ダイ・ハード４．０ (Live Free Or Die Hard)

監督　レン・ワイズマン　主演　ブルース・ウィリス
2007年　アメリカ映画　129分　アクション　採点★★★★

子供の頃から映画を観続けてきて、その登場人物らに理想の大人像なり男像を見出してきちゃってた私。まぁ、どれもこれも理想のまま終わり充分に育ちきっちゃったんですが。ただ一つ、「あんなに他人を怒らせられるのは、あの人しかいないわ」と言われるような大人にはなれましたけど。



【ストーリー】
娘に会う為にたまたまニュージャージーに来ていたニューヨーク市警のマクレーンは、その頃ＦＢＩ本部で起きていたハッキング事件の容疑者の一人マットが近くに住んでいるということで連行する羽目に。しかし、マットの部屋に入るや否や、謎の集団の襲撃を受け…。



“不運”がウリの大人気シリーズ“ダイ・ハード”の１２年ぶりとなる新作。干支一回りぶりにマクレーンが戦う相手は、サイバーテロ集団。
『アンダーワールド２　エボリューション』のレン・ワイズマンがメガホンを握るってことで、アクションだけは派手だが後はメタメタって映画になってしまうのかという不安もあったが、結論から言えば娯楽アクション大作“ダイ・ハード”の看板を背負うことに概ね成功した一本。これだけ前作との期間が開いてしまうと、マクレーンの“老い”ってのがテーマになってしまい、ゲホゲホと咳き込みながらヨタヨタと若いテロリストを殺しまくり、「この歳ではキツイよ」とぼやいて若者に後を託すような物語になっているかと思いきや、頑固度こそ増したが“老い”は全く感じさせないマクレーンが悪党を問答無用で殺しまくっている。元気そうでなによりです。一事が万事システム化されネットワークで結ばれた結果脆弱となってしまった社会を舞台に“デジタルＶＳアナログ”の対立構図で世代差を表現はしているが、極端な老いを感じさせない分、ブランクも感じさせない。



“ダイ・ハード”シリーズと言えば、運悪くたまたま居合わせたマクレーンが大事件に巻き込まれ、助けも得られない状況でボヤきながら事件を解決するってのが基本ラインであり、その運の悪さとボヤきに笑いが生まれていたのだが、本作のマクレーンはいい加減その運の悪さに慣れたのか、然程ボヤかない。結果、人が発するユーモアが欠落してしまっているのは否めない。また、これこそ世代差によるものなのであろうが、後のデジタル処理の為になのか青味の抜けたいかにも“これがデジタルでござい！”な画像にも陰鬱さを感じてしまう。その“ユーモアの欠落”がレン・ワイズマンの持ち味であるのだが、その反面もう一つの持ち味“やり過ぎのアクション”が“やり過ぎればやり過ぎるほど面白くなる”本シリーズにおいて功を奏している。パトカーでヘリを撃墜し、変電所を爆破して、ハイウェイが全壊する本作のカタストロフ度の増加は凄まじいものがあり、その惨状の中を基本気合一つでくぐり抜けていくマクレーンの姿に独特な笑いが生まれ、その派手さも相まって概ね「ダイ・ハードを観た！」という実感が生まれている。『ティアーズ・オブ・ザ・サン』がダイ・ハードにならなくて、ホっといたしました。



派手なアクションを撮るのに忙しくて人物描写なんてやってられないのか、パっと見で大体分かってしまう適材適所なキャスティングが光る本作。サイバーテロの首謀者には、理数系のビル・パクストンっぽい『ドリームキャッチャー』『ガール・ネクスト・ドア』のティモシー・オリファント、ハッカー役には外にいる時間より部屋にいる時間の方が年間を通してはるかに長そうな『ギャラクシー・クエスト』『ドッジボール』のジャスティン・ロングと、見事なキャスティング。その他にも『サンシャイン２０５７』のクリフ・カーティスや、気合が自慢の豪の者マクレーンをしなやかにいなしてくれそうな『Ｍ：ｉ：�V』『８０デイズ』の幸の薄そうな顔立ちがとっても好みなマギー・Ｑ、さすがに『ホステージ』の時のようにブルース・ウィリスの輪郭にデミ・ムーアのパーツを付けちゃったんで余白が随分と出来ちゃった実の娘を使うのは気が引けたのか、娘役には『ファイナル・デッドコースター』『ボビー』のメアリー・エリザベス・ウィンステッドを起用するなど、隅々もほとんど文句がない。ただし、せっかくテロリストの一人に素晴らしい身体能力を持つ『アルティメット』のシリル・ラファエリを使っているというのに、アクションを撮る際のカット割りがあまりに激しすぎるので、どんなに凄いことを彼がやっていても、全てＣＧに見えちゃうのはいただけない。多少前後とのバランスが崩れても、「この人はこんな凄いことを出来るんですよ！」とジックリ撮らないともったいない。身体を使ったアクションの撮り方に不満の多いハリウッド映画とは言え、『００７／カジノロワイヤル』では出来てたんだから。



で、ブルース・ウィリス。『シックス・センス』以降“憂い”ってのを武器にして、『１６ブロック』『ラッキーナンバー７』などここ最近はどの作品でも終始沈痛な面持ちでいることが多かったのだが、さすがにジョン・マクレーンが終始幽霊のように憂いてたんじゃオカシイと思ったか、かつてのＢ型三枚目気質を若干取り戻した感がある。まぁあくまで“若干”なので、かつての「イヒヒ」と笑う下品さが堪能できるってわけではないんですけど。すっかりと頭を剃り上げちゃってるんで、プチブルースに見えることもしばしば。
締めを主役のブルース・ウィリスではなくケヴィン・スミスで終わらせるってのもアレな気もしますが、本作を劇場で観ようと思わせた要因のほとんどが彼の出演なので、まぁいいかなと。で、彼が扮するのは、スター・ウォーズ狂いでハッカー界のジェダイマスターと呼ばれ、いい歳こいて親と同居で地下室に篭りっきりという、ケヴィン・スミスのためだけに存在するような役柄。実際にスター・ウォーズマニアであり、ネット住人と『マグノリア』の寸評を巡り一戦を繰り広げ、そのウサを『ジェイ＆サイレント・ボブ　帝国への逆襲』で晴らした彼だけに、役柄というよりはほとんど素。そんなサイレント・ボブ全作品を合わせたよりもセリフが多いケヴィン・スミスの登場が本作の目玉でもあるのだが、せっかくオープニングのクレジットでＳｍｉｔｈの“ｍ”の字を消してＳｉｔｈに見えるように気を利かせたんだから、役柄の居住地もニュージャージーにしなきゃと、細かい不満を。


ＤＶＤ化の時に微調整でもして“４．２”とかにするんですかね？

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Comments

たおさん　こんにちは!!!
今作はねぇ正直、手放しで面白かったとは言えない感じでした。
アクションのド派手さは充分でしたが、ストーリー全体でいうとどうなのかなぁと。
マクレーンが不死身なのもお約束ですしねぇ。
さんざん戦って、ラストがあっさりだったような気がしました。

Posted by なぎさ at 2007年07月25日 15:15

なぎさ様こんばんは〜♪
マクレーンに苦労と工夫が然程感じられないので、ほとんどターミネーターかのような強さでしたしねぇ＾＾；
まぁ、『３』があんまりにもあんまりだったんで、これだけやってくれてようやく相殺されたって感じでしたね＾＾

Posted by たお at 2007年07月25日 21:17

こんばんは、お邪魔いたします。
「ダイ･ハード」という大看板がなければ大変楽しんだアクション大作だったんですが････。
一言ぼやいて良いですか？　
ボヤキの無いマクレーンはマクレーンじゃないよ〜〜!
娘役は「さすが親父の娘」で良かったです。

Posted by 座敷わらし at 2007年07月25日 21:49

座敷わらし様こんばんは！
笑かすことに長けているとはいえないレン・ワイズマンに、笑かすことを忘れ始めてるブルースの組み合わせなのでほとんど期待をしていなかった分、ホンノリと取り戻してたブルースのＢ型気質を垣間見れただけでも嬉しかったりも。まぁ、アワワアワワしながらとっさの工夫と機転で乗り越えてきたマクレーンが、もう惰性なのか慣れなのか、異様なまでに強くなっていたのは寂しくもありましたが。

Posted by たお at 2007年07月25日 23:29

どうもご無沙汰しております、ミハイル暁です。
TB有り難うございました。

３などを観てしまうと、もう帰ってこなくてもいいと思っていたのですが、４は面白かったです。
話が無茶苦茶で(笑)。
ストーリーと戦い方に工夫がないのは確かですが、まあ、やりたい放題で良かったかと。
深く考えずに愉しむには、良い映画でしたねぇ。

Posted by ミハイル暁 at 2007年07月26日 01:01

>理数系のビル・パクストンっぽいティモシー・オリファント
これは、褒め言葉ですよね？？（笑）
オリファント＆ケヴン・スミス＆ジャスティ・ロング目当てに、ウキウキしながら映画館に足を運びました♪
１作目をＤＶＤで見ただけの哀生龍は、【ダイ・ハード】と言う大看板を気にせずに気楽に楽しく事が出来ました。

>役柄の居住地もニュージャージーにしなきゃと
ですよねぇ〜
せっかく出発点がニュージャージーだったというのに･･･
あっ、ニュージャージーから出発しちゃったから、後戻りできなかったのか！

Posted by 哀生龍 at 2007年07月27日 12:55

もー何でもアリで面白かったです。
細かいことは気にせずに楽しめました。
ますますハゲになってパワーアップしたかな？

Posted by ゆかりん at 2007年07月27日 13:18

＞「あんなに他人を怒らせられるのは、あの人しかいないわ」と言われるような大人にはなれましたけど。
冒頭のこれに笑わさせてもらいました。
奥さんの気持ちがよーーく分かりますわ。
なんだかんだいいながらも、普通こういう作品は尻つぼみになってしかるべきなのですが、さすが「ダイ・ハード」おたくが作っただけあって、見せる映画になっていたのでは、素直に楽しみました。
中高年も安心して見れる映画って、そうないですから。

Posted by sakurai at 2007年07月28日 09:26

ＴＢありがとうございました。
とにかく、細かいことは抜きにして、楽しい映画でした！
アナログ小父さんには、もう少し頑張ってもらいたいです。
続編は〜〜あるのでしょうか？

TBさせて頂きました。

Posted by 小米花 at 2007年07月28日 14:03

ミハイル暁さま、こんばんは！
「一年を通して心に残る映画か？」と言えばそうでもないんですが、久々にかつての大作っぽい雰囲気を持つ作品だったので、存分に楽しめましたねぇ＾＾

Posted by たお at 2007年07月29日 01:17

哀生龍さま、こんばんは〜♪
まぁ、褒めても貶してもいないんですが＾＾；
貶し言葉だとすればティモシーに失礼だし、褒め言葉だとすればパクさんに失礼ｗ
観たい人を観れたのは嬉しかったんですが、無理をしてでもニュージャージーに戻って欲しかったですねぇ。隣にジェイも立ってて欲しかったですねぇｗ

Posted by たお at 2007年07月29日 01:20

ゆかりん様こんばんは〜♪
髪の毛がなくなればなくなるほど強くなるマクレーン。てことは、今が最強？

Posted by たお at 2007年07月29日 01:23

sakurai様こんばんは！
まぁ、「怒ったら負け」って考えなもので＾＾；
『３』ってのがあったからこそ、思い切ってやれたのかもしれませんねぇ。エイリアン４もそんな感じでしたし♪

Posted by たお at 2007年07月29日 01:38

小米花さま、こんばんは！
続編はどうなんでしょうねぇ。商売としては非常に美味しいですが、マクレーンの呪縛からようやっと逃れたと思ったら、今度はマルコムの呪縛にかかっちゃって、やっとこそれも逃れたらまたマクレーンとなったら、ブルースの心境も複雑そうですねぇ＾＾；

Posted by たお at 2007年07月29日 01:41

たおさん、こんにちは！
ワタシは単純なので、面白かったです！
高速のシーンなんて、メチャクチャでしたけど・・・
あのしぶとい殺し屋さんは『アルティメット』のシリル・ラファエリだったのですね。
もっと目立たせてほしかったな〜

ブルース・ウィリスは、歳をとった方が色気が出たと思いました。
ゆっくり動かす目が、なかなかいいですわ〜

Posted by サラ at 2007年07月29日 13:20

＞シリル・ラファエリ

この人のアクション、もっとよく観たかったです。
確かに、スゴイことやってるのにちょっとＣＧっぽく見えてしまったかも…
『アルティメット』では思う存分観られるのかな？

Posted by kenko at 2007年07月29日 22:24

初めてコメントを書きます．
失礼がありましたら，お許しください．

トラックバック，ありがとうございました．

要所要所の画像が貼ってあり，良いブログですね．

Posted by type46 at 2007年07月31日 00:02

たおさん、こんばんは〜。
尻つぼみになるシリーズものが多い中で、この作品は及第点をあげてもいい出来でしたね〜♪　期待しつつも、もし面白くなくても大目にみよう、と密かに思っていた（笑）せいか想像以上に楽しみましたよ〜。

Posted by りら at 2007年07月31日 22:32

サラ様こんばんは！
最近のブルース・ウィリスを見てると、ホントいい歳の取り方をしているなぁと思いますよねぇ。にしても、シリル・ラファエリの使い方の贅沢なこと。凄いことを出来る人間に凄いことをさせておいて、実際にやってるように見えない撮り方をするんですからねぇ＾＾；

Posted by たお at 2007年07月31日 22:34

kenko様こんばんは！
『アルティメット』は『アルティメット』でアクションの見せ方に不満もあったんですが、これよりは大分良いですよ＾＾
人の技にただただビックリするって意味では、一見の価値大アリです。

Posted by たお at 2007年07月31日 22:43

type46様、初めまして！
まぁこんな所ですが、よろしくお付き合い頂ければ＾＾；

Posted by たお at 2007年07月31日 22:53

りら様こんばんは〜♪
実のところ然程ダイ・ハードに強い思い入れがあるわけでもないので、若干の不満はありつつも大体は楽しめた結果になりましたねぇ＾＾

Posted by たお at 2007年07月31日 23:53

はじめまして。
ＴＢありがとうございます。

車内での取ってつけたような英雄論に、「ああこの映画は9.11以降の作品なんだなぁ」と、過去三作をリアルタイムで観てきた世代にはなにやら感慨深かったですが。
にもかかわらず、マクレーンが悪の親玉ぶっ潰す単純話なのは、さすがと言うべきなのかもしれませんね。

Posted by 井猴 at 2007年08月01日 07:00

こんにちは。TBありがとうございます。
ブルース・ウィリスが実娘を出演させるんじゃないかと内心ドキドキしながら観てました。

Posted by もじゃ at 2007年08月03日 00:47

　こんにちは、TBありがとうございました。
　劇場でこのシリーズを見るのが初めてでしたが、楽しめて良かったです。
　もういい年なのに、ありえない動きをしているブルース・ウィルスのやり過ぎ感が、涙と笑いをなぜか誘って面白みがありましたね。
　細かいところは、荒さも目立ちましたが、ダイ・ハードだから☆で納得してしまう気がします。

Posted by カツミアオイ at 2007年08月03日 01:37

井猴さま、こんにちは！
9.11以降、特にアクション映画が様変わりしてしまったんですが、ようやくここ数年、その事実を違和感なく作品の中に消化できるようになってきたようにも。

Posted by たお at 2007年08月03日 15:20

もじゃ様こんにちは！
さすがに前回さんざん周囲に言われちゃったのか、実の娘を出すことはなかったですねぇ。よかったよかった。

Posted by たお at 2007年08月03日 15:27

カツミアオイ様こんにちは！
もう２０年くらいブルース・ウィリスの映画と付き合ってるので、実際はあんまり老けたイメージがないんですよねぇ。やっぱり最近の観客にはオッサンに見えてしまうことに、妙な感慨深さを＾＾；

Posted by たお at 2007年08月03日 15:30

おこーんばーんはー♪
直前に見た映画で寝そうになったのに、ハゲのおっちゃんが頑張る姿を見ていたら「やっぱりダイハードは、面白いわぁ」と言った私です（笑）
派手なドッカンシーンが多くて、助かるとわかってはいても、ヒェーー！と叫ばせてもらっちゃった。

娘のおてんばぶりも良かったな・・・。
ドラマとしては、どーなん？と思うけど、「ダイハードなんだから」と思うと許せちゃうのよね（笑）

Posted by chibisaru at 2007年12月07日 00:57

chibisaru様、こんばんは〜♪
まぁなんと言うか、全体的に非常に“ダイ・ハード”っぽさがよく出た映画でしたねぇｗ

Posted by たお at 2007年12月08日 01:08

ボヤかないジョン・マクレーン。妙にあっさりして強かった。しかしまあ、おっしゃる通り、「ダイハード」でしたねぃ。

Posted by sheknows at 2007年12月24日 19:19

sheknows様、こんばんは♪
ボヤくわけでも泣き言を言うわけでも、相棒が黒人でもないのに、なんですかねぇ、この“ダイ・ハード”っぽさは＾＾；

Posted by たお at 2007年12月26日 23:52