1980年 アメリカ映画 91分 パニック 採点★★★
映画を観る面白さってのは、出来の良い作品に出会って泣き笑いするってのもそうだが、それだけでもないって気も。「面白いに違いない!」と思って観たら、どうしようもないくらいつまらなかった時の失望、「どうせまた騙されるんだろ」と半信半疑で観たら、やっぱり騙された時の自嘲にも似た落胆、それでも騙され続ける自分への励ましなど、悲喜こもごもの感情を味わえるってのも、映画を観る面白さじゃないのかなと。騙され続けた挙句にようやく見つけた良作なんて、賞を総なめにした作品を観たとき以上の喜びと興奮を味わえますし。
【ストーリー】
下水道で無残に食いちぎられた人間の四肢が発見される事件が続発。調査してみれば、そこにはでっかいワニ。街は大騒ぎに。
『ジョーズ』の大ヒットを受けて、文字通り山ほど作られた亜流動物パニック映画。時折『グリズリー』のように熊が山をウロウロする映画も作られたが、人間にとってはなにかと不便な水中が恐怖を盛り上げるのに最適かと、水棲動物モノが圧倒的多数作られることに。「水辺に近づかなきゃいいだけじゃん」と言った甘い考えを持つ観客に対し、人食い魚が空を飛ぶ『殺人魚フライングキラー』などの珍作も作られたが、水中でも充分強いのに陸にまで上がってくる始末に負えない生物ワニ映画が、結構な数作られることと。
で、本作。“捨てられたペットのワニが下水道でスクスク”という、日本でも知られている都市伝説をベースに、新薬の動物実験、大企業と政治家の癒着、若ハゲ問題などの社会問題をホンノリと盛り込んだ快作。ユーモアとショック描写のバランスも絶妙。パンチの効いたキャラクター達によって進められる程よくヒネられたストーリーを持つ本作の最大の功労者は、やはり脚本のジョン・セイルズであろう。今では所謂“良い映画”を撮る監督として知られているが、『ピラニア』『宇宙の7人』『ハウリング』と、ツボはシッカリと押さえつつ独自のユーモアを盛り込んだジャンル映画の脚本家としての印象が、未だに強い。その無駄なく練られた脚本と、“撮るべきモノだけを撮る”欲張らない演出が上手に絡んだ好例。
登場するや否や、薄くなった生え際ばかりをネタにされる主人公に『ファイヤーウォール』のロバート・フォスター。『ジャッキー・ブラウン』での冴えない中年男役が記憶に新しいが、『ジェイソン/地獄の綱渡り』『艶獄戦士アマゾンズ』『人喰い魔神・裸女狩り』など、是非とも騙されてみたいタイトルばかりが並ぶフィルモグラフィを持つ、男の中の男。
ロバート・フォスター同様に男の勲章的なフィルモグラフィを持つ『キャノンボール2』のヘンリー・シルヴァなど、人間様も強烈な本作ではあるが、やはり目玉はワニ。だって、ワニ好きなんですもの。生ワニを大雑把に背景と合成させたり、モデルアニメーションや実物大の部分モデルなどを使用しているようだが、どれもゴツゴツとした質感は充分。ウロウロしていただけのはずがピンポイントに悪玉の屋敷へと辿り着き、脇目も振らずその悪玉だけを執拗に痛みつける行動も、愛嬌タップリ。オープニングとエンディングで排水溝からポロリと落ちてくる子ワニなんて、悶絶モノの可愛らしさです。うっかり子ワニが欲しくなってしまいましたが、どうせ飼えなくなって近所に新たな都市伝説が生まれる羽目になるのが目に見えてますので我慢しますが。
“ペットは最後まで責任を持って”といった教訓でもあるのかと思いきや、巨大ワニが元々は自分が飼っていた物である事に女性生物学者が最後まで気付く様子もなく、そんな教訓は特に垣間見られず。強いて言えば、“いくら子供が駄々をこねようがペットは飼うな”って教訓だけは見出せるようにも。
呼んでも来ないのに、呼ばないと来る
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