リトル・ミス・サンシャイン (Little Miss Sunshine)

監督　ジョナサン・デイトン／ヴァレリー・ファリス　主演　グレッグ・キニア
2006年　アメリカ映画　100分　ドラマ　採点★★★★

２年連続で日本人が快挙を達成したってんで大騒ぎになったミス・ユニバース。世界一美しい女性を選ぶ大会で日本人が選ばれたのは嬉しい限りではあるんですが、御二方とも容姿にしろメイクにしろ佇まいにしろ、非常に欧米的。というか、欧米人好み。浮かれムードに水を差すつもりはないんですが、なんというか型に押し込んだって感じがして、日本人としての美を感じなかったりも。まぁ、主催者がいる限りは、その主催者好みの型にはめるのが無難ではあるんですが。



【ストーリー】
独自の成功論を振りかざして敗者を徹底的に否定する父親に、ヘロイン中毒の祖父、テストパイロットになるまで沈黙を続ける兄に、ゲイで自殺未遂を起こした伯父、そしてそんな状況にイライラしっぱなしの母を持つポッコリお腹でまん丸メガネのオリーヴの家庭は崩壊寸前。そんな中、オリーヴの念願だった美少女コンテストに出場できることが決まり、オンボロマイクロバスに一家が乗り込んで遠くカリフォルニアを目指すが…。



家族を襲う様々な困難を象徴したマイクロバスを、一家総出で押すことで家族の絆を取り戻していく様を描く、アメリカ映画伝家の宝刀であるロードムービー。
文字通り太陽のように輝いている娘が中心にいる事で辛うじて繋がっている一家が、困難だらけの旅の中で家族の繋がりを強めていく様を、程よいバランスの笑いも含め非常にスムーズに進んでいく本作。個性的な面々の描写や、旅路でのトラブル、美少女コンテストを目指し一家一丸となってたと思いきや、誰も娘の練習風景を見ていなかったことに気付くクライマックスと物語の構成も非常に上手い。念願のコンテストに出場してみれば、そこは少女本来の可愛らしさを表現する場なんかではなく、大人のエゴと虚栄で大人の真似をさせられる少女達が、決まった枠組みにはめ込まれた上に、欲望の眼差しでまで見られる場であることに一家が気付くシーンの皮肉も痛烈。ジョンベネ事件で騒がれたのにも関わらず、相変らずこんな感じなんですねぇ。そんな美少女コンテストに孫娘を出場させるってことで、「やってることは、コレと変わんねぇんだよ」とでも言いたげにストリッパーばりのダンスを仕込んだお爺ちゃんは、アッパレ。
行間を読ませる無音や無言で心の動きを表現するのではなく、思っていることまでセリフで説明させてしまったり、一家の問題が何一つ解決されていない幸先不安の状況下であっても、未来に一抹の不安をも全く感じさせない終わり方をする本作。ロードムービーって言えば、ハッピーエンドに思えつつも笑顔が真顔に変わった瞬間に幕が降り、先への不安を少しばかり残すニューシネマばかり観ていたので、「そういえば今は２１世紀だったんだ」と、もの凄く当然のことを思ったりも。



役者の個性が作品の出来を格段に向上させたと言える本作。威勢はいいが頼りには全くならない父親には、『ミステリー・メン』『アダム　−神の使い　悪魔の子−』のグレッグ・キニア。半ギレの上に半ベソの父親役が似合う俳優といえば、彼以外にはウィリアム・Ｈ・メイシーくらいしか浮かばないほどの適役。母親役の『シックス・センス』『シャフト』のトニ・コレットには、お気に入りなだけにもう少しばかり出番が欲しかったなぁと思いつつも、『４０歳の童貞男』のスティーヴ・カレルの、ゲイ独特の穏やかさと憂いと優しさが入り混じった眼差しに、イロモノではない芸達者ぶりを見る。『ロケッティア』『ポイント・ブランク』のアラン・アーキンや、『ガール・ネクスト・ドア』のポール・ダノも素晴らしかったのだが、なんといっても本作の魅力を一人引っ張っているのが、『サイン』でのキスチョコ帽子姿が可愛かったアビゲイル・ブレスリン。愛嬌たっぷりの容姿や動作と太陽そのもののような笑顔は、“愛は得るものではなく与えるもの”という当然のことを、改めて思い知らされることに。もう彼女には、“全人類の愛娘”って称号を与えたいほどで。


競うまでもなく、自分の子が一番可愛いんですよ

↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓
人気blogランキングへ

　　　　　　　　

　　　　　　　　

Comments

こんにちは。
私もトニ・コレットが大好きです。彼女の役にしては珍しく、強くたくましい『肝っ玉母さん』な役でしたよね。しかも旦那がグレッグ・キニアって…。グレイト。
そうそう、「いい俳優さんだなぁ」なんて見ていたら『40歳〜』の方だと知って驚きました。『40歳〜』もバカに出来ないなぁって思いました。←失礼。

Posted by TAXi at 2007年06月25日 12:44

TAXi様こんばんは！
常々コメディアンの芸達者ぶり、芸の深さぶりには感嘆をしてたんですが、スティーヴ・カレルもその例に漏れず奥行きのふかーい演技を見せてましたねぇ＾＾

Posted by たお at 2007年06月26日 19:04

>役者の個性が作品の出来を格段に向上させたと言える本作

ストーリーを文章で書くと、ハッピーエンドが約束された“ベタな”アメリカン・ロード・ムービーと言う印象になってしまうけれど、キャスティングが最高にいいから、物語が広がりましたよね！

Posted by 哀生龍 at 2007年06月26日 22:54

こんにちは♪
何度も観たい映画です。
笑ってんのに涙がでちゃうステキな映画でした。

Posted by AnneMarie at 2007年06月27日 11:25

たお様
albrechtです。
>大人のエゴと虚栄で大人の真似をさせられる少女達
とーちゃんも、かーちゃんも、にーちゃんも、おじさんも、たぶん、じーちゃんも、「正しいやり方」なんかうっちゃって、"Super Freak"を踊っちゃう。みんな憑き物が落ちて天晴れ顔だし、なんか、小さな幸せが数え切れないほど見つかるような気がしていい感じですよね(笑)。

Posted by albrecht at 2007年06月28日 00:02

TBありがとうございました☆
黄色いおんぼろワーゲンがもうひとりの主人公でしたね！
シンプルなストーリーを個性的な役者陣がこんなにも面白くしてしまった〜って感じです。
素敵な作品でした♪

Posted by kira at 2007年06月28日 20:28

こんにちは☆

観た直後は大絶賛でも、数ヶ月経つとそんなに
印象に残ってない･･･なんてよくあるのですが、
これは今もずっと心に残っている作品。
たぶんこれからもずっとそうだと思います。

ミスコンでオリーヴちゃんのダンスを喜んでたごく少数の人たちも良かった♪

Posted by kenko at 2007年06月28日 21:09

TBありがとうございます。
なんと言っても女の子が小太りなのが説得力を増しています。「ペーパームーン」のテータム・オニール以来、小憎らしい女の子には弱いのですが、「憑神」の森迫永依ちゃんもこれくらい小憎らしかったらよかったかな。

Posted by ジョー at 2007年06月28日 21:59

哀生龍さまこんばんは〜♪
作品自体は画面やセリフで全て見せきってしまい、行間を読ませたり含ませたりはしないんですが、サラーっと楽しませるだけでは済ませていないのが、やはり役者陣の存在感でしたねぇ＾＾

Posted by たお at 2007年06月28日 22:09

AnneMarie様こんばんは！
胃にもたれるような作品ではなく、口当たりはやや軽めでしたが、確かに何度も観返したくなる可愛い作品で♪

Posted by たお at 2007年06月28日 22:13

albrecht様こんばんは〜♪
やってることもその目的もストリップと大差ないくせに、偉そうなキレイゴトばかり並べてるこんなコンテストで認められるよりも、家族全員で娘を可愛い可愛い言ってた方が遥かに価値があるってもんですよねぇｗ

Posted by たお at 2007年06月28日 22:21

kira様こんばんは！
なんというか、ワーゲンが普段は優しくて一家を包み込んでいるが、家族を叱咤する時は言葉ではなくサラっと難題を突きつけてくるお祖母さんのようにも思えてきましたねぇ＾＾

Posted by たお at 2007年06月28日 22:42

ジョー様こんばんは！
テイタム・オニールとは！
随分と“小憎たらしい女の子に弱い”歴が長いですねぇｗ

Posted by たお at 2007年06月28日 22:46

kenko様こんばんは！
クド過ぎたり力が入りすぎている映画は、しばらくすると「もういいや」って気になるんですが、多分本作は数年後に観ても、初めて観たときと然程印象が変わらないんでしょうねぇ♪

Posted by たお at 2007年06月28日 22:47

TBありがとうございました。
なんとも家族愛に満ちた映画でした。ハリウッドもこういう映画をもっと作ればよいと思います。

Posted by hal at 2007年06月29日 08:31

TBありがとうございましたm(_ _)m
とても素敵な映画でした。。
こういう映画を期待しないで観ると
｢ズキューン」と胸を打ち抜かれた気がします。
次回はDVDで見ようかな？

Posted by arisu at 2007年06月30日 17:40

hal様こんばんは！
バラバラだった家族なり友人なりが、旅を通して絆を強めるって映画は、それこそアメリカ映画の伝家の宝刀だったんですけどねぇ。。。

Posted by たお at 2007年07月01日 23:19

arisu様こんばんは！
たまにこういう良い小品に出会うと、ホント嬉しくなっちゃいますよねぇ＾＾

Posted by たお at 2007年07月02日 00:09

たお様，コメント有り難うございました．
>この先にとんでもない困難が待ち構えているようにも思えるこの一家でしたが
全く，特におとーさんですよね，しっかりしなきゃいけないのは．
でも確かに，オリーブのような子がいれば，何とかなりそうって気にさせる映画ですね．

Posted by ほんやら堂 at 2007年07月16日 00:04

ほんやら堂さまこんにちは！
まぁ、何度も同じような苦難を乗り越えなきゃなんないような家族でもありましたが＾＾；
オリーヴさえグレなければ、なんとかやっていけそうです。

Posted by たお at 2007年07月16日 15:05

こんにちは。
ミスコンに出場している子たちが気持ち悪かったっす。私ならオリーヴが優勝させてあげるよ〜あんな感じなんですかねぇ。
エロエロなダンス最高じゃないですか(笑)
さすがおじいちゃんが振り付けしただけあるなと･･･見せてあげられなかったのが残念でしたね。

Posted by ゆかりん at 2007年10月21日 18:18

ゆかりん様、こんばんは〜♪
子供たちもさることながら、ソレをよしとする大人が気持ち悪かったですねぇ。。。

Posted by たお at 2007年10月22日 20:22