2014年 中国/香港映画 100分 アクション 採点★★★
どこかキナ臭い主張や絶妙に都合の悪い部分を隠した設定はさて置き、スケールも大きく映画としてきちんと作られた風格ある中国/香港映画が増えた一方で、かつて私なんかが気軽に楽しんできた香港映画らしい香港映画ってのが減ってきた印象がありますよねぇ。北京五輪前後辺りからその傾向は顕著になってきた感じも。大袈裟な言い方かもしれませんが、一つの文化が消えようとしてるのをリアルタイムで見ているのかなぁと。
【ストーリー】
武術会のチャンピオンたちが何者かによって殺害される事件が発生。かつては警察の武術教官を務めながらも、他流試合で相手を殺してしまったことから服役中だったハーハウは、犯人の目的が武術会の頂点に立つためのものと見抜き、警察への協力を名乗り出る。しかし、懸命な捜査にも関わらず犯人は常に警察の先を行き、やがてその魔の手はハーハウの妹弟子にまで伸び・・・。
『孫文の義士団』のテディ・チャンによる、武術の達人同士の熾烈な闘いを描いたカンフーアクション。アクション監督はもちろん主演でもある『アイスマン 超空の戦士』のドニー・イェンが。
中国に吸収されていく香港映画界と、なかでも衰退著しいカンフー映画に従事してきた映画人に対する深い愛情と尊敬の念を込めて作り上げられた本作。登場する技ごとにがらりと変わる演出スタイルのバラエティの豊かさのみならず、一つ一つのクォリティの高さに大いに驚かされながら楽しめた一本。ワン・バオチャン扮する犯人がアホちゃんが過ぎる武術マニアにしか見えなかったり、思わせぶりだけで終わってるシーンがあったりと粗も目立つが、カンフー映画とその技の素晴らしさを伝えることに主眼が置かれている作品であるので、その点は然程気にならず。なんでもやりこなすワン・バオチャンを含め、ただただその技の見事さに驚かされ続けた100分間で。
個人的にはナルシスを爆発させた『かちこみ!ドラゴン・タイガー・ゲート』の時のようなドニーさんが大好きなので、キャラ的に少々抑えを利かした本作のドニーさんには若干の物足りなさを感じたものの、最近お馴染みである総合格闘技の要素を取り入れたドニー拳の更なる進化や、多種多様の格闘スタイルの披露など、動きの面で存分に魅了してくれていたなぁと。
また、ドニー映画の密かな楽しみでもある共演女優も、美人だったり可愛かったりとシーン毎に微妙に印象が異なるミシェル・バイが存分に目の保養をさせてくれたので満足。
カンフー映画を中心に香港映画に向けたリスペクト溢れる作品と言うこともあり、登場する脇役からちらりと映るフッテージ映像、ポスターに至るまで隅々に香港映画人が登場する本作。さすがにそこまで詳しくないので鑑賞後に調べて驚いただけですが、ホント隅々に出てる。中でもレイモンド・チョウの登場には驚かされましたねぇ。なんかこう、ゴールデン・ハーベストが映画を作っていないという現実が、香港映画とそれを取り巻く状況の現実を物語ってるんだろうなぁと考えさせられたりも。
理想と現実とか現在と過去とかが入り混じり
↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓
古武装やCG全開のも楽しいんですが、カンフー映画としてのシンプルさが本当に素敵だと思ったんですが…
> なんかこう、ゴールデン・ハーベストが映画を作っていないという現実が、香港映画とそれを取り巻く状況の現実を物語ってるんだろうなぁと考えさせられたりも。
…ですよね… 一応、サモハンの『大武生 (My Kingdom (2011)』や、今年は『葉門3』も公開されてますし、期待はしていきたいですわ。かつて「香港映画におけるカンフーがインド映画のダンス」とインド映画のトップスターのシャールク・カーンが言っていましたが、香港映画にとってのカンフーも、と思いたいですわ…
「カンフー映画を作るんだ!」って思いがストレートに伝わる作品でしたよねぇ。
中国映画が増えていく中で吸収され少なくなっちゃった“ザ・香港映画”。大スターに祭り上げられちゃってる印象もなきにしろあらずなドニーさんですけど、いかにもドニーさんらしい香港カンフーアクションを作り続けて欲しいなぁと。
香港の刑務所って、半ズボンなんだね〜と余計なことが珍しかったです。
いろんな流派が出てきて、それぞれの相手に合せるワン・バオチャンがすごいと思いました。
驚くほど同じ感覚を持っていらっしゃる…!そう、香港映画のひとつの文化が終わっていく様をリアルタイムに見ているようですね…。
それはさておき、本作は、ドニー・イェンのカッコ良さだけでなく、バオチャンの個性が炸裂した作品だったと思います。やーっぱ、悪役が頑張らないとこういう作品ってつまらないので。
バオチャンの凄さがあってこその作品だったなぁと。にしても、香港の刑務所はカンフーの一つくらいできないとダメっぽそうだなぁと。
世代によるものもあるんでしょうけど、「あぁ、今香港映画を観ているなぁ」って感覚を味わえる作品がめっきり少なくなったんですよねぇ。
ただ、その思いを現場の人間がしっかり持っていて、それでこのような作品がまだ生まれてくる所に希望は持てますが。