2014年 フィンランド/イギリス/ドイツ映画 90分 アクション 採点★★★★
素晴らしい脚本に演出、演者の熱演に支えられた所謂“良い映画”や、娯楽のツボをしっかりと押さえた“面白い映画”、私自身のツボを刺激する“好きな映画”ってのは、レビューを書く際は案外楽なんですよねぇ。褒め所が豊富なもんで。その逆も然り。ただ、レビューを書く際に非常に悩まされるのが“嫌いになれない映画”ってやつ。特に素晴らしい個所があるわけでもなければ好きな役者が出てるわけでもなく、巷で評判が悪いのも十分理解できる代物なのに、どうやっても嫌いになれない類のやつ。そんあ高評価を付けながらもその評価の理由が浮かばない作品ってのに、数年に一度くらいは出会うんですよねぇ。
【ストーリー】
テロリストのミサイル攻撃を受けフィンランド上空で撃墜させられた、アメリカ大統領ウィリアム・アラン・ムーアが乗るエアフォースワン。緊急脱出ポッドにより辛うじて命は助かった大統領であったが、フィンランドの山奥の森にただ一人取り残されてしまう。そこに現れたのは、一人前のハンターになるために森へ来ていた13歳のちびっ子狩人オスカリ。彼の助けで森を脱出しようとする大統領であったが、大統領狩りにテロリストも森へやって来て…。
全裸の老人が雪原で子供を襲う異色サンタ映画『レア・エクスポーツ 〜囚われのサンタクロース〜』のヤルマリ・ヘランダーによる、極悪テロリスト相手に子供とヘタレ大統領が奮闘する様を描いたちびっ子アクションアドベンチャー。たんまりといる製作者の中には、『ジャッジ・ドレッド』のアレックス・ガーランドの名も。
フィンランド映画史上最大の予算を費やし製作されたという本作なのだが、外国人の目から見たアメリカの誇張された姿とは言えやたらと「最強!」を口にする大袈裟すぎる尊大さや、そこに至るまでは緻密な計画だったんでしょうけど、いざ実行したらやたらと大雑把な暗殺計画、大味過ぎるアクション描写に噛み合ってるとは言い難い笑いの要素。肝心なことが解決しない本作に、作り手の「ふざけてやってます!」って姿勢が全面に出ているのであれば多少納得も出来るんでしょうけど、生憎ふざけているのか真面目なのかイマイチ分かりづらいってのも困りもの。なんかもう、とても2014年の作品とは思えぬ仕上がり。
この貶し所の豊富な本作なんですけど、困ったことになんとも嫌いになれない。『レア・エクスポーツ 〜囚われのサンタクロース〜』での花子顔をベースに、良い具合の“出来ない子”顔に育ったオンニ・トンミラの味わい深い顔立ちや、久々の三枚目役を演じていた『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』のサミュエル・L・ジャクソンらも、この“嫌いになれない”大きな要素の一つではあるんですが、全然それだけではない魅力に溢れていたのも事実。魅力というか魔力。
なんかこうダイ・ハード的と言うか、80年代後半から90年代前半、感覚的に言うなら88年から92年の間の雰囲気に溢れていた本作。もしかしたら、この“2014年の作品とは思えぬ”ってのが最大のポイントなのかと。ヘランダーが76年生まれだってことを踏まえると、最も影響を受けやすい年頃に観た映画の原体験、その大好きだった映画群への思い入れの全てをこの作品にぶち込んだのではないかと。ヘランダー自身が大統領役に熱望していたのがメル・ギブソンだったってのも、そう思わずにはいられない要因のひとつ。
これもまた憶測ではあるんですが、その時期に母国を離れハリウッドで大活躍したフィンランド映画界が誇る巨匠、レニー・ハーリン大先輩に対する溢れんばかりのリスペクトってのもこの作品の魅力なのではと。宵越しの金を持たぬ江戸っ子の如く湯水のように予算を使い、多少の粗をエモーショナルさすら感じるアクションでねじ伏せるハーリンスタイルが本作に漲っている気がしてならない。そう思うと、本気なのか冗談なのか分からないアクション描写の数々も、そのアクション前にいちいちキメ台詞があるのも、異常なまでに派手な爆発も、やたらと高いところから飛び降りるのも、爆発をバックに脱出ポッドで主人公らが逃げ出すのも全て納得がいく。憶測重ねで申し訳ないんですけど、尊敬する大先輩が作った『ダイ・ハード2』の後に続く作品が残念な仕上がりだったことに対する積年の思いと言うか、“俺のダイ・ハード3”が本作のベースにあるのではないのかと。プラス“俺のクリフハンガー”。
そんなヘランダーによるハーリン愛と俺イズムと俺の夢が詰まった作品を嫌いになれるわけがないので、客観的な出来云々を差し置いてでも高評価を。
あ、因みに共演には『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』のレイ・スティーヴンソンや、『アルゴ』のヴィクター・ガーバー、『沈黙のSHINGEKI/進撃』のテッド・レヴィン、『ホットファズ 俺たちスーパーポリスメン!』のジム・ブロードベントに、オンニのパパのヨルマ・トンミラが『レア・エクスポーツ 〜囚われのサンタクロース〜』同様今回もパパ役で。
次はハーリンが頑張る番
↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓
うふふ、…“嫌いになれない”作品だったのですね。私は、なんかいいよね、しみじみいいよね、つくづくいいよね、という変遷の中、とっても好きな作品になりました(笑)。
そして確かに、愛とイズムを感じました!
なんだろうもう、この心地よさは!
ってな感じの作品なんですよねぇ。で、観ている内に「もしかしたらハーリン愛なのかも?」と思い始め、そうなったらますます嫌いになれなくなった作品なんですよ。
『レア・エクスポーツ 〜囚われのサンタクロース〜』に引き続き、この作品もまた、“何故か分からないけど嫌いになれない、というより好きかも知れない”という感覚に襲われました(笑)
>母国を離れハリウッドで大活躍したフィンランド映画界が誇る巨匠、レニー・ハーリン大先輩
たおさんが書かれているのを見て、そういえばハーリン監督はフィンランド出身だったっけ!と思い出しました。
なんなんでしょうねぇ、このヘランダーの味わいってば。お勧めできないけど病みつきになる珍味的というか。
今回のは、ハーリンリスペクトの賜物にしか見えなかったんですよねぇ。
演技・表情がすべてな作品でしたね
彼がうちまかされた少年から
大人へと成長していくシーン、
凄くよかったです
良い顔してるんですよねぇ、オンニ。
ベースがダメちゃん顔なんで、クライマックスのギャップがこれまた良い!