2013年03月11日

エイリアン バスターズ (The Watch)

監督 アキヴァ・シェイファー 主演 ベン・スティラー
2012年 アメリカ映画 102分 コメディ 採点★★★

なんでこう、大して親しくない人に限って「やぁやぁ!腹を割って話そうぞ!」と言ってくるんですかねぇ?“腹を割って話さないと親しくなれない”と考えてるのかも知れないんですけど、順番が逆なのではと。でもって、そういう人に限って自分はさっぱり腹を割らなかったりも

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【ストーリー】
コストコ店長のエヴァン。ある夜、職場の深夜警備員が何者かにより惨殺される事件が発生し、彼は町を守るために自警団を結成する決意をする。エヴァンの呼びかけに集まったボブら三人は自警そっちのけで遊んでばかりで、エヴァンはその温度差の違いにイライラを募らせる。そんな中、彼らの前に突如エイリアンが現れ…。

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セス・ローゲン&エヴァン・ゴールドバーグの『スーパーバッド 童貞ウォーズ』組による脚本を、『リアル・スティール』のショーン・レヴィが製作を務め、『ホット・ロッド/めざせ!不死身のスタントマン』以降もうちょっと活躍するかと思いきやそうでもなかったアキヴァ・シェイファーがメガホンを握ったSFコメディ。なんとも魅惑的な組合せで。
社交的で様々なクラブを作って充実した日々を送るも真の友人は一人もいないエヴァンと、ぐだぐだとした男同士の時間を満喫するボブらとの温度差を笑いと物語の中心に据え、“会員以外お断り(含む宇宙人)”のコストコ規則に則り宇宙人の侵略から平和な町を守る様を描いた本作。セス・ローゲンらしいぐだぐだ感と、思いのほか気合の入ったエイリアンの造型に血生臭さが生むギャップのインパクトも大きい。男専用サロン的な楽しさに、ボンクラが世界を救うワクワク感、父親/夫としての苦労などネタの数もバリエーションも豊富で楽しめた一本。
ただまぁ、それら豊富なネタがひとつにまとまっているとは言い難く、観るべきポイントが散り散りのとっ散らかった作品と言う印象も否めず。コメディ界を代表する新旧キャスト/スタッフの組合せが生み出す化学作用を期待していただけに、ちょっとそこが惜しい気がしてならない一本で。

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主人公のエヴァンに扮するは『ペントハウス』のベン・スティラー。地域貢献に熱心で社交的であるという自分の理想像を表向きには完成させてるが、自分本位の仕切り屋であるため結局は他人を寄せ付けず孤独である主人公を好演。神経質すぎて他者と上手くやっていけない本作の様な役柄や、破壊的なまでに強烈なキャラ芸でやっぱり他者を寄せ付けない役柄など、基本的に孤独な役柄をやらせると光るベン・スティラーならではの仕事っぷりで。
そのベン・スティラーを取り囲む自警団の面々には、『ウエディング・クラッシャーズ』のヴィンス・ヴォーンを筆頭に、随分と痩せてて驚いた『ピンチ・シッター』のジョナ・ヒル、“ハイっ、こちらIT課!”のリチャード・アイオアディらがキャスティング。空いた時間は可能な限り楽しみたいヴィンス扮するボブや、内側に秘めた暴力的な衝動がばんばか溢れ出ている&いい歳こいて母親と同居中であるジョナ扮するフランクリンなどそれぞれが得意芸を披露する中、初めて見た顔ってのもあるんですけど、どこか地に足のついていないフワっとした感じのリチャード・アイオアディの存在感は大きかったなぁと。
その他、『カンパニー・メン』のローズマリー・デウィットや、『ロック・オブ・エイジズ』のウィル・フォーテ、着ぐるみ役者の雄『パンズ・ラビリンス』のダグ・ジョーンズらも出演。もちろんダグはエイリアン役で。

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非会員の前に立ちはだかる壁

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2013年01月16日

憧れのウェディング・ベル (The Five-Year Engagement)

監督 ニコラス・ストーラー 主演 ジェイソン・シーゲル
2012年 アメリカ映画 124分 コメディ 採点★★★

夫婦や恋人間の相性や愛情度が100%という現実離れした状態であっても、他人同士である以上は一方の好都合は他方の不都合であったりするんですよねぇ。何かを失ったり我慢をしなきゃなんない状況が必ず訪れる。お互いそんなもんだって理解してればいいんですけど、往々にして好都合側が「何が不満なの?」ってな感じになっちゃってるんで上手くいかないんでしょうねぇ。

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【ストーリー】
相性抜群で誰の目にも完璧なカップルに見えたトムとヴァイオレット。婚約も果たし彼らの未来は順風満帆に思えたのだが、念願だった心理学の研究者の職を得たヴァイオレットに付き添いサンフランシスコからミシガンへと越したことを機に、彼らの関係は徐々に狂い始め…。

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寝取られ男のラブ♂バカンス』のニコラス・ストーラー&ジェイソン・シーゲルによるラブコメディ。製作には彼らの他、『素敵な人生の終り方』のジャド・アパトーも加わる強力布陣。
愛する婚約者の夢を叶えるために、住み慣れた土地とやりがいある仕事を捨てついて行ったはいいが、どんどん花開く恋人とは裏腹に落ちぶれていく男の姿を描いた本作。「女性は“結婚”のせいで皆こんな目に遭ってたのよ!」ってな皮肉さではなく、“優しさ”についてくる不都合や我慢、相互理解の大切さ、そして“男の不器用さ”ってのをこと細かく描きだす。ジェイソン・シーゲルは本当にこの“男の不器用さ”を描くのが上手い。上手過ぎて分かり過ぎて、観賞中ただ黙って頷き続けるのみ
そんな男の生態のみならず、救いを与えてくれる親友の存在など“男目線”が非常に充実している反面、ややそこ一辺倒なので女性側が一方的に攻め込んでいる印象を残してしまうのが気になる所でも。ハッピー全開の締め括りの中にどこかもやもやしたものを残してくれる良作だけに、ちょっと惜しいなぁと。

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トムに扮するのは、『ハッピーニート おちこぼれ兄弟の小さな奇跡』『ザ・マペッツ』のジェイソン・シーゲル。ボヨっとしてヌボーっとした風貌が、優しさ故に不満を内側に抱え込んでしまうトム役にぴったり。アパトーギャングの脱ぎ担当の名に恥じぬ脱ぎっぷりも見事でしたし。考えてみれば、アパトーギャングの中で役者としても作り手としても一番才能を開花させた一人だなぁと。
一方のヴァイオレット役には、ジェイソン・シーゲルとの共演も多い『アジャストメント』のエミリー・ブラントが。シャキシャキハキハキと主導権を握る彼女と、ボーっとしてる内に主導権を握られるジェイソンとのコントラストが抜群。共演が多いのも納得。
その他、『パイレーツ・ロック』のリス・アイファンズ、『スペル』のデヴィッド・ペイマーらがキャスティング。中でも、馬鹿が立派な大人になっていくサイドストーリーを成立させてたトムの親友アレックスに扮した、『マネーボール』のクリス・プラットが絶品だったなぁと。

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前途には多難と洋洋がワンセットで

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2012年11月01日

アルゴ (Argo)

監督 ベン・アフレック 主演 ベン・アフレック
2012年 アメリカ映画 120分 サスペンス 採点★★★★

映画とか小説って、フィクションではあるけどあんまりにも現実からかけ離れ過ぎないよう慎重に辻褄合わせをしていたり、ハプニングに因果関係があったりと、物語が破綻しないよう隅々計算がされてますよねぇ。その反面、現実ってのはハプニングの塊みたいなもの。“事実は小説より奇なり”って言いますけど、それって当たり前のことなんですねぇ。

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【ストーリー】
1979年11月イラン。民衆がアメリカ大使館を占拠し、52人の職員が人質となる事件が発生。その難を逃れた6人は、秘かにカナダ大使の私邸に逃げ込む。見つかれば公開処刑も免れない状況下、アメリカ政府による救出は絶望的であった。そんな中、CIAの人質奪還専門家トニー・メンデスがある計画を思い付く。それは架空の映画企画を立ち上げロケハンと称してイランに入国、6人をスタッフということにして出国するという奇想天外な計画であった…。

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1979年に発生した“イランアメリカ大使館人質事件”の裏で展開し、1997年までCIAの関与を極秘事項として情報公開されていなかった“カナディアン・ケイパー”を、『ザ・タウン』『ゴーン・ベイビー・ゴーン』のベン・アフレックが監督・主演を務めて映像化した実録サスペンス。
基本的にフィクションである映画が事実を描き、その中で嘘の象徴でもある映画を作るって嘘をつく、なんか万華鏡をグルグル回してるかのような構造がまず面白い本作。そこに至るまでの経緯をオープニングで簡潔に説明し、単なる善悪の衝突ではない事を予め明確にしておく作りも非常に上手い。「オラんとこでもスター・ウォーズみたいなの作っぺ!」という当時の風潮や扮装、事件の状況や背景などの再現性の高さも見所。詐欺師まがいのプレーヤーが跋扈する“デカイ事だけ言って映画を作らないのが一番儲かる”ハリウッドの内幕劇としても面白い一本。「そういうこともあるだろうなぁ」とは思っていても、エンタメ界の人間が国家の諜報活動に一役買ってるって事実を改めて突き付けられると、やっぱりビックリしますし。
重めのテーマでありそのテーマ性を損なっていないにもかかわらず、娯楽映画としての一種の軽快感を保っているのにも唸った本作。成功するのが分かっていながらも手に汗をぎっちりかかせられたクライマックスの脱出劇など、サスペンス描写は一級品。これまでの作品もそうだったのだが、監督ベンアフってのは“映画も撮って自尊心を満たすスター”なんかではなく、“本質は映画監督なのになんでか俳優もやってるスター”って感じすら。この手堅さはもう職人級。溢れんばかりのボストン愛(及びレッドソックス愛)に代わり得る特異性ってのが見当たらない、手堅さばかりが前に出た個性の薄い作品になっちゃってた印象も否めないが、逆に言えば非ボストン映画でも社会性と娯楽性のバランスが取れた面白い作品を撮れるってのを証明した形でもあるので、今後の“監督”ベンアフにますます期待。

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主人公のトニー・メンデスに扮する、『ハリウッドランド』『世界で一番パパが好き!』のベン・アフレック。善人役であっても下級生をイジめて喜んでいるような意地の悪さが見え隠れしてしまう彼だけに、全幅の信頼を置くにはいま一歩不安な主人公を好演。サスペンスを盛り上げる上ではベストのキャスティングかと。これがマット・デイモンとかであれば完璧に善人である感じが出てしまい、実話ベースとは言ってもフィクションの安心感が生まれてしまうでしょうし。
また、『猿の惑星』でアカデミー名誉賞(当時はメイクアップ賞ってのがなかった)を受賞し、その後の特殊メイク界をけん引したジョン・チェンバース役に『狼の死刑宣告』のジョン・グッドマン、『ドライヴ』のブライアン・クランストン、『ザ・マペッツ』『リトル・ミス・サンシャイン』のアラン・アーキンらも出演。特に、チェンバースと共に6人のための偽装映画プロダクション“スタジオ6”を設立する、典型的なハリウッドプロデューサーに扮したアラン・アーキンは素晴らしい。基本的には下衆な人種のジャンルに留まりながらも、男気や使命感や正義感を奥底に燃えたぎらせ、でもそういったものをやっぱりショービズ流に楽しんでもいる役柄を見事に熱演。
その他、『THE JUON/呪怨』のクレア・デュヴァルや、顔立ちが既に70年代な『SUPER 8/スーパーエイト』のカイル・チャンドラー、『ザ・シューター/極大射程』のテイト・ドノヴァン、『ボーン・レガシー』のジェリコ・イヴァネクらもキャスティング。
それはさて置き、救出作戦のために嘘映画制作発表まで行ったこの事件。ってことは、その広告なりを観て「うわっ!スッゲェ楽しみ!」とかなった人も案外少なくなかったりするんでしょうねぇ。で、楽しみに待ってる内に忘れちゃってて、この映画観てビックリするみたいな。エンパイア・ピクチャーズの“作れたら作るけど多分作んないよ”ラインナップを心待ちにしてたら、知らん内に会社が潰れててビックリした経験何かとは比べ物にならない驚きなんでしょうねぇ。

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企画だけ立ち上げて作らないってのが一番安全

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2012年10月28日

エクスペンダブルズ2 (The Expendables 2)

監督 サイモン・ウェスト 主演 シルヴェスター・スタローン
2012年 アメリカ映画 103分 アクション 採点★★★★★

“デートに映画”ってのが主流じゃなくなっちゃったようですけど、劇場で掛かってる作品のほとんどが“デートにも大丈夫”ってラインナップになってる気も。アクションだろうがホラーだろうが、カップルで観てもそこそこ大丈夫。非アクションスターの優男が親近感の湧く範囲で悩み、そこそこ練られたストーリーと笑い、痛快なテンポと大迫力の映像処理でアトラクションとして楽しめる作品。でもその反面、女性を誘っても「いやぁ、それはいいよぅ…」と断られる“男の映画”ってのは少なくなりましたよねぇ。肉体労働明けにビール片手に観るような、「みんなで泣けば感動100ば〜い♪」と手と手を強制的に結ばせようとする押しつけがましい歌が流れるスクリーンに向かって、「うるせぇ!こちとら一人で楽しみてぇんだよ!」と缶ビールを投げつけたくなるようなやつが。

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【ストーリー】
どんな過酷な任務であろうと体当たり勝負で解決する、バーニー率いる使い捨て集団“エクスペンダブルズ”。彼らの次なる任務はアルバニア領の山脈に墜落した飛行機から機密データを回収するという、彼らにとっては簡単なものであった。しかし、そこへ突如ヴィラン率いる武装集団が来襲。機密データを奪われた揚句に、大切な仲間の命まで奪われてしまう。怒りに燃えるバーニーは、仲間の仇を討つためにヴィランを「追って見つけてぶち殺す!」決意を固める。

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新旧アクションスターが勢揃いする、アクション映画ファンに対する御褒美映画『エクスペンダブルズ』の第2弾。今回メガホンを握ったのは、『メカニック』『ストレンジャー・コール』のサイモン・ウェスト。
「Track 'em, find 'em, kill 'em.(追って見つけてぶち殺す)」、これからの展開を一言で言い尽くすもうこれが全ての本作。重低音の銃声に爆発音、頭が吹き飛び身体が散り散りに吹き飛ぶ強烈なバイオレンス描写にこれまた重低音のスタローンの声が被さる、80年代アクションで育ったファンにとっては胎内で心音を聞いてるかの如く心地の良い夢空間。期待を外させたら天下一品のサイモン・ウェストが監督ってのに不安を感じていた作品だったが、前作以上にアクションに特化し、そこに四の五の言わせる余地のない本作を撮り上げる上で、アクション演出にだけは長けたこの監督がメガホンを握ったのは正解。テンポもアクション描写も格段と向上した、筋肉映画ファン涎だだ漏れの一本に。
もちろん爽やかなまでの疾走感を味わうアクション映画ではない。知らず知らずのうち上腕二頭筋に力が入る筋肉描写とゴツゴツとした格闘アクション、気合の入りまくったハーレーダヴィッドソンにペンまで髑髏なエクスペンダブルズ愛、そしてその合間合間に挟まれる男子会話と、全てにおいて女子禁制(但しミシェル・ロドリゲスは除く)の男子サロン的な面白さはしっかりと前作から継承しているってのも嬉しい。

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キャノンボール』が大陸を右から左へと横断するだけの映画だったのと同様、本作の筋書きも至ってシンプル。自分の存在意義など思春期の若造のような悩みなんぞ持たない完全なるヒーローに、同情するような事情なんて持ち合わせない完璧な悪役、皆が皆善良な被害者たちと単純で純粋な活劇映画の世界を舞台に、ヒーローが悪役をやっつけて人々を助ける、ただそれだけ。“筋肉版『荒野の七人』”と言うか、荒野のマッスルズと言うか。それだけを書くとなんか悪口みたいだが、もちろんそうではない。本作はスタローン&シュワルツェネッガー&ウィリスのプラネットハリウッド三羽烏を中心に、ジェイソン・ステイサムにヴァン・ダムらが勢揃いする作品である。下手に小手先で捻った設定は彼らの邪魔をするだけ。余計なアングルなど施さず、直球ど真ん中の王道で勝負してこそ彼らがみな輝けるのだ。
そもそも本作は“普通のアクション映画”ではない。主人公のピンチをふらっと現れたゲストスターが「よよよいのよい!」と助け出すのを何食わぬ顔で何度もやってのけ、それを観客が「いよっ!待ってました!」とか「ノリス屋!」とか声を掛けながら楽しむ作品である。御屠蘇が抜けきれぬまま楽しむ新春顔見世興行のような作品に★5つは甘過ぎかも知れないが、本作は0点か100点しか付けようのない一本であると思うので、縁起物としても映画としても存分に楽しませてもらった私は文句なく100点で。惜しむべきは今回もまた正月映画としての公開じゃないってこと。

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今更アレだが、スタローンは凄い。還暦をとうに過ぎてるにも関わらずあの肉体を作り上げハードなアクションに挑む姿勢ももちろんのことだが、流行の移り変わりや老いなどによってアクションスターが次々と姿を消していく中、いまだ強さと身を任せられる安心感を纏ってスクリーン上に存在している現実が凄い。
ニューシネマにトドメを差した『ロッキー』で自分の居場所を力ずくで切り開き、その後訪れた迷走を『ランボー』と“ロッキー・シリーズ”で打破するも、80年代と共にマッスルバブルも終焉を迎え過去の人に。『クリフハンガー』や『コップランド』など良作もあったが、かつての勢いと輝きを失った長い低迷気において「スタローンってもう終わりだよね」ってのが映画ファンの間の一般論で。
ところが、ここからが凄い。普通なら丹波的ポジションの“大物ゲスト”で食いぶちを繋ぐかゴシップ誌を賑わすお騒がせセレブに落ちぶれそうな所だが、『ロッキー・ザ・ファイナル』で奇跡のマッスルカムバック。それも、下手に時代に迎合するわけでも引き出しの奥から古着を出してくるのでもなく、“今現在のスタローンにしか出来ないロッキー”として復活。その後の『エクスペンダブルズ』もそうなのだが、一見すると単なる懐古趣味なのだが、今現在のスタローンにしか出来ない映画作りをする完全復活。出るべきタイミングで自分にしか出来ない事をする、スタローンの時代に対する嗅覚は相変わらず鋭いなぁと。

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前作では顔見世程度だったアーノルド・シュワルツェネッガーとブルース・ウィリスが本筋に大いに絡むのも魅力の本作。5日間という短い拘束期間で、尚且つ注目の復帰作『ラストスタンド』へ向けたウォーミングアップの意味合いもあったシュワの出演だが、その堂々たる佇まいに復帰の準備万端の雰囲気が。スタローンとの完全共演作“The Tomb”も楽しみで。
そんなプラネット・ハリウッド三羽烏に押されてしまったのか、肝心のチーム描写が弱くなってしまったのが数少ない不満の一つではあるものの、チームの若頭としてスタローンの相方をしっかりと務めあげた『キラー・エリート』のジェイソン・ステイサムや、まさかのコミックリリーフだったドルフ・ラングレン、最近ではコレで有名になったテリー・クルーズに、見せ場が耳いじられだけだったランディ・クートゥア、スケジュールの都合なのか序盤早々に死にそうなフラグを立てっぱなしで退場した『ローグ アサシン』のジェット・リーらの活躍も、短い時間ながらバランス良く。
また、新顔として原案ではミッキー・ロークが担うはずだった役割に『トライアングル』のリアム・ヘムズワース、出番の少ないジェット・リーのポジションにユー・ナンがキャスティング。敵役として『ユニバーサル・ソルジャー』のジャン=クロード・ヴァン・ダムが満を持しての登場。ドルフ・ラングレンとの絡みが無いのは残念だが、お得意のヴァンダミング回し蹴りをバシバシ決める大奮闘。まぁ、彼以外にめぼしい悪役がいないってのと、三羽烏を前にするとヴァン・ダムに勝てそうな雰囲気が全く無くなるってのがアレでしたが、悪役のヴァン・ダムにはなかなかの凄味があったので、そこに活路を見出せるのかと。
で、チャック・ノリス。扱いがもう神さま。全米の死因の第2位がチャック・ノリスなだけあって、常人には想像することすらできない活躍を。もう神さま以外の何者でもない。これから本作を劇場で観る方がおられましたら、復習の意味で前作を観る以上に一通り“チャック・ノリスの真実”(ウィキ)に目を通しておくことを強く推奨。激しく推奨

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チャック・ノリスのパスポートの国籍欄には、“チャック・ノリス”と記載されている

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2012年10月10日

イントルーダーズ (Intruders)

監督 フアン・カルロス・フレスナディージョ 主演 クライヴ・オーウェン
2011年 アメリカ/イギリス/スペイン映画 100分 ホラー 採点★★

大人になっちゃってからは非現実的な悪夢ってのをめっきり見なくなりましたが、子供の頃は頻繁に見たものですねぇ。以前も書いた気がしますが、その中でも未だ明確に覚えてるのが米粒状のイボイボがビッシリ顔面に貼り付いてる“米粒魔人”の夢。親なり親戚なり知っている人が突然米粒魔人になって襲ってくる夢に、小さい頃は大いに泣かされたものです。今でもそうなんですけど、小さい物が密集してるのが怖いって心理が夢に出たんでしょうねぇ。そのくせ粒あんのおはぎは大好きなんですけどね。

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【ストーリー】
少女ミアがひょんなことから発見した古びた手紙。そこには恐るべき“顔なし魔人”について書かれており、その日を境に怪現象が彼女を襲い始める。当初は子供特有の悪夢だと思っていた父親のジョンであったが、ある晩二人の目の前に“顔なし魔人”が実際に現れ…。

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マドリードとロンドンを舞台にトリッキーな展開で魅せるホラーサスペンス。メガホンを握ったのは、『28週後...』のフアン・カルロス・フレスナディージョ。
別の場所と別の○○で繰り広げられる二つの物語が、予想外だが納得のいく接点で繋がっていく展開が面白い本作。多少強引さは感じるが、“親子”であるからこそ成立する物語も興味深い。愛されたいが為に他者の顔を奪おうとする“顔なし魔人”も、その背景にある設定やそれが生み出す雰囲気もなかなか不気味でイイ感じでも。
ただまぁ、あまりに展開がまどろっこしい。二つの物語を同じペースで描いき、それぞれに起承転結を持たせ交互に描くせいで、“起・起・承・承・転・転と来て唐突に結”となるすこぶるバランスの悪い一本に。事情が明らかになるクライマックスに思わず「おぉ!」と驚かされた非常に面白い物語だっただけに、このまとまりの悪さは余りに残念。

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娘と仲良し過ぎて余計なものまで共有しちゃった父親に扮したのは、『キラー・エリート』『シューテム・アップ』のクライヴ・オーウェン。誰かと深い関わりを持つ役柄はちょい珍しかったんですけど、子煩悩な父親役も案外似合ってたなぁと。その反面、“旦那”って感じはしませんでしたが。
一方、親子関係においても物語においても一人蚊帳の外だった母親役には、『ブラックブック』『ワルキューレ』のカリス・ファン・ハウテン。時代と舞台が揃えば非常に輝く女優だと思うんですが、今回は別に誰がやっても変わらなさそうな非常にもったいないキャスティングで。
その他、「あぁ、確かに神父の服っていつの時代もあまり変わらないよなぁ」と思った『ボーン・アルティメイタム』のダニエル・ブリュールや、とってもスペインっぽい顔立ちのピラール・ロペス・デ・アジャラ、角度によって雰囲気も大きく変わる娘役のエラ・パーネルなど、悪くはないキャスティング。まぁそれだけに、何かにつけもったいない一本になっちゃったんですけど。

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極端な“親子水入らず”の例

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2012年09月07日

インモータルズ -神々の戦い- (Immortals)

監督 ターセム・シン・ダンドワール 主演 ヘンリー・カヴィル
2011年 アメリカ映画 110分 アドベンチャー 採点★★★

MTVが全盛期の頃って、凝りに凝ったプロモがホント多かったですよねぇ。ちょっとした映画並み。まぁ、映像に気合が入ってる分、そっちに目を奪われちゃって肝心の楽曲がバックグラウンドミュージックと化しちゃってるのも少なくなかったんですけど。

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【ストーリー】
古代ギリシャの時代。オリンポスの神々への復讐を誓うハイペリオンは、封印されたタイタン族を解き放つ“エピロスの弓”を探し求めギリシャへの侵攻を開始。一方、ゼウスの寵愛を受ける貧しき農民の子テセウスは、ハイペリオンによって最愛の母親を殺されてしまう。

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ギリシャ神話の世界を煌びやかな映像美で描き出したアクションアドベンチャー。監督のターセム・シン・ダンドワールと言えば、映像の積み重ねでボンヤリと物語を浮かび上がらせるイメージビデオよりはちょい映画寄りって作品を作る印象があるんですが、本作もまぁその方向。また、ギリシャ神話の特定のエピソードを映像化したってのよりは、“テーセウスのミーノータウロス退治”など、エピソードの断片を紡いで一本にしたって感じの一本で。
圧倒的な映像美に驚かされるがその映像美を支える物語はスカスカの、豪華絢爛なハリボテって感じだった本作。マドンナのバックダンサーのような神々は無造作に死んでいき、登場人物は皆箇条書きで性格付けされたかのような紋切り型、弓は奪われた上にタイタン族も解き放たれてしまう、考えてみれば何の役にも立っていない主人公など、映画とすれば問題だらけの作品。
ただ、「今回も映像美だけか」とそっぽを向くには惜しい作品であるのも確か。小道具や状況設定の数々は見た目重視でありながらも、そこにしきたりとそれに至るまでの歴史が垣間見える、ちょっとしたロマンな香りが好み。また、過剰な暴力描写とどことなくインモラルな香りがする映像美が生み出すリズムには、この作品でしか得られぬ快感も。なんか、よりゲイ風味の『300 <スリーハンドレッド>』と言うか。
また、家族を失った怒りと悲しみを神々にぶつけ神々と対峙しようとする、ギリシャ神話映画として本来なら主人公であるべきハイペリオンの描写も見応え充分。“最下層の人間が世界を救う”というシンプルながら燃える設定も、そのシンプルさが映像美を邪魔しない、丁度良いバランスであるとも。期待値が低かったってのもあるんでしょうが、思いのほか楽しめた一本で。

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テセウスに扮したのは、来年公開予定の『マン・オブ・スティール』でスーパーマンに扮するヘンリー・カヴィル。史劇の似合う良い男前なのだが、如何せん人物設定に難のある作品だったのでイマイチ印象に残らず。ただ、“主人公”という中心軸の弱さを存分に補う顔ぶれが周囲を固めてくれている。
その筆頭はやはり『ロシアン・ルーレット』『エクスペンダブルズ』のミッキー・ローク。当初は“ギリシャ神話にミッキー・ローク”ってのに違和感を感じてしまったが、役柄が怒りと憎しみと深い悲しみを抱えた“ザ・人間”ってのだったんで、人間臭さ溢れるミッキー・ロークはまさに適役。キャラクターとしても、言ってること全て理に適っているカーツ大佐って感じで魅力十分。
また、老いてまた独特の色気を醸し出し始めた『アウトランダー』『Vフォー・ヴェンデッタ』のジョン・ハートや、なんで敢えて困難な道を選ぶのかはさっぱり分からなかったが、コソ泥って感じだけは充分にした『ポルノ☆スターへの道』のスティーヴン・ドーフ、『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』のフリーダ・ピントに、『デイブレイカー』のイザベル・ルーカスらも印象的。
そんな中でも、ゼウスに扮した『タイタンの戦い』のルーク・エヴァンスから発せられる色気は圧巻。神さまに色っぽいっていうのもなんですけど、ゲイとかストレートとかそんなの軽く超越した色っぽさを。なんと言うか、神々しいエロティシズムって感じ。

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今にも踊りだしそう

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2012年09月01日

インキーパーズ (The Innkeepers)

監督 タイ・ウェスト 主演 サラ・パクストン
2011年 アメリカ映画 101分 ホラー 採点★★

怪談話って、娯楽としての用途以外にも過去の出来事を後世に伝える役割を果たしてますよねぇ。事実関係はアヤフヤになってても、“犠牲になった方々が可哀想”って想いを伝えてるような感じが。私が住む宮城でも新しい怪談が次々生まれてるようで、やっぱりそこにも“可哀想”って想いが見え隠れ。まぁ、その怪談の舞台では誰も死んでいなかったりするケースも多いんですが、そういった感情を伝えようとする行為は好きだなぁと。

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【ストーリー】
閉館を間近に控えた古びたホテル。そこでは新郎に捨てられ自殺した花嫁の亡霊が現れると噂されていた。暇を持て余していた従業員のクレアとルークは、宿泊客のほとんどいないホテルで幽霊探しの調査を始めるのだが…。

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タイ・ウェストが監督/脚本/編集を務めたストレートな怪談ホラー。主演に『愛しのアクアマリン』のサラ・パクストン、共演には『ステイク・ランド 戦いの旅路』のケリー・マクギリスらがキャスティング。
“古びたホテルに幽霊が出る”、それ以上でも以下でもない本作。これで幽霊描写なり恐怖演出に優れた個所があれば面白い作品になるのだが、幽霊がボンと出てきておしまいの味気なさ。なんというか、主食が肉の人が考えそうな演出。ダルいシットコムのような展開が延々と続きクライマックスに急遽ホラーと化す構成なのだが、笑いが恐怖を増幅させるスパイスとして機能しているわけでもないので、砂糖と塩を交互に舐めるかのようなバラバラ具合も頂けず。パッケージには“イーライ・ロス絶賛”的なコメントもあったんですけど、自身の出世作の続編『キャビン・フィーバー2』を撮ったタイ・ウェストに対する社交辞令なのかなぁとも。
まぁ、ちょっとリース・ウィザースプーンを彷彿させるサラ・パクストンのコメディアンヌとしての魅力が垣間見えたのが救いかと。

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下手な語り部の怪談を聞いているような感じが

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タグ:★★ ホラー
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2012年08月18日

アベンジャーズ (The Avengers)

監督 ジョス・ウェドン 主演 ロバート・ダウニー・Jr
2012年 アメリカ映画 143分 アクション 採点★★★★

「海だ!プールだ!カブトムシだ!」と、宿題の存在をスッカリ頭から消し去るだけの楽しみがてんこ盛りだった子供の頃の夏休み。そんな夏休みの楽しみの一つだったのが、毎年TVでも放映されてた『マジンガーZ対デビルマン』などの永井豪ヒーロー対決物。「なんだ?結局戦わないんじゃん!」と毎年騙されてはいたものの、別作品のヒーローが肩を並べて一つの画面に収まっている贅沢感に興奮を覚えたものですねぇ。

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【ストーリー】
四次元キューブを研究中だったシールドの施設に、アスガルドを追放された邪神ロキが襲来。なすすべなくキューブは奪われ、洗脳されたホークアイやセルヴィグ教授らも連れ去られてしまう。この地球最大の危機に、シールド長官フューリーは頓挫していた“アベンジャーズ計画”を発動。アイアンマンにハルク、キャプテン・アメリカにロキを追ってやって来た雷神ソーを集めチームとするのであったが、彼らは反発しあうばかりで一向にまとまらず…。

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『アイアンマン』から『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』まで、5本の作品と4年の歳月を経てようやく集結した“アベンジャーズ”の活躍を描くアクション大作。メガホンを握ったのは、“最も大切なのはサラ・ミシェル・ゲラーを可愛く撮る事”とやるべき事をよく分かってた“バフィー〜恋する十字架〜”のオタク監督ジョス・ウェドン。
もともとこの企画ありきだったとはいえ、単体の作品のヒーローたちが肩を並べている興奮と喜びがまず堪らない、まさに“夏だ!ヒーローだ!マーブル祭りだ!”な本作。無論ただ顔を揃えただけではなく、集結せざるを得ない状況作りと、“危機→集合→内輪もめ→危機→再集結→勝利”の鉄板ならではの面白さを存分に活かした作りが非常に上手い、さすが“分かってる男”ジョスらしい一本に。良く分かってる上に、自分が誰よりも楽しみたいジョスというか。
キャラクターの特性と性格に準じた見せ場作りと配分バランスの上手さも光る本作。「アイアンマンさんの次はソーさんお願いします!ハルクさんはその辺で暴れててください!キャプテンさんはえーっと…盾持って何かしてて下さい!」的な“均等”を重視するのではなく、キャラ的にも背景的にも主人公にふさわしいアイアンマンを中軸に据え、その他のキャラには彼らにしか出来ない出番が控えている理想的な打順が組まれているのにも唸らされる。プロ野球チームなら7月早々にマジック点灯してそう

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そんな最強球団アベンジャーズが対する相手は、トム・ヒドルストン扮する『マイティ・ソー』のロキ。チームが集結しても敵いそうもない圧倒的な力と怖さを持つ敵ではなく、ロキ。正直キャプテン相手なら微妙とはいえ、ハルクやアイアンマンなら一人でなんとかなってしまいそうなロキなのだが、小者臭が隠しきれないロキだったからこそ作品がピリっと締まったのでは。付け入る隙だらけなのだが追いつめられると何をしでかすのか分からない小者ならではの怖さや、予想のちょい斜め上を行く卑屈な企みにしてやられた苛立たしさなど、小者王ロキらしい活躍によって成立した作品とも言える。大富豪に天才物理学者、若き王様に軍のマスコットと、ある意味“勝ち組”が集結したアベンジャーズに対抗する卑屈でネガティブで嫉妬深くて執念深いロキ。ハルクにびったんびったんにされ身も心も折れまくった姿に哀愁とそれを上回る可笑しさ、強がる心の脆さを痛感させられたサブタレは、そんなロキを心から応援するぞ!次もあと一歩まで頑張れ!

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5本もの序章を積み重ねたのに蓋を開けたらまた序章だった本作だが、そこには“まだ終わらない”って喜びも。“次の敵はコイツだぁ!”って締め括りも、如何にもシリーズ物っぽくて好き。もう「毎年夏はアベンジャーズ!秋はエクスペンダブルズ!」と思えてしまうほど。まぁ、まだ続編の正式アナウンスはされてないですし、その前に『アイアンマン3』『マイティ・ソー2』『キャプテン・アメリカ2』といった続編群と『ニック・フューリー』なるものまで控えているので作られるとすれば随分先になるかと思うんですけど、それでも楽しみに待っていられる作品に仕上がってたのではと。
因みに今回は3D字幕版で観賞したんですけど、劇場公開に合わせて3Dコンバートしただけのようなので、わざわざ3Dで観る必要もなかったかなぁと思ったことを最後に。

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走攻守揃ったマルチプレーヤーだが、やはり最大の武器は財力と頭脳であるアイアンマン。その反面スターとしてのエゴがチームプレイには全く向いていないアイアンマンに扮したのは、もちろん『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』のロバート・ダウニー・Jr。徹底した悪童としての振る舞いが効いてるからこそ、クライマックスで見せる鉄腕アトムばりの活躍に感動すら覚える結果に。
敵味方関係ないどころか、相手が神であろうが全力でスマッシュするハルク。ある意味地球最大の脅威。あれこれキャラクターに手を加えることを嫌うマーベルの意向もあってか、『インクレディブル・ハルク』のエドワード・ノートンから『シャッター アイランド』のマーク・ラファロへとバトンタッチ。前者も決して悪くなかったんですけど、頭が良さそうで根が暗く、しかも体毛が濃そうなマーク・ラファロも案外ハマってた好キャスティング。見せ場も多く大活躍だった割に、メンバーで唯一続編の企画がないってのはどうかと。ルー・フェリグノも心待ちにしてるでしょうし。

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また、“神”という存在自体が武器である雷神ソーには前作同様『クリス・ヘムズワース CA$H』のクリス・ヘムズワース。王となったことで多少落ち着いたキャラとなったが、小難しい事は全部力任せっていう工業高校生臭は消えていないのが魅力。なんと言うか、結婚して娘も生まれた小さな土建屋の若社長って感じ。
そして、特殊能力って面では多少劣るがその分“リーダーシップ”を武器にし奮闘した、『ルーザーズ』のクリス・エヴァンス扮するキャプテン・アメリカ。前時代的な正義感と生真面目さが逆に皆の足並みを乱している気もしないでもないが、ジェネレーションギャップをイジられても真面目に返す、生粋のイジられキャラとして愛すべき存在だなぁと。新しいコスチュームデザインはちょっとアレでしたけど。

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ようやく大々的な活躍を見れると楽しみにしていたら開始早々洗脳されてションボリだったが、クライマックスで存分にその借りを返してくれた『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』のジェレミー・レナー扮するホークアイや、グウィネス・パルトロー扮するペッパー・ポッツなんかに目もくれずネットリと撮られていた、そう撮りたくなる気も分かるプレステージ』のスカーレット・ヨハンソン扮するブラック・ウィドウら特殊能力を持たぬ人間勢も、スーパー・ソルジャー計画不要の大活躍。「ヒーローそっちのけで出ずっぱりになるんじゃないのか?」とちょっぴり不安だった『4デイズ』のサミュエル・L・ジャクソン扮するニック・フューリーですけど、全体のバランスを崩さないそこそこの活躍で一安心。
また、アベンジャーズ計画最大の功労者でありその原動力は深いヒーロー愛にあったことが判明した、『(500)日のサマー』のクラーク・グレッグ扮するコールソンには貢献に見合った見せ場が用意されていたが、出来ればそんな見せ場には出くわしたくなかったなぁと。是非とも再登場の方法を考えて頂きたいもので。
その他、『ドラゴン・タトゥーの女』のステラン・スカルスガルドや、声だけで登場する『レギオン』のポール・ベタニーらレギュラー陣に、新顔捜査官としてTVを中心に活躍するコビー・スマルダーズがキャスティング。「あれ?今日は出て来ねぇなぁ?」と思ったスタン・リー御大も、もちろん出ないわけもなく
そうそう、すっかり忘れておりましたが通りすがりで『若き勇者たち』のハリー・ディーン・スタントンが出ておりましたよ。なんであの場面で彼だったのかは不明ですけど。

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“誰かと組む”ことで輝く個性ってのもあるのかと

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posted by たお at 17:57 | Comment(6) | TrackBack(59) | 前にも観たアレ■あ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月07日

宇宙人ポール (Paul)

監督 グレッグ・モットーラ 主演 サイモン・ペッグ
2011年 アメリカ/イギリス映画 104分 コメディ 採点★★★★

そのむかしの宇宙人っていえば、子供心にトラウマを植え付けさせられたフラットウッズモンスターや、警官が撮影したとかいうアルミホイルを巻き付けたような奴とか、“良く見ると目鼻立ちが不自然”と大変失礼なキャプションが付けられてた金星美人などバリエーション豊かだったんですが、最近はもっぱらグレイタイプ一色になりましたねぇ。矛盾する体験談の辻褄合わせに「そういや、私ら宇宙人に誘拐されてたんだっけ!」と言い出したヒル夫妻が最初の目撃者とも言われてますが、そのイメージの元となったのは“アウターリミッツ”に出てくる宇宙人との説も。ってことは、ヒル夫妻がもし前の晩にウルトラセブンとか見てたら、インコみたいな奴が宇宙人のスタンダードになったかも知れないんですねぇ。

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【ストーリー】
UFO名所巡りにイギリスからアメリカへやって来た、SFオタクのグレアムとクライブ。そんな彼らは、ドライブ中に車の事故現場に遭遇。恐る恐る事故車に近づくと、中からポールと名乗る宇宙人が現れた。パニックに陥るグレアムらだったが、ポールが60年に渡り政府機関に囚われていた事を知り、彼を故郷に帰す為に共に旅することを決心するのだが…。

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俗っぽい宇宙人との珍道中を描いた、『スーパーバッド 童貞ウォーズ』『アドベンチャーランドへようこそ』のグレッグ・モットーラによるSFコメディ。主演コンビのサイモン・ペッグ&ニック・フロストが脚本を手掛けている。
イギリス人に宇宙人。共にエイリアンである主人公らから見たアメリカを、『未知との遭遇』や『E.T.』などスピルバーグ作品を中心としたSF映画に対する愛情をたんまりと込めて描いた本作。盲信的なキリスト教徒の姿やコミコン文化を笑い飛ばしつつも上っ面だけ笑って「アメリカって変なの!」で済ませず、きちんと物語に織り込んで変化させていく手腕は流石。『ショーン・オブ・ザ・デッド』や『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』でもそうだったのだが、作品に対するオマージュをトッピングのように乗せて「はい、完成!」ではなく、ちゃんと消化させて展開上の必然にしている様も相変わらず見事。凡百のパロディや自称オマージュ作品とは異なり、きちんと“空を見上げたくなる”作品に仕上がっているのが嬉しい。
恋愛感情に限りなく近い男同士の深い友情を盛り込む、グレッグ・モットーラ作品らしい面白さも楽しめる本作。女性および第三者が自分たちの間に入ってしまう事で感じる嫉妬心や居場所を失ってしまう危惧感の描き方に、もう素直に「そうなんだよなぁ」と唸らされてしまう。また、基本的には“中年男版E.T.”のストーリー展開なのだが、これまでの信心が衝撃的な出来事によって崩れ去り新たな信念が芽生える様が興味深い。そんな経験をするのは別のキャラクターではあるものの、視力に関する出来事から「あぁ、ポールって迫害者から熱心な伝道師へと改心したパウロのことなんだぁ」と一瞬頭をよぎりましたが、まぁこれは深読みのし過ぎなんでしょうねぇ

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主人公コンビに扮するのは、『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』のサイモン・ペッグと、『パイレーツ・ロック』のニック・フロスト。「自宅から持って来たんじゃないのか?」と思えてしまうTシャツ姿で見せる息の合いっぷりは、ほとんど素のようでなんとも楽しい。それぞれピンでも面白い役者なんですけど、可愛げを際立たせるサイモンに哀愁を漂わせるニックという、コンビによって更に高まるキャラクター性が見られるのは嬉しい。
その他、メン・イン・ブラックに就職したエリオット少年みたいなゾイルに扮した『ウソから始まる恋と仕事の成功術』のジェイソン・ベイトマンや、“激変”って意味で作品の最重要人物であったルースに扮した『ローラーガールズ・ダイアリー』のクリステン・ウィグ、モットーラ作品常連である『寝取られ男のラブ♂バカンス』のビル・ヘイダー、『ぼくたちの奉仕活動』のジョー・ロー・トルグリオに『ミート・ザ・ペアレンツ3』のブライス・ダナー、今回も“らしさ”全開だった『40歳の童貞男』のジェーン・リンチに『シャッター アイランド』のジョン・キャロル・リンチらと、笑いもシリアスも何でもございな巧い顔ぶれが揃ってるのも魅力。また、声だけの出演でスティーヴン・スピルバーグや、“ウォーキング・デッド”の中心人物でもあるロバート・カークマンらがカメオで出演し、クレジットに名前が出てるんで別にネタバレにはならないんでしょうけど、重要なオチなので名前は伏せさせていただく著名なエイリアンキラーも出演。
しかしながら、本作の目玉はやはり『素敵な人生の終り方』のセス・ローゲンが声をあてた宇宙人ポール。そのCGのクォリティの高さはもちろんのこと、監督自身が“俳優がたまたまCGだった”って扱いをしただけある人間臭さが絶品。『モンスターVSエイリアン』でもそうだったんですが、セスが声をあてると途端にそのキャラクターが人間臭くなるんですよねぇ。ホント、声優としても見事。たぶん本作のポールは、セスが素で出てても然程印象が変わらなかったのかも知れませんねぇ。

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“虹の彼方に”が脳内で流れ

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2012年06月12日

エージェント・ゾーハン (You Don't Mess with the Zohan)

監督 デニス・デューガン 主演 アダム・サンドラー
2008年 アメリカ映画 113分 コメディ 採点★★★

若い頃の夢って、歳を取れば取るほど実現が難しくなってきますよねぇ。私の“東京ドーム2デイズ”って夢も、この歳じゃぁ実現できそうにありませんし。そもそも、何で“2デイズ”するかも決めてませんし。そう言えば、私の子供の頃なりたかった職業って、うちの母親が言うには道路工事の交通整理のおばさんだったらしいですねぇ。“おばさん”ってのに若干目をつぶれば、それなら今からでも夢を叶えられそうな感じが。

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【ストーリー】
イスラエルの凄腕エージェントであるゾーハンは、日々パレスチナとの戦いに明け暮れていた。しかし、そんな戦いの日々に嫌気がさしたゾーハンは、ライバルのファントムとの戦いで殉職したように見せかけ、長年の夢であった美容師になるため秘かにアメリカに渡る。やがてダリアという美女が経営する美容院に雇われたゾーハンは、程なく彼女に恋心を抱くように。しかしダリアはパレスチナ人で…。

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秘かに胸に抱いていた夢を実現するため奮闘する元スーパーエージェントの姿を描いた、『アダルトボーイズ青春白書』のアダム・サンドラーによるコメディ。メガホンを握ったのは、アダム映画と言えばお馴染である『ウソツキは結婚のはじまり』のデニス・デューガン。脚本に『素敵な人生の終り方』のジャド・アパトーも参加。
たんまりと放り込まれた下ネタとユダヤギャグ、80年代からやって来たかのような主人公とニューヨークのギャップが生み出す笑いなど、その見てくれはただ単に笑わせる為だけに作られたかのような本作。しかしながら、扱ってる題材は“イスラエル/パレスチナ問題”を筆頭に地上げやら夢の実現やらと、意外に重い。ただそこには、インテリがバカのフリをした嫌味さも、バカがインテリの真似事をした痛々しさもなく、「しかめっ面して考えてもどうしようもないくらいこんがらがった問題なんだから、ちょいとここらで頭空っぽにして笑いながらシンプルに考えてみようよ!」的な素直さが。真剣に深刻に考えるのも正しいけど、ここまで徹底的にハードルを下げて一般的にはバカバカしいと言われてしまう角度から考えるのも大切なのではと。重い問題も軽い問題も同程度に笑い飛ばす、コメディとして正しい姿勢が好きな一本。
主人公が主人公だけに、80〜90年代の楽曲が多く使われてた本作。ヒットした当時以来久しく耳にしてなかったロックウェルや、アダム・アントにエイス・オブ・ベイスらの楽曲が。ヒューマン・リーグの曲も流れてましたが、まぁさすがに“レバノン”ではなかったですねぇ。

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ナチュラルな役柄が続いていたアダム・サンドラーですが、本作では久々に弾け切ったキャラ芸を披露。「いつ以来かな?」と考えてみたら、『リトル★ニッキー』以来だったりも。あらあら、随分と久しぶりで。ネタの大部分が下半身に集中してたアダムでしたけど、そこに過剰な卑猥さを感じさせず、どこか子供じみた滑稽さを感じさせるのは流石アダムだなぁと。それにしてもアダムって、『ウェディング・シンガー』でもそうだったんですが、80年代風の髪型や服装が非常に似あいますよねぇ。“時代錯誤”ってのを差っ引けば、いつも以上にカッコ良く見えたりも。
その他、アダムと絡むようになってから弾けっぷりに拍車が掛かった『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』のジョン・タートゥーロや、『クライモリ』のエマニュエル・シュリーキー、『ポルノ☆スターへの道』も楽しみな『ピザボーイ 史上最凶のご注文』のニック・スォードソンに、アダム映画のお楽しみである『がんばれ!ベンチウォーマーズ』のロブ・シュナイダーらが出演。しかしまぁ、ロブ。どんな人種にでも成り切りますけど、どんな人種に扮装しようがあの強烈さが一片も霞まないってのはスゲェなぁと。
また、マライア・キャリーやジョン・マッケンロー、『スター・トレック2/カーンの逆襲』のジョージ・タケイに『ロンゲスト・ヤード』のクリス・ロック、『チャックとラリー おかしな偽装結婚!?』のケヴィン・ジェームズなど、豊富なゲスト陣も楽しめる一本で。

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ザックリと突き詰めれば、これが理想

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