ラブソングができるまで (Music And Lyrics)

監督　マーク・ローレンス　主演　ヒュー・グラント
2007年　アメリカ映画　104分　ラブロマンス　採点★★★★

私の部屋や車の中で流れているデュラン・デュランやジャパン、トーマス・ドルビーにヒューマン・リーグ、果てはスクリティ・ポリティの曲を耳にした知人は間違いなく「おぉ!?懐かしーねー！コレ、どーしたの？」と、古き良き時代を思い出したかのように目を輝かせて私のＣＤラックを漁り始めるのだが、これらの曲を日常的に聴いている私には“懐かしい”という言葉がピンと来ない。年間に購入するＣＤの半数以上は以前レコードで持っていたアルバムの買い直しだし、一昨年の年間ベストアルバムがカジャグーグーの“アイランド”だったりもする。マズイなぁ…。後ろ向きに生きているどころか、完全に立ち止まっているなぁ。



【ストーリー】
８０年代に一世を風靡した人気バンド“ＰｏＰ”のボーカリスト、アレックスは、今ではすっかりと忘れ去られ、細々とドサ回りをして生計を立てていた。そんなある日、若者から絶大な人気を誇る歌姫コーラから新曲の依頼が入る。しかし、アレックスは作詞が苦手。悪戦苦闘するアレックスだったが、たまたま観葉植物の手入れに部屋に来ていたソフィーに作詞のセンスを見出したアレックスは、ソフィーと二人で新曲作りに取り組むが…。



未だ運転中などにふと「サ〜イキ〜ックマ〜ジ〜ック♪」と、ＧＩオレンジを口ずさんでしまう私のような人間には堪らない、８０年代テイストに溢れたラブロマンス。まぁ一言に“８０年代”と言っても、８０年〜８２年、８３年〜８５年、８６年〜８９年でサウンド・ビジュアル共に大きく変化をしており、個人的にどっぷりとツボなのがニューロマンティック全盛だった８３年前後。それ以降はパンクやら６０年代のロックやらと逆行を始めちゃってたので、私の中での“８０年代”とはちょっと違う。このように数年単位でサウンドやファッションが急激に様変わりした８０年代だからこそ、それぞれの年の音を聴くだけで、当時のことをまざまざと思い出させるだけの力を持っているんだなぁと。



で、本作に登場する架空のバンド“ＰｏＰ”。オープニングに流れる“Pop! Goes My Heart”のベッタベタなまでに８０年代のプロモで、脳ミソが８５年から一歩も進歩していない私は、もう鷲掴み状態。“Meaningless Kiss”のイントロのサックスとラテンギターは、身悶えするほどワム！の“ケアレス・ウィスパー”だ。そういえば、郷ひろみと西城秀樹も歌ってたなぁ、コレ。“抱きしめてジルバ”とかいうタイトルで。秀樹はさておき、サウンドやビジュアルはワム！というよりはブロスに近い気もするＰｏＰではあるが、劇中での位置づけはデュラン・デュランの中にワム！がいる感じ。実際、ルーク・ゴスとマット・ゴスをモデルにした話よりは、ジョージ・マイケルとアンドリュー・リッジリーの話の方が分かりやすいですし。なにせ、人気絶頂だった当時ですら“数年後には行方不明になってそう”な雰囲気ありありでしたから、アンドリューは。あと、ホール＆オーツのオーツの方も。



もちろん本作の主人公はジョージ・マイケルの方ではなく、アンドリューの方。「もう一度でっかく当てよう！」といった野心があるわけでもなく、過去の栄光をひけらかす悲しいまでの嫌味さを持っているわけでもない、「遊園地での営業があって幸せだぁ」ととことん悲観的だからこそ持ちえる楽観性と謙虚さが、ますます主人公をアンドリューっぽく見せてくれる。再びスポットライトに照らされることのプレッシャーから逃れたい弱さも含め。
そんな、打ちのめされ過ぎて達観してしまったかのような主人公を持つ本作の物語は、“曲作りを通して愛を知る”と、まんまタイトル通りのいたってシンプルなもの。これといって大きな起伏がストーリー上に存在するわけでもない。ドリュー・バリモア扮するソフィーが抱えるトラウマも劇中で解決されるわけでもなく、エンドクレジットに流れる字幕でなんとなく解決されている始末。「じゃぁ、８０年代の音楽ネタで年寄りをくすぐるだけの映画か？」といえば、そうでもない。確かにストーリー上は物足りなさも感じるが、一般人とかつてのスターの恋物語という日常の中に微妙に非日常が入り込む本作には、大袈裟なまでのドラマチックな展開は似合わない。そうしないと、日常性が霞んでもしまう。また、劇中で語られ原題にもなっている“第一印象である音と人間性が見える歌詞”という、音楽を人間関係、特に男女関係に例えた説明は非常にベタな反面言葉選びが巧みで、ストレートに心に響く。この言葉選びの巧みさは劇中の会話隅々に活かされ、会話の妙を存分に楽しめる結果となっている。まぁ、８０年代ネタで思う存分くすぐられ、それらの音でかつての良い思い出と、遥かにそれを上回る、頭をよぎっただけで大声を上げてかき消したくなるような思い出を持つ、８０年代をどっぷりと過ごした方々の方がより一層楽しめるのですが。



８０年代は人気者だった元ポップアイドルを演じるのに、ジョン・テイラーにデヴィッド・シルヴィアンを足し、デヴィッド・ボウイ的に加齢を重ねたような『ラブ・アクチュアリー』のヒュー・グラントの右に出る者はいない。歌うの大好きですし。「なんでこんなに肩パットが必要なんだ？」と思うほどガッシリとしたジャケットや、見た目のインパクトだけが重視されたかのように派手なニット、やたらとハイウェストで裾だけが異常に細いパンツなど、思い出したくもないかつて自分が着ていた服の数々を思い出させてくれるアレックス役のヒュー・グラントは、「本当にかつてはポップスターだったんじゃないのか？」ってほど板に付いている。世間に忘れ去られている現状を受け入れようとはしているが、若干抵抗が残っているかのような困惑しきった表情も、これまた良い。



そんなＶＩＶＡ　ＲＯＣＫのグラビアから飛び出してきたようなヒューと、まだ若いのに８０年代の伝道師のような仕事振りが目立つ『２５年目のキス』のドリュー・バリモアの組み合わせに、“『ウェディング・シンガー』よ、もう一度”的な「どや？こんなんが観たいんやろ？」と狙い過ぎの臭いを当初感じていたのだが、やっぱりドリューはこんなんが良く似合う。胸を張って「えぇ、こんなんが観たいんです！」と言い切れるほどに。痩せたのか、また減胸手術をしたのか胸がペッタンコになっていたドリューだったが、クルクルと良く動く目と同様にコロコロ変わる表情が非常に魅力的。『ウェディング・シンガー』に流れる名曲“Grow Old With You”を髣髴させるキラーチューン“Don't Write Me Off”で感極まるドリューの姿は、ついついこっちまで釣られてしまいそうなほど素晴らしい。実際“Don't Write Me Off”は劇中のメインの曲である“Way Back Into Love”以上に良い曲で、この曲の余韻に浸りながら劇場を出れれば良いんでしょうが、エンドクレジットでまた流れる“Pop! Goes My Heart”が結果的に延々と頭の中に流れることに。
ヒューとドリューばかりが印象に残る映画ではあるが、歌姫コーラ役のヘイリー・ベネットの印象もなかなか強烈。子供のような顔と凹凸のない身体だが妙に肉感的な彼女を前にして、ロンダの夫ゲイリーのようにデレデレした顔になっていたことは、書くまでもなく明白ですが。
それにしても、８０年代にまだ物心がついていなかった世代にはワケの分からないカタカナ名ばかりが羅列しているレビューになってしまいましたねぇ。


ドリューを口説くには、まず作曲から

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Comments

たおさんのレビューを読んで、”POP〜”の曲がまた、頭の中をエンドレスで流れてます。。。
覚えやすい曲というか、いつまで〜も、忘れられない曲です〜(^_^;)

Posted by りら at 2007年05月08日 19:53

私も胸を張って「えぇ、こんなんが観たいんです！」と言い切れまーす！
ドリューは一時期のメグ・ライアンを凌ぐ魅力かも・・・。
そういえばアダム・アントとかデビー・ギブソンとかホントにどこ行っちゃったんでしょうね・・・。
若い観客には何のことだかサッパリだったと思いますが（笑）
「ヒュー様」などと呼ばれていた時代はそんなに好きじゃなかった彼ですが、
最近は眼が離せません。困った笑顔をやらせたら�ｂPだし。
「ラブ・アクチュアリー」の首相のダンスも良かったけど、今回のあのＰＶも強烈な印象です。

Posted by みゅうた at 2007年05月08日 22:21

こんばんは〜
ちょっと予想した通りの書き出しでした〜（笑）
八ちゃんはアメリカのPOPというとCARSを思い出しますが、アレックスはイギリス出身の設定ですよね！
帰りにオムニバスのベストヒット'80もののCD買っちゃいましたよ！

Posted by 八ちゃん at 2007年05月09日 00:28

>脳ミソが８５年から一歩も進歩していない私
当時の哀生龍は、ポップ＆アニソン＆ヘヴィメタが共存していましたね。
そんな哀生龍も、“Pop! Goes My Heart”と腰を悪くするあのダンスで、頭の中がいっぱいになってしまいました。
懐かしい昔の歌番組を見たような･･･

Posted by 哀生龍 at 2007年05月09日 06:09

りら様こんばんは〜♪
もういい加減忘れただろうと油断して車を運転していると、「Pop!Goes My Heart〜♪」と口ずさんでいる私。恐るべしＰｏＰ。

Posted by たお at 2007年05月09日 22:04

みゅうた様こんばんは！
ヒューは、自分の居場所を確立してから強いですよねぇ。基本的には似たような役ばかりなんですが、その黄金率とも言えるパターンを見つけた者は強い！

Posted by たお at 2007年05月09日 22:16

八ちゃん様こんばんは！
大方の予想通りの書き出しですｗ
当時は書いた連中以外にもキュアーやらエコバニやらデペッシュやらとイギリス勢ばかり聴いていたので、今回の音はツボでしたねぇ＾＾
鑑賞後はより一層自宅の８０年代ＣＤばかりが流れることにｗ

Posted by たお at 2007年05月09日 22:33

哀生龍さまこんばんは〜♪
８５年はどっぷりとＭＴＶにはまってた頃ですねぇ＾＾
それ以降になるとポッパーズＭＴＶを観るようになって、パンクスにもなって、女好きが更に酷くなってと、順調に転げ落ちてますｗ

Posted by たお at 2007年05月09日 22:35

たおさん、こんばんは〜！
「サイキック・マジック」のサビが、今私の頭の中をぐるんぐるん回ってます(笑）。
私も歌いますよー、「ロック・ミー・アマデウス」とか「ターザン・ボーイ」とか(大笑）。
ところでサブタレを、私のブログのブックマークに入れさせて頂きたいんですが、宜しいでしょうか？

Posted by 偏屈王 at 2007年05月10日 19:58

TBありがとうございました。
ストレートな表現がストレートに響く作品でしたね。
ダサかっこいいヒューとドリューのコンビが楽しかったです。

Posted by たいむ at 2007年05月11日 18:19

TBありがとうございました♪
ヒュー大好きなので大満足ですッ(≧ω≦)!!
ちょっと情けないオヤジキャラばっかですが、それがまたハマってて。
ドリューも超可愛いかったなぁ。

Posted by おたむ at 2007年05月11日 23:39

こんにちは！
私もこういった音楽にドップリ浸っていた世代なので（汗）
思いっきり楽しむ事ができました！
冒頭のＰＶから笑いが止まらなかったし〜
サントラも買っちゃいましたよ。
ヒューとドリューのコンビも良くて、これはＤＶＤ買いです（笑）

Posted by こでまり at 2007年05月12日 22:16

たおさん　はじめまして
TBありがとうございました。

nn~ そうですか〜
私一応（♀）視線でブログに
"カップルで行って〜”と
書いた覚えがあるんですけど
カップルで行って
"えぇ、こんなんが観たいんです”視線に
なっちゃったら　喧嘩になるやも〜？　笑
でもドユーバルモアって天然可愛いですものね。その気持ちわかります。
　
ではまた〜　
（TBさせていただきます）

Posted by mimieden at 2007年05月13日 11:31

たおさん、こんにちは！
ＴＢありがとうございました。
記事の中のＹｏｕ　Ｔｕｂｅで楽しませてもらいました。
ヒュー様を見たい時は、また来ますね。
このサントラを買って、よく聞いてます。

Posted by サラ at 2007年05月13日 16:35

偏屈王さまこんにちは！
コンクリート会社社長の息子達だったかのボンボンが集まったバンドでしたねぇ、ＧＩオレンジ。夜のヒットスタジオくらいでしか見る事がなかった彼らですが、未だにサイキック・マジックのメロディが頭から離れないってことは、それなりにインパクトはあったんでしょうねぇ。
リンクはフリーですので、うちみたいなところでも良ければ、是非＾＾

Posted by たお at 2007年05月14日 13:36

たいむ様こんにちは！
ストーリーはいたってシンプルだったんですが、だからこそストレートに楽しめる作品でしたよね＾＾

Posted by たお at 2007年05月14日 13:37

おたむ様こんにちは！
ちょっと情けないオヤジキャラとは言え、常にモテモテのヒュー。羨ましい限りです＾＾；

Posted by たお at 2007年05月14日 13:40

こでまり様こんにちは！
ある意味、冒頭にあのＰＶを持ってくるのは卑怯ですよねぇ＾＾；身体が逆らえないですものｗ
ラブコメ東西の横綱の顔合わせだったんで、どちらの見せ場も中途半端になるかと思いきや、どちらの味も存分に出ておりましたねぇ。

Posted by たお at 2007年05月14日 13:41

mimieden様こんにちは！
別にドリューの胸が見たいわけではないんですが、イジワルな言い方をすれば“狙いすぎのベッタベタ映画”でもあるはずなのに、ここまで楽しいんだから、やっぱりこういう映画が観たいんだなぁと＾＾；

Posted by たお at 2007年05月14日 13:45

サラ様こんにちは！
明らかに直接カメラ撮りしている無粋なものもあるので、映画好きとしてはリンクを張るのにちょっとばかし迷ったのですが、楽曲の良さでちょっとでも多くの人が劇場に行ってくれたらとも思い＾＾；
ＤＶＤも買いかもしれませんね＾＾

Posted by たお at 2007年05月14日 13:47

リンクの件、ご快諾有難うございます！

＞コンクリート会社社長の息子達だったかのボンボンが集まったバンドでしたねぇ、ＧＩオレンジ
へぇ〜、知りませんでした。
20年後に知る真実・・・って大袈裟か(笑）。

Posted by 偏屈王 at 2007年05月16日 19:26

TB有難うございます。

８０年代に青春のど真ん中にいた僕に
とってＰＯＰの歌は、懐かしさと恥ずかしさが
入り混じる、なんとも言えない名曲になりつつ
あります。

「愛に戻る道」も良かったし、久々に映画見終わった
後、口ずさむ自分に驚きました。

このコンビ、また見たいですね。

Posted by yamasan at 2007年05月16日 23:12

偏屈王さまこんばんは！
まぁ、いつものウロ覚えなのでアテには全くならないんですが、確かボンボンだったかと＾＾；
ミュージックライフかなんかで読んだような気がしたんで＾＾

Posted by たお at 2007年05月17日 20:43

yamasan様こんばんは！
この二人のコンビネーションが良かったのか？となると、また微妙なんですが、お互いの良い部分は消しあわないで出ていましたね＾＾
個人的には、ドリュー映画っていうよりは、ヒュー映画として楽しみましたが。

Posted by たお at 2007年05月17日 20:54

たおさん、こんにちは。
しょっぱなのPOPのプロモはバカウケでした。
デュランデュラン、私もめっちゃ連想しましたよ〜
ヒューもドリューも最高だったけど
ヘイリー・ベネットちゃんもかなり気になりました♪

Posted by kenko at 2007年05月23日 12:59

kenko様こんにちは！
細かい話をしちゃえば、サウンドやビジュアルは87〜88年頃のポップスなのでデュランのそれとは明らかに違うんですが、雰囲気的には充分でしたねぇ＾＾
ヘイリー・ベネットは、ついついデレデレとした顔で見ちゃいました＾＾；

Posted by たお at 2007年05月23日 16:22

こんにちわ！
はい、こんなドリューが見たいです！大好きです！
それにこんなヒューもｗ
80年代はまだまだお子ちゃまだったのでわからんとこも多いですが、
ウォーターベッドとピチピチパンツははっきり覚えてます。
あれに穴あけてみたかったんで（＾＾；

Posted by PINOKIO at 2007年05月24日 11:38

PINOKIO様こんばんは〜♪
ウォーターベッドに穴は分かるにしろ、ピチピチパンツに穴って・・・。何が出てくるか、空恐ろしいじゃないですかぁｗ

Posted by たお at 2007年05月24日 21:52