2016年03月09日

食人族 (Cannibal Holocaust)

監督 ルッジェロ・デオダート 主演 ロバート・カーマン
1980年 イタリア映画 95分 ホラー 採点★★★★

日本では83年に正月映画第2弾として公開され、『E.T.』に次ぐ大ヒットを飛ばした本作。“本物”を謳ったセンセーショナルにも程がある宣伝や、TVでもまだ普通にやってた残酷・奇習ドキュメントってのが身近だった状況ってのもあるんでしょうけど、「E.T.混んでるからこっちでいっか!」という選択肢の幅の広さに今思うと驚かされますよねぇ。心に余裕があるというか、映画に対し感動ばかりを求めてない娯楽最優先の時代だったってことでしょうか。私の地元ではこれと『処刑教室』という夢のカップリングで上映されてたんですが、これを子どもたちだけで観に行けたってのも、今となっては素敵な思い出。

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【ストーリー】
ドキュメンタリー制作のためにアマゾン川奥地へと向かった4人の撮影隊が消息を絶つ。捜索に向かったニューヨーク大学のモンロー教授は、様々な危機をかいくぐった末に白骨化した4人の遺体と撮影されたフィルムを発見する。そのフィルムに写っていたのは、4人が原住民に対し行った目も覆いたくなる蛮行の数々と、彼らが迎える凄惨な最期で・・・。

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食人ホラーとしてはもちろんのこと、フェイクドキュメンタリー、ロストフッテージ物の金字塔として未だ色褪せない輝きを放っている、ルッジェロ・デオダートによるモンド風味ホラー。
私自身少なくてもこれまで3人ほど“本物”もしくは“本物かもしれない”と信じている人に出会ったことがあるほど、本物と偽物の織り交ぜ方が巧みな本作。普通の精神状態なら明らかにフェイクと分かる強姦シーンや食人シーン、虐殺シーンの数々も、首を切断してもなお動き続ける亀の甲羅を引っぺがしデロンデロンの内蔵を貪り食う、ホラー慣れした私もさすがに食欲が失せる亀の解体ショー(後でスタッフが美味しく頂きました)や、猿の頭をかち割り脳汁を啜る(現地の人が美味しく頂きました)シーンなどの生々しく凄惨な“本物”を混ぜ込むことにより、「全部本当にやらかしてるかも知れん」と思わせる巧い作り。本物の処刑映像については「コレはヤラセだよ」と言ってくるんで、尚更なにが真実なのか混乱してしまう構成も見事。
エロとグロという本能的な快楽と理性的な部分での嫌悪感ってのを突き詰めた本作。とことん下品なもので観客を喜ばせようとするイタリア式サービス精神が非常に嬉しい一本なんですが、最低限ストーリーを構成する為に添えられた“白人至上主義”に対する皮肉ってのもなかなかパンチが効いていた本作。

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ヤコペッティの『世界残酷物語』をはじめとする残酷ドキュメントってのがお家芸でもあったイタリア。アフリカやアジアの奇習や残酷行為を“ドキュメンタリー”という触れ込みで映し出していたが、そこには結構多くの“演出”が施されていたのは今では周知の事実。本作で描かれている蛮行の数々は誇張だとしても、実際に現地で傍若無人な振る舞いをしていただろうってことは容易に想像できる。また、そういった作品を観る側にとっても、建前こそ「学術的に〜」みたいな言い分があるが、結局のところは未開人の野蛮さを見て自分たちの優秀さや幸福さを再確認するだけでしかない。「あー、土人じゃなくてよかった」みたいな。
文明の象徴として映し出されるニューヨークとアマゾン奥地の対比、泥だらけで野蛮な現地人と上品なスーツに身を包んだ白人との対比。そして、原住民にあらん限りの残虐行為を行う白人と、その白人を惨殺し食らう原住民。白人クルーが原住民に対し行った行為に眉をひそめながらもTV放映を強行しようとするTV局の上層部(もちろん全員白人)が、そのクルーが原住民に殺されるシーンを見るや否やフィルムの抹消を命じる。上等民族の白人が下等民族に対して蛮行を行うのは許されるが、下等民族が一矢を報いようとするのは絶対に許さない。この強烈な皮肉たるや。上品な曲さえ流してれば本音を隠せるかの如く、モンド映画でお馴染みのリズ・オルトラーニの美しい旋律が流れ続けるのも、この皮肉をさらに際立たせているようにも。ビジュアルの不快感もさることながら、これまで自分たちが行ってきたことに対する笑いを忘れたブラックコメディな要素こそが最も強烈で、そこが未だに作品を輝かせ続けている一本で。
余談ですけど、このレビューを書くにあたりアマゾンでDVDを探してたんですけど、ブルーレイを含めアマゾンでは置いてなくてちょいと驚きましたねぇ。

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posted by たお at 16:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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