2011年01月30日

センチュリオン (Centurion)

監督 ニール・マーシャル 主演 マイケル・ファスベンダー
2010年 イギリス映画 97分 アクション 採点★★★

歴史上のミステリーや宇宙の謎など、私が子供の頃の通説が次々と覆されてますねぇ。その手のニュースが、最近とっても面白い。太陽系内に、生命体が存在する可能性がある星が見つかるなんて思いもしませんでしたし。それも衛星で。科学の進歩で次々新発見がされるのはとっても楽しいことなんですが、ミステリーのまま夢を残して欲しい気も。

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【ストーリー】
西暦117年、ローマ帝国時代の北ブリテン。駐留中であった第9軍団がピクト人の襲撃を受け壊滅。将軍も捕らわれてしまう。僅かに生き残った兵たちは将軍救出に向かうが失敗、追われる身となってしまう。同胞の駐屯地を目指し逃げる彼らだが、ピクト人の執拗な追跡に次々と倒れていき…。

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大量に動員したゲルマン人兵士が勝手に職場放棄し、自然消滅的に姿を消したって説もあるローマ帝国第9軍団の顛末を描いた、『ディセント』のニール・マーシャルによる歴史アクション。もちろん、「戦うの疲れたー!家帰るー!」と脱走兵続出のそんな説を映画化してもグダグダな物語になるだけなので、本作ではきっちり激闘の末の壊滅として描いている。
大量の兵同士がぶつかり合う一大歴史スペクタクルとしてではなく、少人数の逃走劇に的を絞って描かれる本作。それにより、キャラクターを把握する隙を与えないスピード感が生まれ、合間合間に盛大に血飛沫が飛ぶ強烈な描写も挟みこんであるので、概ね退屈はしない。誰が誰だか分からなくなる置いてけぼりを食らっても、物語が佳境に達する頃には随分と人数も減るので安心。4人くらい覚えておけば十分
好きなものだけを放り込んだ結果、若干とっ散らかった作品になってしまった前作『ドゥームズデイ』の反省もあってか、今回は随分とコンパクトにまとめ上げた印象が。いささかコンパクト過ぎる気もしないでもないが、その辺は反省をきっちり次回に活かす素直さが出た結果なのではと。

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タイトルにもなっている百人隊長に扮しているのは、『300 <スリーハンドレッド>』のマイケル・ファスベンダー。本作のような史劇も似合う、ファインズ家に潜んでそうな男前なのだが、その線の細さもあってかシーン毎に印象が大きく変わるので、「あれ?主人公どこ行った?」と見失ってしまうことしばしば。一方、将軍役に扮する『フォーガットン』のドミニク・ウエストには、そんな心配は必要なし。見失いそうもない線の太さが魅力。豪快で部下にも慕われる将軍役として、絵的にもキャラクター的にも非常に印象に残る好演。
そんな中やはり一番の見所は、悲惨過ぎる過去を背負う追跡者に扮した『ヒットマン』のオルガ・キュリレンコ。メイクとぷっくりとした唇のせいか中島美嘉に見える事この上ないが、その風貌も含め作品に与えたインパクトは大きい。なんか茶色くなっててガッカリした007/慰めの報酬』でも思ったのだが、やはり彼女は本作のように透き通った真っ白の肌の方が魅力的。また、彼女以外にも『28週後...』でパパに追い回されていたイモージェン・プーツが、非常に魅力的な大人の女性に成長してたりして驚いたりも。
最後に、雪山で風除けになるものを探し何も見つからなかったのか、布に包まり斜面にごろ寝していたローマ兵へ、「そんな時は、かまくらを作ったらいいよ」と北国に住む者からのアドバイスを。

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馬が走りやすい所を必死に逃げても

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2011年01月29日

スター・トレック/叛乱 (Star Trek: Insurrection)

監督 ジョナサン・フレイクス 主演 パトリック・スチュワート
1998年 アメリカ映画 103分 SF 採点★★★★

昔の思い出や若い頃の自分が出てくる夢を見て目を覚まし、若干寝ぼけたまま洗面台の鏡を見ると、愕然としますよねぇ。「なんだ?何十年も昏睡してたのか!?」って思うほど。まぁ、完全に覚醒すれば現状を受け入れ「あぁ、いつもの私だ」となるんですが、年々その受け入れるまでの時間が長くなってきたような気も。

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【ストーリー】
バクー人の住む惑星を調査していたアンドロイドのデータ少佐が、突如共に調査をしていた地球連邦とソーナ人に向け攻撃を開始する。報告を受けたピカード艦長らはエンタープライズ号で現地を訪れ調査を開始、その中でこの惑星は不老不死の効果をもたらす特殊な放射線に包まれている事が判明する。やがて、ソーナ人がバクー人を強制移送し、この惑星そのものを壊滅しようとしている事を突き止めたピカード艦長らは、地球連邦の命令に背き、この惑星を守る決意を固める。

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いまだカルト的な人気を誇るTVシリーズ“宇宙大作戦”の新シリーズというプレッシャーの中、魅力的なキャラクター達とクォリティの高い物語の数々で新たなファンの獲得に成功した“新スタートレック”の劇場版第3弾。前作『ファースト・コンタクト/STAR TREK』でもメガホンを握ったライカー副長役のジョナサン・フレイクスが、今回もメガホンを握る。
不老不死の惑星をめぐって、“多数の為なら少数を犠牲にしていいのか?”を問う本作。とは言っても、そんな大それたキレイ事を押しつける嫌味な感じは全くなく、“そういうことを考えてみるのもいいよね”って感じのいつものスター・トレックで安心。印象が前後編に分けられたTV長編みたいでもあるが、下手に劇的に変化をさせて別物になるよりは、これくらいがちょうどいい。完璧な善人として描かれるエンタープライズのクルーやバクー人の描写も、嫌味がないこともあり、逆に観ていて心地が良い。私がTVシリーズのファンだからってのもあるかも知れないが、主人公らが善悪の狭間で揺らがれてしまうと、そもそもの世界観まで揺らいでしまうので、その辺はご容赦して頂きたい。強いて不満を言えば、エンタープライズ号の造形美を堪能できる描写の少なさだが、まぁ大した問題でも。
ピカードやデータを始めとしたキャラクターが熟成し切ったこともあり、キャラ遊びが豊富なのも本作の魅力。ピカードにカツラをかぶせてみたり、ラフォージの視力は回復するのにピカードの髪は生えなかったりと、若干ピカードの頭に遊びが集中している気もしないでもないが、そこで遊びたい気も分かる。私のようなファンが喜ぶのは当然のことだが、一見さんお断りのような敷居の高さは全くなく、技術の進歩を突き詰め過ぎて一周し中世の様な生活を送るバクー人ら魅力的なキャラクターが多く登場する、アクションありロマンスありの、クラシカルな味わいもある宇宙活劇として誰でも楽しめる内容となっている。ファンとしては、本作を足がかりにこの前後の作品を観てもらえたら嬉しいなぁとも。

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エンタープライズ号艦長のジャン=リュック・ピカードに扮しているのは、若い映画ファンらには『X-MEN:ファイナル ディシジョン』などのプロフェッサーX役として有名なのであろうが、私にとってはやっぱり女声で迫って来たかと思えば、突然口から鼻から大量の血を噴射して驚かした『スペースバンパイア』が真っ先に浮かんでしまう、パトリック・スチュワート。もうピカード役はすっかりお手の物で、細かいユーモアを挟みつつも芯のブレない、信念の男ジャン=リュック・ピカードを好演。ただ、やっぱり気になるのは“不老不死と若がえりの力をもってしても、なぜ髪が生えないのか?”ってところ。色々考えてみたんですが、“@そんな力じゃどうすることも出来ないほどに毛根が死滅”、“Aもともと毛根がない”、“Bパトリック・スチュワートが頑なにカツラを拒んだ”のいずれかじゃないかと。その辺は誰か会う機会があったら聞いてみてください。
その他にも、監督業の忙しさもあってか見せ場の少ないものの、攻撃を受けると必ずメインブリッジで吹き飛んでいたり、目を離すとすぐにカウンセラーといちゃついたりと、お約束だけはきっちりと守るライカー副長役のジョナサン・フレイクスや、元々はスポックに代わるイロモノながらも、日々人間に近づくために努力するピノキオ的キャラ設定と、その努力に全く悲壮感が伺えない前向きさで一躍人気者となるデータ少佐役のブレント・スピナーなど、お馴染の顔ぶれが期待通りの活躍をし、大いに楽しませてくれる。
また、お馴染のキャラクターだけではなく、「ゴメンなさい」の一言が何百年も言えないアンチエイジングに忙しい悪役のソーナ人に扮した『薔薇の名前』のF・マーレイ・エイブラハムや、『ペイバック』のグレッグ・ヘンリーも分厚いメイクながらも印象的。こういう役は、やっぱり上手い人じゃないと成り立たないなぁと。

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200歳以上の歳の差なんてものともしない、男の中の男

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2010年12月25日

サバイバル・オブ・ザ・デッド (Survival of the Dead)

監督 ジョージ・A・ロメロ 主演 アラン・ヴァン・スプラング
2009年 アメリカ/カナダ映画 90分 ホラー 採点★★

消費社会を痛烈に皮肉った『ゾンビ』で、生前の習慣のままにゾンビらがショッピングモールに大挙してたんですが、もし私が死んでゾンビになったら、どこでウロウロしちゃうんだろ?やっぱ、ビデオ屋だな。ビデオ屋で、通路を隈なく右往左往するな。今と変わらないな

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【ストーリー】
突如死体が蘇り人々を襲い始めてから4週間あまり、崩壊状態の軍から離脱し強盗団と化した元州兵のサージら一行は、デラウェア沖に安全な島があるという情報を得る。確証のないままその島へ向かう一行だが、その島では島の実力者同士の争いが行われており…。

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前作『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』と同じ世界を共有する、ゾンビ師匠ジョージ・A・ロメロによるゾンビホラー。西部劇的アプローチが、ちょっぴり新鮮。
主義主張の違う者の意見というのは、自分にとっては受け入れられない間違ったものであり、場合によっては悪でもある。ただ、当然その逆も然り。一方が正しく、一方が間違っているってことは簡単に決められる事ではない。そのようなことが描かれる本作。自らの主張をセリフに乗せて、前面に押し出し過ぎてしまう説教臭さは最近のロメロ作品に顕著なので多少我慢が出来るが、その我慢を解消してくれる輝きが本作に見当たらないのは残念。周囲に溶け込んでいないCGエフェクトに空回りするギャグ、傍観者にすぎない主要キャラたち、そして何よりもゾンビに意味がない。なにかを象徴しているわけでも、絶対的恐怖の存在として君臨しているわけでもなく、ただそこらにワラワラいて、クライマックスにお約束の晩餐会を繰り広げるだけの雑な扱い。とりあえずゾンビの進化系として“人以外も食べてみるゾンビ”ってのが登場するが、その経緯が“適当にやってたら上手くいった”的にざっくばらん過ぎで、『死霊のえじき』のバブと博士関係はおろか、『ランド・オブ・ザ・デッド』のビッグ・ダディにも到底及ばない。「ロメロの作品だから!」「のろのろゾンビだから!」と諸手を挙げて歓迎したくなる気分も分からなくはないが、ここは“ロメロの作品”だからこそ厳しい意見を
齢70にしてまだまだ意欲を失っているようには見えないロメロ御大。ただの凶暴モンスターと化したゾンビが全速力で走り回る作品が主流となった今だからこそ、そのゾンビ作品群にとどめを刺すような職人の本気ってのを見せて頂きたいところ。時代に逆行してようが、手間が掛かり過ぎようが、トム・サヴィーニ御大を再度引っ張り出して強烈な生のゴア描写をふんだんに盛り込んでくれてれば、尚嬉し。

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やっぱり臭い?

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タグ:★★ ホラー
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2010年12月11日

シャギー・ドッグ (The Shaggy Dog)

監督 ブライアン・ロビンス 主演 ティム・アレン
2006年 アメリカ映画 99分 コメディ 採点★★

ここのところ猫に囲まれた生活を送っているせいか、“猫派”と思われがちな私。でも、以前は犬派。今でも犬は好きですが、以前は文句なしダントツ犬派。正直、猫は苦手だった方で。従順で活発で、構ってもらうために必死にアピールする姿が可愛くて。構ったら構ったで、喜びのあまりわけが分かんなくなってしまう姿も可愛いもんです。ところがいざ猫を飼ってみると、「ほら、撫でれ」「ほら、構え」「もういい!もういい!しつこいなぁ!」という、常に上から目線ってのもなかなかいいもので。まぁ、基本飼っていればどんな動物でも可愛いんですけどね。

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【ストーリー】
家庭を顧みず仕事一筋の地方検事代理のデイヴは、動物実験に関する事件を担当していた。そんなある日、娘のカーリーがその研究所に侵入、一匹の犬を救い出しシャギーと名付け家に連れ帰って来る。実はその犬には、不思議な力が秘められていた。そうとは知らず手を出したデイヴはシャギーに噛まれ、気が付くと犬に変身してしまっていた…。

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1959年製作の『ボクはむく犬』のリメイク。監督は、役者として『ゾンビ・パラダイス/ゾンビが街にやってきた!』という素敵なタイトルの映画に出ていたとは思えないフィルモグラフィを持つ、『デイブは宇宙船』のブライアン・ロビンス。
内容自体は、“仕事一筋の主人公が想像を超える出来事に見舞われ、真の愛や幸せに気付く”っていう、いつものアレ。その鉄板テーマにビッタリと沿うディズニー映画らしい安全運転な展開には、特に不満はない。定番ならではの面白さや楽しさはある。ボールやフリスビーの魅力に抗えなかったり、嗅覚や聴覚が鋭くなったりする犬ギャグも概ね想定内で、退屈しない。しかしながら、あまりにテンポがトロい。100分を切る作品とは思えぬほどに、体感時間が長い。多少山あり谷ありの展開はするが、その高低差があまりに低い為か、作品のトーンに変化が乏しい。そのくせ、終盤は一気に物語を畳みこもうとする慌ただしさ。結果、その平板さとバランスの悪さが、作品のまどろっかしさを生んじゃっているのではと。

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主演は『トイ・ストーリー3』『ギャラクシー・クエスト』のティム・アレン。彼独特の俗っぽさが出ている人間時代は良いのだが、犬方向にシフトしてからは面白い事をする一コメディアンに収まっちゃっていたのは残念。犬らしい純朴さを出したかったのかもしれないが、せっかくティム・アレンがやってるんだから俗っぽい犬でも良かったのでは。
一方、悪役には『アイアンマン2』『シャーロック・ホームズ』のロバート・ダウニー・Jr。再ブレイク直前ということもあってか、何か開き直った弾けっぷりが見事な怪演を。その他にも、『プレデター2』のダニー・グローヴァーや『40男のバージンロード』のジェーン・カーティン、今では妹の方が大活躍を見せる『ハプニング』のスペンサー・ブレスリンなど、思いがけない豪華キャストが嬉しい。まぁ、出ていただけって印象も拭えませんが、その分全身モップのような犬を筆頭に、尻尾だけ犬のコブラや顔だけ犬のカエルとか奇怪な動物が見せ場を作ってくれているので、奇怪な動物ファンには満足いく作品ではと。たぶん

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これが猫になる物語だったら、人間に戻る努力をしないまま完結しちゃいそう

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2010年11月27日

シェルター (Shelter)

監督 モンス・モーリンド/ビョルン・スタイン 主演 ジュリアン・ムーア
2010年 アメリカ映画 112分 サスペンス 採点★★★

ミッション系の学校には通っていたが、別にキリスト教徒のわけではない私。仏教徒でもないし、もちろんゾロアスター教徒でもない。ましてや、特定の生き神様を崇めているわけでもない。なんかこう、典型的な日本人。でも、別に無神論者でもないんですよねぇ。「コレ!」ってのはないんですが、ボンヤリとした何かは信じてるんですよね。

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【ストーリー】
多重人格を否定する、精神分析医のカーラ。ある日、同じく精神分析医である父親から、デヴィッドという多重人格患者を紹介される。初めは愉快犯として信じなかったカーラであるが、次々と信じられない事実が判明し困惑する彼女。やがて、デヴィッドに潜む人格の全てが、過去に死亡した実在の人物であることが判明し…。

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スウェーデン出身のモーリンド&スタイン監督による、信心がカギを握るスーパーナチュラル・スリラー。脚本は、何でもアリ映画『“アイデンティティー”』のマイケル・クーニー。だからか!
台詞がボソボソと聞き取りづらいのでボリュームを上げると、突然デカイ音が鳴り響いてビックラかすパターンには辟易するが、こちらの予想がなかなか追い付かないストーリー自体は面白い本作。想像上のものと思われた人格が実在の人物であることが判明する展開は、科学的なものになるのか、超常現象的なものになるのか先が全く読めず、目が離せない面白さ。“呪い”の存在が見え隠れし始め、事態のカラクリが判明し始めても、多重人格者デヴィッドの目的も物語の着地点も読めず、やはり目が離せない。どう着地するのかワクワクさせるのだが、如何せん脚本があのマイケル・クーニー。予想の遥か斜め上を飛んでいく。及び、斜め下
些細な台詞や仕草で厚みの増した人物描写と、謎が謎を呼ぶ展開で期待がパンパンに膨らむデヴィッド。しかしながら、点と点が線になりそうな彼の行動が、実のところ意味がありそうで全くない点の羅列でしかなく、彼自身も単なる魂ハンターでしかなかったという着地点には、随分とガッカリ。母親の悲し過ぎる選択で終われそうな所を、無難な『スケルトン・キー』路線に逃げてしまうのも、同様に。中盤以降、それまで積み上げてきたアレコレを放り投げて飛躍するストーリーであっても面白さが揺るがなかっただけに、それらの点は非常に残念。惜しい。

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好きな女優の一人であるし良い女優だとも思うのだが、作品選びがいささか個性的過ぎる気もする、『フォーガットン』『トゥモロー・ワールド』のジュリアン・ムーア。地雷原の地雷だけを踏み抜いて全力で走ってるような。エージェントに「何か変な映画の仕事はない?」と聞いてるかのような選び方は、ある意味ニコラス・ケイジ的でも。そんな変な映画で見る機会の多い彼女だが、仕事振りは相変わらずお見事。母としての姿、娘としての姿、科学者としての姿と多面的な顔を持つ本作の役柄を、表情や声のトーン一つでアッパレなほど演じ分けている。そのまんま彼女が多重人格の役でも良かったのではと。ストーリー上意味がありそうでなかった“赤”を常に身にまとっている様も、髪色とリンクして非常に似合ってましたし。
ジュリアン・ムーアと同様に、細かい仕草やアクセントを変えて多重人格を見事に演じたのは、『パリより愛をこめて』『マッチポイント』のジョナサン・リス・マイヤーズ。年齢を上手く味方につけ、年々男前度が上がっている。仄かに漂う“気持ち悪さ”も巧みに利用し、正体不明の不気味さを表現。
ミスト』での先を悟った表情が印象的だったジェフリー・デマンなど、脇もしっかりと固まってた本作。何よりも好みの主演勢が良い仕事振りを見せてくれたので、★ひとつオマケで。

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紅葉が似合う女優ランキングでは常に一位。個人的には。

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2010年11月26日

ソルト (Salt)

監督 フィリップ・ノイス 主演 アンジェリーナ・ジョリー
2010年 アメリカ映画 100分 アクション 採点★★

秘密を持ち続けるのも内緒話を聞くのも、イマイチ苦手な私。普段はお喋りな割に口は堅いんで言いふらすことはないんですが、秘密を持っちゃった事自体がプレッシャーで嫌だ。秘密を知っちゃった相手が目の前に居ちゃうと、「うわぁ、この人オレが秘密知ってるのを知らないんだぁ…」と可哀想になってきちゃう。“憧れの職業ランキング”にスパイってのが入り続けている私ですが、全くもって向いてないですねぇ。

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【ストーリー】
CIA本部にロシアからやって来た謎の密告者が現れる。優秀な分析官であるイヴリン・ソルトが尋問を担当するが、その密告者は大統領暗殺を企むスパイが潜伏していること、そしてそのスパイの名が“イヴリン・ソルト”であることを告げる。窮地に陥ったソルトは、その場から逃走するが…。

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パトリオット・ゲーム』のフィリップ・ノイス監督、『リベリオン 反逆者』のカート・ウィマー脚本による、ポリティカルアクション。プロットを見る限り、“疑惑を晴らすために大統領を救おうとする主人公”って王道路線か、『追いつめられて』路線のいずれかの展開を想像するが、本作はどっちも。それはそれで、ちょっと新鮮。まぁ、カート・ウィマーの脚本って、裏の裏をかいて表に戻るってパターンが多いんで、お馴染っちゃぁお馴染なんですが。
とどのつまり『ボーン・アルティメイタム』と言うか『影なき狙撃者』と言うか、まぁそんな感じの本作。ことのほかスケールの大きい物語を、目まぐるしい展開とスピーディな演出で描き、派手なアクションを要所要所に挟んで短時間でまとめ上げた一本。スケールの割に主要人物を少人数に絞っているので、コンパクトに仕上がっているのも魅力。ただ、その力任せなスピード感もあってか、観賞中矢継ぎ早に浮かぶ疑問の数々が解消されぬまま、「ハイ、おしまい!」と強引に着地してしまっている感も。“アメリカ崩壊計画”の説得力の無さも痛い。“ロシア大統領暗殺→ロシア国内で反米感情高まる→色々あって一発触発の状態”まではなんとなく分かるのだが、ロシアとの緊張状態が生まれた結果取る行動が“アメリカの核ミサイル掌握→中近東目掛けて発射→イスラム教徒激怒→テロ多発→アメリカ大弱り→ロシアメシウマ”ってのは、回りくど過ぎないか?政府の中核まで複数スパイを送り込んでいるんだから、もっとやれることあるんじゃないか?

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そんな説得力の少ないプロット、派手だが目新しさのないアクション、一応オープニングに関連付けて説明はされるが腑に落ちるとは言い難い主人公の行動原理と、不満も多かった本作だが、アンジェリーナ・ジョリーの七変化を楽しむ分には概ね満足。
Mr.&Mrs. スミス』や『ウォンテッド』でもそうなのだが、アンジェリーナ・ジョリーはダーク系の髪色でのアクションが似合う。素晴らしく映える。ドS路線のコスチュームだと尚更に。ちょっと痩せ過ぎの感じもしたが、黒のロングストレートヘアーで拳銃を握る彼女は、ただその姿を見ているだけでもとても面白い映画を観ているような気にさせる力を持っている。ただ、顔の輪郭が強調されてしまう男装時の変な髪型のままクライマックス以降を過ごされてしまうので、いささか居心地が悪かったですが。
アンジェリーナ・ジョリー一本に絞ったような作品なので、他の役者の印象が散漫ではあるんですが、“見た感じは怪しいが、その裏の裏をかいてやっぱり怪しい”役柄を演じさせればピカイチである、『レポゼッション・メン』『ファントム』のリーヴ・シュレイバーや、色んな作品で観ているはずなのに、残っている印象が常に“涙目の人”である『ラブ・アクチュアリー』『インサイド・マン』のキウェテル・イジョフォーらは、大体期待通りの活躍。
ブルーレイに入ってた劇場版よりちょい長い“ディレクターズ・カット版”ってのと、総本山に乗り込む別エンディングの為に中盤の編集が強引に変えられている“別エンディングディレクターズ・カット版”ってのも観比べてみたが、特に印象は変わらず。好みとして、別エンディングの方が好きかなぁって程度だったので、お暇でしたら観比べてみてはと。

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シリーズにするなら、ソルトよりフォックスの方を是非

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2010年11月23日

13日の金曜日PART7/新しい恐怖 (Friday the 13th Part VII: The New Blood)

監督 ジョン・カール・ビュークラー 主演 ラー・パーク・リンカーン
1988年 アメリカ映画 89分 ホラー 採点★★

なかなか結論が出てこない会議を延々と続けていると、アイディアも出尽くし煮え切ってしまった精神状態もあってか、突飛を通り越して常識的に考えてもおかしいアイディアが素晴らしいものに見える事がありますよねぇ。もう、皆が皆「それだ!」ってなっちゃって盛り上がり、冷静な誰かが「待て待て待て待て、それおかしいぞ!」と言い出すまで決定の方向で詳細を詰めちゃったりすることも。上から流されてくる企画があんまりにもあんまりな時って、冷静な人不在のまま、そんな会議で決定しちゃったんでしょうねぇ。

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【ストーリー】
超能力少女のティナは、幼少の頃その持ち前の超能力で父親をうっかり殺してしまう。そのトラウマで精神を病んだティナは、トラウマ克服のため父が死んだクリスタル湖に戻り、その超能力で死んだ父親を蘇らせようとするが、今度はうっかりジェイソンを蘇らせてしまい…。

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前作の『13日の金曜日PART6/ジェイソンは生きていた!』で、腐乱死体のジェイソンをカミナリ一発で蘇らせる荒技を成し遂げた本シリーズ。もう怖いものは何もないとばかりに、今度は超能力でうっかり復活。向かう所敵なし
超能力少女がうっかりジェイソンを蘇らせるという、スパイスのちょい効き過ぎたオープニングを飾る本作。その序盤こそはまぁ面白いが、それ以降は全くもっていつも通りの展開。ただ、血糊の量もお色気シーンも随分と控えめで、とてもエンパイア・ピクチャーズ上がりの監督とは思えぬサービス精神のなさに、正直かなり退屈させられる。しかしながら、超能力少女とジェイソンの一騎打ちとなる“キャリーVSジェイソン”ばりのクライマックスになると俄然盛り上がる。もともと物理的攻撃に対しては滅法強いが精神面に弱点を持つジェイソンが、超能力を前に一方的にやり込められるという、滅多に観れないバトルシーンもかなり燃える。
本作で行きつく所まで行きついてしまった感もある本シリーズであるが、実のところまだまだ助走中だったりするから侮れないですねぇ。

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“ジェイソン=ケイン・ホッダー”というイメージがあるのだが、意外にも本作がケイン・ジェイソンの初登場作。ところどころ骨が剥き出しになっているとは思えぬほどの巨体から繰り出される、犠牲者をその入っている寝袋ごと振り回すなどの力技は迫力満点で、ジェイソン=パワーファイターのイメージを定着させることに。そんなパワーファイターのくせして、超能力と死んだお父さんには滅法弱いという弱点を露呈してしまう、本作のジェイソンさん。超能力で頭を捻り潰されそうになるほどの苦戦を強いられております。如何せん脳ミソは少ないので、絞られて出てくるのは変な汁だけでしたが。
「おかーさーん!おとーさんがまた13日目の金曜日観てるよー!」と子供が呆れてしまうほど、最近集中して観ているこのシリーズ。読んで下さっている方々もそうでしょうが、観ているこっちも流石に飽きてきましたねぇ。まぁ、手元にあるのはあと2本。ちゃっちゃと観て、ちゃっちゃと書き倒してやろうかと。ところで、娘よ。タイトルが微妙に違うぞ。学校では言うなよ

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ニューヨーク旅行を前にはしゃぐジェイソンさん

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タグ:★★ ホラー
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2010年11月22日

地獄の7人 (Uncommon Valor)

監督 テッド・コッチェフ 主演 ジーン・ハックマン
1983年 アメリカ映画 105分 アクション 採点★★★★

学生の頃は、自分の国なりよその国なりに怒りを覚えるってのは少なかったんですよねぇ。ニュースや歴史番組でクーデターやデモの様子を見ても、なんでそんなに怒ってるのかさっぱり理解できなかったものです。戦争アクションなんかを観た後の妄想タイムはもちろん“戦場のオレ”なんですけど、相手は全然明確じゃなかったですし。ところが、どうも昨今は腹が立つことばかり。先の事や複雑な実情の事なんぞ考えず、ただ感情に任せて「じゃぁ、一戦交わしちゃえばいいじゃん!」と浅はかな事すら思ってしまうこともしばしば。歳のせいなのか、そんなことを考えざる得ない状況になってしまったのかは、定かじゃないですが。

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【ストーリー】
ベトナム戦争が終結して10年。戦闘中に行方不明となった息子の生存を信じ続ける元空軍大佐のローズは、いつまでも行動を起こさない政府に見切りをつけ、息子救出のため自ら現地へ向かうことを決意。息子の戦友らと共にベトナムに向かった一同は、遂にアメリカ人捕虜を発見するが…。

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ランボー/怒りの脱出』や『地獄のヒーロー』などのMIA(戦闘中行方不明)救出映画の元祖的戦争アクション。製作は“もちろん”と言っても差し支えのない『若き勇者たち』のジョン・ミリアスが担当し、監督には『ランボー』のテッド・コッチェフという強烈な布陣。
息子の為ならどんな行動でも辞さない父親と、私財の全てを投げ打つことも臆さない父親。まずその二人の父親の強い思いに胸を打たれる本作。集められるメンバーたちも、強引な召集のように見えて、実のところそれぞれが掛けがえのない戦友と共に戦場に置いてきてしまった大切な“何か”の為に自ら平穏な生活を捨て集まる姿も感動的。娑婆に居場所がなく、戦場でしか輝けない男たちって時点で、非常に『ワイルド・ギース』的で堪らない。
彼らの前に立ちはだかる障害が敵兵ではなく、その命を掛けて守り愛してきた母国の政府である皮肉や、個性豊かなキャラクターたちの活躍と見事な散り様、死を目の前にすることで成長する新兵の物語に、諸手を挙げて喜び切れない苦い結末等、男心を鷲掴みにする描写の数々をしっかりと固められたドラマと派手なアクションで描き切った本作は、初めて観た時から30年近く経つが、いまだに好きな一本。確かに戦後10年も捕虜にしているメリットも見当たらないし、民間人が無許可で他国と一戦を交わすってのは物騒かつ無責任な話だが、感情的には全然理解できるし応援したくなる物語なので問題なし。

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筋肉が敵国に行ってウワーって暴れてるのであれば、ヒーロー自体を応援する勧善懲悪の戦争アクションで終わってしまうのだが、本作の主人公は息子を救うために全てを投げ打って現地に向かう老いた父親。主人公がアクションヒーローとして描かれているのではなく、あくまで強い思いを持つ父親として描かれている。冷静でタフだが、感情に流されることもヘマすることもある普通の父親。だからこそ仲間に信頼され、観客にも愛される。これはまさに、『エネミー・ライン』『目撃』のジーン・ハックマンにうってつけの役柄。本人自身は人っ子一人殴れない“超”が付くほどのリベラルを自称しているが、本作の主人公のように強く真っ直ぐだが、感情面での弱さを併せ持つ役柄が見事にハマる。
その他、元祖エリオット・ネスのロバート・スタックや、筋肉ウィリアム・カット然としたレブ・ブラウン、元プロボクサーの肩書を持つランドール・“テックス”・コッブに、“我らがレモ・ウィリアムス”こと『レモ/第1の挑戦』『ロード・トリップ』のフレッド・ウォードと、非常に男臭い面々が集結。その中に、男むさい連中に揉まれ成長する若造役として『若き勇者たち』『11:14』のパトリック・スェイジの姿も。少年らの兄貴分の印象強い彼も、さすがにこの面々を前にするとすっかり青二才。その青二才なりの意地と根性で猛者に喰いつき、成長していく姿は印象的。どういうわけか、彼を見るといつも若い頃の小林旭が脳内に。普段、小林旭のことなんて全然考えもしないのに、パトリック・スェイジを見る時だけはなぜか。

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ある種身近な題材だけど、日本じゃ作れないし作ろうとしない

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posted by たお at 01:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月05日

13日の金曜日PART6/ジェイソンは生きていた! (Jason Lives: Friday the 13th Part VI)

監督 トム・マクローリン 主演 トム・マシューズ
1986年 アメリカ映画 87分 ホラー 採点★★

前作でジェイソン抜きでのシリーズ続行を模索し、二代目ジェイソンの誕生を匂わせておきながらも、「やっぱ、ジェイソン出ねぇと締まんねぇな」とばかりにジェイソンを復活させ、前作の事を色々とウヤムヤにしたまま仕切り直し。ジェイソン抜きでやってみようとした姿勢だけは、立派ですね。

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【ストーリー】
少年時代にジェイソンと対決し、そのトラウマから長年精神病院に入っていたトミーは、そのトラウマと決別するために病院を脱走し、ジェイソンの墓へとやって来る。墓を暴きジェイソンの骸に鉄杭を突き差したその瞬間、雷が鉄杭に落ち、ジェイソンがババーンと復活。逃げるトミーを追って、いつものキャンプ場へと向かう。

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本作より“死んでる”ってのが条件付けされたジェイソン。これ以降、物語の最大の関心ごとが“どうやって甦るか?”に集約される、ある種の絶頂期を迎えることに。
で、本作。「死んじまってるけど、やっぱジェイソン出せ!」と無理強いされた結果か、徹頭徹尾やけっぱちの香り漂う異色作。「もう、雷でいいんじゃね?フランケンみたいに?」と安易なネタで復活させ、007もじりのタイトルで迎えるオープニングから、もう怖がらせようってより笑かそうとする気満々。この前年に公開された『バタリアン』の影響も強いのか、笑えるホラー路線に果敢に挑戦。あんまり笑えはしませんが
笑えるわけでも派手なゴア描写があるわけでもない本作だが、オープニングから出ずっぱりのジェイソンが、『ジェイソンX』まで破られなかった最多殺戮数を記録する大活躍を見せたって意味では、ダレ場も少ない痛快作と言えるのかも。アリス・クーパーの曲もたっぷり聴けますし。

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今回で3度目の登場となるトミー役には、『バタリアン』で劇中の大半を「痛い痛い」言ってたトム・マシューズ、犠牲者の中にコッソリ『カフス!』のトニー・ゴールドウィンが出てたりもする本作だが、もちろん主役はジェイソン。
落雷で蘇るという荒業を成し遂げたせいか、何か吹っ切れた様子で、下手に小走りしたり、若者にしてやられたりすることのない、非常に堂々とした佇まい。マチェーテを構える姿もすっかり板に付き、これだけマチェーテが似合う男も、ジェイソンかダニー・トレホくらいじゃないかと。基本もうゾンビと同じ類なのに、しっかりと電話線を切ってから犯行に臨む用意周到さや、鈍重そうに見えて、走って逃げる犠牲者にあっさり追い付く見えない機敏さも見せるジェイソンさん。きっと誰も見ていない所で猛然と走ってるんでしょうねぇ。努力の人だ。

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超能力少女のウッカリを静かに待つジェイソンさん

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タグ:ホラー ★★
posted by たお at 02:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月01日

勝利への脱出 (Victory)

監督 ジョン・ヒューストン 主演 シルヴェスター・スタローン
1981年 アメリカ映画 116分 ドラマ 採点★★★★

大作のほとんどが世界同時公開になってしまった弊害か、最近めっきり正月映画らしい正月映画ってのもなくなっちゃいましたねぇ。かつては正月気分に拍車を掛けるスケールのでかい作品がこぞって公開されてたんで、毎年その時期が楽しみでしょうがなかったんですが、最近はそんなイベント感も少なくなって、なんとも寂しい限りで。それにしても、思い出すと1981年ってのは、まさに正月映画らしい作品が集中した素晴らしい年だったなぁと。『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』に『キャノンボール』『勝利への脱出』、『タイタンの戦い』に『マッドマックス2』と、親に連れて行ってもらわない限りは映画が観れないんで、観れる本数に限りのあった子供の私にとって、どれを観るべきか真剣に悩んだもので。さすがに、ボー・デレクの裸見たさに「『類猿人ターザン』が観たい!」とはお願いできませんでしたが。

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【ストーリー】
第二次世界大戦最中のドイツ。捕虜収容所に収監されていた、サッカー選手として名を馳せる連合軍大尉コルビーのもとに、ドイツ軍選抜との試合の申し入れが入る。快諾したコルビーは選手の選抜を始めるが、一方収容所内では大がかりな脱走計画が練られていた。この試合を大々的なプロパガンダに利用したいドイツ軍、脱走計画を進める連合軍、試合に勝ちたい選手たち。それぞれの思惑を乗せたまま、ゲームが開始される。

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巨匠ジョン・ヒューストンによる、サッカーを題材にした戦争ドラマ。サッカーの神様ペレが出演していることも話題に。
当時この映画を観終わった浮かれ気分そのままに、この作品の基となったドイツ空軍対ディナモ・キエフの親善試合の物語を漫画で読み、スポーツマンの誇り高き生き様に感銘を受ける一方、あまりに救いのないその結末に、浮かれ気分も一気に吹き飛ぶ衝撃を覚えたもので。
で、本作。脱走物にしては収容所は思いのほか快適そうだし、途中で企てられる脱走計画も詳細がさっぱり分からないので、イマイチ盛り上がらず。ドラマとしても、選手とコーチ、思惑の異なるコーチと上官、連合軍とドイツ軍などなど、存分に厚みが出そうな組合せであるにも関わらず、ただ淡々と時系列順に出来事を描いているだけのようだし、登場人物もその表面しか伝わってこない感じも。まぁ、緻密に計画してグループで脱走しようとするイギリス人と、一人ワンパクに脱走するアメリカ人という、お馴染の構図は楽しかったですが。
しかしながら、いざ試合が始まると一変。ここに至る間さり気なく描かれていた“犠牲の精神”“チームの精神”も功を奏し、これが盛り上がる盛り上がる。ペレ自身が組み立てた試合展開の中、往年のスター選手が華麗な技を披露する様も見事なのだが、わかりきったベタな展開とはいえ、それまでにドイツ側による悪辣なプレーと、思惑そっちのけで選手として勝ちたいスポーツマン魂を見せつけてきた分、1点入る度に素直に拳を振り上げ喜んでしまう。実際、当時劇場で観た時は、観客が一斉に歓声を上げてましたし。確かに、どさくさにまぎれての脱走劇に、「手ぶらじゃなにかと大変だろうに」と思ってしまうこともあるが、そんな些細な疑問くらいじゃ消し去れない、勝利の(引き分けであっても)高揚感が堪らない。

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ペレを筆頭に、往年のスター選手が勢揃いした本作。というか、フィールドに立っている俳優は、スタローンとマイケル・ケインのみ。俳優にプロ並みのプレーをさせるくらいなら、選手に演技させた方がまだ楽だったんでしょうねぇ。
もちろん選手にずーっと演技をさせるわけにもいかないので、『エクスペンダブルズ』のシルヴェスター・スタローンと、『トゥモロー・ワールド』のマイケル・ケインを主演に。そういえば、『追撃者』もこの組合せ。ドイツ軍将校役で出演している、『シャッター アイランド』のマックス・フォン・シドーとスタローンといえば、もちろん『ジャッジ・ドレッド』ですねぇ。サッカーの神様ペレとは全く関係ないですけど、マックス・フォン・シドーといえば『ペレ』っていうどうにも荷が重い映画もありましたねぇ。
話を本作に戻すと、マイケル・ケイン自体は脱走したいのかしたくないのか良く分からない役柄でしたが、スタローンは良く頑張った方では。まずは脱走ありきながらも、徐々にチームプレーを学んでいく典型的アメリカ人を好演。慣れないサッカーに、指を骨折したとか脱臼したとか、スタローンに付きものの怪我武勇伝も、当時話題に。考えてみれば、今ではアメリカでもサッカーが盛んなので、アメリカ人がサッカーをやってても違和感ないんですが、当時はまだ“アメリカ人はボールを蹴るより持つ”ってのが定番だったんですよねぇ。ということは、今の若い世代や次の世代がこの映画を観ても、なんでスタローンがサッカーに馴染もうとしないのか理解できないんでしょうねぇ。時代って、こんな感じで変わっていくんですねぇ。
神業プレーはスローで何度もしっかりと見せる本作。中でも、やっぱりペレのバイシクル・シュートは圧巻。何度観ても、このシーンはゾクゾクする。あまりにこのシーンがカッコ良いんで、当時真似して後頭部を強打する小学生が続出したことを思い出しますねぇ。いやぁ、あれはホント痛かった

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演技しか出来ない人と、サッカーしか出来ない人との助け合い

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posted by たお at 02:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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