2012年 アメリカ映画 130分 ドラマ 採点★★★★
自分のことを振り返ってみると、社会と接点を持ち始めた高校や大学の頃に出会った大人たちから受けた影響って絶大なんですよねぇ。考え方や身の振り方など、今現在の自分を作り上げたと言っても過言じゃないほどの影響を。うちの子どもらはまだ親や先生くらいしか接点を持つ大人っていないんですけど、今後どんな出会いを経験して成長していくのか、親が口を出しにくい部分なだけに不安もありますが楽しみでも。
【ストーリー】
アーカンソーの田舎町で決して裕福とは言えない生活を送る14歳のエリスと親友のネックボーン。ある日、彼らはミシシッピ川に浮かぶ島の、洪水によって木の上に打ち上げられたボートで寝泊まりするマッドと名乗る男と出会う。彼は愛する女性ジュニパーのために殺人を犯し逃亡中の身で、この島で彼女と落ち合い逃亡する準備をしていると彼らに告げる。愛を信じたいエリスはその話に引き込まれ、マッドに協力をするのだったが・・・。
『テイク・シェルター』で注目されたジェフ・ニコルズが脚本と監督を務めた、多感な少年と殺人犯との交流を描く犯罪ヒューマンドラマ。
川に浮かぶボートハウスで、川魚を売る父とその生活に嫌気がさしている母親と暮らすエリス。親友のネックボーンには両親が居らず、川底を漁って生計を立てている伯父と暮らしている。裕福とは言い難い生活であり、町で暮らす住人との間には目には見えないが超えられない壁が存在している。でもエリスはその人生を受け入れ、愛する父親の仕事を手伝い、余暇は同じ境遇のネックボーンと遊ぶ日々。過酷な境遇故に他の子供たちよりも早く大人になり始めているエリスだが、一方で“愛”を無垢なまでに信じている。しかし、愛し合ってたはずの両親は別居を決意し、恋人だと思っていた年上の女性にも年齢を理由に冷たくあしらわれる。愛さえあればなんだって乗り越えられるはずなのに、現実はそうもいかない。そんな時に、愛ゆえに殺人を犯した逃亡犯と出会う。
そんなちぐはぐな環境と大人たちに翻弄される少年の心情を、細やかかつ鮮烈に描いた本作。木の上の船や毒蛇など宗教的な概念が自然に溶け込んだ寓話性が愛の物語により深みを持たせた脚本も、監督の出身地でもあるアーカンソーの寂れた町並みに役者同様に顔と人格を持たせた映像も非常に素晴らしい。大人の都合で分かりづらくなった全容を明らかにするのではなく、少年の視点で分かる範囲のみにしているのも良し。また、マッドが迎える顛末も悪くないが、新たな環境で生活せねばならなくなった不安や慣れ親しんだ場所を離れる悲しみも、近所に年上のお姉さま方が住んでるのを知り「うん!これも悪くない!」と非常に男の子らしい心の切り替えをするエリスの顛末も清々しくも素晴らしい、今まで見逃していたことを惜しんでしまう一本で。
逃亡中の殺人犯マッドに扮したのは、『インターステラー』『フレイルティー/妄執』のマシュー・マコノヒー。彼の演技と存在感の圧巻さたるや。ミステリアスに登場するも、展開が進むにつれ、後先を考えない一途さ故の危うさや、想定外の展開に思考が停止してしまう脆さなど明らかになってくる人物像を見事に表現。90年代の本作の構想を始めた時点でマコノヒーが監督の頭にあった、一種のあて書きのような脚本ではあるが、その要望に応えて余りある熱演を披露。
ただ、そんなマコノヒー以上に心に残るのが、本作が映画出演2作目になる、どうやら年上が好みらしいエリスに扮したタイ・シェリダン。現状を受け入れると同時に悩みや辛さも呑み込んでしまった破裂寸前の脆さや、マッド同様思いこんだら真っすぐに進む以外にない危うさが手に取るように伝わる好演。どこかトム・ハーディを思い起こさせる風貌も役柄にマッチ。
その他、南部男の象徴的存在でもある『デンジャラス・ラン』のサム・シェパードや、トラッシュ役が板についてきた『デビルズ・ノット』のリース・ウィザースプーン、ニコルズ作品常連である『ロシアン・ルーレット』のマイケル・シャノンなど隅々行き届いたキャスティングも良かったが、中でも「エリスと一緒にいたい」ってだけで物語に絡むネックボーン役のジェイコブ・ロフランドがなんとも可愛かったなぁと。
5年分にも値するひと夏
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いい機会だったので、久々にこの作品のことを思い返してみました。心に残る作品でした。
基本、少年の成長譚のジャンルは好きなのですが、マシュー・マコノヒー扮するMADとの関係が素晴らしかった!です。
(でも実際に自分の息子がMADに傾倒しちゃったら嫌だろうなぁ〜)
>でも実際に自分の息子がMADに傾倒しちゃったら嫌だろうなぁ〜
正直嫌ですよねぇ。
でも、大人になる途中での出会いって親はなかなか口出せないですし、それがどういう結果を導くかも決めつけられないんで歯がゆいながらも見守るしかないんでしょうねぇ。