2015年08月03日

プリデスティネーション (Predestination)

監督 マイケル・スピエリッグ/ピーター・スピエリッグ 主演 イーサン・ホーク
2014年 オーストラリア映画 97分 SF 採点★★★★

様々な局面で様々な選択をしてきた結果が今の自分と状況を作り上げているんですけど、振り返ってみると“やっちまった選択”ってのも少なくなし。というか、そんなんばっか。もし過去に戻れるんだったら、過去の自分にもうちょっとマシな選択を進言してやりたい気もしますが、後悔を積み重ねた“今の自分”と難を逃れ続けた“理想の自分”とでは、圧倒的に後者の方がアホっぽいので、たぶん余計な進言はしないんだろうなぁと。そもそも誰かの意見を素直に聞くような人間でもありませんし。

pred02.jpg

【ストーリー】
女性として生まれ孤児院で育ったジェーンは、成長し最愛の男性と出会い彼との子を宿すが、突然の別れと彼女自身の得意な体質ゆえ、出産後男性として生きることを余儀なくされてしまう。更に生まれたばかりの子供を何者かに誘拐され、ジェーンは絶望のどん底を生きていた。そんなジェーンの壮絶な身の上話を聞いていたバーテンダーは、彼女に復讐のチャンスを与えることを約束し、二人で7年前へとタイムスリップをするのだが…。

pred03.jpg

ロバート・A・ハインラインの短編“輪廻の蛇”を、『アンデッド』のスピエリッグ兄弟が脚色/監督を務めて映像化したSFサスペンス。
奇抜な状況設定と凝った構図のアクションが魅力の反面、そこに頼りっきりの印象もあるスピエリッグ兄弟なんですけど、今回は原作そのものが超絶に奇抜なだけあってジックリと物語を描くことに集中した感のある一本。冷静に考えれば「じゃぁ、最初の○○はどうやって産まれたの?」とか、爆弾魔の○○はどの時点からやって来たのか/居続けたのかとか、あれやこれや所謂パラドックス的な問題が目に付いてしまうんですけど、そこが逆に細かなルールに縛られ過ぎないSF全盛期の面白さってのを生み出している。
一発ネタでもあるので物語に触れれば全部ネタバレになっちゃうので控えさせてもらいますけど、“選択と宿命”ってのをベースにしながらも、その背後に全てを見通している神/悪魔の如き上司の存在があるので、どう足掻こうが逃れられないというか仕組まれているかのような不条理感が漂っているのも好みだった一本で。

pred04.jpg

主演は『デイブレイカー』に続いてスピエリッグ兄弟作品への参加となったイーサン・ホーク。いっつもイーサン・ホークについて「卑屈な眼差しが堪らん!」と絶賛させてもらってるんですけど、今回もそう絶賛せざるを得ない卑屈さ。充分過ぎるほどハンサムなのに、奥底に恨み辛みがパンパンに詰まった、そして常人なら見ることのないものをウンザリするほど見つめてきたかのような眼差しが、まさにこの物語にピッタリの完璧キャスティング。
ただ、このイーサン・ホーク以上に本作の顔となっているのが、オーストラリアの新進女優セーラ・スヌーク。複雑過ぎるにも程がある役柄をこなした地力もさることながら、ちょいとガービッジのシャーリー・マンソンを髣髴させる、劣等感とプライドと怒りと妬みと困惑が入り混じり、局面毎に違う顔を出してくるその表情の素晴らしさたるや。ちょいと今後に期待したくなる女優の一人で。
その他、全部を見透かしているような気持ちの悪さが絶妙だった『オール・ユー・ニード・イズ・キル』のノア・テイラーなんかも印象的だった一本で。

pred01.jpg
自分だったら「まぁ色々あるけど頑張ってね」くらいしか言えないなぁ

↓↓お帰りの際にでもぽちりと↓↓
blogramのブログランキング   

        

        

posted by たお at 11:01 | Comment(2) | TrackBack(16) | 前にも観たアレ■は行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>「じゃぁ、最初の○○はどうやって産まれたの?」

もうこれが本当に疑問なんですけど、
それこそ=「卵が先か、鶏が先か」って問いで、「めんどり」って答えるジョークがありましたけど、
この物語で言えば女のサラ・スヌーク→男のサラ・スヌーク→子供(卵)
ってことになる、ってことな訳ですよね…。
Posted by とらねこ at 2015年08月06日 13:09
とらねこ様、こんばんはー!
ある程度理屈が通らないと成立しづらくなった最近のSFでは味わえない、豪快な大技ではありましたけど、その不条理感も含めて楽しめる一本でしたねぇ。
Posted by たお at 2015年08月10日 21:10
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

プリデスティネーション(Predestination)
Excerpt:  SF小説の大家ロバート・A・ハインラインによる短編小説「輪廻の蛇」を、イーサン・ホーク主演で映画化。時間と場所を自在に移動できる政府のエージェントが、凶悪な連続爆弾魔を追うためタイムトラベルを繰..
Weblog: 田舎に住んでる映画ヲタク
Tracked: 2015-08-06 07:12

プリデスティネーション
Excerpt: 始まりはどこ? 公式サイト http://www.predestination.jp 原作: 輪廻の蛇 (ロバート・A・ハインライン著/ハヤカワ文庫)監督: ピーター・スピエリッグ ,マイケル・スピエ..
Weblog: 風に吹かれて
Tracked: 2015-08-06 07:54

「プリデスティネーション」、時空を超えるエージェント
Excerpt: おススメ度 ☆☆☆ SF映画好き、特に時空映画好き ☆☆☆☆ SF小説の大家ロバート・A・ハインラインによる短編小説「輪廻の蛇」の映画化。(題名は英語の題名よりこの方がしっくりくる) ただし映像..
Weblog: ひろの映画日誌
Tracked: 2015-08-06 08:37

映画「プリデスティネーション」
Excerpt: 2015/3/15、ユナイテッドシネマ豊洲。5番スクリーン。 70席の小さいシアターで何度か来たはずだが、記載見つからず、 6番とほぼ同じ構成。 6番スクリーンでは「E列で高さ丁度」とあったので、E..
Weblog: ITニュース、ほか何でもあり。by KGR
Tracked: 2015-08-06 09:46

プリデスティネーション
Excerpt: PREDESTINATION 2014年 オーストラリア 97分 SF/サスペンス R15+ 劇場公開(2015/02/28) 監督: マイケル・スピエリッグ (ザ・スピエリッグ・ブラザーズ)..
Weblog: 銀幕大帝α
Tracked: 2015-08-06 13:57

『プリデスティネーション』
Excerpt: 1970年11月6日。ニューヨークは連続爆弾魔フィズル・ボマーの脅威にさらされていた。青年ジョン(サラ・スヌーク)は場末のバーのバーテンダー(イーサン・ホーク)に、女の子として生まれ孤児院で育ち、18..
Weblog: beatitude
Tracked: 2015-08-06 16:00

プリデスティネーション 【劇場で鑑賞】
Excerpt: オーストラリア出身のピーター&マイケルの スピエリッグ兄弟監督とイーサン・ホークが 2009年のヴァンパイア映画『デイブレイカー』 以来再びタッグを組んだSFサスペンス映画 『プリデスティネーション』..
Weblog: 映画B-ブログ
Tracked: 2015-08-06 17:40

「プリデスティネーション」
Excerpt:  (原題:Predestination)宣伝ポスターは何やら“SF大作”みたいな雰囲気だが、実際は上映時間は短く、小品とも言えるオーストラリア映画だ。出来の方は悪くない。ウィットに富んだ短編小説を読..
Weblog: 元・副会長のCinema Days
Tracked: 2015-08-06 19:39

ショートレビュー「プリデスティネーション・・・・・評価額1650円」
Excerpt: ウロボロスの宿命。 巨匠ロバート・A・ハインラインの傑作短編小説、「輪廻の蛇」の初の映像化。 異色のヴァンパイア映画「デイブレイカー」で注目された、ドイツ出身オーストラリア育ちの双子の監督スピ..
Weblog: ノラネコの呑んで観るシネマ
Tracked: 2015-08-06 21:26

プリデスティネーション  監督/ピーター&マイケル・スピエリッグ
Excerpt: 【出演】  イーサン・ホーク  セーラ・スヌーク 【ストーリー】 1970年、ニューヨーク。とあるバーを訪れた青年ジョンは、バーテンダーに自身が歩んだ人生を語る。それは女性として生まれて孤児院で育ち..
Weblog: 西京極 紫の館
Tracked: 2015-08-06 21:47

プリデスティネーション/PREDESTINATION
Excerpt: 先月一番たのしみだったこれ。  やっと観れた〜 同じく、イーサン主演の 人口の95%がヴァンパイアになってしまった未来を描いたSF「デイブレイカー」 の、オーストラリアの双子監督ピータ..
Weblog: 我想一個人映画美的女人blog
Tracked: 2015-08-06 23:45

存在の環/輪廻の蛇〜『プリデスティネーション』
Excerpt:   PREDESTINATION  1970年のニューヨーク、連続爆弾魔による爆発が相次ぐ夜の街。ある酒場 のカウンターに、一人の男(サラ・スヌーク)がやってくる。バー..
Weblog: 真紅のthinkingdays
Tracked: 2015-08-07 08:47

プリデスティネーション ★★★
Excerpt: ロバート・A・ハインラインによる「輪廻の蛇」を基にしたSFサスペンス。時空を往来する犯罪者を取り締まるエージェントと出会い、その仲間になった青年が繰り広げる戦いと彼が抱える宿命を活写する。メガホンを取..
Weblog: パピとママ映画のblog
Tracked: 2015-08-07 12:37

語りとSF、そして輪廻へと
Excerpt: 3日のことですが、映画「プリデスティネーション」を鑑賞しました。 1970年 ニューヨーク。とあるバーを訪れた青年ジョンはバーテンダーに自身が歩んだ壮絶な人生を語る。 そんなジョンにバーテンダーは自..
Weblog: 笑う社会人の生活
Tracked: 2015-08-08 05:44

『プリデスティネーション』を観てきた!?
Excerpt: 『プリデスティネーション』を観てきました。 事前の予告やら説明文では明かされない内容でした。タイムトラベルものでは絶対手をつけてはいけないと言われていたパラドックスを描いてしまった。なぞを描いている..
Weblog: 映画観たよ(^^)
Tracked: 2015-08-09 22:25

ショートレビュー「プリデスティネーション・・・・・評価額1650円」
Excerpt: ウロボロスの宿命。 巨匠ロバート・A・ハインラインの傑作短編小説、「輪廻の蛇」の初の映像化。 異色のヴァンパイア映画「デイブレイカー」で注目された、ドイツ出身オーストラリア育ちの双子の監督スピ..
Weblog: ノラネコの呑んで観るシネマ
Tracked: 2015-08-12 12:03