2012年07月22日

ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク (The Lost World: Jurassic Park)

監督 スティーヴン・スピルバーグ 主演 ジェフ・ゴールドブラム
1997年 アメリカ映画 129分 アドベンチャー 採点★★

怪獣好きをこじらせて恐竜好きになる男子って少なくないですよねぇ。怪獣のひな型的な意味で恐竜が好き。なんと言うか、ローリング・ストーンズ好きが高じてマディ・ウォーターズにハマるみたいな。ただまぁ、怪獣のように街で恐竜が暴れてる姿を見ても、怪獣のそれに感じる興奮ってのは覚えないんですよねぇ。やっぱりアレですかね?でかい野生動物が暴れてるようなもんだからですかね?

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【ストーリー】
前回の一件で会社の代表を退いたハモンドの依頼で、コスタリカの沖合の島で自然繁殖し野生化した恐竜の調査を依頼された、数学者のマルコム。一度は断るも、恋人の恐竜学者サラが既に島へ向かっている事を知った彼は、已む無く調査に向かうことに。希少種として恐竜を保護したいハモンドらの意向とは裏腹に、会社側はアメリカ本土に恐竜を持ちこんで見世物にしようと企んでおり…。

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世界的大ヒットを記録した『ジュラシック・パーク』のその後を描くSFアドベンチャー。マイケル・クライトンの原作を、前作同様スティーヴン・スピルバーグが映像化。
前作以上に薄い中身を、ティラノに踏まれた人が足の裏にひっついたままビッタンビッタンされたりと、見せ場のみで繋げたスピルバーグの羽目外し映画。一応“人間の都合で蹂躙される自然”的なお馴染のテーマが添えられているが、保護/捕獲側の両者とも自分勝手かつ浅はかなので観ていてイライラこそすれど、テーマはさっぱり浮き彫りにならず。そもそも本作の恐竜はクローン技術で生み出されたある意味量産品なんで、キングコングのような孤高の生物の尊さってのも然程感じない。まぁ、“恐竜がいっぱい出てきて暴れる様を楽しむ映画”ではあるので、それ以外の所をとやかく言うのも野暮なのだが、肝心の見せ場も羅列してるだけなので全体の印象も中身並に薄いってのが痛いかと。

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前作から引き続き登場する『ザ・フライ』のジェフ・ゴールドブラムや、「母性が強い!嗅覚が鋭い!」って力説してる割に、子ティラノの血が付いたベストをいつまでも着ている粗忽者な恐竜学者役に扮した『ラブ・アゲイン』のジュリアン・ムーア、そのジュリアン・ムーアとこっちの方が恋人に見えた『ウエディング・クラッシャーズ』のヴィンス・ヴォーン、『ザ・タウン』のピート・ポスルスウェイト、『ナチョ・リブレ 覆面の神様』のピーター・ストーメアに、子供の頃から眉が力強い『ストレンジャー・コール』のカミーラ・ベルと、今思えば非常に好みの顔ぶれが揃ってた本作。ただまぁ、今では大好きな女優の一人であるジュリアン・ムーアですが、本作を観た当時は「なんてイライラする女だ!」と心の嫌い箱にしまい込んだほど、皆が皆イライラする役柄ってのはアレなんですが。
何かと不満の多い本作でしたけど、ティラノサウルスは相変わらず見応え充分。その怖さはもちろんのこと、今回は「息子ー!息子ー!」あるいは「娘ー!娘ー!」と我が子を探しまわる、ある種の愛らしさも見せてくれるので満足。まぁ、閉じ込められた狭い船内で、どうやって船員を全滅させられたのかは依然謎のままなんですけど。

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『怪獣ゴルゴ』か『大巨獣ガッパ』をストレートにリメイクして欲しかった気が

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posted by たお at 09:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月18日

ジュラシック・パーク (Jurassic Park)

監督 スティーヴン・スピルバーグ 主演 サム・ニール
1993年 アメリカ映画 127分 アドベンチャー 採点★★★★

初めて観た時に受けた衝撃って、年月を経て何度か繰り返し観ているうちに否応がなしに薄れてしまいますよねぇ。カイザー・ソゼが誰なのか知ってるわけですし。もちろん別な面白さを発見できたりもするんですが、初見時のインパクトを超えるってのはなかなか。だって、最後に届けられる箱の中身は嫁の生首って知ってるわけですし。レビューを書く際に、その辺をどう調整するか悩むんですよねぇ。思い出話に終始するのもアレですし、変に斜に構えるのもなんですし。

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【ストーリー】
大富豪ジョン・ハモンドより、テーマパークとしてオープン予定のとある施設の査察を依頼された、古生物学者のグラントとサトラー。そこに数学者のマルコムも加わり、中南米コスタリカ沖合に浮かぶ島へと向かう。そこで彼らが目にしたのは、遺伝子工学によって現代に蘇った恐竜たちの姿であった。しかし、絶対的な安全を謳う施設を襲ったトラブルにより、恐竜たちが人間に牙を剥き始め…。

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現代に蘇った恐竜の姿を最新のSFXと圧倒的な音響効果で映し出し一大センセーションを巻き起こした、『宇宙戦争』のスティーヴン・スピルバーグによるSFアドベンチャー。
“テクノロジーの反乱”という非常にマイケル・クライトンらしい題材を、見せ場たっぷりに描き出した本作。と言うか、見せ場オンリー。導入部のもたつきや回収されない伏線に皆無のドラマ、“脱出した”と言うにはあまりに忽然と姿を消すその他大勢の方々に、ラスト突如忍び足になるティラノサウルスと、問題だらけの脚本を見せ場の連続で一気呵成に見せ切ったスピルバーグの勝利。脚本を見たスピが、「あぁ…、もうこれはジェットコースターにするしかねぇなぁ」とでも思っちゃったんでしょうかねぇ。
特に“Tレックス大暴れ”一連のシークエンスは圧巻。姿の見えない巨大なものが近づくサスペンスフルな導入部から、矢継ぎ早にピンチが全方位から襲ってくるメインまで息つく暇のない展開は見事の一言。一家で楽しむファミリーアドベンチャー映画の一種にも関わらず、その危機の容赦無さっぷりに「この子供、死んじゃうんじゃないのか?」と思ってしまうほど死の香りがプンプン漂ってるのも素晴らしい。
また、死と笑いを背中合わせにしたスピ流ギャグも光る本作。ティラノから逃げ出し公衆便所に隠れた弁護士。そこにティラノが急襲し、四方の壁が外側にバタンと。完全にスラップスティックの構図。ドリフの世界のよう。下着にも見える短パン姿がより一層笑いを生みだすのだが、その見た目の面白さに吹き出した瞬間に頭からバリバリと食われてしまい、笑いだした笑い声の処理に困る腹黒いスピギャグの真骨頂。このバツの悪さと救いのなさが、恐竜という生身では到底敵わない存在の怖さってのを強調したんでしょうねぇ。

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この騒動で父性に目覚めたグラントに扮する『デイブレイカー』『イベント・ホライゾン』のサム・ニールや、驚いた時に四角く開く口やベソ顔のクシャクシャっぷりが妙にそそられる『ミート・ザ・ペアレンツ3』『チェイシング/追跡』のローラ・ダーン、異彩を放つ以外は特に役目のなかった『ザ・フライ』のジェフ・ゴールドブラムに、財力を持ったピーター・パンみたいだったリチャード・アッテンボローと、錚々たる面子が中心に据えられた本作。
周囲を固める面々も、『4デイズ』のサミュエル・L・ジャクソンに『ソーシャル・ネットワーク』のジョセフ・マッゼロ、『ゲット・ショーティ』のマーティン・フェレロに『愛と死の間で』のウェイン・ナイトらと、個性的な顔ぶれが。
しかしながら、やはり本作で目を奪われるのは現代に蘇った恐竜たちでしょうねぇ。CG全任せではなくアニマトロニクスやモデルアニメーションなども駆使した、その場に何か重たい物体が実際に存在しているようなリアルさも圧巻だが、学説と最低限の接点を保たせながらもカートゥーンキャラクターのような性格分けををすることで、見た目以上の個性を持たせたことが主役としての存在感を発した要因なのかと。動物が自由にウロウロしてるってよりも、役者がキャラを演じてる感じと言うか。その恐竜に説得力を持たせると同時に、「もしかしたら近い内に実現するんじゃないのか?」と観客に思わせる遺伝子工学云々の下りの分かり易さも、本作の面白さを支えたもうひとつの要因。そして、“恐竜が現代に蘇る”ってロマンと、その恐竜を動物園で動物を見るかのように楽しめるエンタメ性が合体した、そんな子供の頃一度は思い描いた夢の世界が目前に広がる“ジュラシック・パーク”の存在こそが、本作の真の主役なのかと。

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巨大なホオジロザメも怖いが、ちっちゃくても狡賢いのが集団でいる方がもっと怖い

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posted by たお at 14:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月25日

ジャックとジル (Jack and Jill)

監督 デニス・デューガン 主演 アダム・サンドラー
2011年 アメリカ映画 91分 コメディ 採点★★★

上とは親子ほどに歳の離れた三兄弟の末っ子なもんで、身近に似た世代の家族がいるって環境が想像つかない私。家に居ても暇だから日長一日外で遊び呆ける風来坊みたいな子供だったのも、きっとそういう兄弟がいなかったからなんですかねぇ。うちの子供らがなんだかんだ一緒に遊んでいる姿を見ると「兄弟って良いもんだなぁ」と羨ましく思える反面、些細な事で大喧嘩になる様に「絶交したくても出来ない友達みたいなもんか?」と思ったりも。

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【ストーリー】
大手広告代理店に勤め成功を収めていたが、大スポンサーからアル・パチーノをCMに起用するよう迫られ困り果てていたジャック。そこへ感謝祭を一緒に過ごそうと、双子の妹ジルがやって来る。変わり者でトラブルメーカーのジルに翻弄されイライラを募らすジャックだったが、そんなジルにアル・パチーノが一目惚れ。なんとしてもアル・パチーノのご機嫌を取りたいジャックだったが…。

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素敵な人生の終り方』のアダム・サンドラーが一人二役を演じた以外は、概ねいつものアダム映画だったドタバタコメディ。監督は、もちろんいつものデニス・デューガン。
ラジー賞を総なめにしたことでも話題となった本作だが、当該の賞が所謂“駄作”に贈られるってのよりは、満載のツッコミ所を皆でつっついて楽しむ“鍋映画”に与えられる賞だと思ってるので、この受賞は妥当かなと。まぁ、あんまり美味しい鍋ではありませんでしたけど
“アダム・サンドラーの女装”って飛び道具に目を奪われがちだが、変わり者であっても大切な家族に変わりない家族愛の物語という定番のテーマに、“どんな人でも誰かに必要とされている”というアダム映画らしい前向きさたっぷりだった本作。地元に帰ったジルが、周囲にバカにされながら一人寂しく食事をするシークエンスからの流れは非常にアダムらしい優しさに溢れており、“アダム・サンドラーを観たい!”というこちらの希望をほぼ叶える作品に仕上がっている。
ただまぁ、その“アダム映画らしさ”ってのに自分から寄せに行ってる印象が多少感じられるってのは、ちょいと気になる所でも。

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“一人二役映画”っていうと、芸達者っぷりをアピールしたいジャン=クロード・ヴァン・ダムの演者のエゴばかり目に付く作品も少なくないんですが、本作のアダム・サンドラーからはそんなエゴは然程感じず。どちらかと言えば、キャラ芸人アダムとナチュラルキャラのアダム双方を一度に楽しめる、サービス精神の旺盛さの方が。まぁ、どっちか一方でも良かった気はしますけど
一方、本人役で登場する『ボーダー』のアル・パチーノ。“コメディ初出演”って謳い文句通り、確かにコメディ映画でアル・パチーノを観た記憶はほとんどないんですが、ノーメイクで『ディック・トレイシー』に出てるかのような緊張と笑いのギリギリにあるやり過ぎ演技が売りなだけに、違和感は全く無し。
その他、『アダルトボーイズ青春白書』のデヴィッド・スペードに『ポルノ☆スターへの道』のニック・スウォードソン、アレン・コヴァート&ピーター・ダンテ&ジョナサン・ローラン&ジョン・マッケンローらいつもの方々や、『ウェインズ・ワールド』のダナ・カーヴィ、ただ居ただけの印象もあった『バットマン ビギンズ』のケイティ・ホームズに、本人役でちょろりとジョニー・デップらも出演。考えてみたらサブタレ初のジョニー・デップ出演作レビューが本作ってのもアレな感じしますが、それはそれでサブタレらしいなぁと自分で思ったりも。
で、お楽しみのロブ・シュナイダーなんですが、セリフとして登場するものの姿は見当たらず。IMDBには役名も当てられてるんですが、こっちが気付かないほど埋もれてしまうような方とは到底思えないので、きっと出てないのではと。

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ジル役をロブにやらせてもよかったのかなぁと

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posted by たお at 13:07 | Comment(4) | TrackBack(17) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月14日

ゾンビ大陸 アフリカン (The Dead)

監督 ハワード・J・フォード/ジョン・フォード 主演 ロブ・フリーマン
2010年 イギリス映画 105分 ホラー 採点★★★

なんか当たり前のことですけど、ゾンビって“死体が動いてる”から怖いんですよねぇ。主流になったダッシュ系ゾンビも怖いんですが、あれの怖さってゾンビだからじゃなく、何かがダッシュで追っかけてくるから怖いんですよねぇ。あれだけの集団が猛ダッシュで追い掛けてくれば、生きてる人間でも怖いですし。“死体が動く”、そんな理屈の通じない薄気味悪さが重要。モラルとか常識とか、当たり前だと思ってたことが崩れ去っていく怖さってのが、やっぱりゾンビの怖さなのかなぁと。

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【ストーリー】
ゾンビの発生とその増殖によりパニックに陥るアフリカ。その地を脱出せんと飛び立った米軍機は墜落、エンジニアのマーフィー中尉のみが生き残る。彼は米軍基地を目指し移動を開始。程なく息子を探す地元の兵士デンベレと出会い行動を共にするのだが、どの地もゾンビで溢れかえっており…。

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“サバンナをゾンビがうろつく”って見た目は存分に変化球だが、内容はいたって真面目な本作。なんと言うか、けばい格好した真面目な子って感じ。ノロノロゾンビ特有の“死体が動いてます”感も上々で、やり過ごす気になればやり過ごせるが、そもそも死体がうろうろしている事自体が気味悪いって感じも非常に良く出てる。サバンナにゾンビが点在してる画は、絶望感とか哀しさとか世も末ってのを感じさせる強烈な印象を。気候柄かすかすに乾いたゾンビが出てきそうだが、程良く腐敗した傷跡も生々しい、これまた良く出来たゾンビメイク。どこか土着的な気味の悪さを持つ本作のゾンビは、象徴的な意味合いが強くドライなロメロ版ゾンビよりも、じっとりと湿ったフルチ版ゾンビに似た臭いが。
物語自体は二人の男がある場所を目指す一本調子のものなのだが、社会批判や寓話に走って下手に風呂敷を広げたりしないので、異常な状況下で生き延びようとする焦燥感やドン詰まりな心境が伝わり易い仕上がりに。燃料の少ないヘリに乗り込むような、絶望の中にほんの僅かな希望を匂わす締め括りも好み。変化球ゾンビ映画がいまだ多く作られてますけど、愛情持ってきちんと作ればオーソドックスゾンビにもまだまだ魅力とパワーがあるってのを証明してくれた、良いゾンビ映画でしたよ。

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人類の誕生も終焉も同じ場所から

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2012年06月10日

素敵な人生の終り方 (Funny People)

監督 ジャド・アパトー 主演 アダム・サンドラー
2009年 アメリカ映画 146分 コメディ 採点★★★

シュワルツェネッガーが普段からポルシェを素手で引っくり返してるわけじゃないのと同様に、コメディアンも別に普段から面白くて社交的なわけじゃないんですよねぇ。むしろ真逆の人の方が多いらしいですし。ただまぁ、ファンってのはスクリーンやテレビでの姿を四六時中期待してるので、ちょっとでもその期待から外れると「なんてお高くとまった嫌な奴なんだ!」と怒られたりも。勝手な話なんですけどねぇ。

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【ストーリー】
急性白血病を患い余命宣告を受けた人気コメディアンのジョージ。自らの原点であるスタンダップコメディアンとして余命を全うしようと決意したジョージは、若手コメディアンが集まるコメディクラブのステージに立ち、そこで売れない若手コメディアンのアイラと出会う。アイラの才能を認め助手として採用したジョージは、充実した余生を過ごす為に様々なことに挑戦、昔の恋人との再会も果たす。そんな中、思いがけない奇跡が彼の身に起こるのだが…。

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無ケーカクの命中男/ノックトアップ』のジャド・アパトーが、かつてのルームメイトであるアダム・サンドラーを主演に迎えて描くコメディドラマ。共演のセス・ローゲンも、製作総指揮に名前を連ねている。
死の宣告を受けたコメディアンが、充実した余生を過ごしつつ、かつての恋人とよりを戻そうとする様を描いた本作。2時間半近いという、アパトー映画らしいコメディ映画らしからぬランニングタイムだが、その大半を夢だけはパンパンに詰まった若手コメディアンがカウチでグダグダやってるシーンに費やされているので、別に苦にはならず。なんとも残念な作品が代表作となってしまった大物コメディアンや、売り出し中の若手の姿など、コメディアンの内幕劇として非常に興味深い内容に。
ただまぁ、前半部のコメディアン版ときわ荘の部分が面白かっただけに、本筋である昔の恋人との物語に一種の蛇足感も。というか、まるで別の映画をくっ付けたかのような印象。“余命宣告を受けた大物コメディアンが、若手と共に原点回帰をする”って物語も、“余命宣告を受けた大物コメディアンが、昔の恋人とよりを戻そうとする”って物語も面白いだけに、どっちかに絞った方がスッキリしたのかなぁと。ただでさえ重めの題材を、ヤヌス・カミンスキーのカメラが更に重くしたって印象もありましたし。

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主人公のジョージに扮したのは、『ウソツキは結婚のはじまり』のアダム・サンドラー。そこそこエゴイストでそこそこ嫌味な、いかにも“成功した人”って感じの役柄をナチュラルに好演。素のコメディアンって役柄なのでいつもの人柄を期待すると食い足りないが、どこかしら子供じみた言動に“ジョージ=アダム・サンドラー”って感じがハマってたなぁと。
一方のアイラに扮したのは、『グリーン・ホーネット』のセス・ローゲン。素直でお人好しな可愛げを持つ反面、女性関係に関しては中学男子並みの痛々しさを発する、まぁいつものセス・ローゲンなので非常に安心。その他、今回は比較的美人モードで撮られていた『フィリップ、きみを愛してる!』の嫁アパトー、レスリー・マンや、少なめの出番ながらもセスらと息の合った妙演を見せる『マネーボール』のジョナ・ヒル、本作では音楽も担当している『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』のジェイソン・シュワルツマンに、『ハンナ』のエリック・バナなど錚々たる顔ぶれが集結。もちろんアパトーさん家の娘さんらも、両親に囲まれリラックスしきった素の演技を披露。
また、業界内幕物ってこともあってか、ジェームズ・テイラーやエミネム、『エターナル・サンシャイン』のサントラでも知られるジョン・ブリオンらミュージシャン勢に、『ビバリーヒルズ・コップ』のポール・ライザーや『スペル』のジャスティン・ロング、サタデーナイト・ライブ組のノーム・マクドナルドなど、名前を挙げるだけでいつもの記事の長さになりそうなほどのゲストが出てるのも魅力かと。

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普通の人じゃないから人を楽しませられる

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posted by たお at 23:59 | Comment(6) | TrackBack(7) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月01日

地獄のヒーロー (Missing in Action)

監督 ジョセフ・ジトー 主演 チャック・ノリス
1984年 アメリカ映画 101分 アクション 採点★★

10月に公開が迫った『エクスペンダブルズ2』。スタローン、ジェイソン・ステイサム、ジェット・リーらが再び顔を合わせるってだけでも嬉しいのに、今度はチャック・ノリスにジャン=クロード・ヴァン・ダム、ドルフ・ラングレンと空手バカ一代が3人も揃う“空手三ばか大将”状態になってるってのも非常に嬉しい限りで。ってなわけで、公開を前にとりあえずチャック・ノリスあたりから予習を始めておこうかと。一時期劇場でまとめて観て以来、ずーっとご無沙汰でしたし。

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【ストーリー】
ベトナム戦争中に捕虜となり、辛くも脱出に成功したブラドック大佐。10年後、米兵捕虜の存在を認めないベトナム側との交渉に向かった上院議員と共に現地に赴いたブラドックは、アレコレあって捕虜の存在を確信。帰国のフリしてベトナムへ舞い戻り、捕虜を助け出しドヤ顔をキメる。

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ランボー/怒りの脱出』のパクリと誤解されがちだが、製作されたのはこっちが先だったりするベトナム戦争捕虜奪還アクション。メガホンを握ったのは、シリーズ屈指の傑作である『13日の金曜日・完結編』や、気の効いたゴア描写満載だった『ローズマリー』のジョセフ・ジトー。まぁ、あの二本が面白かったのは、監督の手腕ってよりは特殊メイクのトム・サヴィーニが凄過ぎたからなんですけど。
地獄の7人』からドラマを差っ引いてひたすらアクションに注力した、“洗練”という言葉から最も遠い位置に居るキャノン・グループらしい仕上がりの本作。最近では味わう事の出来ないこの泥臭さが、なんとも心地良い。回想ばっかりの序盤に、最大の敵があっさり倒される中盤、ドタバタしたアクションの末に奪還した捕虜を前に主人公がドヤ顔して唐突に終わる終盤と、ペース配分が幾分個性的なのが特徴。「なんとかする」か「なんとかなる」だけで局面を乗り越え続ける主人公や、車で追って来る追手を船で振り切ったはずなのに、次のシーンではその追手が素知らぬ顔して船に乗船してたりする、登場人物も幾分個性的なのも特徴かと。

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主人公のブラドックに扮したのは、『最後のブルース・リー/ドラゴンへの道』でブルース・リーと戦ったと言う輝かしい勲章を持つチャック・ノリス。“元世界空手ミドル級チャンピオン”という肩書の割にそれっぽい見せ場が乏しかった本作ではありましたが、牧羊犬のような面持にこれまた牧羊犬のような胸毛と、ぱっと見害のなさそうな風貌でいてやってる事は傍若無人というギャップが魅力。このブラドック役が“オレの中での当たり役”となり、ちょくちょくベトナムにちょっかいを出すシリーズ作となることに。
その他に、『ブレードランナー』のM・エメット・ウォルシュや、『ゴースト・ハンターズ』のジェームズ・ホン、『スターシップ・トゥルーパーズ』のレノア・カスドーフらがキャスティングされているが、やっぱり注目はドライバー役とスタントマンとして参加している『ユニバーサル・ソルジャー』のジャン=クロード・ヴァン・ダムかと。まぁ、どこに出てたのかサッパリ分かりませんでしたけど。もしかしたら港でのカーアクションシーンで、チャック・ノリスが運転するトラックに飛び乗って来るチンピラが彼なのかもと憶測。

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ジャングル+ヘリ+M16で大体ベトナムに

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2012年05月16日

ゾンゲリア (Dead & Buried)

監督 ゲイリー・A・シャーマン 主演 ジェームズ・ファレンティノ
1981年 アメリカ映画 94分 ホラー 採点★★★★

名作だけではなく忘れかけられていた過去の逸品がソフト化されるってのは、やっぱり映画ファンとしては嬉しい限りですよねぇ。ただまぁ、「出したからいいでしょ!」って残念な仕様の物が多いのも事実。わざわざ旧作を大枚叩いて買う人ってのは、その作品をより深く楽しみたい/知りたいって心理があるっていうのに、そこを全く無視する姿勢ってのはホントどうかしてるなぁと。

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【ストーリー】
小さな港町、ポッターズ・ブラフ。その静かな町でよそ者ばかり殺される連続殺人事件が発生。保安官のダンが捜査を開始するが手掛かりは一向に掴めず、事件は混迷を極めるばかり。しかし、この事件の背後に善良な町民たちに隠されたある秘密があり…。

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スペースバンパイア』のダン・オバノンも脚本に参加した、『WANTED/ウォンテッド』のゲイリー・A・シャーマンによるホラー・ミステリー。主演に『ファイナル・カウントダウン』のジェームズ・ファレンティノ、共演は『フラッシュ・ゴードン』のメロディ・アンダーソンに『ポセイドン・アドベンチャー』のジャック・アルバートソン。その他、『パラダイム』のリサ・ブロントや『2001人の狂宴』のロバート・イングランドの顔も。
様々なタイプのホラー映画が花開いた80年代においても、その捻りの効いた物語と、『プレデター』のスタン・ウィンストンによるパンチの効き過ぎた特殊メイクによって埋もれることなく異彩を放ち続けていた本作。ムード重視の若干まったりとした展開の合間合間に、“人間丸焼き!”“長い注射針を眼球にブスリ!”“鼻から濃硫酸を流し込まれて溶ける顔面!”といった強烈なゴア描写を挟みこんでメリハリを付けるバランス感覚も見事。
“ゾン”と来て“ゲリラ”で締めるインパクト重視の邦題もあってか、よくあるゾンビ映画の一本と思われがちな本作。確かにゾンビ映画ではあるのだが、生ける屍が生者をムシャムシャ食べるロメロ系のゾンビと言うよりは、ヴードゥーベースの古典ゾンビ風味が強い一本。その古典的な題材が、霧が立ち込め霧笛と鐘の音が鳴り響く港町を舞台に、死者の蘇りに取り憑かれた男が暗躍するラヴクラフト的なモチーフにマッチし、独特の雰囲気と物悲しさに包まれた一本に。何度観ても唸らされるラストの捻りもさることながら、犯人を早々に明かしておきながらも持続するミステリーの面白さも上手いなぁと。

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で、本作。近々日本でもブルーレイが発売されるってんで小躍りして喜んだんですけど、仕様を見てみるととても喜べる代物ではないようで。アメリカでは2009年にブルーレイが発売されてるようなんですが、そちらがdts-HDの7.1chサラウンドに3種の副音声、スタン・ウィンストンやロバート・イングランド、ダン・オバノンらによる特典映像にスチルギャラリーと非常に豪勢な仕様であるのに対し、今度出る日本版の音声はドルビーデジタルステレオ、特典もおそらくなしというブルーレイとは思えぬガッカリ仕様。表記ミスだとは思うんですけど、ランニングタイムが90分と短くなってるのも気になるところ。こんな仕様で作品のファンがわざわざDVDからブルーレイに買い替えると思ってる神経が信じられない。
そもそもこの作品、DVDの時の仕様格差も酷い。私が今持ってる2009年にビクターから再販された代物は、ステレオ音声に特典なしのガッカリ仕様の物。一方、アメリカで2003年に発売された2枚組の限定版は、ブルーレイ版同様の特典にdts-ESの6.1chの音声という豪華仕様。値段も20ドルを切る思いやり価格。なに、この格差?
「豪華特典にすると値が張るしー、そーすると売れないしー」って言い訳もあるのかも知れないんですけど、最初にも書いたようにこの手の作品を買いたい人って、「話題作だからとりあえず買おー」ってのよりもコレクター気質が強い人だと思うんですよねぇ。そういう買い手の心理を全く理解しないで商売しようって姿勢がまず違うんじゃないのかいと。“良い物”は売れるんだから、まずは良い物を出そうよと。そんな事を言っちゃうと、ロード・オブ・ザ・リングの時みたいに常識外れの価格設定をされちゃいそうなんで、“物に合った値段で”と付け加えておきますが。

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地元では普通のことでも、よそ者にとっては異常なこと

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2012年04月12日

酔拳 レジェンド・オブ・カンフー (蘇乞兒)

監督 ユエン・ウーピン 主演 チウ・マンチェク
2010年 中国映画 115分 アクション 採点★★

どんな人にだって、思う存分尾ひれを付ければ映画の一本や二本作れるくらいのドラマが過去にあるもんですよねぇ。私もそんな与太話を披露し、無駄に孫らを驚かせる老後を過ごしてみたいもので。まぁ欲を言えば、「年寄りを見たら生き残りと思え!」と言い切れる人生を過ごしたいものですが。

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【ストーリー】
清朝時代。高名な戦士スー・サンも今では戦地から離れ、愛する妻と息子と静かに暮しながら武術を追及する生活を送っていた。そこへ義兄ユアンが現れスーの父親を殺害し息子を連れ去ってしまう。戦いに敗れ重傷を負ったスーは通り掛かった医師ユによって一命を取り留めたが、武術家としての自信を失い酒に溺れてしまう…。

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『ドランク・モンキー/酔拳』の赤鼻のお師匠でも知られる武術家スー・サンの若き日を描いた、ユエン・ウーピンによるカンフー・アクション。
通常のワイヤーアクションから武侠ファンタジー風アクションなど、これまで手掛けてきたカンフー映画の歴史を駆け足で巡るかのようなバラエティ豊かなアクションスタイルを演出するユエン・ウーピンと、そのいずれのスタイルに置いても本物ならではの凄味を見せるチウ・マンチェクの高い技術が堪能できる本作。「そんな所でやるの?」と素直に驚く、技術力の高さは流石。
ただまぁ、なんとも絵面が地味。とんでもないことを目の前でやっているのだが、それに画がついて行ってない感が。あんまりにも残念なCGもあってか、映画ってよりはTVシリーズの1シーズンを再編集したダイジェスト版って様相も。展開もバラエティ豊かと言えば聞こえは良いが要はぶっきら棒で、こっちが「アレ?酔拳はどうした?」と思い出す終盤に、ばたばたと雑に酔拳が放り込まれるドタバタ感も残念。『イップ・マン 序章』や『SPIRIT スピリット』など、最近の中国映画で顕著な“列強に蹂躙される中国”が強引にねじ込まれている様は、「こういうの入れないと映画ってもう作れなくなってるのかなぁ?」と邪推してしまうほど展開上不自然極まりなし
まぁ、画の華の無さを補うかのように『ポリス・ストーリー3』のミシェル・ヨー姐さんやデヴィッド・キャラダイン、リュー・チャーフィらが顔を出してるのは非常に嬉しかったんですが、ホント「ヤァ!」って顔を出しただけって扱いに失望感冷めやらぬ一本に。

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拘束日数2日くらい?

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2012年03月22日

シャッター ラビリンス (Hierro)

監督 ガベ・イバニェス 主演 エレナ・アナヤ
2009年 スペイン映画 94分 サスペンス 採点★★

集団行動から瞬く間にはぐれてしまう私の迷子遺伝子を受け継いでる割には、うちの子供らは迷子になったことがないんですよねぇ。ちょっとばかしはぐれても、大体想定内の場所にいるんですぐに見つかる。「変な所が似なくて良かった良かった」と思ってたんですが、先日子供らとスーパーに行ったら、2歳の末っ子がアンパンマンの遊具目指して「マンマンマーン!」と暴走。でも、5メートルも行かない内に親がそばに居ないことに気付いたのか、泣きながら戻って来る。どうやら迷子遺伝子よりも、私の“案外小心者”遺伝子の方が強く受け継がれてしまったようで。

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【ストーリー】
休暇を島で過ごす為、幼い息子と共にフェリーに乗ったシングルマザーのマリア。しかし、ほんの少し目を離した隙に、息子は忽然と姿を消してしまう。半年後、島の警察から子供の死体が発見されたと連絡を受けたマリアは再び島を訪れるが、その死体は息子のものではなかった。「息子はまだ生きている」、そう確信したマリアは島中を捜索。やがて、マリア同様に事故現場から子供が姿を消してしまった母親と出会い…。

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長編初監督となるガベ・イバニェスによる、ミステリアスな雰囲気だけは充分なサスペンススリラー。主人公のマリアに扮したのは、普段は小動物的な可愛らしさに溢れているが、油断をするとヒラリー・スワンクになってしまうこの愛のために撃て』のエレナ・アナヤ。
鏡やガラスに映る人物の動きがそれぞれ微妙に異なっていたり、子供の目が一瞬死体のような目になってたりと、憔悴しきった母親の心理状態を表すかのような夢か現実か定かじゃない幻想的で不穏な雰囲気に包まれた本作。“母親が何かをしてしまったのか?”“島の神秘的な力のせいか?”“やっぱ宇宙人?”と、様々な憶測が膨らむ空気が流れてるのだが、結局それらが空気だけでしかない肩透かし感ったら。オープニングからエンディングまで変わる事のない、ノッペリとした演出が生む強烈なまでの催眠効果も辛い。息子を失った母親の悲痛な物語という良いネタを真っ直ぐに描けず、ひたすら目くらましだけを施して一種特別な作品にしようとした安易さが目に余ったなぁと。

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要は“子供から目を離しちゃダメよ”って話

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posted by たお at 10:35 | Comment(0) | TrackBack(5) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月14日

スリーデイズ (The Next Three Days)

監督 ポール・ハギス 主演 ラッセル・クロウ
2010年 アメリカ/フランス映画 133分 サスペンス 採点★★★

リメイク物ってのを一本の作品として客観的に評価するのって、なかなかに難しいもんですよねぇ。オリジナルを知らないってならまだしも、なまじ好きな作品のリメイクとなれば尚更に。これでリメイクまでの間が10年位空いてれば程良く元ネタを忘れているのでいいんですが、最近はオリジナルとリメイクの間が然程空いてなかったりするんで、余計難しくなってる気も。

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【ストーリー】
最愛の妻子と共に幸せの日々を送っていた、大学教授のジョン・ブレナン。しかしある朝、妻が殺人容疑で逮捕されてしまう。妻の無実を信じ奔走するジョンであったが、妻の有罪が確定、心身ともに憔悴しきった妻は自殺未遂を図る。妻の身を案じ、再び幸せの日々を取り戻す為に、ジョンは妻の脱獄を計画するのだが…。

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フレッド・カヴァイエによる傑作サスペンス『ラスト3デイズ 〜すべて彼女のために〜』を、『クラッシュ』のポール・ハギスが自ら脚色を手掛けてリメイクしたサスペンス。
オリジナルの存在を一旦頭から外し単体の作品として観れば、無実の妻のために全てを捨て奔走する男の物語として、なかなか見応えのある一本に仕上がっているのでは。幸せだった日々を壊され緻密な脱獄計画を練るまでの“静”の部分と、これでもかってほどピンチが訪れるクライマックスの“動”の部分とのコントラストも効いており、その構成が散々苦しみながらも目的を達するラッセル・クロウのイメージと上手く合致して、良く出来た“ラッセル・クロウ映画”として楽しむことが出来る。ただ、筋書きが同じなだけのラッセル・クロウ映画としては良いが、リメイクとして観ればまた話は別。
大胆に説明を省くことによって逆に登場人物の心情描写に深みを持たせていたオリジナルに、30分以上のシーンを書き加えられた本作。しかしながら、その加えられたシーンが、なんとも余計。妻の無実を物的に証明してしまう為に、夫の愛から“盲目的”ってのが消え去り、逆に夫が殺人者になってしまうチグハグさが浮き彫りになるのだが、別にそこは掘り下げないバランスの悪さが気になるところ。また、最も胸を締めつけられた老父と孫の別れのシーンはさらりと流され、派手な逃走劇がボリュームアップされてしまったので、“どれだけ盲目的に人を愛せるのか?”ってテーマがないがしろになった感も。ある意味、書き込み過ぎる傾向にあるポール・ハギスらしさが如実に出た作品と言えるのだが、ここまで説明してやらなければキャラクターの心情が分からないほど観客は愚かじゃないと思うんですけどねぇ。まぁ、サスペンスアクションとしては上出来の部類であるし、ラストの“幸せ”って部分にしっかり“?”も付けてあるので好みの違いってことで済ませる事も出来ますが。ただ、この手の題材を描いた作品の映像特典としてNG集が収められてるのは、ちょいとどうかとは思いましたけど。最後に笑いを取ってどうすると。

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ジョン・ブレナンに扮したのは、『ロビン・フッド』『チェイシング/追跡』のラッセル・クロウ。“平凡な男”って役柄の為か随分と肉付きの良い胴周りであったが、印象は良い意味でも悪い意味でもいつものラッセル・クロウ。銃を構える姿が決まり過ぎる様にしろ、散々な目に遭いながらも最終的には何とかしてくれそうな安心感にしろ、“平凡な男を演じる英雄”って感じ。
一方の妻ララに扮したのが、『ぼくたちの奉仕活動』『恋するポルノ・グラフィティ』のエリザベス・バンクス。「ゲハァ」と笑いだしそうな屈託の無さと裏表の無さが魅力の女優なので、殺人の容疑を掛けられるって感じが全くしないのが難点でも。まぁ、本作は“妻の無実を信じる男の物語”ではなく、“無実の妻を助け出そうとする男の物語”なのでこのキャスティングで問題はないんでしょうが、前もどっかで書いたと思うんですけど、せっかくこの題材なら「最後に何かしでかしそう…」って安心感皆無のショーン・ビーンと、裏で悪いことやってそうなマリア・ベロの組合せの方がシックリくると思うんですけどねぇ。
その他、隠居した元警官のような凄味を感じさせた『ランボー』『ボーダー』のブライアン・デネヒーや、『必殺処刑人』のレニー・ジェームズ、もうちょいガツガツいって欲しかった『トロン:レガシー』のオリヴィア・ワイルドに、『レポゼッション・メン』のRZAらもキャスティング。
そんな中で印象を残したのは、「パパがちゃんと髪を切ってくれないのー」って感じの髪型で息子役を好演した『インシディアス』のタイ・シンプキンスと、僅かな出演時間ながらもお得意の“マスター役”で存在感を示した『アンノウン』のリーアム・ニーソンかと。それにしても、師匠役を演じた時のリーアム・ニーソンの安心感っていうのは、ホント凄まじいものが。ただまぁ、こうも似たような役が続くと、オファーを受ける時に本人も「またマスター役かぁ。まぁ、オレ似合うしな」って思ったりするんでしょうかねぇ。

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安心感に揺るぎの無いの二人

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posted by たお at 17:25 | Comment(4) | TrackBack(38) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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