監督 ジョス・ウェドン 主演 ロバート・ダウニー・Jr
2012年 アメリカ映画 143分 アクション 採点★★★★
「海だ!プールだ!カブトムシだ!」と、宿題の存在をスッカリ頭から消し去るだけの楽しみがてんこ盛りだった子供の頃の夏休み。そんな夏休みの楽しみの一つだったのが、毎年TVでも放映されてた『マジンガーZ対デビルマン』などの永井豪ヒーロー対決物。「なんだ?結局戦わないんじゃん!」と
毎年騙されてはいたものの、別作品のヒーローが肩を並べて一つの画面に収まっている贅沢感に興奮を覚えたものですねぇ。

【ストーリー】
四次元キューブを研究中だったシールドの施設に、アスガルドを追放された邪神ロキが襲来。なすすべなくキューブは奪われ、洗脳されたホークアイやセルヴィグ教授らも連れ去られてしまう。この地球最大の危機に、シールド長官フューリーは頓挫していた“アベンジャーズ計画”を発動。アイアンマンにハルク、キャプテン・アメリカにロキを追ってやって来た雷神ソーを集めチームとするのであったが、彼らは反発しあうばかりで一向にまとまらず…。

『アイアンマン』から『
キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』まで、5本の作品と4年の歳月を経てようやく集結した“アベンジャーズ”の活躍を描くアクション大作。メガホンを握ったのは、
“最も大切なのはサラ・ミシェル・ゲラーを可愛く撮る事”とやるべき事をよく分かってた“バフィー〜恋する十字架〜”のオタク監督ジョス・ウェドン。
もともとこの企画ありきだったとはいえ、単体の作品のヒーローたちが肩を並べている興奮と喜びがまず堪らない、まさに“
夏だ!ヒーローだ!マーブル祭りだ!”な本作。無論ただ顔を揃えただけではなく、集結せざるを得ない状況作りと、“危機→集合→内輪もめ→危機→再集結→勝利”の鉄板ならではの面白さを存分に活かした作りが非常に上手い、さすが“分かってる男”ジョスらしい一本に。良く分かってる上に、
自分が誰よりも楽しみたいジョスというか。
キャラクターの特性と性格に準じた見せ場作りと配分バランスの上手さも光る本作。「アイアンマンさんの次はソーさんお願いします!ハルクさんはその辺で暴れててください!
キャプテンさんはえーっと…盾持って何かしてて下さい!」的な“均等”を重視するのではなく、キャラ的にも背景的にも主人公にふさわしいアイアンマンを中軸に据え、その他のキャラには彼らにしか出来ない出番が控えている理想的な打順が組まれているのにも唸らされる。プロ野球チームなら
7月早々にマジック点灯してそう。

そんな最強球団アベンジャーズが対する相手は、トム・ヒドルストン扮する『
マイティ・ソー』のロキ。チームが集結しても敵いそうもない圧倒的な力と怖さを持つ敵ではなく、ロキ。正直キャプテン相手なら微妙とはいえ、ハルクやアイアンマンなら一人でなんとかなってしまいそうなロキなのだが、小者臭が隠しきれないロキだったからこそ作品がピリっと締まったのでは。付け入る隙だらけなのだが
追いつめられると何をしでかすのか分からない小者ならではの怖さや、予想のちょい斜め上を行く卑屈な企みにしてやられた苛立たしさなど、小者王ロキらしい活躍によって成立した作品とも言える。大富豪に天才物理学者、若き王様に軍のマスコットと、ある意味“勝ち組”が集結したアベンジャーズに対抗する
卑屈でネガティブで嫉妬深くて執念深いロキ。ハルクにびったんびったんにされ身も心も折れまくった姿に哀愁とそれを上回る可笑しさ、強がる心の脆さを痛感させられたサブタレは、そんなロキを心から応援するぞ!
次もあと一歩まで頑張れ!
5本もの序章を積み重ねたのに
蓋を開けたらまた序章だった本作だが、そこには“まだ終わらない”って喜びも。“次の敵はコイツだぁ!”って締め括りも、如何にもシリーズ物っぽくて好き。もう「
毎年夏はアベンジャーズ!秋はエクスペンダブルズ!」と思えてしまうほど。まぁ、まだ続編の正式アナウンスはされてないですし、その前に『アイアンマン3』『マイティ・ソー2』『キャプテン・アメリカ2』といった続編群と
『ニック・フューリー』なるものまで控えているので作られるとすれば随分先になるかと思うんですけど、それでも楽しみに待っていられる作品に仕上がってたのではと。
因みに今回は3D字幕版で観賞したんですけど、劇場公開に合わせて3Dコンバートしただけのようなので、わざわざ3Dで観る必要もなかったかなぁと思ったことを最後に。

走攻守揃ったマルチプレーヤーだが、やはり
最大の武器は財力と頭脳であるアイアンマン。その反面スターとしてのエゴがチームプレイには全く向いていないアイアンマンに扮したのは、もちろん『
シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』のロバート・ダウニー・Jr。徹底した悪童としての振る舞いが効いてるからこそ、クライマックスで見せる
鉄腕アトムばりの活躍に感動すら覚える結果に。
敵味方関係ないどころか、相手が神であろうが全力でスマッシュするハルク。ある意味
地球最大の脅威。あれこれキャラクターに手を加えることを嫌うマーベルの意向もあってか、『
インクレディブル・ハルク』のエドワード・ノートンから『
シャッター アイランド』のマーク・ラファロへとバトンタッチ。前者も決して悪くなかったんですけど、頭が良さそうで根が暗く、しかも
体毛が濃そうなマーク・ラファロも案外ハマってた好キャスティング。見せ場も多く大活躍だった割に、メンバーで唯一続編の企画がないってのはどうかと。ルー・フェリグノも心待ちにしてるでしょうし。

また、“神”という存在自体が武器である雷神ソーには前作同様『
クリス・ヘムズワース CA$H』のクリス・ヘムズワース。王となったことで多少落ち着いたキャラとなったが、
小難しい事は全部力任せっていう工業高校生臭は消えていないのが魅力。なんと言うか、結婚して娘も生まれた小さな土建屋の若社長って感じ。
そして、特殊能力って面では多少劣るがその分“リーダーシップ”を武器にし奮闘した、『
ルーザーズ』のクリス・エヴァンス扮するキャプテン・アメリカ。前時代的な正義感と生真面目さが逆に皆の足並みを乱している気もしないでもないが、ジェネレーションギャップをイジられても真面目に返す、
生粋のイジられキャラとして愛すべき存在だなぁと。新しいコスチュームデザインはちょっとアレでしたけど。

ようやく大々的な活躍を見れると楽しみにしていたら開始早々洗脳されてションボリだったが、クライマックスで存分にその借りを返してくれた『
ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』のジェレミー・レナー扮するホークアイや、グウィネス・パルトロー扮するペッパー・ポッツなんかに目もくれずネットリと撮られていた、
そう撮りたくなる気も分かる『
プレステージ』のスカーレット・ヨハンソン扮するブラック・ウィドウら特殊能力を持たぬ人間勢も、
スーパー・ソルジャー計画不要の大活躍。「ヒーローそっちのけで出ずっぱりになるんじゃないのか?」とちょっぴり不安だった『
4デイズ』のサミュエル・L・ジャクソン扮するニック・フューリーですけど、全体のバランスを崩さないそこそこの活躍で一安心。
また、アベンジャーズ計画最大の功労者であり
その原動力は深いヒーロー愛にあったことが判明した、『
(500)日のサマー』のクラーク・グレッグ扮するコールソンには貢献に見合った見せ場が用意されていたが、
出来ればそんな見せ場には出くわしたくなかったなぁと。是非とも再登場の方法を考えて頂きたいもので。
その他、『
ドラゴン・タトゥーの女』のステラン・スカルスガルドや、声だけで登場する『
レギオン』のポール・ベタニーらレギュラー陣に、新顔捜査官としてTVを中心に活躍するコビー・スマルダーズがキャスティング。「あれ?今日は出て来ねぇなぁ?」と思ったスタン・リー御大も、
もちろん出ないわけもなく。
そうそう、すっかり忘れておりましたが通りすがりで『
若き勇者たち』のハリー・ディーン・スタントンが出ておりましたよ。なんであの場面で彼だったのかは不明ですけど。

“誰かと組む”ことで輝く個性ってのもあるのかと
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