2005年 アメリカ映画 85分 ドキュメンタリー 採点★★★★
子供の頃、TVのバラエティ番組でよく見かけたのが、そのコントの流れも何もかも暴力的にまで無視し縦横無尽に舞台を走り回る小人の方々。笑いと恐怖が交じり合うギリギリの所に立つまで身体を張り、見る者全てに強烈な印象を与えたもので。でも、いつの間にやらそういった人たちがブラウン管から姿を消すことに。まぁ、良識派とか言う、どの“識”が“良”なのか首を傾がざるをえないような方々が「身障者を笑い者にするなどけしからん」とか言い出したからなんでしょうが。確かに、笑われたくはない人を笑い飛ばすのは失礼な話だけど、笑われたい人を笑うなってのも、もっと失礼な話なのではと。

【ストーリー】
かつては“マーダーボール”とまで呼ばれていた、車椅子同士が激しくぶつかり合う競技、車椅子ラグビー。パラリンピックで金メダルを狙う常勝国アメリカと、かつてのアメリカチームのスター選手でありながら待遇に不満を持ち、今ではカナダチームの監督を務めるジョー・ソアーズ率いるカナダとの対決が始まる。

“自らの誇りの為に祖国を裏切った男”、“自分が起こした事故で親友を四肢不全にしてしまった男”などの役者と、こっそり『マッドマックス』にでも混ざっていそうなマーク・ズパンの強烈なビジュアル、さらには“裏切り者との因縁の対決”と舞台まで揃っておきながら、ドキュメンタリーならではの全くもって意外な結末を迎える見事な一本。彼らを見つめるカメラには彼ら自身が全く望んでいない“憐憫”なんて感情はなく、ストレートにスポーツとしての激しさと驚きを映し出している。もちろん試合外での日常生活を追う中で、彼らの苦労や怒りなども映されているが、乗り越えた人間独自の強さをも感じさせている。彼らとの対比という形で事故により四肢不全になったばかりの青年の姿も追い、現実を理解しながらも受け入れられない苦悩をリアルに伝えていき、そんな彼がマーダーボールに触れることで目に輝きを蘇らせる展開も上手い。

彼らは憐れんでもらいたいわけでも、「がんばったね!」と抱きしめてもらいたいわけでもなく、ただひたすらに勝ちたいだけだ。健常者との優劣なんてのは問題外で、健常者からケンカを売られれば殴りかかっていくのも当然である。“身障者だから出来ない”のではなく、“出来ることはする”、“出来ないことは工夫してする”、“それでも出来なければ別な方法でやる”。「可哀相だから助けてあげますよ」なんて上から物を見ているような手助けは侮辱でしかなく、努力を阻害する行為にしかならない場合も多い。
日本ではなにやらタブー視されている身障者のセックスについても、本作ではなんのことなしに答えてくれる。実際、セックスの問題が非常に大きな割合を占めるのだから、タブー視すること自体に問題があるのではと。
様々な障害を持つ人間が数多くいる。身障者専用の駐車スペースに、しゃぁしゃぁと車を停めれる心の不自由な方々を除いてもだ。小学校の頃は学年で一人や二人は見かけた障害者も、中学高校とその姿を見かけなくなり、社会に出ると自分の生活に関わることがめっきりと減ってしまう。数が減っている訳ではないのに。徐々に徐々に隠してしまうようなシステムではなく、日常的に接点が持て、本作に登場する子供たちのように、純粋に浮かんだ疑問を変な良識なんかに囚われずに気軽に聞ける関係が持てる社会になればいいのになぁと、またレビューそっちのけで普段思っていることを書いてみた次第で。

「スゲー!スゲー!」とバカみたいに見るのがよろしいかと
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私も感じたことを書いてしまいます。
今年初頭、パラリンピックの銅メダリストと同じ宿に泊まったことがあったんです。ホールで2、3時間話し込んでしまいました。
彼は幼い頃に左腕を失ったのだそうです。
いわゆる『障害者』という方と初めて触れ合ったのですが、変な気負いや遠慮など抱えることなく楽しく時間を過ごせたのが意外でした。もっと身構えてしまうのかなと。でも実際、彼は好青年で、『アスリート』という語感とは無縁と思われる程のおっとり口調で話してて、しかっり者のようでどこかおっちよこちょいで、楽しい人だったんです。
『偏見を持たない』ということが偏見とも思える今日この頃。”彼”のお陰なのでしょう。
もちろん介助なしでは生存することすら難しい方々もいるので一概には言えないのですが、“偏見を持たない”“差別をしない”ってのは、“手を差しのべる”“優しくする”ってことだけではないんですよね。健常者には普段手を差しのべもしないのに、助けを求めてもいない障害者ににこやかに手を差し伸べること自体、平等ではないのではと。自分で何とかしようとしている努力を、邪魔しちゃいけないんじゃないのかなぁとも。“平等”って言葉自体にも色々と思うことがあるんですが、スッゴク長くなるので、いずれ小出しにでも^^;
スゲー!スゲー!(笑
健常者もビックリの映画でしたね。
ぶつかったときの音もすごかったですね。
ボコン!ボコン!ゴロ〜ン!・・・・
って大丈夫かよ?おい!
と、思わず画面に話しかけましたw
色々考えさせられましたけど、気持ちの良い映画でした。
物知り顔でなんか偉そうな事を言うよりも、ホント「こいつらスゲー!」って言ってた方が本望なんじゃないのかなぁと。“努力して出来るなら、努力してやる”と、とっても単純だがとっても難しいことを実現している彼らには、やっぱり「スゲー!!」が一番^^