2007年12月29日

ゴースト・ハウス (The Messengers)

監督 オキサイド・パン/ダニー・パン 主演 クリステン・スチュワート
2007年 アメリカ/カナダ映画 90分 ホラー 採点★★★

今私の住んでいる家がある小高い丘の敷地内には、数十年前に一時だけ住んでいた二階建ての家が廃墟となってそのまんま建っておりまして。窓が外れボロボロになったカーテンが風になびく様は、きっと近所の小学生らの間で怪談を生成させるほど不気味でございます。私自身はその家で変なものを見た記憶はないんですが、子供の頃イトコが泊まりに来た時「部屋の隅に変な人が立ってる!」と夜中に泣き出し、それっきり二度と遊びに来なかったりはしましたねぇ。

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【ストーリー】
家族それぞれが問題を抱え、心機一転のためにシカゴからノースダコタの農場へ越してきたソロモン一家。しかし、長女のジェスと3歳の弟は越して間もなく家の中に不気味な気配を感じ始め…。

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the EYE 【アイ】』『リサイクル −死界−』のパン兄弟が、サム・ライミ率いる“ゴースト・ハウス・ピクチャーズ”に招かれ手掛けた、ハリウッドデビュー作。
おぼろげな存在が生み出すジットリとしたアジア風味の恐怖と、ダイナミックに直接攻撃を加えてくるハリウッド風味の恐怖表現を巧みにブレンドした演出が持ち味のパン兄弟。本作でもその間接的・直接的を巧みに交えた演出を見せているものの、脚本や編集には携わらず監督にのみ徹した言うなれば雇われ仕事であるためか、表現の面白さが映画の面白さに直結していない。“失踪を遂げた一家”“日に日に大きくなる壁の染み”“床からどす黒い液体が染み出てくる地下室”“徐々に苛立つ父親”など、『悪魔の棲む家』を挙げるまででもなく使い古された物語が先を容易に予想させてしまい、その予想通りの物語を退屈させないだけの気の効いた見せ場が少ないのは痛い。亡霊たちも訴えたいことがあるのは分かるが、訴え方も間違っている上に相手も間違ってますし
随所に滲み出るような不気味さを感じさせはしてくれているが、全体的に見ればチーズバーガーの中にひっそりとパクチーが混じっているようなもので、全体のバランスを敢えて崩してまで印象を残すほどでもない。

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“希薄な家族関係”が主たるテーマとなっている本作ではあるが、家族にだけはどうやっても見えないって意味では、本作のキャスティングは成功かと。『ザ・シークレット・サービス』のディラン・マクダーモットと、劇映画では非常に久しぶりに見た気がする『シャドー』のペネロープ・アン・ミラーは辛うじて夫婦に見えるのだが、そのペネロープと長女役のクリステン・スチュワートが全くもって親子に見えない。末息子とのツーショットにも母親らしさを感じることが出来ず、てっきり継母なのかと思ってしまったほど。
そんなこんなで不満も多い作品ではあったが、『マイ・ビッグ・ファット・ウェディング』の優男ぶりを微塵と感じさせないどころか、テッド・レヴィン並の胡散臭さを醸し出すジョン・コーベットや、“不気味”というスパイスの役割を存分に発揮した“キャンサー・マン”ことウィリアム・B・デイヴィスらの存在感が作品をだらけさせず、何よりも『パニック・ルーム』の時限爆弾少女がこんなにも可愛い子に育ったのかとの驚きも大きかったので、★一つオマケで。えぇ。可愛い子には甘いんです

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“話を聞いてほしい”って態度ではない

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2007年12月23日

消えた天使 (The Flock)

監督 アンドリュー・ラウ 主演 リチャード・ギア
2007年 アメリカ映画 105分 サスペンス 採点★★★

痴情のもつれなり憤怒なりで起こる犯罪とは違い、内側からとめどなく湧き出てくる性的欲求によって引き起こされる分、再犯率が非常に高いと言われる性犯罪。その再犯率の高さは逆に犯行防止に容易に繋がりうるとも言えるのだろうが、24時間前科者に張り付くわけにも、大々的に晒しあげるわけにもいかないことに、ジレンマを感じる時も。

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【ストーリー】
帰宅途中の若い女性が行方不明になる事件が発生。18年間性犯罪登録者の監察を続け退職間近である公共安全局のエロルは、自分の受け持つ登録者の中に犯人がいると確信。新人の女性監察官アリスンと共に捜査に乗り出すが…。

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『インファナル・アフェア』のアンドリュー・ラウがハリウッドデビューを果たした一本。
ベテランが新人と組んで教育がてらに最後の仕事を終えるストーリーラインや、特殊な事件にのめり込み過ぎたあまりに常軌を逸していく展開には新味は全くないのだが、被害者だけではなく加害者をも手厚く保護する人権や倫理、人道的配慮と、「犯行を防ぎたい」「もっと何か出来たはずだ」という思いに駆られる主人公のジレンマを丁寧に描くことで、同様のジレンマや矛盾を観客にも感じさせることに成功している本作。主人公の行動も、人道的な建て前に対する感情的な本音を表しており、胸がすくと同時に後悔に襲われる様も上手に描かれている。
それぞれ独自の性癖を持つ人間が集まって一つの事件を起こす過程が腑に落ちない点や、この手の題材を取り扱うにしては比較的安全な場所に着地点を設けたことに食い足りなさはあるのだが、ざらついた画面で展開されるひたすらドライな本作の味わいは、なかなかに力強い。

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アヴリル・ラヴィーンの女優デビューばかりが大々的に宣伝された感もある本作だが、いつもの扮装のいつものアヴリルがワンシーン登場するだけなので、過度の期待は禁物。まぁ、もうワンシーンに出てはいるんですが、あれはまぁ…。
痩せすぎたせいなのか、年々ジェイミー・リー・カーティス化が進んでいるレインメーカー』のクレア・デインズ。若干アニー・レノックス化も。本作では、若いんだか老けてるんだかどんな性格なのかもサッパリ分からない新人監察官を、ジェイミー・リー顔およびレノックス顔で熱演するが、彼女らのような凛とした格好よさが感じられないのは不思議。で、リチャード・ギア。程よく枯れたしがない中年男を好演した『運命の女』から、更に枯れ切った風貌で登場する本作。しかしながら、風貌こそは枯れているが時として見せる激情的な一面、自分の感情を抑えられない弱さ、人間不信のあまり他者とのコミュニケーションが上手に取れないたどたどしさなど、複雑なキャラクターを巧みに演じる引き出しの多さに感服。あまりに長い間「何とかしなければ」という使命感に囚われ過ぎ、人間としては壊れてしまった主人公に対し、“波風は立てたくないし余計な仕事もしたくない、出来れば定時に帰りたい”典型的な公務員上司として登場するのが、キラー・ボブこと『ヒューマン・キャッチャー/JEEPERS CREEPERS 2』のレイ・ワイズ。監察しなければならないのは、コイツの方なのでは?

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見つかればまだ良い方

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2007年11月20日

キャノンボール2 (Cannonball Run II)

監督 ハル・ニーダム 主演 バート・レイノルズ
1983年 アメリカ映画 108分 アクション 採点★★

親なり兄弟らなり、大人の人に連れて行ってもらえない限り映画を観に行けなかった子供の頃。実家が商売をやっていただけになかなか休みがなくふた月に一本でも観れれば御の字だったので、映画に行く時は“観たい映画リスト”と散々っぱらにらめっこをして観に行く映画を選んだもの。こと正月映画となるとこれまた正月気分を盛り上げる話題作が目白押しで、散々迷った挙句に当日になって「二本観たい!」と駄々をこねたものです。そういえば、最近は正月映画らしい正月映画も減ってきましたねぇ。

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【ストーリー】
アメリカ大陸を横断するカーレース“キャノンボール・ラン”。前回のレースで優勝できなかった汚名を晴らすべく、アラブの石油王シークは自らレースを開催。100万ドルの賞金を手にすべく、各地からレーサーが集まってくるが、肝心のシークがマフィアに誘拐されて…。

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『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』『勝利への脱出』『マッドマックス2』『タイタンの戦い』と話題作が目白押しだった1982年の正月。これらの作品に全く見劣りしない豪勢な顔ぶれを揃えた前作『キャノンボール』を見逃してしまい、何となく悔やんでいたもので。『ターボ・クラッシュ』は観たくせに。で、その2年後。最大の目玉がショーン・コネリーの007復帰が話題だった『ネバーセイ・ネバーアゲイン』と若干こじんまりとした上に、観たい作品が同時上映でまとめて観れた幸運も重なり、ようやく本作を観れることと。2年待った甲斐があったかどうかは、アレですが。
建て前上はアメリカ映画であるが、レイモンド・チョウががっちりと噛んでいることもあってか、感触はすっかり香港映画である本作。スタントバカ一直線のハル・ニーダムのバタ臭い演出も、その風味を増大。名前だけはまだ知られているが旬をとうに過ぎた有名人が大挙する様は、地方を回る営業を見ているかのような寂しさすら。そんなかつての有名人達が、お屠蘇気分が抜け切れないままモタモタとアクションにギャグにいそしむ姿をシラフで観るのは幾分キツイ気もするが、ちょっとした隠し芸大会を正月気分で観る分にはちょうどいい。クライマックスでのスタント博覧会のようにスタントの基本技をこれでもかと見せる乱闘も、華やかで楽しいですし。

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ロジャー・ムーアやピーター・フォンダがセルフパロディを演じたりと若干顔ぶれも豪勢だった前作から比べれば、顔ぶれが格段とこじんまりとしてしまった本作。ファラ・フォーセットの代わりがスーザン・アントンですし。そういえば、“すうざんあんとん子”っていましたねぇ。“枢斬暗屯子”って書くの。それはさておき、前作から引き続きバート・レイノルズにディーン・マーティン、サミー・デイヴィス・Jr、ドム・デルイーズらが出演し、そこへテリー・サヴァラスやら御大フランク・シナトラらも加わった大演芸大会。そんなほろ酔い気分の顔ぶれの中でも、自らの見せ場はしっかりと見せるジャッキー・チェンは見事なもので。まぁ、ジャッキーを売り出すって目的もあったシリーズなんですが。そんなジャッキーの頑張りもリチャード・キールの巨体も吹き飛ばす強烈なインパクトを残すのが、シャーリー・マクレーンのレオタード姿なんですけど。いくら正月でも、あれはダメです。夢に見ます。

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芸達者

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2007年09月04日

ゴーストライダー (Ghost Rider)

監督 マーク・スティーヴン・ジョンソン 主演 ニコラス・ケイジ
2007年 アメリカ映画 110分 アクション 採点★★

“好きこそ物の上手なれ”って言葉があるように、確かにその題材への思い入れの強さが作品の深みや充実度として表れることも。“ロード・オブ・ザ・リング”シリーズなんかがまさにそれだったんですが、「好きー!!」って思い入れだけは伝わるけど、それ以外は何にもってのも結構ありますねぇ。

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【ストーリー】
17歳の頃、病気の父を救う為に悪魔メフィストと契約を交わしてしまった、スタントライダーのジョニー。そんな彼が30歳を迎えたある日、メフィストが現れ、魔界の反逆児であるブラックハートを捕らえるよう命じる。ジョニーは悪魔の力でゴーストライダーとなり、ブラックハート一味を追い詰めるが…。

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マーベル・コミックの人気キャラクターを、ゴーストライダーのタトゥーを彫ってる程のコミックファンであるニコラス・ケイジで映画化。
CGによって映像表現の幅が広がったこともあってか、次々と公開されるコミックの映画化。本作のその中の一本であるのだが、いつものように原作を読んだことがないので、どんな話なのかサッパリ。まぁ、悪魔の力を借りたガイコツ頭のヒーローなんで、きっとダークヒーローなんでしょうが、肝心の作品にはダークな香りはサッパリ。上映時間の大半を人物紹介と状況説明に費やし、きっと原作では一本柱であったであろう悪役がワラワラと出てきては名前を覚える前に消えていき、バタバタとイベントをこなし何となく丸く治めてしまう、教科書通りというか記憶にほとんど残らない作品の典型例に。とは言え全くの無個性ってわけでもなく、サム・エリオット扮する伝説のライダーが「この日の為に力を残しておいたんだ」と大見得を切るので何をするのか期待をすれば、西部劇の音楽にあわせゴーストライダーと延々と走り続け、目的地に着くや否や「じゃ!」と居なくなるし、とってもそんなことを言える状況でもないゴーストライダーに「いつの日かお前を倒す!」と宣言されたメフィストが「なにおぅ!」と激昂するので、てっきり大バトルが勃発するかと思いきや、やっぱり「じゃ!」と居なくなってしまうトンチンカンな方向では記憶に強く残るシーンばかり。

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しかしながら、この作品をトンチンカンな物にしている最大の要因は、主演であるニコラス・ケイジ。“イケてないハゲ”初代王者。青い全身タイツ姿の自分を客観的に想像すれば分かるだろうに、それでもスーパーマン役にこだわり続けた程のアメコミファンである彼。きっと彼の脳内ではビシリとキマってたんでしょうねぇ。そんな思い入れと思い込みの強さが顕著に表れてしまった本作では、“ジョニー・ブレイズを如何に表現するか?”ではなく、「オレ、今ゴーストライダーだぁ!」との喜びの方が前面に出てしまい、その冷めやらぬ興奮によるいつも以上のオーバーアクションと勘違いに彩られたコスプレショーの様相に。まぁ憧れのヒーローを演じられたんだから嬉しいのも分かりますが、肝心の見せ場のほとんどをいつも以上にツルリンとしたガイコツ面でいなきゃなんないのは、どうなんでしょうねぇ。
程よい下品さが魅力的だったエヴァ・メンデスや、13年経ったらニコラス・ケイジになってしまう悪魔の呪いの恐ろしさを痛感させられたマット・ロングらが、あまりの暑苦しさに目から湯気まで出ちゃってるニコラス・ケイジの影にすっぽりと隠れちゃってはいるが、“西部劇っぽいから”という理由で選ばれたに違いない『シェイクダウン』『ワンス・アンド・フォーエバー』のサム・エリオットと、“バイクだから”で選ばれたはずの『イージー・ライダー』『悪魔の追跡』のピーター・フォンダら、キャスティングがベタを通り越して安易な二人の重厚さが、この作品に辛うじて安定感を与えた結果にも。

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これもある意味カミングアウト

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2007年08月31日

ギャングスターズ 明日へのタッチダウン (Gridiron Gang)

監督 フィル・ジョアノー 主演 ドゥエイン・“ザ・ロック”・ジョンソン
2006年 アメリカ映画 125分 ドラマ 採点★★★★

いざ未成年による凶悪犯罪が起きると、やれ「厳罰化だ!」やれ「更生だ!」と大騒ぎになるものの、騒いでいる割には行動にはさっぱり移っている様子が伺えない気も。基本的には厳罰化に反対ではない私ではあるものの、更生と原因究明をないがしろにして「怖い怖い」と長期間隔離するだけなら、なんかアレですけど。

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【ストーリー】
いくら指導と更生に尽力しても再度犯罪に手を染めてしまう少年の多さに憂いていた少年院の指導官ショーンは、フットボールチームを作り、団結力や生きがいを見出させようと思いつくが…。

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実話を基にした、『U2/魂の叫び』『ステート・オブ・グレース』のフィル・ジョアノーによる一本。受刑者によるフットボール映画といえば真っ先に『ロンゲスト・ヤード』が浮かぶが、受ける印象はどっちかと言えば『飛べないアヒル』だったりも。
タイトルを観ただけで、最後にロック様が少年達に担ぎ上げられている姿まで容易に目に浮かんでしまう本作。事実、反目・団結・挫折・勝利と全てにおいてベタな展開と、プールサイドに立てば引きずりこまれて「やったなー、コイツー!」となるお約束事が満載なだけに、驚きや目新しさは一切ない。しかしながら、それら全てのお約束事を照れ隠しのようなヒネた演出や、エモーショナル過多な演出で絵空事のように描くのではなく、過酷な環境を含め淡々と描くことで問題の根深さとその中でも努力した登場人物らの偉業の大きさが伝わってくるとともに、作品全体に安心感と安定感を与えることに。「よし!フットボールをしよう!」と決めるまでの経緯が不鮮明だったり、主人公が持つ影の部分に踏み込めていない浅さも目立ってはいるが、有無も言わさずグイグイと進む真っ直ぐさに、そんな不満も忘れ去ってしまうことと。
劇中非常に映画的な展開を見せる場面が、エンドロール時に流れるドキュメント映像と丸っきり同じだったりするのに、ちょっと驚いたりもしましたが、本作といい『ステート・オブ・グレース』といい、落ち着いた温度の低めな作品ばかり撮っているので、監督本人も冷静な人物かとばかり思っていたら、メイキングに出てきたのはテンションの異常に高いDJクオールズみたいな方だったので、更にビックリも。

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行動も視線もひたすら真っ直ぐな本作。そのひたむきさを生み出しているのは、何よりもやはり指導官ショーンに扮するロック様。悲しければベソをかき、悔しければベソをかく、何かにつけて泣いてばかりいる犯罪者といってもやっぱり子供の受刑者たちに対しての理想の大人像として君臨するロック様。厳しい練習を励まし励まし達成させる様は、深夜の通販番組でお馴染みのアレのようでもあるが、子供たちの更生の為に身体を張り、時に犯してしまう過ちをすぐさま謝罪するスコーンと真っ直ぐに突き抜けた体育会系主人公を好演。“好演”というよりは、WWE入団前は大学フットボールの花形として活躍したロック様以外に適任者が浮かばないほどの適役。プロレス界のスターとして『ハムナプトラ2/黄金のピラミッド』に鳴り物入りで出演するも、後にスピンオフが生まれるほど強烈な印象を残したとはいえ腰ミノ一丁の筋肉イロモノ扱いであったロック様も、徐々に服を着るイエロー・キャブ方式で『ランダウン ロッキング・ザ・アマゾン』『ワイルド・タウン/英雄伝説』アクションスターとして幅の広さを見せ始め、大物が顔を揃えた『Be Cool/ビー・クール』では類稀なるコメディセンスを発揮し、見所のない作品の中で唯一の見所となることに。で、思い入れの強さからか、映画スターとしての更なる飛躍を願ってか、本名でのクレジットとなった本作。内から放たれる強烈な存在感に、今後も目を離せない存在となることに。

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ロック様同様ルーツが非俳優系ながらも忘れ難い印象を残す『トリプルX ネクスト・レベル』のイグジビットや、しっかりとキャラ分けされた少年達も印象深い本作。満足度も高いだけに褒めて終了したいのもヤマヤマなのだが、最後にちょっとグチを。
何の工夫もされず投げ捨てられるかのように日本公開されたアダム・サンドラーの『ロンゲスト・ヤード』のレビューに、配給会社に対する不満をダラダラと書いたのだが、今となっては公開されたこと自体が奇跡だったようにも思えてしまう本作の扱い。もう既に口にすることすら恥ずかしい“欧米か!レーベル”の一本として『タラデガ・ナイト オーバルの狼』『コベナント 幻魔降臨』に続いてのリリース。内容を伝え難いなり、主演が全くの無名であるのならまだしも、売りがいくらでも見つかりそうな本作でさえ劇場に掛からないってのは、いかがなものかと。スクリーン数も公開本数も増え続けているとはいえ、公開されているのは超大作にTVスペシャルに“泣ける”しか売り文句のないメソメソ映画ばかり。“映画”としてカウントしていいのかすら疑問の作品を観ている観客を、“映画人口”としてカウントするのもどうかと思いますし。もうこの救いようのない状況は、売り手側の問題ももちろん大きいが、買い手側の問題も大きいなぁと。

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まずは親がシッカリしないと

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2007年08月24日

コベナント 幻魔降臨 (The Covenant)

監督 レニー・ハーリン 主演 スティーヴン・ストレイト
2006年 アメリカ映画 97分 ファンタジー 採点★★

大雑把に一月を分ければ、一日限りの“給料日”と30日近くの“給料日前”に分類できる私。計画性ってのをどっかで学び忘れちゃったようです。まぁお金に限らず、何か新しいものを手に入れると使わないときが済まない私なもんで、「持ってるのはいいけど、使っちゃダメよ」ってのは拷問以外のなにものでも。

【ストーリー】
魔女狩りの迫害を逃れ、何百年もの間沈黙の誓いを守り続けてきた特殊能力を持つ一族の末裔である4人の若者たち。今では共に名門私立高校に通う彼らであったが、ある日一人の転校生の不審な死亡事件が発生。彼らの周囲に不穏な空気が流れ始める。

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同名のグラフィックノベルを、『プリズン』『マインドハンター』のレニー・ハーリンが映画化。
“セーラムの魔女裁判”“18歳になると最大化する特殊能力”“使うと老ける”など面白い設定だけはてんこ盛りなのだが、基本的に脳ミソが筋肉質なレニー・ハーリンは「あー、なんだか分かんね!」と消化することが出来なかったようで、全ての設定が別になくてもいいような作品に。「ハリー・ポッターなんてクソ食らえ!」と威勢は非常に良いのだが、特殊能力を持つ人間が4人も同じ学校にいるという美味しい状況を全く活かす事が出来ず、学園物としての側面も弱いため主人公らが高校生であることすら観ている間に忘れてしまうことも。やたらとガラスと水しぶきが飛び散るラッセル・マルケイ風映像はそれなりに迫力があるのだが、全体的にはお蔵入りが決定したTVのパイロット版のような印象。まぁ、それでもヤケクソのようなクライマックスはそれなりに面白いので、★ひとつオマケで。

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このTV的印象を強めているのが、出演する若手俳優のアクの弱さ。1クールもあればさすがに顔と名前も一致するだろうし、キャラの違いも明確になるのだろうが、90分で明確にするにはあまりにインパクトがなさ過ぎで、1時間を経過したくらいでようやく主人公が判別できる程みなキャラが被りすぎているのは困ったもの。まぁ判別できたのも、主人公以外が物語に絡まなくなったからなんですが。最初っから4人いる必要がなかったようですねぇ。

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あー!なんだか分かんねぇから、ドーン!!

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2007年08月22日

かちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲート (龍虎門)

監督 ウィルソン・イップ 主演 ドニー・イェン
2006年 香港映画 94分 アクション 採点★★★

40歳ってのが遠い将来じゃなくなってきちゃった今日この頃。いよいよもって大人にも程があるって程の大人になってしまうのかと戦々恐々の中、現実逃避にでもと映画を観てみれば、トム・クルーズにしろブラッド・ピットにしろキアヌ・リーヴスにしろ、そこらの兄ちゃんに毛が生えたような40代ばかり。まぁ欧米人だからとアジアを見てみれば、リンチェイなんかアップにさえならなければ修学旅行中にハグレてしまった中学生にしか見えない時も。よし。50になったら大人になろう

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【ストーリー】
親と生き別れ、行き場を失った子供たちが流れ着く“龍虎門”で育ったタイガーは、ある日裏社会の組織“江湖”の一味とやり合うが、圧倒的な強さを誇るドラゴンという男にやられてしまう。しかし、そのドラゴンこそが、タイガーの生き別れの兄であった。そんな中、ドラゴンは敬愛するボスを、タイガーは親代わりの師匠を巨大組織“羅刹門”に殺されたことから、彼らは復讐に立ち上がる。

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香港では70年代から続いているという人気コミックを、『SPL/狼よ静かに死ね』『香港ゾンビ』のウィルソン・イップが映画化。
コミックの映像化ということもあって、所在不明だがインパクト重視の舞台の中、重力無視のアクションがこれでもかと詰め込まれているが、それぞれのアクションの始動点から終着点に至るまでの細かい演出がしっかりと施されており、それを鍛錬された技術と見せるべきものはとことん見せる必要性の高いクドい演出で描かれている為、エフェクトのみに頼ったアクションを何の工夫もなく延々と映すだけの凡百な作品と一線を画す出来となっている。ストーリーもあれこれと詰め込みすぎずストレートにまとめ上げているので、アクションに魅入っている間にこれまでのストーリーを忘れてしまう心配もない。まぁ原作は全く知らないので、膨大であろう物語のどの辺を切り取っているのかサッパリなんですが。ヒロインとの出会いがビックリするほど強引な展開だったり、仮面のラスボスが兄弟の父親なのかなぁと匂わせながらも尻切れ的に終わっちゃったりと、やや駆け足で走りきった印象もあるが、アクションをこなす各々のスピードがそれをさらに上回るスピードで驚かせてくれるので、然程不満にも感じない。

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このビックリ満載の作品の中でも、そのアクション以上に驚かせてくれたのが、ドニー・イェン。『香港国際警察/NEW POLICE STORY』のニコラス・ツェーと“インファナル・アフェア”シリーズのショーン・ユーという、ルックスの良さはもちろんのこと、実力と人気も高い二人が出演する“生き別れた兄弟の物語”ってんで、てっきりこの二人が兄弟で、ドニーさんは若者を育成する為にも一歩下がって師匠なりラスボスなりを演じているものと思いきや、ドニーさんがニコラス・ツェーの兄役だ。17歳の歳の差なんて、全く気にしている素振りもない。また、若い奴らに負ける気なんて毛頭ないドニーさんは、ロン毛率の異常に高いこの作品の中で、まるで髪の長さこそが若さの証かのように、誰よりも長いロン毛を披露。あまりに長過ぎて、顔が全く見えなくなってたりもしますが。基本鬼太郎のようになってしまっているドニーさんだが、何かある度にブワーッと正面から風が吹いて顔があらわになるシーンが自分でもカッコいいと確信したのか、何度も何度もスローで繰り返す自分大好き度は『ブレイド3』のウェズリー兄貴を遥かに凌駕する程のもので、そんなドニーさんが大好きな私はTVの前で身悶えして喜んでいたものです。まぁ、あまりにもカッコいいドニーさんを撮るのに夢中になり過ぎて、映画自体がモタモタしちゃうことも少なからずありましたが、ドニーさんの映画はドニーさんが一番カッコ良くなきゃダメなので、これはこれで問題なし!

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緑ドニー 青ドニー 赤ドニー

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2007年08月17日

キャリー2 (The Rage: Carrie 2)

監督 カット・シア 主演 エミリー・バーグル
1999年 アメリカ映画 104分 ホラー 採点★★★

ラジオやTVなんかで、ミュージシャンを自称する方々が「いやぁ、アメリカはいいよ!自由で!」と言い切っちゃってるのを耳にすることが。“自由”と“個性”ってキーワードをやたらと散りばめてアメリカを語り、しまいにはそれで日本のイジメ問題まで解決しちゃおうって輩まで。まぁ、観光で数日ほど大都市を訪れただけだったり、“ビバリーヒルズ青春白書”なんかを鵜呑みにしちゃったんでしょうが。

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【ストーリー】
周囲から孤立した高校生活を送っているレイチェル。そんなある日、唯一の親友であるリサが学園の花形であるフットボール部員に弄ばれたことを苦に自殺。やがて彼らの魔の手がレイチェルに迫った時、レイチェルに秘められていた力が覚醒し…。

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スティーヴン・キングの長編処女作を『ミッション・トゥ・マーズ』のブライアン・デ・パルマが1976年に映像化した傑作『キャリー』の23年ぶりの続編。前作と比較しあーだこーだ言いたくなる気持ちも分からなくはないが、あんまり躍起になって比較ばかりしていると本作の持つ面白さやテーマを見失ってしまうことにもなりうる一本。なによりも、前作との繋がりを協調してしまった部分が邪魔ですし。
一見脳天気に自由と青春を謳歌しているように見えるアメリカの学園生活にも、揺るぐことのない階級制度やイジメ問題があるってのは『エレファント』のレビューでもちょろりと書いたのだが、ここでも簡単に。
学園生活において頂点に君臨するのが、学校の花形であるフットボール部やチアガールら“ジョックス”と呼ばれるグループ。ジョックスがその他のグループをいじめているってのが基本的な構図でも。大体が筋肉と金髪が自慢。親が地域の有力者だったりすることも多い。『キューティ・ブロンド』のエル・ウッズや『ホット・チック』のジェシカ、ディラン・マッケイなんかが典型。スポーツ推薦枠を利用し大学進学を狙うが、上手くいかない場合は地元に留まりやたらと子沢山な中古車ディーラーになったり。人生最大のイベントは、プロムパーティー。
自力での大学進学を狙っているのが、がり勉集団の“ブレイン”。『25年目のキス』のリーリー・ソビエスキーなんかが、それ。また、ジョックスからこっぴどく痛めつけられているのが、“ナード”や“ギーク”と呼ばれるオタク連中。『ロード・トリップ』のDJクオールズや“アメリカン・パイ”シリーズのアリソン・ハニガンなんかが、そんな感じ。そんなナードな連中よりも底辺にいるのが“ゴス”。マリリン・マンソンやガービッジ、ナイン・インチ・ネイルズやバウハウスらを愛聴し、黒い髪に黒い服装が特徴の彼らは、人よりちょっとだけ早く大人になってしまったが為か、『パラダイス・ロスト』のダミアンらのように世の中を冷ややかに見つめている。ティム・バートンのように成功を収める例も少なくないが、コロンバイン事件のように鬱屈した思いが爆発してしまう例も多い。

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で、そんなゴスが主人公である本作。先に挙げたミュージシャンなどのゴスアイテムを随所に配置し、不遇な家庭環境を描くことでゴスとして生きるレイチェルの苦悩が浮き彫りとなっている。また、主人公だけではなくジョックスならではの悩みも描くことで、高校生活の縮図が完成されている結果にも。基本的なストーリーラインは前作と大差がないのだが、夫に捨てられたことでより一層セックスと男性に対する嫌悪が深まり、宗教に全てを捧げる母親の強い影響かにおかれていたキャリーと異なり、本作のレイチェルは特殊な能力って点を除けば比較的身近な存在として描かれている。それが、暗黒青春映画としての側面を強く打ち出すことにも。そんなレイチェルがジョックスにより酷い仕打ちを受け、怒りを爆発させるクライマックスにはカタルシスを感じることが出来るのだが、如何せん見せ方が平坦。カット・シアによる演出は、おおよそ劇場で公開されたとは思えぬほど隅々凡庸で、絶頂から絶望へと叩き落す落差がその演出力不足がたたって上手く活かされていない。また、前作との繋がりを強調したいがためだけに存在するエイミー・アーヴィング扮するスーの行動も唐突なだけで説得力がなく、重要な役割にしたいと思っている割には扱いがゴミのようだったりと、非常に中途半端。同様にレイチェルとキャリーに繋がりを持たせてしまったが為に、身近な題材になりうる本作を、特別な人の物語にしてしまったのも残念でならない。とは言え、本作公開時とほぼ同時期に発生したコロンバイン高校銃乱射事件と奇妙な繋がりすら感じさせる学園生活の描写は秀逸で、なにかと考えさせられる作品となっているのも事実。

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レイチェルに扮するのは、TVが主戦場となっているらしいエミリー・バーグル。店に立ち寄っただけで万引き犯と決め付けられてしまうそのいでたちはガービッジのシャーリー・マンソンを髣髴させ、決して美人と言えるものではないのだが、普段の絶望と怒りが宿った冷たい目線とのギャップか、時折見せるはにかんだ笑顔がとっても可愛い。男ってのはこんな独自の空気を持つ女性に滅法弱かったりも。
『キャリー』におけるウィリアム・カットであるジェシーに扮する『バッド・チューニング』のジェイソン・ロンドンや、エイミー・アーヴィングらも印象深いが、なんと言っても衝撃的なのが『トラウマ』『ドミノ』のミーナ・スヴァーリ。まぁ、その退場の仕方が衝撃的なんですが。

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理解しているつもりで近づいてくる大人が一番うざったい

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2007年07月06日

カサンドラ・クロス (The Cassandra Crossing)

監督 ジョルジ・パン・コスマトス 主演 リチャード・ハリス
1976年 西ドイツ/イタリア/イギリス映画 128分 パニック 採点★★★★

映画の面白さってのをTVで学んだ子供の頃。放映されるラインナップが変わり映えしていなくても、それこそ何度も何度も同じ映画を楽しんだもので。如何せん終わる時間が11時近くと、親が「いい加減早く寝ろ!」と怒り始める時間ではあったものの、必死に頼み込んで見させてもらっていたものです。その映画の興奮を頭の中で反芻しながら眠りにつくのが何とも幸せだったんですが、逆に後味が悪い映画だったりすると眠れなくなってしまうこともしばしば。『家』とか『ファンタズム』なんて、夢にまで出てきましたし。

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【ストーリー】
過激派がジュネーブの国際保健機構本部の爆破を試みるが失敗。その際、極秘に開発されていた細菌に感染してしまった一人が、ヨーロッパ大陸横断列車へと逃げ込む。やがてその細菌により伝染病が広まってしまった列車を軍部は秘密裏にポーランドへと隔離しようと企むが、行く手には老朽化したカサンドラ大鉄橋が待ち構えており…。

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パニック映画ブームの真っ只中、アイディアは頂き物であっても、その娯楽志向と“見せるべきものは大体3割増しで見せる”サービス精神に溢れていたイタリア映画界作り上げた、観終わった後胃にドッシリと残るパニック映画の快作。
ポルターガイスト』のジェリー・ゴールドスミスによる、美しい旋律の中に、これから迎える運命を予感させるような不穏で不吉な不協和音が混じりこむ素晴らしいテーマ曲をバックに、ジュネーブの街並から物語のスタート地点となる国際保健機構本部までを一気に空撮で収めるオープニングから見せ場に次ぐ見せ場の連続で、ダレることなく一気に突っ走る一本。乗客が千人という大所帯ながらも、物語に関わる人物を最小限に抑えているため、ダレ場になりやすい人物紹介も手短に済んでいるのも、このスピード感に繋がっている。さすが、後に見せ場だけは豊富な『ランボー/怒りの脱出』や『コブラ』を手掛けたジョルジ・パン・コスマトスだけある。

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娯楽志向の強い作品とはいえ、ことが人災だけにスコーンと突き抜けた明るさは全く見当たらず、全編を通して無常感と遣る瀬無さに溢れた本作。無情で融通の利かない国家の象徴としてパニック映画には欠かすことの出来ない白い防毒服の男達が、「シュコーシュコー」と呼吸音を響かせながら登場するクライマックスになると、ユダヤ人虐殺の忌まわしき記憶も物語に絡み始めその遣る瀬無さはますますヒートアップし、エンディングでピークを迎えてしまう。橋から転落した列車内の阿鼻叫喚な地獄絵図をこれでもかと見せ、死体が累々と流れる川面をバックに抱き合う主人公らの姿には、見事なまでにハッピー感なし。抱き合う主人公らを見つめる少女が待っている母親は、ついさっき死んだばっかりですし。子供心に「凄い嫌なものを観ちゃったなぁ」「防毒服の連中は信用しちゃダメだ」と深く刻まれた本作。最近、こういうトラウマになる作品ってめっきり少なくなっちゃいましたねぇ。

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ワイルド・ギース』のリチャード・ハリスを筆頭に、ソフィア・ローレン、バート・ランカスター、エヴァ・ガードナーと国際色豊かな顔ぶれが揃った本作。“オールスター映画”って呼ぶには若干華やかさには欠けていますが、作品自体が華やかじゃないのでこれでいいのではとも。ただまぁ、O・J・シンプソンも出ているんだから、ジョージ・ケネディとアーネスト・ボーグナインも出ていて欲しかったですが。そんな渋味を通り越して苦味すら感じる顔ぶれの中で目を引くのが、富豪夫人のヒモを演じる『ボビー』のマーティン・シーン。もちろん『バーバレラ』のジョン・フィリップ・ローも、『悪魔の墓場』のレイモンド・ラヴロックも忘れがたいですが。で、エミリオとチャーリーのパパ。30年も前から芸風が変わっていないことにも、息子らもまるっきり芸風が一緒なのにも驚かされたが、やはりパンツ一丁での三点倒立姿には卒倒。色んな意味で、この辺も遣る瀬無かったり。
それにしてもリチャード・ハリス。黒のハイネックが最も似合う男性の一人。頼り甲斐も力強さも颯爽とした感じもないってのに、どうしてこんなにもカッコよく見えてしまうのだろう。この頃の彼には、どんな状況でもなんとか切り抜けてしまいそうなオーラがある。程よい皮肉も混じった彼の口ぶりも含め、“大人のお手本”として子供心に刻まれた彼だけあって、『許されざる者』でボコボコにされたまま消える彼に強いショックを覚えた記憶も。

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行動は早いが見捨てるのも早い

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posted by たお at 00:17| Comment(2) | TrackBack(0) | 昔観たアレ■か行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月17日

グエムル −漢江の怪物− (The Host)

監督 ポン・ジュノ 主演 ソン・ガンホ
2006年 韓国映画 120分 パニック 採点★★★

持ち前のワガママさと気まぐれさがあってか、人に対する好き嫌いが極端にハッキリしている私。「好き!!」って人にも「嫌い!!」って人にも、わざわざ言葉で説明する必要がないくらいに態度で示しております。好きになるタイプがハッキリしているのと同様、嫌いになるタイプってのもその理由も含め全くブレずにハッキリしているせいか敵も多いのでございますが、生憎自分の事を嫌いな人の事を真っ先に嫌いになる性質なもんで、敵になられても別段生活に変わりはないのですが。

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【ストーリー】
不法投棄された薬品が原因で、ソウルを流れる巨大な河“漢江”に謎の巨大生物が現れる。逃げ惑う人々を次々と襲うその怪物は、付近にいたカンドゥの一人娘ヒョンソを連れ去ってしまう。ヒョンソの生存を信じて疑わないカンドゥらパク一家は、ヒョンソを連れ戻す為に怪物に立ち向かうが…。

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『JSA』『ユリョン』『友へ チング』など、以前は大いに楽しんでいた韓国映画だったが、『ブラザーフッド』を境に色々と思うこともあり敢えて観る事もなくなったのだが、最後に楽しんだ『殺人の追憶』のポン・ジュノ作品で、せっかく怪獣も出ていることだし観てみようかなと。まぁ、やっぱり色々と思うことはありましたねぇ。
ひょっこり現れた怪獣によって平和な河川敷が瞬く間に地獄絵図に変貌してしまう序盤は、日常に怪異が入り込む描写としては非常に秀逸。その力強いオープニングを切り口に、中盤にこそ若干のダルみはあるが、強い家族愛を軸に、笑い・涙・恐怖をバランス良く配合し独特のウェットさで包みつつ最後までオープニングの力強さを失うことなく突っ走ったポン・ジュノの力量に感服。家族愛をストレートに映し出す食事のシーンや、そのあっけなさ故に家長の最後のシーンには、胸を強く打つものもある。しかしながら、あまりにもあからさまに打ち出された“大国に蹂躙される韓国”というテーマに上手く気持ちが乗り切れず、この評価に。

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終始ジャージ姿のペ・ドゥナに心を奪われがちだった本作だが、やはり本作の目玉は怪獣以上に強い印象を残した、『殺人の追憶』で土手越しに見事なドロップキックを決めていたソン・ガンホ。今回も最後の最後はガンホのドロップキックで怪獣をやっつけるものだろうと思っていたが、さすがに相手が大きすぎたのか、ドロップキックは見れずじまい。残念。しかし、『殺人の追憶』でガンホに痛めつけられていたパク・ヘイルがお返しとばかりに、座った体勢から武藤敬司もかくやと思われる程の綺麗な低空ドロップキックをガンホにお見舞い。TVや映画で観る限り、手よりも先に足が出るらしい韓国。身を守る為にも、訪れる前にドラゴンスクリューを会得せねばと強く胸に刻み込む。
そういえば、『冷血』『誘拐犯』のスコット・ウィルソンがチラリと出ておりましたねぇ。

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撮れる時に写真は撮っておいた方がいい

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posted by たお at 00:00| Comment(18) | TrackBack(58) | 昔観たアレ■か行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする