1999年 アメリカ映画 104分 ホラー 採点★★★
ラジオやTVなんかで、ミュージシャンを自称する方々が「いやぁ、アメリカはいいよ!自由で!」と言い切っちゃってるのを耳にすることが。“自由”と“個性”ってキーワードをやたらと散りばめてアメリカを語り、しまいにはそれで日本のイジメ問題まで解決しちゃおうって輩まで。まぁ、観光で数日ほど大都市を訪れただけだったり、“ビバリーヒルズ青春白書”なんかを鵜呑みにしちゃったんでしょうが。
【ストーリー】
周囲から孤立した高校生活を送っているレイチェル。そんなある日、唯一の親友であるリサが学園の花形であるフットボール部員に弄ばれたことを苦に自殺。やがて彼らの魔の手がレイチェルに迫った時、レイチェルに秘められていた力が覚醒し…。
スティーヴン・キングの長編処女作を『ミッション・トゥ・マーズ』のブライアン・デ・パルマが1976年に映像化した傑作『キャリー』の23年ぶりの続編。前作と比較しあーだこーだ言いたくなる気持ちも分からなくはないが、あんまり躍起になって比較ばかりしていると本作の持つ面白さやテーマを見失ってしまうことにもなりうる一本。なによりも、前作との繋がりを協調してしまった部分が邪魔ですし。
一見脳天気に自由と青春を謳歌しているように見えるアメリカの学園生活にも、揺るぐことのない階級制度やイジメ問題があるってのは『エレファント』のレビューでもちょろりと書いたのだが、ここでも簡単に。
学園生活において頂点に君臨するのが、学校の花形であるフットボール部やチアガールら“ジョックス”と呼ばれるグループ。ジョックスがその他のグループをいじめているってのが基本的な構図でも。大体が筋肉と金髪が自慢。親が地域の有力者だったりすることも多い。『キューティ・ブロンド』のエル・ウッズや『ホット・チック』のジェシカ、ディラン・マッケイなんかが典型。スポーツ推薦枠を利用し大学進学を狙うが、上手くいかない場合は地元に留まりやたらと子沢山な中古車ディーラーになったり。人生最大のイベントは、プロムパーティー。
自力での大学進学を狙っているのが、がり勉集団の“ブレイン”。『25年目のキス』のリーリー・ソビエスキーなんかが、それ。また、ジョックスからこっぴどく痛めつけられているのが、“ナード”や“ギーク”と呼ばれるオタク連中。『ロード・トリップ』のDJクオールズや“アメリカン・パイ”シリーズのアリソン・ハニガンなんかが、そんな感じ。そんなナードな連中よりも底辺にいるのが“ゴス”。マリリン・マンソンやガービッジ、ナイン・インチ・ネイルズやバウハウスらを愛聴し、黒い髪に黒い服装が特徴の彼らは、人よりちょっとだけ早く大人になってしまったが為か、『パラダイス・ロスト』のダミアンらのように世の中を冷ややかに見つめている。ティム・バートンのように成功を収める例も少なくないが、コロンバイン事件のように鬱屈した思いが爆発してしまう例も多い。
で、そんなゴスが主人公である本作。先に挙げたミュージシャンなどのゴスアイテムを随所に配置し、不遇な家庭環境を描くことでゴスとして生きるレイチェルの苦悩が浮き彫りとなっている。また、主人公だけではなくジョックスならではの悩みも描くことで、高校生活の縮図が完成されている結果にも。基本的なストーリーラインは前作と大差がないのだが、夫に捨てられたことでより一層セックスと男性に対する嫌悪が深まり、宗教に全てを捧げる母親の強い影響かにおかれていたキャリーと異なり、本作のレイチェルは特殊な能力って点を除けば比較的身近な存在として描かれている。それが、暗黒青春映画としての側面を強く打ち出すことにも。そんなレイチェルがジョックスにより酷い仕打ちを受け、怒りを爆発させるクライマックスにはカタルシスを感じることが出来るのだが、如何せん見せ方が平坦。カット・シアによる演出は、おおよそ劇場で公開されたとは思えぬほど隅々凡庸で、絶頂から絶望へと叩き落す落差がその演出力不足がたたって上手く活かされていない。また、前作との繋がりを強調したいがためだけに存在するエイミー・アーヴィング扮するスーの行動も唐突なだけで説得力がなく、重要な役割にしたいと思っている割には扱いがゴミのようだったりと、非常に中途半端。同様にレイチェルとキャリーに繋がりを持たせてしまったが為に、身近な題材になりうる本作を、特別な人の物語にしてしまったのも残念でならない。とは言え、本作公開時とほぼ同時期に発生したコロンバイン高校銃乱射事件と奇妙な繋がりすら感じさせる学園生活の描写は秀逸で、なにかと考えさせられる作品となっているのも事実。
レイチェルに扮するのは、TVが主戦場となっているらしいエミリー・バーグル。店に立ち寄っただけで万引き犯と決め付けられてしまうそのいでたちはガービッジのシャーリー・マンソンを髣髴させ、決して美人と言えるものではないのだが、普段の絶望と怒りが宿った冷たい目線とのギャップか、時折見せるはにかんだ笑顔がとっても可愛い。男ってのはこんな独自の空気を持つ女性に滅法弱かったりも。
『キャリー』におけるウィリアム・カットであるジェシーに扮する『バッド・チューニング』のジェイソン・ロンドンや、エイミー・アーヴィングらも印象深いが、なんと言っても衝撃的なのが『トラウマ』『ドミノ』のミーナ・スヴァーリ。まぁ、その退場の仕方が衝撃的なんですが。
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