2007年12月16日

スティーヴン・キングのデスペレーション (Desperation)

監督 ミック・ギャリス 主演 トム・スケリット
2006年 アメリカ映画 132分 ホラー 採点★★★

男の子ってのは、ホント穴掘りが大好きですよねぇ。砂浜だろうが公園だろうが、スコップ持たせれば延々穴を掘ってますから。別にその穴から何か出てくるのを期待しているわけでもなければ、掘った穴にせいぜい水を入れるくらいしかしないのに、いつまでも黙々と掘ってる。「そんなに穴掘り楽しいのか?」と訊ねれば、木枯らしに吹き晒されて真っ赤になったホッペとだだ漏れの鼻水で満面の笑顔を作り「たのひーっ!」と。男の子ってのは、ホント穴掘りが大好きですよねぇ。

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【ストーリー】
ネバダの荒野のハイウェイを車で走っていたピーターとメアリーの夫婦。彼らは突如近づいてきたパトカーに停められ、トランクに入っていたマリファナが原因で逮捕されてしまう。彼らが連行されたデスペレーションの町には人影がなく、道路には死体が転がっている。警察署に着くや否やピーターは保安官に射殺され…。

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映像化された作品の出来は別にして、原作にアレコレ余計な手を加えないことでスティーヴン・キングに気に入られ、キング御用達監督となったミック・ギャリスによるTV映画。
凶悪な保安官によってゴーストタウンと化した町を舞台に、“イット”“ペット・セマタリー”“トミーノッカーズ”などを髣髴させるいつものキング節を随所に散りばめた本作。“MURDER”は相変らず“REDRUM”ですし。状況説明のみに従事する安定したカメラワークと、“ロード・オブ・ザ・リング”やクーンツをいじる登場人物らの会話の妙もあり、キング自身が脚色した脚本によるものも大きいのだろうが、各登場人物をメインに据えたエピソードの数々が小説のチャプターを読み進めているかのような面白さに溢れている。しかしながら、「次は何が起きるんだろ?」というページをめくるような面白さは中盤までで、町を襲った怪異の原因が判明し、神の声を聞く少年を中心に登場人物がまとまる中盤以降は、広げ過ぎた風呂敷を大急ぎで畳み始めるバタバタとした展開と、尻切れトンボ的なあっけなさが目に付く。50年代のSFを思わせる“地中に埋まった何か”やキングの宗教観、ヘビやら蜘蛛やらゾンビっぽいのやらの直接的恐怖表現が良かっただけに、このバタバタ感は残念。

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活躍が目覚しいのか、たまたま彼が出るような作品ばかり観てしまっているのかは不明だが、『11:14』『えじき』のヘンリー・トーマスがパッと現れパッと去っていき驚く本作。「あんな年寄りになりたい!」と常々思わせてくれる理想の年寄り像の一人である『デッドゾーン』『ウィズダム/夢のかけら』のトム・スケリットは、70歳を越えてもレザージャケットが似合うカッコ良さにしびれる。なんかこう、カッコいいお年寄りを見ると、みんな宇津井健に見えるのは私だけでしょうか?
そんな彼らのほかに、『ドーン・オブ・ザ・デッド』同様にいつでも死ぬ準備万端のマット・フルーワーや、70年代から80年代にかけて、どの映画を観ても出てきてたような気がするチャールズ・ダーニングなど、なかなかの顔ぶれが揃った本作であるが、なんと言っても本作はロン・パールマンに尽きる。凶暴で凶悪で挙動不審で滑稽な保安官を、非常に楽しそうに演じる彼。もうほとんど好き放題やってるんじゃないかと思えるほど自由奔放なロン・パールマンは、本作最大の目玉。何かに身体を乗っ取られ、徐々に姿かたちも変貌していく彼を見ていると、やがて肌が真っ赤になって角が生えてくるんじゃないかと期待させるほど。もちろんその角は、毎日自分で削るんですが。それだけロン・パールマンの存在が強烈だっただけに、彼の退場と共に本作がつまらなくなってしまうのも、仕方なしかなと。そんなロン・パールマンの怪演に、★ひとつオマケ。

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青天の霹靂

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posted by たお at 01:47 | Comment(2) | TrackBack(1) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
たお様〜〜 こんばんはっ
充分B級なんですが、キング氏のTVMは好きです。中でもこのデスペレーションは面白い方です。
知ってる顔も結構多かったし。スケリットオジサンが70歳を越えてるのには驚きました。いつまでも若いわあ
パールマンの「タアック!!」という声が耳に焼き付いて離れません。腐りかけのメークがどんだけ似合うんだ〜〜。素顔も充分怪しいんですけどね。いい味だしてます。
さすが、ベテラン。
ギャリス監督と組むとキング氏らしさが全開だと思ってます。
Posted by Lance at 2007年12月19日 02:55
Lance様、こんばんは〜♪
下手な映画よりも面白い作品もおおいですよねぇ、TV映画。にしても本作、ロン・パールマンが出ている間はホントに映画的重みに溢れてましたねぇ。ロンは軽そうでしたが。
Posted by たお at 2007年12月19日 21:00
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スティーヴン・キングのデスペレーション
Excerpt:  2006年 米 TVM 原作・製作・脚本 スティーブン・キング 監督 ミック・ギャリス 出演: トム・スケリット/ スティーヴン・ウェバー/ アナベス・ギッシュ/ ロン・パールマン/ シェーン・..
Weblog: オタク部屋
Tracked: 2007-12-19 02:50