1985年 アメリカ映画 98分 サスペンス 採点★★★★
地元を離れて私立の中学へと進学する為に、受験をする羽目となった小学校6年生の私。そんなにお利口さんではないけど、そこまではバカでもないという小さな自尊心もあり、秋の終わりまで鼻を垂らし放題遊び呆けていたんですが、年の瀬も近づき「どれどれ、去年の受験問題とやらを解いてみるか」と問題を見て愕然。一問も解けない。受験は一月の末。あと2ヶ月もない。さすがに焦った私は、私以上に焦った家族のスパルタ指導の下に猛勉強。辛うじて合格はしましたが、やっぱりあれですねぇ。今も昔も追い詰められないと何にもできない性格なんですねぇ。
【ストーリー】
シカゴからサンディエゴへと、深夜のハイウェイを土砂降りの雨の中車を走らせるジム。疲れと眠気と孤独に苛まれていた彼は、雨の中立っていた一人のヒッチハイカーを乗せる。孤独から解放され喜ぶジムであったが、ヒッチハイカーは突如ナイフを取り出し…。
続編のみならず数多くの亜流を生み出し、今年に入りショーン・ビーン主演でリメイクもされたアクションサスペンスの傑作。
一寸先も見えない闇の恐怖に包まれたハイウェイから一転、そこが眩いほどの日の光に照らされるも、死体すら見つけてもらえそうにない広大な荒野が広がっている、明けても暮れても怖い場所には変わりのないハイウェイを舞台に、謎の殺人鬼に追い回される主人公の憔悴と恐怖、そして成長を描く一本。オープニングから無駄なく物語が進行する本作。殺人鬼と一対一で対峙するサスペンスに、歯切れも良く迫力も満点なカーアクションと見せ場の配合バランスも秀逸なのだが、やはり些細な表情や動作、言葉尻やイントネーションの変化、そしてそれらが生み出す“間”によって、キャラクターの性格や心境のみならず、画面上には映らない情景までありありと表現する演出が見事。直接的な殺戮描写が皆無なのにも関わらず、観終った後そのシーンをハッキリと“観た”気にさせるほど。もちろんそれはローバート・ハーモン独自の演出力によるものと言うよりは、ランス・ヘンリクセンがひたすらカッコ良かった『ニア・ダーク/月夜の出来事』の脚本も手掛けたエリック・レッドの優れた脚本を、抜粋所を間違わず丁寧に丁寧に演出したが故の複合的な結果なのであろう。
で、本作。理不尽な殺人鬼に追い回される恐怖を描いた作品と思われがちだが、そうではない。その側面も重要な一面ではあるが、「なんだい?また何を言い出すんだい?」と言われそうだが、本作は“愛の物語”である。もちろん、「愛してるよ!」「私もよー!」ってな作品でもなければ、愛される側にとってははた迷惑この上ない“愛”ではあるんですが。“愛”の部分を、“想い”なり“余計なお世話”に変えることも可能ですけど。
内なる衝動を自らの手では止めることが出来ず、日々殺人を繰り返していたジョン・ライダー。殺人の日々に疲れ果て、身も心も死人同然となっていた彼は、自らと対峙しうるだけの人間を探し、乗り込む車乗り込む車で「俺を殺すか、お前が死ぬか」の二者選択を強いるが、大体が後者で。ガッカリする、ジョン。甚だ迷惑な話ではありますが。そこへ現れたのが、夢こそ持ってはいるが自ら必死になって行動を取ったことはない青年ジム。見るからに頼りなさそうなジムであったが、意外や意外。ジョンを車から叩き出す奮闘ぶり。「コイツだったら、オレを止められるかも」と運命の人との出会いに喜ぶジョンだったが、いまいち頼りないジムに「もう少し鍛え上げなければ」と一方的に特訓宣言。これまた迷惑な話です。「男だったら一度はムショ暮らしを経験するべき」とばかりにジムに罪を擦り付け、刑務所短期留学を体験させ、拳銃のシリンダーすら開けられないジムに“拳銃を持ったらまず弾確認”と教え込むジョン。一方的に追い回しておきながらも、いざとなったらいつでもジムを救い出せるよう影ながら見守る守護天使のようなジョンだが、警官に射殺されそうになったジムを救い出すタイミングを失い、ウェイトレスにそのお株を奪われたときは、いささかバツが悪そうです。それでも着実にレベルアップするジムに、最終試験とばかりにカーチェイスを体験させ、さすがにヘリはまずいだろと教官自らヘリ退治で特訓終了。あとはジムが自分を殺してくれるのをワクワクしながら待つジョンだったが、ジムはまだ踏ん切りがつかない。惚れた女が殺されそうだってのに、踏ん切りがつかない。ジョン、心底ガッカリ。失望のあまり警察署で無言を貫くジョンだったが、ジムと思わぬ再会を果たし心躍るジョン。嬉しくて、出身地を「ディズニーランド」と答えるお茶目な所を見せるジョン。ようやくここで自分の役割を悟ったジムは、いつの間にか片手で拳銃のシリンダーを開けられるほど銃の扱いにも慣れ、まるで待ち合わせ場所へと向かうようにジョンの乗る護送車を追い、ジョンはジョンで待ち合わせの時間が来たかのように「待ってたよー!」と後ろを追うジョンの車に頭から飛び乗る。自分と対峙できるだけの男に育ったジムを、心底嬉しそうに見つめるジョン。幸せそうです。
まぁ概ね妄想が占拠してしまっているジョンの物語ではありますが、“鍛え上げる”って意味では大体合っているのではと。初対面の時以外は、ジムを殺そうとは全くしてませんし。ハッピーエンドのはずがいまいち気持ちが落ち着かないのも、ジムにとってのハッピーエンドではなく、あくまでジョンにとってのハッピーエンドを向かえる作品なんだからなのではとも。
自転車団の一人を演じた『E.T.』から、『アウトサイダー』、ちょっとばかし戦争ごっこにのめり込み過ぎた少年を演じた『若き勇者たち』と、幼さと陰が入り混じった顔立ちを活かした役柄で印象的だったC・トーマス・ハウエル。本作ではその両面性のある表情を主人公の成長に合わせて巧みに使い分け、アイドル俳優からの脱却に成功したかのように思えたが、最近では彼の名前を見るだけでビデオストレートな香りを漂わせる俳優に。まぁ、脱却は成功とも言えますが。“ヒッチャー”道まっしぐらだったのに、リメイク版には出ていないのは如何なものかと。一方、これといって急激な変化が見れない割に仕事の絶える事がない『初体験/リッジモント・ハイ』『ジャケット』のジェニファー・ジェイソン・リーも印象的ではあったが、本作はなんと言ってもジョン・ライダーという、椿三十朗並に思いつきで言ってみた臭の強い名前を持つ殺人鬼を演じたルトガー・ハウアーに尽きる。感情を表に出さず、冷酷だが寂しげで、躊躇することなく他者の命を奪う相容ることの出来ない怪物性を持ちながら、どこかに優しさすら感じることの出来るジョン・ライダー役には、ヨーロッパ人特有の冷たい目線を持ち、『ルトガー・ハウアー/危険な愛』『ブレードランナー』と『レディホーク』『聖なる酔っぱらいの伝説』僅かな変化を加えるだけで印象を大きく変えられるだけの力を持つルトガー・ハウアーがまさにうってつけ。彼なくして本作は成り立たないと断言できるほど。
そうなると困るのは、ショーン・ビーン。リメイク版は未見だが、どうにもこうにもショーンには分が悪すぎる。負け戦と分かっていながらも、きっと前の晩にビデオで繰り返し本作を観て勉強したであろう、ショーン。不憫です。リメイク版の『ヒッチャー』にはどんな罵詈雑言を吐かれても一切構わないんですが、ショーンだけは大目に見てやってはいただけないでしょうかと、本作とは全く関係ない言葉で締めることに。
生まれて初めて、心の底から楽しいって感じたんでしょうねぇ
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私は、この作品見たときはてっきり「ホラー」だと思っていたんですが・・・・
まさか、こういう切り口でくるとは露ほどにも思っておりませんでしたわよ(爆笑
そーかー、あれは愛のムチだったのかーーー(^o^;
どこが一番イヤんなシーンだったかというと、やっぱり彼女が車で引っ張られてるところかなぁ・・・。お前!何しとんねん!!!と関西弁でツッコミ入れてしまいました(笑)
もうこれは、愛のムチ映画以外のなにものでもないですよw
そうとしか思えませんし。
「なんか… すごく【そういう人】っぽいです…」
って思ったのが
『バイオレントサタデー』で「?」となるものの本作で
「あぁやっぱり…」
と妙な得心をしたのを思い出しました(笑)。
でも本作を知っているからこそ、どうも妙に予算を使ってのB級ごっこ遊びって見えてしまう某作に食指がいまだに動かなかったりもして。無駄の無い、緊張感の高い娯楽作品だと思うんですけどね… 80年代ってそういう大作ではないが方向性とか目的がしっかりある作品があったように思うんですけどね… スクリーンショットの笑顔、コレですよねぃ。
どっちにも興味ありそうで、どっちにも興味なさそうな感じでもあるんですよねぇ^^;
しかしまぁ、ホント小銭持ちの映画屋がこぞって若い頃好きだった映画をリメイクしちゃってますが、汲み取りポイントが非常に大雑把かつ安易なんですよねぇ。。。