1991年 アメリカ映画 107分 サスペンス 採点★★★★
年に1・2回は同じ場所の夢を見るんですよねぇ。それも、ある決まった瞬間の夢。ちょっと広めの道路の路肩に車を停めてUターンするだけの夢と、夕暮れの高台から眼下に広がる港町の家々に電灯が点いていく様を見つめるだけの夢。どちらの場所も行った記憶はないんですが、たぶん忘れても全然構わないような小さな出来事が記憶のどっかに引っかかってるのか、子供の頃に見たTVか映画のワンシーンなのかも知れませんねぇ。でも、その夢を見た日は何とも言えない懐かしさと温かさの余韻に包まれて、結構一日ご機嫌だったりも。
【ストーリー】
記憶と声を失った女性の身元調査を行うこととなった私立探偵のマイク。手掛かりも殆どなく調査が難航する中、女性に対し記憶を遡る逆行催眠治療を実施することに。いつしか心が惹かれあう関係となった二人であったが、逆行催眠により彼らが40年前に起きた殺人事件の被害者と加害者であることが分かり…。
『ゲット・ショーティ』のスコット・フランクによる脚本を、『マイティ・ソー』のケネス・ブラナーが監督/主演を務め映像化した輪廻転生サスペンス。製作総指揮を『3人のゴースト』のシドニー・ポラックが務めているが、シェークスピアばっかの印象あるブラナーに対し「アメリカの現代劇はこんな感じだよ」と指南でもしてたんでしょうかねぇ。
40年前に愛する妻を惨殺し死刑となった夫。彼らの生まれ変わりが現代に出会い運命に導かれるが如く愛し合うも、過去の惨劇までもが繰り返される。そんな、シーンが進む度に「あらま!あらやだ!」と昼ドラ鑑賞中の奥様のような声を上げてしまう、二転三転してまたちょっと捻る物語が魅力の本作。催眠術中の狭い視野の中で自分の正体が判明する場面なんて、その見せ方の巧さに唸る以前に「あらぁー!」と素直に驚きの声を上げちゃいましたし。
公開当時でもちょっと時代からズレた古さを感じる作品では確かにあるが、ヒッチコック熱を拗らせたデ・パルマが撮ったかのような王道演出は、終戦後の煌びやかだが急速に病みつつあるアメリカを舞台にした場面の多い本作に措いて、ピッタリのクラシカルさではと。まぁ、老人が文字通り飛び掛ってくる演出には、「さすがにないよなぁ…」とは思いましたけど。
また、当時はまだおしどり夫婦として有名だったブラナーと『パイレーツ・ロック』のエマ・トンプソンとの息の合いっぷりも見事で、夫婦がイチャイチャしてるだけでもあるんですが、“運命に抗えない”感は出ていたかと。確かに「アメリカ人ってなんかオーバーで声がでかいよね!」ってイメージだったのか、現代のシーンでも普段の細やかさからは想像できないオーバーアクションに驚かされましたが、舞台が過去になった途端にいつもの二人に戻り輝きだすのは流石だなぁと。
しかしながら、本作で強い印象を残すのは案外主演のふたりではなく、『スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい』のアンディ・ガルシアと、『ナイト ミュージアム2』のロビン・ウィリアムズだったりも。
色男真っ盛りのアンディ・ガルシアはその色気全開に間男疑惑のジャーナリストを好演し、ロビン・ウィリアムズはスピード全開のコメディ役者から、真面目な役柄もそして更に狂気を孕んだ役柄も出来る役者へとシフトし始めていた時期だけに、道を踏み外すと同時にネジも外れ始めた元精神科医役を熱演。当時はこのロビン・ウィリアムズに大いに驚かされたもので。
その他、現代の場面に時代劇感を強烈に出させていた『ヒア アフター』のデレク・ジャコビや、『ジュラシック・パーク』のウェイン・ナイト、『ラブソングができるまで』のキャンベル・スコットらも印象的な一本で。
来世では上手くいけばいいですね
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