2007年08月31日

ギャングスターズ 明日へのタッチダウン (Gridiron Gang)

監督 フィル・ジョアノー 主演 ドゥエイン・“ザ・ロック”・ジョンソン
2006年 アメリカ映画 125分 ドラマ 採点★★★★

いざ未成年による凶悪犯罪が起きると、やれ「厳罰化だ!」やれ「更生だ!」と大騒ぎになるものの、騒いでいる割には行動にはさっぱり移っている様子が伺えない気も。基本的には厳罰化に反対ではない私ではあるものの、更生と原因究明をないがしろにして「怖い怖い」と長期間隔離するだけなら、なんかアレですけど。

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【ストーリー】
いくら指導と更生に尽力しても再度犯罪に手を染めてしまう少年の多さに憂いていた少年院の指導官ショーンは、フットボールチームを作り、団結力や生きがいを見出させようと思いつくが…。

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実話を基にした、『U2/魂の叫び』『ステート・オブ・グレース』のフィル・ジョアノーによる一本。受刑者によるフットボール映画といえば真っ先に『ロンゲスト・ヤード』が浮かぶが、受ける印象はどっちかと言えば『飛べないアヒル』だったりも。
タイトルを観ただけで、最後にロック様が少年達に担ぎ上げられている姿まで容易に目に浮かんでしまう本作。事実、反目・団結・挫折・勝利と全てにおいてベタな展開と、プールサイドに立てば引きずりこまれて「やったなー、コイツー!」となるお約束事が満載なだけに、驚きや目新しさは一切ない。しかしながら、それら全てのお約束事を照れ隠しのようなヒネた演出や、エモーショナル過多な演出で絵空事のように描くのではなく、過酷な環境を含め淡々と描くことで問題の根深さとその中でも努力した登場人物らの偉業の大きさが伝わってくるとともに、作品全体に安心感と安定感を与えることに。「よし!フットボールをしよう!」と決めるまでの経緯が不鮮明だったり、主人公が持つ影の部分に踏み込めていない浅さも目立ってはいるが、有無も言わさずグイグイと進む真っ直ぐさに、そんな不満も忘れ去ってしまうことと。
劇中非常に映画的な展開を見せる場面が、エンドロール時に流れるドキュメント映像と丸っきり同じだったりするのに、ちょっと驚いたりもしましたが、本作といい『ステート・オブ・グレース』といい、落ち着いた温度の低めな作品ばかり撮っているので、監督本人も冷静な人物かとばかり思っていたら、メイキングに出てきたのはテンションの異常に高いDJクオールズみたいな方だったので、更にビックリも。

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行動も視線もひたすら真っ直ぐな本作。そのひたむきさを生み出しているのは、何よりもやはり指導官ショーンに扮するロック様。悲しければベソをかき、悔しければベソをかく、何かにつけて泣いてばかりいる犯罪者といってもやっぱり子供の受刑者たちに対しての理想の大人像として君臨するロック様。厳しい練習を励まし励まし達成させる様は、深夜の通販番組でお馴染みのアレのようでもあるが、子供たちの更生の為に身体を張り、時に犯してしまう過ちをすぐさま謝罪するスコーンと真っ直ぐに突き抜けた体育会系主人公を好演。“好演”というよりは、WWE入団前は大学フットボールの花形として活躍したロック様以外に適任者が浮かばないほどの適役。プロレス界のスターとして『ハムナプトラ2/黄金のピラミッド』に鳴り物入りで出演するも、後にスピンオフが生まれるほど強烈な印象を残したとはいえ腰ミノ一丁の筋肉イロモノ扱いであったロック様も、徐々に服を着るイエロー・キャブ方式で『ランダウン ロッキング・ザ・アマゾン』『ワイルド・タウン/英雄伝説』アクションスターとして幅の広さを見せ始め、大物が顔を揃えた『Be Cool/ビー・クール』では類稀なるコメディセンスを発揮し、見所のない作品の中で唯一の見所となることに。で、思い入れの強さからか、映画スターとしての更なる飛躍を願ってか、本名でのクレジットとなった本作。内から放たれる強烈な存在感に、今後も目を離せない存在となることに。

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ロック様同様ルーツが非俳優系ながらも忘れ難い印象を残す『トリプルX ネクスト・レベル』のイグジビットや、しっかりとキャラ分けされた少年達も印象深い本作。満足度も高いだけに褒めて終了したいのもヤマヤマなのだが、最後にちょっとグチを。
何の工夫もされず投げ捨てられるかのように日本公開されたアダム・サンドラーの『ロンゲスト・ヤード』のレビューに、配給会社に対する不満をダラダラと書いたのだが、今となっては公開されたこと自体が奇跡だったようにも思えてしまう本作の扱い。もう既に口にすることすら恥ずかしい“欧米か!レーベル”の一本として『タラデガ・ナイト オーバルの狼』『コベナント 幻魔降臨』に続いてのリリース。内容を伝え難いなり、主演が全くの無名であるのならまだしも、売りがいくらでも見つかりそうな本作でさえ劇場に掛からないってのは、いかがなものかと。スクリーン数も公開本数も増え続けているとはいえ、公開されているのは超大作にTVスペシャルに“泣ける”しか売り文句のないメソメソ映画ばかり。“映画”としてカウントしていいのかすら疑問の作品を観ている観客を、“映画人口”としてカウントするのもどうかと思いますし。もうこの救いようのない状況は、売り手側の問題ももちろん大きいが、買い手側の問題も大きいなぁと。

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posted by たお at 16:03 | Comment(4) | TrackBack(2) | 前にも観たアレ■か行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
トラックバックありがとうございます。どこかのシネコンで扱ってもいい映画ですよね。フットボールのシーンも迫力あるのに、残念です。
Posted by アンソニー at 2007年09月12日 00:11
こんにちは。TB&コメントありがとうございます。
劇場公開スルーになったのは残念です。
十分面白い内容なのになぁ。それに加えこれが実話だなんて。
買い手の人たちはどいつもこいつも見る目なさ過ぎ。
Posted by もじゃ at 2007年09月13日 11:30
アンソニー様、こんばんは!
まぁ所詮ビジネスさえ成立すれば、同じ映画ばかりが複数のスクリーンを占拠してようが、内容がすっかすかだろうが構わないんでしょうが、たまにはお客さんに面白い映画を提供していただきたいもので。
Posted by たお at 2007年09月14日 19:21
もじゃ様、こんばんは!
“スクール・ウォーズ”がヒットした実績もあるんですしねぇ。。。
Posted by たお at 2007年09月14日 19:37
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ギャングスターズ 明日へのタッチダウン
Excerpt: ザ・ロック主演の青春スポーツムービーです。 【2006年】アメリカ 【原題】   GRIDIRON GANG 出演  ザ・ロック     イクジビット     ジェイド・ヨーカー  等 ..
Weblog: (仮)impression
Tracked: 2007-09-11 23:51

【 ギャングスターズ 明日へのタッチダウン 】
Excerpt: 少年院の教官が子供達にアメフトを通して生きる希望を与えようと奮闘する実話を基にしたスポーツ・ドラマ。劇場未公開。 フットボール・シーンは迫力満点、主演のザ・ロックが声を嗄らしてまで叫ぶ姿に熱い想..
Weblog: もじゃ映画メモメモ
Tracked: 2007-09-13 11:23