1974年 イタリア/スペイン映画 94分 ホラー 採点★★★
ゾンビから霊まで、とりあえず死んでるものが関わってれば使えちゃう“死霊の○○”ってタイトルも便利ですけど、70年代のオカルトブームから現在まで使われ続ける“悪魔の○○”ってタイトルの汎用性の高さには到底敵わないですよねぇ。文字通り悪魔そのものが絡む映画以外にも、悪魔のような人や状況、果ては『悪魔の受胎』みたいに宇宙人相手にも使えちゃいますし。これだけ便利な枕詞もないなぁと。
【ストーリー】
休暇でロンドンを離れ郊外を訪れた芸術家のジョージだったが、立ち寄ったガソリンスタンドで若い女性エドナの運転する車により、バイクを壊されてしまうやむを得ず彼女の姉のもとに共に向かうことに。しかし、ようやくたどり着くと、エドナの姉の夫が何者かに殺害される現場に出くわしてしまう。地元警察に容疑者として目を付けられる彼らだったが、事件の真犯人は害虫駆除用の超音波により目覚めた死体で…。
贅沢な枕詞の使い方が目を引く、『悪魔の入浴・死霊の行水』のホルヘ・グロウによるゾンビ・ホラー。主演には、森永のCMに出てたりして日本のお茶の間でもお馴染みだった『カサンドラ・クロス』のレイ・ラヴロックが。
日本ではこっちの方が先に公開されちゃったので“ゾンビ映画第一弾”的な立ち位置に立っちゃってたが、明らかに『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド/ゾンビの誕生』のエピゴーネンである本作。近代化と同時に汚染が進む環境問題や、旧世代と新世代の軋轢、身の潔白を晴らすために奔走するミステリー仕立てなどといった差別化を図る試みを行ってはいますが、別にこれといった効果を上げているわけでも。
お楽しみであるゾンビも、前半を浮浪者ゾンビ一体のみで乗り切り、後半になってようやくゾンビ数が増え始めるも、登場するのは一度に三体までという、なんとも寂しい絵面。紙で出来てるかの如く盛大に燃えてみたり、犠牲者の近くではウスノロなのにそこに至る道中は意外と機敏な動きを見せてたり、なにか儀式めいた方法でゾンビを増やしたりと、ゾンビルールが確立しきっていない故の珍妙さも。
しかしながら、その数少ないゾンビに施された『ビヨンド』のジャンネット・デ・ロッシによる生々しいメイクには目を見張るものが。特にクライマックスに現れる、病院ゾンビの解剖跡の生々しさは今現在においても通用するクォリティの高さ。
また、犠牲者のオッパイを剥き出しにしたと思ったら握り潰しちゃう、一瞬エロを挟み込んでからグロに移行するキメの細かいサービス精神や、イギリスの片田舎だからこそ漂うオカルト的な雰囲気、環境問題を訴えるためというよりも、カッコいいテーマ曲を延々流したいがために結構尺を撮るオープニング(そこにも一瞬エロを挟み込んで)など、本作ならではの味が作り上げられてるのは立派なのではと。
記念碑的な意味合い以外ではなかなか評価しがたい作品ではあるんですけど、文句を言いつつも数年に一度のペースで観てしまう中毒性の高い作品でも。
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