったアメリカ。その荒れ果てた土地を両親を失った少年マーティンは、“ミスター”と呼ばれる名も知らぬヴァンパイアハンターと共に新たな楽園と噂される“ニュー・エデン”を目指し旅をしていた。しかし、ニュー・エデンに到達するには、邪教集団によって占拠されている地域を通らねばならず…。

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監督ジム・マイクル、主演/脚本ニック・ダミチの『ネズミゾンビ』コンビによる、ヴァンパイアによって崩壊した世界を生き抜く人々の姿を描く、ホラー仕立てのロードムービー。
過激なアクションに走らず、過剰なゴア描写でお茶お濁すわけでもなく、しっかりと崩壊後の世界と人々の姿を描くことに注力した本作。障壁となる存在はヴァンパイアだが、そのお膳立ても世界観も完全にゾンビ映画。登場人物にとって最大の脅威となるのが、ヴァンパイアではなく、恐怖のあまり邪教に走り、神の名のもとに蛮行を繰り返す狂気に駆られた人間だという“わかってる”具合も嬉しい。
ホラー映画と言うよりは、旅を通して少年が一人の男に成長していくロードムービーの趣の方が強い本作。怪物と狂気に駆られた人間たちが跋扈する荒廃した世界を、利害が一致した理性を残す人間が寄り添い疑似家族を構成しながら旅を続けていく過程や、僅かながらも秩序を保ち、まるで西部開拓地のような町並みを復興させている描写も非常に面白い。この、他人に残る理性を描いたことが、劇中「食べ物がない!」「人が人を食ってる!」と良い話の聞かない“ニュー・エデン”に対しても、ほんのりと明るい希望を感じさせた結果に繋がったのではと。もちろん、一人の男に成長した少年の頼もしさも相まって。
確かにまぁ、“ミスター”がどうしてあんなに問答無用のカッコ良さを誇ってるのかとか、種の逆転になりそうなところを因縁話で済ませちゃったりと、詰めの甘さもないわけでもない。しかし、それらは作品を致命的につまらなくするものではない。そういった部分を穿り回すのもどうかと思いますし。チャカチャカとした小手先の編集やCGでお茶を濁さず、映画としてドッシリ重みのある画作りが成されているのも好ポイントで。

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マーティンの父親代わりの存在でもある“ミスター”に扮したのは、本作の脚本も手掛けているニック・ダミチ。ネイティブ・アメリカン色を強めたミッキー・ロークっぽい風貌が、西部劇の雰囲気もある本作に良くハマっている。寡黙で利己的で、“強さ”が前に出たキャラクターではあったが、その底に大きな優しさが見え隠れする書き込み方が素晴らしい。“息子”とは決して呼ばないが、成長したマーティンを見つめる複雑な感情が入り乱れたその眼差しは、間違いなく父親のもので。他の作品で見た覚えのない役者だが、ジョゼフ・ゴードン=レヴィットの新作アクションスリラー『プレミアム・ラッシュ』にも出ているようなので、この作品を観る楽しみが増えましたねぇ。
一方のマーティン役には、『ミスティック・リバー』でケヴィン・ベーコンの少年時代を演じたコナー・パオロ。エロトランプを見つけ表情に出さぬよう心の中で小躍りしたり、若い娘にすぐ目を奪われたりと、なんかもうとっても思春期な感じを好演。そのくせ、どんな状況においても泣きごとを言わないのは、ミスターの教育が行き届いてるってことかと。
その他、年齢を考えれば当たり前なのだが、あんまりに久しぶりだったのでその100%お婆さんっぷりに衝撃を受けた、『トップガン』のケリー・マクギリスや、なんか大物スクリームクイーンと化してきた『HATCHET After Days/ハチェット アフターデイズ』のダニエル・ハリスも出演。考えてみれば、ここ最近ダニエル・ハリスづいてるなぁと。
それにしても、ケリー・マクギリスとダニエル・ハリス。双方を初めて映画で観たのも共にほぼ30年前。まぁ、ダニエル・ハリスは子役だったってのもありますが、これだけ加齢の差が明確になっちゃうと、なんとも歳月ってのは残酷だなぁと。

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親離れより子離れの方が案外難しい

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2011年12月23日

世界侵略:ロサンゼルス決戦 (Battle Los Angeles)

監督 ジョナサン・リーベスマン 主演 アーロン・エッカート
2011年 アメリカ映画 116分 SF 採点★★

“友達”ってのは、基本的には自分の近くで作りますよねぇ。わざわざ遠くに出向いて友達を作ろうなんて気は起きない。ってことは、もし宇宙人が遠路遥々地球までやって来てるとすれば、それは“友達作り”なんかじゃないんだろうなぁ。そんな宇宙規模のお人好しなんて、そうそう居ないよなぁ。

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【ストーリー】
突如、大量の隕石が地球に降り注ぎ始める。しかしそれは隕石なんかではなく、宇宙からの侵略者であった。侵略者によって世界中の都市が次々陥落していく。一方ロサンゼルスでは、ベテラン軍曹ナンツ率いる海兵隊の小隊が、市内の警察署に取り残された民間人を救い出す為、空爆までのタイムリミットが迫る中、瓦礫と化した街を進んでいくのだが…。

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黒の怨』『テキサス・チェーンソー ビギニング』のジョナサン・リーベスマンによる、延々戦闘シーンが続くSFアクション。
戦闘の熾烈さや過酷さ、戦場における非人道的行為、マイノリティによって支えられる国防など、宇宙からの侵略というSF題材を用いながら“アメリカの戦争の実態”ってのを描きたかったのかも知れないのだが、どうにも描き方が下手。ドキュメンタリータッチでなんとか醸し出したかったのであろうテーマがその下手さによって、『プライベート・ライアン』や『ブラックホーク・ダウン』、『エイリアン2』などなど借りもののプロットを継ぎ接ぎした単なる戦闘シーンだらけ映画になってしまう結果に。その肝心の戦闘シーンもPG13に収めてしまったからか、派手な割には熾烈さも過酷さを思いのほか伝わらず。無数の弾丸が飛び交えど案外当たらない、FPSゲームのような感じも。それも、他人のプレイを見させられている場合の

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主人公のベテラン軍曹に扮したのは、『ブラック・ダリア』のアーロン・エッカート。ベテラン兵の雰囲気は出ているのだが、トム・サイズモアには遠く及ばず。まぁ、個人的なイメージでしかないんですが、この役者を見ると何故か常に“教師”っぽく見えてしまう。
その他、『ロード・オブ・ウォー』のブリジット・モイナハンや『ザ・シューター/極大射程』のマイケル・ペーニャ、『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』のルーカス・ティルなども出演しているが、やっぱり見所は『マチェーテ』のミシェル・ロドリゲス。予告編を観た時は、「遠路遥々ミシェル姐さんの逆鱗に触れにやって来るなんて、もの好きな宇宙人だなぁ」と思ったものですが、本作のミシェル姐さん、案外活躍しない。贅沢というか、なんとももったいない使い方。まぁ、バランスの問題とか色々あるんでしょうけど、そこを気にするならミシェル姐さんを使うなよと。
それにしても本作の宇宙人。侵略しに遠路やってきた割には、計画も作戦も非常に雑。基本、歩兵戦。ちょいと具合が悪くなると、後出しジャンケン的に強力な武器を順次出してくる。戦略に計画性がどうにも見えないんですよねぇ。まぁ、水が大嫌いなくせに水だらけの惑星に来ちゃう、『サイン』のお茶目な宇宙人よりは幾分マシですけど。もしかしたら、コイツら侵略しに来たってよりは、通りすがりに資源を見つけたから強奪に来た、山賊とか海賊とかの類なんじゃないのかと。司令塔が壊されたぐらいでワラワラ逃げ出しますし。「きっとそうだね!」ってことで、無理やり納得。

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今回は手加減したってことで

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タグ:★★ SF
posted by たお at 13:27 | Comment(7) | TrackBack(40) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月21日

孫文の義士団 (十月圍城)

監督 テディ・チャン 主演 ドニー・イェン
2009年 中国/香港映画 139分 アクション 採点★★

冷戦の緊張の高まりと宇宙開発競争の激化が、人々の恐怖の対象を“空から来る何か”に向けさせ、それが50年代の宇宙人侵略映画大流行の背景にある事を例に挙げるまでもなく、映画が大衆娯楽であるだけに、その時々・地域の世論を敏感に反映させてるもんなんですよねぇ。そうすると、最近中国/香港で多く作られてる“辛亥革命映画”って、どんなニーズで作られてるんでしょうねぇ

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【ストーリー】
清朝末期の香港。王朝打倒に向けた武装蜂起への気運が高まる中、日本へ逃れていた孫文が香港へとやってくる。孫文を亡き者にしたい西太后が送り込んだ500人もの暗殺者から彼を守るため義士団が結成されるのだが…。

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辛亥革命を間近に控えた香港を舞台に、革命運動に身を投じる者と周囲の者たちの姿を描いたアクション・ドラマ。監督は『アクシデンタル・スパイ』のテディ・チャン。
革命運動から息子を遠ざけたい父親と、その想いとは裏腹に革命運動に身を投じていく息子という親子の姿を中心に、己の理念や大切な人々の為に命を落としていく者たちの姿をエモーショナルに描いた本作。終盤に詰め込まれたアクションもかなりの迫力。ただまぁ、どうにもエモーショナル過ぎ。それぞれのキャラクターを描くドラマもアクションも、全てその人物の死をより一層悲しくするための前フリでしかなく、“結婚を間近に控えた若者”“禁じられた愛によって全てを失った男”“生き別れ娘に尊敬されたい父親”など、死んだら悲しい設定を施されたキャラが死んでいく様に盛り上げを頼り切ってしまっているこの手法は、やっぱり好みではない。「命を落としてでも!」という理念の力強さがもっと描かれてれば印象も変わったんでしょうが。
トップにキャスティングされながらも、扱いはスペシャルゲスト的だった『イップ・マン 葉問』のドニー・イェン。出番の少なさとあられもない最期が、なんとも残念。まぁ、レオン・ライや『インビジブル・ターゲット』のニコラス・ツェー、『エレクション』のレオン・カーフェイにエリック・ツァン、『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』のサイモン・ヤムなど、大作らしい顔ぶれは豪華でしたが。「あんなのが新しい母親でやって来たら革命運動どころじゃないでしょうに」と思っちゃった、『導火線 FLASH POINT』のファン・ビンビンも出てましたし。

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こっから先はほとんど映画の内容と関係ないんですが、なんで今“辛亥革命”なのかがちょっと分からない。本作はもとより、『新少林寺/SHAOLIN』も『1911』も結構な大作ですし。
“過去の偉業によって今がある”的作品と考えてみると、君主制打倒から現在が線に繋がってるようには思えず。『イップ・マン 序章』もそうだったんですが、中華民国の樹立と崩壊、中華人民共和国に、本作の中心人物層である医師や知識人らが粛清の名の下大虐殺された文化大革命を経た、一党独裁の現在に至る“その後”が描かれないだけに、やっぱり線で繋がる感じがせず。
じゃぁ、“清王朝を中国共産党に見立てた大衆のガス抜き映画”なのかと言えば、そもそもそんな映画を自由に作らせる国とは思えず。本作で描かれる清王朝も、やたら暗殺者を送り込んでくる困りものとしては描かれているが、打倒すべき悪玉としてまでは悪行が描き込まれておらず、また革命で命を落とす者たちの姿も、うがった観方をすれば“変な思想に染まった挙句に死んで、身内が悲しい思いをする”と見えてしまう事も。まぁ、これが何かしらの意図を持った印象操作なのか、演出としての不手際なのか、アレコレ妥協した結果なのかはちょいと分かりませんが。
如何せん現地の事にも歴史にも疎いので、ここで挙げた疑問は知ってる人にとっては既に答えの出ている常識なんでしょうけど、ちょっと分からなかったのでダラダラ書いてみましたよって次第で。

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死んだら悲しい

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posted by たお at 12:12 | Comment(2) | TrackBack(20) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月04日

SUPER 8/スーパーエイト (Super 8)

監督 J・J・エイブラムス 主演 ジョエル・コートニー
2011年 アメリカ映画 112分 SF 採点★★★

“スピルバーグらしさ”ってのを感じるポイントって、観る人の世代や好みなんかで大きく変わるんでしょうねぇ。残酷な暴力の合間に挟まれるどす黒いユーモアにそれを感じる人もいれば、大人になることを拒んだ男の姿や、父親不在の環境にそれを感じる人もいるでしょうし。私なんかはそんな作家性云々以前に、水槽に張った水に絵の具を落として、それがブワブワーっと変化していく様を雲に見立てたSFXを見ると、「うわぁ!スピルバーグだ!」って感じちゃうんですよねぇ。もう、“雲ブワブワー=面白い映画”と刷り込まれております。

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【ストーリー】
母親を事故で亡くし父親と二人暮らしの少年ジョーは、友人らと自主製作映画の撮影中に列車事故に遭遇する。ほどなく軍が駆け付け、“なにか”を捜索する大規模な作戦を展開する。そんな中、小さな町では奇怪な事件が続発。その原因が列車に積まれていた“なにか”であることが判明し…。

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スティーヴン・スピルバーグ製作の下、『スター・トレック』『M:i:III』のJ・J・エイブラムスが80年代のスピルバーグ作品にオマージュを捧げる形で作り上げたという、SFちびっこアドベンチャー。
初めて予告編を観た時は、“タンクローリーに追っかけられた主人公が海に辿り着いたら、でっかい鮫と三船敏郎の乗った潜水艦に襲われて、ほうほうの体でデヴィルズタワーまで逃げると空からシャンデリアみたいな巨大マザーシップが現れて、中から指先の光る宇宙人が出てきて自転車が飛ぶみたいな映画なのか?”と冗談半分で思ったものだが、蓋を開けてみたらあながち間違ってなかった本作。もちろん合ってもしませんが、雰囲気的にはまぁ。じゃぁ、80年代にスピルバーグ映画を堪能した身として「懐かしー!楽しー!」ってなる作品かと言えば、残念ながらそんなことはなく
『E.T.』と『未知との遭遇』と『グーニーズ』をざっくりと和えて、脇にちょいと『クローバーフィールド/HAKAISHA』を添えてみたような本作。ただ、少年たちを主人公にしながらも、無闇やたらと人が死に、無闇やたらと破壊が繰り広げられ、大人視点での物語がそこかしこに混在する、別に少年が主人公じゃなくてもいいストーリーってのはちょっと。“淡い初恋”“友情の再構築”“父子の繋がり”“軍の極秘計画”など、題材を盛り沢山詰め込んだはいいが、一つ一つをご丁寧にそれぞれの当事者に解決させるので、詰め込み過ぎ感もハンパなし。詰め込み過ぎた結果、どれかのキャラに自己投影する時間的余裕もなし。

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被害者として描かれていた異生物との交流を描くのかと思いきや、目の前でソイツがバリバリ人を食い始めたりするので、ビックリこそするが何を描きたいのかサッパリ分からなかった本作。じゃぁ、その辺の恐怖を掘り下げるのかと思えば、急に『未知との遭遇』みたいなエンディングを迎えるので、やっぱり何を描きたいのか分からず。もしかすると、J・Jにとってのスピルバーグって、『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』なのかもとすら思えてくる。そもそも、70〜80年代スピルバーグの何に対してのオマージュなのか?“新技術に対する飽くなき探求心”なのか、“父親(片親)のいない自身の幼年期の思い出”や“成長を止めた男の物語”、はたまた“自身のスピルバーグ作品の思い出”なのかが分からない。受けた印象は“ざっくりとしたアンブリンのイメージ”及び、80年代に乱造されたエピゴーネン。『E.T.』に対する『マック』的なアレ。
まぁ、スピルバーグ作品へのオマージュと考えると随分とアレだが、ハッタリと焦らしが主戦法のJ・J映画として観れば、それなりに楽しめる本作。なにしろ、予告編のハッタリに騙されて手に取ってしまった時点でJ・Jの勝ちですし。派手な破壊とそこはかとなくは漂うノスタルジックな雰囲気、“ゾンビといえばロメロ”という子供らしい素直な発想など、楽しめるポイントも少なくはない。
本作がデビューとなるジョエル・コートニーのモシャクシャっとした感じも作品にマッチしているし、ダコタ・ファニングの妹エル・ファニングも、一時のミーナ・スヴァーリっぽい可愛らしさも印象的。大人勢も『地球が静止する日』のカイル・チャンドラーや、『フリーダムランド』のロン・エルダード、『コップランド』のノア・エメリッヒなど、ちょいとレトロな顔立ちを活かしたキャスティング。
その他ダコタ・ファニングがこっそり顔を出していたり、『奇人たちの晩餐会 USA』のブルース・グリーンウッドがハンサム顔を封印してアンディ・サーキスみたいな仕事をしていたりと、ちょっとした遊び心的なものも垣間見える本作なんでが、どうせならせっかく電力会社の車を出してるんだから、無線の相手の声をリチャード・ドレイファスにさせるくらいの気の効き具合を見せて欲しかったもので。

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メイキングが本編

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posted by たお at 09:27 | Comment(20) | TrackBack(82) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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