2004年 アルゼンチン映画 97分 ドラマ 採点★★★★
普段通ることのなかった道を、仕事帰りにたまたま歩いていた時に道端でミーミー鳴いていたのが、今実家でブクブクと太ってゴロゴロとしている猫のでんすけ。買い物帰りに、ふと「あ、そうだ!今からカブトムシを探しに行こう!」と向かった橋でビチビチと地べたを這い回っていたのが、今この記事を書いている私の耳たぶを必死に噛んでいるスズメのこぶ。ペットショップでショーケースに並んだ動物を選ぶのも出会いかもしれないけど、どうせペットを飼うのなら、こういった偶然が重なった出会いを大切にしたいなぁと。

【ストーリー】
人は良いのだが、やることなすこと上手くいかないフアン。仕事もクビになり、居候先の娘の家でも肩身の狭い彼は、ひょんなことから犬のボンボンを飼う羽目に。無論娘の家では犬を飼えないフアンは、ボンボンを連れ当てのない旅に出るが、ちょっとした幸運が転がり込み始め…。

右を向いても左を向いても良い事なんか一つもなく、ただただ曖昧な笑みを浮かべるしかない主人公が、ひょんなことから飼う羽目になった犬によって小さな幸せに次々と見舞われる様を描く本作。その幸運に流されるまま旅を続ける主人公が出会う人々を、時にユーモラスに、時に哀愁タップリに描く本作から受ける印象は、どこまでも続く地平線を持つ荒野に吹き荒んでいるであろう寒風を撥ね退ける暖かみ。ドッグショーでとんとん拍子に成功を収め、ちょっとした欲を出したが為に結果的にボンボンを手放す事となった主人公が、初めてその曖昧な笑みを消し去り、自らの意思で行動を起こす様には、山こそ小さいが非常に深い感動を覚えさせる。当てのない旅を続ける主人公ではあるが、その先には決して大きくはないが彼にピッタリの幸せが待っているのであろうことを思わせる締めも、非常に良い後味を残している。

その曖昧な笑みの持つあまりの切なさに、出鼻から涙腺を刺激しまくる主人公を演じるのは、監督の映画製作会社の駐車場で勤務しているフアン・ビジェガス。本人役。まるでそこにカメラがあることを知らされていないかのようなナチュラルなドギマギぶりは、プロの役者ではなかなか出せないもの。そんな彼以外にも、ほとんどのキャラクターが演技未経験の一般人ばかりの本作。唯一のプロが、9歳の女の子だったりも。そのナチュラルさが生み出す間が、本作に絶妙なユーモアとペーソスを与える結果にも。
しかし、やはり本作の顔は、ボンボン。ドゴ犬。彼もまた、本作が映画デビュー。感情を前面に出すことのない彼の哀しげな表情がフアンの表情とリンクし、嫌な事は絶対にやらない頑固さが、フアンとの出会いを待ち続けていたかのような運命的なものを感じさせるものがある。基本的にボンボンも流されるがままでしたし。

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TBありがとうございます。
ボンボンは、大活躍したりしゃべったりしないフツーの犬として出演しているところが好きです。
妙に心に残る映画ですね。
ドゴ犬のボンボンの演技、最高でしたね。
主人公のおじさんと、とてもいいコンビでした。
TBさせてもらいますね。
基本的には何にもしないんですよねぇ。そこらに居るだけだったり、時々居なくなったり。ただ、その犬を巡って、主人公が初めて明確な意思表示をするエンディングは、結構よかったですねぇ^^
なんとも似ているんですよねぇ、この二人というか一人と一匹。
観たい映画だけをダラダラと観ているだけですが、楽しんでいただけたのなら何よりで^^;