2015年10月12日

ウォリアーズ (The Warriors)

監督 ウォルター・ヒル 主演 マイケル・ベック
1979年 アメリカ映画 92分 アクション 採点★★★★

若い映画ファンの方々にはちょっとピンと来ないかも知れませんが、かつてのニューヨークって今で言うリオやヨハネスブルグ並みの犯罪都市ってイメージだったんですよねぇ。曲がり角を一つ間違えたら命に関わるみたいな。ただ、荒れ暮れてるだけじゃなく同時にカルチャーの最先端でもあったので、魅力とリスクが混在するエネルギッシュな都市でも。そう言えば、最近はそんなに色濃く感じることが少なくなりましたけど、その都市ならではの味が出た“都市映画”ってのも多かったですねぇ。ニューヨークはもちろんのこと、シカゴ、ロス、サンフランシスコ、ニューオリンズなどなどと、敢えてテロップ出さずとも舞台が分かるような作品が。

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【ストーリー】
ニューヨーク最大のギャングチーム“リフス”のリーダー、サイラスの呼びかけによりブロンクスの公園に集結した街中のギャングチームたち。しかし、演説の最中に“ローグス”のリーダーであるルーサーによりサイラスは暗殺され、そのルーサーによって“ウォリアーズ”が濡れ衣を着せられてしまう。街中のギャングに命を狙われながら、“ウォリアーズ”の面々は地元コニーアイランドを目指すのだが…。

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すっかり元気が無くなってから久しい『ダブルボーダー』のウォルター・ヒルが、その絶頂期に放った非常にストイックなアクション。製作には80年代ハリウッドを象徴するフランク・マーシャル、ローレンス・ゴードン、ジョエル・シルヴァーらの名前が。
ブロンクスからコニーアイランドまで逃げる。文字にすればそれだけの物語だし、距離にしても35キロほどの逃避行。着替えて地下鉄にでも乗れば2時間も掛からず終わる旅なのだが、これがもう手に汗握る握る。
ひと駅離れればまるで別の町に迷い込んだかのようなニューヨークの多様性を上手く活かし、完全アウェイの状況にウォリアーズの面々を放り込んだ本作。野球のユニフォームにフェイスペイント姿でバットを振り回しながら襲い来る“ベースボール・フューリーズ”ら、個性豊かにも程があるギャングらがその土地土地で襲いかかって来る様は、大都会を舞台にしながらもジャングル奥地でのサバイバルを彷彿させるスリリングさと絶望感が。また、濡れ衣を晴らすために奔走したり、チーム内のいざこざに下手に時間を割いたりせず、シンプルな物語が生み出すスピード感を重要視したってのも、本作が古びることなく面白い作品であり続ける要因となったのではと。派手さと量に走らなかったパンチ力のあるアクション描写も、この変わらない面白さに貢献。また、女性の扱いに長けてるとは言い難いウォルター・ヒルであるが、今回はギャングの後を追い続ける生き方しかできない女性キャラだっただけに持て余すこともなく、結果的にドブ板街のロミオとジュリエットみたいな側面が生まれていたなぁと。
イーグルスのジョー・ウォルシュによる“イン・ザ・シティ”や、口元しか映らない黒人DJなど音楽の使い方にも冴えわたっていた、まさにウォルター・ヒルの本領が発揮された一本で。

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主人公のスワンに扮したのは、本作で注目の若手として脚光を浴びるも、『メガフォース』『バトルトラック』と記憶にだけは強烈に残り続ける作品に出演してしまい、その後姿を見ることがめっきりとなくなってしまったマイケル・ベック。ただ、本作では体力より知力が若干上回ってそうな若きリーダーのスワンを好演。リーダーとしての絶対的安心感はないが、少人数を率いるには十分なカリスマ性ってのがその豹のような猫系の顔立ちからムンムンと。
また、本作がデビューとなる『コマンドー』のデヴィッド・パトリック・ケリーの存在感も強烈。卑屈で卑劣で卑怯という、“卑”の付く役柄を演じさせたら右に出る者が居ないデヴィッド・パトリック・ケリーだけに、タイマンなら負けそうにないが、その後に最高に嫌な嫌がらせをしてきそうなルーサー役にドハマり。アドリブだったという「ウォ〜リア〜ズゥ♪」と指に嵌めた瓶を鳴らしながら歌う様の不快感も絶品。
その他、『ウェドロック』のジェームズ・ラマーや、若くて痩せてたんで声を聞くまで分からなかった『ロックアップ』のソニー・ランダムらウォルター・ヒル常連組や、『遊星からの物体X』のトーマス・ウェイツらも印象的な一本で。
本作を語る上で避けられないのが、やはりチームカラーがハッキリ過ぎるほど出ているギャングの面々かと。先に挙げた“フューリーズ”を始め、男どもを巧みに罠に嵌める女郎蜘蛛集団のような“リジーズ”、天パにオーバーオールっていう加入するに躊躇しちゃいそうな“パンクス”など吹っ飛んだキャラが多いのが魅力。中でも個人的にお気に入りなのが、集会にすら呼ばれない三流ギャング“オーファンズ”。ドブネズミのような弱々しい風貌と、火炎瓶ひとつで「キャー!」と散り散りになる風貌に負けない弱々しさが、なんかもう哀愁漂っちゃってて嫌いになれず。他のチームが手を出そうとしない、なんの魅力もない縄張り内で天下を謳歌してるのかと思うと健気で健気で。

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嫌われることで輝く才能

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posted by たお at 20:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | 前にも観たアレ■あ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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