2015年 アメリカ/オーストラリア/中国映画 108分 サスペンス 採点★★★★
転職を繰り返してるせいか、お中元やお歳暮といった贈り物を贈る習慣が身に付かないまま大人になっちゃった私。なもんで、不意に贈り物が届くと、ビックリする前に「なに?誰?」と不気味に感じたりも。ま、「誰だろうねぇ?気味悪いねぇ?」とか言いながら、その銘菓をモリモリ食べてるんですけど。そう言えば、注文した覚えのない荷物がAmazonから届くことがありますが、大抵の場合は送り主の名前が送り状なり納品書に記載されるギフト設定をしてないがために謎の荷物になってるのがほとんど。そんな時はAmazonに連絡すれば万事解決。「気味悪い!誰からだ?」と聞いても「個人情報だ!教えん!」と言われちゃいますが、ちゃんと送り主にAmazonが連絡してくれるんで、送り主から「ゴメン、ゴメン!それ、俺ちゃん!」と連絡きますよ。
【ストーリー】
仕事の関係で、シカゴからロサンゼルス郊外へ越してきたサイモンとロビンの夫妻。新生活のための準備を進めていたある日、街でばったりサイモンの高校時代の同級生ゴードに出会う。その日を境に、ゴードから連日贈り物が届けられるようになり、次第に困惑していく夫婦。その贈り物には、サイモンとゴードの過去にまつわる意味が隠されていて…。
もう全然ふつうにネタバレしますからね。お断りしときましたからね!
『ウォーリアー』のジョエル・エドガートンが製作・脚本・出演を兼ね、監督として長編デビューも果たした、お届け物スリラー。
贈り物と同時に送り主の行動もエスカレートしていく、ストーカーのサイコスリラーかと思いきや、サイモンとゴードの過去か明らかになっていく中盤以降、“笑ゥせぇるすまん”や“魔太郎がくる!!”など藤子不二雄Ⓐ風味すら感じられる自業自得系物語へと変貌していく、そのストーリー構成と練りっぷりに感嘆させられた本作。
ゴードが贈り物に込めた真意や最後の贈り物の映像の意味を読み違えると、単なるいじめられっ子の復讐譚と捉えてしまい、なんとも後味の悪い一本になってしまうが、ゴードの意図はそんなところにあらず。他者を陥れ続けてきたサイモンに対し、自身の言動が相手にどれだけの影響を与えてしまったのかを理解し、心を入れ替える最後のチャンスそのものがゴードの贈り物。そして、そのチャンスを自ら台無しにしてしまうサイモンが受ける罰が、かつてサイモンがゴードに対して行ったのと同じ“無からのでっち上げ”による苦しみ。理不尽のように思えて、実はすべて理にかなっているこの物語には、圧迫感のある重い全体のトーンとは裏腹に一種の爽快さすら感じられた一本で。
ジョエル・エドガートンが原案を手掛けた『奪還者』同様、過去の出来事が人物に与えた影響や、本当に大切なことが物語の進行と同時にジワジワと滲み出てくる本作。演出云々以前に、ストーリーテラーとして類稀な才能の持ち主であることは確かだなぁと。
過去に散々なことをしておきながら、久しぶりの再会を祝い自宅に招き入れる無神経ぷりが、過去の言動を正当化し、然程重要視していないどころか、特に記憶にも留めていない苛めっ子特有の思考回路を持つサイモン。そもそも面白半分で行ってるので、罪悪感もなし。そんなサイモンに扮した、『宇宙人ポール』『ウソから始まる恋と仕事の成功術』のジェイソン・ベイトマンのハマリっぷりたるや。認められたい相手や認めてる相手に対しては人当たりの良い好人物でいるが、見下している相手にはちょっとした余興のように苛めを行う、実生活でもそんなことをしてそうな程の似合いっぷり。これを同じ苛めっ子キャラのベン・アフレックが演じると、社会的成功の伴わないその性悪さだけが前に出るんですけど、「あいつは性悪なんだ!」と訴えても周囲が信じてくれなさそうな感じが上手く出ていたのも、ジェイソン・ベイトマンが演じたからこそなんだろうなぁと。
一方のゴードに扮した、演出に専念するため自分の出演シーンは撮影開始序盤にまとめ撮りしたという、『ゼロ・ダーク・サーティ』『遊星からの物体X ファーストコンタクト』のジョエル・エドガートン。実在しているはずなのに実生活がほとんど描かれていないこともあり、まるでそれぞれの手に赦しと懲罰を携え地上に舞い降りた天使のようなフワフワした存在感を、ライティングひとつで懐の深さと怖さが入れ替わる個性的な顔立ちで好演。
また、サイモンの妻ロビンに扮したのは、『アイアンマン3』『ザ・タウン』のレベッカ・ホール。中盤まで独り慄いている様が、その短くした髪もあってか『シャイニング』の嫁を彷彿させ、存分にイライラしてしまったんですけど、その苛立たしさは物語をミスリードさせるのに非常に効果的だっただけではなく、最後ロビンが居る病室の番号が『シャイニング』の例の怖い部屋“237号室”と同じってことから、意図的かつ的確な演出だったんだなぁってのにも驚かされた作品で。やるなぁ、エドガートン。
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