2016年11月29日

センソリア/死霊の館 (Sensoria)

監督 クリスティアン・ハルマン 主演 ラナ・オールソン
2015年 スウェーデン映画 81分 ホラー 採点★★★

映画だけに限らず、“天国で愛する人と一緒になる”って話をよく聞きますが、自分がそう願ってても相手側がそこまで思ってない場合はどうなっちゃうんでしょうねぇ?いざ死んで会いに行っても、「あら、来ちゃったんだ…」みたいな気まずい空気が流れませんかねぇ?

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【ストーリー】
夫に捨てられた中年女性のキャロリン。人生の新たなスタートを切るため古びたアパートの一室に引っ越すが、日に日に孤独に苛まれ、精神状態も不安定になっていく。そんなある日、ひとりの少女が彼女のもとを訪れ…。

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各国のファンタ系映画祭で話題を呼んだという、スウェーデン産の心霊ホラー。製作/脚本/監督に、本作が初長編となるクリスティアン・ハルマンが。
全てを失った中年女性が、かつて忌まわしい事件があったアパートの一室で恐怖に襲われる様を描いた本作。“恐怖に襲われる様”と書いてはみたが、序盤から異常な出来事は起きてるものの、主人公がそれに気付き恐怖するのは終盤も終盤で、メインに描かれる恐怖は“孤独”。その孤独に苛まれ追い詰められていく描写が、主演のラナ・オールソンの生々しいまでにリアルな風貌と、寒々しい室内、そして更に寒々しい野外の風景と相まって、見事なまでに表現されている。身も心も冷え切ってしまいそうな孤独の描写が頂点に達すると同時に、室内に潜むもうひとつの孤独な存在が彼女と呼応する展開も非常に物悲しく、この作品が描く孤独をより深く描いているようにも。一途なあまり相手の都合を全く考えない子供らしさが描けているのも好印象。
雰囲気作り担当でしかない他の住人らの個性が前に出すぎちゃってて、本来もっとシンプルなはずである作品の世界観が多少複雑になってしまってる印象もあるが、パッケージの煽り文句に期待値を上げ過ぎなければ十分に楽しめる一本なのではと。

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お母さんが探してるんじゃないの?

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2016年11月28日

死霊館 エンフィールド事件 (The Conjuring 2)

監督 ジェームズ・ワン 主演 ヴェラ・ファーミガ
2016年 カナダ/アメリカ映画 134分 ホラー 採点★★★★

実話ベースの映画に出てくる幽霊って、満ち足りた大富豪の家なんかじゃなく、経済的問題など家庭内に大きい厄介事を抱えている家に現れがちですよねぇ。ただでさえ問題山積なのに幽霊まで出てきちゃって、なんかもう泣きっ面に蜂って感じ。ただ、その体験談で一家が一儲けもしてたりするんで、もしかするとそんな幽霊って、困窮している一家を助けるために「どれどれ、いっちょ一肌脱いだるか!」的に出てきてるんですかねぇ。そう考えると、なんか優しい世界。その方法は間違ってる気もしますが

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【ストーリー】
アミティヴィル事件を調査したことで一躍脚光を浴びる一方で、世間から激しいバッシングも受けてしまう、心霊研究家のウォーレン夫妻。強力な悪魔の存在を身近に感じると同時に、夫エドの死の予兆を感じ取った妻のロレインは、今後心霊事件に深入りしすぎないことを誓う。そんな夫妻のもとに、英国で発生したポルターガイスト事件の調査依頼が舞い込む。短期間の調査だけで終わらせるつもりのウォーレン夫妻だったが…。

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実在する心霊研究科ウォーレン夫妻の体験をベースにした、『死霊館』の第二弾。今回は、子供時代に読んだ怪奇事件本にはもれなく載っていたメジャーなポルターガイスト案件、“エンフィールド事件”にちょろりと一噛みした時の体験がベースに。前作に引き続き『ワイルド・スピード SKY MISSION』のジェームズ・ワンが監督を手掛け、主演には相変わらず惚れ惚れしてしまう美しさに目を奪われる『ジャッジ 裁かれる判事』のヴェラ・ファーミガと、『インシディアス 第2章』のパトリック・ウィルソンの、なんか片田舎の元ジョックスカップルみたいなお似合いコンビが。また、共演陣には強面になっててビックリした『ボーン・アイデンティティー』のフランカ・ポテンテも。タイプの顔だったのに。
前作から全ての面において進化を果たした本作。ジェームズ・ワンによる、往年のオカルト映画を彷彿させる静の恐怖演出と、唐突に尼僧姿のマリリン・マンソンみたいなのが飛び出てくる動の恐怖演出のコントラストや、その配分バランスに至ってはもはや達人芸の域に。クライマックスでのアクション映画ばりのテンションも、唐突さや不自然さを全く感じさせない、計算された演出バランスの妙を。
夫婦や家族の絆を描く感情描写はより深みを増し、怖がらせ一辺倒の映画では味わえない人間ドラマ的側面を作品に与えていたのも素晴らしかった本作。また、超常現象を全て鵜吞みにするのではなく、もともとの事件にもある胡散臭さを隠していないってのも好印象。日本のTVでの紹介され話題を呼んだ、ウォーレン夫妻がアミティヴィル事件調査の際に撮影したという、2階の部屋から顔を出す少年の霊や、少女がベッドで楽し気に飛び跳ねてるようにしか見えないポルターガイスト写真などの再現性の高さも、好き者としては堪らなかった一本で。

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こっから先は映画と全く関係ないんですけど、2週間ほど前の日曜日にあった出来事を。
夜の11時近くに仕事が終わり、終電までまだ時間があったんで一服でもしようと、ビルの10階にある喫煙所に向かった私。時間も遅く日曜なので人気の全くないフロアを進み、フロアの一番奥にある喫煙所に行くとドアが開かない。ドアに掛けられてたパネルを見ると、“喫煙所の利用は22時まで”と。
仕方がないんで帰ろうとエレベーターに乗り、1階のボタンを押す。「ドアが閉まります」のアナウンスが流れる。でも、ドアが閉まらない。「あぁ、日曜日はセキュリティパスをかざさなきゃダメだったんだ!」と、パスをセンサーに当て、「ピッ!」と音がした後、1階のボタンを押し、また「ドアが閉まります」のアナウンス。でも閉まらない。1階のボタンは光ってるし、1階に行く分に関してはそもそもセキュリティパスが必要ないことを思い出す。
「なんだい?故障かい?」と頭を捻ってると、今しがた自分が向かっていた喫煙所の方から足音がする。フロアに敷かれたカーペットが擦れる音。「まだ誰か居たのかなぁ?」と思うも、喫煙所は締め切られているし、他のオフィスには人気がなかった。非常階段からこのフロアに来ることも可能だが、私がここに来てからドアが開閉する音は聞いてない。聞こえるのはエアコンの微かな音と、もう4度目になる「ドアが閉まります」のアナウンス、そしてこちらに向かっている足音のみ。
流石に嫌な感じがしてきて、再度パスカードをかざし、閉まるボタンを連打。足音がエレベーターホールに向かう曲がり角まで近づいて来た気がしたその瞬間、5度目のアナウンスと共にようやくドアが閉まり、1階に到着。そりゃぁもう、振り返らず帰りましたさ。
結局あれがなんだったのかいまだに分かりませんし、転職したての会社でこんな話して“話を盛るヤツ”とか“注目集めたいヤツ”なんて思われたくないんで、誰にも話しておらず。でもなんかモヤモヤするんで、映画レビューの流れを無視して書いちゃいましたよ。

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自宅で呪われるだけの簡単なお仕事です

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2016年09月29日

処刑教室 (Class of 1984)

監督 マーク・L・レスター 主演 ペリー・キング
1982年 カナダ映画 98分 サスペンス 採点★★★

“校内暴力”やら“腐ったミカン”なる言葉が定着した頃、私の地元の中学校も相当荒れてたようでしたねぇ。如何せん中学から地元を離れた学校に通っていたので、たまに会う地元の同級生から聞いた話でしかなかったんですけど、先生を取り囲んで暴力をふるったり、授業中にバットを振り回しアレコレ破壊したりしてると、驚かされる話を聞かされたもので。私が通ってた学校は、入学前の説明会の段階で「言って分からないなら手が出ますよ♪」と断言してた所でしたし、実際手に負えない生徒は先生が取り囲み、棒持って暴れてたのも先生でしたし。地元の知人の話を聞いてると、「悪いことしてるのに、なんで罰せられないんだろー?」と素直に疑問に思ったもので。

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【ストーリー】
校内暴力が荒れ狂うリンカーン高校にやって来た新任の音楽教師ノリスは、赴任初日からステッグマン率いる不良グループと対立する。ステッグマンの売った麻薬が原因で生徒の一人が死んだことを機に、ノリスは彼らの犯罪の証拠を掴もうと躍起になるが、ステッグマンらの行動はエスカレートしていく。やがて、彼らの標的はノリスの身重の妻に向けられ…。

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『フライトナイト』のトム・ホランドによる原案を、『コマンドー』のマーク・L・レスターが彼と共に脚本を手掛け映像化した、何気に近未来を舞台にするバイオレンス・サスペンス・アクション。“アメリカの高校”のイメージの一つを、私の脳裏にしっかりと刻み込んだカナダ映画
加減なき暴力に晒され追い詰められたインテリが最後に大爆発を起こす、所謂『わらの犬』タイプの本作。ただ、そこにメッセージなり教訓なりを込めて観客に考えさせるってのよりも、クライマックスの爆発にカタルシスを味わったり、「怖いわねぇ」と思わせたりするだけに留めている、さすが大雑把映画王マーク・L・レスターってのを堪能できる一本。工作室や授業用ガレージを利用したアクションの数々に、台所におけるライバック、ホームセンターにおけるマッコールみたいに、“学校内じゃ無敵!”な感じのユニークさも見どころ。不良グループの腕を切り落としたり、丸焦げにしたりとサービスショットが多めなのも素敵。

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展開が大味なのは否めないんですけど、未成年ゆえに対抗策に困る大人とそれを利用する若者、ステッグマンの複雑な精神構造とそれを生み出している家庭環境、レイプ中のステッグマンのアホ面、スッキリはさせないエンディングなど、本作を独特なものに仕上げる要素の数々が何気に効果を上げていた本作。その結果、初めて鑑賞してから何十年も経っているのに、不良グループがアンドロイド教師と死闘を繰り広げるビックリ続編『クラス・オブ・1999』と共に頭の中に残り続けるトラウマ的一本に。
“真面目な教師”っての一目見て伝わってくるペリー・キングを筆頭に、その顔立ちから当時“スクリーン”なんかで一種のアイドル的な人気を博すが、その後役者としては鳴かず飛ばずで一線を退くも、現在はTV作品を中心に手掛ける名監督として活躍するステッグマン役のティモシー・ヴァン・パタンや、本作で再び注目を浴びた“疲れ果てた大人”を演じさせたら右に出る者はいないロディ・マクドウォール、ポッチャリないじめられっ子を可愛らしく演じていた『さまよう魂たち』のマイケル・J・フォックスといった顔触れと、アリス・クーパーによるテーマ曲も非常に印象的な一本で。
あ、余談なんですけど、TSUTAYAのレンタルDVDのバーコード上時間表記が“72分”となってますが、本編はしっかり98分ありますのでご安心を。TSUTAYAさん、間違ってますよ

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何があっても学校には毎日行く

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2016年08月29日

SPY/スパイ (Spy)

監督 ポール・フェイグ 主演 メリッサ・マッカーシー
2015年 アメリカ映画 119分 コメディ 採点★★★★

巷での評判がすこぶる良いので大きな声では言えませんけど、一連のダニエル・クレイグ版ジェームズ・ボンドをさっぱり楽しめなかった私。良く出来たスパイアクションのはずなのに、観る度に別のスパイ映画を欲してきてしまうんですよねぇ。記憶の中に眠る、かつての楽しかったスパイ映画を。案外そういう人も少なくないのか、本家ボンドが気合を入れた作品を作り出した恩恵なのか、最近楽しいスパイ映画ってのが増えてきて嬉しい限りではありますけど。

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【ストーリー】
CIAの凄腕スパイであるファインを、息の合ったコンビネーションで遠く離れたオフィスからサポートする内勤の分析官スーザン。しかし、小型核爆弾の行方を追ってる最中、ファインはその行方を知る女性レイナに射殺されてしまう。レイナが他のエージェントの素性も知り尽くしていることからスパイを送れないCIAは、本人の希望もあり素性の割れてないスーザンを送り込む。なんとかレイナに近づこうとするスパイ初心者のスーザンだが…。

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おデブな内勤分析官がスパイとなって小型核爆弾の行方を追う様を描いたアクション・コメディ。リメイク版の『ゴーストバスターズ』が控えている、“フリークス学園”組のポール・フェイグが製作・監督・脚本を。
もう最初に言っちゃうけど、なんでこんなに面白いのが未公開なんだい?本国では今一番ノってるメリッサ・マッカーシーの日本での知名度に不安があるとしても、脇を固めているのがジェイソン・ステイサムにジュード・ロウといったメジャー級だし、本国のみならずアジア諸国でもスマッシュヒットを記録してるのに、日本では未公開。公開時期の2015年5月の状況を見てみても、決して洋画が大豊作とはいい難い状況なのにだ。なんだい?日本人はそんなに笑っちゃいけないのかい?
そんな愚痴から始めたくなるほど楽しめた本作。オープニング曲を含めベタベタのスパイ映画を再現しているが決して悪ふざけで済ませず、筋の通ったちゃんとしたスパイ映画としての土台が作り上げられており、その上でいちいち面白い笑いがふんだんに放り込まれている、アクション・コメディのお手本のような一本。しかも不慣れなスパイ業にドタバタする様を描くだけではなく、自分に自信が持てないため表舞台に立とうとしなかった女性が勇気を奮って一歩踏み出す様や、それを支える友情、男根主義的社会や性差別、容姿による差別に対し笑いと度胸を武器に立ち向かう様など、テーマも浮つかずにどっしりと芯を通しているのも立派。それもお高くとまらず、ちゃんと下品に
ちょっと大袈裟かもしれないんですけど、アメリカ産バディアクション映画に対する愛たっぷりに描き出したイギリス映画『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!』に対する、アメリカからの返答なんじゃないのかと思えてくるほど楽しめた一本で。

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主人公のスーザンに扮したのは、クリステン・ウィグと共にコメディ界の中心に立ってる印象のある『ヴィンセントが教えてくれたこと』のメリッサ・マッカーシー。まだ追い掛けきれていないので(『タミー/Tammy』が観てぇのにDVDすら出てないし)本来の芸風は把握していないんですけど、その特徴的過ぎる体型を武器にした笑いにばかり目が行きがちだが、状況や扮装によってコロコロと変わるキャラを巧みに乗りこなす器用さに驚かされたりも。
一方、暴れん坊スパイに扮したのは『ワイルド・スピード SKY MISSION』のジェイソン・ステイサム。アクション俳優のイメージが強いせいか、なにやら彼のコメディ演技に驚いた人が多かったそうなんですけど、基本的にはいつものジェイソン・ステイサム。いつものジェイソン・ステイサムを面白くなる状況下に置いてるだけと言うか、『ミーン・マシーン』や『アドレナリン』を例に出すまでもなく、ジェイソン・ステイサムはいつも面白いんですよ。
また、従来型ハンサムスパイを喜々として演じていた『グランド・ブダペスト・ホテル』のジュード・ロウや、悪女感よりもガリガリで老け込んでる方が抜きん出ちゃってた『インターンシップ』のローズ・バーンも好演。
その他、メリッサ・マッカーシーとの凸凹コンビネーションがハマってたミランダ・ハート、女性版J・K・シモンズみたいな役柄がホントに似合う『Re:LIFE〜リライフ〜』のアリソン・ジャネイ、ジェシカ・チャフィンなどメリッサ・マッカーシーとの共演が多い顔触れや、恥ずかしながらその存在を初めて知ったんですけど、まるでジョン・バリーが作曲したかのようなアイビー・レバンによるテーマ曲も非常に印象的だった一本で。

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スパイにだけは見えないって点では合格

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2016年05月25日

セブン・サイコパス (Seven Psychopaths)

監督 マーティン・マクドナー コリン・ファレル
2012年 イギリス映画 110分 コメディ 採点★★★★

体験談とか思いついた話とか、自分の中では「面白い!」と思った話でも他者に伝えようとするとその面白さが全然伝わらなかったりしますよねぇ。自分だけ楽しそうに爆笑しながら話してるのに、聞き手は真顔って光景もよく見ますし。このサブタレも「この映画面白かったよ!」と伝えられればいいなぁと思いつつ細々と続けてますけど、自分で読み返してみると往々にして書いてる本人にも伝わってないし。なんかもう、難しいなぁ。

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【ストーリー】
“セブン・サイコパス”とタイトルだけ決まってる脚本に取り掛かるも、ネタが何も浮かばないまま締切日を間近に控えてしまった脚本家のマーティ。そんな中、ハンスという名の老人と共に愛犬誘拐詐欺を行っていた友人のビリーが、マフィアの愛犬を誘拐してしまい、巻き起こった大騒動に巻き込まれてしまう。図らずも映画のネタとして格好のサイコパスに囲まれたマーティは…。

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ヒットマンズ・レクイエム』のマーティン・マクドナーが脚本と監督を務めた、結構血生臭い描写も豊富なクライム・コメディ。これもまた、この面白さを伝えれる気がさっぱりしない一本
当たり前の話ではあるんですが、映画って完成している脚本(撮りながら書いてるケースもありますが)を基に撮影し、完成品を観客である私らが鑑賞する所謂“過去のもの”であって“架空のもの”なんですけど、本作にはその出来上がったものを観ているって感覚がない不思議な本作。脚本家が自身の経験や聞いた話を脚本にするって物語構造がそうさせているのか、なんか上手く言えないんですけど、目の前で映画が同時進行的に作られているような感じ。特に登場人物がこっちに語り掛けてくる第四の壁を破るような描写はないんですが、受ける印象は一緒。
また、これも当然脚本の時点で織り込み済みのはずなのに、まるで登場人物が映画を乗っ取って自由にコントロールし始めたかのような錯覚を味わえるのも本作の魅力。脚本が力強過ぎて映像で語り切れてない感もありましたが、映画を“観ている”って感覚よりも、変化していく様やジワジワと現実と虚構の境が滲んでいく様を“目撃している”ような独特の味わい、幾層にも重なり合う構成を持つ巧みな脚本、自由奔放で魅力的なキャラクターに、最後はとりあえず銃撃戦を入れておけばOKなハリウッドに対するほど良い批判と、隅々楽しむことができた一本で。

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マーティに扮したのは、『ヒットマンズ・レクイエム』でもマーティン・マクドナーと組んでいる『トータル・リコール』のコリン・ファレル。サイコパスに囲まれ散々振り回される、物語の中心に居ながら観客同様観察者にいるような主人公を、時計でいうところの8時20分な困り眉で熱演。関係ないですけど、役柄の“飲んだくれのアイルランド人”って“マグロ好きの日本人”みたいな感じ?
また、一人で大きな物語を背負うだけではなく、ちょい『トゥルー・ロマンス』でのデニス・ホッパーを思い起こさせる悪との対峙シーン(あっちでは悪側でしたねぇ)でシビレるカッコ良さも披露した『ザ・バッド』のクリストファー・ウォーケン、怖さと面白さが絶妙に混じってた『ディフェンドー 闇の仕事人』のウディ・ハレルソンらも素晴らしかったんですが、やはり本作の目玉は『ポルターガイスト』のサム・ロックウェルに尽きるかと。マーティのことが好き過ぎて彼のためにアレコレ頑張るも、如何せんサイコパスなんで概ね迷惑という可愛らしい役柄を狂気と可愛げとちょっとした怖さに哀愁を織り交ぜ熱演。にしても、サム・ロックウェルが輝いてる映画って大体面白いですよねぇ。
その他、シリアルキラーがパタッと犯行を止めた原因となった『ザ・ウォーカー』のトム・ウェイツや、『ロボコップ』のアビー・コーニッシュ、劇中語られる“女性の描き方が雑”ってのを体現したかのような扱いだった『スパイ・レジェンド』のオルガ・キュリレンコ、初っ端に出てくる『ラストデイズ』のマイケル・ピットら、メイン以外にも非常に良い顔触れが揃ってたのも嬉しかった一本で。

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“筆が走る”ってのを映像化するとこんな感じ?

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2016年05月17日

シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ (Captain America: Civil War)

監督 アンソニー・ルッソ/ジョー・ルッソ 主演 クリス・エヴァンス
2016年 アメリカ/ドイツ映画 147分 アクション 採点★★★★

チーム・キャプテン・アメリカとチーム・アイアンマン。主義主張はそれぞれ一長一短なので置いておくとして、自分だったらどっちのチームに参加したいかなぁ?リーダーで比べてみると、真面目で良い人だけど融通が効かなそうで面白味に少々欠けるキャプテンよりは、アクが強くて腹も立ちそうだけどアイアンマンの方が魅力的かなぁ。チームメイトを見てみると、人間味に溢れててユーモアもありそうだからキャプテンチームだな。ヴィジョンと遊んでも楽しくなさそうですし。女性陣となると、うーん…迷うなぁ。ここまで一勝一敗一分かぁ。ホント、どっちもどっちだなぁ………あっ!チーム・アイアンマンに入れば、メイおばさんとお知り合いになれるかも!あのぅ、さっきは“どっちもどっち”みたいなこと言ってスイマセンでした。やっぱアイアンマンっすよね!トニーさん、最高っす!

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【ストーリー】
世界の危機を救ってきたアベンジャーズだが、その活動によって一般市民へ甚大な被害も被らせていた。やがてその強大な力を危険視する声が高まり、彼らを国連の監視下に置く法案が議論される。アベンジャーズを存続させるためそれに従う考えを示したアイアンマンだったが、キャプテン・アメリカは信念を貫き反対。アベンジャーズは二分されてしまう。そんな中、法案の調印式の会場となったウィーンで爆破テロが発生。容疑者として、行方をくらませていたキャプテン・アメリカの旧友バッキーが手配される。この事件の対応により、アベンジャーズ内の対立構造はより深刻化してしまい…。

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アベンジャーズ同士の対立と対決を描いた、“キャプテン・アメリカ”シリーズ第3弾。メガホンを握るのは、前作『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』から引き続いて、『トラブル・マリッジ カレと私とデュプリーの場合』のアンソニー&ジョー・ルッソ兄弟が。主演はもちろん『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』のクリス・エヴァンスと、『ジャッジ 裁かれる判事』のロバート・ダウニー・Jr。
目的と志を共有することでひとつとなっていたが、もともとまとまっているのが奇跡的でもあったアベンジャーズの中でも特に正反対の存在であったキャプテン・アメリカとアイアンマンの対立を、マーベル映画史上最長のランニングタイムで描いた本作。マーベル映画お馴染みであるエンドクレジット後のオマケ映像でも触れられる新生スパイダーマンの番宣的意味合いを含めながらも、オールスター映画にありがちな見せ場のオンパレードに走らず、見せ場と悲劇的な過去が生み出した計算され尽くした復讐劇を描くドラマのバランスを絶妙に保ちながら、この長尺を飽きさせないで最後まで引っ張る構成力がまず見事。また、アクション描写も無重力&物理学無視の迫力重視のものに走るのではなく、映画的誇張を巧みに盛り込みながらドッシリと地に足付いたしっかりと作り込まれた演出になってるのも好印象。
火力だけを見ればアイアンマンを筆頭に、ウォーマシンにヴィジョンまでいるチーム・アイアンマンが圧勝しそうな感じだが、個々のキャラクターの特性を大切にするマーベルらしくなんだかんだとパワーバランスが保てているチーム構成も素晴らしい。また、ヒーロー同士の対決を“夢の対決”にせず、そうならざるを得ない悲痛さをしっかりと描いているのも良し。重苦しいままでいるのではなく、ポイントでユーモアを忘れないマーベルらしさも流石。

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先ごろ公開された『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』同様、正義の行動が生んでしまった犠牲ってのを発端としているが、もちろんそれは物語に影を落とし続けてはいるものの、“正義とは?”ってのを禅問答の如くこねくり回すのではなく、「これから気をつけます!」的な切り返しで本筋に入っていくのもある種清々しかった本作。その辺はDCに任せとけってことなのか、本作のベースとなっている同名のコミックシリーズや、映画だと『X-メン』でも描かれていたヒーロー(ミュータント)登録法案へと繋がりかねない国際連合の協定の是非を中心に描かれている。
一般市民からすれば強大な力を持つヒーローらは、自分が困っている時か全く害の及ばない所で活躍してくれる分には問題ないが平時においては畏怖する存在でもあるので、何処にどんな奴が居るのか明確にしておきたいってのも分かる。しかし、一方のヒーロー側からすればその力のせいで一般の市民であれば当然のように得れる権利を剥奪され、また多くのミュータントがそうであったように差別や迫害から身を守るために隠れることや身分を偽ることが出来なくなってしまう問題も。別の星からフラっとやって来て用が済んだら母星に気軽に帰れるソーが地球人と同じ権利を得れないってのは100歩譲って分かるとしても、人間として生まれながらも、他者と違うってだけで人間として扱われないってのは差別以外の何物でもないし、国家によってその力をいいように使われるのは奴隷と変わらない。
もちろん本作ではそこまで掘り下げているわけではなくあくまで理念の対立ってところで留まっているのだが、南北戦争の意味を持つ原作コミックからタイトルだけを持ってくるのではなく、そこに行きついてしまう危険性をしっかりと匂わせると同時に、マイノリティ目線ってのを忘れることがないマーベルらしさがまざまざと表れてたってのが見事だった一本で。

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自分たちの判断で行動することを望むキャプテン・アメリカと、国際理解を得るためにも国連管理下に置かれることは已む無しと考えるアイアンマン。平和のために戦う決意とアベンジャーズの存続という目的は同じだが、理念とプロセスが相容れない為に対立してしまう二人。それだけの問題であれば妥協案も見つかりそうなものだが互いの私情や事情が背後にある分、そう易々とはいかないってのが難しいところ。正解・不正解で答えが導き出されるような単純な問題ではなく、またそのどちらかに肩入れしているわけでもない本作は、観客にも自らの政治的な傾向を確認するが如くどちらのチームに身を置くかを促しているようにも。
国家の思惑に左右されず自らの信念と判断での行動を望むキャプテン・アメリカ。極端な例えではあるんですが、大義なき戦争の代名詞でもあるイラク戦争に「NO!」を突き付けるのがキャプテン。私も若ければ迷うことなくキャプテン側を選ぶ。しかしながら、少数および個人の判断のみで強大な力を行使することに対しては大きな危険性を感じざるを得ない。信念は時に冷静な判断を奪いかねないし、独善や排他に繋がりかねない。これまた極端な例であるのだが、自ら信じる正義の実現のために無断で他国に侵犯し、その国の国民である“悪党”を成敗する行動というのは国際社会から見ればテロ行為と取られかねないのではないのかと。
一方のアイアンマンは、先の例えに則ればイラク戦争に対し「YES!」という立場になる。他国と協調路線を歩むことはアベンジャーズとしての理念や大義を失う危険性もあるし、大国の思惑通りに動く大量破壊兵器の機能を持った傀儡集団もしくはお飾りに成り下がりかねない。また、行動を起こすに際し多くのプロセスや認可が必要になってくるので、迅速さは間違いなく失われる。そういったデメリットや危険性を孕んでいるが、決定権を持つ組織に残るということは、主張をする機会及び理解や改善を得る可能性が僅かながらも残っているということでもある。
キャプテン・アメリカとアイアンマン。レビューの冒頭ではふざけ半分でアイアンマンに票を投じたが、真面目に考えてみても私はアイアンマン側に一票を。まぁ、“メイおばさん”という私情と事情が絡んでいるのは言わずもがなですが。

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ここでいつも通り主要キャストについて書いちゃうと膨大な量となってしまうので、前作『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』と『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』組は大きく割愛させてもらって、新参組と印象的なキャストを中心に。書いたところで、ただ名前が並ぶ上にキャプテン・アメリカに対して“超人的な真面目さ!”とか前とあまり変わりのないことしか書けなさそうですし。
となると、真っ先に頭に浮かぶのがバッキーに扮したセバスチャン・スタン。前作や『アントマン』にも出ていたが、今回はなんともまぁ苛立たしい役割。洗脳下での行動なので責任がないとはいえ、自らの手によって引き起こした過去と正面から向き合うわけでも行動を起こすわけでもなく逃げ隠れに終始し、純然たる被害者であるアイアンマンの怒りが爆発する終盤になるとただただキャプテン・アメリカの後ろに隠れてるだけだし、仕舞いには全部から逃げて寝ちゃう。もちろん事情は理解できるし、ただ逃げてるだけじゃないのも分かるんですが、「あんたも被害者でしょうけど、私も被害者なんです!」って発展性の見込めない議論をしているような感じは、あれだけの混乱を生み出した張本人の行動としてはやっぱりイヤだったなぁと。なんか、一昔前の映画の配慮に欠けたヒロインみたい。
また、アベンジャーズの面々の間に立っている違和感が良い方向に働いていたってか、急にジャイアントマン化してビックリした『40男のバージンロード』のポール・ラッドや、ピーター・パーカーの童貞臭さが良く出てた『わたしは生きていける』のトム・ホランド、その財力や権力の強大さではトニー・スタークに匹敵するブラックパンサーに扮したチャドウィック・ボーズマン、復讐の不毛さを描きながらもその悲劇的な過去と見事過ぎる計画性には共感せざるを得ないジモ大佐に扮した『ラッシュ/プライドと友情』のダニエル・ブリュール、エンドクレジットで流れるキャラの特徴を捉えたシルエットがネクタイだった『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』のマーティン・フリーマン、考えてみたら初登場だったマリア・スタークに扮した『ワイルドカード』のホープ・デイヴィスに、『インクレディブル・ハルク』以来の登板となるウィリアム・ハートらも印象的だった本作。
ただ、やっぱり個人的な目玉は『Re:LIFE〜リライフ〜』のマリサ・トメイに尽きる。サリー・フィールドにしろローズマリー・ハリスにしろ、“メイおばさん”というとお婆さんをイメージしてしまうんですけど、それがマリサ・トメイである嬉しい驚きたるや。こんな叔母が家で待ってるんだったら、全身タイツで糸飛ばしてる場合じゃないよなぁ。それとも、そんなモヤモヤが外で白い糸を飛ばさせてるのか。ちょっと興味が湧かなかった新生スパイダーマン“Spider-Man: Homecoming”ですけど、俄然そそられてきたなぁと。

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まぁ、私も極限まで目を背けないと次の一歩が踏み出せないタイプではありますが

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2016年05月08日

スター・ウォーズ/フォースの覚醒 (Star Wars: Episode VII - The Force Awakens)

監督 J・J・エイブラムス 主演 ハリソン・フォード
2015年 アメリカ映画 136分 SF 採点★★★

特別な愛や“信仰”ってのをスター・ウォーズに関して持ってない私ではあるんですが、円卓の騎士の物語や指輪物語など普遍性の高い物語をSFの中に巧みに盛り込み、『スター・ウォーズ』でのあたかも壮大な物語のごく一部であるかのような“第四章”から始まるハッタリ、そして『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』における「私がお前の父親だー!」という大どんでん返しによってスター・ウォーズを新しい神話にしたジョージ・ルーカスの手腕というのは、確かに映画史に燦然と輝く見事なものであるなぁと。ただその一方で、“特別編”やらフォーマットが変わる度に加えられる改悪、そして映像作家としての勘を取り戻せないまま作り上げたプリクエル三部作と、まるで私物かの如く自ら作り上げた神話を汚し続けたルーカスの手からスター・ウォーズがようやく解き放たれたってのは、信者ではなくただ単純に面白い作品を待ちわびているだけの私のような観客にとっては非常に嬉しい出来事でも。

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【ストーリー】
帝国の崩壊から30年、残党により結成された“ファースト・オーダー”は消息を絶っている最後のジェダイ、ルーク・スカイウォーカーの行方を追っていた。一方、そのカギを握るレジスタンスのパイロットとドロイド“BB-8”は捕らわれてしまうが、ファースト・オーダーのやり方に疑問を感じていたストームトルーパーのフィンの手助けで脱出に成功。そして、砂漠の惑星ジャクーで孤独な少女レイと出会い…。

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しかし、それがよりによってSUPER 8/スーパーエイト』のJ・J・エイブラムスの手に渡ってしまうとは。
確かに『M:i:III』にしろ『スター・トレック』にしろ、立ち行かなくなってきたシリーズ作を再起動させ“それっぽい”作品に仕上げる手腕を持ち合せていますし、実力者に好かれ人と金を集める政治力も相当なもののようなんですが、出来あがる作品は“それっぽい”だけでザックリと楽しめる以上のものはなし。なんと言うか、こだわりや愛が感じられない。「実は昔から○○が大好きでー」とか言う割に、「中でもエンタープライズ号とダースベイダーが好きです!」みたいな。大体みんなそうだよ

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ただまぁ、そのお馴染みのザックリ感がある程度功を奏していたのも事実。下手に新しいことに挑戦せず、馴染みがあり最も愛されている『スター・ウォーズ』の物語をその主人公の子供たちの世代に置き換えたかのような展開に、これもお馴染みの“親子の物語”ってのを中心に据え、お馴染みのキャラやメカが随所に出てくる、この安心して楽しめる作りは「あぁ、今スター・ウォーズを観ているんだな」という実感と充実感に溢れている。リアルタイムでシリーズを追い続けてきた身としてはやはりハン・ソロは迎える運命は衝撃的だし、次回作へと期待を引っ張る作りも上手い。プリクエル三部作という苦行を乗り越えたってのを差し引いても、ようやくスター・ウォーズらしいものを目にすることが出来た喜びってのが生み出されてはいた。

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しかしながら、ザックリとしているだけあって粗も目立つ。
一回の充電に恒星一個分のエネルギーを使う、旧デス・スターを遥かに凌ぐ破壊力を持つ惑星兵器が出てくるも、自由自在には動けそうにない天然惑星とのハイブリッド兵器っぽいから「使い捨てなのかい?」って疑問も浮かびましたが、それはまぁロマンの問題だからここでは不問。たまたま近くにミレニアム・ファルコン号が落ちてて、たまたまその近くにそれを探してたハン・ソロが居たってのも。
問題なのは、タイトルにもテーマにもなってる“ジェダイ”と“フォース”の扱いの雑さ。ジェダイの騎士しか持てないはずのライトセーバーを、ファースト・オーダーからイモ引いて逃げてきたただの人間フィンに手渡した揚句に、そいつが普通に武器として使用し、尚且つダース・ベイダー的ポジションにいるはずのカイロ・レンとそこそこ戦えちゃうってのはどうなんだいと。また、血筋が良いとは言えアナキンの息子ルークですらそれなりの修業を積んだってのに、ルークの娘レイはさくさくフォースを使いこなしちゃうってのもどうだと。フォースってのは代々濃くなっていくもんなんでしょうか?

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さっきも書きましたが、クローン兵団じゃないにしても幼少期から破壊と殺戮のみを教育されてきたはずのフィンが、最初の戦闘で「これは間違ってる!」とイモ引いちゃうのもなんともかんとも。
そして何よりも、カイロ・レンに悪のカリスマ性を全く感じられないってのが致命的。“まだ若い”ってのを推した結果なんでしょうけど、出番を重ねるごとにどんどん威厳を失っていき、最終的には駄々っ子のように見えてきてしまうのは痛恨の極み。マスクを取ると、なんかヌルンとした若干苛立たしい顔が出てくるのも然り。まぁ、三部作を通して立派な黒のカリスマに成長していくんであろうと期待はしてますが。

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とまぁ不満も多かった本作ではありましたが、『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』のハリソン・フォードや、『ファンボーイズ』のキャリー・フィッシャー、『キングスマン』のマーク・ハミルといったオリジナルキャストや、C-3POにR2-D2、老いなのか夏毛なのかどことなく毛並みがスッキリとしたチューバッカらオリジナルキャラが勢揃いしてるのはやはり嬉しい限り。
そんなベテラン勢を見てしまうと若手のみの場面が途端に学芸会ぽくなってしまう難点こそありましたが、どこかキーラ・ナイトレイ的なじゃじゃ馬さが魅力的だったデイジー・リドリーや、『スケルトン・ツインズ 幸せな人生のはじめ方』のビル・ヘイダーも声のコンサルタントを行った新ドロイド“BB-8”の、その文字まんまな丸っこい可愛らしさがその辺を存分にフォロー。

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また、『ドライヴ』のオスカー・アイザックや、『ロビン・フッド』のマックス・フォン・シドー、せっかく動けるのにただ出てくるだけでもったいなかったザ・レイド GOKUDO』のイコ・ウワイス&ヤヤン・ルヒアン、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』のアンディ・サーキスに、『しあわせはどこにある』のサイモン・ペッグといった、人集めの上手いJ・J・エイブラムスらしい顔触れが揃ってるのも魅力。レイのフォースでいい様に扱われるストームトルーパー役として、『007 スペクター』のダニエル・クレイグが潜んでたりもしてましたし。
こんな感じで不満も多く書きましたが、まだまだ新シリーズは始まったばかり。決して悪い滑り出しでもないですし、先が気になる展開が多し。また、製作に回ると良い仕事をするJ・J・エイブラムスは次回作では製作に専念するようですので、期待をしながら次を楽しみにしようかなぁと。

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砂漠の惑星→氷の惑星→緑の惑星って流れになるんでしょうかねぇ?

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タグ:★★★ SF
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2016年05月03日

SEXテープ (Sex Tape)

監督 ジェイク・カスダン 主演 キャメロン・ディアス
2014年 アメリカ映画 94分 コメディ 採点★★

セックスレス対策なのかは知りませんけど、“ヤル日”ってのを決めてる方々も少なくないとか。なんか、それはヤダなぁ。スケジュールに組まれちゃうと、途端に楽しくなくなってくる感じがしちゃって萎えますし。自発的にするお手伝いはそこそこ楽しいけど、言われてからするお手伝いは苦痛なだけみたいな。

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【ストーリー】
仕事と子育てに充実した日々を送る一方で、いつの間にかセックスレスに陥っていたアニーとジェイの夫婦は、打開策として二人のセックスを撮影してみることに。しかし、その動画がジェイのiPadと同期された知人らのiPadでも閲覧可能となってしまい・・・。

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娯楽映画のなんたるかを知り尽くしたローレンス・カスダンを父に持ち、ジャド・アパトーのもとで『ウォーク・ハード ロックへの階段』という傑作を作り上げたジェイク・カスダンが監督を務め、『寝取られ男のラブ♂バカンス』の黄金コンビであるニコラス・ストーラーと主演も務めるジェイソン・シーゲルが脚本に携わっているんだから、評判の悪さは耳に入っていましたがエロコメ好きの私なんで十分楽しめると思ってたのに………これがビックリするほど楽しめない
恋人同士が夫と妻の関係になり、やがてパパとママの関係になる。題材としては中年期の変化や危機を描くお馴染みのものに、“H動画流出”って変化球を加えた本作。普通に考えればそこそこ面白くなりそうなもんなんですけど、ただただ「セックスしよー!セックスしよー!」と喚いてるだけの夫婦の姿を延々見せつけられ、ようやく本題に入ったと思えば流出と言っても非常に限定的なものなので、適当に見つくろった理由で事態を収拾できそうなものを支離滅裂な言動と展開で無理やり大事にし、いい加減こっちもその物語に付き合うのが苦痛になって来た頃になって唐突に“良い話”でまとめようとする、ただただ苦笑いしか浮かばない90分。敢えて笑いをスカさせる狙いがあるのなら救いがあるんですけど、どうもそうじゃないってのも救いようなし。

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ナイト&デイ』のキャメロン・ディアスとの共演に気合が入り過ぎちゃったのか、ジェイソン・シーゲルにいつもの自然体ならではの面白さがなく、どこか全力で台詞を“読んでる”感じがしたってたのも痛恨だった本作。良い人さは伝わってくるんですけど、絶妙なだらしなさやそこから来る苛立たしさ、でもやっぱり許せちゃうっていう本来の持ち味が活かされてなかったなぁと。
ただまぁ、もちろんバストトップは見せないもののキャメロンはスッポンポンで奮闘してくれてましたし、若づくりのお爺ちゃんみたいになってて驚いた、自身もセックステープ絡みで散々な目に遭った経験を持つ『ウソから始まる恋と仕事の成功術』のロブ・ロウや、ノンクレジットでの出演となる『ザ・マペッツ』のジャック・ブラック、『オフロでGO!!!!! タイムマシンはジェット式』のロブ・コードリーに、『伝説のロックスター再生計画!』のエリー・ケンパーといった、ちょっと得した気分になれる顔触れが揃ってたんでこれでも採点は甘めに。

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この映画自体が消し去りたい代物なのでは

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posted by たお at 12:17 | Comment(2) | TrackBack(0) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月28日

死の恋人ニーナ (Nina Forever)

監督 クリス・ブレイン/ベン・ブレイン 主演 アビゲイル・ハーディンガム
2015年 イギリス映画 98分 ホラー 採点★★★

時に恋愛なんかでそうなんですけど、“忘れたい思い出”ってのは“忘れたくない思い出”と密接に絡み合ってるので、頑張って忘れようにも思い出させるきっかけがアチコチにあり過ぎてそうもいかないんですよねぇ。何をしてても思い出す。新しい恋でも始めて無理やり思い出を上書きするのもいいですけど、思い出す度に大声を上げたくなる衝動と時間を掛けて付き合って、徐々に薄れていくのを待つのが一番確実だったりも。

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【ストーリー】
大学で救急救命士の勉強をするホリーは、バイト先のスーパーで恋人のニーナを事故で失ったロブと出会う。その悲しみから立ち直れない暗くナイーヴなロブに惹かれたホリーは彼を元気づけるために近付き、やがて二人はベッドを共にする。しかしそんな時、突如ベッドの中から血塗れのニーナが現れ・・・。

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劇長編デビューとなるクリス&ベン・ブレイン兄弟が手掛けた、ホラー・ラブストーリーのコメディ和え。
Hの最中に死んだ元カノが血塗れで現れるから困っちゃうカップルの姿を、若干ウザっためのアート志向が前に出た温度の低い映像で収めた本作。「メキメキッ!ゴキゴキッ!」と『呪怨』の伽椰子ばりに登場するニーナのインパクトに少々邪魔されているが、意外と恋愛の本質的な部分を捉えていたりして驚かされた一本でも。
普通に見えるけど実はちょっと変わった娘というよりも、“普通”と言われることを嫌い敢えて変わった娘になろうとして背伸びしているようにも見える19歳のホリー、“死”と言う衝撃的な結末を迎えたこともあり元カノのことが忘れられず、ことあるごとに自殺衝動に駆られるナイーヴをこじらせたロブ、そして言ってることがいちいち正論のニーナと、三者三様微妙に異なるキャラクターを男兄弟が書いたとは思えぬ繊細さで描いた本作。背伸びして大人びようとするホリーと、そんなものは全て経験済みなだけに「はいはい、頑張ってるね」と達観して見ている一回り近く年上のニーナの関係性なんかも見事に収めていたなぁと。事態が面倒くさくなってくると途端に存在が空気になってくるロブの姿なんかもまさに。

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存在感があり過ぎる幽霊が出てくるのでホラーというスタイルを取っているが、過去を無理して受け入れようとしたり力ずくで打ち消そうとしたりと奮闘する恋人同士の姿を描いている、変化球のラブストーリーと言った方が良いのかと。いささか言葉足らずですんなり入ってはこないが、過去を引きずり過ぎている彼氏そのものではなく、“彼女が死んで落ち込んでいる男”という状況に惹かれ、知らず知らずのうちに自分がその過去に取りつかれてしまっていることが判明するストーリー展開も、随所に描かれた「あぁ、わかるなぁソレ!」的な笑いと共になかなか楽しめた作品でも。
どうも評判があまり芳しくないようなんですが、似たような題材を扱った『ライフ・アフター・ベス』よりも、恋愛や男女関係の捉え方や、ただでさえ“元カノ”(とそれに囚われてる男)ってのは面倒くさいのに、死んでるからさらに厄介なニーナの言動のずば抜けた面白さもあって、全然こっちの方が好き。

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生きていても太刀打ち出来そうになく

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posted by たお at 14:53 | Comment(5) | TrackBack(1) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年03月09日

食人族 (Cannibal Holocaust)

監督 ルッジェロ・デオダート 主演 ロバート・カーマン
1980年 イタリア映画 95分 ホラー 採点★★★★

日本では83年に正月映画第2弾として公開され、『E.T.』に次ぐ大ヒットを飛ばした本作。“本物”を謳ったセンセーショナルにも程がある宣伝や、TVでもまだ普通にやってた残酷・奇習ドキュメントってのが身近だった状況ってのもあるんでしょうけど、「E.T.混んでるからこっちでいっか!」という選択肢の幅の広さに今思うと驚かされますよねぇ。心に余裕があるというか、映画に対し感動ばかりを求めてない娯楽最優先の時代だったってことでしょうか。私の地元ではこれと『処刑教室』という夢のカップリングで上映されてたんですが、これを子どもたちだけで観に行けたってのも、今となっては素敵な思い出。

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【ストーリー】
ドキュメンタリー制作のためにアマゾン川奥地へと向かった4人の撮影隊が消息を絶つ。捜索に向かったニューヨーク大学のモンロー教授は、様々な危機をかいくぐった末に白骨化した4人の遺体と撮影されたフィルムを発見する。そのフィルムに写っていたのは、4人が原住民に対し行った目も覆いたくなる蛮行の数々と、彼らが迎える凄惨な最期で・・・。

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食人ホラーとしてはもちろんのこと、フェイクドキュメンタリー、ロストフッテージ物の金字塔として未だ色褪せない輝きを放っている、ルッジェロ・デオダートによるモンド風味ホラー。
私自身少なくてもこれまで3人ほど“本物”もしくは“本物かもしれない”と信じている人に出会ったことがあるほど、本物と偽物の織り交ぜ方が巧みな本作。普通の精神状態なら明らかにフェイクと分かる強姦シーンや食人シーン、虐殺シーンの数々も、首を切断してもなお動き続ける亀の甲羅を引っぺがしデロンデロンの内蔵を貪り食う、ホラー慣れした私もさすがに食欲が失せる亀の解体ショー(後でスタッフが美味しく頂きました)や、猿の頭をかち割り脳汁を啜る(現地の人が美味しく頂きました)シーンなどの生々しく凄惨な“本物”を混ぜ込むことにより、「全部本当にやらかしてるかも知れん」と思わせる巧い作り。本物の処刑映像については「コレはヤラセだよ」と言ってくるんで、尚更なにが真実なのか混乱してしまう構成も見事。
エロとグロという本能的な快楽と理性的な部分での嫌悪感ってのを突き詰めた本作。とことん下品なもので観客を喜ばせようとするイタリア式サービス精神が非常に嬉しい一本なんですが、最低限ストーリーを構成する為に添えられた“白人至上主義”に対する皮肉ってのもなかなかパンチが効いていた本作。

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ヤコペッティの『世界残酷物語』をはじめとする残酷ドキュメントってのがお家芸でもあったイタリア。アフリカやアジアの奇習や残酷行為を“ドキュメンタリー”という触れ込みで映し出していたが、そこには結構多くの“演出”が施されていたのは今では周知の事実。本作で描かれている蛮行の数々は誇張だとしても、実際に現地で傍若無人な振る舞いをしていただろうってことは容易に想像できる。また、そういった作品を観る側にとっても、建前こそ「学術的に〜」みたいな言い分があるが、結局のところは未開人の野蛮さを見て自分たちの優秀さや幸福さを再確認するだけでしかない。「あー、土人じゃなくてよかった」みたいな。
文明の象徴として映し出されるニューヨークとアマゾン奥地の対比、泥だらけで野蛮な現地人と上品なスーツに身を包んだ白人との対比。そして、原住民にあらん限りの残虐行為を行う白人と、その白人を惨殺し食らう原住民。白人クルーが原住民に対し行った行為に眉をひそめながらもTV放映を強行しようとするTV局の上層部(もちろん全員白人)が、そのクルーが原住民に殺されるシーンを見るや否やフィルムの抹消を命じる。上等民族の白人が下等民族に対して蛮行を行うのは許されるが、下等民族が一矢を報いようとするのは絶対に許さない。この強烈な皮肉たるや。上品な曲さえ流してれば本音を隠せるかの如く、モンド映画でお馴染みのリズ・オルトラーニの美しい旋律が流れ続けるのも、この皮肉をさらに際立たせているようにも。ビジュアルの不快感もさることながら、これまで自分たちが行ってきたことに対する笑いを忘れたブラックコメディな要素こそが最も強烈で、そこが未だに作品を輝かせ続けている一本で。
余談ですけど、このレビューを書くにあたりアマゾンでDVDを探してたんですけど、ブルーレイを含めアマゾンでは置いてなくてちょいと驚きましたねぇ。

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郷に従えないなら入っちゃダメ

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posted by たお at 16:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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