2016年 アメリカ映画 104分 サスペンス 採点★★★
J・J・エイブラムスって、監督としてはこれといった個性もそつも思い入れも感じられない、“記憶に残らない映画”を作る天才って印象しかないんですが、プロデューサーとしては立ち行かなくなった企画や大きすぎるプロジェクトを動かす“凄腕”ってイメージがありますよねぇ。人と金を集め、無茶と思える企画すら通しちゃうその手腕には、素直に敬意すら感じたりも。きっと、プレゼン能力が凄まじく高いんでしょうねぇ。近くに居たら嫌いなタイプだ。
【ストーリー】
運転中の事故で意識を失ったミシェル。目を覚ますと、彼女は見知らぬ地下室で手錠に繋がれていた。そこに現れたのは、シェルターと化した地下室の所有者ハワード。彼は、外でとてつもなく恐ろしいことが起きているので外に出すことはできないと彼女に説明する。足の怪我で思うように動けないミシェルだったが、隙を見て脱出を試みる。外まであと一歩のところで彼女が目にしたのは…。
先の読めない展開と、『クローバーフィールド/HAKAISHA』と世界観を共有する姉妹編的作品ということでも話題となった、J・J・エイブラムス製作による密室スリラー。監督を務めたのは、本作が長編デビューとなるダン・トラクテンバーグ。もともとは『クローバーフィールド/HAKAISHA』と全く関係のない独立した脚本だってこともあるので、一旦その辺は脇に除けておこうかと。
ざっくりと言えば、『ミザリー』と『サイン』をギュっとまとめて、そこに『宇宙戦争』を振りかけたみたいな、映画好きが集まって盛り上がった話をそのまんま脚本にしたかのような本作。マッチ一本で大爆発しかねない可燃性のガスでパンパンになった宇宙船で攻めてくるなんて、なんか水が苦手なくせに水だらけの惑星を侵略しに来た『サイン』の連中みたいでしたし。ただまぁ、確かに先は読めないが、寄せ集め故の先の読めなさって感じも。
しかしながら、ハワードが“単なる狂人なのか?”と“異常な状況に立ち向かっている一般人なのか?”の疑問の間で観客を迷わせ、最終的に“どっちも”にもっていく設定と展開は巧い。アイディアの勝利というか、やったもん勝ちな感じもするが、なかなか楽しめた展開で。
温厚なイメージがあるだけに、秘めたる欲求が狂気に転じた時の手に負えない恐ろしさを見事に体現していた『アルゴ』のジョン・グッドマンや、ジョン・マクレーン並みにダクトを這い回り(そういえば娘役やってた!)、『宇宙戦争』のトムちん並みに細かいことに気が付くミシェルを持ち前の冷静さで演じた、『遊星からの物体X ファーストコンタクト』のメアリー・エリザベス・ウィンステッド、そんな存在感の大きい二人に挟まれ影が薄くなってしまったが、その薄さがキャラの個性と合致していたジョン・ギャラガー・Jrという、限定空間での少ない人数の作品ながらも物足りなさを感じさせないキャスティングも魅力だった本作。声だけながらも、『アメリカン・スナイパー』のブラッドリー・クーパーが出ている、ちょっとしたボーナスも嬉しい一本で。
で、ちょっと脇に除けてた『クローバーフィールド/HAKAISHA』の話。“あの時ほかの場所で何が起きていたのか?”って意味では非常に興味をそそられる物語ではあるんですが、その反面、関連しているという事前情報や作品のタイトルからも、尋常じゃないことが起きている世界であることが分かってるので、作品そのもののサスペンスを大いに削いでしまってるデメリットも。一方、関連作として楽しもうにも、『クローバーフィールド/HAKAISHA』のメイキングでJ・J自身が語っていた背景と本作で語られる状況が一致しないので、ただただ困惑するばかり。その辺の、上っ面だけで作品自体に思い入れの感じられない、非常にJ・Jらしい一本だったなぁと。
今回も大阪で最初に撃退してたりするんでしょうかねぇ
↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓