2014年 アメリカ映画 99分 コメディ 採点★★
今年も色んな事がありましたねぇ。まぁ全くの私事ではありますが、両親が長年営んできた商店を廃業し、私の生まれ育った実家兼店舗が更地になってしまったってのが本年度最大の出来事で。近くにあった祖父の下駄屋も更地になって久しいですし、私が通ってた学校も都市計画の一環でオフィスビルになったり、社会人になって店長を務めてきた店々も次々別形態の建物に。もう想い出の地が次々に無くなっていくんですけど、“街は生きてる”ってのはそういうことなんですよねぇ。「残せ!」と感傷的に騒ぐのは簡単ですけど、残したくても残せない個々の事情ってのも。
【ストーリー】
ニューヨークの下町で代々続く靴修理店を営んでいた、恋人もいない冴えない中年男のマックス。そんなある日、電動ミシンが壊れてしまったので已む無く地下にあった旧式ミシンを使い靴を修理し試し履きをすると、なんとマックスはその靴の持ち主に変身。そのミシンの力によるものと知ったマックスは、様々な靴を履いてちょっとした別人生体験を楽しむが、それが原因で思わぬトラブルに巻き込まれてしまい…。
『ラブリーボーン』などにも出演したトーマス・マッカーシーが脚本と監督を務めた、ニューヨーク情緒に溢れるファンタジーコメディ。ハッピーマディソンは関係しない、アダム完全雇われ仕事の一本。
姿かたちは変われど中身も経済力も変わらないので、思ったほど別人生を満喫できない序盤こそは哀愁のあるコメディとして楽しめた本作。ただ、後先のことを考えると決して感心できない母親へのサプライズ以降、物語は全く賛同できない方向へと転落してしまう。ぶつ切りの寄せ集めのような流れの悪い展開の中で“強引な都市計画反対!”というテーマが終盤ようやく見えてくる本作だが、その主張が責任を一切負おうとしない感傷的なものとしか見えず、「実は○○が××でしたぁ!」ってオチも「じゃぁ、もっと早く出とけよ!」となるタイミングの悪さばかりが目に。
確かに殺人も厭わない地主の悪行には同意できないが、その地主の金払いの良さを考えると当初は穏やかな退去交渉であったであろうにも「(もうすでに別の所に住んでる)娘も育てた終の棲家だから!」と、廃墟と空き地に囲まれた治安の悪そうな地主所有の老朽アパートにただ一人居座り続ける老人にも同意できない本作。そこに多少皮肉的な視点が含まれていれば救われるんですけど、普段利用しないから跡継ぎにも恵まれず廃業に追いやられているのに、いざ廃業が決まると「街並みが変わってしまう!」「想い出が!」といって大挙して押し寄せるような感傷的な面ばかりが目に付いてしまう、なんとも好きになれない一本で。
『子連れじゃダメかしら?』のアダム・サンドラーにしろ、『アダルトボーイズ青春白書』のスティーヴ・ブシェミにしろ、ニューヨークの下町風情が非常に似合う役者が集まってるだけになんとももったいないなぁと。舞台もしょぼくれた役柄的にもハマっていたアダム以上に、アダムを温かく見守るブシェミの役柄が素晴らしかっただけに、その思いは強く。『再会の街で』のようにちゃんとした作品でこのコンビネーションを観たかったなぁと。若しくは、この舞台でアダム&ブシェミ版『クラークス』か。
その他、見守る以前にやっておくことがあるような気がする父親役に扮した『ミート・ザ・ペアレンツ3』のダスティン・ホフマンや、髪型のせいか老キャメロン・ディアスっぽかった『クロッシング』のエレン・バーキン、『ピンチ・シッター』のクリフ・“メソッド・マン”・スミスや、『誘拐の掟』のダン・スティーヴンスといった、やっぱりなんかもったいない顔触れが集結していた一本で。
一方的な童話
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力ある存在に感傷的に反対するだけで、現状を打破するための代替案は出さない。
そんな甘い(歯がゆい)反対運動にしか見えなくなってしまったのが、とても残念。
ファンタジーの部分と町を守ると言うドラマ部分が、上手く融合していなかったと言うか。
>ハッピーマディソンは関係しない、アダム完全雇われ仕事の一本。
見事なまでの雇われ仕事だと哀生龍も感じてしまいました。
「だって嫌なんだもん!」と感情だけでものを言ってる感じなんですよねぇ。イジワルな言い方をすれば幼稚。ファンタジーならもっとファンタジーに徹すれば良かったのかも知れませんねぇ。