1987年 アメリカ映画 103分 ホラー 採点★★★
『死霊のしたたり』『ドールズ』『フロム・ビヨンド』『SFソードキル』と、駄菓子屋に並ぶ数々の菓子の如く魅惑的な作品を送り続けたエンパイア・ピクチャーズ。劇場に『ドールズ』を観に行った際に貰った今後のラインナップが描かれた切手状のチラシには、“謎の異星人に拉致された美男美女”“巨大怪獣と戦うアマゾネス”など、さらに魅惑的な作品群が。ところが、待てど暮らせどこれらの作品が公開されることはなく、いくつかビデオリリースされた作品はチラシの絵柄と同一のものとは思えぬほどショボくれた作品ばかり。「あぁ、映画を観続けるってことは、こういう小さな詐欺に騙され続けるってことでもあるんだなぁ…」と悟った少年時代で。

【ストーリー】
20年以上も閉鎖されていた刑務所が再開されることとなり、多くの囚人が送り込まれてくる。しかし、途端に怪事件が多発。そこには、無実の罪で処刑された男の怨念が渦巻いていた。

今では“宵越しの金は持たない男”として評判の悪い『クリフハンガー』『マインドハンター』のレニー・ハーリンが、まだ“どんな題材でもとりあえずド派手にする男”として重宝されていた頃の一本。まぁエンパイア・ピクチャー製なので、使いたくても使えるお金はないんですが。
監獄映画物の要素をとりあえず一通り揃えておいて、そこに怨霊が大暴れする様を加えることで、世間から隔離された密室での恐怖劇を演出しようとする意図は概ね成功。やたらと火花が散るド派手な描写の連続で、飽きることなく最後まで進んで行く。とは言っても全てにおいて及第点、逆に言えば全てにおいて物足りない本作には、これといって心に残るシーンもない。まぁレニー・ハーリンが見せたいのが痛みの伝わるゴア描写なんかじゃなく、火花のほうなのだから仕方がありませんが。おかげで、怒っているのは理解できるが行動が八つ当たりの怨霊や、『荒野のストレンジャー』のように過去から蘇ってきたかのような主人公が、ただの他人の空似でしかない中途半端さばかりが記憶に残ることに。

そんな思わせぶりで他人の空似な主人公を演じるのが、“ロード・オブ・ザ・リング”シリーズ、『ヒストリー・オブ・バイオレンス』のヴィゴ・モーテンセン。“20年も前の若き日の”と言いたい所だが、基本的に全く変わっていない。さすが、アラゴルン。長寿の人。どことなくロカビリー風味の風貌で、口数が少なくひたすらにカッコいいだけの彼を観るだけに関しては、全く申し分のない一本。
80年代から90年代にかけて、“嫌な奴”をやらせれば右に出る者のいなかった『飛べないアヒル』『いとこのビニー』のレイン・スミスや、『リトル★ニッキー』のタイニー・リスター・Jrらが、辛うじて見覚えのある顔ぶれである本作だが、ヴィゴがあまりに変わっていないのでとても20年前の作品とは思えぬ一瞬も。でもまぁ、やたらと埃とスモークの舞う舞台に、青白い光が逆行で差すいかにも80年代風の画面に、『ハーレーダビッドソン&マルボロマン』のチェルシー・フィールドがババーンと登場すると、「あぁ、やっぱり20年前の作品だなぁ」と納得することも。

パッと出てきてパッと消える照れ屋さん
↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓
人気blogランキングへ