1982年 アメリカ映画 96分 アクション 採点★★★★
平日の昼間に映画館へ行くことが多い私。そうすると、劇場内には結構ご年配の方々が多いんですよねぇ。ふと何を観に来てるのか興味がわいて会話に耳を傾けてみると、どうも“今時間から丁度観れる映画”であって別に目的の作品はないご様子。もしかしたらその鑑賞姿勢に腹を立てる映画ファンの方もおられるかも知れませんが、正直私はその気軽さが羨ましく。私自身の時間的・経済的余裕のなさがそうさせてるだけではあるんですけど、バカ高い料金で一本しか観れない現状を踏まえると、やっぱり「ヨシ!これだけは映画館で頑張って観よう!」と決心しないと軽々しく劇場に足を運べませんし。家族総出となると、それこそ大イベントになっちゃいますしねぇ。“気軽さ”がないってのは、娯楽の置かれた状況としては“悪い”と言わざる得ない気も。そんなことが、興味のない作品であっても「同時上映だし」と気軽に観れたその昔、全くノーマークだった『サイコ2』との組合せが当時自分の中で大当たりであった本作を久々に観直してみて、ちょいとばかし頭をよぎりましたよと。

【ストーリー】
強盗殺人の罪で収監されていたギャンズが共犯者ビリー・ベアの手助けで脱獄し、サンフランシスコへと逃亡する。ギャンズらに同僚を殺された刑事ジャック・ケイツは、ギャンズのかつての仲間で服役中のレジー・ハモンドを48時間限定で仮出所させ、共にギャンズらを追うのだが…。

刑事と犯罪者のコンビが凶悪犯を追う、『ウォリアーズ』のウォルター・ヒルによるバディ・アクション。脚本にはヒルの他、『刑事ジョー/ママにお手あげ』のロジャー・スポティスウッド、本作以降『ダイ・ハード』などを手掛け大ヒット脚本家へと上り詰めるも、『ハドソン・ホーク』でミソが付いて以降珍作脚本化へとなだれ落ちるスティーヴン・E・デ・スーザらが。また、頭の中で思いだそうとすると『コマンドー』とごっちゃになってしまう音楽を担当したのは、先ごろ惜しくも亡くなってしまったジェームズ・ホーナーが。
タイトルになってる割に時間制限は然程重要でもないし、バラバラだった関係がタイトになる過程も路地裏で殴り合いで済んでしまう、なにかと大雑把な印象が否めない本作。似たような場所をグルグル追い回してるだけの追跡劇も然り。ただ、本作の魅力はそんなところに見出すものではなし。
バディ・アクションの面白さはコンビ感の違いが大きければ大きいほど増すものだが、それが白人と黒人であり、刑事と犯罪者であり、ニック・ノルティとエディ・マーフィである本作は、そういう意味では合格点どころか限りなく満点。動きの遅さを桁外れのパワーでカバーするブルドーザーのようなジャックと、足りないパワーをスピードと口八丁手八丁でカバーするレジー。バディ・アクションを謳いながらもそこを描けてない作品が多いのだが、本作はシッカリと互いの足りない部分を相手がカバーする“コンビの妙”ってのを描いているのが素晴らしい。また、大型の闘犬のようなニック・ノルティと猫系のエディ・マーフィを配することで、そのキャラクターの違いを見た目一発で表現できたってのも大きい。もともとはクリント・イーストウッドとリチャード・プライヤーの組合せを想定して企画されてたそうですが、やはりニック・ノルティとエディ・マーフィだったからこそ生まれた面白さだったのではと。キャスティングありきと言われればそれまでだが、そもそもキャスティングが成功したってこと自体が大変立派なことですし。

ジャック・ケイツに扮した、『ウォーリアー』のニック・ノルティ。若干だぶついた巨体にサラサラの金髪をなびかせ、常に不機嫌という絵に描いたようなパワータイプのタフガイを演じているのだが、これが全く嫌味にならないってのがニック・ノルティの魅力。仲間とは軽口も叩くけど、恋人相手には言葉が足りなくなって喧嘩ばかり。その一方で、時にはイタズラをするお茶目さを見せたり、なんだかんだと恋人に気を遣ってたりする優しさを見せたりする、もう弟子にしてもらいたいほどの男のお手本を好演。初めて観てから30年以上経ちますが、いまだに“タフガイ”というと真っ先にこのニック・ノルティが浮かんでしまうほどの強烈な印象を。中華街の靄の中からすっと出てくるニック・ノルティのシビレることったら。
一方のレジー・ハモンドに扮したのが、本作が映画デビューとなる『大逆転』のエディ・マーフィ。サタデー・ナイト・ライブでの乱暴なまでの面白さは控えめで、後ろにドッシリ構えるニック・ノルティのサイドキックに徹してる印象がファンとしては若干物足りないが、この微妙なバランス感覚こそが本作の面白さを作り上げてたってことを、エディが前に出た続編『48時間PART2/帰って来たふたり』で気づかされることに。
その他、赤毛で勝気な美女だけでしかないもったいない扱いが残念だった『IT/イット』のアネット・オトゥールや、『ウォリアーズ』と同じ役名のデヴィッド・パトリック・ケリー、ヒル作品常連組であるジェームズ・レマーにソニー・ランダム、『ロックアップ』のフランク・マクレー、あんまりな続編で悪役に豹変していた『シュワルツェネッガー/レッドブル』のブライオン・ジェームズ、『ビバリーヒルズ・コップ』でもエディと共演するジョナサン・バンクスらが共演。また、ビング・クロスビーの孫娘っていうより“新スタートレック”のターシャっての方がピンとくるデニース・クロスビーや、見つけるとちょっとした隠れキャラを見つけたかのように嬉しくなる『ランボー』のクリス・マルケイらの顔も。

同じ過ちを繰り返さないってのもタホガイのお手本
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