2016年12月29日

エンド・オブ・ア・ガン 沈黙の銃弾 (End of a Gun)

監督 キオニ・ワックスマン 主演 スティーヴン・セガール
2016年 アメリカ映画 87分 アクション 採点★★

特別面白いわけでもなければ、「今回こそは面白いかも!」って期待感も全くないのに、なんでセガール映画を観続けてるんでしょうねぇ、わたしってば。「やっぱり今日もダメだった!」と、鑑賞後にある種の清々しさこそ感じられますが、別に作品のダメっぷりを楽しんでいるわけでもなし。おそらく、大ヒット作を作ろうとか賞を獲ろうとかいう映画人にありがちな欲じゃなく、食い扶持として映画を作り、それによって得られてるちょっとした優遇に満足している、なんか楽しそうな老後生活的なセガールの姿勢に、ある種の憧れを感じちゃってるのかもしれないですねぇ。

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【ストーリー】
フランス、パリ。元DEA捜査官のデッカーは、暴漢に襲われている女性リサを救出し暴漢を殺害する。しかし、その男はテキサスを拠点とする麻薬王の息子で、彼の車には巨額の金が隠されていた。リサからの誘いでその金を盗み出したデッカーは巨大麻薬組織に追われるが、セガールは無敵なので大丈夫でしたってお話。

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パリを舞台に、エルモア・レナード風の小洒落たクライムアクションにセガールが挑んだ意欲作。『リターンド・ソルジャー 正義執行人』以来ちょっとだけご無沙汰だった、キオニ・ワックスマンがメガホンを。
“意欲作”と書いてはみたものの、出来合いのパリの夜景を挿入してるだけで、あとはお馴染みのブカレスト撮影なのにパリと言い張る安普請っぷりや、ハードボイルド風のモノローグを挟み込んでるけど、セガールがあまりにモシャクシャ喋るんで何を言ってるのかさっぱり分からないし、分かったところで大したことは一言も言っていない、いつものセガール映画。『ゲット・ショーティ』風の軽快な音楽とは裏腹にさっぱり軽快じゃない展開や、「きっとここで笑わないとダメなんだね」とこちらが意図をくみ取ってあげないと機能しないギャグシーンの数々、意味深に最後まで顔を出さない麻薬王が結局物語に絡まないのでその演出が全く意味が無かったりする、やってみた意欲だけを褒めるしかない一本に。
セガールが映画製作中最も楽しみにしているであろうハッピータイムも、お相手が改造乳の自称美人さんだったせいか、最近は女優が脱いだ時にしか見られなくなったセガールの満面の笑顔も元気なさげだった、なにかと残念な本作。それでも、太り過ぎちゃって目が開いてるか閉じてるのかさっぱり分からなくなったセガールが、ハッピータイムの時ばかりは目を見開いている様や、やたらと女性に言い寄られる謎のモテモテ設定が施されている様に、楽しいことだけをやろうとしている理想の老後像が感じられちゃうんで、これでも採点は甘めに。

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意欲の大半はここに

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2016年12月08日

エンド・オブ・キングダム (London Has Fallen)

監督 ババク・ナジャフィ 主演 ジェラルド・バトラー
2016年 イギリス/アメリカ/ブルガリア映画 99分 アクション 採点★★★

ジョエル・シルヴァーなんかがけん引していた、悪役が単純に悪でしたかなかったド派手大味アクション大作ってのも、同時多発テロ以降めっきりと減っちゃいましたよねぇ。まぁ、いろいろと配慮が必要な時代になっちゃったってのもあるんでしょうけど、配慮をし過ぎちゃうと、する側にしてもされる側にしても良い結果にならない気もするんですがねぇ。

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【ストーリー】
英国首相の急死により執り行われる葬儀に参加するため、ロンドンに米国大統領アッシャーをはじめ西側諸国の首脳が集結。しかし、厳戒態勢のロンドンで同時多発テロが発生。首脳らが次々と命を落とす。シークレットサービスのバニングの活躍で難を逃れたアッシャー大統領をテロリスト集団が追う中、バニングは大統領を守るため孤立無援の戦いを挑むことに…。

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80〜90年代の大味大作アクションの醍醐味を久々に味わえた『エンド・オブ・ホワイトハウス』の続編。メガホンを握ったのは、スウェーデンの新鋭ババク・ナジャフィ。
ザル過ぎる警戒態勢を潜り抜け易々と侵入したテロリストに、また襲われ捕まっちゃう大統領を救うべく奮闘する、怒りっぱなしで容赦ないシークレットサービスの活躍を描いた本作。見どころであるはずのロンドン大破壊描写のCGがなんともショボく、出だしから不安を感じさせられたが、そこ以外に関しては大味ざっくばらん路線をきっちりと継承していたので、安心して楽しめた一本。仏大統領はお洒落で伊首相はスケベ、加首相は影が薄く日本首相はお爺ちゃんみたいな、前時代的なステレオタイプ描写もなんか楽しい。
テロリスト側の事情も少なからず描かれてはいるのだが、それに対して全く聞く耳を持っていないのも本作の特徴。「お前らが始めた戦争…」「うるせぇ!ぶっ殺すぞ!」、「お前らが家族を…」「うるせぇ!ぶっ殺すぞ!」と、全く聞く耳持たず。この配慮のなさは、ある意味清々しさすら感じた一本で。

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大統領を救うこととテロリストを殺すことには長けてるが、事が起こる前に防ぐことはちょっと苦手そうな怒りん坊の主人公に扮したのは、もちろん前作に引き続き『完全なる報復』『GAMER』のジェラルド・バトラーが。知名度の割に、コンスタンスにヒット作を生み出しているわけでもない焦りもあるのか、今回も製作を兼ね大暴れ。ロマンスものだとちょっとジャガイモっぽいゴツゴツ感に目が行ってしまうのだが、こういうただひたすら怒ってるようなアクション映画だと、そのゴツゴツ感がピッタリとハマるので、アクション映画中心に活躍して欲しいなぁと。
また、捕まり過ぎの大統領に扮した『世界侵略:ロサンゼルス決戦』のアーロン・エッカートと、前作同様なんでも知ってる副大統領に扮した『テッド2』のモーガン・フリーマンを筆頭に、情報収集能力にちょっと難があるシークレットサービス上官に扮したアンジェラ・バセット、今回は安全圏にいれた『イコライザー』のメリッサ・レオなど、中心メンバーはほぼ全員引き続き登場する本作。
その他、『ダークナイト ライジング』のアロン・アブトゥブール、見た目でついつい疑っちゃった『ロボコップ』のジャッキー・アール・ヘイリー、旦那も結構ゴツゴツしているオール・ユー・ニード・イズ・キル』のシャーロット・ライリーら、新顔もそれなりの印象を残してくれた一本で。

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捕まってくれないとイマイチ本領発揮できない

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2016年10月13日

悪魔の墓場 (Non si deve profanare il sonno dei morti)

監督 ホルヘ・グロウ 主演 レイ・ラヴロック
1974年 イタリア/スペイン映画 94分 ホラー 採点★★★

ゾンビから霊まで、とりあえず死んでるものが関わってれば使えちゃう“死霊の○○”ってタイトルも便利ですけど、70年代のオカルトブームから現在まで使われ続ける“悪魔の○○”ってタイトルの汎用性の高さには到底敵わないですよねぇ。文字通り悪魔そのものが絡む映画以外にも、悪魔のような人や状況、果ては『悪魔の受胎』みたいに宇宙人相手にも使えちゃいますし。これだけ便利な枕詞もないなぁと。

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【ストーリー】
休暇でロンドンを離れ郊外を訪れた芸術家のジョージだったが、立ち寄ったガソリンスタンドで若い女性エドナの運転する車により、バイクを壊されてしまうやむを得ず彼女の姉のもとに共に向かうことに。しかし、ようやくたどり着くと、エドナの姉の夫が何者かに殺害される現場に出くわしてしまう。地元警察に容疑者として目を付けられる彼らだったが、事件の真犯人は害虫駆除用の超音波により目覚めた死体で…。

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贅沢な枕詞の使い方が目を引く、『悪魔の入浴・死霊の行水』のホルヘ・グロウによるゾンビ・ホラー。主演には、森永のCMに出てたりして日本のお茶の間でもお馴染みだった『カサンドラ・クロス』のレイ・ラヴロックが。
日本ではこっちの方が先に公開されちゃったので“ゾンビ映画第一弾”的な立ち位置に立っちゃってたが、明らかに『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド/ゾンビの誕生』のエピゴーネンである本作。近代化と同時に汚染が進む環境問題や、旧世代と新世代の軋轢、身の潔白を晴らすために奔走するミステリー仕立てなどといった差別化を図る試みを行ってはいますが、別にこれといった効果を上げているわけでも
お楽しみであるゾンビも、前半を浮浪者ゾンビ一体のみで乗り切り、後半になってようやくゾンビ数が増え始めるも、登場するのは一度に三体までという、なんとも寂しい絵面。紙で出来てるかの如く盛大に燃えてみたり、犠牲者の近くではウスノロなのにそこに至る道中は意外と機敏な動きを見せてたり、なにか儀式めいた方法でゾンビを増やしたりと、ゾンビルールが確立しきっていない故の珍妙さも。

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しかしながら、その数少ないゾンビに施された『ビヨンド』のジャンネット・デ・ロッシによる生々しいメイクには目を見張るものが。特にクライマックスに現れる、病院ゾンビの解剖跡の生々しさは今現在においても通用するクォリティの高さ。
また、犠牲者のオッパイを剥き出しにしたと思ったら握り潰しちゃう、一瞬エロを挟み込んでからグロに移行するキメの細かいサービス精神や、イギリスの片田舎だからこそ漂うオカルト的な雰囲気、環境問題を訴えるためというよりも、カッコいいテーマ曲を延々流したいがために結構尺を撮るオープニング(そこにも一瞬エロを挟み込んで)など、本作ならではの味が作り上げられてるのは立派なのではと。
記念碑的な意味合い以外ではなかなか評価しがたい作品ではあるんですけど、文句を言いつつも数年に一度のペースで観てしまう中毒性の高い作品でも。

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火気厳禁

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2016年08月16日

エンバー 失われた光の物語 (City of Ember)

監督 ギル・キーナン 主演 シアーシャ・ローナン
2008年 アメリカ映画 90分 ファンタジー 採点★★★

シアーシャを見たかっただけですよ

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【ストーリー】
地上での生存が出来なくなった人類は、その存亡をかけ地下都市“エンバー”を建築。時が経ち、耐用年数の200年を超えたエンバーは老朽化し、崩壊寸前となっていた。街がそんな事態に陥っていることを知らない住人たちであったが、一人の少女リーナは謎の箱を自宅で発見。その箱にはエンバーの秘密が書かれており…。

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ジェニー・デュープロによる同名小説を、残念な方の『ポルターガイスト』を撮ったギル・キーナンが映像化した機械仕掛け系ファンタジー。製作にトム・ハンクスの名前も。
レトロ調な死にゆく街並みや機械類、原因は分からないが巨大化した生物と、どことなく毒気の抜けた“Fallout 3”のような雰囲気がなかなかいい感じの本作。限定空間で作り上げられた生活様式など、独特な面白味も。
ただまぁ、面白いのはそのざっくりとした雰囲気のみで、ファンタジーとしてもアドベンチャーとしてもSFとしても非常に中途半端な仕上がりが残念。過去の市長が肝心なことを伝えないまま死んじゃうウッカリをやらかしたのはまぁいいとしても、子供のために脱出を決意しながらも肝心の子供は置き去りという話の雑さがそこかしこに目立つのも気になるところ。敢えて語らないことで想像力を膨らませる狙いがあるんでしょうけど、その話が粗すぎるので想像するよりも前に「ま、いっか」ってなっちゃう感じも。まぁ、サクっと雰囲気だけを楽しむ作品ってところかなぁ。

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ネジの緩み具合が狂気すら漂わせていた『宇宙戦争』のティム・ロビンスや、“食わせ者”って感じがよく出てた『ヴィンセントが教えてくれたこと』のビル・マーレイ、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』のトビー・ジョーンズに、マーティン・ランドーといった作品のスケールが小さい割に顔触れだけは豪勢だった本作。
でもやっぱり見どころは、『ロスト・リバー』『天使の処刑人 バイオレット&デイジー』のシアーシャ・ローナン。シアーシャだけが見たかったわけですし。で、今回のシアーシャ。もともと永遠の思春期みたいな彼女なので、若さゆえの天真爛漫さと成長による周囲や大人に対する不信が良い具合に混ざった、いつもの危うさ全開。抜群に似合う赤いケープ姿やお楽しみの囁き声も堪能できたので、“シアーシャだらけの90分”を楽しむって意味では満足できた一本で。

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“生物が巨大化”じゃなく“人間が縮小”の方が面白かったかも

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2016年08月07日

X-ミッション (Point Break)

監督 エリクソン・コア 主演 ルーク・ブレイシー
2015年 アメリカ/ドイツ/中国映画 114分 アクション 採点★★

アウトドアといったらせいぜい釣りくらいしかやらない私なんで、エクストリームスポーツとやらに全く興味が無いように思われますが、死ぬ前に一度くらいはスカイダイビングをやってみたいんですよねぇ。ウイングスーツとやらを着てやってみたいですし。まぁ、基本的に不器用なので間違いなく“死ぬ前の一度”になっちゃうんでしょうけど。

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【ストーリー】
親友の死をきっかけにエクストリームスポーツの世界を離れ、FBIの捜査官となったジョニー・ユタ。一方その頃、エクストリームスポーツを用いた強盗事件が世界を股にかけ立て続けに発生。事件にボーディ率いるアスリートチームが絡んでいると踏んだジョニーはチームに接近、潜入に成功するのであったが…。

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キアヌ・リーヴスの『ハートブルー』をド迫力のXスポーツ満載でリメイクしたアクション。『リベリオン』のカート・ウィマーが脚本と製作を務め、『ワイルド・スピード』などで撮影を手掛けてきたエリクソン・コアが監督を。
ウイングスーツで険しい渓谷の間を滑空したり、絶壁をスノーボードで滑り降りるなど正気のネジが吹っ飛んだXスポーツの数々を、ライブアクションだからこそ生み出せた迫力で映し出した本作。そのアクションの数々を「ホエェェッ!」と驚きながら楽しむタイプの作品なので、本来なら物語なんかにケチをつけるのは野暮ってもの。しかしながら、それらのアクションを素直に堪能しようにも、ドラマの部分が妙に重々しくて存在感を発揮しちゃうので、アクションに集中しきれず。これでドラマが最低限のラインで成立してればいいんですけど、エコテロリストの禅問答めいたやりとりやら、立ち位置が全然わからないヒロインやらと、存在感がある割にデタラメなのでアクション部を活かすどころか殺してしまって始末に負えず。『ハートブルー』であることを忘れかけてた頃に突然、例の上空に銃を撃ちながら「ウワー!」が再現されちゃうんですけど、溜めやタイミングが下手過ぎて出来の悪いパロディかゴッコみたいでしたし。
潜入捜査の結果生まれる友情やら強盗のシビれるカッコ良さもほとんどない、アクションシーンだけをスキップしながら観るような作品ではありましたけど、ワンアイディアを体を張って作り上げた、昔の二本立て映画の片っぽみたいな雰囲気は感じられたのは良かったかなぁと。

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サーフィンを中心に据えたオリジナルを超えようと思ったのか、あらゆるエクストリームスポーツに手を広げて欲張っちゃった結果、その一つを極めた人でも難しそうなチャレンジを全て成功させちゃうスーパーマンみたいな主人公になっちゃった今回のジョニー・ユタに扮したのは、『スパイ・レジェンド』のルーク・ブレイシー。『RONIN』の頃のショーン・ビーン的な、なんか“負け”が似合う顔立ちは嫌いではなく。ラスト近くの濡れたロン毛姿が、キアヌとパトリック・スウェイジを足した“ひとりハートブルー”みたいだったのも印象的で。
一方のボーディに扮したのは、『ゼロ・ダーク・サーティ』のエドガー・ラミレス。『マトリックス』のモーフィアス同様どこか胡散臭く、雰囲気こそあれど「一生ついていきます!」となるようなカリスマ性がないってのが残念。「地球環境がぁ」って口走る人を個人的に全く信用していないってのもあるんでしょうけど。
その他、結局どんな人なのかさっぱり分からなかったけど、そのエキゾチックな顔立ちとダイナミックな身体に目が釘付けになってしまったヒロインに扮した『アイ・アム・ナンバー4』のテリーサ・パーマーや、『ドミノ』のデルロイ・リンドー、せっかくこの人を使うならもっとその味を出せばよかったのにともったいなく思えた『ザ・ガンマン』のレイ・ウィンストンらが出演。

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上で待ってれば良かったんじゃね?

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2016年08月06日

オデッセイ (The Martian)

監督 リドリー・スコット 主演 マット・デイモン
2015年 アメリカ/イギリス映画 144分 SF 採点★★★★

金を持った映画オタクが「伝説的な映画を作るぞ!」と設立された、金の使い方としては最高の例であったレジェンダリー・ピクチャーズが中国の大連万達グループに買収されたってニュースには、大きな驚きと失望にも似た感情を覚えましたねぇ。これまでも巨大な中国マーケットを意識して、“世界平和に貢献する最先端科学の国”みたいな不自然なまでの中国推しが目立っていたハリウッド大作なんですけど、これにレジェンダリーの作品まで混ざるのかと。ただまぁ、中国が出る度になんでもかんでも「まただ!」と騒ぎ立てるのも、映画の楽しみ方としては健全ではないのかなぁとも。原作の段階で既にあるのに調べもせずに騒いでみたり、別段作品のバランスを崩してないのに貶すのはどうなのかなぁと。

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【ストーリー】
火星での有人探査計画に従事していたアレス3のクルー達は、突如襲った砂嵐によりミッションを中止し火星からの脱出を決定。しかし、宇宙船へと向かう途中で植物学者のワトニーは折れたアンテナの直撃を受け行方不明に。生存が絶望視されたワトニーを残し火星を脱出するが、ワトニーは奇跡的に一命を取り留めていた。ひとり火星に取り残された彼は、次の火星探査機がやって来る4年後までサバイバル生活を余儀なくされるのだが…。

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アンディ・ウィアーによる小説“火星の人”を、『プロメテウス』のリドリー・スコットが映像化したSFアドベンチャー。脚本と製作総指揮に『キャビン』のドリュー・ゴダードが。
そういえば『ミッション・トゥ・マーズ』でドン・チードルがひとりで盆栽してましたけど、どうやら火星に取り残されると何か生やしたくなるようですねぇ。それはさて置き、老境に達しなにか新しい命のあり方を模索しているかのような雰囲気も漂うリドリー・スコットが、過酷な火星でのサバイバルの様子を思いのほかたっぷりと放り込まれたユーモアと緻密な描写で描き切った本作。孤独で切実な息苦しい作品になりそうなテーマをここまで軽快なアドベンチャー作に仕上げられたのも、そのユーモアとそれを体現できるマット・デイモンの持ち味があったからこそなのかと。主人公のみならず、登場人物のほぼ全員がひたすらポジティブな様には、基本ひねくれ者の私も「やっぱポジティブっすよね!」と素直に感動。あんな状況、後ろ向きになった瞬間に負けですし。また、科学考証云々に関しては物理学者でも宇宙科学者でもないので何とも言えませんが、「なんかそれっぽい!」という映画的リアリティに溢れていたのは流石リドリー・スコット。
強いて言えば、クライマックスからバタバタとしてしまうのが惜しかった本作。そのクライマックスに中国が登場し、先端科学技術を誇りワトニー救出に手を差し伸べる様に「またか!」と思われた方も居られたようですが、この辺は基本的に原作通り。やや唐突な感じは否めなかったんですけど、それよりもかつては米ソが手を結ぶことが世界平和への第一歩みたいな感じだったものが、今ではそれが米中になったんだなぁと時代の流れをひしひしと。この調子だと、もし『レッドブル』がリメイクされたら、そのレッド野郎はロシアからじゃなく中国からやって来ることになるんだろうなぁと。まぁ、表立って敵扱いしづらいってジレンマもあるのかも知れませんけど。

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主人公のワトニーに扮したのは、待ちに待った『ジェイソン・ボーン』が控える『幸せへのキセキ』のマット・デイモン。すこぶる頭が良く、尚且つ茶目っ気たっぷりでユーモアを忘れない。どんな状況に陥っても易々とは諦めず、過剰な悲壮感も漂わせない。もうまさにマット・デイモンそのもののイメージがワトニーに合致した、これ以上ないキャスティング。ほとんど本人を見ているようだったので、リドリー・スコットの映画を観ているって充実感よりも、マット・デイモン映画を観ている充実感の方が圧倒的に勝ったほどで。
その他、どんどんブライス・ダラス・ハワードと見分けがつきにくくなってきた『インターステラー』のジェシカ・チャステインや、別段笑いやリアクション能力が活かされてたわけじゃないのでちょっともったいなかった『俺たちニュースキャスター 史上最低!?の視聴率バトルinニューヨーク』のクリステン・ウィグ、『グッドナイト&グッドラック』のジェフ・ダニエルズ、出演作にハズレの少ないアントマン』のマイケル・ペーニャ、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』のセバスチャン・スタン、『ヘラクレス』のアクセル・ヘニー、『ソルト』のキウェテル・イジョフォーに、『サンシャイン2057』では大いにやらかしていたベネディクト・ウォンなど、濃いめの顔触れが隅々に。
そんな中でも、やはり注目は『ピクセル』のショーン・ビーン。当然。「ショーンが観たい!」ってのがほとんどの原動力でしたし。で、今回のショーン。官僚的なNASA長官と対立するクルー思いのフライトディレクターという、“優しい方”のショーン。“クルー思いの現場監督”というと熱血漢をイメージしますが、どこか弱腰で、ワトニー救出の奇策をこっそりクルーに教えるも瞬く間にバレてクビ宣告。結果オーライでクビ回避かと思いきや、「それはそれ!」ってんであっさりクビになっちゃう相変わらずの切なさ。新ロケットの打ち上げも見ずにゴルフに興じるラストは、なんか楽しそうだからいいけどやっぱり居た堪れず。そんなショーンを見れた充足感と、“スターマン”ではなくベタを恐れずどこか別のシーンで“火星の生活”を流して欲しかった気もしますが、それでもボウイを聴けた喜びってのは変わらず大きいので満足度の高かった作品で。あ、ブルーレイに収められていたショーンのNGシーンが可愛かったってのを最後に。

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ウジウジしない

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2016年08月04日

エージェント・ウルトラ (American Ultra)

監督 ニマ・ヌリザデ 主演 ジェシー・アイゼンバーグ
2015年 アメリカ/スイス映画 96分 アクション 採点★★★

深夜のコンビニ店員って、接客業に携わる人たちの中でもトップクラスに覇気がないですよねぇ。ほぼほぼ死人。他人が寝ている時間に働いているんだから何かと大変なんでしょうけど、基本的に全てが面倒くさそう。まぁ、異常に元気がいい店員のいる深夜のコンビニもちょっと嫌ですけど。適材適所ってやつですかねぇ。

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【ストーリー】
田舎町のコンビニで働くマイクは、恋人のフィービーと共にハッパを楽しみながら日々ぐうたらに過ごすダメ人間。そんなある日、店に現れた謎の女性が発した暗号めいた言葉を聞き、彼の中の何かが覚醒。程なく現れた2人組の暴漢を難なく返り討ちにしてしまう。身に覚えのない能力に驚くマイクとフィービーの前に、謎の殺し屋が次々と現れ…。

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『クロニクル』の脚本を手掛けたジョン・ランディスの倅マックス・ランディスの脚本を、『プロジェクト X』のニマ・ヌリザデがメガホンを握って映像化したバイオレンスアクション・コメディ。
“ボンクラなコンビニ店員が実は凄腕エージェントでした”っていう、その設定の高低差を楽しむタイプの本作。そう考えると、『アドベンチャーランドへようこそ』のジェシー・アイゼンバーグ&クリステン・スチュワートが見せるボンクラパートは見事。ダルさや田舎に閉じ込められた若者の焦燥感、仄かに可愛らしい恋愛模様など味のあるシーンの目白押し。しかしながら、そこから一転跳ねなければならないアクションや笑いのシーンがてんでダメ。誇張にもメリハリにも乏しいので、吹っ飛んだキャラクターやムチャクチャなCIAのやり口など作品の“味”になりそうなところが“粗”に成り下がっちゃったのは非常に惜しいなぁと。主演二人の“重さ”ばかり際立っちゃってましたし。「分かってる人が撮ってれば…」と、なんとも口惜しい印象ばかりが残っちゃった一本で。
ただまぁ、笑いのセンスはさて置き、“ゴリラ好き”ってのをマックス・ランディスが父親からしっかり譲り受けてたってのを確認できたのは嬉しかったかなぁと。

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主人公のマイクに扮したのは、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』のジェシー・アイゼンバーグ。人間的な温かみってのを感じさせない分、常人を超越した天才役なんかがハマる彼なので、本作の“実は凄腕エージェント”ってのも非常に似合う。アクションをやっている姿こそ違和感ですけど、その違和感こそがこの作品の味なので問題なし。これで、アクション演出がキレッキレだったら良かったんですけどね。
一方、恋人役のフィービーには『アリスのままで』のクリステン・スチュワート。“表現力豊か”とはちょいと言い難いタイプの彼女ですけど、今回のようなゴス的な体温の低いキャラクターを演じさせればピカイチなので問題なし。何気に面倒見が良いってのも好ポイント。男をダメにする典型的なパターンって気もしますが、彼女相手ならダメになりたいなぁとも。
その他、人間の卑しさを全面に打ち出してた『インターステラー』のトファー・グレイスや、『エルム街の悪夢』のコニー・ブリットン、なんかクリント・ハワードみたいだった『マチェーテ・キルズ』のウォルトン・ゴギンズに、ゲスト扱いっぽかった『イコライザー』のビル・プルマンらが出演。
そんな中で最も強烈な印象を残してくれたのが、片田舎の麻薬密売人に扮した『ジョン・ウィック』のジョン・レグイザモ。最近のレグイザモって、ホント短い時間の小さな役柄の中で強烈なインパクトを残す好演が続いてるなぁと。

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このコンビメインの方がよかったかも

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2016年06月26日

インシディアス 第2章 (Insidious: Chapter 2)

監督 ジェームズ・ワン 主演 パトリック・ウィルソン
2013年 アメリカ/カナダ映画 106分 ホラー 採点★★★

幽霊って、その存在を気付いて欲しかったり、何か伝えたいことがあるから現れるって言いますよねぇ。その伝えたい事ってのが「呪うから!」とかだとちょい困りますが、聞いてやることで気が済むのならお相手をしてあげてもいいかなぁとも。ただ、“存在に気付いて欲しい”ってやつだと性質の悪い構ってちゃんみたいで面倒くさいなぁ。時間の流れが全然違うでしょうから下手に構うとしつこそうですし、なんかエスカレートもしてきちゃいそう。そういうのは無視が一番なんでしょうねぇ、と見たこともないし不意に現れたらちょっと困る幽霊について考えてみた私。

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【ストーリー】
死者の住む世界から息子を救い出し、平穏を取り戻したかのように見えたランバート一家。しかし、家族を襲う怪異は収まることはなく、父ジョシュも死者の世界から戻ってから様子が一変してしまう。ジョシュが何者かをこの世に連れてきてしまったと考えた妻のルネと母のロレインは、前の事件で命を落とした霊媒師エリーズの助手らに助けを乞うのだったが…。

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“ソウ”シリーズと“パラノーマル・アクティビティ”シリーズのクリエイターがタッグを組んだことでも話題を呼んだ『インシディアス』の続編。メガホンを握ったのは、前作から引き続き『死霊館』のジェームズ・ワンが。
前作のその後と、霊現象の原因とその正体にまで掘り下げられていた本作。相変わらず不意にデッカイ音を出したり、振り向きざまに幽霊にフルスイングでビンタされたりと、怖いってよりは「そりゃぁビックリするよ!」ってのに恐怖演出の比重が置かれてるのはアレだったものの、物語の掘り下げ方や過去に遡っての広げ方がなかなか面白い仕上がりだった一本。ホラークリシェのみで出来上がっていたかのようだった前作と比べ、物語自体の面白さがだいぶ増してたって感じ。主演のパトリック・ウィルソンに常に漂う、“表面的には善人だけど中身は悪そう”ってイメージも物語にピッタリ。

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前作同様にホラー映画をこよなく愛する作り手たちが、自分たちのホラーの思い出ってのをベースに作ってるって感じがひしひしと伝わってくるのも好印象だった本作。前作のそれは『ポルターガイスト』でしたが、“なんかおかしくなったパパを救い出す”ってプロットの本作は、ほんのりと『ポルターガイスト2』風味。『死霊館』もそうでしたけど、ジェームズ・ワンはどんだけ『ポルターガイスト』を愛してるんでしょうねぇ。
幽霊が人様に力技で危害を加えたり、その幽霊への対処方法が(霊界で)物理攻撃を加えるってやつだったりと、なんか肉が主食の人が考えそうな全然おぼろげじゃない幽霊の姿に相変わらず驚かされた本作。ただ、楽しめたっちゃぁ楽しめたので、ちょっと興味の湧いてなかった次回作の『インシディアス 序章』も観てみようかなと。監督がジェームズ・ワンからリー・ワネルにバトンタッチしてるのは、ちょいと不安材料ではありますけど。

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お化け屋敷で後ろから「ワッ!」ってされる感じの怖さ&腹立たしさ

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2016年06月20日

ウルヴァリン:SAMURAI (The Wolverine)

監督 ジェームズ・マンゴールド 主演 ヒュー・ジャックマン
2013年 アメリカ/イギリス/オーストラリア/日本映画 126分 アクション 採点★★★

私自身は“ニホン”という名のワンダーランドが舞台となる外国映画が大好きなんですけど、その日本描写のデタラメさ具合にご立腹される方も少なくないようですねぇ。事実関係の間違いを指摘して「これだからハリウッドは…」と文句を言う割に、それ以外の国を舞台にした場合は案外スルーだったりも。基本的に映画の面白さって“嘘の上手さ”にあると思うので、映画の面白さを台無しにするデタラメさ以外は別にいいと思うんですけどねぇ。日本を舞台にしておきながら忍者が出てこないと、やっぱりなんか物足りないですし。

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【ストーリー】
人里離れカナダの山奥で暮らすローガンのもとに、第二次世界大戦時に出会った旧友で今は大物実業家である矢志田の使者がやってくる。余命僅かで死の前に恩人であるローガンに会いたいという願いを聞き東京へと向かった彼だったが、再会間もなく矢志田は「君の永遠の命を終わらせてあげる」と謎の言葉を残して亡くなってしまう。葬儀に参加するローガンであったが、そこに矢志田の孫娘マリコを狙う武装集団が現れ…。

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ウルヴァリンを主人公とした“X-MEN”のスピンオフ第2弾。メガホンを握ったのは、『ナイト&デイ』のジェームズ・マンゴールド。『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』の直接的な続編ではなく、時系列的には『X-MEN:ファイナル ディシジョン』と『X-MEN:フューチャー&パスト』の間に立つ作品のようで。
ウルヴァリンの過去を取り戻す旅を描いてるのかと思いきや、いつの間にかシレっと記憶を取り戻しているウルヴァリンの1エピソードを描いた“ウルヴァリンの大冒険”的な本作。東京-長崎間を車でひとっ走りしてみたり、大物をガードする忍者部隊が居たりと日本のようでいて日本じゃないワンダーランドな日本描写が楽しい。やっぱ忍者が出ないと。そんなエキゾチックさを優先しながらも、微妙に正しい日本描写も良い味を。まぁ、この辺は日本人だからこそ味わえる面白さなので作品そのものの評価の仕方としてはフェアじゃないんですが、見覚えのある場所にそこに居るはずのないヒーローが立ってるのを見るのはやっぱり嬉しいもので。
物語自体は二転三転すると同時にキャラの立ち位置も役割二転三転する、まとまりのない決して褒められる代物ではないし、唐突にラブシーンが始まる“お約束”だけで出来てるような作品でもあったんですけど、原爆被害にちょろっと触れてる娯楽大作ってのは珍しいので採点はやや甘めで。

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ドウェイン・ジョンソンの助言でより一層ムキムキとなった『チャッピー』のヒュー・ジャックマンがもちろんウルヴァリンに。そのハマリっぷりはもう言うまででもないんですけど、イメージの定着を嫌うスターが少なくない中、こういう当たり役を大切にしながら他の作品でも活躍するってのが本物のスターだよなぁと。
その名前に妙に親しみのある色々と棒っぽかったTAOや、後半チャッキーみたいな恰好で大暴れする福島リラが大活躍するのは日本人的には嬉しいんですけど、ちょっと見た目重視の役割で終わってたかなぁとも。『サンシャイン2057』の真田広之や、『カリフォルニア・ダウン』のウィル・ユン・リー、『ジュラシック・ワールド』のブライアン・ティーら男性キャラが揃いも揃って役割がコロコロ変わるバカみたいな存在だったので、より女優陣が輝いて見えたのかも知れませんし。
その他、真の目的がありそうでなかったヴァイパーに扮した『裏切りのサーカス』のスヴェトラーナ・コドチェンコワや、イアン・マッケランとツルンとして無表情だったのでなんかCGみたいだったパトリック・スチュワートという『X-MEN:フューチャー&パスト』への橋渡し組、寝てばかりのファムケ・ヤンセンらも出演。個人的には『ブラック・レイン』のガッツ石松的な扱いだった小川直也が見れたのがちょっと嬉しい。
そう言えば、ブルーレイに収められていた別エンディングにコミック版ベースのウルヴァリンコスチュームが登場してましたが、いずれは着てくれるんですかねぇ。

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パチンコ屋+ラブホ+ヤクザ+忍者=日本

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posted by たお at 12:31 | Comment(0) | TrackBack(2) | 前にも観たアレ■あ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月18日

裏切りのサーカス (Tinker Tailor Soldier Spy)

監督 トーマス・アルフレッドソン 主演 ゲイリー・オールドマン
2011年 フランス/イギリス/ドイツ映画 127分 サスペンス 採点★★★★

「誰にも言わないで欲しいんだけどね・・・」と前置きされる話をよく女の人から聞かされるんですけど、“誰にも言わないで欲しい”なら誰にも言わなきゃいいのにと思う私。そういう人の口からよく発せられる言葉と言えば、「ねぇねぇ、聞いた?」ってのも。もう「何を?」と答えるしかないし、結局聞かざるを得なくなっちゃう。こういう人を見てると、男女間では“秘密”の意味合いが違うんだなぁとつくづく思わされますよねぇ。

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【ストーリー】
熾烈な情報戦が繰り広げられていた東西冷戦真っただ中のイギリス。英国諜報部“サーカス”のリーダー、コントロールは組織に潜り込んでいるソ連の二重スパイ“もぐら”を突きとめようとするも失敗、コントロールは右腕である老スパイのスマイリーと共に組織を去る。そんなある日、政府高官から極秘裏に“もぐら”を探し出すよう命じられるスマイリー。忠実な部下ギラムらと調査を開始するのだが・・・。

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1979年に製作されたTVドラマ版も高い評価を受けたジョン・ル・カレのスパイ小説“ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ”を、『ぼくのエリ 200歳の少女』のトーマス・アルフレッドソンがメガホンを握って映画化したスパイサスペンス。ル・カレ自身も製作に加わり、パーティのシーンに顔も出している。
英国諜報部に潜り込んでいるソ連の二重スパイを突きとめるまでを、どっしりとした重厚なタッチで描き出した本作。ざっくりと一言で言えば“地味”な作品だし、原作なりドラマ版に一度でも目を通してなければ物語から置いてけぼりを食らってしまう、所謂親切な作品でもない。私自身どちらも未見なので、登場人物らの知力にあっさり置いてけぼりを食らうことしばしば。もちろん面白ガジェットなんか出てこないし、マティーニ片手に美女をはべらかしたりなんかもしない。それでもこの身悶えしてしまう面白さったら

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本物であれ偽物であれその全てに意味がある情報入り乱れる情報戦と、その見えない戦場の最前線に立っているスパイたちの緊迫感溢れる日常を描いた本作。映像を追ってれば大体分かる“目で観る映画”ってよりは、状況や心境を読み取る必要がある“読む映画”なのでボーっとしてるとたちまち迷子になるが、ちょっとした集中力さえ保てれば、数手先を読み合うチェスの如き静かで熾烈な頭脳戦に対し、間違いなく知的興奮が巻き起こる一本で。
冷たく非情な世界を描きながらも、間違いなく“情”が人を動かしている様をまざまざと描いているのも面白かった本作。男女間には裏切りや混乱が中心に描かれている一方で、偽りや裏切りが行き交う日常を過ごしているからこそなのか、“愛”は男性間を中心に描かれいたのも興味深い。このさり気ないも男同士が深い愛で繋がってる様を描き切ったことで、愛と信用は別物の世界とは言え騙され利用された男の怒りと悲しみに溢れた眼差しと、騙した男の会えた喜びと驚きに諦め、愛する者に幕を下ろしてもらえる安堵感が混じった表情が交差する素晴らしい結末が生まれていたのでは。原作にもあったようですけど、この性別にとらわれない深い愛を濃密に描き出せたのは、トーマス・アルフレッドソンの手腕があったからなのかなぁとも。

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ソ連側もその能力の高さを恐れる老スパイのスマイリーに扮したのは、『ロボコップ』『ザ・ウォーカー』のゲイリー・オールドマン。知的で冷静だが、その冷静さには迷うことない冷酷さが秘められているスマイリーを好演。表情ひとつ変えずに“もぐら”をじわじわと確実に追い詰めていく様に、スパイとしての能力の高さと恐ろしさを見事に表現していたなぁと。
また、そんなゲイリー・オールドマンと並ぶと“初代と二代目”って感じが見た目一発で伝わる『ヘラクレス』のジョン・ハートや、『キングスマン』のコリン・ファースにマーク・ストロング、ゲイリー・オールドマンとは『チャイルド44 森に消えた子供たち』でも顔を合わせているトム・ハーディ、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』のトビー・ジョーンズに、『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』のベネディクト・カンバーバッチといった、もし自分が役者で最初の読み合わせでこの顔触れに会ったら、「やった!ようやく俺も認められた!」と心の中で間違いなくガッツポーズしてしまうほどの実力者が勢揃い。その誰もがこの老獪なスパイが跋扈する世界を見事なまでに色づけていたからこそ、ここ数年のスパイ映画大ブームを彩った作品の数々に本作から多くの顔触れがキャスティングされたんだろうなぁと。

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posted by たお at 15:18 | Comment(2) | TrackBack(35) | 前にも観たアレ■あ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする