2007年12月18日

アイ・アム・レジェンド (I Am Legend)

監督 フランシス・ローレンス 主演 ウィル・スミス
2007年 アメリカ映画 100分 SF 採点★

“映画は映画、原作は原作”と割り切って楽しむ性質とはいえ、やっぱり好きな小説の映画化は色んな意味で期待と不安が入り混じるもので。それでもまぁ、映画として面白く出来ているなり原作の持っていた重要なポイントさえ押さえていれば、50人いた登場人物が3人に減っていようが、中世だったはずの舞台が宇宙に変わっていようが、“フランダースの犬”が筋肉映画に豹変していようが、全く気にはならないんですけどねぇ。

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【ストーリー】
2012年、ニューヨーク。3年前に爆発的に発生した謎の病気により人類が吸血鬼のような怪物と化してしまった世界。地球最後の人間として生き残ってしまったネヴィルは、その病気の治療薬開発と他の生存者探しに奔走するが…。

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あらゆる意味でネタバレをしていますんで、要注意を
『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』から始まるモダン・ゾンビのネタ元としても非常に重要な位置づけにある、リチャード・マシスンの傑作小説“地球最後の男”の『地球最後の男』『地球最後の男 オメガマン』に続く三度目の映画化。
謎の疫病により人類が吸血鬼と化し唯一の人間となってしまった主人公の、当初こそは防衛と研究の為であったはずの吸血鬼狩りが、長い日々の繰り返しの中でルーチンワークとしてただこなすだけの日課となっていく様を、主人公のボヤキ同様ドライなタッチで描かれる原作。あくまで読者同様人間である主人公の視点“人間=善 吸血鬼=悪”で進んでいくのだが、自分にとって恐怖の対象であった吸血鬼から見れば、唯一の人間である主人公こそが異物であり、呪われた存在であり、連日寝こみを襲ってくる“伝説の怪物”であることが判明するラストの衝撃は、それまで然程本好きではなかった私に、本の面白さを「これでもかっ!」って程教え込ませてくれたものである。
その“自分こそが伝説の怪物(アイ・アム・レジェンド)”とタイトルに重要な意味を込められた原作が、そのまま“アイ・アム・レジェンド”としてウィル・スミス主演で映画化されると聞いた時は、「オレはグレートだぁ!オレは伝説的なヒーローだぁ!」と“レジェンド=ウィル・スミス”ないつもの俺様映画になっちゃうんじゃないかと冗談半分不安半分で思ってはいたものの、踏み外しようのない完成されたオチを持つ原作を『コンスタンティン』で卓越したビジュアルセンスを披露したフランシス・ローレンスが監督をするってんで、多少不満があったとしても、つまらない作品にだけはならないと思っていた私。アイザック・アシモフの原作を『クロウ/飛翔伝説』『ダークシティ』のアレックス・プロヤスが監督したにも関わらず、ロボット3原則が“オレ最高!オレ最強!やっぱりオレ最高!”の“ウィル・スミスの3原則”に摩り替わっていた『アイ,ロボット』のことをスッカリと忘れて…。

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「オレの肉体美を堪能しろ!」と、不自然なほど長く挿入されるウィル・スミス映画恒例の肉体自慢を軽く受け流せるほど強烈なインパクトを持つ廃墟となったニューヨークの異様な光景を舞台に、基本的に一人称視点で展開される本作。いかにもCG然とした動物などといった問題点を軽く吹き飛ばすほど強烈なその景観は、本作のもう一人の主人公と言ってもいいほど。「こういう事があったんだろうなぁ」と脳内補完で完成させることを拒むかのように、やたらと挿入される回想シーンによってテンポが著しく悪くなってしまうが、『28日後…』のレイジ以降主流となった全力疾走型ゾンビの系譜に則った感染者が生み出すスピード感が、それを相殺している。日中建物内の暗闇の中で輪になり休息している感染者の群れが照明に照らし出されるシーンは、近年の作品の中でも群を抜く恐ろしさである。
しかしながら、中盤以降その肝心の感染者の描写が非常に雑。動物を操り、罠を作り、先導者の下で集団行動を取り、同族間で愛情にも似た感情を持っていることがサラリと描かれるが、社会を構築するだけの知性ある存在ではなく、最後まで怪物としてのみ描かれる。“非常に雑”とは書いたが、それもこれも“映画の主人公は誰からも愛され共感を持たれる人物でなければならない”という、近年の映画製作に蔓延る病巣が原因なんですが。

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で、いきなり結末に触れるが、本作は“アイ・アム・レジェンド”でも“地球最後の男”でもない。ずらりと並んだ感染者の写真で研究の為に大量の感染者を殺してしまっていることは匂わせるが、吸血鬼狩りの直接的描写が一体のみに絞られ、感染者が知性に基づいて社会を形成することによって生まれる社会構成の逆転や視点の逆転がないため、主人公の行為は人類救済の善意のものとして観客の共感を得れる範囲に留まっている。そして、感染者による社会の逆転が発生しない本作には代々語り継がれることになるであろう恐怖の“伝説”は存在せず、よって「自分こそが伝説の怪物であった」と気がつく“I Am Legend”という、作品上最も重要なセリフもない。その代わりにあるのは、「彼こそ人類の救済者だー!彼こそ伝説の英雄だー!」と褒め称える“He Is Legend”。いつの間にかタイトルが変わっている。病原菌は寒さで死滅するのでバーモント州の山間部では生存者がワラワラいるってのも、たとえ地球温暖化で全体的に暖かくなっているという裏設定があったとしても、冬は極寒のニューヨークを舞台にしているだけに説得力は皆無で、「だったら、結構あちこちに生存者いるんじゃね?」との疑問が浮かぶ以前に、「そこまでしてハッピーエンドにしたいのか?」という不満が大きい。作り手以上に、それを求め過ぎる観客にも問題があるのですが。
リメイクにしろ原作ものにしろ、重要なポイントを取り除いて別物として仕上げるのであれば、『ドーン・オブ・ザ・デッド』のようにそれらを補って余りあるずば抜けて面白さを持つ作品に仕上がっているのであれば嬉しいのだが、残念ながら原作の背帯の粗筋だけを映画化したかのような本作にはそこまで強烈な面白さを見出すことが出来ず。ごま塩頭で奮闘するウィル・スミスも、他者なりロボットなり宇宙人なりに絡むことで彼の持つ面白さを発揮するのだが、さすがに一人ぼっちの本作ではそこまで魅力を発揮できてはいない。いきなりノン・クレジットでエマ・トンプソンが登場する嬉しい驚きはあったが、なまじ思い入れのある原作である上に、劇場でここまで口をアングリしてしまった作品もここ最近なかったので、手厳しいとは思いつつもこの評価で。まぁ、この作品のヒットで、一人でも多く原作を手にしてくれる人が増えれば嬉しいんですが。

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まぁ、常に“オレひとり”って映画ばかりの気もしますが

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2007年12月11日

イラク −狼の谷− (Kurtlar vadisi - Irak)

監督 セルダル・アカル 主演 ネジャーティ・シャシュマズ
2006年 トルコ映画 122分 アクション 採点★★

それにしても不憫なもので、バルタン星人。いやぁねぇ、「オレんとこの星がダメになったから、お前の星よこせや」って言い分はあまりにあんまりとは言え、一部のはねっかえりが暴れただけで20億人も殺される筋合いはないんじゃないのかなぁと。まぁ、“正義”ってのは相対的なものですけどねぇ。

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【ストーリー】
アメリカ軍の仕打ちにより自らの命を絶った親友の仇を討つため、元トルコ諜報部員のポラットはイラクへと侵入。アメリカ軍の指揮官サム・マーシャルを追うが…。

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本国トルコで大ヒットを記録した反米アクション。社会派の香り強い作品かと思いきや、『炎のリベンジャー/地獄のアグレイブ』ってタイトルが似合いそうな、80年代筋肉映画風味の一本。
“刑務所内での虐待”“囚人の臓器売買”“民間人虐殺”など、事件として明らかになったものから噂として出回っているだけのものも含めて、アメリカ軍が行ったとされる非道な行為が次々と展開する本作。普段から観慣れてしまっているアメリカ映画と真逆な展開に初めこそ戸惑うが、“ランボー”などで描かれるロシア兵やベトナム兵の扱いも似たようなものなので、すぐに慣れてくる。南米の私兵のようにも見えてくるタンクトップにマッチョのやたらとガラの悪いアメリカ兵の描き方も、非常に分かりやすくて楽しい。多少展開がまどろっこしくて大味ではあるのだが、随所に挟まれるアクションシーンも派手で退屈はしない。反米感情を前面に出す以上に、「イスラム教では捕虜の首切ったり自爆テロを推奨したりしてないだろうが!もう一回コーラン読み直せ!」と、主張も真っ当で好印象。その割に「コッソリ爆弾を仕掛けるのはいいよー」ってのにチグハグさは感じるが、観客の不満やストレスを反映し解消させるアクション映画としては至極真っ当な作りであるので、さして不満も感じない。
ところで、タイトルにもある“谷”はどこに?

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ブッシュが嫌いなのか、頼まれた仕事を断れない性質なのか、アメリカ側から『ズーランダー』のビリー・ゼインと、『ソルジャー』のゲイリー・ビューシイが出演。多分ブッシュ嫌いが出演の理由であろうビリー・ゼインの、やたらと神の名を連発する原理主義者な悪役のふてぶてしさも印象深いが、仕事を断れない性質の方であろうゲイリーの、まるで新しい妖怪のような風貌も強烈。そんなアメリカ勢に負けず、更にゴツくなったダニエル・クレイグのような風貌を持つメナティ役のギュルカン・ウユグンや、黒くないアンソニー・アンダーソン風のエルハン役のエルハン・ウファク、男前っちゃぁ男前のアブデュレー役のケナン・チョバンなど、脇も強い印象を残す顔ぶれ。特にこの3人が満身創痍で銃撃戦を繰り広げるクライマックスは、宗教が違えど男の子はみんなジョン・ウーが大好きってのを確認できる名シーン。
しかしながら、そんな周囲の頑張りを肝心の主人公が台無しに。得意技がコッソリ爆弾を仕掛けることと、背後からコッソリ近づいて銃を撃つくらいしかない上に、立てる作戦全てが失敗続きの主人公ポラットに扮するネジャーティ・シュシャマズの、目と口までの距離がやたらと遠い顔つき同様に締りのない身体つきは、アクション映画の主人公としては説得力皆無。余計な動きばかりが多いワタワタとした動作も同様。そのくせ目にだけは異様に力が入っており、「オレは男前なんだ!主人公なんだ!」と主張ばかり。あまりに男前主張ばかりするので、観ているこっちが「ホント、男前だねぇ」と前向きに脳内変換する努力をしてしまうので、だんだんと“トルコ版あおい輝彦”に見えてくる始末。この風貌に棒立ち棒読みの演技で、よくぞデビュー作から主演を張れるなぁとある種感心をしながらプロフを見ると、プロデューサーの兄弟のようで。なるほどねぇ。

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血縁商売

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2007年12月10日

えじき (Dead Birds)

監督 アレックス・ターナー 主演 ヘンリー・トーマス
2004年 アメリカ映画 91分 ホラー 採点★★★

宇宙人が潜んでたり、カカシが動いてみたり、死んだお父さんが野球をしにやって来たりと、何かと尋常じゃないことばかり起きるトウモロコシ畑。視界を遮るほど高く育った茎と、どこまで行っても変わらない景色に、迷い込んでなかなか出られなくなった経験を持つアメリカ人が多いのか、ホラーの舞台になることが多いトウモロコシ畑。散々迷ってワンワン泣いている息子の泣き声を聞いたお父さんは、「もうトウモロコシ畑で迷う年頃になったのかぁ」と感慨深く思うのでしょうか?なんか、風物詩みたいですねぇ。

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【ストーリー】
行員らを皆殺しにし金貨強奪に成功したウィリアム率いる強盗団は、人里離れた屋敷に身を潜める。だが、そこではかつて陰惨な儀式が行われており…。

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そういったジャンルがあるのなら、是非とも組み込んでおきたい“トウモロコシ畑ホラー”の一本。“南北戦争ホラー”でもいいですけど。
強盗団がカカシに散々な目に遭わせられる作品といえば『ヘル・ゴースト/悪魔のスケアクロウ』を思い起こさせるが、“凄惨な儀式の結果、冥界の扉が開いてしまう”という、ルチオ・フルチなら程よく腐ったゾンビをワラワラと投入しそうな設定を持つ本作に漂う雰囲気は、ラブクラフトなどの怪奇小説や『マウス・オブ・マッドネス』に似た味わいを持つ一本になっている。眼窩だけの目に針のように細長く尖った歯を持つ冥界の住人など、パンチの効いた魔物も登場するが、それらの直接的表現に頼らず、過去の出来事を匂わすフラッシュバックと屋敷の持つ不気味な雰囲気によって恐怖感を演出し、序盤に登場した魔物が、屋敷に立ち入ったと同時に全てが手遅れであったことを意味していたと判明するオチのつけ方も好印象。ただし、直接的表現を避けすぎたばかりに雰囲気のみに走り過ぎ、やたらと間延びした印象を受けるのも事実。矢継ぎ早にイベントが発生しているのにも関わらずテンポがやたらと悪く、クライマックスが過ぎてから「あ、今のがクライマックスだったのかぁ」と気がつくメリハリのなさは痛い。

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全くチームをまとめ上げられていないリーダー役に、『11:14』のヘンリー・トーマス。『E.T.』の頃からほとんど変わっていない、今にも泣き出しそうな風貌で冷酷な強盗団のリーダー役というのも何とも合っていない気もするが、いつまでも「あぁ、自転車で空を飛んでたあの坊や」と言われたくないでしょうし。
『トゥルー・クライム』“グレイズ・アナトミー”のイザイア・ワシントン、特典映像で本編以上に面白いコンビ芸を見せてくれた『バットマン ビギンズ』のマーク・ブーン・ジュニアと『バッドボーイズ2バッド』マイケル・シャノンなど、観客そっちのけで登場人物ばかりがワーワーキャーキャーと怖がっているホラーが多い中、腰の座った芸風を持つ顔ぶれが揃った本作。そんな顔ぶれに、★ひとつオマケ。

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実は出ずっぱり

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2007年11月29日

アリゲーター (Alligator)

監督 ルイス・ティーグ 主演 ロバート・フォスター
1980年 アメリカ映画 91分 パニック 採点★★★

映画を観る面白さってのは、出来の良い作品に出会って泣き笑いするってのもそうだが、それだけでもないって気も。「面白いに違いない!」と思って観たら、どうしようもないくらいつまらなかった時の失望、「どうせまた騙されるんだろ」と半信半疑で観たら、やっぱり騙された時の自嘲にも似た落胆、それでも騙され続ける自分への励ましなど、悲喜こもごもの感情を味わえるってのも、映画を観る面白さじゃないのかなと。騙され続けた挙句にようやく見つけた良作なんて、賞を総なめにした作品を観たとき以上の喜びと興奮を味わえますし。

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【ストーリー】
下水道で無残に食いちぎられた人間の四肢が発見される事件が続発。調査してみれば、そこにはでっかいワニ。街は大騒ぎに。

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『ジョーズ』の大ヒットを受けて、文字通り山ほど作られた亜流動物パニック映画。時折『グリズリー』のように熊が山をウロウロする映画も作られたが、人間にとってはなにかと不便な水中が恐怖を盛り上げるのに最適かと、水棲動物モノが圧倒的多数作られることに。「水辺に近づかなきゃいいだけじゃん」と言った甘い考えを持つ観客に対し、人食い魚が空を飛ぶ『殺人魚フライングキラー』などの珍作も作られたが、水中でも充分強いのに陸にまで上がってくる始末に負えない生物ワニ映画が、結構な数作られることと。
で、本作。“捨てられたペットのワニが下水道でスクスク”という、日本でも知られている都市伝説をベースに、新薬の動物実験、大企業と政治家の癒着、若ハゲ問題などの社会問題をホンノリと盛り込んだ快作。ユーモアとショック描写のバランスも絶妙。パンチの効いたキャラクター達によって進められる程よくヒネられたストーリーを持つ本作の最大の功労者は、やはり脚本のジョン・セイルズであろう。今では所謂“良い映画”を撮る監督として知られているが、『ピラニア』『宇宙の7人』『ハウリング』と、ツボはシッカリと押さえつつ独自のユーモアを盛り込んだジャンル映画の脚本家としての印象が、未だに強い。その無駄なく練られた脚本と、“撮るべきモノだけを撮る”欲張らない演出が上手に絡んだ好例。

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登場するや否や、薄くなった生え際ばかりをネタにされる主人公に『ファイヤーウォール』のロバート・フォスター。『ジャッキー・ブラウン』での冴えない中年男役が記憶に新しいが、『ジェイソン/地獄の綱渡り』『艶獄戦士アマゾンズ』『人喰い魔神・裸女狩り』など、是非とも騙されてみたいタイトルばかりが並ぶフィルモグラフィを持つ、男の中の男
ロバート・フォスター同様に男の勲章的なフィルモグラフィを持つ『キャノンボール2』のヘンリー・シルヴァなど、人間様も強烈な本作ではあるが、やはり目玉はワニ。だって、ワニ好きなんですもの。生ワニを大雑把に背景と合成させたり、モデルアニメーションや実物大の部分モデルなどを使用しているようだが、どれもゴツゴツとした質感は充分。ウロウロしていただけのはずがピンポイントに悪玉の屋敷へと辿り着き、脇目も振らずその悪玉だけを執拗に痛みつける行動も、愛嬌タップリ。オープニングとエンディングで排水溝からポロリと落ちてくる子ワニなんて、悶絶モノの可愛らしさです。うっかり子ワニが欲しくなってしまいましたが、どうせ飼えなくなって近所に新たな都市伝説が生まれる羽目になるのが目に見えてますので我慢しますが。
“ペットは最後まで責任を持って”といった教訓でもあるのかと思いきや、巨大ワニが元々は自分が飼っていた物である事に女性生物学者が最後まで気付く様子もなく、そんな教訓は特に垣間見られず。強いて言えば、“いくら子供が駄々をこねようがペットは飼うな”って教訓だけは見出せるようにも。

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呼んでも来ないのに、呼ばないと来る

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2007年11月17日

アドレナリン (Crank)

監督 ネヴェルダイン/テイラー 主演 ジェイソン・ステイサム
2006年 アメリカ/イギリス映画 94分 アクション 採点★★★

人見知りが激しい上に極度のあがり性であるくせに、何かの代表になっちゃったりステージに上がったり、やたらと人前に出ることばかりしてしまう私。もちろん、大勢の人前に出る度に緊張で目の前が真っ白になるんですが、なんですかねぇ、この緊張が好きなんですかねぇ?

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【ストーリー】
腕利きの殺し屋シェブは、宿敵のリッキーから毒を盛られてしまう。アドレナリンを出し続ければ毒の作用を遅らせられることを知ったシェブは、あの手この手で興奮をし続ける羽目に。

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“興奮し続けないと死ぬ”。この一ネタで突っ走り続けるアクション。
基本的には『レクイエム・フォー・ドリーム』や『SPUN/スパン』などのジャンキー映画の表現手法を用いた一本なのだが、アドレナリンを出し続ける為、破壊に強盗に喧嘩に街頭セックスをする主人公のスタイリッシュとは程遠いマヌケな姿をコミカルに描き、そこにピタリとくる選曲と結構血生臭い暴力描写とグーグルマップを織り交ぜることで、なかなか独特な味わいを持つ作品に。このバカバカしさの突き抜け方は見事なもので、「くだらない」と一笑に付すことを許さない勢いがあるのだが、息切れするかのように終盤で失速してしまうのは残念。それでも綺麗に終わりそうでそうはさせないラストカットを持ってくるオチのつけかたは悪くはないし、何よりも出なくてもいいような気がしてくる主人公の携帯の着信音を自分の携帯にも欲しくなったので、大体満足で。

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作品の選び方に明確な個性が現れ始めた、『ローグ アサシン』『カオス』のジェイソン・ステイサム。そろそろ“ステイサム映画”ってジャンルが出来上がるんじゃないでしょうか。本作でも、全編憤り走り続けお尻を丸出しにする“ステイサム仕事”を満喫。ステイサムが向かっている地平は、決して間違ってはいないと確信。
そんなステイサムに負けず劣らずのヨゴレっぷりを披露する『スタスキー&ハッチ』『ロード・トリップ』のエイミー・スマートや、『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』のドワイト・ヨーカム、ジョン・ヘダー同様案外いい顔の持ち主である『バス男ナポレオン・ダイナマイト』のエフレン・ラミレッツと、脇の顔ぶれも魅力的。

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車ですると女の人は酔っちゃうこともあるそうなのでご注意を

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2007年08月11日

宇宙人の解剖 (Alien Autopsy)

監督 ジョニー・キャンベル 主演 デクラン・ドネリー
2006年 ドイツ/イギリス映画 91分 コメディ 採点★★★★

見始める前からガッカリするのは重々承知しているはずなのに、ビデオ録画をしていてもなおオンタイムで見てしまうUFO特番。欠かさず見てます。もちろんUMAや心霊番組なんかも大好きなんですが、その如何わしさではやはりUFOが頭一つ飛び出している感も。関連本などで大体の真相が分かっているというのに見てしまうってのは、やっぱり「〜かも知れない」という夢や希望にも似た何かがあるからなんでしょうかねぇ。白黒ハッキリさせないと気が済まないって人にとっては、非常にどうでもいい事柄なんでしょうが。

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【ストーリー】
1995年、ロンドン。違法コピーした海賊版ビデオ販売を生業にしていたレイは、エルヴィスグッズを格安で仕入れて高値で販売する手を思いつき、一路アメリカへ。しかし、そこで出会ったとある退役軍人が持ってきたフィルムに、異星人が解剖されている姿が。度肝を抜かれたレイは、宇宙人マニアでドラッグディーラーのヴォロスから資金援助を受けそのフィルムを買い取るが、保存状態が悪かったのか、何も写っていない。このままじゃヴォロスに殺されると、身内を集めてフィルムをでっち上げるが…。

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1995年に放映され、世界中の度肝を抜いた“宇宙人解剖フィルム”。1947年にロズウェルに墜落したUFOから回収された宇宙人の遺体を解剖する様子を従軍カメラマンが撮影し、そのカメラマン自身が持っていたコピーであるとの触れ込みで放映されたこのフィルムを見て、すっかりと信じちゃった人も少なくなかったとか。まぁ、映画好きからすれば二面しか写らない壁にセット臭さを感じたり、とても良く出来ているとは言いがたい宇宙人の遺体や、肝心な部分を全く映そうとしない撮影手法に「頑張ってはいるんだけどなぁ…」と、前もって分かりきっていたはずの失望感を感じてしまったものですが。
で、瞬く間にニセモノであることがバレてしまったこのフィルムを作ったとされる、レイ・サンティリとゲイリー・シューフィールドらの実話を基に作られた本作。知りたかったあんな事やこんな事の真相が遂に明らかになるのかと思いきや、またもや煙に巻かれる結果に。この如何わしさ、堪りませんねぇ。

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のっぴきならない状況に陥ってしまった主人公らのテンヤワンヤを描く本作の作りは、まさに青春コメディの王道。“フェイクドキュメンタリーを作った人物の実話を基にしたフェイクドキュメンタリー”と言うと、なんだか合わせ鏡を見ているような軽い眩暈を感じてしまうが、“宇宙人の解剖フィルム”ってのを、“借りてたポルノ”やら“高価な水槽”ってのに変えても全然機能するいたってシンプルな物語構成。思わぬ成功に浮かれる様や、その成功によって友情にヒビが入る様もまさにそうで、その安心印のベースラインに当時流行のファッションや音楽を飾りつけ、そこに“宇宙人”という違和感丸出しのアイテムを投入することで、普段はなかなか得がたい独特な風味を醸し出すことに。ご近所さんが集まってワーワーとフィルムを作っている様は、映画好きにはなんとも言えないこそばゆい楽しさを感じてしまうもので。ところで本作、題材が題材なのでムーっぽいの好きな方々には堪らない設定が随所に。先に挙げたロズウェル事件しかり、ニセモノと知った軍部が大喜びし、ニセモノに大衆の目を集めて真実から関心を削ぐ為に影ながら主人公らを助けたりと、なかなか嬉しい気配り。
最後に当の本人らも登場する本作。今ではイカサマだったとバレているフィルムを作った顛末を明かし、「騒がしちゃって、ゴメンね」と謝る映画かと思いきや、「イヤーあれは確かにニセモノだけど、オレが見た本物を基にして作った“リメイク”なんだよ」と、あくまで本物がある前提で作られている。これを「この期に及んで往生際が悪い!」と怒るか、「そのハッタリ、乗った!」と快く騙されるかで評価も大きく変わるものと思うが、もちろん私は騙されますよ。楽しいですもの。

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主人公らを演じるデクラン・ドネリーとアント・マクバートリンは、“アント&ドネリー”のコンビ名で本国では大人気のようで。メイキングでも常に二人一組扱いでしたし。アルバムを出したりTV番組の司会をしたりと大活躍の彼らにとって、本作が映画デビューだそうだが(『ラブ・アクチュアリー』には本人役で出演)、一発当てたいレイとひたすら堅実なゲイリーという役割分担が完成されているせいか、全く初出演とは感じさせない軽妙さが印象的。特にブラーのデーモン・アルバーン風の髪型と服装で時代を表したドネリーは、いかにもイギリス人的でカワイイ。ちっちゃいですし。
他にも「宇宙人ならオレ達に任せろ!」ってことなのか、『インデペンデンス・デイ』『最終絶叫計画4』のビル・プルマン、『エイリアン』『ビッグ・バウンス』のハリー・ディーン・スタントンと、非常に心強い援軍が駆けつけているのだが、そんな彼ら以上にある意味心強いのが、「女だったら地球人も宇宙人も関係ない!」と言い放つ宇宙規模のカサノバ、U.S.S.エンタープライズの副長ライカーことジョナサン・フレイクス。TVフッテージでの出演なので、爆発の度に真っ先に吹っ飛ぶアグレッシヴさはなりを潜めているが、宇宙人物の顔ぶれとしては大満足のラインナップでしたよ。

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これでも「真相を隠す為に敢えてウソを」とか言い張っちゃう人がいるんでしょうねぇ

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2007年08月07日

エグゼクティブ・デシジョン (Executive Decision)

監督 スチュアート・ベアード 主演 カート・ラッセル
1996年 アメリカ映画 132分 アクション 採点★★★

9.11の前後では、特にアクション映画は大きく様変わりしたと言え、事件の影響力の大きさを劇場でも実感してしまうのだが、逆に映画自体も9.11に影響を与えていたとも言える気が。

【ストーリー】
ワシントン行きの旅客機がテロリストによってハイジャックされる。彼らの要求はアメリカによって拘束されたテロリストの釈放であったが、彼らの本当の目的が機内に持ち込んだ大量のガス兵器を用いた自爆テロであることが判明。特殊部隊を空中から機内へ潜入させる作戦が執られたが、トラブルが発生。残る手段は乗客もろとも旅客機を撃墜するしかないと思われたが…。

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テロの実行犯が「この映画を参考にしたんだよ」と言ったら、なんとなく納得してしまいそうな一本。
ハイジャック、爆弾解除、撃墜の危機、初めての旅客機操縦と「これでもかっ!」って程詰め込まれた危機的状況を、冒頭のガス兵器奪還作戦にラストの爆風にまみれた着陸劇という派手な見せ場で挟み込んだ、サービス精神旺盛な本作。次々と悪いことばかり起きる展開をダレ場も作らずに一定の緊張感で保ったのは流石とも言えるが、あまりに詰め込み過ぎているので、お腹いっぱいになり過ぎることも。また、色々と詰め込んだはいいがその全てを消化しきれなくなったのか、地道に問題解決に挑んでいた主人公らだけに、クライマックスがやけっぱちに見えてしまう気もしないでもないが、それでもさすがに『プレデター』の脚本家だけに、“正体不明の起爆係”など美味しい設定が随所に配置されているので、これといってつまらない思いはしない作品となっている。

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面倒なことは基本的に他人任せの主人公に、『ソルジャー』『ポセイドン』のカート・ラッセル。“インテリ”をメガネ一つで表現するストレートさが堪らない。その他にも、オスカー獲得後はなんとなく扱い辛さばかりが印象にある『X-MEN:ファイナル ディシジョン』のハル・ベリー、いつまでも“ルイージ”が心に残っている『アサルト13 要塞警察』のジョン・レグイザモ、90年代は何にでも出てた『U.M.A レイク・プラシッド』のオリヴァー・プラット、『ターミネーター2』以来常に瀕死の印象が強い『ステルス』のジョー・モートンら、錚々たる顔ぶれ。しかし、本作最大の目玉と言えばやはりスティーヴン・セガール。“セガールが唯一死ぬ映画”としても有名な本作。確かに何千メートルという上空から吹き飛ばされる姿が確認できるのだが、『暴走特急』のテロリストも言ってた通り「死体を見るまで安心できない」のがセガール。きっと吹き飛ばされた瞬間、合気道やら気孔術やら持てる技を全て駆使して旅客機の尾翼に難なく掴まり、こんな目にあわせたカート・ラッセルへの怒りをフツフツと煮えたぎらせながら機内への潜入を画策していたものの、あれよあれよと解決してしまったので、着陸後もなんとなく出づらかったってのが真相ではと。自分の事を尊敬していたはずの部下が、カート・ラッセルに敬礼しているのを見ちゃいましたし。

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アラ、生きてたの?

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2007年08月04日

エレクション (黒社會)

監督 ジョニー・トー 主演 サイモン・ヤム
2005年 香港映画 101分 ドラマ 採点★★★★

「アイツはダメだから、私に!」と相手の欠点だけに目を集中させたり、「私が当選したら、ユートピアを!」と言い切る根拠が全く見当たらない公約を掲げたりと、面白味のない候補者たちが予想を全く裏切らない展開と結果を見せる選挙。まぁ、それはそれで大事なんでしょうが、どうせなら「障害者用の駐車スペースにぬけぬけと車を停める頭と心の不自由な方々の車には、何をやっても許されるって法案を通します!」と言い切る候補者でもいれば、間違いなく一票投じるんですけどねぇ。

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【ストーリー】
香港黒社会最大の組織“和連勝会”で2年に1度行われる会長選挙は、伝統と和を重んじ冷静なロクと、血気盛んで粗暴だが結果を残す行動力があるディーの二人で争われていた。組織の調和を重視する長老達はロクを新会長に選ぶが、納得のいかないディーは報復を開始し…。

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ザ・ミッション 非情の掟』『ブレイキング・ニュース』のジョニー・トーによる、黒社会における壮絶な権力争いを描いた二部作の第一部。
タイプこそ大きく異なるが、絶対的な権力を手にする為には手段を選ばないってのは共通する二人の男の壮絶かつ非情な争いを描いているのだが、過激な暴力描写の“動”と、映画的にはなければないで通ってしまいそうだが、あることによって一気に人物や舞台に重みと深みが生まれる些細な日常描写や行動の“静”とのコントラストが見事。丸太でボコってる最中に双方の携帯が鳴り、一旦ボコるのを休止して電話に出てみたらお互いが味方同士であることが判明するシーンなどその典型だが、そこに生まれるのは弛緩した緊張による笑いだけではなく、組織への忠誠の重みがズシリと伝わってもくる。その“静”と“動”は全編を通し繰り返され、片時も目を離せない緊張感を生んでいる。地道な裏工作から報復合戦、そして権力の象徴である“竜頭棍”をバトン代わりにした暴力リレーと続き、さらにクライマックスからエンディングにかけて二転三転する構成も素晴らしく、静かだが緊張の糸が今にもはち切れそうなドライブからストンと落として一件落着に見せかけて、さらに一山二山持ってくるのだから堪らない。組織の古い体質に理不尽さを感じている若きインテリヤクザが物語の中心になるであろう第二部が、もう今から楽しみで楽しみでしょうがない。まぁ、いつになったら観れるのか定かじゃありませんが。

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物腰こそ穏やかであるが、組織の結束力を揺ぎ無いものへとするためにより強大な力を求め、不安要素に対してはそれがたとえ微小な事であっても迅速かつ手段を選ばず排除する冷徹さを持つロクには、『PTU』『ブレイキング・ニュース』などジョニー・トー作品に欠かせない俳優の一人であるサイモン・ヤム、一方“烈火の如く”をそのまんま体現したかのようなアグレッシヴさを持つディーには、『柔道龍虎房』のレオン・カーフェイと好対照の二人。次回に何かしでかしそうな雰囲気だけはプンプンと醸し出していたインテリヤクザのジミーには、同じく『柔道龍虎房』のルイス・クー。ウォン・ティンラムやラム・シューといった、ジョニー・トー映画のお馴染みでありお楽しみである顔ぶれも揃った本作。もう何度でも書くが、早く第二部が観たい。と言うか“二部作”であるってことをあまり前面に出していない気もする本作。まさか、ウヤムヤにしちゃったりは…

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テッペンに登ってみれば思いのほか孤独でもあるお山の大将

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posted by たお at 02:57| Comment(2) | TrackBack(9) | 昔観たアレ■あ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月09日

unknown アンノウン (Unknown)

監督 サイモン・ブランド 主演 ジェームズ・カヴィーゼル
2006年 アメリカ映画 85分 サスペンス 採点★★★

とても他人様にお勧めできるもんじゃない性格の持ち主であるわたくし。それでも精一杯生きております。で、この性格。まぁ、生まれ育った環境やら経験やらで形成されたんでしょうが、もし今記憶喪失になったとしても、この性格やら人格やらってそのままなんでしょうかねぇ?

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【ストーリー】
閉ざされた廃工場の中で記憶を失ったまま目覚めた5人の男。僅かな手掛かりから、彼らのうち3人が誘拐犯で残る2人が被害者であることが判明するが、戻らぬ記憶の中、互いに疑心暗鬼と混乱に陥っていた。しかしそこへ一本の電話が。それは誘拐グループのボスからで、日没までに廃工場へ戻ってくるというものだった…。

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誰が犯人なのか、観ているこっちだけではなく登場人物ですら知らないってのが新機軸のサスペンス。
薬品の影響で全員が大体同程度に記憶を失う設定には若干の強引さを感じるが、誰が犯人で誰が被害者かわからないこの特異な状況を作り上げる為であれば、諸手を上げて歓迎。新人らしいアイディア一発勝負的作品とはいえ、二転三転する物語をコンパクトにまとめ上げる手際は見事で、登場人物同様に翻弄される序盤から、時限爆弾の如く時間の経過と共に徐々に真実が明らかとなっていく中盤、意外な展開をする結末まで、全く目を離せない出来となっている。互いはおろか、自分でも知らない素性を唯一知っているボスの帰還をタイムリミットの設定にしているのも上手い。しかし、非常に面白い設定を持ちながらもその設定に充分な肉付けがされておらず、設定だけで映画が形成されてしまっている難点もある。“自分は誰なのか?”を探る映画というよりは“この状況をどう乗り切るか?”という映画とはいえ、謎の解明が基本的には時間の経過とフラッシュバックに頼るのみで、僅かな手掛かりを基に試行錯誤や勘違いをしちゃったりする膨らみがない。その後の展開もビックリはするがその設定にビックリしただけで、立派な骨組みだが壁のない家というか、スープも麺も美味いのだが具が全く入っていないラーメンを出されたかのような物足りなさが、非常に残念。

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誰が誰だか分からないが、誰もが胡散臭くてしょうがない見事なキャスティングが光る本作。大体予想通りだった『オーロラの彼方へ』のジェームズ・カヴィーゼルはさておき、アカデミー賞に“胡散臭い賞”があれば毎年受賞は間違いなしであろう『マトリックス』のジョー・パントリアーノ、普通の人生では見る事がないであろう闇を覗いたかのような深くて暗い瞳を持つ『プライベート・ライアン』『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』のバリー・ペッパー、人当たりは良いがお金を貸すのはちょっと躊躇しちゃいそうな『リトル・ミス・サンシャイン』のグレッグ・キニアと、ものの見事に皆さん胡散臭い。ジェームズ・カヴィーゼルとひたすらに善人だったバリー・ペッパーが物語の中心になってしまったが為に脇役の扱いが非常にぞんざいではあるのだが、吊るされっ放しで物語に参加できない『呪い村 436』のジェレミー・シスト、『リクルート』『ロード・オブ・ウォー』のブリジット・モイナハン、“ツイン・ピークス”ファンとしては名前を発見するだけでも嬉しいヒドゥン』のクリス・マルキーと、隅々までもが胡散臭い。これだけでも充分人間不信に陥りそうなキャスティングだというのに、トドメが“怪しい”をウリにしているコンスタンティン』『ナチョ・リブレ 覆面の神様』のピーター・ストーメアだ。ここまでパっと見信用できない顔ぶれを揃えたことに、ただただ感嘆。次回は是非この顔ぶれで詐欺映画を。

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これでスティーヴ・ブシェミがいれば最強

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posted by たお at 00:42| Comment(6) | TrackBack(35) | 昔観たアレ■あ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月26日

アポカリプト (Apocalypto)

監督 メル・ギブソン 主演 ルディ・ヤングブラッド
2006年 アメリカ映画 138分 アクション 採点★★

映画ってのは結局のところ娯楽の一つであるが故に、たとえ作り手の主義主張に多少相容れることが出来ない部分があったとしても、映画自体が面白ければ基本的には全く問題ない私。もちろん、つまらなければ遠慮することなく激怒いたしますが。しかしながら、その主義主張があまりにもあんまりであれば、どんだけ作品が面白くても話は別。なんというか、『ダイ・ハード』ばりに痛快なアクションであっても、主役がヒトラーで、バッタバタと殺されていく悪人どもがユダヤ人みたいなものとか。メル・ブルックスなんかがそんな映画を作るのならその真意は充分に理解できるのだが、作り手がナチ信奉者だってのが分かってたりすれば、尚更問題外で。

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【ストーリー】
狩猟民族の青年ジャガー・パウは、家族や仲間たちと共に森の奥で平和に暮らしていたが、そこへマヤ帝国の人間狩り部隊が急襲。辛うじて深く暗い枯れ井戸の奥へ臨月の妻と幼い息子を隠したジャガー・パウであったが、多くの仲間たちと共に捕らえられ、聖なる儀式の生贄として連行されてしまう。寸でのところで生贄を免れたジャガー・パウであったが、今度は人間狩りゲームの標的として追われることに。家族の待つ故郷へと必至に走り続けるジャガー・パウだったが…。

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いきなり脇道へと逸れてしまうのだが、まずはメル・ギブソンが監督をした前作『パッション』の話から。なにせ、彼の主義主張がありありと表れている作品ですし。元々本作のレビューを書く前に、一度きちんと『パッション』について書いておきたいなぁと思ってはいたものの、如何せん大嫌いな映画。借りたはいいがどうにも観る気にならず、結局今日に至っちゃったんですが。で、全編ラテン語とアラム語だけを用い、聖書と史実に忠実に作ったとの触れ込みであった『パッション』だったが、聖書を一度でも読んだことがあれば、イエスが「やっぱ、死なないとダメっすか?」と泣き言を言うオープニングから捕らえられるまではいいとして、話題となった拷問ショーがいざ始まれば、どの福音書を読んでも出てこない新事実が続出するのに驚いたはず。それもそのはずで、聖書を原作にしたと思いきや、「イエスの最期を幻視で見た」言い張るどっかの修道女が書いた本を原作にしているんだから。原作自体がトンデモない上に、『薔薇の名前』にもそういった方々が出ておりましたが、イエスと同じ苦痛を味わうことでイエスと一体化し、そこに悦楽を感じようとする内容自体もトンデモない。

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しかし、それら以上にトンデモないのがユダヤ人の扱い。欲とエゴにまみれ、ブクブクと太って薄汚れた、身も心も不潔な人種として描かれたユダヤ人が、ナザレ地方のユダヤ人は浅黒い肌につぶれたダンゴ鼻が特徴の、どちらかと言えば黒人に近いルックスであるという説が濃厚なのにも関わらず、細面で男前の白人イエスを狂ったように弾劾する様は異様で、“全てはユダヤ人のせいである”と思われても仕方がない光景であった。もちろんメル・ギブソン自身はそれを真っ向から否定したが、反ユダヤ主義の発言を執拗に繰り返す父親同様に、自身もその手の言動で物議を醸した彼の否定には、無論説得力はない。なによりも、その映像からはそれを否定するだけの根拠が全く見当たりませんし。ただ問題は、作品としての完成度が異常に高いって点。血塗れサービス精神は旺盛で、映像は力強く、ストーリーテリングも巧みなため全くダレることがない。母マリアが十字架を背負わされ連行されるイエスに幼子の頃をダブらせる一瞬のシーンなど、強く胸を打たれたほど。しかしながら、あまりに偏狭な主張が込められてしまっている以上はプロパガンダとしての意味合いが強い。私自身は親ユダヤでも反ユダヤでもないし、信仰に関してもそれがもたらす効果について客観的に見てしまう性質ではあるが、偏狭なプロパガンダはやはり気分が悪いので、この作品が栄えある大嫌いな一本の座に君臨することに。

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で、前置きがえらく長くなってしまったが、『アポカリプス』の話。結論から言ってしまえば、非常に良く出来た作品である。『マッドマックス2』のモヒカン軍団を髣髴させる人間狩り部隊による蛮行を凄まじい暴力描写で描き、肥大化し消費と快楽のみを追及する現代社会を象徴するかのようなマヤの都市描写も、切られた首の視点でカメラがグルングルン回る遠慮のないゴア描写も素晴らしい。いつの時代も、金持ちの子供は小憎たらしいデブってのも良い。全編マヤ語というハンディキャップになりかねない言語設定も、理不尽な暴力を受け続けた主人公が反撃に転じる中盤以降、めっきりとセリフが少なくなるので気にならない。また、森についてなんか長々と言ってはいたが、要は「森に入ればオレが法律だ」と言ってる事がランボーと一緒の主人公が、やってることもランボーと一緒になる中盤以降も、序盤からのスピード感が全く息切れすることなく持続している。毒蜂だの毒カエルだの、なんかっていうと毒を使う主人公の毒マスターぶりも面白い。
「マヤ文明はこんなに野蛮なんかじゃない!」って意見も少なくはないが、人間の残虐性、特に信仰を背景にした場合のそれは今も昔も然程変わっているとは思えないし、実際戦争に明け暮れ首をスポンスポン切り落としていた様子を描いた壁画も見つかっている以上は、大体においてこんな感じだったのではと。

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しかしながら、やはり本作はメル・ギブソン映画らしい結末を迎えてしまう。もちろんここで言う“メル・ギブソン映画”とは、『マッドマックス』や『リーサル・ウェポン』なんかではなく、『パッション』のメルギブを指すんですが。
やたらと繰り返される「新しい時代」というセリフや、底なし沼に一旦沈んだ主人公が這い上がる様に洗礼をイメージしちゃったりと、そこはかとない不安を感じてはいたものの、どことなく80年代に数多く作られた暴力的なアクション映画を匂わせる本作に身を委ねて堪能していたのだが、最後の最後にやられた。もちろんそれは、“救いの手”の様に現れるスペイン人宣教師と、彼らが抱えるデカデカとした十字架。テーマとしては飽食の時代である現代に警鐘を鳴らし、よりシンプルな生活と家族への帰依を促しているのであろうが、このワンシーンのおかげで、「この腐敗しきった野蛮人の社会に平和をもたらせられるのは、キリスト教だけですよ」とでも言いたげにも思えてくる。布教の名の下に数多くの文明と文化を破壊し、同様に数多くの血を流させたキリスト教徒であるが、インカ文明やアステカ文明とは違い、マヤ文明を滅ぼしたのは彼らではない。言語以外にもディテールにこだわった作品だというのに、よりによってその部分だけウッカリ間違ったわけではないのは明白。『パッション』に比べればだいぶ控え目になったその主張ではありますが、やっぱりあんまり好きなタイプの主張じゃないので、この評価で。俳優としては大好きですし、監督としてもその手腕は見事なんですが、どうにも人間としては相容れることは出来そうにないですねぇ。

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今も昔もやってることは然程変わらず

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posted by たお at 02:57| Comment(20) | TrackBack(58) | 昔観たアレ■あ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする