2007年12月16日

スティーヴン・キングのデスペレーション (Desperation)

監督 ミック・ギャリス 主演 トム・スケリット
2006年 アメリカ映画 132分 ホラー 採点★★★

男の子ってのは、ホント穴掘りが大好きですよねぇ。砂浜だろうが公園だろうが、スコップ持たせれば延々穴を掘ってますから。別にその穴から何か出てくるのを期待しているわけでもなければ、掘った穴にせいぜい水を入れるくらいしかしないのに、いつまでも黙々と掘ってる。「そんなに穴掘り楽しいのか?」と訊ねれば、木枯らしに吹き晒されて真っ赤になったホッペとだだ漏れの鼻水で満面の笑顔を作り「たのひーっ!」と。男の子ってのは、ホント穴掘りが大好きですよねぇ。

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【ストーリー】
ネバダの荒野のハイウェイを車で走っていたピーターとメアリーの夫婦。彼らは突如近づいてきたパトカーに停められ、トランクに入っていたマリファナが原因で逮捕されてしまう。彼らが連行されたデスペレーションの町には人影がなく、道路には死体が転がっている。警察署に着くや否やピーターは保安官に射殺され…。

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映像化された作品の出来は別にして、原作にアレコレ余計な手を加えないことでスティーヴン・キングに気に入られ、キング御用達監督となったミック・ギャリスによるTV映画。
凶悪な保安官によってゴーストタウンと化した町を舞台に、“イット”“ペット・セマタリー”“トミーノッカーズ”などを髣髴させるいつものキング節を随所に散りばめた本作。“MURDER”は相変らず“REDRUM”ですし。状況説明のみに従事する安定したカメラワークと、“ロード・オブ・ザ・リング”やクーンツをいじる登場人物らの会話の妙もあり、キング自身が脚色した脚本によるものも大きいのだろうが、各登場人物をメインに据えたエピソードの数々が小説のチャプターを読み進めているかのような面白さに溢れている。しかしながら、「次は何が起きるんだろ?」というページをめくるような面白さは中盤までで、町を襲った怪異の原因が判明し、神の声を聞く少年を中心に登場人物がまとまる中盤以降は、広げ過ぎた風呂敷を大急ぎで畳み始めるバタバタとした展開と、尻切れトンボ的なあっけなさが目に付く。50年代のSFを思わせる“地中に埋まった何か”やキングの宗教観、ヘビやら蜘蛛やらゾンビっぽいのやらの直接的恐怖表現が良かっただけに、このバタバタ感は残念。

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活躍が目覚しいのか、たまたま彼が出るような作品ばかり観てしまっているのかは不明だが、『11:14』『えじき』のヘンリー・トーマスがパッと現れパッと去っていき驚く本作。「あんな年寄りになりたい!」と常々思わせてくれる理想の年寄り像の一人である『デッドゾーン』『ウィズダム/夢のかけら』のトム・スケリットは、70歳を越えてもレザージャケットが似合うカッコ良さにしびれる。なんかこう、カッコいいお年寄りを見ると、みんな宇津井健に見えるのは私だけでしょうか?
そんな彼らのほかに、『ドーン・オブ・ザ・デッド』同様にいつでも死ぬ準備万端のマット・フルーワーや、70年代から80年代にかけて、どの映画を観ても出てきてたような気がするチャールズ・ダーニングなど、なかなかの顔ぶれが揃った本作であるが、なんと言っても本作はロン・パールマンに尽きる。凶暴で凶悪で挙動不審で滑稽な保安官を、非常に楽しそうに演じる彼。もうほとんど好き放題やってるんじゃないかと思えるほど自由奔放なロン・パールマンは、本作最大の目玉。何かに身体を乗っ取られ、徐々に姿かたちも変貌していく彼を見ていると、やがて肌が真っ赤になって角が生えてくるんじゃないかと期待させるほど。もちろんその角は、毎日自分で削るんですが。それだけロン・パールマンの存在が強烈だっただけに、彼の退場と共に本作がつまらなくなってしまうのも、仕方なしかなと。そんなロン・パールマンの怪演に、★ひとつオマケ。

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青天の霹靂

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2007年12月12日

ストレンジャー・コール (When a Stranger Calls)

監督 サイモン・ウェスト 主演 カミーラ・ベル
2006年 アメリカ映画 87分 ホラー 採点★★

一昔前は、彼女に電話することすら一苦労でございましたねぇ。一人暮らしをしているなり部屋に別回線を引いているならいいんですが、大概は電話機は一家に一台、子機が部屋にあればいい方で。彼女の父親が出やしないかとヒヤヒヤしながら電話を掛けたり、「ワンコールしてからまた掛けるから」とか合図を決めたりと、アレコレ工夫をしたものです。それに引き換え、携帯はいいですよねぇ。間違いなく当人に繋がりますから。「今ぁ?部屋だよぅ」ってのが、本当なのかどうかは別にして

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【ストーリー】
人里離れた豪邸に、ベビーシッターとしてやって来たジル。程なく謎の人物からの不審な電話が相次ぎ、恐怖に怯えたジルは警察に逆探知を依頼するが、電話の発信元はジルのいる豪邸の中であった…。

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アリゲーター』でもお馴染み“トイレに捨てられたペットの子ワニが下水道でスクスクと”並に有名な都市伝説、“やたらと掛かってくるイタ電の発信元は、実は家。しかもソイツは殺人鬼”を基に映画化された『夕暮れにベルが鳴る』。後半部こそはグダグダであったが前半部は面白かったオリジナルの、その前半部のみをリメイクしたとのことで期待も高まったが、如何せん監督が『コン・エアー』『トゥームレイダー』と、いくらでも面白くなりそうな題材をずば抜けてつまらない物に仕上げる才能に秀でたサイモン・ウェスト。本作でもその才能を如何なく発揮することに。
全編クライマックスの如く異様に高いテンションで進む本作なのだが、別にどうでもいいシーンまでそんな調子なので、非常に単調。敬遠から牽制球まで全て全力投球。緩急なし。緩急がないため肝心のサスペンスも盛り上がらず、何も起こらない割にテンションだけ高い60分を過ぎてクライマックスがようやく訪れた頃にはそのテンションに慣れきってしまい、今がクライマックスなのかどうかもアヤフヤな始末。PG13に収めるためとはいえ、素手で身体を引き裂く殺人鬼が出る映画だというのにクライマックスまで死体はおろか血すら一滴も出ないっては、如何なものかと。そんな所をオリジナルに忠実にするのもアレですが、PG13に収めようって姿勢もアレですねぇ。キャリーオチもうんざりですし。

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“電話チリーン→やめてー!→チリーン→やめてー!→殺人鬼がバーン→火かき棒でグサー!”で終わってしまうだけの印象しか残らない本作ではあるが、全く見所がないってわけでもない。それはもちろん、カミーラ・ベル。『沈黙の陰謀』でセガールの娘をやってたあの子が、こんなにも可愛くなったのかと驚き。たとえセリフが棒読みでも、可愛い。足が速そうな設定なのに、サッパリその設定が活かされていないとはいえ、可愛い。太くつり上がった眉と目尻の大きく下がった目のおかげで、遠くから見ると顔の上半分に大きく“X”と書いてあるように見えても、可愛いものは可愛い。そんな彼女のほかにも、“キケロ”こと『スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい』のトミー・フラナガンの出演も嬉しい。結局どんな殺人鬼なのかサッパリ分からない役柄とはいえ、嬉しい。たとえ「顔にキズあるから怖いんじゃね?」との単純な起用理由であっても、嬉しいものは嬉しい。
しかしながら、そんな彼ら以上の目玉が本作には潜んでいた。なんとも電話の声が、耳に非常に馴染んだ声だなぁとクレジットを確認してみると、その声の主はランス・ヘンリクセン。いやぁ、こんな所でランスに出会えるなんて。まぁ、声だけですが。たとえ「ヤツの声、怖いんじゃね?」という単純な理由であっても、嬉しいものは嬉しいんです

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ランスからの電話だったら嬉しいんですがねぇ

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2007年11月27日

殺人魚フライングキラー (Piranha Part Two: The Spawning)

監督 ジェームズ・キャメロン 主演 トリシア・オニール
1981年 アメリカ/イタリア映画 95分 パニック 採点★★

DVDプレーヤーを買い換えたからといって、別に新しい映画を観るわけでもない私。この調子じゃたとえブルーレイなりの次世代機を買ったところで、本当に観たい作品がソフト化されるまでえらい時間待たされるんでしょうねぇ。

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【ストーリー】
沈没したアメリカ軍の船に積んであった生物兵器“空飛ぶ殺人魚”の卵が孵化。南国のリゾート地が、ちょっとしたパニックに陥る。

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「『ジョーズ』がサメ一匹だけであんだけ怖かったんだから、ちょっとばかし小振りだけどピラニアが大挙すればもっと怖いに違いない」と作られた『ピラニア』のヒットに気を良くしたのか、「ピラニアが飛んだらもっと怖いんじゃね?」と安易に作られた続編。
“動物・科学者・警官・金の亡者”と動物パニック映画に最低限必要な骨組みこそはあるものの、それらのキャラクターが何を考えて動いているのかサッパリ分からない上に展開もチグハグなため、ドラマ部はメタメタ。それでもショック描写だけでも気が効いていればそれなりに観れる作品になるのだが、棒の先に付けたハリボテの殺人魚を役者の顔にグイグイと押し付けているだけの芸も工夫もない襲撃描写や、せっかく『ビヨンド』『ハイテンション』のジャンネット・デ・ロッシが特殊メイクを担当しているのに、それらをグリグリ見せるわけでもなく薄暗がりでちょろりと見せるだけのグダグダっぷり。

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ロジャー・コーマンの下でせっせとミニチュアを作っている時に、製作者としてはピラニア道まっしぐらの筑波久子ことチャコ・ヴァン・リューエンに監督として抜擢されたというジェームズ・キャメロン。まぁ、ポスト・プロダクションから編集までほとんど全てを『デアボリカ』やら『テンタクルズ』やら二番煎じばかり作っているオヴィディオ・G・アソニティスに取り仕切られ、キャメロン自身は現場でちょろちょろっと演出をしただけだったようで、本人は本作を自身のフィルモグラフィに加えられるのが大層嫌だとか。うっかりこの話題をキャメロンに振ると激怒するらしいので、たまたま本作のTシャツを着ている時に、街でキャメロンに出くわさないように注意したいものです。
前作で低予算を存分にカバーしたジョン・セイルズの脚本がないのが最も痛手な本作ではあるが、劇中唯一まともなキャラクターである警官役を大好きなランス・ヘンリクセンが演じてくれたことですし、何もすることがない土曜の昼過ぎにうっかりTVで観る分には申し分のない作品でもあるので、★ひとつオマケで。

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されるがまま

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2007年11月02日

13/ザメッティ (13 Tzameti)

監督 ゲラ・バブルアニ 主演 ギオルギ・バブルアニ
2005年 フランス/グルジア映画 93分 サスペンス 採点★★★★

気ままでやる事なす事大胆で大雑把の典型的なB型末っ子気質のくせに、一か八かの賭け事は一切しない私。たとえ9割の確率で当るのが分かっていても、しない。まぁ、“運任せ”ってのに納得がいかない偏屈者なだけなんですが。そのくせ自分の中であれこれ考えて「よし!大丈夫だ!」となっちゃうと、全くそれに根拠がなくてもそれこそ200メートルの高さから命綱なしで飛んじゃう位大胆なことを平気でやっちゃうことも。無論実際に「飛べ!」と言われたら、絶対に飛びませんが。

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【ストーリー】
仕事先の家主が間もなく大金が入る仕事の案内状が届くと吹聴しているのを耳にした、グルジア移民の青年セバスチャン。しかし家主が急死。その案内状を横取りしたセバスチャンは、そこに書かれてある指示通りに森の奥にある屋敷に到着する。だがそこで行われていたのは、13人が輪になり一斉に引き金を引く、集団ロシアンルーレットだった。

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ヴェネチア国際映画祭やサンダンス映画祭などで大きな話題を呼んだサスペンス・スリラー。
光と影のコントラストが効いた、まるでクラシック映画を観ているかのような美しいモノクロで描き出される計算された構図の見事な映像にまず目を奪われる本作であるが、なんと言っても本作の目玉は集団ロシアンルーレットが生み出す緊迫感。自分の命運が自分の手に握られている通常のロシアンルーレットと異なり、自分が前に立つ他人の命運を握っている一方、自分の命運を後ろに立つ他人に握られているこのゲームが生み出す緊張感は、並々ならぬものがある。合図であるランプの点灯を待つ尋常ならない緊迫感、自分が助かった安堵感、相手を殺してしまった罪悪感、そして欲望とエゴに翻弄され最終的に襲い来る大きな虚無感と、様々入り乱れる感情をセリフではなく映像で描ききった手腕も見事。ヌーベルバーグやニューシネマを思い起こさせる無情なオチも良い。一見理不尽なだけに見えるこのゲームも、しっかりと手順が決められたルールと、誰よりも厳格な審判、そして若干のファジーさがこのゲームに説得力を持たせている。野球だって、同じコースでもストライクだったりボールだったりするから面白いんですし。

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状況がまったく飲み込めないままとんでもない事態に巻き込まれていくセバスチャンの動揺、動転、狼狽を自然且つリアルに演じきったギオルギ・バブルアニ。その“何も知らされていない”っぷりと殴られた際の飛びっぷりがあまりに見事だったギオルギは、演技経験の全くない監督の実弟。「本当に何も知らされていなかったんじゃないか?」と思えるほど自然だったギオルギが時折見せる、ホアキン・フェニックスや若き日のデ・ニーロを髣髴させる狂気をはらんだ視線が印象的。
案の定ハリウッドリメイクが決定している本作。大スターを主演にカラーで撮るってのに若干の不安を感じなくもないが、バブルアニ監督自らメガホンを握るってことなので、どんな映像表現を見せてくれるのか楽しみでも。まぁ、ほどほどの期待で待つことに。

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したたかさだけは忘れない

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2007年10月31日

シッコ (Sicko)

監督 マイケル・ムーア 主演 マイケル・ムーア
2007年 アメリカ映画 123分 ドキュメンタリー 採点★★★★

何気に厄介な難病を患っているおかげで、新規で生命保険に加入できない私。今入っている保険を細々と大事にしていくしかないそうで。あ!今、思い出した!10年ほど前にこの病気の入院費を自腹で一旦払って、後で保険会社に申請したはずなのに、保険金を受け取ってないなぁ。保険金の振込先が母親の口座で、確かあの時「後で渡すよ」となにやら新品のメガネを掛けながら言ってたのに。

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【ストーリー】
先進国で唯一公的な国民皆保険制度を持たない国、アメリカ。大多数の国民は高い保険料を支払って民間の保険会社に加入しているが、いざ病院で治療を受けようとすれば、様々な問題が立ちはだかって満足に治療も受けられない。そんなおかしな現状に、マイケル・ムーアが立ち向かう。

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ドキュメンタリー映画ってのを“真実の羅列”として鵜呑みにしちゃう人も少なくないようで。無論それはドキュメンタリーに限ったことではなく、報道にしろバラエティにしろメディア全般に対してもその傾向にあるようですが。カメラの向こう側に作り手がいて、その作り手が何らかのテーマを持っている以上、そのテーマをより際立たせる場面や言葉などを中心に使用することは当然で、テーマに反する場面を極力排除するのも至極当然。“地球温暖化”をテーマに映画を撮るってのに、その影響がほとんど見受けられない場所に行ってもしょうがないですし。もちろん単なる自然現象に「温暖化の影響がぁ!」とオドロオドロしいナレーションを付けたり、コロンビア辺りの森林に“ベトナム”とテロップを入れたり、自分で彫っておきながら「サンゴ礁にこんな酷いイタズラが!」とか言ったりするのは問題外だが、ある種の演出や極端な仮説が紛れ込んでいることを受け手が認識し、その上で関心を持ったテーマに関し自らの手で多少なりとも調べ、自らの判断で吸収するのが重要。まぁなんであれ、ツバメのヒナの様にぽかーんと口を開け、与えられる情報だけを鵜呑みにするのは危険だなぁってことで。

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で、いくら原題がそうだからとはいっても、あまり馴染みのない言葉である上に、鑑賞前から微妙に尿意を促すようなタイトルをそのまんま使うこともないだろうにという問題はさておき、前置きが長くなってしまったが『華氏911』のマイケル・ムーアが、アメリカの医療問題に対し「なんかおかしくないかい?」と挑んだ本作。世界一の超大国でありながら先進国で唯一国民皆保険制度を持たず、5千万人以上の国民が健康保険に未加入で、年間8万人が治療を受けられずに死んでいく。高い保険料を支払って民間の健康保険に加入したからと言って安心できるわけでもなく、治療を受けようとすれば難癖ともあら探しとも言える問題を突きつけ治療を拒まれてしまう。なにせ、薬品の投与や治療を拒んだ医師に対し、無駄な支出を減らしたということで保険会社からボーナスが支給される制度だから。この歪んだ構造をフランスやカナダ、仮想敵国であるキューバの医療現場と対比することで、その異常さをより一層際立たせている。
他者にある種の主張を聞き入れてもらいたい場合には、一方的な主張や堅苦しい言葉遣い、変化しないトーンでは、いくら話しても真剣に聞き入られなかったり瞬く間に飽きられてしまうもの。そこにはユーモアを織り交ぜた緩急が必要となるのだが、本作のマイケル・ムーアの語り口はまさに絶妙。前作の『華氏911』では勇み足の感も強かったが、本作では深刻な題材とユーモアのバランスが絶妙で、2時間を越える上映時間を全く飽きさせず、且つ整理された主張を聞き入らせる手腕は見事。皮肉の効いたオチも秀逸。

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マイケル・ムーアといえば、素朴な疑問から始まり、やがてその背後にある大きな問題を提示する作品構成や、それらの問題の当事者や関係者への突撃取材を敢行するのが『ロジャー&ミー』からお馴染みのスタイルである。イジメ問題やメディアの問題を踏まえつつも、「ってか、フツーにその辺で銃が買えること自体がおかしくね?」とテーマを絞り込み、結果的にKマートから銃弾をなくさせることを成し遂げた『ボウリング・フォー・コロンバイン』が、まさにマイケル・ムーアの真骨頂であるのだが、本作での彼はこれといった突撃をしない。保険会社の重役にインタビューするわけでも、その保険会社から献金を受け取った政治家にインタビューするわけでもなく、カナダに行っては「ほえぇ!治療費がタダ!」、カナダに行っては「ほえぇ!有給が5週間!」と大袈裟に驚いてばかり。そこにはカメラ一つで巨悪に立ち向かう勇敢な姿はなく、まるで初めて知った事実に驚く観客を代弁するかのような、言葉を変えれば愚民を代表するかのようなマイケル・ムーアの姿が。もちろんマイケル・ムーアがひよってしまったわけではなく、医療問題を発端に見え始めた政府と国民の関係図を明確にする為のしたたかなポーズであろう。
郵政も民営化され、いつ次なるターゲットを国民健康保険に絞られかねしない日本人にとっても他人事ではない本作。その本作を作ったことで、より一層保守層から非国民呼ばわりをされてしまいそうなマイケル・ムーアであるが、国民にあって当然の権利を奪い自らの富を増大させる政治家と、どっちが非国民で、どっちが愛国者なんですかねぇ。

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大貧民が大富豪に一矢を報いるには…

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2007年10月10日

処刑島 (Wilderness)

監督 マイケル・J・バセット 主演 トビー・ケベル
2006年 イギリス映画 94分 ホラー 採点★★★

“無人島に持っていくなら何?”みたいな問いをちょこちょこと見かけますが、大体答えとして挙がっているのがライフラインが万全という条件下で有効なものばかり。まぁ、要は“如何に暇をつぶすか?”ってことなので、「無人島なんかに行きたくはないです」以外の答えで暇がつぶせそうな物というと…釣竿かなぁ。すいませんねぇ、普通の答えで。

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【ストーリー】
同室の少年を自殺に追い込んだ罰として、かつては軍の訓練施設であった無人島へ教官引率の下連れて来られた少年刑務所の囚人6名。偶然居合わせた他の少年院の少女らもいて浮かれる彼らだったが、その島にいた何者かに一人一人殺されていき…。

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『デス・フロント』のマイケル・J・バセットによるサバイバル・ホラー。
“謎の人物”とは言っても大方の予想通りの人物が犯人なので、その辺のサスペンスはサッパリ盛り上がらないが、犬にトラップに完全カモフラージュと、すっかりジョン・ランボーな人が罰の割にはとっても楽しそうな様子に全く同情できない主人公らを次々惨殺していく様に、久々にスラッシャー映画らしい凄味を味わえる。シーンとシーンの繋がりに若干チグハグさも感じはするが、追われる緊迫感の糸が緩むこともない。
『ドッグ・ソルジャー』に続いてグダグダな若者を引率する羽目に陥る『ソルジャー』『リベリオン 反逆者』のショーン・パートウィーや、“元兵士”という役柄に、何かかくし芸を期待させるが期待させるだけだった『ディセント』のアレックス・リードら大人勢以外にも、威勢だけはいいイジメっ子に、その言いなりになる気のいい大男など分かりやすいキャラクター設定も好印象。ただまぁ、極限状態の中で秘められていた闘争本能に目覚める主人公が、終始ボブ・ゲルドフみたいな顔をしているのは、ちょっとアレでしたが。

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厄介事には背を向けて

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2007年09月16日

スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい (Smokin' Aces)

監督 ジョー・カーナハン 主演 ライアン・レイノルズ
2006年 イギリス/フランス/アメリカ映画 108分 アクション 採点★★★

アイスクリーム専用の醤油ってのがあるそうで。確かにその組み合わせに意外性があればある程、“食えなくもない”程度であっても「美味い!」ってなるもんなんでしょうけど。ただまぁ、“生ウニと鯵の練乳がけ”みたいにあまりに突拍子がなさ過ぎると、食べる以前に胸焼けがしますし、食べたら食べたでもっと胸焼けを起こすんでしょうが。

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【ストーリー】
マフィアのボスであるスパラッザの容疑について、証言を得るため司法取引を持ちかけられているマジシャンのイズラエル。しかし、そんなイズラエルの命に100万ドルの賞金が懸けられた為に、世界中から暗殺者が集まってきてしまう。イズラエルを保護する為に、FBIエージェントのメスナーとカラザースが彼のいるホテルへと急行するが…。

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久々に骨太の刑事物を堪能させてくれた『NARC ナーク』のジョー・カーナハンによる、キャラの立ちまくった暗殺者がワラワラと出てくるアクション。
一斉にキャラクターが出てきて状況と人物設定を説明する序盤こそは混乱を生むが、その混乱を短い時間でまとめ上げ、あっという間に佳境へと突き進む説明力と整理力は見事。キレのいいスタイリッシュな映像と、コミカルでもあるセリフの数々も面白い。これでバイオレンス描写とコメディ描写のメリハリが効いていて、それぞれの配分バランスが良ければ『ラッキーナンバー7』や『レイヤー・ケーキ』並みの面白さに溢れた作品になったのであろうが、本作は残念ながらそこまでは。マフィアワナビーのマジシャンやトンガリ三兄弟、興奮ヌンチャク少年など味のあるキャラクターが多数登場しながらも全体的に演出が重々しく、そのため“笑い”に爆発力が生まれないが故に、陰惨さばかりが印象に残ることに。なんというか、ビートは良いのだがそこに乗っかるボーカルが全くノリ切れていないという、復帰したてのブリトニーを見ているかのようで。
強大な権力のご都合主義に翻弄されながらも立ち向かい、それが自分の身にどんな結果を及ぼすのか分かっていながらもその姿勢を貫く主人公の“男の悲哀”というストーリーラインはジョー・カーナハンらしいのだが、美味し過ぎるキャラクターが乱立しているせいかあっちこっちに目を配りすぎて肝心の主人公を膨らましきれず、おかげで主人公が終盤にきて突然頑固になっちゃったかのようにも見えることも。

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その出ずっぱりのはずなのに印象に残らず、最後に突然頑固者に変貌する半ギレ気味の主人公に、『ブレイド3』『悪魔の棲む家』のライアン・レイノルズ。ヤンチャで無鉄砲で無責任のB型キャラが良く似合う彼はお気に入りの一人ではあるのだが、その持ち味を存分に発揮するには今回ばかりは相手が悪かった。無論その相手とは、『ダウト』のレイ・リオッタ。『NARC ナーク』でもそうだったのだが、今回の彼もまるで現場歴30年の警官がそのまんま映画に出てきたかのような現場臭をプンプンと。とてもトウモロコシ畑からヒョッコリと現れたとは思えぬ地に足っぷり。
また、かつては現場でベビーカーを片足に拳銃をビシリとキメていたくせに、今ではでっぷりと偉くなったアンディ・ガルシアや、このくらいの役が結構ちょうどいい『世界で一番パパが好き!』のベン・アフレック、この役だったらサム・ロックウェルの方が良かったんじゃないのかなとも思える『アダルト♂スクール』のジェレミー・ピヴェン、“バカ”が最大の褒め言葉になる殺し屋三兄弟など、なかなかに味のある役者・キャラクターが揃った本作だが、一番の収穫は“キケロ”ことトミー・フラナガンが比較的長い時間映画内に留まっていてくれた事で。いやぁ、結構好きなんですよね、キケロ。まぁ、ほとんどの時間を他人の顔で過ごしてはいたんですが。
で、観る前から期待が高かったのが、ポスターアートなどでもビシリとキメ込んでいたアリシア・キーズ。娼婦ルックで拳銃を構えるその色気と迫力溢れる佇まいに往年のパム・グリアを髣髴させるだけに、作品内での大活躍を期待していたのだが、引っ張るだけ引っ張った挙句に糸が切れちゃったような扱いが、本作最大の不満でも。

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病み上がりにこれは勘弁して頂きたい

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2007年09月04日

サブライム −白衣に潜む狂気− (Sublime)

監督 トニー・クランツ 主演 トーマス・キャヴァナー
2007年 アメリカ映画 113分 サスペンス 採点★★★

内臓系疾患だった為に厳しい食事制限を強いられていた入院時代。食堂に飾られていたロウ細工のエビフライを、貧乏な子供のようにかぶりついて見ていたもので。で、空腹と昼寝のし過ぎで夜中にふと目を覚ましてしまい寝付けないので寝返りを打つと、重度の糖尿病で入院していた隣のベッドの老人がこちらをガン見。あまりに凝視をしてるので何か用かと声を掛けるが全く反応もなく、これは間違いなく死んでいるとナースコールを。まぁ、結果的には目を開けっ放しで寝てただけなんですがね。

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【ストーリー】
ITコンサルタントとして成功を収めたジョージは、40歳の節目に結腸検査をする為入院をすることに。しかし、麻酔から覚めると見に覚えのない手術痕が腹部にあり、医師も家族も何事かを隠しているかのように不審な態度をとる。原因を追究しようとするジョージだが、日に日に病状は悪化していき…。

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レストストップ デッドアヘッド』『ビリーバーズ』と、オリジナルホラーDVDをリリースする“RAW FEED”レーベルの一本。
年齢から来る健康への不安や医療過誤への恐怖だけではなく、潜在的に抱える社会や人種への恐怖や家族への不信が次々と現実のものとなっていく男の姿を描くサイコスリラー。冒頭の夢に関するエピソードや、現実と幻想を入り混じりにした展開に、実際に起きているであろう出来事がぼんやりと見え隠れする構成や、さりげない会話や絵画に鍵が隠されている作品構造はなかなか面白く、“尊厳死”に関わってくるエンディングも観終わった後にジワジワと効いて来る味わい深さ。ただし、狙いもあるとはいえ場面展開や音楽に変わり映えが無い上に演出が平坦であるが故に強烈な睡魔に襲われることもあり、題材が面白いだけにもう少々のメリハリが欲しかったようにも。まぁその睡魔も、妄想をそのまんま現実にしたかのようなセクシー看護婦が帳消しにしてくれますが。

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落ちる夢。地面に激突しちゃうと…

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2007年09月02日

サンダーアーム/龍兄虎弟 (龍兄虎弟)

監督 ジャッキー・チェン 主演 ジャッキー・チェン
1986年 香港映画 98分 アクション 採点★★★

ジャッキー映画の感想でよく目にするのが、「年取ったなぁ」「動きのキレが悪いなぁ」「もう、終わりだな」といった類のもの。そりゃぁジャッキーさんも50代ですし、それで20代の頃と同じように動いちゃったら、それはそれで気持ち悪いのではと。しかしまぁ、動きが悪くなったから終わりってのも、随分と偏狭な見方ですねぇ。確かに動きを売りにしていたジャッキーさんですが、それしかないわけでもないですし、キレがなくなった分のフォローも充分にされ、映画的なバランスも格段と良くなったと思うんですがねぇ。そんなにスッゴイ動きを見たいなら、パルクールだけをずーっと見てればいいんじゃないのかなぁ。

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【ストーリー】
神の武器を揃え世界征服を企む邪教集団に誘拐された親友の恋人を救う為、“アジアの鷹”ジャッキーが立ち向かう。

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後の『プロジェクト・イーグル』へと続く、“アジアの鷹”第一弾。第三弾はやるんですかねぇ?
楽しくて激しいと、全日本プロレスのスローガンがそのまま当てはまるジャッキー一連の作品群。本作もその例にもれず笑いとアクションのバランスを程よく配分。“懐かしい”で済ませるには泥臭すぎる笑いに若干辟易してしまうものの、そんな問題を些細なものにするアクション部はさすが。大技のみではなく、細やかな芸の効いた小技の数々にジャッキー流エンタテイメントの真髄を見出す瞬間もちらほら。ヨーロッパ各地をロケした風光明媚な舞台を三菱車が走り回り、吹替えによって全員が揃って中国語が堪能になっているごった煮具合も、味わい深い。

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そのバブリーな髪型に、若かりし頃の自分が重なってしまい恥ずかしくて見ていられないアラン・タムや、となりに黄飛鴻がいないと何となく落ち着かないロザムンド・クワンはさておき、やっぱりここはジャッキーさんで。印象だけは強烈なアマゾネスの皆さんも、さておきますが。絶対的な強さではなく、基本アワアワのジャッキーアクションを堪能できる本作。そのアワアワとアワアワの間にちょろっと見せる、きっととんでもないほど練習を重ねたに違いない小技の数々や、クライマックスで見せる大技も見事なのだが、その間一瞬たりとも表情を固めない芸人魂が素晴らしい。撮影中の事故で頭蓋骨骨折の大怪我を負ったことでも当時大変話題になった本作であるが、無事でなによりで。

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この顔一つも名人芸の域

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2007年08月19日

ジーパーズ・クリーパーズ (Jeepers Creepers)

監督 ヴィクター・サルヴァ 主演 ジーナ・フィリップス
2001年 アメリカ映画 90分 ホラー 採点★★★

“飛躍”と“突飛”って、なんとなく似ているような気もしますが、別物なんですよねぇ。どうせ形容されるなら“飛躍”を使っていただきたいものなんですが、得てして“突飛”の方が多く使われてしまう私です。まぁ、確かに否定は出来ませんが。

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【ストーリー】
春休みを利用して実家に帰省するため、車での長い道のりについていたトリッシュと弟のダリー。そこへ突然不気味なトラックが現れ、執拗に彼らを追い回す。やっとのことでそのトラックを振り切った二人であったが、本当の恐怖はまだこれからであった。

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ハイウェイで次々と人が行方不明になる都市伝説をモチーフに、怪物はおろか映画そのものも飛びまくる飛躍系ホラー。
閑散とした田舎道を車で走る姿を、音楽もなく主人公らの会話と低い車のエンジン音だけで描く冒頭の10分間は、まるでこの先にテキサスの電動ノコギリ一家が待ち構えているんじゃないかと思わせる不穏さを漂わせる、70年代ホラー的描き方。そこへ運転手の見えないトラックが現れる様はもろ『激突』であるし、地面スレスレのカメラアングルで描くカーチェイスは『マッドマックス』のようだ。この序盤に、「70年代ホラー映画の再来か?」と否応がなしに期待が高まるが、23年毎に現れると言う怪物の存在が明らかになると、劇中内の状況どころか、映画そのものがピョンと飛躍し急変する。80年代風モンスタースーツに身を包んだ怪物が、顔に付いたヒレなのか何なのかを開き開き警察署を襲撃するシーンは『ターミネーター』だ。というか、それまで身を潜めて行動していたのがウソのような大胆さにビックリだ。また、従来のホラー映画の登場人物の取る行動を茶化す『スクリーム』以降に定着した手法も取り入れることで、一本の作品の中で70年代から90年代までのホラーの流れをピョンピョンと飛び跳ねる怪作に仕上がっている。で、その突飛さと節操のなさが不快かと言えばそうでもなく、予想も付かない激流のような展開に身を任せている内に、「もう、好きにして」と諦めにも達観にも似た快感を感じることも。まぁ、先に起きる出来事をズバリと霊視出来る割には何の役にも立たず、主人公らを心底脅かすだけの存在にしかなっていない霊能力おばさんのように煮詰めの足りないキャラクターや展開も目に付くが、あまりのワンパクな展開にゲタゲタ笑っている観客の不意を付くような後味の悪いエンディングを用意する趣味の悪さも非常に好みであるので、概ね満足の作品。

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『ターミネーター』を髣髴させる警察署襲撃のシーンで、「あぁ、だからこの娘はリンダ・ハミルトンみたいな顔をしてるんだぁ」と納得しちゃったような勘違いをさせてくれるジーナ・フィリップスはさておき、穴があったら入らないと気が済まない上に、入っちゃったが故に散々な目に遭う、とても他人事には思えない男の子の鑑であるダリーを演じたジャスティン・ロングがいい感じ。まぁ、『ギャラクシー・クエスト』以降、『ドッジボール』『ダイ・ハード4.0』に至るまで全く揺るぐことのないキャラクターではあるんですが。
しかしながら、やっぱり本作の主役は、東宝東和だったら4文字くらいでイカした名前を付けてくれていたに違いない怪物そのもので。素顔で警官役としても登場するジョナサン・ブレックが演じている(エンディングではジャスティン・ロングが演じている)のだが、元々はランス・ヘンリクセンが演じることを念頭において書かれた脚本だとか。23年毎に現れ、真昼間から“ぶん殴るぞ!”と書かれたナンバーのオンボロトラックを乗り回し、前をチンタラ走る車を煽り倒した上に人をバンバン襲っては食する彼。“人を食う”って以外は結構その辺にいそうです。トラックの運転を誰に教わったのかとか、やっぱり給油はスタンドで済ませるのかとか興味の尽きない彼だが、脚を喰らえば脚が生え、目を喰らえばその目を得る彼は、23年ぶりに登場した時はどんな状態だったのかが、一番興味津々。一人目を襲うのがとっても大変そうです。

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これだから男の子は

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