2013年 アメリカ映画 112分 ホラー 採点★★★★
私が住んでる家と同じ敷地内に一軒の廃屋が。元々は私の両親が「店舗兼住居じゃなにかとしんどいから家建てんべ」と建てた2階建ての一軒家なんですけど、そこに住んでいた期間は一年あるかないか。最初からその家は何かおかしかった。玄関から台所と応接間の間を通り風呂場やトイレへと向かう廊下は一日中薄暗く、暖炉がある応接間は異様に居心地が悪いので家族は大抵その隣の居間に集合。二階にある二部屋の内東側にある部屋には誰も入りたがらず、ある日従兄弟たちが泊まりにきたので皆その部屋で雑魚寝をしていると、一人の従兄弟が唐突に「ドアの所に誰か立ってる!睨んでる!」と言って深夜にもかかわらず自分の家に帰ってしまったことも。その後姉夫婦や、付き合いのあった人たちに貸したりもしたが、揃いも揃って一年余りで引っ越す始末。何かが出るとかって話はその従兄弟以外からは聞いたことないんですけど、“嫌な家”ってのはあるんですよねぇ。
【ストーリー】
1971年、ロードアイランド州。ロジャーとキャロリン夫妻と5人の娘たちのペロン一家は、町外れの古びた一軒家を購入する。しかし越してきて早々に様々な怪現象に悩まされた一家は、数々の心霊現象を解決してきた超常現象研究家エドとロレイン・ウォーレン夫妻に助けを求める。早速現地で調査を始めたウォーレン夫妻であったが、その家に宿る力は余りに強力で…。
アミティヴィル事件に関わった事でも有名な超常現象研究家エド&ロレーヌ・ウォーレン夫妻が体験した事件を基に、『インシディアス』のジェームズ・ワンが映像化したオカルトホラー。
“死霊”ときて“衝撃の実話”とくれば、もう危険な香りしかしないと言うか丸見えの地雷な作品が多いのですけど、結論から言うとこんな怖いホラー映画久々に観た。視点の変わったホラーや泣けるホラー、笑えるホラーにアクションとして楽しむホラーは随分と観てきましたが、「やだよもぅ、怖いんだよぅ」となるのはホント久しぶり。
聴覚と視覚をそれぞれ刺激する静の緊迫感に直接的な動の恐怖という、緩急の効いた恐怖演出が見事であった本作。“緩急”と言っても油断させてからのびっくらかしのパターンではなく、ジワジワと圧迫してからの痛恨の一撃を食らわせられる、どこにも逃げ場のないパターンだってのがこれまた優秀。そこにセイラムの魔女裁判やらアナベル人形やらアミティヴィル事件といった、その手の好事家には定番のネタを何気に盛り込むことで、真偽はさて置きある種のリアリティを生み出すことに成功し、恐怖が絵空事ではなくより身近に感じれる結果に。また、『ヘルハウス』や『ポルターガイスト』なんかもその影響下にあったのか、霊媒師の自主申告というか見えざる能力のみに頼るのではなく、科学的アプローチも含めたチーム戦で悪霊に挑むってのも非常に興味深い。
ウォーレン夫妻に『ミッション:8ミニッツ』のヴェラ・ファーミガと、『ヤング≒アダルト』のパトリック・ウィルソン、ペロン夫妻に『奇人たちの晩餐会 USA』のロン・リヴィングストンと、『クロッシング』のリリ・テイラーが。
“知”の夫に“力”の妻というウォーレン夫妻も、5人の子供全員娘ってのがそれはそれで怖いペロン夫妻も共に、互いを信頼し合い強い絆で結ばれている家族。そして彼ら理想の家族が最も恐れる“子を失う恐怖”に対し、邪悪なる力がピンポイント且つ全力で攻めてくる恐怖や、その邪悪な力に抗えず意思に反し自らの手で子供を殺めてしまった者たちの悲痛な叫びと、隠し部屋などの家に秘められた背景が明らかになるにつれ募る哀しさもまた、この西洋怪談ともいえる本作の物語に直接的な恐怖だけではない深みを持たせた結果なのでは。
60〜70年代のオカルト映画をしっかりと研究し消化した成果が表れた演出と、描かれている舞台に負けない力強い演者、霊の介在なくても本能的に感じる恐怖の根源と著名なネタを巧みに盛り込みつつシンプルにまとめ上げられていた脚本、それらが非常にいい具合に交じり合った作品であったなぁと。タイトルに警戒しすぎて手に取ってなかったのをちょいと後悔した一本で。
見えないからこその怖さ
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