2011年 アメリカ映画 117分 アクション 採点★★★
動物って集団の中からボスを見出す能力に優れてますよねぇ。「あ、この家ではこの人が一番偉い人だ!」と、すぐに見分ける。ウチのネコらなんかもそうなんですけど、どんだけ腹を減らしていても私の刺身には手を付けず、皿を見つめたままひたすら耐えてますし。まぁその代わり、息子のオカズは箸でつまんでいる最中のものであっても奪い去るんですけど。
【ストーリー】
アラスカの石油採掘上で、わけあって過酷な地にやって来た世捨て人集団のような従業員たちを凶暴な野生動物から守る仕事をしているオットウェイ。彼は悲しい過去を背負い、生きる意欲を失っていた。そんなある日、休暇で帰途につくため乗っていた飛行機が墜落。彼を含め僅かばかりの生存者は、極寒の大雪原に取り残されてしまう。寒さに震えながら救助隊を待つ彼らであったが、血に飢えた野生の狼が彼らを取り囲み…。
『狼の死刑宣告』のイーアン・マッケンジー・ジェファーズによる短編小説を、『クレイジー・ドライブ』のジョー・カーナハンが映像化したサバイバル・アクション。製作にリドリー&トニー・スコットらも。
登場人物の内面やドラマなど生まれる余裕もなく人が無情なまでにあっけなく死んでいく様に、圧倒的な力を持つ自然を前にした生身の人間の無力さをまざまざと見せつけられた本作。飛行機が墜落すれば死ぬし、大怪我を負い治療を受けられなければ死ぬ。運良くそこを生き延びたとしても、氷点下20度にもなる環境では寝てるだけでも死ぬ。しかも、この過酷な環境下を生き抜く腹を空かせた狼の群れが彼らを取り囲み、一人ずつ餌食にしていく。武器を持たない人間は、動物一匹に対しても無力となる。そして、その無力な人間に出来ることは、美しく大切な思い出を胸に死を受け入れることのみ。
この過酷な状況を、映画的な希望や妥協をとことんそぎ落として描き切った本作。風景も変わり映えせずドラマも生まれないまま淡々と進む作品ではあるが、その背景とスタイルがあったからこそ、見失っていた生の意味を再確認し、その生の絶頂で死を迎えようとする主人公の姿がより浮き彫りになったのではと。
妻を亡くすと同時に生きる意味も失った主人公。本作は、そんな主人公が過酷な経験を通し「やっぱり生ーきよ!」となる作品ではない。失ったものは戻ってこないし、彼にとってはそれがすべてであることにも変わりはない。かといって、死にたがりの男のやる気のない様を描く作品でもない。ちょっと私の文章力では表現する自信がないのだが、自ら命を捨てるのではなく、ある一瞬に生を凝縮し全うして死を迎える男の姿を描いている。エンドクレジット後のシーンで聞こえる主人公の呼吸音に、「助かったんだ!ハッピーエンドだ!」と捉える方もおられるかと思うが、私にはそれが生を全う出来た安堵の最期の一呼吸に思えてしまう。捉え方の違いではありますが、それもハッピーエンドには変わりなし。そんな複雑な主人公の強さと弱さを表現して見せた、『ラン・オールナイト』のリーアム・ニーソンの見事さたるや。安心印のアクション俳優ってイメージが強まっていただけに、こういう本来のリーアム・ニーソンの巧さを見れたのも嬉しかったなぁと。
そんなリーアムに目を奪われがちな作品ではありましたが、『ウォーリアー』のフランク・グリロや、『ゾディアック』のダーモット・マローニー、より線の細くなったジャレッド・レトっぽかった『クレイジーズ』のジョー・アンダーソンら女っけのないキャスティングも印象的だった一本で。
リーアムならどんな動物にでもボス認定されそう
↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓
あのシーンでは死ななくても、結局はドコかしら雪の中で死ぬのだと。
いっていまえば絶望的!な映画なんですけど、その前の彼らの死に様のありようが、生きるということに対してるような感じがして、改めて生きるというのは死ぬという事と同じなんだなあと。
まあ結局は大自然の前には人間は無力…ってのを痛感する話なんですけどね。
これまでどう生きてきたか、そうしてどう最期を迎えるかってのを描いてた作品ですよねぇ。自らの死に様を文字通り必死に選んだ主人公の姿にも、いろいろと考えさせられましたねぇ。