2006年 アメリカ映画 112分 サスペンス 採点★★★
ニュースやワイドショーなどで、毎週必ずと言っていいほど耳にする子供への虐待。子供を作る能力は有り余るほどあるが、育てる能力が皆無である人たちに「親なんだから」と無責任な一言を押し付ける気はさらさらない。それが問題の解決に繋がるわけでもないですし。しかしながら、子供を持ったことで訪れる急激な変化は、子供がいなくなったからといって元に戻るわけではないってことだけは、理解をしていただきたいもので。たださすがに、「乗せる場所がない」とバイクのヘルメット収納スペースに子供を押し込むという、こちらの理解力を遥かに凌駕する行動をさらりと成し遂げられる人間には、是非とも同じ目に遭わせてあげたいと憤りを感じる次第で。
【ストーリー】
子供が乗ったままの車をカージャックされたという女性が、病院に助けを求めにやって来る。彼女の証言により、現場である低所得の黒人が大半を占めるアームストロング団地は一方的に封鎖され、住民の怒りは暴動寸前にまで膨れ上がってしまう中、捜査を担当するロレンゾ刑事は、彼女の証言に違和感を感じ…。
壁紙をビリビリーッと破ると子供の描いた絵でいっぱいの壁が現れる雰囲気だけは満々でヒヤヒヤさせるが、中身は育児問題と人種問題を絡めたストレートな一本。あっさりネタバレもしてますが、まぁ元々ネタを隠す必要がある作品とも思えませんし。
一日当りに計算すると、毎日2100人もの子供が行方不明になっているとも言われるアメリカ。自発的な家出であったり、親権争いにより一方の親に連れ去られたりするケースが多い中、犯罪に巻き込まれたと考えられるケースも少なくはない。で、売り文句にも使われている『フライトプラン』や『フォーガットン』を否応がなしに髣髴させる雰囲気こそ持ってはいるが、子供が行方不明になる原因を確率で考えれば、運任せのハイジャック犯に捕まったり、宇宙人に捕まったりするよりも遥かに高い“第一報告者=親”による犯行を描く本作。「ほんの少しだけ時間が欲しい」という気の焦りと苛立ちから最悪の結果を迎えてしまった母親の喪失感と憔悴感が、ジュリアン・ムーアの力強い表現力も相まって強く胸を打つ。これだけでも充分に重過ぎる題材に根深い人種問題までも絡めた本作は、その双方とも活かそうとしている分散漫な印象も。どちらかを一歩下げれば、さらにガッチリと歯車のかみ合った作品になったのではと。
マイケル・ウィンターボトムが大半を監督した上で降板してしまった本作。その力強い画面の中、それ以上の力強い存在感を見せるのが、世界一憔悴しきっている姿の似合う女優といっても過言ではない『フォーガットン』『トゥモロー・ワールド』のジュリアン・ムーア。えぇ、大好きです。幸薄顔ですし。で、そんな彼女に押され気味とは言え得意の愛ある説教と、最近ではちょっと珍しいキャラクターを重視した演技で本作のもう一つのテーマである人種問題を一手に担うのが、『シャフト』『スネーク・フライト』のサミュエル・L・ジャクソン。この二人の安心感と安定感溢れる存在が、本作を存分に楽しめる要因となっているのだが、その間を縫うように活躍する『デュース・ビガロウ、激安ジゴロ!?』『デビルズ・リジェクト〜マーダー・ライド・ショー2〜』のウィリアム・フォーサイスも忘れ難い。今回はやたらとズボンを脱いでみたり軽く狂ってみたりはしない彼だが、少ない出番とセリフでも主人公であるロレンゾに対する深い友情と信頼を感じさせる。おじいちゃん然としたその風貌に、ちょっと驚きはしちゃいましたが。
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人種問題はとても印象に残ってます。
まぁ、どっちのテーマも主張が強いんで、結果どっちも散漫に^^;