2011年 アメリカ映画 106分 SF 採点★★★
相変わらず次々と作られておりますねぇ、“ビギニング”物。確かに物の始まりってのを考えるのは楽しいもんで、私もボーっと鉛筆眺めながら「コレ、木だったんだよなぁ…」と当たり前&どうでもいい事を考えながら暇をつぶしてたりもしますし。ただ、不思議と映画の前日譚ものには然程興味が湧かないんですよねぇ。決まったゴールに向かって辻褄を合せることに終始してたりする作りもそうなんですが、やっぱり「良くは出来てるけど、別にこれが本当の始まりではないんだよなぁ」って思ってしまうのが要因なのかもと。
【ストーリー】
アルツハイマー治療のカギを握る新薬を投与されたチンパンジーが、驚異的な知能レベルの向上を見せるのだが、突如暴れ始めたため已む無く警備員により射殺されてしまう。しかし、そのチンパンジーが身籠っていた事を知った科学者のウィルはその赤ん坊を引き取り、シーザーと名付け秘かに自宅で飼育することに。新薬の影響を母体から受けていたシーザーもまた驚異的な知能レベルを見せるのだが、ある日隣人トラブルが原因でウィルと引き離されることになり…。
言わずと知れた『猿の惑星』の前日譚を、新鋭ルパート・ワイアットにメガホンを任せ描いたSFパニック。唯一の人間役だったマーク・ウォールバーグ自体が猿顔だったんで、画面中猿しか出ていない印象もあった『PLANET OF THE APES 猿の惑星』がまぁアレだったんで、とりあえずなかったことにしての仕切り直しってとこでしょうか?
高度な知能を得た一匹のチンパンジーが自我に目覚め、不当な扱いを強いられていた猿界のリーダーとして人間に反旗を翻すまでを描いた本作。管理されているはずの猿がいつの間にか身籠ってたり、在庫管理や出入り検査が杜撰過ぎて最重要であるはずの新薬サンプルが自由に持ち出されている粗も気になる所ではあるが、宇宙船の遭難やキャラの名前もじり、名セリフの再現などオリジナルに対する目配せも細かく、猿の台頭と共にウィルスによって人類が減っていくって設定も前日譚として説得力もあるので良作の部類かと。また、当時のブラックパワーの台頭とリンクされた“マイノリティの反乱”ってテーマも、リベラルの牙城サンフランシスコを舞台に今日的かどうかはさて置きしっかりと活かされており、“森の賢人オランウータン”やリーダーの為に身体を張るゴリラなど、分かり易く描き分けされた猿軍団の描写も展開に安定感を与える良いまとまり具合。
ただ、結果は別にして直接的には猿が人間を殺さないってのは、逆転と反乱を描くにはインパクトが弱い気もするし、動物実験など人間が動物に対して行う愚行がこれでもかってほどに描かれてるわけじゃないので、賢くなった猿が原因そっちのけで捨てられた腹いせに反旗を翻してる程度にしか見えない動機の弱さも。猿目線で進む物語とは言え、対峙する人間に“負けるわけがない”(猿からすれば“勝てそうにない”)ってだけの安心感がないってのもちょっと。また、辻褄も合い綺麗にまとまってる反面、第一作目としての輝きには乏しい印象も個人的に。なんと言うか、よく出来たスピンオフって感じ。それにしても、一番知りたかった数の逆転と人間の退化ってとこなんですが、その辺は「シリーズ化されたら教えるよん♪」ってことなんですかねぇ。どうせなら、極度に進歩した猿の惑星からマッドサイエンティストのオランウータンと、ちょいと足りないゴリラが追放されるまでの話になれば面白いなぁと。母星が“惑星E”とか呼ばれんの。
チャールトン・ヘストンが散々な目に遭う原因を作った科学者役には、『デート&ナイト』のジェームズ・フランコが。研究の動機が動機なだけに、相手を失望させることにもなる“優しさ”ってのが前に出た役柄を好演。それにしても、このシリーズの主役は“猿顔”ってのが大前提なんでしょうかねぇ。
また、『スラムドッグ$ミリオネア』のフリーダ・ピントや、自らを蝕む病に困惑し混乱する様を見事に演じた『ハリーとヘンダスン一家』のジョン・リスゴー、『RED/レッド』のブライアン・コックスに、如何せんメガネの魔法使いのやつは一本も観てないのでそれほど驚きもなかったトム・フェルトンなども出演。
人間勢になかなか強い顔立ちの役者が揃っていた本作ではありますが、やはり本作の主人公は猿。そのリーダーであるシーザーに扮したのが、『アレックス・ライダー』のアンディ・サーキス。いささか人間よりの顔立ちとその毛並みが好みから外れてはいたんですが、さすがモーションキャプチャー芸人サーキス。知能の高さが姿勢に反映されたシーザーを、猿7:人3くらいのバランスで好演。ただまぁ、アンディ・サーキスの見事な仕事振りに驚く一方で、本作の製作がアナウンスされた時点でアップを始めてたであろう、ハリウッド随一のゴリラ芸人リック・ベイカー師匠の名前が見当たらなかったのは、やっぱりちょいと寂しかったですねぇ。
次回はコーネリアスとジーラをこの御二方に
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